JP2001064862A - 稲の育苗用不織布及びその製造方法 - Google Patents

稲の育苗用不織布及びその製造方法

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JP2001064862A JP23317099A JP23317099A JP2001064862A JP 2001064862 A JP2001064862 A JP 2001064862A JP 23317099 A JP23317099 A JP 23317099A JP 23317099 A JP23317099 A JP 23317099A JP 2001064862 A JP2001064862 A JP 2001064862A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 稲苗の根上がりが少なく、形態安定性に優れ
ていると共に、田植機による苗の掻き取り時に破断しや
すい育苗用不織布を提供する。 【解決手段】 この育苗用不織布は、コットンリンター
及び生分解性繊維(但し、コットンリンターを除く。)
相互間が密集すると共に絡み合ってなる連続区域と、こ
の連続区域に囲まれて孤立して存在する多数の開孔区域
とよりなる。コットンリンターの平均繊維長は5mm以
下であり、生分解性繊維の平均繊維長は40mm以下で
あるのが好ましい。一個の開孔区域の面積は0.9〜2
5mm2であり、育苗用不織布中における全開孔区域の
面積割合は5〜70%であるのが好ましい。また、育苗
用不織布の長手方向の引張強力は1kg/5cm幅以上
であり、幅方向の引裂強力は200g以下であるのが好
ましい。生分解性繊維としては、木綿,レーヨン短繊
維,ポリ乳酸系短繊維又は脂肪族ポリエステル系短繊維
等が用いられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水耕栽培で又は非
水耕栽培で、稲苗を生育させるときに用いる育苗用不織
布の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】古くから、稲作は、育苗箱に敷設した土
壌(苗代)に種籾を播種して覆土し、次いで、育苗を終
えた苗を、梅雨の頃に田に植え代えるという手順で行わ
れている。苗代で生育した苗は、土付き苗となってお
り、非常に重く、田に植え代える際の搬送に人手や手間
がかかるということがあった。
【0003】このため、近年、育苗箱を使用しない育苗
方法が提案されている。例えば、水槽の底面に長尺の不
織布(当業界では「ロングマット」と称呼されてい
る。)を敷設し、不織布上に種籾を播種するという方
法、或いは土壌の上に不織布を敷設し、この不織布上に
種籾を播種するという方法が提案されている。これらの
方法によれば、不織布上で苗が生育し、不織布付き苗と
なるため、土付き苗に比べて、重量が軽く、田に植え代
える際の搬送が楽になるという利点がある。なお、不織
布付き苗は長尺物となっているため、巻回してロール状
とし、これを田植機に載せて、所定の寸法に破断しなが
ら、田に苗を移植するのである。
【0004】しかし、これらの方法を採用した場合、以
下のような技術的問題点が指摘されている。(i)種籾
を播種した後に覆土しないため、育苗時に根上がりが生
じる。即ち、不織布中又は不織布の裏面に根が張らず
に、不織布表面に根が持ち上がった状態になる。従っ
て、田植機によって不織布付き苗を掻き取りながら(即
ち、不織布を裁断しながら)、移植する際に苗を傷めて
しまうということがある。(ii)田植機によって苗を掻
き取る際、不織布も一緒に破断されるが、不織布が田植
機の掻き取りによって破断されない場合があり、移植作
業が連続して行えないということがある。
【0005】上記した(i)の問題点を解決するために
は、不織布として、構成繊維相互間の間隙の大きい粗目
のものを採用すれば良いと考えられる。このような不織
布であれば、構成繊維相互間の間隙に根が侵入し、不織
布中又は不織布裏面に根が張ると考えられるからであ
る。しかしながら、構成繊維相互間の間隙が大きいと、
不織布自体の形態安定性が低下する。従って、不織布付
き苗をロール状に巻回しにくくなったり、或いは巻回で
きたとしても田植機に載せる際に、その形態が崩れたり
して、田植機による移植作業が行いにくいという憾みが
あった。また、(ii)の問題点を解決するためには、不
織布として引張強力の弱いものを採用すれば良いと考え
られる。しかし、引張強力の弱いものは、一般的に不織
布自体の形態安定性にも劣り、前記したように、田植機
による移植作業が行いにくいということになる。
【0006】そこで、本発明者等は、不織布の構造とし
て、多数の開孔区域と、生分解性繊維が密集すると共に
絡み合った連続区域とを設け、開孔区域の存在によって
根上がりを防止し、連続区域の存在によって、不織布自
体の形態安定性を維持し、もって上記した問題点(i)
及び(ii)を一挙に解決した稲の育苗用不織布を提案し
た(特願平10−100374号)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特願平10
−100374号に係る発明を利用したものであり、連
続区域を構成する繊維として、コットンリンターとコッ
トンリンターを除く他の生分解性繊維とを混合すること
によって、不織布自体の形態安定性をより向上させやす
くする共に、田植機によって苗を掻き取る際にも、不織
布がより破断されやすくしたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、コット
ンリンター及び生分解性繊維(但し、コットンリンター
を除く。以下、単に生分解性繊維と言うときは、コット
ンリンターを除いたものを意味している。)相互間が密
集すると共に絡み合ってなる連続区域と、該連続区域に
囲まれて孤立して存在する多数の開孔区域とよりなるこ
とを特徴とする稲の育苗用不織布及びその製造方法に関
するものである。
【0009】本発明で用いられるコットンリンターと
は、綿花を採取した後の綿実に残る、繊維長の比較的短
い短繊維である。このコットンリンターは、図1に示す
如く、その先端が鉤状となっている特長、即ち、長手方
向において鉤状に折れ曲がっているという特長がある。
この特長によって、コットンリンター相互間及びコット
ンリンターと生分解性繊維との絡み合いが強固になり、
形態安定性に優れた稲の育苗用不織布が得られる。コッ
トンリンターの平均繊維長は、5mm以下であるのが好
ましい。平均繊維長が5mmを超えると、田植機によっ
て苗を掻き取る際、不織布が破断されにくくなる傾向が
生じる。なお、コットンリンターも、セルロース系繊維
であって、田植後の土壌中において、稲の生育と共に崩
壊するものであり、生分解性である。
【0010】本発明で用いられる生分解性繊維として
は、木綿(コットン),レーヨン短繊維又は長繊維、ポ
リ乳酸系短繊維又は長繊維、脂肪族ポリエステル系短繊
維又は長繊維等の従来公知の生分解性繊維が用いられ
る。生分解性繊維を使用する理由は、田植後の土壌中に
おいて、稲の生育と共に崩壊させるためである。本発明
においては、生分解性繊維として、木綿,レーヨン短繊
維,ポリ乳酸系短繊維,脂肪族ポリエステル系短繊維等
の短繊維を用いるのが好ましい。短繊維の平均繊維長
は、従来用いられている程度で良く、具体的には5〜1
00mm程度で良い。特に好ましくは、40mm以下で
あるのが良い。平均繊維長が40mmを超えると、田植
機によって苗を掻き取る際、コットンリンター及び生分
解性繊維で構成された育苗用不織布を破断させにくくな
る傾向が生じる。
【0011】本発明に係る稲の育苗用不織布には、コッ
トンリンター及び生分解性繊維が密集していると共に、
コットンリンター及び生分解性繊維相互が絡み合ってい
る連続区域が存在する(図2中の白色区域)。この連続
区域の存在によって、育苗用不織布にある程度の形態安
定性と長手方向における引張強力とが与えられる。連続
区域中におけるコットンリンターと生分解性繊維の混合
割合は、コットンリンター:生分解性繊維=30〜30
0:100(重量部)であるのが好ましい。コットンリ
ンターが少なすぎると、形態安定性と、田植機によって
苗を掻き採る際の不織布の破断性という両者の性質を満
足させにくくなる。また、コットンリンターが多すぎる
と、育苗用不織布の長手方向における引張強力が低下す
る傾向が生じる。また、コットンリンターと生分解性繊
維とは、連続区域において均一に混合されていても良い
し、偏在して混合されていても良い。偏在して混合され
ている場合としては、いずれか一方表面にコットンリン
ターが多く存在し、他表面には生分解性繊維が多く存在
する態様がある。なお、生分解性繊維として、ポリ乳酸
系繊維や脂肪族ポリエステル系繊維等の熱可塑性生分解
性繊維を使用した場合には、熱及び所望により圧力を与
えて、この連続区域に存在する生分解性繊維相互間を熱
融着しても良い。このような熱融着によって、育苗用不
織布の形態安定性及び引張強力を更に向上させうる。
【0012】本発明に係る育苗用不織布には、連続区域
に囲まれている開孔区域が存在する(図2中の黒色区
域)。この開孔区域は、各々孤立して存在している。開
孔区域は、苗の根が育苗用不織布の裏面に張りやすくす
るためのものであって、苗の根上がりを防止するための
ものである。一個一個の開孔区域の面積は、0.9〜2
5mm2程度であるのが好ましい。開孔区域の面積が
0.9mm2未満であると、苗の根が育苗用不織布の裏
面に張りにくくなる傾向が生じ、根上がりする恐れが生
じる。また、開孔区域の面積が25mm2を超えると、
育苗用不織布の形態安定性が低下する傾向が生じたり、
不織布付き苗をロール状に巻回しにくくなったり、或い
は不織布付き苗を田植機に載せにくくなる傾向が生じ
る。ここで、開孔区域の面積は、以下の如き方法で測定
されるものである。即ち、万能投影器(日本光学株式会
社製:型式 PROJECTOR V−12)を用い、
50個の開孔区域の縦方向a及び横方向bの長さをmm
単位で小数点以下2桁まで測定し、50個の開孔区域の
各々についてa×bを算出し、これの平均値を開孔区域
の面積(mm2)とした。なお、開孔区域内に少量のコ
ットンリンター等の繊維が存在する場合であっても、そ
れは存在しないものとして測定した。
【0013】また、この育苗用不織布中における全開孔
区域の面積の割合は、5〜70%であるのが好ましい。
全開孔区域の面積が5%未満になると、苗の根が侵入す
る箇所が少なくなり、根が育苗用不織布の裏面に張りに
くくなり、根上がりする恐れが生じやすい。一方、全開
孔区域の面積が70%を超えると、相対的に連続区域が
少なくなり、育苗用不織布の形態安定性が低下する傾向
が生じ、不織布付き苗をロール状に巻回しにくくなった
り、或いは不織布付き苗を田植機に載せにくくなる傾向
が生じる。ここで、育苗用不織布中における全開孔区域
の面積の割合は、以下の如き方法で測定されるものであ
る。即ち、万能投影器(日本光学株式会社製:型式 P
ROJECTOR V−12)を用い、4cm2中の開
孔区域の数を、10ケ所に亘り数え、その平均値より配
設密度(個/cm2)を求めた。そして、(育苗用不織
布中における全開孔区域の面積の割合:%)=(開孔区
域の面積:mm2)×(配設密度:個/cm2)なる式
で、育苗用不織布中における全開孔区域の面積の割合を
算出した。
【0014】この育苗用不織布は、長手方向の引張強力
が、1kg/5cm幅以上であるのが好ましい。この引
張強力が1kg/5cm幅未満であると、不織布付き苗
を長手方向にロール状に巻回するときに、不織布付き苗
が破断しやすくなる傾向が生じる。なお、長手方向にお
ける引張強力の上限は5kg/5cm幅以下であるのが
好ましい。引張強力が5kg/5cm幅を超えると、コ
ットンリンターの混合割合にもよるが、田植機によって
苗を掻き取る際、育苗用不織布が一緒に破断されにくく
なる傾向が生じる。ここで、引張強力の測定方法は、以
下のとおりである。即ち、JIS L−1096に記載
のストリップ法に準じ、幅5cmで長さ15cmの試験
片10個を準備し、定速伸長型引張試験機(テンシロン
UTM−4−1−100 東洋ボールドウイン社製)を
用いて、掴み間隔10cmで引張速度10cm/分の条
件で最大引張強力を測定し、試験片10個の平均値を育
苗用不織布の引張強力(kg/5cm幅)とした。な
お、長手方向の引張強力を測定する際は、試験片の長手
方向が不織布の長手方向に合致するようにして、測定す
ることは言うまでもない。
【0015】また、この育苗用不織布の幅方向の引裂強
力は、200g以下である。この引裂強力が200gを
超えると、コットンリンターの混合割合にもよるが、田
植機によって苗を掻き取る際、育苗用不織布が破断され
にくく、苗が損傷しやすくなる傾向が生じる。育苗用不
織布の長手方向の引裂強力については、200gを超え
ても差し支えない。この理由は、育苗用不織布の長手方
向については、田植機に付設された鎌によって、比較的
容易に破断するからである。ここで、引裂強力の測定方
法は、引張強力を測定したときと同様の形状の試験片1
0個について、JIS L−1096のペンジュラム法
に基づいて測定し、その平均値を育苗用不織布の幅方向
の引裂強力とした。育苗用不織布の幅方向の引裂強力を
測定する際には、不織布の幅方向が試験片の長手方向と
なるようにして測定することは、言うまでもない。
【0016】本発明に係る育苗用不織布の目付は、10
〜80g/m2程度であるのが好まい。この程度の目付
であると、軽量であり、且つ不織布自体の形態安定性も
ある程度維持できるからである。育苗用不織布の目付が
10g/m2未満であると、コットンリンターの混合割
合にもよるが、不織布自体の形態安定性が低下する傾向
が生じる。また、育苗用不織布の目付が80g/m2
超えると、軽量で取り扱いやすいという効果が減殺され
る傾向が生じる。
【0017】上記したような、連続区域と開孔区域とを
持つ稲の育苗用不織布は、例えば、以下のような方法で
好適に製造することができる。まず、綿実から採取され
たコットンリンターを主原料として、従来公知の湿式抄
造法によって、コットンリンターからなる抄造シートを
準備する。抄造シートは、コットンリンターが相互に絡
み合った状態で固定されてなる紙様のシートであり、あ
る程度の形態安定性を有するものである。抄造シート中
のコットンリンターの平均繊維長は、上記した理由によ
り、5mm以下であるのが好ましい。一方、生分解性繊
維を、カード法やスパンボンド法等の従来公知の方法
で、開繊及び集積して繊維ウェブを作成する。繊維ウェ
ブ中の生分解性繊維は、一般的に単に集積されているだ
けであるため、繊維相互間は殆ど固定されておらず、形
態安定性の殆ど無いものである。繊維ウェブ中の生分解
性繊維の平均繊維長も、上記した理由により、40mm
以下であるのが好ましい。
【0018】以上のようにして準備された抄造シートと
繊維ウェブとを、積層して積層体を得る。積層の態様と
しては、抄造シートと繊維ウェブとの二層積層体、この
二層積層体の繊維ウェブ側に更に抄造シートを積層した
三層積層体、この二層積層体の抄造シート側に更に繊維
ウェブを積層した三層積層体、或いはその他任意の態様
で積層した多層積層体とすることができる。積層体を得
た後、この積層体は粗目織物上に坦持される。この際、
例えば、積層体が抄造シートと繊維ウェブとの二層積層
体等であるときは、繊維ウェブが粗目織物側に位置する
ようにして坦持するのが好ましい。この理由は、後で施
す高圧水流が、粗目織物側と反対側から付与されるの
で、抄造シートが粗目織物側に位置していると、コット
ンリンターが粗目織物の目を通って脱落しやすいからで
ある。即ち、平均繊維長の短いコットンリンターは、平
均繊維長の長い生分解性繊維と比較して、高圧水流と共
に粗目織物の目を通って下方に脱落しやすいからであ
る。
【0019】積層体が坦持される粗目織物としては、経
糸及び緯糸として金属線又は太繊度の合成樹脂製フィラ
メント等を用いて、平織組織又は綾織組織等の任意の織
組織で製織されたものが採用される。特に、後に高圧水
流が当たるため、剛性の高い粗目織物を用いるのが好ま
しく、金属線を用いて製織された、いわゆる金属製メッ
シュスクリーンを用いるのが好ましい。また、粗目織物
の目の粗さは任意であるが、一般的に、6〜20メッシ
ュ程度の目開きを持つものが好ましい。
【0020】粗目織物上に坦持された積層体に向けて、
高圧水流を噴射する。高圧水流は、粗目織物が存在する
反対側から、即ち、直接積層体に当たるようにして、噴
射される。高圧水流は、噴射ノズルから高圧で水を噴射
すれば、容易に得ることができる。噴射圧力としては、
10〜100kg/cm2程度で良い。噴射圧力が低す
ぎると、コットンリンター及び生分解性繊維相互間の絡
み合いが少なくなり、形態安定性に優れた育苗用不織布
が得られにくくなる。また、噴射圧力が高すぎると、コ
ットンリンター及び生分解性繊維相互間の絡み合いが緊
密になりすぎて、引張強力が高くなりすぎ、田植機によ
る苗の掻き取りの際に、破断しにくくなる傾向が生じ
る。また、高圧水流は、積層体に一回だけ施しても良い
し、二回以上数回施しても良い。
【0021】このようにして高圧水流を積層体に施す
と、積層体中の抄造シートを構成するコットンリンター
及び繊維ウェブ中の生分解性繊維は、以下のように運動
する。まず、抄造シートに、高圧水流が施されると、水
を吸収して膨潤すると共に、高圧水流の衝撃でコットン
リンター相互間の絡み合いが解け、高圧水流の作用で各
コットンリンターが自由に動く。一方、繊維ウェブ中の
生分解性繊維は、殆ど固定されていないため、自由に動
く。従って、粗目織物の経糸と緯糸の交点近傍上に位置
するコットンリンター及び生分解性繊維は、高圧水流に
よって、経糸と緯糸の交点近傍外の箇所、特に、粗目織
物の目の方へ移動する。この結果、コットンリンター及
び生分解性繊維は、交点近傍外の箇所に密集すると共
に、交点近傍上からは排除されて孔が開く。そしてま
た、高圧水流によるエネルギーで、生分解性繊維に捩れ
や曲がりが生じると共にそれはコットンリンターの鉤状
部分に引っ掛かり、密集したコットンリンター及び生分
解性繊維相互間が絡み合うのである。以上のようにし
て、粗目織物の経糸と緯糸の交点近傍に対応する箇所が
開孔区域となり、この交点近傍外の箇所はコットンリン
ター及び生分解性繊維が密集して絡み合った連続区域と
なる育苗用不織布が得られるのである。
【0022】生分解性繊維として、ポリ乳酸系繊維や脂
肪族ポリエステル系繊維等の熱可塑性繊維を用いた場合
には、開孔区域及び連続区域を形成した後、熱処理し
て、連続区域における生分解性繊維相互間を熱融着する
のが好ましい。熱融着により、育苗用不織布の形態安定
性や引張強力が更に向上するからである。熱処理として
は、従来公知の任意の方法を採用することができ、例え
ば、熱風乾燥機中に通す方法や、一対の熱ロール中に導
入する方法等を採用することができる。
【0023】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明を説明する
が、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明
に係る育苗用不織布は、稲苗の根が侵入しやすい開孔区
域と、ある程度の形態安定性及び田植機によって苗を掻
き取る際の不織布の破断性に優れた、コットンリンター
及び生分解性繊維相互間が絡み合った連続区域とを持つ
ものであると理解されるべきである。また、本発明に係
る育苗用不織布の製造方法は、このような不織布を一挙
に得る合理的な方法として理解されるべきである。
【0024】実施例1 まず、平均繊維長3mmのコットンリンターを湿式抄造
して得られた、目付18g/m2の抄造シートを準備し
た。一方、平均繊維長25mmの木綿の晒綿を用いて、
ランダムカード機にて、目付42g/m2の繊維ウェブ
を準備した。この抄造シートと繊維ウェブとを積層して
積層体を得た。この積層体を、目開き8メッシュの金属
製メッシュスクリーン(金属線で平織組織で製織された
粗目織物)上に、繊維ウェブが金属製メッシュスクリー
ンに接するようにして坦持し、抄造シート側から積層体
に向けて高圧水流を噴射した。高圧水流は、孔径0.1
mmの噴射孔が孔間隔0.6mmで配置された装置を用
い、積層体の上方(即ち、金属製メッシュスクリーンの
位置する反対側上方)50mmの位置から40kg/c
2Gの圧力で積層体に2回噴射して、多数の開孔区域
とコットンリンター及び晒綿が密集し相互に絡み合った
連続区域とを有する不織布を得た。そして、この不織布
より過剰水分の除去と乾燥処理を施し、育苗用不織布と
した。
【0025】実施例2 抄造シートの目付を30g/m2としたこと、及び繊維
ウェブの目付を30g/m2としたことの他は、実施例
1と同様の方法で育苗用不織布を得た。
【0026】実施例3 抄造シートの目付を42g/m2としたこと、及び繊維
ウェブの目付を18g/m2としたことの他は、実施例
1と同様の方法で育苗用不織布を得た。
【0027】実施例4 高圧水流の噴射圧力を20kg/cm2Gに変更した他
は、実施例3と同様の方法で育苗用不織布を得た。
【0028】実施例5 高圧水流の噴射圧力を60kg/cm2Gに変更した他
は、実施例3と同様の方法で育苗用不織布を得た。
【0029】実施例6 金属製メッシュスクリーンの目開きを6メッシュに変更
した他は、実施例3と同様の方法で育苗用不織布を得
た。
【0030】実施例7 金属製メッシュスクリーンの目開きを10メッシュに変
更した他は、実施例3と同様の方法で育苗用不織布を得
た。
【0031】実施例8 積層体として、以下に示す三層積層体を用いる他は、実
施例3と同様の方法で育苗用不織布を得た。三層積層体
は、実施例1で用いたコットンリンターを抄造して得ら
れた目付40g/m2の抄造シートの両面に、実施例1
で用いた木綿の晒綿を用いてランダムカード機で得られ
た目付10g/m2の繊維ウェブを積層したものを用い
た。
【0032】実施例9 木綿の晒綿に代えて、繊度2デニールで繊維長51mm
のレーヨン繊維を用いた他は、実施例3と同様の方法で
育苗用不織布を得た。
【0033】実施例10 木綿の晒綿に代えて、D−乳酸とL−乳酸との共重合比
が、D−乳酸:L−乳酸=1:99(モル比)であるポ
リ乳酸を原料として得られた、繊度2デニールで繊維長
51mmのポリ乳酸繊維を用いた他は、実施例3と同様
の方法で育苗用不織布を得た。
【0034】実施例1〜10に係る育苗用不織布の各種
性能を表1に示した。各種性能としては、一個の開孔区
域の面積、全開孔区域の面積割合、目付、長手方向の引
張強力及び幅方向の引裂強力を挙げた。また、実施例1
〜10に係る育苗用不織布を、所定の長尺形状に裁断
し、播種床に敷設し、水稲の種籾を播き、水耕苗を育苗
した。発芽した100本の苗について、不織布表面から
種籾の根の基部までの高さを測定し、不織布上に浮き上
がる高さが10mm以上の数の割合を浮き上がり率と
し、浮き上がり率が10%以下のものを○、浮き上がり
率が10%を超えるものを×として、表1に示した。更
に、育苗を終えた不織布付き苗をロール状に巻回し、田
植機に載せて苗の移植を行った。その際、不織布が良好
に破断し、苗の掻き取り性の良いものを「良好」とし、
不織布が破断しにくく、苗の掻き取り性の悪いものを
「不良」と評価し、表1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
【作用及び発明の効果】本発明に係る育苗用不織布は、
コットンリンター及び生分解性繊維相互間が密集すると
共に絡み合ってなる連続区域と、この連続区域に囲まれ
て孤立して存在する多数の開孔区域を具備しているた
め、種籾から発芽した根が、開孔区域を通って不織布の
裏面に良好に張る。従って、多くの場合、不織布表面上
に根が浮き上がりにくい。依って、この不織布付き苗を
ロール状に巻回し、田植機に載せて、苗を掻き取りなが
ら田に移植する場合に、苗を傷めることが少ないという
効果を奏する。
【0037】また、本発明に係る育苗用不織布は、連続
区域がコットンリンターと生分解性繊維とが密集すると
共に絡み合ってなり、特に、コットンリンターの鉤状の
折れ曲がりによって、コットンリンター及び生分解性繊
維の絡み合いが強固になり、十分な引張強力を具備させ
ることができる。従って、育苗用不織布に所望の形態安
定性を付与することができ、不織布付き苗を巻回しやす
く、所望のロール状とすることができる。また、十分な
引張強力を持つが、コットンリンターは繊維長が比較的
短いため、引裂強力は低くなっており、不織布付き苗を
田植機に載せて、苗を掻き取る場合、不織布も簡単に破
断しやすく、苗の移植作業が連続して効率的に行えると
いう効果を奏する。
【0038】更に、本発明に係る育苗用不織布は、その
素材であるコットンリンター及び生分解性繊維のいずれ
もが生分解性であるため、田に移植した後、徐々に崩壊
し、最終的には二酸化炭素,水及びその他炭化物となっ
て、消失してしまう。従って、この育苗用不織布は、土
壌中にそのまま残存させておいても、土壌に対して悪影
響を与えるものではないので、育苗用不織布を土壌中か
ら除去するという作業が不要になるという効果も奏す
る。
【0039】また、本発明に係る育苗用不織布の製造方
法を採用すれば、粗目織物と高圧水流とを併用すること
によって、苗の根を通すための開孔区域と、形態安定製
に寄与する連続区域とを具備する育苗用不織布を容易に
得られる。従って、合理的に育苗用不織布を得ることが
できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いるコットンリンターの一例を示す
模式的側面図である。
【図2】本発明の一例に係る育苗用不織布の平面図であ
り、白色区域が連続区域であり、黒色区域が開孔区域で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D04H 1/46 D04H 1/46 A C Fターム(参考) 2B022 AA05 AB20 BA12 BA23 BB02 DA19 2B051 AA02 AB01 AC01 BA02 BA04 BA07 BA08 BA13 BB06 CB02 CB26 CB29 CB35 4L047 AA08 AA12 AA21 AB02 BA04 BA21 CA02 CA19 CB10 CC15

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コットンリンター及び生分解性繊維(但
    し、コットンリンターを除く。)相互間が密集すると共
    に絡み合ってなる連続区域と、該連続区域に囲まれて孤
    立して存在する多数の開孔区域とよりなることを特徴と
    する稲の育苗用不織布。
  2. 【請求項2】 コットンリンターの平均繊維長が5mm
    以下であり、生分解性繊維の平均繊維長が40mm以下
    である請求項1記載の稲の育苗用不織布。
  3. 【請求項3】 一個の開孔区域の面積は0.9〜25m
    2であると共に育苗用不織布中における全開孔区域の
    面積の割合は5〜70%であり、更に該育苗用不織布の
    長手方向の引張強力は1kg/5cm幅以上であり、且
    つ該育苗用不織布の幅方向の引裂強力は200g以下で
    ある請求項1又は2記載の稲の育苗用不織布。
  4. 【請求項4】 生分解性繊維として、木綿,レーヨン短
    繊維,ポリ乳酸系短繊維及び脂肪族ポリエステル系短繊
    維よりなる群から選ばれた1種以上を用いる請求項1乃
    至3のいずれか一項に記載の稲の育苗用不織布。
  5. 【請求項5】 コットンリンターよりなる抄造シートと
    生分解性繊維(但し、コットンリンターを除く。)より
    なる繊維ウェブとの積層体を、粗目織物上に坦持させる
    と共に、該粗目織物が位置する反対側から、該積層体に
    向けて高圧水流を噴射して、該高圧水流の作用によっ
    て、該粗目織物の経糸と緯糸の交点近傍上に存在する該
    コットンリンター及び該生分解性繊維を、該交点近傍か
    ら該交点近傍外の区域に密集させると共に絡み合わせて
    連続区域を形成し、且つ該交点に対応する開孔区域を形
    成することを特徴とする稲の育苗用不織布の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN103493704A (zh) * 2013-08-29 2014-01-08 高深 水稻编织布隔层育秧方法
CN106069451A (zh) * 2016-07-06 2016-11-09 中国水稻研究所 一种水稻机插无纺布育秧方法
CN111567385A (zh) * 2020-05-22 2020-08-25 武汉世纪金辉农业科技有限公司 一种机插短绒棉壮秧剂育秧体及其制备方法
JP7436105B2 (ja) 2020-04-28 2024-02-21 日本製紙パピリア株式会社 複合不織布

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