JP2003297229A - 電界電子放出装置の製造方法 - Google Patents

電界電子放出装置の製造方法

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JP2003297229A
JP2003297229A JP2002099259A JP2002099259A JP2003297229A JP 2003297229 A JP2003297229 A JP 2003297229A JP 2002099259 A JP2002099259 A JP 2002099259A JP 2002099259 A JP2002099259 A JP 2002099259A JP 2003297229 A JP2003297229 A JP 2003297229A
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emitter
cathode
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nanotube
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JP2002099259A
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Masaaki Ito
雅章 伊藤
Sashiro Kamimura
佐四郎 上村
Michiko Kusunoki
美智子 楠
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Japan Fine Ceramics Center
Noritake Itron Corp
Original Assignee
Japan Fine Ceramics Center
Noritake Itron Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ナノチューブから成るエミッタを備えた電界電
子放出装置において、エミッション開始電圧を一層低く
し得る製造方法を提供する。 【解決手段】真空熱処理工程において、真空下すなわち
大気中よりも酸素分圧の低い雰囲気中において加熱され
た基板56は、その表面54から次第に珪素60が選択
的に除去されることにより、その表層部に炭素50だけ
で構成される珪素除去層38が形成されると共にその珪
素除去層38内に基板表面54から陽極に向かって伸び
る複数本のナノチューブ46が高密度に生成される。次
いで、エッチング処理工程において、このナノチューブ
46に酸素の存在下でプラズマ・エッチング処理を施す
と、ナノチューブ46の先端のキャップが除去されると
共に、珪素除去層38内においてナノチューブ46相互
間に位置するアモルファス層が除去される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電界放出型表示装
置(Field Emission Display:FED)、陰極線管(Catho
de Ray Tube:CRT)、平面型ランプ、電子銃等の電子
線源に用いられる電界電子放出装置の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】例えば、電界放出によって電子源(エミ
ッタ)から陽極に向かって真空中に電子を放出させる電
界電子放出装置は、その電子で蛍光体を励起する表示装
置や発光装置、或いは電界顕微鏡の電子銃等に好適に用
いられている。ここで、「電界放出(電界電子放出)」と
は、強電場の作用により、量子力学的なトンネル現象を
利用して電子を固体表面から真空準位へ引き出すことで
ある。真空準位と金属または半導体表面とのエネルギー
差は仕事関数(work function)φで表されるが、例えば
通常の金属材料では仕事関数φが数(eV)と大きいため、
室温において金属中の電子が真空中に飛び出すことはな
い。しかしながら、外部から強電場を作用させることに
よりポテンシャル障壁を薄くすると、トンネル効果によ
って電子が確率論的に真空中に飛び出す。これが電界放
出であり、仕事関数φが小さいほど弱い電場で電子を放
出させることが可能となる。
【0003】上記のような電界電子放出装置において、
エミッタを多数本のカーボン・ナノチューブ(以下、単
にナノチューブという)で構成することが提案されてい
る。例えば、本願出願人等が先に出願して公開された特
開2000−100317号公報や特開2001-25
0468号公報等に記載された電界電子放出装置がそれ
である。ナノチューブとは、円筒状を成す炭素原子(C)
の結合体であって、径の異なる複数個のグラファイト・
シート(グラフェン・シートすなわち主として炭素の六
員環から成るグラファイト層)が入れ子になり、全体の
直径が1〜50(nm)程度、長さが100(μm)程度以下の寸法
を有する微細な構造体をいう。このようなナノチューブ
は、微小径にされたその先端から効率よく電子放出が起
き且つエミッション特性に優れると共に、炭素原子だけ
で構成されることから真空中で耐酸化性が高く化学的安
定性に優れ且つ耐イオン衝撃性も高い特徴を有してい
る。そのため、先端部を尖鋭にしたSpindt型と称される
モリブデン・コーン等で構成した数密度が数万(個/c
m2)程度以下にしかならないエミッタに比較して、極め
て高い数密度で配設されて高い電子放出効率を有し且つ
気密空間内の残留ガスによる酸化や損傷延いては経時変
化(劣化)等が生じ難いエミッタを簡単な製造工程で得る
ことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記公報に
記載された電界電子放出装置では、共有結合性炭化物例
えば炭化珪素(SiC)等から成る基板を真空下で加熱処理
して、その炭化珪素中の珪素原子を除去することによ
り、エミッタとなるナノチューブをその基板の表面に生
成させる。生成したナノチューブの先端は五員環或いは
七員環が導入されることによって形成されたドーム状の
キャップで閉じているので、更に、そのキャップを除去
して先端を開放する処理が施され、その後、この基板を
電気的に導通した状態で陰極上に固着することによりナ
ノチューブから成るエミッタがその陰極上に設けられ
る。このような製造方法によれば、従来から行われてい
た不活性ガス雰囲気下で蒸発させたカーボンを凝縮(再
結合)させるようなアーク放電法やレーザ・アブレーシ
ョン法等に比較して、他の炭素同素体の生成を伴うこと
なく、ナノチューブの向き、高さや配設密度を揃えるこ
とができる。しかも、開放された先端におけるエミッシ
ョン・サイトの曲率半径は実質的にそこに位置する炭素
原子の半径に略一致して極めて小さいため、比較的低電
界でエミッションが開始する。そのため、微小な電子発
生源としてだけではなく、広い面積に亘って一様な輝度
が要求されるFED等の表示装置や照明装置等にも好適
に用い得るエミッタが得られる。
【0005】従来、ナノチューブ先端の開放処理は、例
えば、酸素を含む雰囲気下で加熱処理を施し、或いはCF
4、水素、アルゴン、ヘリウム、窒素、或いはそれらの
混合ガスを用いてその先端側からプラズマ・エッチング
することによって行われていた。しかしながら、酸化雰
囲気で加熱処理を施す方法では、その処理中にナノチュ
ーブが先端部から酸化して著しく消耗させられ或いはそ
の先端部に酸素が吸着してエミッション特性が低下する
問題がある。一方、プラズマ・エッチングによる方法で
はエミッション開始電圧が比較的高くなる問題がある。
前記のような製造方法では、一様な高さ寸法を備えた小
径のナノチューブが基板表面において相互に密接して極
めて高密度に生成されるが、プラズマ・エッチング処理
ではそのナノチューブの先端部(キャップ)のみが除去さ
れる。そのため、エミッション開始時においては実質的
に膜状の導体でエミッタが構成されることから、それら
が同時に電子を放出するような高電圧の印加が必要とな
るのである。
【0006】本発明は、以上の事情を背景として為され
たものであって、その目的は、ナノチューブから成るエ
ミッタを備えた電界電子放出装置において、エミッショ
ン開始電圧を一層低くし得る製造方法を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成するた
めの本発明の要旨とするところは、気密空間内において
互いに対向して配置された陽極および陰極と、エミッタ
として機能させるためにその陽極に向かって伸びるよう
にその陰極上に設けられた複数本のカーボン・ナノチュ
ーブとを備え、それら陽極および陰極間に電圧を印加す
ることにより、そのエミッタから電子を放出させる形式
の電界電子放出装置の製造方法であって、(a)共有結合
性炭化物から成る基板に真空下で加熱処理を施すことに
よりその一面に前記複数本のカーボン・ナノチューブを
生成する真空熱処理工程と、(b)前記基板上に生成され
たカーボン・ナノチューブに酸素の存在下でプラズマ・
エッチングを施すことによりその先端を開放するエッチ
ング処理工程とを含み、前記基板を前記陰極上に配置す
ることによりその陰極上に前記カーボン・ナノチューブ
を設けることにある。
【0008】
【発明の効果】このようにすれば、真空熱処理工程にお
いて、真空下すなわち大気中よりも酸素分圧の低い雰囲
気中において加熱された基板は、その表面から次第に共
有結合性炭化物を構成する非金属元素が選択的に除去さ
れることにより、その表層部に炭素だけで構成される非
金属元素除去層が形成されると共にその非金属元素除去
層内に基板表面から前記陽極に向かって伸びる複数本の
ナノチューブが高密度に生成される。次いで、エッチン
グ処理工程において、このナノチューブに酸素の存在下
でプラズマ・エッチング処理を施すと、ナノチューブの
先端のキャップが除去されると共に、非金属元素除去層
内においてナノチューブ相互間に位置するアモルファス
層が除去される。
【0009】そのため、ナノチューブの先端を閉じてい
るキャップが除去されることによってエミッション・サ
イトの実質的な曲率半径が著しく小さくなると同時に、
アモルファス層が除去されることによって従来の酸化熱
処理や不活性なガスのプラズマ・エッチング処理を施し
た場合に比較して疎らな分布すなわち適度な密度でナノ
チューブの先端部が露出させられる。したがって、この
ようなナノチューブをエミッタとして備えた基板を陰極
上に設けることにより、非金属元素除去層が膜状となっ
ていた従来に比較して、ナノチューブ先端に電界が集中
し易くなるので、ナノチューブから成るエミッタを備え
た電界電子放出装置において、エミッション開始電圧を
従来に比べて一層低くすることができる。
【0010】因みに、従来、酸化熱処理によるナノチュ
ーブの先端開放が行われていた一方で、プラズマ・エッ
チング処理の場合には水素やアルゴン等の不活性なガス
が用いられていたのは、酸素の存在下でプラズマ・エッ
チング処理を施すと、エッチング反応が著しく促進され
ることによって、ナノチューブの先端部だけを選択的に
除去することが困難と考えられていたからである。しか
しながら、本発明者等がプラズマ・エッチング処理の効
率を可及的に高めるべく種々の条件で実験を行ったとこ
ろ、全く意外にも、酸化雰囲気中でプラズマ・エッチン
グ処理を施すと、ナノチューブの先端が開放されるだけ
でなく、ナノチューブ相互間のアモルファス層が優先的
に除去されるため、ナノチューブが疎らに分布した表面
に凹凸を有するエミッタが得られることを見出した。本
発明は、斯かる知見に基づいて為されたものである。
【0011】
【発明の他の態様】ここで、好適には、前記エッチング
処理工程は、100乃至300(W)のプラズマ出力で実施され
るものである。プラズマ出力が100(W)未満ではナノチュ
ーブの先端が殆どエッチングされず或いはエッチング能
率が著しく低下し、反対に300(W)を越えると、先端だけ
でなくナノチューブ全体の消耗が著しくなると共に、そ
の結晶性が損なわれ易くなる問題がある。なお、ナノチ
ューブの消耗を抑制するためには、出力を200(W)以下に
設定することが一層好ましい。
【0012】また、好適には、前記エッチング処理工程
は、0.5乃至10(cm3/分)の酸素流量で実施されるもので
ある。酸素流量が0.5(cm3/分)未満では、プラズマを均
一に立てるために必要な酸素濃度を維持できず、ナノチ
ューブの先端の開放状態が不均一になる。反対に10(cm3
/分)を越えると、酸素濃度が高くなり過ぎて先端だけで
なくナノチューブ全体の消耗が著しくなると共に、その
結晶性が損なわれ易くなる問題がある。なお、プラズマ
の均一性を高めるためには、流量を1(cm3/分)以上に設
定することが一層好ましい。また、プラズマ出力が高い
値に設定される場合には、上記の範囲内で流量を少なく
することが好ましく、例えば、300(W)程度に設定される
場合には5(cm3/分)程度以下に設定することが一層好ま
しい。
【0013】また、好適には、前記エッチング処理工程
は、0.05乃至1.5(Pa)(≒0.4乃至11mTorr)の酸素分圧下
で実施されるものである。酸素分圧が0.05(Pa)未満で
は、プラズマを均一に立てるために必要な酸素濃度を維
持できず、ナノチューブの先端の開放状態が不均一にな
る。反対に1.5(Pa)を越えると、酸素濃度が高くなり過
ぎて先端だけでなくナノチューブ全体の消耗が著しくな
ると共に、その結晶性が損なわれ易くなる問題がある。
なお、酸素分圧は、排気系と酸素流量との関係を考慮し
て設定することが望ましい。また、プラズマの均一性を
高めるためには、酸素分圧を0.1(Pa)以上に設定するこ
とが一層好ましい。更に、プラズマ出力が高い値に設定
される場合には、上記の範囲内で酸素分圧を低くするこ
とが好ましく、例えば、300(W)程度に設定される場合に
は0.5(Pa)程度以下に設定することが一層好ましい。
【0014】また、好適には、前記エッチング処理工程
は、1乃至8分間実施されるものである。処理時間が1分
間未満では、ナノチューブの先端を十分に開放すること
が困難であり、反対に8分間を越えるとナノチューブ全
体の消耗が著しくなると共に、その結晶性が損なわれ易
くなる問題がある。なお、先端を確実に開放させるため
には、処理時間を2分以上に設定することが一層好まし
い。また、プラズマ出力が高く設定される場合には、上
記の範囲内で処理時間を短くすることが好ましく、例え
ば300(W)程度に設定される場合には5分以下に設定する
ことが一層好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図面を
参照して詳細に説明する。
【0016】図1は、本発明の電界電子放出装置の製造
方法が適用されたFED10の構成の要部を模式的に示
す断面図である。図において、FED10は、透光性を
有する略平坦な前面板12と、それに平行に配置された
背面板14とが枠状のスペーサ16を介して接合される
ことにより、内部が10-4(Pa)程度以下、好ましくは10 -5
(Pa)程度以下の真空度の気密容器に構成されている。前
面板12および背面板14は、それぞれ1〜2(mm)程度の
厚さのソーダライム・ガラス製の平板等から成るもので
ある。但し、背面板14は透光性を要求されないため、
セラミックス或いは琺瑯等の電気絶縁性を有する他の材
料で構成してもよい。また、上記のスペーサ16は、例
えば前面板12および背面板14の構成材料と同様な熱
膨張係数を有する材料、例えばそれらと同様なソーダラ
イム・ガラスや表面に絶縁層を設けた426合金等から
成るものであって、例えば0.3(mm)程度の一様な厚さを
備えている。
【0017】上記の前面板12の内面18には、透明な
ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)等から成
る複数本の陽極(アノード)20が、一方向に沿ってスト
ライプ状に配列形成されている。この陽極20は、例え
ばスパッタや蒸着等の薄膜プロセスによって1(μm)程度
の膜厚に設けられたものであり、シート抵抗値で10(Ω
/□)程度の高い導電性を有する。これら複数本の陽極
20の各々の下面には、例えば赤、緑、青にそれぞれ発
光させられる蛍光体層22が、それら3色が繰り返し並
ぶように設けられている。蛍光体層22は、例えば、低
速電子線で励起されることにより可視光を発生させる(Z
n,Cd)S:Ag,Cl(赤)、ZnGa2O4:Mn(緑)やZnS:Cl(青)等の蛍
光体材料から構成されるものであり、例えば10〜20(μ
m)程度の色毎に定められた厚さ寸法となるように厚膜ス
クリーン印刷法等で形成されている。
【0018】一方、背面板14の内面24には、例えば
ストライプ状の複数本の陰極26が上記の陽極20と直
交する他方向に沿って配列形成されている。陰極26
は、例えば、Ni、Cr、Au、Ag、Mo、W、Pt、Ti、Al、C
u、Pd等の金属、合金、或いは金属酸化物とガラスとか
ら構成される厚膜印刷導体である。これら複数本の陰極
26の各々の上には、後述するように電子の発生源とな
るエミッタ28が、例えば導電性接着剤等によって陰極
26と導通させられた状態で備えられている。エミッタ
28と陽極20との距離は、例えば数十(μm)〜数十(m
m)程度、例えば20(mm)程度である。なお、図においては
エミッタ28が図の左右方向において陰極26と略同じ
長さ寸法に描かれているが、エミッタ28は、実際には
例えば陰極26上においてFED10の画素(独立して
制御される発光単位)毎に分割して設けられており、個
々のエミッタ28の大きさは、例えば2×6(mm)程度であ
る。そして、エミッタ28の上方には、陰極26と直交
する方向、すなわち陽極20と同様な一方向に沿って配
列されたストライプ状の複数本のゲート電極30が、絶
縁膜32によってエミッタ28と電気的に絶縁させられ
た状態で備えられている。ゲート電極30は、例えばク
ロム(Cr)等から構成されて、陰極26との交点の各々に
直径1〜2(μm)程度の複数個の電子通過孔34を備え、
エミッタ28との距離は数(mm)程度以下、例えば0.5(m
m)程度である。また、絶縁膜32は、二酸化珪素(SiO2)
等の絶縁材料で構成されている。これらゲート電極30
および絶縁膜32は、何れも真空蒸着法、印刷法、或い
はスパッタ法等によって形成されている。
【0019】そのため、陰極26およびゲート電極30
にそれぞれ信号電圧および走査電圧が印加されると、そ
の陰極26上に備えられているエミッタ28からそれら
の間の大きな電圧勾配に基づいて生じる電界放出(Field
Emission)によって電子が放出される。この電子は、前
面板12上に設けられている陽極20に所定の正電圧が
印加されることにより、ゲート電極30に設けられてい
る電子通過孔34を通ってその陽極20に向かって飛
ぶ。これにより、その陽極20上に設けられている蛍光
体層22に電子が衝突させられ、蛍光体層22が電子線
励起により発光させられる。したがって、ゲート電極3
0の走査のタイミングに同期して所望の陽極20に正電
圧を印加することにより、所望の位置にある蛍光体層2
2が発光させられるため、その光が前面板12を通して
外部に射出されることにより、所望の画像が表示され
る。なお、駆動方法の詳細については、本発明の理解に
必要ではないので説明を省略する。
【0020】図2(a)、(b)は、上記のエミッタ28の構
成を詳しく示す図である。図2(a)において、前記の図
1では省略されているが陰極26上には薄板状のエミッ
タ部材35が設けられており、エミッタ28はそのエミ
ッタ部材35の表層部に備えられている。エミッタ部材
35は、例えば炭化珪素から成る炭化物部36と、その
炭化物部36の表面全体を覆う珪素除去層38とから成
るものである。この珪素除去層38は、製造方法を後述
するように炭化珪素を構成する珪素が除去されることに
より炭素だけから構成された厚さ寸法hが数(μm)程
度、例えば1.4(μm)程度の厚みの層である。図2(a)に
おいて一点鎖線bで囲んだ範囲を図2(b)に拡大して模
式的に示すように、珪素除去層38は、エミッタ部材3
5の略平坦な表面48側においては、炭化物部36の表
面40上に形成された珪素除去層38の下層部を構成す
る厚さ寸法hgが数百(nm)〜数(μm)程度、例えば700(n
m)程度の炭素層42と、その炭素層42の表面44上か
ら伸びて珪素除去層38の上層部を構成する長さ寸法h
nが数百(nm)〜数(μm)程度、例えば700(nm)程度の多数
本のナノチューブ46とから成る。また、エミッタ部材
35の他の面、すなわち図2(a)における側面および底
面にはナノチューブ46は殆ど存在せず、実質的に炭素
層42だけで珪素除去層38が構成されている。
【0021】上記の炭素層42は、主として炭素原子の
平坦な網目構造から成るグラファイトや無定形炭素等か
ら成るものである。炭素層42内では、炭素原子の結合
構造が図における左右方向に連なることにより、その表
面44延いては炭化物部36の外周面に沿った方向にお
いて高い導電性を有している。このため、陰極26上に
エミッタ部材35の下面を導電性接着剤等で固着するだ
けで、その表層部に形成された炭素層42によってその
陰極26とナノチューブ46(エミッタ28)との間に導
電性の高い通電経路が形成される。なお、図2(b)にお
いては、炭化物部36の表面40および炭素層42の表
面44が平坦に描かれているが、実際には、これら表面
40、44は略平坦な例えば高低差が1(μm)程度以下の
凹凸面である。この炭素層42は、後述する製造方法や
図8等から明らかなように炭化物部36の表面40から
原子レベルで連続しており、何ら接合処理等を施すこと
なく、その炭化物部36上に一体的に設けられている。
【0022】また、上記のナノチューブ46は、後述す
るようなプラズマ・エッチング処理によって、炭素層4
2の表面44に例えば1010〜1012(本/cm2)程度[例え
ば、100〜5000(本/μm2)程度]の数密度で、先端部が
相互に接触しない状態で立設されたものである。各々の
ナノチューブ46の直径は例えばd=5〜10(nm)程度で
あって、その先端が陽極20に向かうように表面44に
対して略垂直を成す方向に配向しており、陽極20に向
かうその先端は高低差が数(nm)〜数十(nm)程度の略一様
な高さに位置する。ナノチューブ46の直径および密度
が上記のようになっていることから、その先端部におけ
る相互間隔は例えばgn=10〜100(nm)程度と比較的疎
らである。図3に上記のナノチューブ46を10万倍に拡
大した電子顕微鏡写真を示す。この写真によれば、ナノ
チューブ46が比較的疎らに存在することが明らかであ
る。前述した駆動過程におけるエミッタ28からの電子
の放出は、これらのナノチューブ46の先端から為され
るものであり、本実施例においては、多数本のナノチュ
ーブ46の各々がエミッタ28を構成する。なお、図1
においては、説明の便宜上エミッタ部材35全体をエミ
ッタ28として示した。
【0023】図4に先端部を拡大した分子構造モデルを
示すように、上記のナノチューブ46は、炭素原子50
の六員環が網状に連結された複数本(例えば2〜10本程
度)の順次径の異なる円筒状グラファイト層52a、5
2b、〜52k(以下、特に区別しないときは単にグラ
ファイト層52という)が入れ子になって、2〜10層程度
の多層構造から成る円筒状グラファイト層52で構成さ
れたものである。個々のナノチューブ46の先端には多
重構造を成すグラファイト層52の端面が露出してい
る。すなわち、ナノチューブ46は陽極20に向かう先
端が開放した形状を備えており、そのグラファイト層5
2の端面を構成する複数の炭素原子50の各々から電子
が放出されることとなる。したがって、エミッタ28の
先端の実質的な曲率半径は、炭素原子50の半径に一致
する。なお、最外周に位置するグラファイト層52aの
直径すなわちナノチューブ46の直径odは例えば5〜1
0(nm)程度であり、最内周に位置するグラファイト層5
2kの直径idは例えば3(nm)程度である。すなわち、
本実施例においては、実質的に、直径od=10(nm)程度
以下の極めて微細な領域内に極めて多数のエミッション
・サイト(電子の放出位置)が存在する。また、各グラフ
ァイト層52の相互間隔gsは、平坦なグラファイトの
層間隔に略等しい3.4(Å)程度であり、グラファイト層
52は相互に略独立している。
【0024】このナノチューブ46も炭素層42の表面
44から原子レベルで連続しており、実質的に炭化物部
36上に一体的に設けられている。このように、ナノチ
ューブ46自身が導電性の高いグラファイト層52で構
成されると共に、導電性の高い炭素層42に連続してい
ることから、ナノチューブ46と陰極26との間には、
極めて抵抗率の低い通電経路が形成される。
【0025】したがって、その炭素層42の表面44に
備えられたナノチューブ46は、炭素層42および導電
性接着剤を介して陰極26に導通させられることから、
前述したように陰極26およびゲート電極30間に電圧
を印加すると、ナノチューブ46に通電させられてその
先端から電子が放出されることとなる。このとき、表面
48上におけるナノチューブ46の密度が前述した程度
の比較的低い値に抑えられることにより、それらナノチ
ューブ46が少なくともその先端部において相互に離隔
させられていることから、各々の先端に電界が集中し易
くなって、比較的低い電圧で電子が放出させられる。す
なわち、本実施例においては、電圧を印加した際に複数
本のナノチューブ46が膜状の一つの電極として作用す
ることはなく、各々が独立した電極として機能し、それ
ぞれの先端に電界が集中するので、エミッション開始電
圧が低くなるのである。しかも、陰極26からエミッタ
表面48の内周側に至る通電経路は、極めて導電性の高
い炭素層42だけで専ら構成されることから、ナノチュ
ーブ46に流れる電流値は、その表面48の外周部およ
び内周部の何れに位置するものも同様な大きさとなる。
【0026】要するに、エミッタ28は、珪素が除去さ
れることにより一面48から陽極20に向かう一方向に
沿って伸びるように生成された複数本のナノチューブ4
6で構成され、炭化珪素のままの炭化物部36とナノチ
ューブ46との界面には炭素層42が生成されているこ
とから、周縁部からナノチューブ46に至る通電経路が
その一面48に沿った方向において導電性を有する炭素
層42によって形成されるため、その通電経路の抵抗率
が十分に低くなる。そのため、内周部においてもナノチ
ューブに流れる電流値が十分に大きくなることから、そ
の内周部において電子放出効率が低下することが抑制さ
れ、エミッタ28の電子放出効率が全面で一様となる。
上記により、個々のエミッタ28からはその表面48全
面で一様に電子が放出され、延いては複数本の陰極26
の上にそれぞれ設けられているエミッタ28の略全面か
ら略一様に電子が放出され、略一様な電界が形成される
こととなる。このように、一方向に配向し且つそれぞれ
が炭素層42を介して陰極26に接続されると共に相互
に十分に離隔させられた複数本のナノチューブ46でエ
ミッタが構成されることから、低電圧で動作可能且つ高
電流密度で特性の一様なエミッタ28を備えたFED1
0が得られる。
【0027】ところで、上記のエミッタ28を備えたエ
ミッタ部材35は、例えば、図5(a)〜(c)に工程の要
部段階における処理状態を示す工程に従って製造され
る。
【0028】まず、真空熱処理工程においては、例えば
(0001)面が表面54に現れたα型、或いは(111)
面が表面54に現れたβ型の炭化珪素単結晶から成る基
板56を用意し、真空炉58内にその表面54が上向き
となるように配置する。図5(a)はこの状態を示してい
る。この真空炉58内において基板56を1650〜1800
(℃)程度の範囲内の温度、例えば1700(℃)程度の温度
で、1時間以上の長時間、例えば10時間程度だけ加熱す
る真空熱処理を施す。この加熱処理中においては、真空
炉58内が、10-4〜10(Pa)の範囲内の圧力、例えば1×1
0-2(Pa)程度の減圧下すなわち真空下に保たれ、炉内雰
囲気が大気よりも酸素(O2)の希薄な酸素分圧の低い状態
とされる。これにより、炭化珪素を構成する珪素(すな
わち共有結合性炭化物を構成する非金属元素)が基板5
6の表面54を含む外周面全体から酸化され且つガス化
して次第に除去され、その平坦な表面54近傍に炭素原
子50だけから成る前記の珪素除去層38が形成され
る。すなわち、炭化物部36の表面40に炭素層42を
介してナノチューブ46が形成される。図5(b)はこの
状態を示しており、図6にこの段階における基板表面4
8近傍の前記の図2(b)に対応する要部断面を、図7に
その表面を10万倍の倍率で撮影した電子顕微鏡写真をそ
れぞれ示す。なお、図6においては、ナノチューブ46
が図2の場合と同様な密度で描かれているが、実際に
は、図7を図3と対比すれば明らかなように、この段階
では生成されたナノチューブ46が比較的緻密になって
いる。また、生成されたナノチューブ46は主に炭素の
六員環で構成されているが、その端部には五員環或いは
七員環が導入されて曲率半径10(nm)程度の小さなドーム
状に閉じている。また、ナノチューブ46は、α型にお
いては[0001]方向に、β型においては[111]
方向に高配向している。
【0029】すなわち、本実施例では、ナノチューブ4
6をエミッタ28として備えたエミッタ部材35を得る
ために炭化珪素から成る基板56が用いられているた
め、基板46表面に適度な密度を以て一様に配向させら
れたナノチューブ46を生成できるのである。これは、
珪素60と炭素50との酸化傾向が微妙に異なり、珪素
60のみが酸化される条件があるためと推定される。な
お、炭化珪素は一般にα型(α-SiC)およびβ型(β-SiC)
に分類されるが、何れから成る基板にもナノチューブ4
6が好適に生成される。上記のα型およびβ型は、多数
存在する炭化珪素の多形を二分類したものであり、立方
晶の3Cをβ型といい、それ以外の非等軸晶(六方晶の
2H、4H、6Hおよび菱面体の15R等)をα型とい
う。ここで、2H等はRamsdellの表記法に従ったもので
ある。
【0030】図8は、上記の真空熱処理によるナノチュ
ーブ46の形成過程を説明するモデル図である。α型炭
化珪素の(0001)面およびβ型炭化珪素の(111)面
は、炭素50だけの層と珪素60だけの層が交互に積層
された結晶面であるが、このような面から珪素60が除
去される際には、炭素50がチューブ形状を形成し易
い。すなわち、炭化珪素の珪素原子60が炉内の酸素6
6によって選択的に酸化され、一酸化珪素64となって
抜け出ると、残された炭素50が高温下で再配列させら
れることにより、基板56には表面54(仮想線で示す)
側から順に炭素50だけの分子構造が形成されていく。
このように形成される分子は、前述のように炭素原子5
0が網状につながった六員環構造を成すグラファイトで
あるが、上記の結晶面から珪素原子60が除去される
と、その六員環構造は一酸化珪素64の移動方向に沿っ
てエピタキシャル的に成長し、基板表面54の結晶面に
応じてその成長方向が決定されるものと考えられる。そ
のため、熱処理の進行に伴って珪素除去層38が深くな
ると、上記のような結晶方位では円筒状のグラファイト
・シートが基板56の厚み方向すなわち珪素除去層38
の進行方向に伸びるように形成され、炭化珪素の結晶構
造をある程度受け継いで図に示されるように炭化物部3
6と原子レベルで連続させられた形で、緻密に並び且つ
基板表面54すなわちエミッタ表面48に略垂直な方向
に配向したナノチューブ46が得られるものと推定され
る。
【0031】このように珪素除去層38延いてはナノチ
ューブ46が形成される過程において、本実施例では17
00(℃)程度と十分に高い加熱温度および1×10-2(Pa)程
度と圧力延いては酸素分圧の十分に低い条件下において
加熱時間が10時間程度と長時間に設定されているため、
珪素除去層38の深さhは例えば1.4(μm)程度にもな
る。前記のような珪素原子60の脱出は、真空炉58内
の酸素で酸化反応が生じることにより促進されるもので
あり、また、ナノチューブ46は一酸化珪素64が表面
54に略垂直な方向に速やかに脱出することで高配向に
形成されるものであるが、珪素除去層38が深くなるほ
ど、表面54と内部すなわち炭化物部36の表面40と
の間のガス流通が妨げられるため、ガス流通が阻害され
た条件下ではナノチューブ46が成長し難くなる。した
がって、珪素除去層38の一定以上の深さ位置、上記の
条件下では700(nm)以上の深さ位置においてはガス流通
を必須とするナノチューブ46は殆ど生成されず、表面
54に沿った方向に連なるグラファイト或いは無定形炭
素等により構成された前記の炭素層42がそのナノチュ
ーブ46および炭化物部36の何れとも原子レベルで連
続した状態で生成されることとなるものと考えられる。
【0032】すなわち、上記の条件下においては、表面
54側から炭化珪素の酸化反応は生じるがそれにより生
成された炭素の酸化反応は生じ難いため、当初はナノチ
ューブ46が好適に生成される。しかしながら、酸化反
応の進行により珪素除去層38が深くなると、ガス流通
が阻害されることにより、炭化珪素の酸化反応は生じて
もそのガスの流通方向に沿って伸びるナノチューブ46
の成長が困難になる。そのため、本実施例のように比較
的深く形成される珪素除去層38では、その下層部が構
造の乱れた炭素層42になるのである。陽極20に向か
う一方向に沿って伸びる複数本のナノチューブ46は、
このようにして導電性を有する炭素層42を介して基板
表面54に生成される。
【0033】なお、図8においてはナノチューブ46の
先端に中央部を除いて円筒状グラファイト層52の端面
が描かれているが、実際には、その中央部および前記の
図6に示すように、その先端部は五員環或いは七員環が
導入されることでドーム状に閉じている。
【0034】図5に戻って、先端部除去工程(エッチン
グ処理工程)では、ナノチューブ46が生成した基板5
6を(c)に示されるようにプラズマ・エッチング装置6
8内に入れ、一定量の酸素を供給しつつ電極70,72
間に交流電圧を印加することによって装置68内でプラ
ズマ74を発生させ、ナノチューブ46にエッチング処
理を施す。このとき、プラズマ出力が例えば100〜200
(W)程度、酸素流量が例えば1〜10(cm3/分)程度に設定さ
れ、図示しないロータリ・ポンプ等で排気しつつ例えば
2〜8分間程度処理を施す。これにより、装置68内の酸
素分圧が例えば0.1〜1.5(Pa)(≒0.8〜11mTorr)程度に保
たれた状態でエッチング処理が行われることなる。
【0035】上記のような条件でプラズマ・エッチング
処理が為されると、六員環に比較して結合力の小さい五
員環や七員環が優先的に破壊され、ナノチューブ46の
先端が開放される。また、同時に、ナノチューブ46の
周囲に存在するアモルファス層も分解されて除去され
る。そのため、前記の図2〜図4に示されるように、先
端部が開放され且つ相互に離隔させられた多数のナノチ
ューブ46が立設したエミッタ部材35が得られるので
ある。
【0036】因みに、従来のCF4を用いたプラズマ・エ
ッチング処理では、ナノチューブ46の先端は開放され
るが、炭素50の酸化速度が低いためにアモルファス層
は除去されない。そのため、図9の8万倍の電子顕微鏡
写真に示されるように、先端開放処理後においても、ナ
ノチューブ46が真空熱処理工程直後と同様に極めて高
密度に存在することから、エミッション開始時において
実質的に膜状のエミッタとして作用することとなってい
たのである。
【0037】なお、上記のエミッタ28(エミッタ部材
35)の電気的性能を評価するために、同様な構造を有
して表面48が5×5(mm)程度の大きさに形成されたエミ
ッタを用いて、ナノチューブ46とゲート電極30との
距離を0.5(mm)程度、ゲート電極30と陽極20との距
離を30(mm)程度とした三極管構造の電界電子放出装置を
作製した。この装置において、ゲート電圧2(kV)、アノ
ード(陽極)電圧5(kV)とすると、放出電流すなわち陽極
20と陰極26との間に流れる電流値は200(μA)以上と
十分に大きく、また、蛍光体層22の発光を観察するこ
とにより、エミッタの周縁部および中央部から略一様に
電子が放出されることが確かめられた。このように低電
圧で高い電子放出能力が得られるのは、前述したように
ナノチューブ46の先端が疎であり且つそのその先端が
開放させられて内周側に位置するグラファイト層52の
端面が露出させられていることから、各々の端面の先端
に位置する多数の炭素原子50の各々が実質的なエミッ
ション・サイトとして機能するためエミッション・サイ
トが極めて多く、且つ先端の曲率半径が極めて小さいこ
との寄与も大きいと考えられる。
【0038】要するに、本実施例においては、真空熱処
理工程において、真空下すなわち大気中よりも酸素分圧
の低い雰囲気中において加熱された基板56は、その表
面54から次第に珪素60が選択的に除去されることに
より、その表層部に炭素50だけで構成される珪素除去
層38が形成されると共にその珪素除去層38内に基板
表面54から陽極20に向かって伸びる複数本のナノチ
ューブ46が高密度に生成される。次いで、エッチング
処理工程において、このナノチューブ46に酸素の存在
下でプラズマ・エッチング処理を施すと、ナノチューブ
46の先端のキャップが除去されると共に、珪素除去層
38内においてナノチューブ46相互間に位置するアモ
ルファス層が除去されるので、上記のような高特性のエ
ミッタ28が得られるのである。
【0039】以上、本発明の一実施例を図面を参照して
詳細に説明したが、本発明は、更に別の態様でも実施で
きる。
【0040】例えば、実施例においては、本発明がFE
D10に適用された場合について説明したが、本発明
は、エミッション・サイトの密度を適度にし且つ電子放
出効率の一様性を高めると共にエミッション開始電圧を
低下させることが望まれるものであれば、平面型ラン
プ、陰極線管や電子銃等の種々の電界電子放出装置に同
様に適用し得る。これらの用途において、必要な導電性
延いては熱処理条件やプラズマ・エッチング処理の条件
等は、用いられるエミッタの大きさに応じて適宜選択さ
れる。
【0041】また、実施例においては、炭化珪素から成
る基板56を真空中で熱処理することにより、ナノチュ
ーブ46が高い配向性を以て適度な密度で配設されたエ
ミッタ28を製造する場合について説明したが、真空中
の加熱によって非金属元素が除去される共有結合性炭化
物であれば、炭化ホウ素等の他の材料が用いられてもよ
い。
【0042】また、実施例においては、エミッタ部材3
5を構成する炭素層42の厚さ寸法が数百(nm)〜数(μ
m)程度、ナノチューブ46の長さ寸法が数十〜数百(nm)
程度である場合について説明したが、これらの厚さ寸法
および長さ寸法は、用途や工程管理上の都合等に応じて
適宜変更できる。
【0043】また、ナノチューブ46の先端を開放する
ためのプラズマ・エッチング処理の条件は、実施例で示
したものに限られず、エミッタ28の用途に応じて、前
述した範囲内で適宜変更される。
【0044】また、前記の基板56は、前記真空熱処理
工程に先立ち、表面54が鏡面に仕上げ加工されたもの
であってもよい。基板表面54が粗くなると、珪素60
(非金属元素)が除去されて残った炭素原子50が再配列
する際にナノチューブ構造を採り難くなり、或いは一旦
はナノチューブ構造となってもその成長が進行していく
うちに乱れてナノチューブ構造を維持し難くなる。上記
のようにすれば、炭素原子50が再配列する際にナノチ
ューブ構造を採り易くなると共に、ナノチューブ46の
成長方向が揃うため成長に伴う乱れも発生し難い。その
ため、適度な密度に配向させられたナノチューブ46に
より構成されたエミッタ28を一層容易に得ることがで
きる。なお、上記の鏡面は、好適には、Ra=0.02(mm)以
下の表面粗さの平滑面である。
【0045】また、実施例においては、エミッタ部材3
5が陰極26に導電性接着剤で固着されるように説明し
たが、陰極26が前述のような厚膜印刷導体で構成され
る場合には、その焼結過程で同時にエミッタ部材35を
固着するようにしてもよい。
【0046】その他、一々例示はしないが、本発明は、
その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るもので
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のFEDの構成を説明する断
面図である。
【図2】(a)は、図1のFEDに備えられるエミッタの
断面構造を説明する図であり、(b)は、(a)に一点鎖線b
で示される部分を拡大した図である。
【図3】図2のエミッタに備えられるナノチューブの生
成状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】図3のナノチューブの先端部を説明する分子モ
デル図である。
【図5】(a)〜(c)は、図2のエミッタの製造工程の要部
段階を説明する図である。
【図6】図5の真空熱処理工程後における基板の要部断
面を説明する図である。
【図7】図5(c)に示されるプラズマ・エッチング処理
工程の実施前におけるナノチューブの生成状態を説明す
るための図3に対応する電子顕微鏡写真である。
【図8】図5の製造工程におけるナノチューブの生成作
用を説明する分子モデル図である。
【図9】従来のプラズマ・エッチング処理後のナノチュ
ーブの密接状態を説明するための図3に対応する電子顕
微鏡写真である。
【符号の説明】
10:FED(電界電子放出装置) 20:陽極 26:陰極 28:エミッタ 35:エミッタ部材(基板) 46:ナノチューブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上村 佐四郎 三重県伊勢市上野町字和田700番地 ノリ タケ伊勢電子株式会社内 (72)発明者 楠 美智子 愛知県名古屋市熱田区六野二丁目4番1号 財団法人ファインセラミックスセンター 内 Fターム(参考) 5C127 AA01 AA02 AA20 BA09 BA15 BB07 CC03 DD54 EE03

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気密空間内において互いに対向して配置
    された陽極および陰極と、エミッタとして機能させるた
    めにその陽極に向かって伸びるようにその陰極上に設け
    られた複数本のカーボン・ナノチューブとを備え、それ
    ら陽極および陰極間に電圧を印加することにより、その
    エミッタから電子を放出させる形式の電界電子放出装置
    の製造方法であって、 共有結合性炭化物から成る基板に真空下で加熱処理を施
    すことによりその一面に前記複数本のカーボン・ナノチ
    ューブを生成する真空熱処理工程と、 前記基板上に生成されたカーボン・ナノチューブに酸素
    の存在下でプラズマ・エッチングを施すことによりその
    先端を開放するエッチング処理工程とを含み、前記基板
    を前記陰極上に配置することによりその陰極上に前記カ
    ーボン・ナノチューブを設けることを特徴とする電界電
    子放出装置の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記エッチング処理工程は、100乃至300
    (W)のプラズマ出力で実施されるものである請求項1の
    電界電子放出装置の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記エッチング処理工程は、0.5乃至10
    (cm3/分)の酸素流量で実施されるものである請求項1の
    電界電子放出装置の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記エッチング処理工程は、0.05乃至1.
    5(Pa)の酸素分圧下で実施されるものである請求項1の
    電界電子放出装置の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記エッチング処理工程は、1乃至8分間
    実施されるものである請求項1の電界電子放出装置の製
    造方法。
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