JP2001071411A - 抗菌材料及び抗菌フィルム - Google Patents

抗菌材料及び抗菌フィルム

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JP2001071411A
JP2001071411A JP2000186826A JP2000186826A JP2001071411A JP 2001071411 A JP2001071411 A JP 2001071411A JP 2000186826 A JP2000186826 A JP 2000186826A JP 2000186826 A JP2000186826 A JP 2000186826A JP 2001071411 A JP2001071411 A JP 2001071411A
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acid
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Hideto Ohashi
英人 大橋
Satoshi Hayakawa
聡 早川
Juji Konagaya
重次 小長谷
Yoshikazu Misumi
美和 三角
Kenichi Miyamoto
憲一 宮本
Chikao Morishige
地加男 森重
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Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い抗菌力(抗菌活性)を有し、かつ、抗菌
力の持続性及び加工耐久性に優れた抗菌材料及び当該抗
菌材料を用いた抗菌フィルムを提供する。 【解決手段】 下記一般式(I)で示されるホスホニウ
ムスルホネート基を有する高分子重合体を主たる構成成
分とする抗菌材料であって、当該抗菌材料の層を少なく
とも片面に設けたフィルムを金属薄板に積層し、該積層
金属板を95℃の蒸留水中に2時間浸漬した後、抗菌材
料の層を内側にしてJIS−Z−2248に規定の18
0度曲げ加工を行った際の最小内側半径Tが1mm以下
であることを特徴とする抗菌材料。 【化1】 (式中、R1、R2、R3、R4はアルキル基またはアリー
ル基で、少なくとも1つは炭素数が10〜20のアルキ
ル基である。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は抗菌材料及び抗菌フ
ィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性樹脂、中でもポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、および
ポリエチレンテレフタレートは優れた物理的、化学的特
性を有し、繊維、プラスチック、フィルム、シート、接
着剤等に使用されている。
【0003】近年、台所や風呂場、トイレなどの水周り
資材や、種々の建材に使用されるフィルムには雑菌やか
びの繁殖防止のために抗菌処理が施された製品が求めら
れ、無機系または有機系の抗菌剤を充填または塗布した
抗菌性を有する製品が開発されている。
【0004】現在、検討または使用されている抗菌剤と
しては、キチン、キトサン、ワサビ抽出物、カラシ抽出
物、ヒノキチオール、茶抽出抗菌剤等の天然物系抗菌
剤、光酸化触媒酸化チタン粒子、酸化亜鉛超微粒子、銀
含有ゼオライト、銀含有リン酸ジルコニウム等の無機化
合物系抗菌剤及び有機アンモニウム塩、有機ホスホニウ
ム塩等の有機化合物系抗菌剤等があげられる。
【0005】従来より、天然物系抗菌剤や銀に代表され
る無機系抗菌剤は毒性が少ない点で好ましく使用されて
きた。そこで、本発明者らは、特開平3−83905号
公報に提案されている銀イオン含有リン酸塩系の抗菌
剤、特開平3−161409号公報に提案されている特
定のイオン交換容量を有するゼオライト中の一定容量を
銀イオンで置換してなる抗菌剤を用いて、フィルム、シ
ート、繊維、プラスチック等の樹脂製品を作製し、その
黄色ブドウ球菌、大腸菌等に対する抗菌性の評価を行っ
てみた。しかし、これらの抗菌剤を用いた場合、製品の
透明性を維持しようと抗菌剤の添加量を比較的控えめに
すると抗菌力(抗菌活性)が不十分で、抗菌力を改善し
ようと抗菌剤の添加量を比較的多くすると製品の透明性
を犠牲にしなければならなかった。
【0006】他方、有機化合物系抗菌剤はかび類に対し
ての抗菌力が天然物系抗菌剤、無機化合物系抗菌剤に比
べて優れるのが一般的である。しかし、フィルム等の基
体へそれらの抗菌剤を表面塗布又は充填した場合、抗菌
剤が低分子量であるためフィルム等の基体から揮発、脱
離、分離しやすく、抗菌性の持続性、人体への安全性等
の点で好ましくない。通常、抗菌剤をフィルム等に使用
する場合には、抗菌剤が水や有機溶媒等に溶解せず、フ
ィルム表面から遊離、脱離、剥離、脱落し難いことが抗
菌性の持続性及び人体への安全性等の点から好ましい。
【0007】よって、フィルム、繊維等の原料となるポ
リマー素材に有機化合物系抗菌剤をイオン結合又は共有
結合で結合した固定化抗菌剤も提案されている。特開昭
54−86584号公報には、カルボキシル基やスルホ
ン酸等の酸性基に4級アンモニウムイオンをイオン結合
してなる抗菌性基(抗菌性成分)を含有する高分子物質
を主体とした抗菌性材料が記載されている。
【0008】また、特開昭61−245378号公報に
は、アミジン基などの極性基や4級アンモニウムイオン
がイオン結合してなる抗菌性基(抗菌性成分)を含有す
るポリエステル共重合体からなる繊維が記載されてい
る。
【0009】一方、種々の含窒素化合物と同様、ホスホ
ニウム化合物が細菌類に対して広い活性スペクトルを持
った生物学的活性化学物質として知られている(特開昭
57−204286号公報、特開昭63−60903号
公報、特開昭62−114903号公報、特開平1−9
3596号公報、特開平2−240090号公報等)。
そこで、ホスホニウム塩を高分子物質に固定化して用途
の拡大を試みた発明が開示されている。
【0010】特開平4−266912号公報には、ホス
ホニウム塩系ビニル重合体の抗菌剤について記載され、
また、WO92/14365号公報にはビニルベンジル
ホスホニウム塩系ビニル重合体の抗菌剤が記載され、ま
た、特開平5−310820号公報には、酸性基及び該
酸性基にホスホニウムイオンがイオン結合してなる抗菌
性基(抗菌性成分)を含有する高分子物質を主体とする
抗菌材料が記載され、その実施例には、スルホイソフタ
ル酸のホスホニウム塩を用いたポリエステルが開示され
ている。しかし、これらの提案のホスホニウム塩を高分
子物質に固定化した抗菌材料は抗菌力及び抗菌力の持続
性が十分でない。特に、水や熱水に曝されると、その抗
菌力が著しく低下してしまう。また、この種の抗菌材料
は抗菌を目的とする対象物に抗菌材料の層(抗菌層)を
積層する形態(これによって対象物が抗菌製品となる)
で使用されることが多いが、対象物とともに抗菌層に成
形加工が施されると、抗菌層に亀裂が生じたり、抗菌層
が剥離するという不具合を発生し、抗菌製品の抗菌性が
低下したり、抗菌製品の外観不良をまねくといった問題
点がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記事情に鑑み、本発
明は、高い抗菌力を有し、かつ、抗菌力の持続性(特
に、熱水に曝されても低下しない抗菌力の持続性)及び
加工耐久性に優れた抗菌材料及び当該抗菌材料を用いた
抗菌フィルムを提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために、ホスホニウムスルホネート基(すな
わち、スルホネート基にホスホニウム塩がイオン結合し
た基)を有する高分子重合体が高い抗菌力を示し、当該
ホスホニウムスルホネート基を有する高分子重合体と、
親水性物質、硬化型樹脂等を組み合わせることで、抗菌
力が高く、抗菌力の持続性及び加工耐久性に優れた抗菌
材料が得られることを見出し、本発明を完成させた。す
なわち、本発明は以下の特徴を有している。 (1)下記一般式(I)で示されるホスホニウムスルホ
ネート基を有する高分子重合体を主たる構成成分とする
抗菌材料であって、当該抗菌材料の層を少なくとも片面
に設けたフィルムを金属薄板に積層し、該積層金属板を
95℃の蒸留水中に2時間浸漬した後、抗菌材料の層を
内側にしてJIS−Z−2248に規定の180度曲げ
加工を行った際の最小内側半径Tが1mm以下であるこ
とを特徴とする抗菌材料。
【0013】
【化4】
【0014】(式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれア
ルキル基またはアリール基で、少なくとも1つは炭素数
が10〜20のアルキル基である。) (2)ホスホニウムスルホネート基を有する高分子重合
体が、下記一般式(II)で示される化合物を酸成分と
して含有するポリエステル樹脂であり、当該ポリエステ
ル樹脂と親水性物質とを含んでなる上記(1)記載の抗
菌材料。
【0015】
【化5】
【0016】(式中、Aは芳香族基、R1、R2、R3
4はそれぞれアルキル基またはアリール基で、少なく
とも1つは炭素数が10〜20のアルキル基である。) (3)ポリエステル樹脂が一般式(II)の化合物を全
酸成分当たり1〜50モル%含有するものである上記
(2)記載の抗菌材料。 (4)親水性物質が親水性基を有するエステル形成が可
能な化合物であって、当該化合物をポリエステル樹脂に
共重合させている上記(2)または(3)記載の抗菌材
料。 (5)親水性基を有するエステル形成が可能な化合物が
ポリアルキレングリコール、または、スルホン酸基を有
するジカルボン酸若しくはグリコールのスルホン酸のア
ルカリ金属塩である上記(4)記載の抗菌材料。 (6)親水性物質が親水性基を有するビニル系モノマー
を少なくとも含むビニル系モノマーの重合体であって、
ポリエステル樹脂にグラフトした重合体である上記
(2)または(3)記載の抗菌材料。 (7)ホスホニウムスルホネート基を有する高分子重合
体が、下記一般式(III)で示されるビニル化合物の
重合体、または、下記一般式(III)で示されるビニ
ル化合物とホスホニウムスルホネート基をもたないビニ
ル系モノマーとの共重合体からなるホスホニウムスルホ
ネート基を有するビニル重合体であり、かつ、当該一般
式(III)で示されるビニル化合物及び/またはビニ
ル系モノマーの一部または全部を構成する化合物が親水
性基を有する化合物からなる上記(1)記載の抗菌材
料。
【0017】
【化6】
【0018】(式中、Xは単結合、または、エステル結
合、アミド結合を有していてもよい炭素数が1〜10の
2価の脂肪族若しくは芳香族基、R1、R2、R3、R
4は、それぞれアルキル基またはアリール基で、少なく
とも1つは炭素数が10〜20のアルキル基である。) (8)ホスホニウムスルホネート基を有するビニル重合
体は、他の高分子重合体の側鎖にグラフト結合して、当
該他の高分子重合体とともに抗菌材料中に含有されてい
る上記(7)記載の抗菌材料。 (9)さらに硬化型樹脂を含む上記(2)〜(8)のい
ずれかに記載の抗菌材料。 (10)硬化型樹脂が光重合性硬化型樹脂である上記
(9)記載の抗菌材料。 (11)光重合性硬化型樹脂が、光重合開始剤と光重合
性プレポリマーとを含む、または、さらに光重合性モノ
マーを含むものである上記(10)記載の抗菌材料。 (12)さらに不活性粒子を含む上記(2)〜(11)
の何れかに記載の抗菌材料。 (13)少なくとも一方の面が上記(1)〜(12)の
いずれかに記載の抗菌材料からなる抗菌フィルム。 (14)フィルムを95℃の蒸留水中に2時間浸漬した
後の上記抗菌材料からなる面の静菌活性値が2以上であ
る上記(13)記載の抗菌フィルム。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明において、「抗菌(性)」
とはかびや細菌等の微生物の生育を抑制する作用を有す
ることを意味し、「抗菌力」とは前記微生物の生育を抑
制する作用の強さ、すなわち、微生物の生育の抑止力を
意味する。
【0020】本発明の抗菌材料は、下記一般式(I)で
示されるホスホニウムスルホネート基を有する高分子重
合体を主たる構成成分とし、下記の熱水処理後曲げ試験
における最小内側半径Tが1mm以下を示すものであ
る。
【0021】
【化7】
【0022】(式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれア
ルキル基またはアリール基で、少なくとも1つは炭素数
が10〜20のアルキル基である。) 上記式(I)で示されるホスホニウムスルホネート基に
おけるR1、R2、R3、R4は、それぞれ、炭素数10〜
20のアルキル基である場合、直鎖状でも分枝状でもよ
く、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデ
シル基等が好ましい。また、R1、R2、R3、R4は、そ
れぞれ、炭素数10〜20のアルキル基でない場合、炭
素数1〜8のアルキル基、または、炭素数6〜8のアリ
ール基であるのが好ましい。当該炭素数1〜8のアルキ
ル基、または、炭素数6〜8のアリール基としては、エ
チル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル
基、フェニル基等が好ましく、特に好ましくはn−ブチ
ル基である。
【0023】また、R1、R2、R3、R4は全てが異なる
基であっても、2以上が同一の基であってもよいが、1
つが炭素数10〜20のアルキル基で、残りの3つがそ
れぞれ炭素数が1〜8のアルキル基、または、炭素数6
〜8のアリール基であるのが好ましく、特に好ましく
は、残りの3つが同一の炭素数が1〜8のアルキル基、
または、炭素数が6〜8のアリール基である。
【0024】当該ホスホニウムスルホネート基を有する
高分子重合体は、スルホン酸基またはその塩(ナトリウ
ム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)を有するモノマ
ーにホスホニウム塩又はホスホニウムヒドロキシドを反
応させ、当該モノマーを少なくとも一部に用いて重合体
を合成する、または、スルホン基またはその塩を有する
モノマーを少なくとも一部に用いて重合体を合成し、当
該重合体のスルホン酸基またはその塩にホスホニウム塩
またはホスホニウムヒドロキシドを反応させる、等によ
り得ることができる。
【0025】[熱水処理後曲げ試験]厚さ50μmのP
ETフィルムの片面に抗菌材料の塗膜(付着量12g/
2)を設け、塗膜を設けていない側のフィルム面を、
厚さ1mmのステンレス板に接着剤を介して貼り付けて
積層体を作成し、これから、幅が2cm、長さが10c
mの試験片を作製する。この試験片を95℃の蒸留水に
2時間浸漬した後、フィルム側を内側にしてJIS−Z
−2248の金属材料曲げ試験方法に記載の方法で、内
側半径Tの2倍の厚みに相当する挟み物の厚みを様々に
変えて180度曲げ試験を行い、曲げ試験後の塗膜にひ
び割れや剥離が発生しない最小内側半径Tを求める。
【0026】上記の最小内側半径Tは抗菌材料が良好な
抗菌力の持続性と加工耐久性を兼ね備えたものであるか
を示す指標として用いており、最小内側半径Tが1mm
以下を示す抗菌材料は、熱水に曝されても抗菌力は低下
せず、かつ、当該材料の層(抗菌層)を設けた抗菌製品
に曲げ等の成形加工が加わっても、抗菌層には抗菌製品
の外観不良や抗菌力の低下の原因となる亀裂や剥離等を
生じることがない。すなわち、抗菌材料の抗菌力の低下
は、抗菌材料が水や熱水に曝されることによる抗菌材料
の脆化が主な原因であり、このような抗菌材料の層は、
軽度の曲げ加工が加わるだけで、ひび割れ、剥離等が生
じ、上記の最小内側半径Tが1mmより大きくなる。一
方、熱水に曝されても脆化しにくい抗菌材料は、抗菌力
の持続性に優れるが、このような材料は概ね堅くて柔軟
性に欠けるものも多く(特に、過度に架橋したものは柔
軟性に欠ける)、このようなものも、曲げ加工によって
ひび割れや剥離が生じて上記の最小内側半径Tが1mm
より大きくなる。
【0027】本発明の抗菌材料は、ホスホニウムスルホ
ネート基を有する高分子重合体を親水性物質との共存下
に置くことが重要であり、少なくともこれらを含む組成
物、好ましくはさらに硬化型樹脂を配合した組成物によ
って構成される。ここで、「親水性物質」とは、水に溶
解、分散、膨潤する、または吸水もしくは吸湿する、ま
たは、保水性を示す物質を意味し、例えば、アミノ基、
アミド基、カルボキシル基またはそのアルカリ金属塩、
スルホン酸基またはそのアルカリ金属塩等の親水性基、
または、エーテル結合を有する物質であり、「組成物」
とは、ホスホニウムスルホネート基を有する高分子重合
体と、親水性物質、硬化型樹脂等が物理的に混合された
もの、及び/または、化学的に結合したものを意味し、
特に、ホスホニウムスルホネート基を有する高分子重合
体と親水性物質が化学的に結合した状態とは、ホスホニ
ウムスルホネート基を有する高分子重合体の主鎖に親水
性物質が共重合した状態(ホスホニウムスルホネート基
を有する高分子重合体が親水性物質(親水性基を有する
化合物)を含むモノマーを重合して得られたものも含
む)、及び/または、ホスホニウムスルホネート基を有
する高分子重合体の側鎖に親水性物質がグラフトした状
態である。
【0028】本発明の抗菌材料の一態様としては、ホス
ホニウムスルホネート基を有する高分子重合体として、
下記一般式(II)で示される化合物(ホスホニウムス
ルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸)を酸成分の
一部として含有するポリエステル樹脂(以下、ホスホニ
ウムスルホネート基含有ポリエステル樹脂と称す)を用
い、当該ポリエステル樹脂と親水性物質とを少なくとも
含む組成物とする態様(好ましくは後述する硬化型樹脂
をさらに含む)が挙げられる。
【0029】
【化8】
【0030】(式中、Aは芳香族環、R1、R2、R3
4は前記と同義である。) 当該一般式(II)で示される化合物のAで示される芳
香族環は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等であ
る。当該一般式(II)で示される化合物の具体例とし
ては、5−トリ−n−ブチルデシルホスホニウムスルホ
ネート)−イソフタル酸、5−(トリ−n−ブチルオク
タデシルホスホニウムスルホネート)−イソフタル酸、
5−(トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウムスル
ホネート)−イソフタル酸、5−(トリ−n−ブチルテ
トラデシルホスホニウムスルホネート)−イソフタル
酸、5−(トリ−n−ブチルドデシルホスホニウムスル
ホネート)−イソフタル酸、5−トリ−n−ブチルデシ
ルホスホニウムスルホネート)−2,7−ナフタレンジ
カルボン酸、5−(トリ−n−ブチルオクタデシルホス
ホニウムスルホネート)−2,7−ナフタレンジカルボ
ン酸、5−(トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウ
ムスルホネート)−2,7−ナフタレンジカルボン酸、
5−(トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウムスル
ホネート)−2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−
(トリ−n−ブチルドデシルホスホニウムスルホネー
ト)−2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−(トリエ
チルヘキサデシルホスホニウムスルホネート)−イソフ
タル酸、5−(トリイソプロピルヘキサデシルホスホニ
ウムスルホネート)−イソフタル酸、5−(n−ブチル
ジイソプロピルヘキサデシルホスホニウムスルホネー
ト)−イソフタル酸、等が挙げられる。
【0031】これらの化合物は、例えば、スルホ芳香族
ジカルボン酸またはそのナトリウム塩、カリウム塩、ア
ンモニウム塩等にトリ−n−ブチルヘキサデシルホスホ
ニウムブロマイド、トリ−n−ブチルテトラデシルホス
ホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルドデシルホスホ
ニウムブロマイド等のホスホニウム塩を反応させること
により得ることができる。このときの反応溶媒は特に限
定しないが、水が最も好ましい。反応によって生成する
ホスホニウムスルホネート基を有する芳香族ジカルボン
酸はトルエンで抽出することによって、原料のスルホネ
ート芳香族ジカルボン酸ナトリウム塩(カリウム塩、ア
ンモニウム塩)と分離することができる。また、スルホ
芳香族ジカルボン酸とホスホニウムヒドロキシドとの反
応によっても得ることができる。
【0032】当該ホスホニウムスルホネート基含有ポリ
エステル樹脂は、主たるエステル単位がジカルボン酸と
グリコールとによるエステル単位からなり、式(II)
の化合物以外のジカルボン酸成分としては、テレフタル
酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等
の芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカル
ボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4
−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン
酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、
ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸、エイコサンジカ
ルボン酸、ダイマー酸及びこれらの誘導体等の脂肪族ジ
カルボン酸、ピリジンカルボン酸及びその誘導体等の複
素環式ジカルボン酸が挙げられる。これらのうち、主
に、芳香族ジカルボン酸が用いられる。芳香族ジカルボ
ン酸以外のジカルボン酸としては1,4−シクロヘキサ
ンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が好まし
い。芳香族ジカルボン酸成分(芳香族ジカルボン酸の残
基)の樹脂中の含有量(式(II)の化合物の残基も含
む)は、全酸成分当たり通常70モル%以上であり、好
ましくは80モル%以上である。70モル%未満では、
抗菌材料(組成物)の強度(耐磨耗性)、耐熱性等が低
下する傾向を示す。
【0033】グリコール成分としては、エチレングリコ
ール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオー
ル、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−
ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ネオペンチ
ルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル
−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペ
ンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパン
ジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカン
ジオールなどのアルキレングリコール、1,2−シクロ
ヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェ
ノールAまたはFのアルキレンオキサイド付加物、ジエ
チレングリコール、ポリエチレングリコール、等が挙げ
られる。成形性、強度、耐磨耗性、耐熱性等の点から、
特に、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、
2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキ
サンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル
−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサン
ジメタノール等を用いるのが好ましい。
【0034】酸成分として、上記ジカルボン酸以外に、
p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、無水トリメ
リット酸、無水ピロメリット酸等の多価カルボン酸を含
有していてもよく、また、アルコール成分として、上記
グリコール以外に、トリメチロールエタン、トリメチロ
ールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の
多価アルコールを含有していてもよい。
【0035】当該ホスホニウムスルホネート基含有ポリ
エステル樹脂中の式(II)で示される化合物(の残
基)の含有量は、通常、全酸成分当たり1〜50モル
%、好ましくは1〜20モル%とする。1モル%未満で
は十分な抗菌性(高い抗菌力)が得難く、50モル%以
上では抗菌材料(組成物)の熱、水等に対する耐性が低
下し、特に抗菌材料の塗膜または成形による抗菌層が熱
によって外観変化を起こしたり、熱水に曝されることに
より脆化、割れ、剥がれ等を起こしやすくなり、十分な
抗菌力の持続性が得られなくなるおそれがある。
【0036】当該ホスホニウムスルホネート基含有ポリ
エステル樹脂は、例えば、ジカルボン酸とグリコールと
を直接反応させて得られたオリゴマーを重縮合する方法
(直接重合法)、ジカルボン酸のジメチルエステル体と
グリコールとをエステル交換反応した後、重縮合する方
法(エステル交換法)等、の一般的なポリエステル樹脂
の製造方法で製造できる。この際、式(II)で示され
る化合物は原料仕込み時に反応系に投入すればよい。ま
た、他の製造方法として、スルホ芳香族ジカルボン酸ま
たはそのナトリウム塩をモノマーとして用いてポリエス
テルを重合した後、該ポリエステルのスルホン酸基にホ
スホニウムヒドロキシドを反応させる、または該ポリエ
ステルのスルホン酸ナトリウム塩にホスホニウムブロマ
イド、ホスホニウムクロライドを反応させる方法等を用
いることもできる。
【0037】当該ホスホニウムスルホネート基含有ポリ
エステル樹脂には、樹脂の着色度の改善、ゲル発生度等
の樹脂の耐熱性向上の目的で、一般的なポリエステル樹
脂の重合触媒(酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、チ
タン化合物等)以外に酢酸マグネシウム、塩化マグネシ
ウム等のMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等の
Ca塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のMn塩、塩化
亜鉛、酢酸亜鉛等のZn塩、塩化コバルト、酢酸コバル
ト等のCo塩等を金属イオンとして300ppm以下、
及び/または、リン酸またはリン酸トリメチルエステ
ル、リン酸トリエチルエステル等のリン酸アルキルエス
テル、またはこれらの誘導体をP含有量で200ppm
以下含有させてもよい。特に、耐熱性、耐加水分解性等
の点で、P含有量と金属イオンの含有量とのモル比〔リ
ン酸、リン酸アルキルエステル、またはこれらの誘導体
によるP含有量(モル原子)/Mgイオン、Caイオ
ン、Mnイオン、Znイオン、Coイオン等の金属イオ
ンの含有量(モル原子)〕が、0.4〜1.0であるこ
とが好ましい。製造時のこれら重合触媒以外の金属イオ
ンや、リン酸、リン酸アルキルエステル及びこれらの誘
導体の添加時期は特に限定されないが、一般的には、重
合触媒以外の金属イオンは原料仕込み時、すなわちエス
テル交換前またはエステル化前に、リン酸類は重縮合反
応前に添加するのが好ましい。
【0038】当該ホスホニウムスルホネート基含有ポリ
エステル樹脂の極限粘度ηは、抗菌材料を塗膜にして使
用する場合、0.3〜1.0の範囲が好ましく、特に好
ましくは0.4〜0.8の範囲である。また、抗菌材料
を成形物にして使用する場合、0.4〜1.2の範囲が
好ましく、特に好ましくは0.4〜1.0である。ここ
で、極限粘度は溶媒がフェノール/テトラクロロエタン
(6/4)の混合溶媒、温度30℃での値である。
【0039】ホスホニウムスルホネート基含有ポリエス
テル樹脂と親水性物質とを含む組成物は、両者の化学的
性質、物理的性質により任意の方法で得ることができ、
例えば(A)両者を押出機等を用いて加熱溶融混合する
方法、(B)両者を適当な溶媒(例えば、水、水/アル
コール混合溶液、アセトン、メチルエチルケトン、シク
ロヘキサノンなどの有機溶媒)に混合溶解または分散し
た後、該溶媒を乾固する方法、(C)親水性物質をポリ
エステル樹脂の主鎖または側鎖に共重合またはグラフト
させる方法、等が用いられる。
【0040】上記(A)または(B)の方法で用いられ
る親水性物質の具体例としては、ポリビニルアルコー
ル、澱粉、ポリアクリル酸のホモポリマーまたは共重合
体、ポリメタクリル酸のホモポリマーまたは共重合体、
無水マレイン酸のホモポリマーまたは共重合体(例え
ば、無水マレイン酸・スチレン共重合体)、ポリビニル
スルホン酸またはその共重合体またはそれらのアルカリ
金属塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリ
コール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテ
トラメチレングリコール等のポリアルキレングリコー
ル、グリセリン、ポリグリセリン等のポリオールまたは
その重合体、水溶性変性セルロース(ヒドロキシエチル
セルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロ
ピルセルロース、カルボキシセルロースナトリウム、セ
ルロースナイトレートカルボキシルメチルエーテル等)
等が挙げられる。これらの内、特に、溶融混合、溶媒で
の混合のしやすさ、抗菌力及びその持続性の向上効果の
点でポリアルキレングリコールが好ましく、特にポリエ
チレングリコールが好ましい。
【0041】一方、上記(C)の方法で行う場合のポリ
エステル樹脂に共重合させる親水性物質としては、親水
性基(アミノ基、アミド基、カルボキシル基もしくはそ
のアルカリ金属塩、または、スルホン酸基もしくはその
アルカリ金属塩等)、及び/または、エーテル結合を有
し、かつ、エステル形成可能な化合物が用いられる。
【0042】具体的には、5−スルホイソフタル酸、4
−スルホ−2,7−ナフタレンジカルボン酸および5−
(4−スルフォフェノキシ)イソフタル酸等のスルホン
酸基を有するジカルボン酸のスルホン酸アルカリ金属塩
(例えばNa塩)、2−スルホ−1,4−ブタンジオー
ル、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキサン
ジオール等のスルホン酸基を有するグリコールのスルホ
ン酸アルカリ金属塩(たとえばNa塩)、ポリエチレン
グリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン
・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコー
ル等が挙げられる。これらは、ポリエステル樹脂の製造
工程の原料仕込み時及び/または中間段階で反応系に添
加する。
【0043】また、上記(C)の方法で行う場合のポリ
エステル樹脂にグラフトさせる親水性物質としては、親
水基を有するビニル系モノマーを少なくとも含むビニル
系モノマーの重合体(親水性基を有するビニル系モノマ
ーの単独重合体、または、親水性基を有するビニル系モ
ノマーと親水性基を持たないビニル系モノマーとの共重
合体)が用いられる。
【0044】上記親水性基を有するビニル系モノマーと
しては、カルボキシル基もしくはそのアルカリ金属塩、
アルコキシカルボニル基、水酸基、スルホン酸基、アミ
ド基等の親水性基を有するビニル系モノマー、または反
応により親水性基に変化する基(酸無水物基、グリシジ
ル基、クロル基等)を含有するビニル系モノマー等が挙
げられ、特に、カルボキシル基もしくはそのアルカリ金
属塩、または、アルコキシカルボニル基を有するものが
好ましい。具体的には、アクリル酸およびそのアルカリ
金属塩、メタクリル酸およびそのアルカリ金属塩、メチ
ルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルア
クリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルア
クリレート、t−ブチルアクリレート等のアルキルアク
リレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレー
ト、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレ
ート等のアルキルメタクリレート、2−ヒドロキシエチ
ルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート
等のヒドロキシ含有(メタ)アクリル酸系モノマー、ア
クリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチル
メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N
−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルア
クリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、
N、Nジメチロールアクリルアミド、N−フェニルアク
リルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー、グ
リシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の
エポキシ含有(メタ)アクリル酸系モノマー等が挙げら
れる。これら以外には、アリルグリシジルエーテル等の
エポキシ基含有モノマー、スチレンスルホン酸、ビニル
スルホン酸及びそれらの塩等のスルホン酸基またはその
塩を含有するモノマー、クロトン酸、イタコン酸、マレ
イン酸、フマル酸及びそれらの塩等のカルボキシル基ま
たはその塩を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水
イタコン酸等の酸無水物モノマー等が挙げられる。これ
らは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0045】親水基をもたないビニル系モノマーとして
は、例えば、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネ
ート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチル
エーテル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩
化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられ
る。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよ
い。
【0046】重合体中の親水性基を有するモノマーと親
水性基をもたないビニル系モノマーとの組成比率は重合
体の分子量によっても異なるが、概ね、モル比(親水性
基を有するモノマー/親水性基をもたないビニル系モノ
マー)で30/70〜100/0の範囲が好ましい。
【0047】親水性基を含有するビニル系モノマーを少
なくとも含むビニル系モノマーの重合体をポリエステル
樹脂にグラフトさせる方法としては公知のグラフト重合
法を用いることができる。その代表例としては、グラフ
トされる側のポリマー鎖(ホスホニウムスルホネート基
含有ポリエステル樹脂)に例えば、光、熱、放射線等に
よってラジカルを発生させてからビニル系モノマーをグ
ラフト重合させるラジカル重合法、グラフトされる側の
ポリマー鎖に例えばAlCl3、TiO4等の触媒を用い
てカチオンを発生させてからビニル系モノマーをグラフ
ト重合させるカチオン重合法、または、グラフトされる
側のポリマー鎖に例えばNa、Li等を用いてアニオン
を発生させてからビニル系モノマーをグラフト重合させ
るアニオン重合法等が挙げられる。
【0048】また、あらかじめグラフトされる側のポリ
マー鎖(ホスホニウムスルホネート基含有ポリエステル
樹脂)に重合性不飽和二重結合を導入し、これにビニル
系モノマーを反応させる方法を用いることもできる。こ
の場合、グラフトされる側のポリマー鎖に重合性不飽和
二重結合を導入するために用いるモノマーとしては、フ
マル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無
水マレイン酸、2、5−ノルボルネンジカルボン酸等を
挙げることができ、これらのうち最も好ましいものはフ
マル酸、マレイン酸、及び2、5−ノルボルネンジカル
ボン酸である。
【0049】また、グラフトされる側のポリマー鎖に所
定の官能基を予め結合させ、該官能基と反応する末端基
を有する枝ポリマーを反応させる方法を用いることもで
きる。この場合、グラフトされる側のポリマー鎖に結合
した官能基と、該官能基と反応する枝ポリマーの末端基
の組み合わせとしては、水素供与基(−OH基、−SH
基、−NH2基、−COOH基、−CONH2基等)と、
水素受容基(−N=C=O基、−CH=C=O基、下記
式(IV)の基、下記式(V)の基等)の組み合わせが
挙げられる。
【0050】
【化9】
【0051】グラフトされる側のポリマー鎖の官能基が
水素供与基である場合、枝ポリマーの末端基を水素受容
基とし、グラフトされる側のポリマー鎖の官能基が水素
受容基である場合、枝ポリマーの末端基を水素供与基と
する。
【0052】親水性物質(ポリマーの場合)はポリエス
テルとの相溶性の点から数平均分子量200〜4000
0のものを用いるのが好ましい。例えば、ポリエチレン
グリコールの場合は数平均分子量が200〜3000
0、好ましくは1000〜25000である。
【0053】親水性物質(共重合体の場合は、共重合体
中にしめる親水性物質をさす)の配合量はホスホニウム
スルホネート基含有ポリエステル樹脂に対して0.1〜
20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ま
しくは1〜5重量%である。0.1重量%以下では抗菌
力(抗菌活性)及びその持続性の向上効果が不十分であ
り、20重量%を超えると、抗菌材料の耐熱性、耐候
性、機械的特性(強度、硬度)等が低下する傾向を示
す。
【0054】ホスホニウムスルホネート基含有ポリエス
テル樹脂とこれにグラフトする重合体(グラフトポリマ
ー)との重量比(ホスホニウムスルホネート基含有ポリ
エステル樹脂/グラフトポリマー)は、通常、95/5
〜40/60の範囲、好ましくは93/7〜55/4
5、より好ましくは90/10〜60/40の範囲であ
る。ホスホニウムスルホネート基含有ポリエステル樹脂
の重量比が40%未満であると、グラフト重合性ビニル
系モノマーが完全に反応しないまま残るため、抗菌材料
の加工性(成膜性、成形性等)、耐熱性、耐水性、加工
耐久性が低下する傾向を示し、ホスホニウムスルホネー
ト基含有ポリエステル樹脂の重量比が95%を超えると
きは、抗菌力(抗菌活性)及びその持続性の向上効果が
不十分となる。
【0055】ホスホニウムスルホネート基含有ポリエス
テル樹脂と親水性物質とを混合して得られた組成物と、
ホスホニウムスルホネート基含有ポリエステル樹脂と親
水性物質を化学的に結合させて得られた組成物との間で
抗菌活性の差はほとんどなく、両者とも高い抗菌力と優
れた抗菌力の持続性が得られる。なお、ホスホニウムス
ルホネート基含有ポリエステル樹脂に親水性物質を共重
合させる態様とした場合に、ホスホニウムスルホネート
基含有ポリエステル樹脂と親水性物質の相溶性が良好と
なり、かかる組成物により塗膜を形成した場合に、塗膜
の外観、貯蔵安定性、物性等がより好ましいものとな
る。
【0056】本発明の抗菌材料の他の態様として、ホス
ホニウムスルホネート基を有する高分子重合体として、
下記の一般式(III)で示される化合物(ホスホニウ
ムスルホネート基を有するビニル化合物)の重合体、ま
たは、下記一般式(III)で示される化合物とホスホ
ニウムスルホネート基をもたないビニル系モノマーとの
共重合体(すなわち、ホスホニウムスルホネート基を有
するビニル重合体)を使用し、親水性物質をかかる一般
式(III)で示される化合物及び/またはホスホニウ
ムスルホネート基を有するビニル化合物の一部または全
部に用いる親水性基を有する化合物(モノマー)にて構
成する(好ましくは後述する硬化型樹脂を更に配合す
る)態様が挙げられる。
【0057】
【化10】
【0058】(式中、Xは単結合、または、エステル結
合若しくはアミド結合を有していてもよい炭素数が1〜
10の2価の脂肪族若しくは芳香族基である。R1
2、R 3、R4は、前記と同義である。) 一般式(III)の化合物の具体例としては、ビニルス
ルホン酸のホスホニウム塩;アリルスルホン酸等のビニ
ルアルキルスルホン酸のホスホニウム塩;スチレンスル
ホン酸、ビニルベンジルスルホン酸等のアリーレン基を
有するスルホン酸のホスホニウム塩;アクリルアミド−
ter−ブチルスルホン酸(下記式(a))、アクリル
アミドフェニレンスルホン酸(下記式(b))等のアミ
ド結合を有するスルホン酸のホスホニウム塩;4−スル
ホ安息香酸ビニル(下記式(c))、スルホ酢酸ビニル
(下記式(d))等のエステル結合を有するビニルアル
キルスルホン酸のホスホニウム塩;等が挙げられる。
【0059】
【化11】
【0060】
【化12】
【0061】
【化13】
【0062】
【化14】
【0063】ホスホニウムスルホネート基を持たないビ
ニル系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレ
ン、ブチレン、イソブチレン、ジイソブチレン、塩化ビ
ニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ビニルアルコー
ル、ビニル酢酸、N−ビニル−2−ピロリドン、スチレ
ン、ビニルトルエン、桂皮酸、ビニルチオフェン、ビニ
ルピリジン、アクリル酸、メチルアクリレート、エチル
アクリレート、プロピルアクリレート、フェニルアクリ
レート、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸ヒ
ドロキシ酸テトラヒドロフルフリル、2−ヒドロキシエ
チルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレー
ト、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アク
リロイルオキシエチルフタル酸、トリメチルアミンアク
リレート、トリエチルアミンアクリレート、メタクリル
酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n
−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリ
レート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレ
ート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペ
ンテニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタク
リレート、トリエタノールアミンメタクリレート、2−
メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−ヒドロキシ
エチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタク
リレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、フマ
ル酸、マレイン酸およびその金属塩、イタコン酸および
これらのエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニ
トリル、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニ
ルトルエンスルホン酸、スルホエチルメタクリレート、
スルホプロピルメタクリレート、2−アクリルアミド−
2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミド、メタ
クリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N、N−ジ
メチルアクリルアミド、無水マレイン酸等が挙げられ、
これらは単体で、または、2種以上を併用して用いても
よい。
【0064】当該ホスホニウムスルホネート基を有する
ビニル重合体における一般式(III)の化合物の割合
は0.1〜100モル%、好ましくは1〜100モル%
である。重合体の重合度は一般に10〜1000、好ま
しくは100〜1000である。特に、抗菌材料を成形
物にして使用する場合、400〜1000の範囲である
ことが好ましい。一般式(I)の化合物とホスホニウム
スルホネート基を持たないビニル系モノマーとの共重合
体である場合の重合形態はランダム、ブロック、グラフ
トのいずれでもよい。かかるホスホニウムスルホネート
基を有するビニル重合体を得る方法としては公知の重合
法を用いることができる。例えばラジカル重合触媒を用
いた溶液重合の場合、その重合触媒としては、過酸化水
素、過酸化ベンゾイル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ
イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパ
ーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシジイソブチ
レート、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物、アゾ
ビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレリアル酸、
アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2
´−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩等のアゾ
化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫
酸塩、第二セリウム塩等のラジカル重合触媒や、これら
と亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、L−ア
スコルビン酸、第一鉄塩等の還元剤等との組み合せによ
るレドックス系開始剤が用いられる。重合系溶媒として
は、例えば、水、メタノール、エタノール、テトラヒド
ロフラン、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、
ジメチルスルホキシド、n−ヘキサン、シクロヘキサン
等があげられる。これらは1種または2種以上を使用す
ることができる。
【0065】一般式(III)の化合物、及び/また
は、ホスホニウムスルホネート基を持たないビニル系モ
ノマーの一部または全部に用いる親水性基を有する化合
物における親水性基とはアクリルアミド基、アクリル酸
エステル基等であり、一般式(III)のビニル化合物
における親水性基を有する化合物の具体例としては、ア
クリルアミド−t−ブチルスルホン酸、アクリルアミド
フェニレンスルホン酸等のアミド結合を有するスルホン
酸のホスホニウム塩、4−スルホ安息香酸ビニル、スル
ホ酢酸ビニル等のエステル結合を有するビニルアルキル
スルホン酸のホスホニウム塩が挙げられる。また、ホス
ホニウムスルホネート基をもたないビニル系モノマーに
おける親水性基を有する化合物の具体例としては、(メ
タ)アクリル酸およびそのエステル誘導体等があげられ
る。ホスホニウムスルホネート基を有するビニル重合体
中の親水性基を有する化合物の割合は1モル%以上が好
ましく、特に好ましくは5モル%以上である。
【0066】当該態様においては、抗菌材料中の樹脂成
分(後述の硬化型樹脂を除く)をホスホニウムスルホネ
ート基を有するビニル重合体のみで構成してもよいが、
当該ホスホニウムスルホネート基を有するビニル重合体
を他の高分子重合体と混合、または、他の高分子重合体
の側鎖にグラフトして用いるのが好ましく、他の高分子
重合体の側鎖にグラフトして用いるのが特に好ましい。
当該ホスホニウムスルホネート基を有するビニル重合体
を他の高分子重合体の側鎖にグラフトして用いると、抗
菌材料中でのホスホニウムスルホネート基を有するビニ
ル重合体の分子運動の自由度が大きくなり、抗菌材料の
抗菌力がより一層高められる効果が得られる。他の高分
子重合体としては、抗菌材料の塗膜適性、成形性等を考
慮して選択され、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂
等が好ましいが、特にポリエステル系樹脂が好ましい。
ホスホニウムスルホネート基を有するビニル重合体を他
の高分子重合体の側鎖にグラフトさせる方法は、先述の
ホスホニウムスルホネート基含有ポリエステル樹脂に親
水性基を含有するビニル系モノマーを少なくとも含むビ
ニル系モノマーの重合体をグラフトさせる場合と同様
に、公知のグラフト重合法、ポリマー間の結合反応によ
る方法(グラフトされる側のポリマー鎖に結合させた官
能基にグラフトするポリマー鎖の末端基を反応させる方
法)を用いることができる。
【0067】他の高分子重合体の重合度は通常10〜1
000、好ましくは100〜10000であり、ポリエ
ステルの場合、極限粘度は通常0.3〜1.0、好まし
くは0.4〜0.8である。また、他の高分子重合体の
使用量は、これとホスホニウムスルホネート基を有する
ビニル重合体との合計当たりの一般式(III)の化合
物(ホスホニウムスルホネート基を有するビニル化合
物)の量が0.5重量%未満とならない(好ましくは1
〜20重量%となる)量とする。
【0068】本発明の抗菌材料において、親水性物質と
共にさらに以下に例示する硬化型樹脂を配合した組成物
にすることより、さらに抗菌力の持続性及び加工耐久性
を向上させることができる。これは、硬化型樹脂により
組成物が三次元架橋構造となることにより、水、熱水等
に対して抗菌材料がより脆化しにくいものとなり、さら
に、抗菌材料の変形に対する耐性もより高まるものと考
えられる。
【0069】かかる硬化型樹脂は、熱硬化型樹脂と光重
合性硬化型樹脂のいずれも使用可能であるが、樹脂設計
の自由度、硬化速度、作業環境性、また、硬化時の加熱
による親水性物質が保有する水分の蒸発防止等の点か
ら、光重合性硬化型樹脂を用いるのが好ましい。
【0070】光重合性硬化型樹脂は少なくとも電子線あ
るいは紫外線照射によって硬化される、いわゆる、電離
放射線硬化型樹脂を意味している。具体的には、光重合
開始剤、光重合性プレポリマーを必須成分とし、必要に
応じて光重合性モノマー、光増感剤、レベリング剤等の
添加剤、溶剤等を含有するものである。
【0071】光重合性プレポリマーは分子骨格中に導入
された反応基が電離線照射されることによりラジカル重
合またはイオン重合する。ラジカル重合性プレポリマー
としては例えばアクリロイル基を有するアクリル系プレ
ポリマーが、イオン重合性プレポリマーとしては例えば
エポキシ基を含有するエポキシ系プレポリマーが挙げら
れる。アクリル系プレポリマーは1分子中に2個以上の
アクリロイル基を有するものであり、具体的には、ウレ
タンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステ
ルアクリレート等が挙げられる。これらは官能基数が多
いほど速硬化性があり硬度も高くなる。エポキシ系プレ
ポリマーの具体例としては、ビスフェノールA型、水添
ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノール
ノボラック型、脂環型等のエポキシオリゴマーが挙げら
れる。エポキシ系プレポリマーはエポキシ基がカチオン
的に開環重合するので熱的因子が硬化反応に影響する。
このため、電離線照射時あるいは照射後50℃〜60℃
程度に加温することでさらに硬化反応性を高めることが
できる。光重合性プレポリマーの配合量はホスホニウム
スルホネート基を有する高分子重合体および親水性物質
の合計量(ホスホニウムスルホネート基を有するビニル
重合体を他の高分子重合体の側鎖にグラフトして用いる
場合はさらに他の高分子重合体の量を併せた合計量)に
対して通常、5〜60重量%、好ましくは15〜50重
量%である。
【0072】光重合開始剤は、ラジカル重合性プレポリ
マーとしてラジカル重合性プレポリマーを用いる場合、
アクリロイル基の反応を短時間で開始させ、反応を促進
する触媒的な作用を示す。かかる光重合開始剤の種類と
しては、自己開裂することによりラジカル重合させるも
の、水素を引き抜くことによりラジカル重合させるもの
がある。前者は、例えば、ベンゾインエーテル類、ジア
ルコキシアセトフェノン類、ヒドロキシアセトフェノン
類、モルホリノアセトフェノン類等が挙げられ、後者
は、例えば、ベンゾフェノン類、環状ベンゾフェノン
類、ベンジル等が挙げられる。これらの1種あるいは2
種以上が使用できる。
【0073】光重合性プレポリマーとしてイオン重合性
プレポリマーを用いる場合は、光重合開始剤は電離線エ
ネルギーを吸収してカチオン重合を開始させる触媒成分
を放出する化合物であり、かかる光重合開始剤として
は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳
香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられ
る。
【0074】光重合開始剤の配合量は光重合性硬化型樹
脂の樹脂固形分に対して通常1〜10重量%、好ましく
は2〜5重量%である。
【0075】光重合性モノマーは、特に、ラジカル重合
性プレポリマーを用いる場合に、高粘度の光重合性プレ
ポリマーを希釈し、粘度を低下させ作業性を向上させる
為に、また、架橋剤として塗膜強度を付与するために有
効である。ラジカル重合型の光重合性モノマーとして
は、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシ
エチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー、エチ
レングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコー
ルジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリ
レート等の2官能性アクリルモノマー、トリメチロール
プロパントリアクリレート等の多官能アクリルモノマー
等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用され
る。光重合性モノマーを用いる場合は、その配合量は1
〜40重量%である。
【0076】本発明の抗菌材料は、これによる塗膜また
は成形物の滑り性、耐摩耗性、耐ブロッキング性、隠蔽
性等の物理的特性の向上を目的として、さらには、表面
に凹凸を形成し、艶消し外観を付与することを目的とし
て、組成物中にさらに不活性粒子を配合することもでき
る。
【0077】本発明における不活性粒子とは、ホスホニ
ウムスルホネート基を有する高分子重合体、親水性物
質、及び硬化型樹脂と化学反応を起こさず、かつ抗菌活
性を有しない不活性な無機または有機の粒子をさす。無
機粒子としては、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸
マグネシウム、リン酸カルシウム、アパタイト、硫酸バ
リウム(BaSO4)、フッ化カルシウム(CaF2)、
タルク、マイカ、カオリン、酸化珪素(SiO2)、ア
ルミナ(Al23)、二酸化チタン、酸化ジルコニウム
(ZrO2)、酸化鉄(Fe23)、アルミナ/シリカ
複合酸化物、ホウ酸アルミニウムなどが挙げられる。有
機粒子としては、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エス
テル、ポリアクリル酸エステル、ベンゾグアナミン・ホ
ルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮
合物、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド
縮合物、それらの共重合体、あるいはそれらの架橋体な
どが挙げられる。これらの無機粒子又は有機粒子は単一
で使用してもよいし、2種類以上混合してもよい。
【0078】また、前記粒子の平均粒径は、0.1〜1
5μmが好ましく、0.3〜10μmが特に好ましい。
平均粒径が0.1μm未満では、表面光沢度を低下させ
るために多量の粒子を添加しなければならず、相対的に
抗菌材料中の抗菌成分量の低下を生じやすい。その結
果、本発明の目的とする充分な抗菌性が得られない場合
がある。また、平均粒径が15μmを超える場合には、
抗菌材料からなる塗膜や成形物にクラックを生じやすく
なり、また、優美な外観を得ることができなくなる。さ
らに、樹脂成分との密着性や濡れ性、分散性を改善する
ために、シラン系カップリング剤、チタネート系カップ
リング剤、アルミニウム系のカップリング剤等を用いて
粒子表面を改質することもできる。
【0079】本発明の抗菌材料には、必要に応じて本発
明の効果を著しく損なわない範囲で、少量の混和可能な
他の樹脂や、着色剤、酸化防止剤、金属石鹸や脂肪酸ア
ミド等に代表される中和剤、滑剤、アンチブロッキング
剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光増白剤
等の添加剤、あるいは有機系顔料、無機系顔料等の着色
剤を直接または樹脂等のマスターバッチとして添加する
こともできる。
【0080】本発明の抗菌材料は塗膜または各種の成形
物の形態にして使用できる。本発明の抗菌材料による塗
膜は、ホスホニウムスルホネート基を有する高分子重合
体に、親水性物質、硬化性樹脂等を加え、必要に応じて
添加される添加剤とともに、水、水/アルコール混合溶
媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン
等の有機溶媒等に溶解ないし分散させて塗料を調製した
後、バーコーティング、ブレードコーティング、グラビ
アコーティング、スピンコーティング、スプレコーティ
ング、ディップコーティング等の通常の塗布方法で抗菌
性を付与すべき対象物に塗布することにより形成され
る。
【0081】塗布量は、抗菌性を付与すべき対象物の種
類によっても異なるが、概ね、抗菌性を付与すべき対象
物の表面における抗菌材料の付着量で0.1〜10g/
2となるようにする。付着量が0.1g/m2未満の場
合は満足できる抗菌活性が得られ難く、10g/m2
越えると塗膜の引っ張り強度、曲げ強度が弱くなる傾向
を示す。
【0082】本発明の抗菌材料の成形物は、任意の公知
の成形方法、例えば、押し出し成形、射出成形、圧縮成
形等により、任意の形状の成形物(例えば、フィルム、
シート、繊維等)とする。
【0083】本発明の抗菌材料による層を基材(フィル
ム)に積層して抗菌フィルムを得る場合、本発明の抗菌
材料の塗膜を基材(フィルム)の面に設ける、または、
本発明の抗菌材料を、基材(フィルム)上に、層状に直
接押出し成形する方法、基材(フィルム)となる他の樹
脂とともに共押出しする方法がある。
【0084】抗菌材料が硬化型樹脂を含む態様である場
合、塗膜または成形物を得る工程の最終段階で、加熱、
または、電子線もしくは紫外線等の電離放射線の照射を
行って、硬化型樹脂を硬化させる。光重合性硬化型樹脂
の場合、電子線の照射は、走査型あるいはカーテン型の
電子線加速器を用い、加速電圧1000keV以下、好
ましくは100〜300keVのエネルギーを有し、1
00nm以下の波長領域の電子線を照射するのが好まし
い。紫外線の照射は、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧
水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用
い、100〜400nm、好ましくは200〜400n
mの波長領域で20〜1500mJ/cm2の積算光量
の紫外線を照射するのが好ましい。
【0085】抗菌剤料の塗膜による層をベースフィルム
に積層して抗菌フィルムを得る場合、ベースとなるフィ
ルムの抗菌性を付与すべき少なくとも一方の面に塗膜を
形成する。ベースフィルムとしてはポリエチレンテレフ
タレート(PET)等のポリエステルフィルム、ナイロ
ン等のポリアミドフィルム、ポリエチレン、ポリプロピ
レン等のポリオレフィンフィルム、塩化ビニル樹脂フィ
ルム、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂フィ
ルム、ポリカーボネートフィルム等の種々の樹脂フィル
ムを用いることができる。これら樹脂フィルムは未延伸
でも一軸または二軸の延伸処理が施されたものであって
もよい。また、同一または異なる材質のフィルムを2層
以上積層したラミネートフィルムとして用いてもよい。
ラミネートフィルムとする場合、アルミ等の金属フィル
ムや紙を少なくとも一層に用いてもよい。本発明の抗菌
材料の層を少なくとも片面に積層して得られる抗菌フィ
ルムは金属板等の基材に更にラミネートして用いること
ができ、かかるラミネート体(抗菌フィルムを含む積層
金属板)は、例えば、サッシやドアノブ等の建築材料、
流し台の外枠、キャビネット、家電製品等に利用され
る。この種のラミネート体は、種々の成形加工が施され
るものであり、抗菌材料の層には、当該成形加工によっ
て抗菌性の低下や外観不良の原因となる剥離やひび割れ
等が発生しないことが求められるが、本発明の抗菌材料
による層は優れた加工耐久性を示し、折り曲げ等の変形
を受けても剥離やひび割れ等を生じない。
【0086】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例を用いて更
に具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって
限定されるものではない。
【0087】以下の実施例及び比較例における樹脂の物
性(極限粘度、ガラス転移点、5%重量減少温度)及び
抗菌フィルムの諸特性(ヘーズ、透過率、グロス、色
差、平均表面粗さ等)の測定は以下の方法で行った。 (1)極限粘度η 溶媒としてフェノール/テトラクロロエタン(6/4)
混合溶媒を用い、温度30℃で測定した。 (2)ガラス転移点(Tg) MAC SCIENCE社製DSC 3100Sを用い
て以下の条件で測定した。重量:5mg、昇温速度:2
0℃/分、測定温度範囲:30〜300℃、測定雰囲
気:アルゴン。 (3)5%重量減少温度(TD5) MAC SCIENCE社製TG−DTA 2000S
を用いて以下の条件で測定した。重量:10mg、昇温
速度:20℃/分、測定温度範囲:30〜400℃、測
定雰囲気:アルゴン。 (4)ヘーズ(濁度)、透過率 日本電色工業(株)製NDH1001DPを用いて測定
した。 (5)色差 日本電色工業(株)製Z−300Aを用いて測定した。 (6)グロス(光沢度) 日本電色工業(株)製VGS−1001DPを用いてJ
IS−Z−8741(ASTM−D523)に準拠し
て、角度60度で測定した。 (7)平均表面粗さ(Ra) JIS−B−0601に準拠し、(株)東京精密製サー
フコム304を用い、触針の測定力が4mN、カットオ
フが0.08mm、測定長が0.8mmの条件で、温度
23℃、相対湿度50%の環境下で測定を行った。
【0088】(ポリエステル樹脂の製造例1)撹拌機、
温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチー
ル製オートクレーブにジメチルテレフタレート485重
量部、ジメチルイソフタレート388重量部、5−(ト
リ−n−ブチルドデシルホスホニウムスルホネート)−
イソフタル酸ジメチル161重量部、エチレングリコー
ル443.3重量部、ネオペンチルグリコール400.
4重量部、及びテトラ−n−ブチルチタネート0.52
重量部を仕込み、160〜220℃まで4時間かけてエ
ステル交換反応を行った。ついでフマル酸29重量部を
加え、200〜220℃まで1時間かけて昇温し、反応
系を徐々に減圧したのち、0.2mmHgの減圧下で1
時間30分反応させ、極限粘度η=0.58のポリエス
テル(A−1)を得た。このポリエステルのガラス転移
点は58℃、5%重量減少温度は380℃であった。ポ
リエステルの組成は以下に示す通りである。
【0089】ジカルボン酸成分 テレフタル酸の残基 50モル% イソフタル酸の残基 40モル% C12ホスホニウム塩の残基 5モル% フマル酸の残基 5モル% ジオール成分 エチレングリコールの残基 65モル% ネオペンチルグリコールの残基 35モル% 注)C12ホスホニウム塩:5−(トリ−n−ブチルド
デシルホスホニウムスルホネート)−イソフタル酸
【0090】グラフト重合体の製造例1 撹拌機、温度計、環流装置と定量滴下装置を備えた反応
器にポリエステル(A−1)300重量部、メチルエチ
ルケトン360重量部、イソプロピルアルコール120
重量部を入れ、加熱・撹拌し環流状態で樹脂を溶解し
た。樹脂が完全に溶解した後、アクリル酸65重量部、
アクリル酸エチル35重量部、ブチルヒドロキシアニソ
ール5重量部の混合物と、アゾビスイソブチロニトリル
6重量部をメチルエチルケトン90重量部とイソプロピ
ルアルコール30重量部の混合液に溶解した溶液とを
1.5時間かけてポリエステル溶液中にそれぞれ滴下
し、さらに3時間反応させ、グラフト重合体溶液(B−
1)を得た。グラフト重合体(B−1)のガラス転移点
は50℃、5%重量減少温度は280℃であった。
【0091】実施例1 グラフト重合体溶液(B−1)の固形分100重量部に
対してアクリル系光重合性プレポリマー(C−1:ビー
ムセット700;荒川化学(株)製)35重量部、光重
合開始剤(D−1:イルガキュアー907;チバガイギ
ー(株)製)2.5重量部を添加した後、メチルエチル
ケトンにて全固形分濃度が17重量%となるように希釈
してコーティング液とした。ついで厚さ50μmの2軸
延伸ポリエステルフィルム( 東洋紡ポリエステルフィ
ルム;東洋紡績(株)製)の片面にバーコーターにて塗
布量が12g/m2となるようにコーティング液を塗布
した後、熱風オーブン中で70℃で3分間乾燥し、その
後紫外線照射装置にて800mJ/cm2の積算照射光
量の紫外線を照射して硬化させ、表層に硬化塗膜(固形
分付着量:2.0g/m2)を有する積層フィルムを形
成した。
【0092】(ポリエステル樹脂の製造例2)撹拌機、
温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチー
ル製オートクレーブにジメチルテレフタレート436.
5重量部、ジメチルイソフタレート436.5重量部、
5−(トリ−n−ブチルドデシルホスホニウムスルホネ
ート)−イソフタル酸ジメチル322重量部、エチレン
グリコール682重量部、及び酢酸亜鉛0.55重量部
を仕込み、160〜220℃まで昇温して生成するメタ
ノールを系外に留去しながら4時間かけてエステル交換
反応を行った。エステル交換反応終了後、250℃にて
分子量1000のポリエチレングリコール(ナカライ
(株)製)を55重量部、さらに酸化アンチモン0.4
4重量部及びトリメチルホスフェート0.28重量部を
加えて15分間撹拌し、反応系を徐々に減圧したのち、
0.2mmHgの減圧下で1時間30分反応させ、極限
粘度η=0.55のポリエステル(A−2)を得た。ポ
リエステル(A−2)の組成は以下に示すとおりであ
る。
【0093】ジカルボン酸成分 テレフタル酸の残基 45モル% イソフタル酸の残基 45モル% C12ホスホニウム塩の残基 10モル% ジオール成分 エチレングリコールの残基 98.9モル% ポリエチレングリコールの残基 1.1モル%
【0094】実施例2 ポリエステル(A−2)固形分100重量部に対して、
光重合開始剤を含有した1液型のエポキシ系光重合性プ
レポリマー(C−2:アデカKR566;旭電化(株)
製)33重量部を添加した後、メチルエチルケトンにて
全固形分濃度が17重量%となるように希釈してコーテ
ィング液とした。ついで厚さ50μmの2軸延伸ポリエ
ステルフィルム( 東洋紡ポリエステルフィルム;東洋
紡績(株)製)の片面にバーコーターにて塗布量が12
g/m2となるようにコーティング液を塗布した後、熱
風オーブン中で70℃で3分間乾燥し、その後紫外線照
射装置にて900mJ/cm2の積算照射光量の紫外線
を照射して硬化させ、表層に硬化塗膜(固形分付着量:
2.0g/m2)を有する積層フィルムを形成した。
【0095】(ポリエステル樹脂の製造例3)撹拌機、
温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチー
ル製オートクレーブにジメチルテレフタレート436.
5重量部、ジメチルイソフタレート388重量部、5−
(トリ−n−ブチルドデシルホスホニウムスルホネー
ト)−イソフタル酸ジメチル322重量部、5−(ナト
リウムスルホネート)−イソフタル酸ジメチル74重量
部、エチレングリコール443.3重量部、ネオペンチ
ルグリコール400.4重量部及び酢酸亜鉛0.55重
量部を仕込み、160〜220℃まで昇温して生成する
メタノールを系外に留去しながら4時間かけてエステル
交換反応を行った。エステル交換反応終了後、アンチモ
ン0.44重量部及びトリメチルホスフェート0.28
重量部を加えて15分撹拌し、反応系を徐々に減圧した
のち、0.2mmHgの減圧下で1時間30分反応させ
極限粘度η=0.50のポリエステル(A−3)を得
た。ポリエステル(A−3)の組成は以下に示すとおり
である。
【0096】ジカルボン酸成分 テレフタル酸の残基 45モル% イソフタル酸の残基 40モル% C12ホスホニウム塩の残基 10モル% 5−(ナトリウムスルホネート)−イソフタル酸の残基
5モル% ジオール成分 エチレングリコールの残基 65モル% ネオペンチルグリコールの残基 35モル%
【0097】実施例3 ポリエステル(A−3)固形分100重量部に対してア
クリル系光重合性プレポリマー(C−3:M7100;
東亜合成(株)製)35重量部、光重合開始剤(D−
1)2.5重量部を添加した後、メチルエチルケトンに
て全固形分濃度が17重量%となるように希釈してコー
ティング液とした。ついで厚さ50μmの2軸延伸ポリ
エステルフィルム( 東洋紡ポリエステルフィルム;東
洋紡績(株)製)の片面にバーコーターにて塗布量が1
2g/m2となるようにコーティング液を塗布した後、
熱風オーブン中で70℃で3分間乾燥し、その後紫外線
照射装置にて800mJ/cm2の積算照射光量の紫外
線を照射して硬化させ、表層に硬化塗膜を有する積層フ
ィルムを形成した。
【0098】(ポリエステル樹脂の製造例4)撹拌機、
温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチー
ル製オートクレーブにジメチルテレフタレート485重
量部、ジメチルイソフタレート485重量部、エチレン
グリコール443.3重量部、ネオペンチルグリコール
400.4重量部及び酢酸亜鉛0.55重量部を仕込
み、160〜220℃まで昇温して生成するメタノール
を系外に留去しながら4時間かけてエステル交換反応を
行った。エステル交換反応終了後、アンチモン0.44
重量部及びトリメチルホスフェート0.28重量部を加
えて15分撹拌し、反応系を徐々に減圧したのち、0.
2mmHgの減圧下で1時間30分反応させ極限粘度η
=0.50のポリエステル(A−4)を得た。ポリエス
テル(A−4)の組成は以下に示すとおりである。
【0099】 ジカルボン酸成分 テレフタル酸の残基 50モル% イソフタル酸の残基 50モル% ジオール成分 エチレングリコールの残基 65モル% ネオペンチルグリコールの残基 35モル%
【0100】比較例1 ポリエステル(A−4)の固形分100重量部に対して
アクリル系光重合性プレポリマー(C−3:M710
0;東亜合成(株)製)35重量部、光重合開始剤(D
−1)2.5重量部、銀/リン酸ジルコニウム系抗菌フ
ィラー、ノバロン(東亞合成(株)製)1重量部を添加
した後、メチルエチルケトンにて全固形分濃度が17重
量%となるように希釈してコーティング液とした。つい
で厚さ50μmの2軸延伸ポリエステルフィルム( 東
洋紡ポリエステルフィルム;東洋紡績(株)製)の片面
にバーコーターにて塗布量が12g/m2となるように
コーティング液を塗布した後、熱風オーブン中で70℃
で3分間乾燥し、その後紫外線照射装置にて800mJ
/cm2の積算照射光量の紫外線を照射して硬化させ、
表層に硬化塗膜を有する積層フィルムを形成した。
【0101】(ポリエステル樹脂の製造例5)撹拌機、
温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチー
ル製オートクレーブにジメチルテレフタレート460重
量部、ジメチルイソフタレート460重量部、エチレン
グリコール443.3重量部、ネオペンチルグリコール
400.4重量部、及びテトラ−n−ブチルチタネート
0.52重量部を仕込み、160〜220℃まで4時間
かけてエステル交換反応を行った。ついでフマル酸29
重量部を加え、200〜220℃まで1時間かけて昇温
し、反応系を徐々に減圧したのち、0.2mmHgの減
圧下で1時間30分反応させ、極限粘度η=0.50の
ポリエステル(A−5)を得た。ポリエステルの組成は
以下に示す通りである。
【0102】ジカルボン酸成分 テレフタル酸の残基 47.5モル% イソフタル酸の残基 47.5モル% フマル酸の残基 5モル% ジオール成分 エチレングリコールの残基 65モル% ネオペンチルグリコールの残基 35モル%
【0103】グラフト重合体の製造例2 撹拌機、温度計、環流装置と定量滴下装置を備えた反応
器にポリエステル(A−5)200重量部、メチルエチ
ルケトン600重量部を入れ、加熱・撹拌し環流状態で
樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、1−(トリ
−n−ブチルドデシルホスホニウムスルホネート)−2
−アクリルアミド−2−メチルプロパン43.8重量部
をメチルエチルケトン80重量部に溶解した溶液と、ア
ゾビスイソブチロニトリル1.3重量部をメチルエチル
ケトン40重量部に溶解した溶液とを1.5時間かけて
ポリエステル溶液中にそれぞれ滴下し、さらに3時間反
応させ、グラフト重合体溶液(B−2)を得た。
【0104】実施例4 グラフト重合体(B−2)をメチルエチルケトンにて固
形分濃度が17重量%となるように希釈してコーティン
グ液とした。ついで厚さ50μmの2軸延伸ポリエステ
ルフィルム(東洋紡ポリエステルフィルム;東洋紡績
(株)製)の片面にバーコーターにて塗布量が12g/
2となるようにコーティング液を塗布した後、熱風オ
ーブン中で150℃で3分間乾燥し、表面に固形分付着
量が2.0g/m2の塗膜を有する積層フィルムを形成
した。
【0105】実施例5 グラフト重合体(B−2)の固形分100重量部に対し
てアクリル系光重合性プレポリマー(C−1:ビームセ
ット700;荒川化学(株)製)35重量部、光重合開
始剤(D−1:イルガキュアー907;チバガイギー
(株)製)2.5重量部を添加した後、メチルエチルケ
トンにて全固形分濃度が17重量%となるように希釈し
てコーティング液とした。ついで厚さ50μmの2軸延
伸ポリエステルフィルム(東洋紡ポリエステルフィル
ム;東洋紡績(株)製)の片面にバーコーターにて塗布
量が12g/m2となるようにコーティング液を塗布し
た後、熱風オーブン中で70℃で3分間乾燥し、その後
紫外線照射装置にて800mJ/cm2の積算照射光量
の紫外線を照射して硬化させ、表層に硬化塗膜(固形分
付着量:2.0g/m2)を有する積層フィルムを形成
した。
【0106】実施例6 グラフト重合体溶液(B−1)の固形分100重量部に
対してアクリル系光重合性プレポリマー(C−1:ビー
ムセット700;荒川化学(株)製)35重量部、光重
合開始剤(D−1:イルガキュアー907;チバガイギ
ー(株)製)2.5重量部、有機粒子(E−1:エポス
ターS6(平均粒径:0.6μm)とエポスターS12
(平均粒径1.2μm)との重量比1:1混合物;とも
に日本触媒(株)製)30重量部を添加した後、メチル
エチルケトンにて全固形分濃度が12重量%となるよう
に希釈し、さらに、エースホモジナイザーで6000回
転/分の回転速度で粒子を分散させてコーティング液と
した。ついで厚さ50μmの2軸延伸ポリエステルフィ
ルム( 東洋紡ポリエステルフィルム;東洋紡績(株)
製)の片面にバーコーターにて塗布量が20g/m2
なるようにコーティング液を塗布した後、熱風オーブン
中で70℃で3分間乾燥し、その後紫外線照射装置にて
800mJ/cm2の積算照射光量の紫外線を照射して
硬化させ、表層に硬化塗膜(固形分付着量:2.4g/
2)を有する積層フィルムを形成した。
【0107】上記実施例及び比較例の積層フィルム(抗
菌材料)について、先述の熱水処理後曲げ試験を行い、
さらに、以下に記載の各種試験を行った。なお、防かび
性、耐候性、耐水性、耐熱水性については、代表例とし
て、実施例1、4及び比較例1の積層フィルム(抗菌材
料)に対して行った。また、フォルムの光沢度(グロ
ス)の測定、濁度(ヘーズ)、透過率、表面粗さの測定
は、前記の方法により実施例1と実施例6のフィルムに
ついて行った。
【0108】(A)抗菌性 (初期抗菌性)予め65℃の乾燥器で16時間加熱滅菌
した5cm×5cmの大きさの試料フィルム(測定対象
のフィルム)上に、1/100ニュートリエントブロー
スで希釈した黄色ブドウ球菌(あるいは大腸菌)の菌液
(濃度:106個/ml)0.05mlを滴下し、フィ
ルムの菌液の滴下面に高圧蒸気滅菌したポリエチレン製
フィルムを密着させてから、試料フィルムを滅菌シャー
レに移し、35℃(大腸菌は25℃)、90%RHの孵
卵器で24時間(あるいは30分間)培養し、次に、フ
ィルム上の菌をSCDLP培地10mlで洗い出し、1
0倍希釈し、普通寒天平板にまいて、24時間後に普通
寒天平板上に残存する菌数Bを計測した。対照フィルム
(抗菌性を付与していないPETフィルム)に対しても
上記と同様の菌培養作業を行った後、同様にして普通寒
天平板上の残存菌数の操作を行い24時間後の菌数Cを
測定した。次に、残存菌数B、Cを用いて、静菌活性値
=logC−logBを算出し、該静菌活性値により抗
菌力(抗菌活性)を評価した。 (熱水処理後の抗菌性)10cm×10cmの大きさの
試料を95℃±2℃にコントロールした蒸留水1リット
ル中に2時間浸漬して、引き上げた後、5×5cmの大
きさにカットして、65℃の乾燥器16時間加熱滅菌し
た後、上記と同様にして、菌の培養、洗い出し、普通寒
天平板上への撒き作業を行い、普通寒天平板上の残存菌
数B’を測定した。対照フィルムに対しても上記と同様
の菌培養作業を行った後、同様にして普通寒天平板上の
残存菌数の操作を行い24時間後の菌数C’を測定し
た。次に、残存菌数B’、C’を用いて、静菌活性値=
logC’−logB’を算出し、該静菌活性値により
抗菌力(抗菌活性)を評価した。
【0109】(B)防かび性 JIS−Z−2911−6.2.2に準じた方法で、無
機塩寒天培地平板上に5cm×5cmの大きさの被検フ
ィルムを貼付し、下記のかび5菌株の胞子懸濁液にシュ
クローズ5%添加した混合液0.2mlを噴霧して、2
7±2℃で14日間培養後かびの生育状態を評価した。 (試験菌株) Aspergillus niger ATCC 6275 Penicillium citrinum ATCC 9849 Chaetomium globosum ATCC 6205 Myrothecium verrucaria ATCC 9095 Aureobasidium pullulans ATCC 15233 (かび抵抗性表示) かびの生育が認められた(試料面積の1/3以上) 1 わずかにかびの生育が認められた(試料面積の1/3以下) 2 かびの生育が認められない 3
【0110】(C)耐水性試験(水処理後の抗菌性) 10cm×10cmの大きさに切った試料フィルムの2
3℃±2℃の蒸留水1リットルの中に24時間浸漬後の
抗菌性(対大腸菌)を評価した。抗菌性は試料フィルム
を室温で乾燥してから測定した。抗菌性の指標は下記に
示す減菌率によって表した。 減菌率(%)=[(初期の菌数−残存菌数)/初期の菌
数]×100
【0111】(D)耐熱水性試験(熱水処理後の抗菌
性) 10cm×10cmの大きさに切った試料フィルムの9
5℃±2℃の蒸留水1リットルの中に2時間浸漬後の抗
菌性(対大腸菌)を評価した。浸漬後の抗菌性は試料フ
ィルムを室温で乾燥してから測定した。抗菌性の指標は
下記に示す減菌率によって表した。 減菌率(%)=[(初期の菌数−残存菌数)/初期の菌
数]×100
【0112】(E)耐候性(紫外線照射に対する耐変色
性) 10cm×10cmの大きさに切った試料フィルムを蛍
光紫外線型耐候試験器内に500時間暴露し、前後のフ
ィルムの色彩を色差計で測定した。暴露前後のフィルム
の色差値(L値、a値、b値)から色彩の変化Δbおよ
びΔEを求めた。ここで、Δbはb値の変化量、ΔEは
下記式によって求められる数値である。 ΔE={(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)21/2
【0113】(F)一般耐久性 (a)耐熱水性 試験片を沸騰水(95℃)に3時間浸漬し、しわ、割
れ、膨れ、はがれ等がないかを目視で評価した。 (b)耐温水性 試験片を60℃の温水に7時間浸漬し、取り出して17
時間常温室内に放置することを15回くりかえした後、
外観に変化がないかを目視で評価した。 (c)耐湿性 試験片を40℃、湿度90%の雰囲気中に240時間保
持した後、外観に変化がないかを目視で評価した。 (d)耐熱性 試験片を130℃±10℃の恒温室中に3時間放置した
後、外観に変化がないかを目視で評価した。 (e)耐洗剤性 試験片を75℃に保持した中性洗剤0.5%水溶液中に
6時間浸漬し、外観に変化がないかを目視で評価した。 (f)耐薬品性 ビーカーに試薬を高さ130mm以上入れ、試験片を互
いに触れ合わないように完全に浸漬する。これを20℃
±2℃の恒温装置に入れ、5時間浸した後、引き上げて
静かに水洗いして乾燥し、外観に変化がないかを目視で
評価した。この操作を下記の各試薬に対して行った。 (試薬) 10%塩酸(比重1.050) JIS K 8180
に規定する塩酸を用いて調製したもの。 飽和水酸化カルシウム JIS K 8575に規定す
る水酸化カルシウムを用いて調製したもの。 10%硫酸(比重1.068) JIS K 8951
に規定する硫酸を用いて調製したもの。 10%苛性ソーダ溶液 JIS K 8576に規定す
る水酸化ナトリウムを用いて調製したもの。 灯油 JIS K 2203に規定する1号 エタノール JIS K 8101に規定するエタノー
【0114】(G)実用抗菌性 試料フィルムを10cm×10cmのステンレス板に貼
り、これを家庭用の風呂場の壁に吊した。4週間経過後
に取り出しフィルム上のかびやぬめりの状態を目視で判
定した。 ○:かび・ぬめりの発生がほとんどない。 △:わずかにかび・ぬめりが発生した。 ×:かび・ぬめりが多量に発生した。 下記の表1〜5に実施例および比較例の抗菌材料の組成
と抗菌フィルムに対して行った上記各試験の試験結果を
示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】表に示す試験結果から、本発明の抗菌材
料、すなわち、ホスホニウムスルホネート基を有する高
分子重合体を主たる構成成分とし、熱水処理後曲げ試験
で最小内側半径Tが1mm以下を示す抗菌材料は、水や
熱水に曝されても高い抗菌力が得られ、当該材料による
層(抗菌層)は曲げ加工に対して優れた耐久性を示すこ
とがわかる。また、熱、洗剤、溶剤、紫外線等によって
も外観変化を起こさず、塗膜または成形材料として要求
される基本的な性能も備えていることがわかる。
【0121】
【発明の効果】以上の説明により明らかなように、本発
明によれば、高い抗菌力と、優れた抗菌力の持続性及び
加工耐久性を有する抗菌材料を得ることができる。本発
明の抗菌材料は塗膜または各種の成形物の形態で各種用
途に使用でき、特に、当該抗菌材料の層を少なくとも片
面に設けた抗菌フィルム、さらに、当該抗菌フィルムを
積層した積層金属板等にすることで、安定した抗菌性を
有する抗菌製品を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08F 18/04 C08F 18/04 20/58 20/58 28/02 28/02 283/02 283/02 C08G 63/688 C08G 63/688 63/692 63/692 C08L 67/02 C08L 67/02 101/14 101/14 (72)発明者 小長谷 重次 滋賀県大津市堅田2丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 三角 美和 滋賀県大津市堅田2丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 宮本 憲一 滋賀県大津市堅田2丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 森重 地加男 滋賀県大津市堅田2丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I)で示されるホスホニウ
    ムスルホネート基を有する高分子重合体を主たる構成成
    分とする抗菌材料であって、当該抗菌材料の層を少なく
    とも片面に設けたフィルムを金属薄板に積層し、該積層
    金属板を95℃の蒸留水中に2時間浸漬した後、フィル
    ム側を内側にしてJIS−Z−2248に規定の180
    度曲げ加工を行った際の最小内側半径Tが1mm以下で
    あることを特徴とする抗菌材料。 【化1】 (式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれアルキル基また
    はアリール基で、少なくとも1つは炭素数が10〜20
    のアルキル基である。)
  2. 【請求項2】 ホスホニウムスルホネート基を有する高
    分子重合体が、下記一般式(II)で示される化合物を
    酸成分として含有するポリエステル樹脂であり、かつ、
    当該ポリエステル樹脂と親水性物質とを含んでなる請求
    項1記載の抗菌材料。 【化2】 (式中、Aは芳香族基、R1、R2、R3、R4はそれぞれ
    アルキル基またはアリール基で、少なくとも1つは炭素
    数が10〜20のアルキル基である。)
  3. 【請求項3】 ポリエステル樹脂が一般式(II)の化
    合物を全酸成分当たり1〜50モル%含有するものであ
    る請求項2記載の抗菌材料。
  4. 【請求項4】 親水性物質が親水性基を有するエステル
    形成が可能な化合物であって、当該化合物をポリエステ
    ル樹脂に共重合させている請求項2または3記載の抗菌
    材料。
  5. 【請求項5】 親水性基を有するエステル形成が可能な
    化合物がポリアルキレングリコール、または、スルホン
    酸基を有するジカルボン酸若しくはグリコールのスルホ
    ン酸のアルカリ金属塩である請求項4記載の抗菌材料。
  6. 【請求項6】 親水性物質が親水性基を有するビニル系
    モノマーを少なくとも含むビニル系モノマーの重合体で
    あって、ポリエステル樹脂にグラフトした重合体である
    請求項2または3記載の抗菌材料。
  7. 【請求項7】 ホスホニウムスルホネート基を有する高
    分子重合体が、下記一般式(III)で示されるビニル
    化合物の重合体、または、下記一般式(III)で示さ
    れるビニル化合物とホスホニウムスルホネート基をもた
    ないビニル系モノマーとの共重合体からなるホスホニウ
    ムスルホネート基を有するビニル重合体であり、かつ、
    当該一般式(III)で示されるビニル化合物及び/ま
    たはビニル系モノマーの一部または全部を構成する化合
    物が親水性基を有する化合物からなる請求項1記載の抗
    菌材料。 【化3】 (式中、Xは単結合、または、エステル結合、アミド結
    合を有していてもよい炭素数が1〜10の2価の脂肪族
    若しくは芳香族基、R1、R2、R3、R4は、それぞれア
    ルキル基またはアリール基で、少なくとも1つは炭素数
    が10〜20のアルキル基である。)
  8. 【請求項8】 ホスホニウムスルホネート基を有するビ
    ニル重合体は、他の高分子重合体の側鎖にグラフト結合
    して、当該他の高分子重合体とともに抗菌材料中に含有
    されている請求項7記載の抗菌材料。
  9. 【請求項9】 さらに硬化型樹脂を含む請求項2〜8の
    いずれかに記載の抗菌材料。
  10. 【請求項10】 硬化型樹脂が光重合性硬化型樹脂であ
    る請求項9記載の抗菌材料。
  11. 【請求項11】 光重合性硬化型樹脂が、光重合開始剤
    と光重合性プレポリマーとを含む、または、さらに光重
    合性モノマーを含むものである請求項10記載の抗菌材
    料。
  12. 【請求項12】 さらに不活性粒子を含む請求項2〜1
    1の何れかに記載の抗菌材料。
  13. 【請求項13】 少なくとも一方の面が請求項1〜12
    のいずれかに記載の抗菌材料からなる抗菌フィルム。
  14. 【請求項14】 フィルムを95℃の蒸留水中に2時間
    浸漬した後の上記抗菌材料からなる面の静菌活性値が2
    以上である請求項13記載の抗菌フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006503963A (ja) * 2002-10-24 2006-02-02 イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー スルホン化脂肪族芳香族ポリエーテルエステルフィルム、コーティング、およびラミネート
JP2008163110A (ja) * 2006-12-27 2008-07-17 Unitika Ltd 共重合ポリエステル樹脂
US9580554B2 (en) 2015-05-06 2017-02-28 International Business Machines Corporation Condensation polymers for antimicrobial applications

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