JP2001052315A - スピンバルブ型薄膜磁気素子及び薄膜磁気ヘッド及びスピンバルブ型薄膜磁気素子の製造方法 - Google Patents

スピンバルブ型薄膜磁気素子及び薄膜磁気ヘッド及びスピンバルブ型薄膜磁気素子の製造方法

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JP2001052315A JP2000016333A JP2000016333A JP2001052315A JP 2001052315 A JP2001052315 A JP 2001052315A JP 2000016333 A JP2000016333 A JP 2000016333A JP 2000016333 A JP2000016333 A JP 2000016333A JP 2001052315 A JP2001052315 A JP 2001052315A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、耐熱性、耐食性に優れたスピンバ
ルブ型薄膜磁気素子の提供と、フリー磁性層の磁化方向
を確実に揃えることができるバイアス構造を備えたスピ
ンバルブ型薄膜磁気素子の提供を目的とする。 【解決手段】 本発明は、反強磁性層と、磁化方向が固
定される固定磁性層と、固定磁性層の上に非磁性導電層
を介して形成されたフリー磁性層と、フリー磁性層の上
にトラック幅に相当する間隔を開けて配置された軟磁性
層と、軟磁性層上に形成され、フリー磁性層の磁化方向
を固定磁性層の磁化方向に対して交差する方向に揃える
バイアス層と、導電層とを基板上に有するスピンバルブ
型薄膜磁気素子であり、反強磁性層およびバイアス層を
Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Au、Ag、C
r、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも
1種または2種以上の元素と、Mnとを含む合金から形
成したものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固定磁性層の固定
磁化の方向と外部磁界の影響を受けるフリー磁性層の磁
化の方向との関係で、電気抵抗が変化するスピンバルブ
型薄膜磁気素子に関し、特に、耐熱性に優れたスピンバ
ルブ型薄膜磁気素子及びこのスピンバルブ型薄膜磁気素
子を備えた薄膜磁気ヘッド及びフリー磁性層の磁化方向
と固定磁性層の磁化方向とを容易に直交させることがで
きるスピンバルブ型薄膜磁気素子の製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】磁気抵抗効果型の磁気ヘッドには、磁気
抵抗効果を示す素子を備えたAMR(Anisotropic Magn
etoresistive)ヘッドと、巨大磁気抵抗効果を示す素子
を備えたGMR(Giant Magnetoresistive)ヘッドとが
知られている。AMRヘッドにおいては、磁気抵抗効果
を示す素子が磁性体からなる単層構造とされている。一
方、GMRヘッドにおいては、複数の材料が積層されて
なる多層構造素子とされている。巨大磁気抵抗効果を生
み出す構造にはいくつかの種類があるが、比較的構造が
単純で、微弱な外部磁界に対して抵抗変化率が高いもの
としてスピンバルブ型薄膜磁気素子が知られている。
【0003】図13および図14は、従来のスピンバル
ブ型薄膜磁気素子の一例を記録媒体との対向面側から見
た場合の構造を示した断面図である。これらの例のスピ
ンバルブ型薄膜磁気素子の上下には、ギャップ層を介し
てシールド層が形成されており、前記スピンバルブ型薄
膜磁気素子、ギャップ層、及びシールド層で、再生用の
GMRヘッドが構成されている。なお、前記再生用のG
MRへッドの上に、磁気記録用のインダクティブヘッド
が積層されていてもよい。 このGMRヘッドは、磁気
記録用のインダクティブヘッドと共に浮上式スライダの
トレーリング側端部などに設けられて薄膜磁気ヘッドを
構成し、ハードディスク等の磁気記録媒体の記録磁界を
検出するものである。なお、図13および図14におい
て、磁気記録媒体の移動方向は、図示Z方向であり、磁
気記録媒体からの漏れ磁界の方向は、Y方向である。
【0004】図13に示すスピンバルブ型薄膜磁気素子
は、基板側から順に反強磁性層、固定磁性層、非磁性導
電層、フリー磁性層が一層ずつ形成された、いわゆるボ
トム型のシングルスピンバルブ型薄膜磁気素子である。
図13に示すスピンバルブ型薄膜磁気素子は、図13の
下側から下地層31、反強磁性層22、固定磁性層2
3、非磁性導電層24、フリー磁性層25および保護層
32で構成された多層膜33と、この多層膜33の両側
に形成された一対のハードバイアス層(永久磁石層)2
9、29、ハードバイアス層29、29上に形成された
一対の電極層28、28とで構成されている。なお、下
地層31および保護層32は、Ta膜などで形成されて
いる。また、多層膜9の上面の幅寸法によってトラック
幅Twが決定される。
【0005】一般的に前記反強磁性層22には、Fe−
Mn合金膜やNi−Mn合金膜が、固定磁性層23およ
びフリー磁性層25には、Ni−Fe合金膜が、非磁性
導電層24にはCu膜が、ハードバイアス層29、29
にはCo−Pt合金膜が、電極層28、28にはCr膜
やW膜が使用されている。
【0006】図13に示すように、固定磁性層23の磁
化は、反強磁性層22との交換異方性磁界により、Y方
向(記録媒体からの漏れ磁界方向:ハイト方向)に単磁
区化され、フリー磁性層25の磁化は、前記ハードバイ
アス層29、29からのバイアス磁界の影響を受けてX
1方向と反対方向に揃えられる。即ち、固定磁性層23
の磁化とフリー磁性層25の磁化とが直交するように設
定されている。
【0007】このスピンバルブ型薄膜素子では、ハード
バイアス層29、29上に形成された電極層28、28
から、固定磁性層23、非磁性導電層24およびフリー
磁性層25に検出電流(センス電流)が与えられる。ハ
ードディスクなどの磁気記録媒体の走行方向は、Z方向
である。磁気記録媒体からの漏れ磁界方向がY方向に与
えられると、フリー磁性層25の磁化がX1方向と反対
方向からY方向に向けて変化する。このフリー磁性層2
5内での磁化方向の変動と、固定磁性層23の固定磁化
方向との関係で、電気抵抗が変化(これを磁気抵抗変化
という)し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化に
より、記録媒体からの漏れ磁界を検出することができ
る。
【0008】また図14に示すスピンバルブ型薄膜磁気
素子は、基板側(図14の下側)から順に反強磁性層、
固定磁性層、非磁性導電層、フリー磁性層が一層ずつ形
成された、いわゆるボトム型のシングルスピンバルブ型
薄膜磁気素子である。
【0009】図14において、符号Kは基板を示してい
る。この基板Kの上には、反強磁性層22が形成されて
いる。更に、前記反強磁性層22の上には、固定磁性層
23が形成され、この固定磁性層23の上には、非磁性
導電層24が形成され、更に、前記非磁性導電層24の
上には、フリー磁性層25が形成されている。また、前
記フリー磁性層25の上には、バイアス層26、26が
トラック幅Twと同じ間隔をあけて設けられ、前記バイ
アス層26、26の上には、導電層28、28が設けら
れている。
【0010】前記固定磁性層23は、例えば、Co膜、
NiFe合金、CoNiFe合金、CoFe合金などに
より形成されている。また、前記反強磁性層22は、N
iMn合金により形成されている。前記のバイアス層
は、交換異方性磁界を発生させる熱処理を必要としない
面心立方晶で不規則結晶構造のFeMn合金などの反強
磁性材料により形成されている。
【0011】図14に示す固定磁性層23は、前記反強
磁性層22との界面にて発生する交換結合による交換異
方性磁界により一方向に磁化されている。そして、前記
固定磁性層23の磁化方向は、図示Y方向、即ち記録媒
体から離れる方向(ハイト方向)に固定されている。
【0012】また、前記フリー磁性層25は前記バイア
ス層26の交換異方性磁界によって磁化されて単磁区化
されている。そして、前記フリー磁性層25の磁化方向
は、図示X1方向と反対方向、即ち固定磁性層23の磁
化方向と直角に交差する方向に揃えられている。前記フ
リー磁性層25が、前記バイアス層26の交換異方性磁
界により単磁区化されることによって、バルクハウゼン
ノイズの発生が防止される。
【0013】この従来例のスピンバルブ型薄膜磁気素子
においては、導電層28からフリー磁性層25、非磁性
導電層24、固定磁性層23に定常電流が与えられ、Z
方向に走行する磁気記録媒体からの漏れ磁界が図示Y方
向に沿って与えられると、フリー磁性層25の磁化方向
が、図示X1方向と反対方向からY方向に向けて変動す
る。このフリー磁性層25内での磁化方向の変動と固定
磁性層23の磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、こ
の抵抗変化に基づく電圧変化により磁気記録媒体からの
漏れ磁界が検出される。
【0014】図14のようなスピンバルブ型薄膜磁気素
子を製造するには、図15に示すように、反強磁性層2
2からフリー磁性層25までの各層を積層形成し、磁場
中で熱処理(アニール)を施すことにより、固定磁性層
23と反強磁性層22との界面にて交換異方性磁界を発
生させて、固定磁性層23の磁化方向を図示Y方向に固
定したのち、更に、図16に示すように、ほぼトラック
幅に相当する幅のリフトオフレジスト351を形成す
る。ついで、図17に示すように、リフトオフレジスト
351に覆われていないフリー磁性層25の表面に、バ
イアス層26および導電層28を形成し、前記リフトオ
フレジスト351を除去したのち、フリー磁性層25の
磁化方向をトラック幅方向に揃えることにより、図14
に示す磁化方向のスピンバルブ型薄膜磁気素子が製造さ
れる。
【0015】次に、図18は、従来の他の例のスピンバ
ルブ型薄膜素子を備えた薄膜磁気ヘッドの要部の一例を
記録媒体との対向面側から見た場合の構造を示した断面
図である。図18において、符号MR3は、スピンバル
ブ型薄膜素子を示している。図18において、符号a1
2は積層体である。この積層体a12は、下地層121
上に反強磁性層122が形成され、該反強磁性層122
上に固定磁性層153が形成され、更に固定磁性層15
3上に非磁性導電層124が形成され、該非磁性導電層
124上にフリー磁性層175が形成され、更にフリー
磁性層175上に保護層127が形成されてなるもので
ある。
【0016】この例のスピンバルブ型薄膜素子MR3の
フリー磁性層175は、非磁性中間層176と、この非
磁性中間層176を挟む第1のフリー磁性層177と第
2のフリー磁性層178とから構成されている。第1の
フリー磁性層177は、非磁性中間層176より保護層
127側に設けられ、第2のフリー磁性層178は、非
磁性中間層176より非磁性導電層124側に設けられ
ている。また、第2のフリー磁性層178は、拡散防止
層179と強磁性層180とから形成されている。
【0017】第2のフリー磁性層178の厚さt2は、
第1のフリー磁性層177の厚さt1よりも厚く形成さ
れている。また、第1のフリー磁性層178及び第2の
フリー磁性層178の飽和磁化をそれぞれM1、M2とし
たとき、第1のフリー磁性層177及び第2のフリー磁
性層178の磁気的膜厚はそれぞれM1・t1、M2・t2
となる。なお、第2のフリー磁性層178が拡散防止層
179及び強磁性層180から構成されているため、第
2のフリー磁性層178の磁気的膜厚M2・t2は、拡散
防止層179の磁気的膜厚と強磁性層180の磁気的膜
厚との和となる。
【0018】そしてこのフリー磁性層175にあって
は、第1のフリー磁性層177と第2のフリー磁性層1
78との磁気的膜厚の関係が、M2・t2>M1・t1とす
るように構成されている。また、先の第1のフリー磁性
層177及び第2のフリー磁性層178は、相互に反強
磁性的に結合とされている。即ち、第2のフリー磁性層
178の磁化方向がハードバイアス層126、126に
より図示X1方向に揃えられた場合、第1のフリー磁性
層177の磁化方向は図示X1方向の反対方向に揃えら
れる。
【0019】また、先の第1、第2のフリー磁性層17
7、178の磁気的膜厚の関係がM 2・t2>M1・t1
されていることから、第2のフリー磁性層178の磁化
が残存した状態となり、フリー磁性層175全体の磁化
方向が図示X1方向に揃えられる。このときのフリー磁
性層175の実効膜厚は、(M2・t2−M1・t1)とさ
れる。このように、第1のフリー磁性層177と第2の
フリー磁性層178は、それぞれの磁化方向が反平行方
向となるように反強磁性的に結合され、かつ磁気的膜厚
の関係がM2・t2>M1・t1とされていることから、人
工的なフェリ磁性状態とされている。またこれにより、
フリー磁性層175の磁化方向と固定磁性層153の磁
化方向とが交差する関係となる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図13
に示す従来のスピンバルブ型薄膜磁気素子では、以下に
説明するような問題が発生するおそれがあった。図13
に示す固定磁性層23の磁化は、上述したように、図示
Y方向に単磁区化されて固定されているが、前記固定磁
性層23の両側には、X1方向と反対方向に磁化されて
いるハードバイアス層29、29が設けられている。そ
のため特に、固定磁性層23の両側の磁化が、前記ハー
ドバイアス層29、29からのバイアス磁界の影響を受
け、図示Y方向に固定され難くなっている。
【0021】即ち、前記X1方向と反対方向のハードバ
イアス層29、29の磁化の影響を受けて、X1方向と
反対方向に単磁区化されているフリー磁性層25の磁化
と、固定磁性層23の磁化とは、特に、多層膜33の側
端部付近では、直交関係になり難い。前記フリー磁性層
25の磁化と、固定磁性層23の磁化とを直交関係にし
ておく理由は、フリー磁性層25の磁化が小さな外部磁
界でも容易に変動が可能で、電気抵抗を大きく変化させ
ることができ、再生感度を向上させることができるから
である。更に、前記磁化が直交関係にあると、良好な対
称性を有する出力波形を得ることが可能になるためであ
る。
【0022】しかも、フリー磁性層25のうち、その側
端部付近における磁化は、ハードバイアス層29、29
からの強い磁化の影響を受けるために不要に固定されや
すくなる傾向にあり、外部磁界に対して磁化が敏感に変
動しにくくなっており、図13に示すように、多層膜3
3の側端部付近には、再生感度の悪い不感領域が形成さ
れる。
【0023】前述の多層膜33のうち、不感領域を除い
た中央部分の領域が、実質的に記録磁界の再生に寄与
し、磁気抵抗効果を発揮する感度領域であり、この感度
領域の幅は、多層膜33の形成時に設定されたトラック
幅Twよりも不感領域の幅寸法分だけ短くなっており、
不感領域のばらつきのために正確なトラック幅を画定す
ることが困難となっている。そのため、トラック幅を狭
くして高記録密度化に対応することが難しくなるという
問題がある。
【0024】また、図14に示すスピンバルブ型の薄膜
磁気素子は、反強磁性材料からなるバイアス層を用いた
エクスチェンジバイアス方式により、フリー磁性層の磁
化方向を固定磁性層の磁化方向に対して90゜に交差す
る方向に揃えるものである。前記エクスチェンジバイア
ス方式は、不感領域があるため実効トラック幅の制御が
困難であるハードバイアス方式と比較して、トラック幅
の狭い高密度記録に対応するスピンバルブ型薄膜磁気素
子に適した方式である。
【0025】しかしながら、図14に示すスピンバルブ
型薄膜磁気素子においては、反強磁性層22がNi−M
n合金で形成されているため耐食性に問題があった。ま
た、反強磁性層22にNi−Mn合金またはFe−Mn
合金を用いたスピンバルブ型薄膜磁気素子では、薄膜磁
気ヘッドの製造工程でさらされるトリポリ燐酸ソーダな
どを含んだ弱アルカリ性溶液や乳化剤により腐食して、
交換異方性磁界が小さくなってしまうなどの問題があ
る。
【0026】また、反強磁性層22がNi−Mn合金で
形成されていることにより、バイアス層26、26に使
用する反強磁性材料に制約があり、その結果、バイアス
層26、26の耐熱性、耐食性が悪いという不都合があ
った。即ち、耐熱性の高いバイアス層26、26を形成
するためには、Ni−Mn合金からなる反強磁性層22
と固定磁性層23の界面に、図示Y方向に作用する交換
異方性磁界に対し、交差する方向に磁場中で熱処理を施
すことにより、バイアス層26、26とフリー磁性層2
5の界面に、X1方向と反対方向に交換異方性磁界を発
生可能なNi−Mn合金などの反強磁性材料を選択しな
ければならない。
【0027】しかし、前記磁場中で熱処理を施した際
に、反強磁性層22と固定磁性層23の界面に作用する
交換異方性磁界がY方向からX1方向と反対方向に傾
き、固定磁性層23の磁化方向とフリー磁性層25の磁
化方向が非直交となってしまい、出力信号波形の対称性
が得られなくなってしまう問題があった。そこで、バイ
アス層26、26には、磁場中加熱処理を必要とせず、
磁場中で成膜直後に交換異方性磁界を発生する反強磁性
材料を選択する必要があった。このような理由により、
バイアス層26、26は、一般的に、面心立方晶で不規
則結晶構造を有するFeMn合金により形成されてい
る。
【0028】しかしながら、磁気記録装置などに装着し
た場合には、装置内の温度上昇または検出電流により発
生するジュール熱の発生により、素子部の温度が100
℃を超える高温となるため、交換異方性磁界が低下し、
フリー磁性層25を単磁区化することが困難となり、結
果として、バルクハウゼンノイズを発生してしまう問題
があった。また、Fe−Mn合金は、Ni−Mn合金以
上に耐食性が悪く、薄膜磁気ヘッドの製造工程でさらさ
れるトリポリ燐酸ソーダなどを含んだ弱アルカリ性溶液
や乳化剤などにより腐食して、交換異方性磁界が小さく
なってしまうなどの問題があるのみならず、磁気記録装
置内においても腐食が進行して耐久性に劣るという問題
がある。
【0029】また、図15〜図17に示す従来のスピン
バルブ型薄膜磁気素子の製造方法にあっては、図16に
示すリフトオフレジスト351を形成する工程で、前記
基板と前記バイアス層との間に形成される最上層の表面
が大気に触れてしまい、大気に触れた表面をArなどの
希ガスによりイオンミリングや逆スパッタによりクリー
ニングしてからその上の層を形成する必要がある。この
ため、製造工程が増大する問題がある。更に、前記最上
層の表面をイオンミリングや逆スパッタによりクリーニ
ングする必要があるため、再付着物によるコンタミや、
表面の結晶状態の乱れによる交換異方性磁界の発生に対
する悪影響など、クリーニングすることに起因する不都
合が生じてしまう。
【0030】また、図18に示したスピンバルブ型薄膜
素子MR3においては、積層体a12の側面上端付近で
のハードバイアス層126、126の先端部126a、
126aから第1のフリー磁性層177に与えられる磁
界が強く、しかもこの磁界は第1のフリー磁性層177
に付与したい磁界方向と逆向きの磁界であるので、ハー
ドバイアス層126、126の磁界が後述のスピンフロ
ップ磁界(Hsf)よりも大きくなると、本来第1のフリ
ー磁性層177に付与したい磁界方向と逆向きの磁界が
第1のフリー磁性層177の両端部(各ハードバイアス
層126の近傍部分)に作用されることとなり、第1の
フリー磁性層177の中央部では磁化の方向が第2のフ
リー磁性層178の磁化の向きの逆向き(X1方向の逆
向き)に揃っているものの、両端部では磁化の方向が乱
れてしまう問題がある。
【0031】このように第1のフリー磁性層177の両
端部の磁化の方向が乱れると、磁化の向きが第1のフリ
ー磁性層177の磁化の方向と反平行方向(X1方向)
に揃えられる第2のフリー磁性層178は、中央部の磁
化の方向が第1のフリー磁性層177の磁化の向きと逆
向き(X1方向)に揃っているものの、両端部の磁化の
方向が乱れてしまい、第1、第2のフリー磁性層17
7、178の両端部の磁化の方向が反平行に揃わなくな
る結果、トラック幅Twの両端のところで、再生波形の
不安定性の原因となり、サーボエラー等の問題を引き起
こすおそれを有していた。
【0032】次に、上記スピンフロップ磁界について図
19を用いて説明する。図19は、フリー磁性層のM−
H曲線を示す図である。このM−H曲線とは、図19に
示す構成のスピンバルブ型薄膜素子MR3のフリー磁性
層175に対してトラック幅方向から外部磁界Hを印加
したときの、フリー磁性層175の磁化Mの変化を示し
たものである。図19では外部磁界Hがハードバイアス
層126、126からのバイアス磁界に相当する。
【0033】また、図19において、F1で示す矢印
は、第1のフリー磁性層177の磁化方向を表し、F2
で示す矢印は、第2のフリー磁性層178の磁化方向を
表す。図19に示すように、外部磁界Hが小さいとき
は、第1のフリー磁性層177と第2のフリー磁性層1
78が反強磁性的に結合した状態、即ち、矢印F1と矢
印F2の方向が反平行になっているが、外部磁界Hの大
きさがある値を超えると、矢印F1と矢印F2の方向が反
平行に揃わなくなり、第1フリー磁性層177と第2フ
リー磁性層178の反強磁性的結合が壊され、フェリ磁
性状態を維持できなくなる。これがスピンフロップ転移
である。またこのスピンフロップ転移が起きたときの外
部磁界の大きさがスピンフロップ磁界であり、図19で
はHsfで示している。そして、更に外部磁界Hをスピン
フロップ磁界Hsfより大きくしていくと、矢印F1の方
向が更に回転して、矢印F2の方向の平行方向を向き、
即ち、矢印F1は元の方向と180゜異なる方向を向
き、フェリ磁性状態が完全に崩れてしまう。これが飽和
磁界であって、図19ではHSで示している。
【0034】従って、図19の第1、第2のフリー磁性
層177、178の両端部の磁化の方向は、例えば、図
20の矢印F1で示す第1のフリー磁性層177の領域
に存在する各種矢印のように第1フリー磁性層177の
両端部においてより大きく乱れることとなり、この第1
フリー磁性層177の磁化の方向に対してフェリ状態の
反平行状態になろうとする磁化が図20の矢印F2に示
す第2のフリー磁性層178の領域のような方向を向く
関係となってしまう。従って、図18に示す構造のスピ
ンバルブ型薄膜素子MR3においてもトラック幅Twの
両端のところで、再生波形不安定性の原因となり、サー
ボエラー等の問題を引き起こすおそれを有していた。図
20に示す磁化の状態を更に詳述すると、第1のフリー
磁性層177の左右両端側ではハードバイアス層からの
強い逆方向磁界がかかり、これにより第2のフリー磁性
層178の磁化分布も乱れてバルクハウゼンノイズ等の
発生が考えられ、磁気的安定性に不安を有することにな
る。
【0035】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたものであって、バイアス層の材質を改良すること
により、耐熱性、耐食性に優れたスピンバルブ型薄膜磁
気素子を提供するとともに、フリー磁性層の磁化方向を
確実に揃えることができるバイアス構造を備えたスピン
バルブ型薄膜磁気素子を提供することを課題としてい
る。更に本発明は、フリー磁性層を2層に分離した構造
を採用し、フリー磁性層にバイアスが印加される構造を
採用しても、各フリー磁性層の端部側での磁化の乱れを
生じ難い構造としてバイアスを良好に作用できるように
構成し、バルクハイゼンノイズの発生を抑え、安定性を
高めたスピンバルブ型薄膜磁気素子を提供することを課
題としている。
【0036】また、フリー磁性層の磁化方向と固定磁性
層の磁化方向とを容易に直交させることができる前記ス
ピンバルブ型薄膜磁気素子の製造方法を提供することを
課題としている。更にまた、前記スピンバルブ型薄膜磁
気素子を備え、耐久性および耐熱性に優れ、十分な交換
異方性磁界が得られる信頼性の高い薄膜磁気ヘッドを提
供することを課題としている。
【0037】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は以下の構成を採用した。本発明のスピン
バルブ型薄膜磁気素子は、反強磁性層と、前記反強磁性
層の上に形成され、前記反強磁性層との交換異方性磁界
により磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁
性層の上に非磁性導電層を介して形成されたフリー磁性
層と、前記フリー磁性層に接してトラック幅に相当する
間隔を開けて配置された軟磁性層と、前記軟磁性層に接
して形成され、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定
磁性層の磁化方向に対して交差する方向に揃えるバイア
ス層と、前記フリー磁性層に検出電流を与える導電層と
を基板上に有するスピンバルブ型薄膜磁気素子であり、
前記反強磁性層、および前記バイアス層は、Pt、P
d、Rh、Ru、Ir、Os、Au、Ag、Cr、N
i、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種ま
たは2種以上の元素と、Mnとを含む合金からなること
を特徴とするものである。
【0038】このようなスピンバルブ型薄膜磁気素子
は、反強磁性層およびバイアス層が、上記の合金からな
るものであるので、交換異方性磁界の温度特性が良好と
なり、耐熱性、耐食性に優れたスピンバルブ型薄膜磁気
素子を提供することが可能となる。また、装置内の温度
が高温となる薄膜磁気ヘッドなどの装置に備えられた場
合の耐久性が良好で、温度変化による交換異方性磁界
(交換結合磁界)の変動が少ない優れたスピンバルブ型
薄膜磁気素子を得ることができる。更にまた、反強磁性
層を上記の合金で形成することで、ブロッキング温度が
高いものとなり、反強磁性層に大きな交換異方性磁界を
発生させることができるため、固定磁性層の磁化方向を
強固に固定することができる。また、フリー磁性層とバ
イアス層の間に軟磁性層が形成されているため、フリー
磁性層の磁化方向を確実に揃えることができる。
【0039】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
においては、前記固定磁性層と前記フリー磁性層の少な
くとも一方が、非磁性中間層を介して2つに分断され、
分断された層どうしで磁化の向きが180度異なるフェ
リ磁性状態とされたことを特徴とするものとしてもよ
い。
【0040】少なくとも固定磁性層が非磁性中間層を介
して2つに分断されたスピンバルブ型薄膜磁気素子とし
た場合、2つに分断された固定磁性層のうち一方が他方
の固定磁性層を適正な方向に固定する役割を担い、固定
磁性層の状態を非常に安定した状態に保つことが可能と
なる。一方、少なくともフリー磁性層が非磁性中間層を
介して2つに分断されスピンバルブ型薄膜磁気素子とし
た場合、2つに分断されたフリー磁性層どうしの間に交
換結合磁界が発生し、フェリ磁性状態とされ、外部磁界
に対して感度よく反転できるものとなる。
【0041】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
においては、前記反強磁性層は、下記の組成式からなる
合金であることが望ましい。 XmMn100-m 但し、Xは、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Osのう
ちの少なくとも1種以上の元素であり、組成比を示すm
は、48原子%≦m≦60原子%である。より好ましい
組成比を示すmは、48原子%≦m≦58原子%であ
る。
【0042】更に、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
においては、前記バイアス層は、下記の組成式からなる
合金であることが望ましい。 XmMn100-m 但し、Xは、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Osのう
ちの少なくとも1種以上の元素であり、組成比を示すm
は、52原子%≦m≦60原子%である。
【0043】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
においては、前記反強磁性層は、下記の組成式からなる
合金であってもよい。 PtmMn100-m-nn 但し、Dは、Pd、Rh、Ru、Ir、Osのうちの少
なくとも1種または2種以上の元素であり、組成比を示
すm、nは48原子%≦m+n≦60原子%、0.2原
子%≦n≦40原子%である。より好ましい組成比を示
すm、nは、48原子%≦m+n≦58原子%、0.2
原子%≦n≦40原子%である。
【0044】更にまた、上記のスピンバルブ型薄膜磁気
素子においては、前記バイアス層は、下記の組成式から
なる合金であってもよい。 PtmMn100-m-nn 但し、Dは、Pd、Rh、Ru、Ir、Osのうちの少
なくとも1種または2種以上の元素であり、組成比を示
すm、nは52原子%≦m+n≦60原子%、0.2原
子%≦n≦40原子%である。
【0045】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
においては、前記反強磁性層は、下記の組成式からなる
合金であってもよい。 PtqMn100-q-jj 但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、X
e、Krのうちの少なくとも1種または2種以上の元素
であり、組成比を示すq、jは、48原子%≦q+j≦
60原子%、0.2原子%≦j≦10原子%である。よ
り好ましくは組成比を示すq、jは、48原子%≦q+
j≦58原子%、0.2原子%≦j≦10原子%であ
る。
【0046】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
においては、前記バイアス層は、下記の組成式からなる
合金であってもよい。 PtqMn100-q-jj 但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、X
e、Krのうちの少なくとも1種または2種以上の元素
であり、組成比を示すq、jは、52原子%≦q+j≦
60原子%、0.2原子%≦j≦10原子%である。
【0047】とくに、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素
子においては、反強磁性層とバイアス層とを構成する合
金の組成を同一とする場合には、次の〜の組み合わ
せが好ましい。 即ち、反強磁性層およびバイアス層を構成する合金の
組成比が以下の場合であることが好ましい。 XmMn100-m 但し、Xは、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのう
ちの少なくとも1種以上の元素であり、組成比を示すm
は、52原子%≦m≦60原子%である。また、上記の
反強磁性層およびバイアス層の組成比を示すmが、52
原子%≦m≦56.3原子%であることがより好まし
い。
【0048】また、反強磁性層およびバイアス層を構
成する合金の組成比が以下の場合であることが好まし
い。 PtqMn100-q-jj 但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、X
e、Krのうちの少なくとも1種または2種以上の元素
であり、組成比を示すq、jは、52原子%≦q+j≦
60原子%、0.2原子%≦j≦10原子%である。ま
た、上記の反強磁性層およびバイアス層の組成比を示す
q、jが、52原子%≦q+j≦56.3原子%、0.2
原子%≦j≦10原子%であることがより好ましい。
【0049】また、反強磁性層およびバイアス層を構
成する合金の組成比が以下の場合であることが好まし
い。 PtmMn100-m-nn 但し、Dは、Pd、Rh、Ru、Ir、Osのうちの少
なくとも1種又は2種以上の元素であり、組成比を示す
m、nは、52原子%≦m+n≦60原子%、0.2原
子%≦n≦40原子%である。また、上記の反強磁性層
およびバイアス層の組成比を示すm、nが、52原子%
≦m+n≦56.3原子%、0.2原子%≦n≦40原子
%であることが好ましい。
【0050】また、反強磁性層とバイアス層を構成する
合金の組成を異ならしめる場合は、次の〜の組み合
わせが好ましい。 即ち、バイアス層が組成式XmMn100-mで表され、X
が、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少な
くとも1種以上の元素であり、組成比を示すmが、52
原子%≦m≦60原子%の合金であると共に、反強磁性
層が、組成式X mMn100-mで表され、Xが、Pt、P
d、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少なくとも1種以
上の元素であり、組成比を示すmが、48原子%≦m≦
58原子%の合金であることが好ましい。また、バイア
ス層の組成比を示すmが、52原子%≦m≦54原子%
または56.8原子%≦m≦60原子%であることがよ
り好ましい。
【0051】バイアス層が、組成式PtqMn100-q-j
jで表され、Lが、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、
Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2種以
上の元素であり、組成比を示すq、jが、52原子%≦
q+j≦60原子%、0.2原子%≦j≦10原子%の
合金であるとともに、反強磁性層が組成式PtqMn
100-q-jjで表され、Lが、Au、Ag、Cr、Ni、
Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または
2種以上の元素であり、組成比を示すq、jが、48原
子%≦q+j≦58原子%、0.2原子%≦j≦10原
子%の合金であることが好ましい。また、バイアス層の
組成比を示すq、jが52原子%≦q+j≦54原子
%、0.2原子%≦j≦10原子%または56.8原子%
≦q+j≦60原子%、0.2原子%≦j≦10原子%
であることがより好ましい。
【0052】バイアス層が、組成式PtmMn100-m-n
nで表され、Dが、Pd、Ir、Rh、Ru、Osの
うちの少なくとも1種または2種以上の元素であり、組
成比を示すm、nが、52原子%≦m+n≦60原子
%、0.2原子%≦n≦40原子%の合金であるととも
に、反強磁性層が組成式PtmMn100-m-nnで表さ
れ、Dが、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少な
くとも1種または2種以上の元素であり、組成比を示す
m、nが、48原子%≦m+n≦58原子%、0.2原
子%≦n≦40原子%の合金であることが好ましい。ま
た、バイアス層の組成比を示すm、nが52原子%≦m
+n≦54原子%、0.2原子%≦n≦40原子%また
は56.8原子%≦m+n≦60原子%、0.2原子%≦
n≦40原子%であることがより好ましい。
【0053】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
においては、前記軟磁性層は、NiFe合金からなるこ
とが望ましい。
【0054】本発明において、前記フリー磁性層のトラ
ック幅に相当する部分の両側に凹部が形成され、これら
の凹部を埋め込むように軟磁性層が積層され、これら軟
磁性層が前記フリー磁性層に前記凹部底面でもって直接
接合されるとともに、これら軟磁性層上にバイアス層と
導電層が積層されてなることを特徴とする構造を採用し
ても良い。一般に、強磁性体と強磁性体の界面での交換
結合より、強磁性体と反強磁性体の界面での交換結合の
方が界面での汚染や結晶性の乱れの悪影響を受け易い。
従って、軟磁性層とバイアス層は同一成膜装置内で連続
的に成膜することが必要である。フリー磁性層に凹部を
設ける事なく軟磁性層を成膜した場合、トラック幅の両
側部分の合計の(強磁性膜厚×飽和磁化)がフリー磁性
層の(強磁性膜厚×飽和磁化より大幅に厚くなる。)フ
リー磁性層が受ける縦バイアスの強さはトラック両端部
分の(強磁性膜厚×飽和磁化)をフリー磁性層の(強磁
性膜厚×飽和磁化)で割った値に比例するために、凹部
を設けない場合は縦バイアスが必要以上に強くなり過ぎ
て、トラック両端部分に不感領域を生じたり、素子全体
の感度が低下するといった問題を生じる場合があった。
また、あまりに軟磁性層を厚くし過ぎるとバイアス層と
軟磁性層間の交換結合磁界が膜厚に反比例して小さくな
るために、わずかな外乱磁界で縦バイアス状態が変化し
て再生波形の不安定性に結び付くといった不具合を生じ
る場合も考えられる。軟磁性層の厚みを極力薄くするこ
とでこれらは改善は可能であるが、あまり軟磁性層を薄
くすると軟磁性層が充分な結晶性を保てなくなること等
により、軟磁性層とバイアス層間の交換結合磁界が逆に
劣化してくる問題がある。凹部を設けた場合は、凹部の
深さ分だけ継ぎ足した軟磁性層の分の一部の膜厚が相殺
されるために、必要以上に縦バイアスが強くなりにくい
とともに、軟磁性層間の交換結合磁界も低下しにくいた
め、再生感度とトラック幅の制御性と再生波形の安定性
が向上する効果がある。第2の効果として、凹部をイオ
ンミリング等で掘り込むことで、フリー磁性層表面の汚
染物質を効果的に除去することができ、軟磁性層とフリ
ー磁性層間の強磁性交換結合をより強固にしてフリー磁
性層に縦バイアスを有効に伝達する効果もある。また、
フリー磁性層の上にCu等のバックド層やTa等の酸化
防止層が積層されている場合であっても、凹部を掘り込
むことで確実にフリー磁性層を構成する強磁性体表面を
露出させることができる。
【0055】更に本発明において、前記フリー磁性層が
非磁性中間層を介して2つに分断されてなり、前記固定
磁性層から遠い側のフリー磁性層が第1のフリー磁性
層、前記固定磁性層に近い側のフリー磁性層が第2のフ
リー磁性層とされた場合に、前記第1のフリー磁性層の
磁気的膜厚が前記第2のフリー磁性層の磁気的膜厚より
も小さくされてなることを特徴とする構造を採用しても
良い。
【0056】更に、前記の課題は、基板上に、反強磁性
層と、固定磁性層と、非磁性導電層と、フリー磁性層と
を順次積層して第1の積層体を形成する工程と、前記第
1の積層体に、トラック幅方向と直交する方向である第
1の磁界を印加しつつ第1の熱処理温度で熱処理し、前
記反強磁性層に交換異方性磁界を発生させて前記固定磁
性層の磁化を固定する工程と、前記第1の積層体の上
に、トラック幅に相当する間隔を開けて軟磁性層を形成
し、前記軟磁性層の上にバイアス層を形成し、前記バイ
アス層の上に前記フリー磁性層に検出電流を与える導電
層を形成して第2の積層体とする工程と、トラック幅方
向に、前記反強磁性層の交換異方性磁界よりも小さい第
2の磁界を印加しつつ、第2の熱処理温度で熱処理し、
前記フリー磁性層に前記固定磁性層の磁化方向と交差す
る方向のバイアス磁界を付与する工程とを有することを
特徴とするスピンバルブ型薄膜磁気素子の製造方法によ
って解決できる。
【0057】上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子の製造
方法においては、前記反強磁性層および前記バイアス層
に、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Au、A
g、Cr、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少な
くとも1種または2種以上の元素と、Mnとを含む合金
を用いることが好ましい。また、上記のスピンバルブ型
薄膜磁気素子の製造方法においては、前記第1の熱処理
温度は、220℃〜270℃の範囲であることが好まし
い。更にまた、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子の製
造方法においては、前記第2の熱処理熱度は、250℃
〜270℃の範囲であることが好ましい。
【0058】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
の製造方法においては、前記第2の磁界は、10〜60
0 Oe(800〜48000A/m)の範囲であるこ
とが望ましい。
【0059】図21は、ボトム型スピンバルブ型薄膜磁
気素子とトップ型スピンバルブ型薄膜磁気素子における
反強磁性層の熱処理温度と交換異方性磁界との関係を示
したグラフである。図21から明らかなように、反強磁
性層と基板との距離が近い(または、固定磁性層の下に
反強磁性層が配置された)ボトム型スピンバルブ型薄膜
磁気素子の反強磁性層(■印)の交換異方性磁界は、2
00℃で既に発現し、240℃付近で600(Oe)を
越えている。一方、反強磁性層と基板との距離がボトム
型スピンバルブ型薄膜磁気素子よりも遠い(または、固
定磁性層の上に反強磁性層が配置された)トップ型スピ
ンバルブ型薄膜磁気素子の反強磁性層(◆印)の交換異
方性磁界は、240℃付近で発現し、約260℃付近に
おいて600 Oe(48000A/m)を越えてい
る。
【0060】このように、反強磁性層と基板との距離が
近い(または、固定磁性層の下に反強磁性層が配置され
た)ボトム型スピンバルブ型薄膜磁気素子の反強磁性層
は、反強磁性層と基板との距離がボトム型スピンバルブ
型薄膜磁気素子よりも遠い(または、固定磁性層の上に
反強磁性層が配置された)トップ型スピンバルブ型薄膜
磁気素子と比較して、比較的低い熱処理温度で高い交換
異方性磁界が得られることがわかる。
【0061】本発明のスピンバルブ型薄膜磁気素子は、
反強磁性層と基板との距離が近いボトム型スピンバルブ
型薄膜磁気素子であり、前記反強磁性層に使用される材
質と同様の材質によって形成されたバイアス層が反強磁
性層よりも基板から遠い位置に配置されている。また、
固定磁性層と基板との距離が近いボトム型のスピンバル
ブ型薄膜磁気素子は、固定磁性層の下に反強磁性層が配
置され、反強磁性層と基板との距離がボトム型スピンバ
ルブ型薄膜磁気素子よりも遠いトップ型のスピンバルブ
型薄膜磁気素子は、固定磁性層の上に反強磁性層が配置
されている。
【0062】したがって、本発明のスピンバルブ型薄膜
磁気素子の製造方法において、例えば、第1の磁界を印
加しつつ、第1の熱処理温度(220〜270℃)で前
記第1の積層体を熱処理すると、反強磁性層に交換異方
性磁界が生じ、固定磁性層の磁化方向が同一方向に固定
される。また、反強磁性層の交換異方性磁界は、600
(Oe)以上となる。次に、第1の磁界と直交する方向
の第2の磁界10〜600 Oe(800〜48000
A/m)を印加しつつ、第2の熱処理温度(250〜2
70℃)で、前記第2の積層体を熱処理すると、バイア
ス層の交換異方性磁界が生じ、フリー磁性層の磁化方向
が第1の磁界に対して交差する方向とされる。また、バ
イアス層の交換異方性磁界は、600 Oe(4800
0A/m)以上となる。
【0063】このとき、第2の磁界を先の第1の熱処理
にて発生した反強磁性層の交換異方性磁界よりも小さく
しておけば、反強磁性層に第2の磁界が印加されても、
反強磁性層の交換異方性磁界が劣化することがなく、固
定磁性層の磁化方向を固定したままにすることが可能に
なる。このことにより、固定磁性層の磁化方向とフリー
磁性層の磁化方向とを交差する方向にすることができ
る。
【0064】したがって、上記のスピンバルブ型薄膜磁
気素子の製造方法では、耐熱性に優れたPtMn合金な
どの合金を反強磁性層だけでなくバイアス層にも使用
し、固定磁性層の磁化方向に悪影響を与えることなく、
バイアス層にフリー磁性層の磁化方向を固定磁性層の磁
化方向に対して交差する方向に揃える交換異方性磁界を
発生させることができ、フリー磁性層の磁化方向を固定
磁性層の磁化方向に対して交差する方向に揃えることが
できるため、耐熱性に優れたスピンバルブ型薄膜磁気素
子を提供することが可能となる。
【0065】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
の製造方法は、第1の積層体の上に軟磁性層を形成し、
前記軟磁性層の上にバイアス層を形成する方法であるの
で、軟磁性層を形成したのち、真空を破ることなく前記
バイアス層を形成することができ、前記バイアス層が形
成される表面をイオンミリングや逆スパッタによりクリ
ーニングする必要がないため、再付着物によるコンタミ
や、表面の結晶状態の乱れによる交換異方性磁界の発生
に対する悪影響など、クリーニングすることに起因する
不都合が生じない優れた製造方法とすることができる。
また、前記バイアス層を形成する前に前記バイアス層が
形成される面をクリーニングする必要がないため、容易
に製造することができる。
【0066】また、本発明の薄膜磁気ヘッドは、スライ
ダに上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子が備えられてな
ることを特徴とする。このような薄膜磁気ヘッドとする
ことで、耐久性および耐熱性、耐食性に優れ、十分な交
換異方性磁界が得られる信頼性の高い薄膜磁気ヘッドと
することができる。
【0067】
【発明の実施の形態】以下、本発明のスピンバルブ型薄
膜磁気素子の実施形態について、図面を参照して詳しく
説明する。 [第1の実施形態]図1は、本発明の第1の実施形態で
あるスピンバルブ型薄膜磁気素子を記録媒体との対向面
側から見た場合の構造を示した断面図、図5および図6
は、本発明のスピンバルブ型薄膜磁気素子を備えた薄膜
磁気ヘッドを示した図である。
【0068】本発明のスピンバルブ型薄膜磁気素子の上
下には、ギャップ層を介してシールド層が形成され、ス
ピンバルブ型薄膜磁気素子、ギャップ層、及びシールド
層で、再生用のGMRヘッドh1が構成されている。な
お、前記再生用のGMRヘッドh1に、記録用のインダ
クティブヘッドh2を積層してもよい。
【0069】このスピンバルブ型薄膜磁気素子を具備し
てなるGMRヘッドh1は、図5に示すように、インダ
クティブヘッドh2と共にスライダ151のトレーリン
グ側端部151dに設けられて薄膜磁気ヘッド150を
構成し、ハードディスク等の磁気記録媒体の記録磁界を
検出することが可能になっている。なお、図1におい
て、磁気記録媒体の移動方向は図示Z方向であり、磁気
記録媒体からの洩れ磁界の方向はY方向である。
【0070】図5に示す薄膜磁気ヘッド150は、スラ
イダ151と、スライダ151の端面151dに備えら
れたGMRヘッドh1及びインダクティブヘッドh2を
主体として構成されている。符号155は、スライダ1
51の磁気記録媒体の移動方向の上流側であるリーディ
ング側を示し、符号156は、トレーリング側を示して
いる。このスライダ151の媒体対向面152には、レ
ール151a、151a、151bが形成され、各レー
ル同士間は、エアーグルーブ151c、151cとされ
ている。
【0071】図6に示すように、GMRヘッドh1は、
スライダ151の端面151d上に形成されたAl23
などからなる非磁性絶縁体の下地層200と、下地層2
00の上に形成された磁性合金からなる下部シールド層
163と、下部シールド層163に積層された下部ギャ
ップ層164と、媒体対向面152から露出するスピン
バルブ型薄膜磁気素子1と、スピンバルブ型薄膜磁気素
子1及び下部ギャップ層164を覆う上部ギャップ層1
66と、上部ギャップ層166を覆う上部シールド層1
67とから構成されている。上部シールド層167は、
インダクティブヘッドh2の下部コア層と兼用とされて
いる。
【0072】インダクティブヘッドh2は、下部コア層
(上部シールド層)167と、下部コア層167に積層
されたギャップ層174と、コイル176と、コイル1
76を覆う上部絶縁層177と、ギャップ層174に接
合され、かつコイル176側にて下部コア層167に接
合される上部コア層178とから構成されている。コイ
ル176は、平面的に螺旋状となるようにパターン化さ
れている。また、コイル176のほぼ中央部分にて上部
コア層178の基端部178bが下部コア層167に磁
気的に接続されている。また、上部コア層178には、
アルミナなどからなる保護層179が積層されている。
【0073】図1に示すスピンバルブ型薄膜磁気素子1
は、反強磁性層、固定磁性層、非磁性導電層、フリー磁
性層が一層ずつ形成された、いわゆるボトム型のシング
ルスピンバルブ型薄膜磁気素子である。また、この例の
スピンバルブ型薄膜磁気素子1は、反強磁性材料をバイ
アス層として使用するエクスチェンジバイアス方式によ
り、フリー磁性層の磁化方向を固定磁性層の磁化方向に
対して交差する方向に揃えるものである。前記エクスチ
ェンジバイアス方式は、不感領域があるため実効トラッ
ク幅の制御が困難であるハードバイアス方式と比較し
て、高密度記録に対応するトラック幅の狭いスピンバル
ブ型薄膜磁気素子に適した方式である。
【0074】図1において、符号Kは基板を示してい
る。この基板Kの上には、反強磁性層2が形成されてい
る。更に、前記反強磁性層2の上には、固定磁性層3が
形成され、この固定磁性層3の上には、非磁性導電層4
が形成され、更に、前記非磁性導電層4の上には、フリ
ー磁性層5が形成されている。また、前記フリー磁性層
5の上には、軟磁性層7、7がトラック幅Twに相当す
る間隔を開けて設けられている。前記軟磁性層7、7の
上にはバイアス層6、6が設けられ、前記バイアス層
6、6の上には導電層8、8が形成されている。
【0075】前記基板Kは、Al23−TiC系セラミ
ックス151などの表面に、非磁性絶縁体のAl2
3(アルミナ)からなる下地層200が形成され、下地
層200の上に下部シールド層163と下部ギャップ層
164が順次形成されている。
【0076】前記反強磁性層2は、Pt、Pd、Ir、
Rh、Ru、Os、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、A
r、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2種以上
の元素と、Mnとを含む合金からなるものである。これ
らの合金からなる反強磁性層2は、耐熱性、耐食性に優
れるという特徴を有している。特に前記反強磁性層2
は、下記の組成式からなる合金であることが好ましい。 XmMn100-m 但し、Xは、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのう
ちの少なくとも1種以上の元素であり、組成比を示すm
は、48原子%≦m≦60原子%である。
【0077】更に、前記反強磁性層2は、下記の組成式
からなる合金であっても良い。 PtmMn100-m-nn 但し、Dは、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少
なくとも1種または2種以上の元素であり、組成比を示
すm、nは48原子%≦m+n≦60原子%、0.2原
子%≦n≦40原子%である。
【0078】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
においては、前記反強磁性層は、下記の組成式からなる
合金であることが望ましい。 PtqMn100-q-jj 但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、X
e、Krのうちの少なくとも1種または2種以上の元素
であり、組成比を示すq、jは、48原子%≦q+j≦
60原子%、0.2原子%≦j≦10原子%である。ま
た、組成比を示すq、jが、48原子%≦q+j≦58
原子%、0.2原子%≦j≦10原子%であることがよ
り好ましい。
【0079】前記固定磁性層3は、例えば、Co膜、N
iFe合金、CoNiFe合金、CoFe合金、CoN
i合金などで形成されている。図1に示す固定磁性層3
は、反強磁性層2に接して形成され、磁場中熱処理を施
すことにより、前記固定磁性層3と前記反強磁性層2と
の界面にて発生する交換結合による交換異方性磁界によ
り磁化されている。前記固定磁性層3の磁化方向は、図
示Y方向、即ち記録媒体から離れる方向(ハイト方向)
に固定されている。
【0080】また、前記非磁性導電層4は、Cu、A
u、Agなどの非磁性導電膜により形成されることが好
ましい。
【0081】また、前記フリー磁性層5は、前記固定磁
性層3と同様の材質などで形成されることが好ましい。
前記フリー磁性層5は、バイアス層6からのバイアス磁
界によって磁化され、図示X1方向と反対方向、即ち固
定磁性層3の磁化方向と交差する方向に磁化方向が揃え
られている。前記フリー磁性層5が前記バイアス層6に
より単磁区化されることによって、バルクハウゼンノイ
ズの発生が防止される。
【0082】前記軟磁性層7は、Co、Ni、Fe、C
oーFe合金、CoーNiーFe合金、CoNi合金、
NiFe合金などで形成され、中でも、フリー磁性層5
を構成する材料と同一の合金で形成されることが好まし
く、フリー磁性層5の表面がNiFe合金で形成されて
いる場合は、軟磁性層7をNiFe合金で形成すること
が好ましい。これは、軟磁性層7を、フリー磁性層5を
構成する材料と同一とした方が、軟磁性層7とフリー磁
性層5の界面での強磁性結合が確実となり、バイアス層
6と軟磁性層7との界面に発生させた一方向異方性の交
換結合磁界を軟磁性層7を介してフリー磁性層5へ伝搬
させることが可能となる。
【0083】前記バイアス層6は、前記反強磁性層2と
同様に、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Os、Au、
Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少
なくとも1種または2種以上の元素と、Mnとを含む合
金からなるものであり、磁場中熱処理により、軟磁性層
7との界面にて交換異方性磁界が発現されて、交換異方
性磁界が軟磁性層7へ伝搬し、軟磁性層7とフリー磁性
層5との界面で発生する強磁性結合によりフリー磁性層
5を一定の方向に磁化するものである。そして、これら
の合金からなるバイアス層6は、耐熱性、耐食性に優れ
るという特徴を有している。
【0084】特に前記バイアス層6は、下記の組成式か
らなる合金であることが好ましい。 XmMn100-m 但し、Xは、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのう
ちの少なくとも1種以上の元素であり、組成比を示すm
は、52原子%≦m≦60原子%である。更に、バイア
ス層6は、下記の組成式からなる合金であっても良い。 PtmMn100-m-nn 但し、Dは、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少
なくとも1種または2種以上の元素であり、組成比を示
すm、nは52原子%≦m+n≦60原子%、0.2原
子%≦n≦40原子%である。
【0085】更にまた、上記のスピンバルブ型薄膜磁気
素子においては、前記バイアス層は、下記の組成式から
なる合金であってもよい。 PtqMn100-q-jj 但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、X
e、Krのうちの少なくとも1種または2種以上の元素
であり、組成比を示すq、jは、52原子%≦q+j≦
60原子%、0.2原子%≦j≦10原子%である。ま
た、前記導電層8、8は、例えば、Au、W、Cr、T
aなどで形成されることが好ましい。
【0086】このスピンバルブ型薄膜磁気素子1におい
ては、導電層8、8からフリー磁性層5、非磁性導電層
4、固定磁性層3に定常電流が与えられ、図示Z方向に
走行する磁気記録媒体からの漏れ磁界が図示Y方向に与
えられると、前記フリー磁性層5の磁化方向が図示X方
向と反対方向から図示Y方向に向けて変動する。このフ
リー磁性層5内での磁化方向の変動と固定磁性層3の磁
化方向との関係で電気抵抗が変化し、この抵抗変化に基
づく電圧変化により磁気記録媒体からの漏れ磁界が検出
される。
【0087】次に、本発明のスピンバルブ型薄膜磁気素
子1の製造方法を説明する。この製造方法は、スピンバ
ルブ型薄膜磁気素子1における反強磁性層2およびバイ
アス層6、6の位置によって、熱処理により発生する反
強磁性層2およびバイアス層6、6の交換異方性磁界の
大きさが相違する性質を利用してなされたものであり、
1度目の熱処理で固定磁性層3の磁化方向を固定し、2
度目の熱処理でフリー磁性層5の磁化方向を前記固定磁
性層3の磁化方向と交差する方向に揃えるものである。
【0088】即ち、本発明のスピンバルブ型薄膜磁気素
子1の製造方法では、基板K上に、反強磁性層2と、固
定磁性層3と、非磁性導電層4と、フリー磁性層5とを
順次積層して図2に示す第1の積層体a1を形成したの
ち、前記第1の積層体a1にトラック幅Tw方向と直交
する方向(図2の紙面垂直方向)である第1の磁界を印
加しつつ、第1の熱処理温度で熱処理し、前記反強磁性
層2に交換異方性磁界を発生させて、前記固定磁性層3
の磁化を固定する。
【0089】次に、図3に示すように、前記第1の積層
体a1の上に、トラック幅Twに相当する幅の基端部を
有するリフトオフ用レジスト351を形成し、マスクと
なるリフトオフ用レジスト351で覆われていないフリ
ー磁性層5の表面をArなどの希ガスにより、イオンミ
リング法や逆スパッタ法によりクリーニングを行う。つ
いで、図4に示すように、トラック幅Twに相当する間
隔を開けて露出したフリー磁性層5の表面およびリフト
オフレジスト351上に、軟磁性層7、7を形成し、続
いて、前記軟磁性層7、7の上にバイアス層6、6を形
成し、更に、前記バイアス層6、6の上に導電層8、8
を形成したのち、リフトオフレジスト351をエッチン
グにより除去すると、図1に示すスピンバルブ型薄膜磁
気素子1と同じ形状の第2の積層体a2が得られる。
【0090】このようにして得られた第2の積層体a2
に対し、トラック幅Tw方向に前記反強磁性層2の交換
異方性磁界よりも小さい第2の磁界を印加しつつ、第2
の熱処理温度で熱処理し、前記フリー磁性層5に前記固
定磁性層3の磁化方向と交差する方向のバイアス磁界を
付与することによって、スピンバルブ型薄膜磁気素子1
が得られる。
【0091】次に、反強磁性層の熱処理温度と交換異方
性磁界との関係について、図21、図22、図23を参
照して詳しく説明する。図21に示した■印は、基板と
フリー磁性層の間に反強磁性層を配置したボトム型シン
グルスピンバルブ薄膜磁気素子の交換異方性磁界の熱処
理温度依存性を示し、図21に示した◆印は、フリー磁
性層よりも基板から離れた位置に反強磁性層を配置した
トップ型シングルスピンバルブ薄膜磁気素子の交換異方
性磁界の熱処理温度依存性を示す。従って、◆印のトッ
プ型シングルスピンバルブ薄膜磁気素子の反強磁性層
は、■印のボトム型シングルスピンバルブ薄膜磁気素子
の反強磁性層よりも、基板から離れた位置に設けられて
いることになる。
【0092】具体的には、図21に示した◆印で示した
トップ型スピンバルブ型薄膜磁気素子は、図24に示す
ようにSiの基板Kの上にAl23(厚さ1000Å)
からなる下地絶縁層200、Ta(厚さ50Å)からな
る下地層210、NiFe合金(厚さ70Å)、Co層
(厚さ10Å)の2層からなるフリー磁性層5、Cu
(厚さ30Å)からなる非磁性導電層4、Co(厚さ2
5Å)からなる固定磁性層3、Pt55.4Mn44.6(厚さ
300Å)からなる反強磁性層2、Ta(厚さ50Å)
からなる保護層220の順に形成された構成のものであ
る。
【0093】また、図21に示した■印で示したボトム
型スピンバルブ型薄膜磁気素子は、図23に示すよう
に、Si基板Kの上にAl23(厚さ1000Å)から
なる下地絶縁層200、Ta(厚さ30Å)からなる下
地層210、Pt54.4Mn45.6(厚さ300Å)からな
る反強磁性層2、Co(厚さ25Å)からなる固定磁性
層3、Cu(厚さ26Å)からなる非磁性導電層4、C
o層(厚さ10Å)、NiFe合金(厚さ70Å)の2
層からなるフリー磁性層5、Ta(厚さ50Å)からな
る保護層220の順に形成された構成のものである。
【0094】即ち、◆印で示したトップ型スピンバルブ
型薄膜磁気素子は、反強磁性層2が固定磁性層3の上側
に配置され、Si基板Kと反強磁性層2との間には、フ
リー磁性層5、非磁性導電層4、固定磁性層3が挟まれ
て形成されている。即ち、■印で示したボトム型スピン
バルブ型薄膜磁気素子は、反強磁性層2が固定磁性層3
の下側に配置され、Si基板Kと反強磁性層2との間に
は、固定磁性層3、非磁性導電層4、フリー磁性層5が
形成されていない構造とされる。
【0095】図21に示すように、■印で示す反強磁性
層(Pt55.4Mn44.6)の交換異方性磁界は、220℃
を過ぎて上昇しはじめ、240℃を越えると700(O
e)程度になって一定となる。また、◆印で示す反強磁
性層(Pt54.4Mn45.6)の交換異方性磁界は、240
℃を過ぎて上昇し、260℃を超えると600(Oe)
を越えて一定となる。このように、基板に近い位置に配
置された反強磁性層(■印)は、基板より離れた位置に
配置された反強磁性層(◆印)と比較して、比較的低い
熱処理温度で高い交換異方性磁界が得られることがわか
る。
【0096】本発明のスピンバルブ型薄膜磁気素子1の
製造方法は、上述した反強磁性層の性質を利用したもの
である。即ち、本発明のスピンバルブ型薄膜磁気素子1
は、反強磁性層2と基板Kとの距離が近い(または、固
定磁性層3の下に反強磁性層2が配置された)ボトム型
スピンバルブ型薄膜磁気素子1であり、前記反強磁性層
2に使用される合金と同様の材料によって形成されたバ
イアス層6が反強磁性層2よりも基板Kから遠い位置に
配置されている。
【0097】したがって、例えば、第1の磁界を印加し
つつ、第1の熱処理温度(220〜270℃)で前記第
1の積層体a1を熱処理すると、反強磁性層2に交換異
方性磁界が生じ、固定磁性層3の磁化方向が固定され
る。また、反強磁性層2の交換異方性磁界は、600
Oe(48000A/m)以上となる。次に、第1の磁
界と直交する方向の第2の磁界を印加しつつ、第2の熱
処理温度(250〜270℃)で前記第2の積層体a2
を熱処理すると、フリー磁性層5の磁化方向が第1の磁
界に対して交差する方向とされる。また、バイアス層6
の交換異方性磁界は、600 Oe(48000A/
m)以上となる。
【0098】このとき、第2の磁界を先の熱処理にて発
生した反強磁性層2の交換異方性磁界よりも小さくして
おけば、反強磁性層2に第2の磁界が印加されても、反
強磁性層2の交換異方性磁界が劣化することがなく、固
定磁性層3の磁化方向を固定したままにすることが可能
になる。このことにより、固定磁性層3の磁化方向とフ
リー磁性層5の磁化方向とを交差する方向にすることが
できる。
【0099】第1の熱処理温度は、220℃〜270℃
の範囲とすることが好ましい。第1の熱処理温度が22
0℃未満であると、反強磁性層2の交換異方性磁界が2
00(Oe)以下となって、固定磁性層3の磁化が高く
ならず、固定磁性層3の磁化方向が2度目の熱処理によ
りフリー磁性層5の磁化方向と同一方向に磁化されてし
まうので好ましくない。一方、第1の熱処理温度が27
0℃を越えると、各層の界面、とくに、非磁性導電層4
であるCu層とフリー磁性層5またはCu層と固定磁性
層3との界面での原子の熱拡散などによる磁気抵抗効果
の劣化を引き起こすため好ましくない。また、第1の熱
処理温度を230℃〜270℃の範囲とすれば、反強磁
性層2の交換異方性磁界を400 Oe(32000A
/m)以上とすることができ、固定磁性層3の磁化を大
きくすることができるのでより好ましい。
【0100】第2の熱処理温度は、250℃〜270℃
の範囲とすることが好ましい。第2の熱処理温度が25
0℃未満であると、バイアス層6の交換異方性磁界を4
00Oe(32000A/m)以上にすることができな
くなって、フリー磁性層5に印加する縦バイアス磁界を
大きくすることができなくなるので好ましくない。一
方、第2の熱処理温度が270℃を越えても、もはやバ
イアス層6の交換異方性磁界は一定となって増大せず、
層界面での原子熱拡散などによる磁気抵抗効果の劣化を
引き起こすので好ましくない。
【0101】前記第1の磁界は、10 Oe(800A
/m)程度以上とすることが好ましい。第1の磁界が1
0 Oe(800A/m)未満であると、反強磁性層2
の交換異方性磁界が十分に得られないため好ましくな
い。また、前記第2の磁界は、1度目の熱処理で発生し
た反強磁性層2の交換結合磁界よりも小さい磁界とさ
れ、10〜600 Oe(800〜48000A/m)
程度の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、2
00 Oe(1600A/m)程度である。第2の磁界
が10 Oe(800A/m)未満であると、バイアス
層6の交換異方性磁界が十分に得られないため好ましく
ない。一方、第2の磁界が600 Oe(800〜48
000A/m)を越えると、1度目の熱処理で発生した
反強磁性層の交換結合磁界を劣化させるおそれがあるた
め好ましくない。
【0102】次に、熱処理温度が245℃または270
℃である場合における反強磁性層の組成と交換異方性磁
界との関係について図22を参照して詳しく説明する。
図示△印は、フリー磁性層よりも基板から離れた位置に
反強磁性層を配置した(または、固定磁性層の上に反強
磁性層が配置された)トップ型シングルスピンバルブ薄
膜磁気素子の反強磁性層の組成と交換異方性磁界との関
係を示すものであり、図示△印は270℃で熱処理した
ものである。図示○印及び●印は、基板とフリー磁性層
の間に反強磁性層を配置した(または、固定磁性層の下
に反強磁性層が配置された)ボトム型シングルスピンバ
ルブ薄膜磁気素子の反強磁性層の組成と交換異方性磁界
との関係を示すものであり、図示○印は270℃、図示
●印は245℃で熱処理したものである。
【0103】具体的には、△印で示したトップ型スピン
バルブ型薄膜磁気素子は、図24に示すように、Si基
板Kの上にAl23(厚さ1000Å)からなる下地絶
縁層200、Ta(厚さ50Å)からなる下地層21
0、NiFe合金(厚さ70Å)、Co(厚さ10Å)
からなる2層のフリー磁性層5、Cu(厚さ30Å)か
らなる非磁性導電層4、Co(厚さ25Å)からなる固
定磁性層3、PtmMnt(厚さ300Å)からなる反強
磁性層2、Ta(厚さ50Å)からなる保護層220か
らなる構成のものである。
【0104】一方、○印及び●印で示したボトム型スピ
ンバルブ型薄膜磁気素子は、図23に示すように、Si
基板Kの上にAl23(厚さ1000Å)からなる下地
絶縁層200、Ta(厚さ30Å)からなる下地層21
0、PtmMn100-m(厚さ300Å)からなる反強磁性
層2、Co(厚さ25Å)からなる固定磁性層3、Cu
(厚さ26Å)からなる非磁性導電層4、Co(厚さ1
0Å)、NiFe合金(厚さ70Å)の2層からなるフ
リー磁性層5、Ta(厚さ50Å)からなる保護層22
0からなる構成のものである。
【0105】本発明のスピンバルブ型薄膜磁気素子1の
製造方法では、図22に示すボトム型スピンバルブ型薄
膜磁気素子およびトップ型スピンバルブ型薄膜磁気素子
の反強磁性層の性質を利用している。即ち、ボトム型ス
ピンバルブ型薄膜磁気素子である本発明のスピンバルブ
型薄膜磁気素子1では、反強磁性層2に使用される合金
の組成範囲は、図23に示すボトム型スピンバルブ型薄
膜磁気素子の反強磁性層と同様とすることが好ましく、
前記バイアス層6に使用される合金の組成範囲は、図2
4に示すトップ型スピンバルブ型薄膜磁気素子の反強磁
性層と同様とすることが好ましい。
【0106】また、図22から明らかなように、ボトム
型スピンバルブ型薄膜磁気素子の反強磁性層、ここでは
前記反強磁性層2をXmMn100-m(但しXは、Pt、P
d、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少なくとも1種以
上の元素)からなる合金としたときは、組成比を示すm
が、48原子%≦m≦60原子%であることが好まし
い。mが48原子%未満または60原子%を越えると、
熱処理温度270℃の第2の熱処理を行っても、Xm
100-mの結晶格子がL10型の規則格子へと規則化し
にくくなり、反強磁性特性を示さなくなる。即ち、一方
向性交換結合磁界(交換異方性磁界)を示さなくなるの
で好ましくない。
【0107】また、組成比mのより好ましい範囲は、4
8原子%≦m≦58原子%である。48原子%未満また
は58原子%以上を越えると、熱処理温度245℃の第
1の熱処理を行っても、XmMn100-mの結晶格子がL1
0型の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁性特性
を示さなくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を示さな
くなるので好ましくない。mの更に好ましい範囲は、4
9.8原子%≦m≦58原子%であり、熱処理温度27
0℃の第2の熱処理を行った後に400 Oe(320
00A/m)以上の交換異方性磁界が得られる。
【0108】また、ボトム型スピンバルブ型薄膜磁気素
子の反強磁性層、即ち前記反強磁性層2をPtmMn
100-m-nn(但し、Dは、Pd、Ir、Rh、Ru、I
r、Osのうちの少なくとも1種または2種以上の元
素)としたとき、組成比を示すm、nは、48原子%≦
m+n≦60原子%、0.2原子%≦n≦40原子%で
あることが好ましい。組成比m+nが48原子%未満ま
たは60原子%を越えると、熱処理温度270℃の第2
の熱処理を行っても、PtmMn100-m-nnの結晶格子
がL10型の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁
性特性を示さなくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を
示さなくなるので好ましくない。また、組成比nが0.
2原子%未満であると、反強磁性層2の結晶格子の規則
化の促進の効果、即ち、交換異方性磁界を大きくする効
果が乏しくなるので好ましくなく、組成比nが40原子
%を越えると、逆に交換異方性磁界が減少するので好ま
しくない。
【0109】また、組成比m+nのより好ましい範囲
は、48原子%≦m+n≦58原子%である。組成比m
+nが48原子%未満または58原子%を越えると、熱
処理温度245℃の第1の熱処理を行っても、Ptm
100-m-nnの結晶格子がL10型の規則格子へと規則
化しにくくなり、反強磁性特性を示さなくなる。即ち、
一方向性交換結合磁界を示さなくなるので好ましくな
い。また、組成比m+nの更に好ましい範囲は、49.
8原子%≦m+n≦58原子%、0.2%≦n≦40で
あり、400 Oe(32000A/m)以上の交換異
方性磁界が得られる。
【0110】また、ボトム型スピンバルブ型薄膜磁気素
子の反強磁性層、即ち前記反強磁性層2をPtqMn
100-q-jj(但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、N
e、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2
種以上の元素)としたとき、組成比を示すq、jは、4
8原子%≦q+j≦60原子%、0.2原子%≦j≦1
0原子%であることが好ましい。組成比q+jが48原
子%未満または60原子%を越えると、熱処理温度27
0℃の第2の熱処理を行っても、PtqMn100-q-jj
の結晶格子がL10型の規則格子へと規則化しにくくな
り、反強磁性特性を示さなくなる。即ち、一方向性交換
結合磁界を示さなくなるので好ましくない。また、組成
比jが0.2原子%未満であると、元素Lの添加による
一方向性交換結合磁界の改善効果が十分に現れないので
好ましくなく、jが10原子%を越えると、一方向性交
換異方性磁界が低下してしまうので好ましくない。
【0111】また、組成比を示すq+jのより好ましい
範囲は、48原子%≦q+j≦58原子%である。組成
比q+jが48原子%未満または58原子%を越える
と、熱処理温度245℃の第1の熱処理を行っても、P
qMn100-q-jjの結晶格子がL10型の規則格子へ
と規則化しにくくなり、反強磁性特性を示さなくなる。
即ち、一方向性交換結合磁界を示さなくなるので好まし
くない。また、組成比を示すq+jの更に好ましい範囲
は、49.8原子%≦q+j≦58原子%、0.2原子%
≦j≦10原子%であり、400 Oe(32000A
/m)以上の交換異方性磁界が得られる。
【0112】図22から明らかなように、トップ型のス
ピンバルブ型薄膜磁気素子の反強磁性層、ここでは前記
バイアス層6をXmMn100-m(但し、Xは、Pt、P
d、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少なくとも1種以
上の元素)からなる合金としたときは、組成比mが、5
2原子%≦m≦60原子%であることが好ましい。組成
比mが52原子%未満または60原子%以上を越える
と、熱処理温度270℃の第2の熱処理を行っても、X
mMn100-mの結晶格子がL10型の規則格子へと規則化
しにくくなり、反強磁性特性を示さなくなる。即ち、一
方向性交換結合磁界を示さなくなるので好ましくない。
また、組成比mのより好ましい範囲は、52.8原子%
≦m≦59.2原子%であり、200 Oe(16000
A/m)以上の交換異方性磁界、即ち、バイアス磁界が
得られる。
【0113】また、トップ型スピンバルブ型薄膜磁気素
子の反強磁性層、即ち前記バイアス層6をPtmMn
100-m-nn(但し、Dは、Pd、Rh、Ru、Ir、O
sのうちの少なくとも1種または2種以上の元素)とし
たとき、組成比を示すm、nは、52原子%≦m+n≦
60原子%、0.2原子%≦n≦40原子%であること
が好ましい。
【0114】組成比m+nが52原子%未満または60
原子%を越えると、熱処理温度270℃の第2の熱処理
を行っても、PtmMn100-m-nnの結晶格子がL10
型の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁性特性を
示さなくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を示さなく
なるので好ましくない。また、組成比nが0.2原子%
未満であると、反強磁性層2の結晶格子の規則化の促進
の効果、即ち、交換異方性磁界を大きくする効果が乏し
くなるので好ましくなく、組成比nが40原子%を越え
ると、逆に交換異方性磁界が減少するので好ましくな
い。更に、組成比m+nのより好ましい範囲は、52.
8原子%≦m+n≦59.2原子%、0.2原子%≦n≦
40原子%であり、200 Oe(16000A/m)
以上の交換異方性磁界、即ち、バイアス磁界が得られ
る。
【0115】また、トップ型スピンバルブ型薄膜磁気素
子の反強磁性層、即ち前記バイアス層6をPtqMn
100-q-jj(但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、N
e、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2
種以上の元素)としたとき、組成比を示すq、jは、5
2原子%≦q+j≦60原子%、0.2原子%≦j≦1
0原子%であることが好ましい。組成比q+jが52原
子%未満または60原子%を越えると、熱処理温度27
0℃の第2の熱処理を行っても、PtqMn100-q-jj
の結晶格子がL10型の規則格子へと規則化しにくくな
り、反強磁性特性を示さなくなる。即ち、一方向性交換
結合磁界を示さなくなるので好ましくない。また、jが
0.2原子%未満であると、元素Lの添加による一方向
性交換結合磁界の改善効果が十分に現れないので好まし
くなく、jが10原子%を越えると、一方向性交換結合
磁界が低下してしまうので好ましくない。
【0116】また、組成比m+nのより好ましい範囲
は、52.8原子%≦m+n≦59.2原子%、0.2原
子%≦n≦40原子%であり、200(Oe)以上の交
換異方性磁界、即ち、バイアス磁界が得られる。
【0117】また、図22から明らかなように、ボトム
型スピンバルブ型薄膜磁気素子の反強磁性層ここでは前
記反強磁性層2、およびトップ型スピンバルブ型薄膜磁
気素子の反強磁性層ここでは前記バイアス層6がXm
100-m(但し、Xは、Pt、Pd、Ir、Rh、R
u、Osのうちの少なくとも1種以上の元素)からなる
合金としたとき、前記反強磁性層2および前記バイアス
層6の組成比を示すmが、52原子%≦m≦58原子%
であることが好ましい。
【0118】組成比mが52原子%未満であると、熱処
理温度270℃の第2の熱処理を行っても、前記バイア
ス層6を構成するXm Mn100-mの結晶格子がL10型
の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁性特性を示
さなくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を示さなくな
るので好ましくない。また、組成比mが58原子%を越
えると、熱処理温度245℃の第1の熱処理を行っても
前記反強磁性層2を構成するXmMn100-mの結晶格子が
L10型の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁性
特性を示さなくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を示
さなくなり、熱処理温度270℃の第2の熱処理を行っ
た際、固定磁性層3の磁化方向がバイアス層6の磁化方
向と同一に磁化されたり、固定磁性層3の磁化方向がバ
イアス層6の磁化方向と直交しなくなり、結果として、
再生出力波形の対称性が得られなくなるので好ましくな
い。
【0119】また、前記反強磁性層2および前記バイア
ス層6が、XmMn100-mからなる合金としたとき、反強
磁性層2およびバイアス層6の組成比を示すmが、52
原子%≦m≦56.3原子%であることがより好まし
い。
【0120】組成比mが52原子%未満であると熱処理
温度270℃の第2の熱処理を行っても、バイアス層6
を構成するXmMn100−mの結晶格子がL10型の
規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁性特性を示さ
なくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を示さなくなる
ので好ましくない。また、組成比mが56.3原子%を
越えると、反強磁性層2による交換異方性磁界よりもバ
イアス層6による交換異方性磁界の方が大きくなり、熱
処理温度270℃の第2の熱処理を行う場合に、反強磁
性層2による交換異方性磁界よりも大きな外部磁界をバ
イアス層6に印加することとなり、熱処理温度270℃
の第2の熱処理の際に、固定磁性層3がフリー磁性層5
の磁化と同一の方向に磁化されたり、第2の熱処理の際
にフリー磁性層5の磁化方向と固定磁性層3の磁化方向
とを直交方向に揃え難くなるので好ましくない。
【0121】従って、反強磁性層2およびバイアス層6
の上記組成比が52原子%≦m≦56.3原子%の範囲
であれば、第1の熱処理時に反強磁性層2の交換異方性
磁界が発生し、第2の熱処理を行った後も反強磁性層2
の交換異方性磁界がバイアス層6の交換結合磁界よりも
大きくなるので、磁気記録媒体からの信号磁界の印加に
対し、固定磁性層3の磁化方向は変化せずに固定され、
フリー磁性層5の磁化方向はスムーズに変化することが
できるため好ましい。
【0122】また、反強磁性層2およびバイアス層6が
PtmMn100-m-nn(但し、Dは、Pd、Ir、R
h、Ru、Osのうちの少なくとも1種または2種以上
の元素)としたとき、組成比を示すm、nは、52原子
%≦m+n≦58原子%、0.2原子%≦n≦40原子
%であることが好ましい。
【0123】組成比m+nが52原子%未満であると、
熱処理温度270℃の第2の熱処理を行っても、前記バ
イアス層6を構成するPtmMn100-m-nnの結晶格子
がL10型の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁
性特性を示さなくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を
示さなくなるので好ましくない。また、m+nが58原
子%を越えると、熱処理温度245℃の第1の熱処理を
行っても、前記反強磁性層2を構成するPtmMn
100-m-nnの結晶格子がL10型の規則格子へと規則化
しにくくなり、反強磁性特性を示さなくなる。即ち、一
方向性交換結合磁界を示さなくなり、熱処理温度270
℃の第2の熱処理を行った際に、固定磁性層3の磁化方
向がバイアス層6の磁化方向と同一とされたり、固定磁
性層3の磁化方向がバイアス層6の磁化方向と直交しな
くなり、結果として、再生出力波形の対称性が得られな
くなるので好ましくない。
【0124】また、組成比nが0.2原子%未満である
と、元素Dの添加による一方向性交換結合磁界の改善効
果が十分に現れないので好ましくなく、nが40原子%
を越えると、一方向性交換結合磁界が低下してしまうの
で好ましくない。
【0125】また、前記反強磁性層2およびバイアス層
6が、PtmMn100-m-nnからなる合金としたとき、
組成比を示すm、nが、52原子%≦m+n≦56.3
原子%、0.2原子%≦n≦40原子%であることがよ
り好ましい。
【0126】組成比m+nが52原子%未満であると、
熱処理温度270℃の第2の熱処理を行っても、前記バ
イアス層6を構成するPtmMn100-m-nnの結晶格子
がL10型の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁
性特性を示さなくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を
示さなくなるので好ましくない。また、組成比m+nが
56.3原子%を越えると、反強磁性層2による交換異
方性磁界よりもバイアス層6による交換異方性磁界の方
が大きくなり、熱処理温度270℃の第2の熱処理を行
う場合に、反強磁性層2による交換異方性磁界よりも大
きな外部磁界がバイアス層6に印加されることとなり、
熱処理温度270℃の第2の熱処理の際に、固定磁性層
3がフリー磁性層5の磁化と同一の方向に磁化された
り、第2の熱処理の際に、フリー磁性層5の磁化方向と
固定磁性層3の磁化方向とを直交方向に揃え難くなるの
で好ましくない。
【0127】また、組成比nが0.2原子%未満である
と、元素Dの添加による一方向性交換結合磁界の改善効
果が十分に現れないので好ましくなく、nが40原子%
を越えると、一方向性交換結合磁界が低下してしまうの
で好ましくない。
【0128】従って、反強磁性層2およびバイアス層6
の上記組成比が52原子%≦m+n≦56.3原子%で
あり、0.2原子%≦n≦40原子%であれば、第1の
熱処理時に反強磁性層2の交換異方性磁界が発生し、第
2の熱処理を行った後、反強磁性層2の交換異方性磁界
がバイアス層6の交換結合磁界よりも大きくなるので、
磁気記録媒体からの信号磁界の印加に対し、固定磁性層
3の磁化方向は変化せずに固定され、フリー磁性層5の
磁化方向はスムーズに変化することができるため好まし
い。
【0129】また、反強磁性層2およびバイアス層6
が、PtqMn100-q-jj(但しLは、Au、Ag、C
r、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも
1種または2種以上の元素)からなる組成の合金とした
とき、組成比を示すq、jは、52原子%≦q+j≦5
8原子%、0.2原子%≦j≦10原子%であることが
好ましい。
【0130】組成比q+jが52原子%未満であると、
熱処理温度270℃の第2の熱処理を行っても、前記バ
イアス層6を構成するPtqMn100-q-jjの結晶格子
がL10型の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁
性特性を示さなくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を
示さなくなるので好ましくない。また、組成比q+jが
58原子%を越えると、熱処理温度245℃の第1の熱
処理を行っても、前記反強磁性層2を構成するPtq
100-q-jjの結晶格子がL10型の規則格子へと規則
化しにくくなり、反強磁性特性を示さなくなる。即ち、
一方向性交換結合磁界を示さなくなり、熱処理温度27
0℃の第2の熱処理を行った際に、固定磁性層3の磁化
方向がバイアス層6の磁化方向と同一とされたり、固定
磁性層3の磁化方向がバイアス層6の磁化方向と直交し
なくなり、結果として、再生出力波形の対称性が得られ
なくなるので好ましくない。
【0131】また、組成比jが0.2原子%未満である
と、元素Lの添加による一方向性交換結合磁界の改善効
果が十分に現れないので好ましくなく、jが10原子%
を越えると、一方向性交換結合磁界が低下してしまうの
で好ましくない。
【0132】また、前記反強磁性層2およびバイアス層
6が、PtqMn100-q-jjからなる合金としたとき、
組成比を示すq、jが、52原子%≦q+j≦56.3
原子%、0.2原子%≦j≦10原子%であることがよ
り好ましい。
【0133】組成比q+jが52原子%未満であると、
熱処理温度270℃の第2の熱処理を行っても、前記バ
イアス層6を構成するPtqMn100-q-jjの結晶格子
がL10型の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁
性特性を示さなくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を
示さなくなるので好ましくない。また、組成比q+jが
56.3原子%を越えると、反強磁性層2による交換異
方性磁界よりもバイアス層6による交換異方性磁界の方
が大きくなり、熱処理温度270℃の第2の熱処理を行
う場合に、反強磁性層2による交換異方性磁界よりも大
きな外部磁界がバイアス層6に印加されることとなり、
熱処理温度270℃の第2の熱処理の際に、固定磁性層
3がフリー磁性層5の磁化と同一の方向に磁化された
り、第2の熱処理の際に、フリー磁性層5の磁化方向と
固定磁性層3の磁化方向とを直交方向に揃え難くなるの
で好ましくない。
【0134】また、組成比jが0.2原子%未満である
と、元素Lの添加による一方向性交換結合磁界の改善効
果が十分に現れないので好ましくなく、jが10原子%
を越えると、一方向性交換結合磁界が低下してしまうの
で好ましくない。
【0135】従って、反強磁性層2およびバイアス層6
の上記組成比が52原子%≦q+j≦56.3原子%で
あり、0.2原子%≦j≦10原子%であれば、第1の
熱処理時に反強磁性層2の交換異方性磁界が発生し、第
2の熱処理を行った後、反強磁性層2の交換異方性磁界
がバイアス層6の交換結合磁界よりも大きくなるので、
磁気記録媒体からの信号磁界の印加に対して、固定磁性
層3の磁化方向は変化せずに固定され、フリー磁性層5
の磁化方向はスムーズに変化することができるため好ま
しい。
【0136】また、ボトム型スピンバルブ型薄膜磁気素
子の反強磁性層、ここでは前記反強磁性層2の組成と、
トップ型スピンバルブ型薄膜磁気素子の反強磁性層ここ
では前記バイアス層6の組成を異ならしめ、例えば反強
磁性層2のMn濃度をバイアス層6のMn濃度よりも多
くすることにより、第1の熱処理後の両者の交換結合磁
界の差をより顕著にでき、第2の熱処理後にフリー磁性
層5と固定磁性層3の磁化をより確実に直交状態とする
ことが可能となる。また、第2の熱処理後のMn濃度を
異ならしめた反強磁性層2とバイアス層6の両者の交換
異方性磁界の差を、更に顕著にすることができ、磁気記
録媒体からの信号磁界の印加に対し、固定磁性層3の磁
化方向は変化せずに固定され、フリー磁性層5の磁化方
向はスムーズに変化することが可能となる。
【0137】即ち、バイアス層6を、XmMn100-m(X
が、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少な
くとも1種以上の元素、組成比を示すmが52原子%≦
m≦60原子%)からなる合金とし、反強磁性層2を、
mMn100-m(Xが、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、
Osのうちの少なくとも1種以上の元素、組成比を示す
mが、48原子%≦m≦58原子%)からなる合金とす
ることがより好ましい。
【0138】バイアス層6の組成を示すmが、52原子
%未満若しくは60原子%を越えると、図22に示すよ
うに、熱処理温度270℃の第2の熱処理を行っても、
バイアス層6を構成するXmMn100-mの結晶格子がL1
0型の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁性特性
を示さなくなる。即ち、一方向交換結合磁界を示さなく
なるので好ましくない。また、反強磁性層2の組成を示
すmが、48原子%未満若しくは58原子%を越える
と、熱処理温度245℃の第1の熱処理を行っても反強
磁性層2を構成するXmMn100-mの結晶格子がL10型
の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁性特性を示
さなくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を示さなくな
るので好ましくない。
【0139】よって、第1の熱処理温度245℃の第1
の熱処理を行った後に、反強磁性層2の交換異方性磁界
を発生させ、かつ第2の熱処理温度が270℃の第2の
熱処理時に、反強磁性層2の交換異方性磁界よりも小さ
な外部磁界を印加して、第2の熱処理を行った後に、反
強磁性層2の交換異方性磁界がバイアス層6の交換異方
性磁界よりも大きくなるように、反強磁性層2の組成比
(48原子%≦m≦58原子%)とバイアス層6の組成
比(52原子%≦m≦60原子%)の範囲の中から各々
の組成比を異ならせて選択すればよい。
【0140】このような条件を満たす組成比を各々選択
して組成範囲を異ならしめることにより、反強磁性層2
とバイアス層6を同一組成で形成した場合よりも、第2
の熱処理時における反強磁性層2の交換結合磁界とバイ
アス層6の交換異方性磁界の差を顕著にできる組み合わ
せが可能になり、設計の自由度が向上する。また、第1
の熱処理の際に、反強磁性層2の交換異方性磁界を発生
させ、第2の熱処理の際に、反強磁性層2の交換異方性
磁界よりも小さな外部磁界を印加させることにより、反
強磁性層2の交換異方性磁界を劣化または磁化方向を変
えることがなく、固定磁性層3の磁化方向を強固に固定
したまま、フリー磁性層5と固定磁性層3の磁化方向を
交差させることができる。
【0141】更に、第2の熱処理後に、反強磁性層2の
交換異方性磁界をバイアス層6の交換異方性磁界よりも
大きくすることができ、磁気記録媒体からの信号磁界の
印加に対して、固定磁性層3の磁化方向が変化せずに固
定され、フリー磁性層5の磁化方向はスムーズに変化す
ることが可能となる。
【0142】反強磁性層2とバイアス層6の好ましい別
の組み合わせは、バイアス層6を、PtmMn100-m-n
n(Dが、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少な
くとも1種または2種以上の元素、組成比を示すm、n
が、52原子%≦m+n≦60原子%、0.2原子%≦
n≦40原子%)からなる合金とし、反強磁性層2を、
PtmMn100-m-nn(但し、Dは、Pd、Ir、R
h、Ru、Osのうちの少なくとも1種、または2種以
上の元素、組成比を示すm、nは、48原子%≦m+n
≦58原子%、0.2原子%≦n≦40原子%)からな
る合金とすることが好ましい。
【0143】バイアス層6の組成を示すm+nが52原
子%未満若しくは60原子%を越えると、熱処理温度2
70℃の第2の熱処理を行っても、バイアス層6を構成
するPtmMn100-m-nnの結晶格子がL10型の規則
格子へと規則化しにくくなり、反強磁性特性を示さなく
なる。即ち、一方向性交換結合磁界を示さなくなるので
好ましくない。また、バイアス層6の組成を示すnが
0.2原子%未満であると、元素Dの添加による一方向
性交換結合磁界の改善効果が十分に現れないので好まし
くなく、nが40原子%を越えると、一方向性交換結合
磁界が低下してしまうので好ましくない。
【0144】また、反強磁性層2の組成を示すm+nが
48原子%未満若しくは58原子%を越えると、熱処理
温度245℃の第1の熱処理を行っても、反強磁性層2
を構成するPtmMn100-m-nnの結晶格子がL10型
の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁性特性を示
さなくなる。即ち、一方向交換結合磁界を示さなくなる
ので好ましくない。また、第2反強磁性層の組成を示す
nが0.2原子%未満であると、元素Dの添加による一
方向性交換結合磁界の改善効果が十分に現れないので好
ましくなく、nが40原子%を越えると、一方向性交換
結合磁界が低下してしまうので好ましくない。
【0145】よって、第1の熱処理温度245℃の第1
の熱処理を行った後に、反強磁性層2の交換異方性磁界
を発生させ、かつ第2の熱処理温度が270℃の第2の
熱処理時に、反強磁性層2の交換異方性磁界よりも小さ
な外部磁界を印加して、第2の熱処理を行った後に、反
強磁性層2の交換異方性磁界がバイアス層6の交換異方
性磁界よりも大きくなるように、反強磁性層2の組成比
(48原子%≦m+n≦58原子%)とバイアス層6の
組成比(52原子%≦m+n≦60原子%)の範囲の中
から各々の組成比を異ならせて選択すればよい。
【0146】このような条件を満たす組成比を各々選択
して組成範囲を異ならしめることにより、反強磁性層2
とバイアス層6を同一組成で形成した場合よりも、第2
の熱処理時における各々の反強磁性層2の交換結合磁界
とバイアス層6の交換異方性磁界の差を顕著にできる組
み合わせが可能になり、設計の自由度が向上する。ま
た、第1の熱処理の際に、反強磁性層2の交換異方性磁
界を発生させ、第2の熱処理の際に、反強磁性層2の交
換異方性磁界よりも小さな外部磁界を印加させることに
より、反強磁性層2の交換異方性磁界を劣化または磁化
方向を変えることがなく、固定磁性層3の磁化方向を強
固に固定したまま、フリー磁性層5と固定磁性層3の磁
化方向を交差させることができる。
【0147】更に、第2の熱処理後に、反強磁性層2の
交換異方性磁界をバイアス層6の交換異方性磁界よりも
大きくでき、磁気記録媒体からの信号磁界の印加に対し
て、固定磁性層3の磁化方向が変化せずに固定され、フ
リー磁性層5の磁化方向はスムーズに変化することが可
能となる。
【0148】反強磁性層2とバイアス層6の好ましい別
の組み合わせは、バイアス層6をPtqMn100-q-jj
(但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、
Xe、Krのうちの少なくとも1種または2種以上の元
素、組成比を示すq、jが、52原子%≦q+j≦60
原子%、0.2原子%≦j≦10原子%)からなる合金
とし、反強磁性層2を、PtqMn100-q-jj(但し、
Lは、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、Xe、K
rのうちの少なくとも1種または2種以上の元素、組成
比を示すq、jが、48原子%≦q+j≦58原子%、
0.2原子%≦j≦10原子%)からなる合金とするこ
とが好ましい。
【0149】バイアス層6の組成を示すq+jが、52
原子%未満若しくは60原子%を越えると、熱処理温度
270℃の第2の熱処理を行っても、バイアス層6を構
成するPtqMn100-q-jjの結晶格子がL10型の規
則格子へと規則化されにくくなり、反強磁性特性を示さ
なくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を示さなくなる
ので好ましくない。また、バイアス層6の組成を示すj
が、0.2原子%未満であると、元素Lの添加による一
方向性交換結合磁界の改善効果が十分に現れないので好
ましくなく、組成比jが10原子%を越えると、一方向
性交換結合磁界が低下してしまうので好ましくない。
【0150】また、反強磁性層2の組成を示すq+j
が、48原子%未満若しくは58原子%を越えると、熱
処理温度245℃の第1の熱処理を行っても、反強磁性
層2を構成するPtqMn100-q-jjの結晶格子がL1
0型の規則格子へと規則化しにくくなり、反強磁性特性
を示さなくなる。即ち、一方向性交換結合磁界を示さな
くなるので好ましくない。また、反強磁性層2の組成を
示すjが、0.2原子%未満であると、元素Lの添加に
よる一方向性交換結合磁界の改善効果が十分に現れない
ので好ましくなく、jが10原子%を越えると、一方向
性交換結合磁界が低下してしまうので好ましくない。
【0151】よって、第1の熱処理温度245℃の第1
の熱処理を行った後に、反強磁性層2の交換異方性磁界
を発生させ、かつ第2の熱処理温度が270℃の第2の
熱処理時に、反強磁性層2の交換異方性磁界よりも小さ
な外部磁界を印加して、第2の熱処理を行った後に、反
強磁性層2の交換異方性磁界がバイアス層6の交換異方
性磁界よりも大きくなるように、反強磁性層2の組成比
(48原子%≦q+j≦58原子%)とバイアス層6の
組成比(52原子%≦q+j≦60原子%)の範囲の中
から各々の組成比を異ならせて選択すればよい。
【0152】このような条件を満たす組成比を各々選択
して組成範囲を異ならしめることにより、反強磁性層2
とバイアス層6を同一組成で形成した場合よりも、第1
の熱処理時および第2の熱処理時における各々の反強磁
性層2の交換結合磁界とバイアス層6の交換異方性磁界
の差を顕著にできる組み合わせが可能になり、設計の自
由度が向上する。また、第1の熱処理の際に、反強磁性
層2の交換異方性磁界を発生させ、第2の熱処理の際
に、反強磁性層2の交換異方性磁界よりも小さな外部磁
界を印加させることにより、反強磁性層2の交換異方性
磁界を劣化または磁化方向を変えることがなく、固定磁
性層3の磁化方向を強固に固定したまま、フリー磁性層
5と固定磁性層3の磁化方向を交差させることができ
る。
【0153】更に、第2の熱処理後に、反強磁性層2の
交換異方性磁界をバイアス層6の交換異方性磁界よりも
大きくでき、磁気記録媒体からの信号磁界の印加に対
し、固定磁性層3の磁化方向が変化せずに固定され、フ
リー磁性層5の磁化方向はスムーズに変化することが可
能となる。
【0154】このようなスピンバルブ型薄膜磁気素子1
では、反強磁性層2およびバイアス層6が、Pt、P
d、Rh、Ru、Ir、Os、Au、Ag、Cr、N
i、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種ま
たは2種以上の元素とMnとを含む合金からなるもので
あるので、交換異方性磁界の温度特性が良好となり、耐
熱性に優れたスピンバルブ型薄膜磁気素子1となる。
【0155】例えば、PtMn合金のブロッキング温度
は、380℃程度であり、従来のスピンバルブ型薄膜磁
気素子においてバイアス層に用いられていたFeMn合
金の150℃と比較して高い。したがって、装置内の温
度が高温となる薄膜磁気ヘッドなどの装置に備えられた
場合の耐久性が良好で、温度変化による交換異方性磁界
(交換結合磁界)の変動が少ない優れたスピンバルブ型
薄膜磁気素子1とすることができる。
【0156】更にまた、反強磁性層2を上記の材料で形
成することで、ブロッキング温度が高いものとなり、反
強磁性層2に大きな交換異方性磁界を発生させることが
できるため、固定磁性層3の磁化方向を強固に固定する
ことができる。また、本発明のバイアス層6、反強磁性
層2の中でもPtMn合金のブロッキング温度は380
℃であり、IrMn合金の230℃と比較しても高く、
より好ましい。
【0157】このようなスピンバルブ型薄膜磁気素子1
の製造方法では、反強磁性層2およびバイアス層6に、
Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Au、Ag、C
r、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも
1種または2種以上の元素と、Mnとを含む合金を用
い、前記合金の性質を利用して、1度目の熱処理で固定
磁性層3の磁化方向を固定し、2度目の熱処理でフリー
磁性層5の磁化方向を前記固定磁性層3の磁化方向と交
差する方向に揃えるので、固定磁性層3の磁化方向に悪
影響を与えることなく、フリー磁性層5の磁化方向を固
定磁性層3の磁化方向と交差する方向に揃えることがで
き、耐熱性に優れたスピンバルブ型薄膜磁気素子1を得
ることができる。
【0158】また、このスピンバルブ型薄膜磁気素子の
製造方法は、第1の積層体a1の上に軟磁性層7、7を
形成し、前記軟磁性層7、7の上にバイアス層6、6を
形成する方法であるので、軟磁性層7、7を形成したの
ち、真空を破ることなく前記バイアス層6、6を形成す
ることができ、前記バイアス層6、6が形成される表面
をイオンミリングや逆スパッタによりクリーニングする
必要がないため、再付着物によるコンタミや、表面の結
晶状態の乱れによる交換異方性磁界の発生に対する悪影
響など、クリーニングすることに起因する不都合が生じ
ない優れた製造方法とすることができる。また、前記バ
イアス層6、6を形成する前に前記バイアス層6、6が
形成される面をクリーニングする必要がないため、容易
に製造することができる。
【0159】一方、フリー磁性層5と軟磁性層7の界面
での強磁性結合は、反強磁性層との界面での交換結合ほ
どコンタミなどに敏感でない。このため、一旦大気に出
してから軟磁性層7を成膜しても十分にフリー磁性層5
への縦バイアス磁界を確保することができるが、軟磁性
層7の成膜に先立って、イオンミリングや逆スパッタな
どによるクリーニングを真空を破ることなく行ってもよ
い。
【0160】また、スライダ151に上記のスピンバル
ブ型薄膜磁気素子1が備えられてなる薄膜磁気ヘッドと
することで、耐久性および耐熱性に優れ、十分な交換異
方性磁界が得られる信頼性の高い薄膜磁気ヘッドとする
ことができる。
【0161】本発明の第1の実施形態のスピンバルブ型
薄膜磁気素子1においては、上述したように、非磁性導
電層4の厚さ方向上下に、固定磁性層3とフリー磁性層
5をそれぞれ単層構造として設けたが、これらを複数構
造としてもよい。
【0162】巨大磁気抵抗変化を示すメカニズムは、非
磁性導電層4と固定磁性層3とフリー磁性層5との界面
で生じる伝導電子のスピン依存散乱によるものである。
Cuなどからなる前記非磁性導電層4に対し、スピン依
存散乱が大きな組み合わせとして、Co層が例示でき
る。このため、固定磁性層3をCo以外の材料で形成し
た場合、固定磁性層3の非磁性導電層4側の部分を図1
の2点鎖線で示すように薄いCo層3aで形成すること
が好ましい。また、フリー磁性層5をCo以外の材料で
形成した場合も固定磁性層3の場合と同様に、フリー磁
性層5の非磁性導電層4側の部分を図1の2点鎖線で示
すように薄いCo層5aで形成することが好ましい。
【0163】[第2の実施形態]図7は、本発明の第2
の実施形態のスピンバルブ型薄膜磁気素子を模式図的に
示した横断面図であり、図8は、図7に示したスピンバ
ルブ型薄膜磁気素子を記録媒体との対向面側から見た場
合の構造を示した断面図である。このスピンバルブ型薄
膜磁気素子においても、図1に示すスピンバルブ型薄膜
磁気素子と同様に、ハードディスク装置に設けられた浮
上式スライダのトレーリング側端部などに設けられて、
ハードディスクなどの記録磁界を検出するものである。
なお、ハードディスクなどの磁気記録媒体の移動方向
は、図示Z方向であり、磁気記録媒体からの洩れ磁界の
方向は、Y方向である。
【0164】図7および図8に示すスピンバルブ型薄膜
磁気素子は、反強磁性層、固定磁性層、非磁性導電層、
及びフリー磁性層が一層ずつ形成された、いわゆるボト
ム型のシングルスピンバルブ型薄膜磁気素子の一種であ
る。また、この例のスピンバルブ型薄膜磁気素子も、図
1に示すスピンバルブ型薄膜磁気素子と同様に、反強磁
性材料からなるバイアス層を用いたエクスチェンジバイ
アス方式により、フリー磁性層の磁化方向を固定磁性層
の磁化方向に対して交差する方向に揃えるものである。
【0165】図7および図8において、符号Kは基板を
示している。この基板Kの上には、Al2O3などの絶
縁下地層200、下部シールド層163、下部ギャップ
層164、反強磁性層11が形成され、更に、前記反強
磁性層11の上には、第1の固定磁性層12が形成され
ている。そして、前記第1の固定磁性層12の上には、
非磁性中間層13が形成され、前記非磁性中間層13の
上には、第2の固定磁性層14が形成されている。前記
第2の固定磁性層14の上には、非磁性導電層15が形
成され、更に前記非磁性導電層15の上には、フリー磁
性層16が形成されている。
【0166】また、前記フリー磁性層16の上には、軟
磁性層19、19がトラック幅Twに相当する間隔を開
けて設けられている。前記軟磁性層19、19の上に
は、バイアス層130、130が設けられ、前記バイア
ス層130、130の上には、導電層131、131が
形成されている。
【0167】このスピンバルブ型薄膜磁気素子において
は、上述の第1の実施形態のスピンバルブ型薄膜磁気素
子と同様に、反強磁性層11は、Pt、Pd、Ir、R
h、Ru、Ir、Os、Au、Ag、Cr、Ni、N
e、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2
種以上の元素と、Mnとを含む合金からなるものであ
り、磁場中熱処理により第1の固定磁性層12、第2の
固定磁性層14をそれぞれ一定の方向に磁化するもので
ある。
【0168】前記第1の固定磁性層12および第2の固
定磁性層14は、例えば、Co膜、NiFe合金、Co
NiFe合金、CoNi合金、CoFe合金などで形成
されている。また、第1の固定磁性層12と第2の固定
磁性層14との間に介在する非磁性中間層13は、R
u、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは
2種以上の合金で形成されていることが好ましい。
【0169】ところで、図7に示す第1の固定磁性層1
2及び第2の固定磁性層14に示されている矢印は、そ
れぞれの磁気モーメントの大きさ、及びその方向を表し
ており、前記磁気モーメントの大きさは、飽和磁化(M
s)と膜厚(t)とをかけた値で選定される。
【0170】図7および図8に示す第1の固定磁性層1
2と第2の固定磁性層14とは同じ材質で形成され、し
かも、第2の固定磁性層14の膜厚tP2が、第1の固
定磁性層12の膜厚tP1よりも大きく形成されている
ために、第2の固定磁性層14の方が第1の固定磁性層
12に比べ、磁気モーメントが大きくなっている。ま
た、第1の固定磁性層12および第2の固定磁性層14
が異なる磁気モーメントを有することが望ましい。した
がって、第1の固定磁性層12の膜厚tP1が第2の固
定磁性層14の膜厚tP2より厚く形成されていてもよ
い。
【0171】第1の固定磁性層12は、図7および図8
に示すように、図示Y方向、即ち記録媒体から離れる方
向(ハイト方向)に磁化されており、非磁性中間層13
を介して対向する第2の固定磁性層14の磁化は、前記
第1の固定磁性層12の磁化方向と反平行(フェリ状
態)に磁化されている。
【0172】第1の固定磁性層12は、反強磁性層11
に接して形成され、磁場中アニール(熱処理)を施すこ
とにより、前記第1の固定磁性層12と反強磁性層11
との界面にて交換結合磁界(交換異方性磁界)が発生
し、例えば、図7および図8に示すように、前記第1の
固定磁性層12の磁化が、図示Y方向に固定される。前
記第1の固定磁性層12の磁化が、図示Y方向に固定さ
れると、非磁性中間層13を介して対向する第2の固定
磁性層14の磁化は、第1の固定磁性層12の磁化と反
平行状態(フェリ状態)で固定される。
【0173】このようなスピンバルブ型薄膜磁気素子に
おいては、交換結合磁界が大きいほど、第1の固定磁性
層12の磁化と第2の固定磁性層14の磁化を安定して
反平行状態に保つことが可能である。この例のスピンバ
ルブ型薄膜磁気素子では、反強磁性層11として、ブロ
ッキング温度が高く、しかも第1の固定磁性層12との
界面で大きい交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生さ
せる上記の合金を使用することで、前記第1の固定磁性
層12及び第2の固定磁性層14の磁化状態を熱的にも
安定して保つことができる。
【0174】以上のようにこのようなスピンバルブ型薄
膜磁気素子では、第1の固定磁性層12と第2の固定磁
性層14との膜厚比を適正な範囲内に収めることによっ
て、交換結合磁界(Hex)を大きくでき、第1の固定
磁性層12と第2の固定磁性層14の磁化を、熱的にも
安定した反平行状態(フェリ状態)に保つことができ、
しかも、良好な△MR(抵抗変化率)を得ることが可能
である。
【0175】図7および図8に示すように、第2の固定
磁性層14の上には、Cuなどで形成された非磁性導電
層15が形成され、更に前記非磁性導電層15の上に
は、フリー磁性層16が形成されている。前記フリー磁
性層16は、図7および図8に示すように、2層で形成
されており、前記非磁性導電層15に接する側に形成さ
れた符号17の層はCo膜で形成されている。また、も
う一方の層18は、NiFe合金や、CoFe合金、あ
るいはCoNiFe合金などで形成されている。なお、
非磁性導電層15に接する側にCo膜の層17を形成す
る理由は、Cuにより形成された前記非磁性導電層15
との界面での金属元素等の拡散を防止でき、また、△M
R(抵抗変化率)を大きくできるからである。前記軟磁
性層19、19は、NiFe合金などで形成されること
が好ましい。
【0176】また、バイアス層130、130は、前記
反強磁性層11と同様に、Pt、Pd、Ir、Rh、R
u、Os、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、X
e、Krのうちの少なくとも1種または2種以上の元素
と、Mnとを含む合金からなるものとされる。前記バイ
アス層130のバイアス磁界の影響を受けて、前記フリ
ー磁性層16の磁化は、図示X1方向に磁化された状態
となっている。また、導電層131、131は、Au、
W、Cr、Taなどにより形成されることが好ましい。
【0177】図7および図8におけるスピンバルブ型薄
膜磁気素子では、前記導電層131、131からフリー
磁性層16、非磁性導電層15、及び第2の固定磁性層
14にセンス電流が与えられる。記録媒体から図7およ
び図8に示す図示Y方向に磁界が与えられると、フリー
磁性層16の磁化は、図示X1方向からY方向に変動
し、このときの非磁性導電層15とフリー磁性層16と
の界面、及び非磁性導電層15と第2の固定磁性層14
との界面でスピンに依存した伝導電子の散乱が起こるこ
とにより、電気抵抗が変化し、記録媒体からの洩れ磁界
が検出される。
【0178】ところで前記センス電流は、実際には、第
1の固定磁性層12と非磁性中間層13の界面などにも
流れる。前記第1の固定磁性層12は△MRに直接関与
せず、前記第1の固定磁性層12は、△MRに関与する
第2の固定磁性層14を適正な方向に固定するための、
いわば補助的な役割を担った層となっている。このた
め、センス電流が、第1の固定磁性層12及び非磁性中
間層13に流れることは、シャントロス(電流ロス)に
なるが、このシャントロスの量は非常に少なく、第2の
実施形態では、従来とほぼ同程度の△MRを得ることが
可能となっている。
【0179】この例のスピンバルブ型薄膜磁気素子は、
図1に示すスピンバルブ型薄膜磁気素子とほぼ同様の製
造方法により製造することができる。即ち、本発明のス
ピンバルブ型薄膜磁気素子の製造方法では、基板K上
に、反強磁性層11、第1の固定磁性層12、非磁性中
間層13、第2の固定磁性層14、非磁性導電層15、
フリー磁性層16を順次積層して第1の積層体を形成し
たのち、前記第1の積層体にトラック幅Tw方向と直交
する方向である第1の磁界を印加しつつ、第1の熱処理
温度で熱処理し、前記反強磁性層11に交換異方性磁界
を発生させて、前記第1の固定磁性層12の磁化を固定
する。
【0180】次に、前記第1の積層体の上に、リフトオ
フ用レジストを使用する方法などにより、トラック幅T
wに相当する間隔を開けて軟磁性層19、19を形成
し、続いて、前記軟磁性層19、19の上にバイアス層
130、130を形成し、更に、前記バイアス層13
0、130の上に導電層131、131を形成し、図7
および図8に示すスピンバルブ型薄膜磁気素子と同じ形
状の第2の積層体が得られる。
【0181】このようにして得られた第2の積層体に対
し、トラック幅Tw方向に前記反強磁性層11の交換異
方性磁界よりも小さい第2の磁界を印加しつつ、第2の
熱処理温度で熱処理し、前記フリー磁性層16に前記第
1の固定磁性層12および第2の固定磁性層14の磁化
方向と交差する方向のバイアス磁界を付与することによ
って、図7および図8に示すスピンバルブ型薄膜磁気素
子が得られる。
【0182】このようなスピンバルブ型薄膜磁気素子に
おいても、反強磁性層11およびバイアス層130が、
Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Au、Ag、C
r、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも
1種または2種以上の元素とMnとを含む合金からなる
ものであるので、交換異方性磁界の温度特性が良好とな
り、耐熱性に優れたスピンバルブ型薄膜磁気素子とな
る。また、装置内の温度が高温となる薄膜磁気ヘッドな
どの装置に備えられた場合の耐久性が良好で、温度変化
による交換異方性磁界(交換結合磁界)の変動が少ない
優れたスピンバルブ型薄膜磁気素子とすることができ
る。更にまた、反強磁性層11を上記の合金で形成する
ことで、ブロッキング温度が高いものとなり、反強磁性
層11に大きな交換異方性磁界を発生させることができ
るため、第1の固定磁性層12および第2の固定磁性層
14の磁化方向を強固に固定することができる。
【0183】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
の製造方法においては、反強磁性層11およびバイアス
層130に、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、A
u、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうち
の少なくとも1種または2種以上の元素とMnとを含む
合金を用い、前記合金の性質を利用して、1度目の熱処
理で第1の固定磁性層12の磁化方向を固定し、2度目
の熱処理でフリー磁性層16の磁化方向を前記第1の固
定磁性層12および第2の固定磁性層14の磁化方向と
交差する方向に揃えるので、第1の固定磁性層12の磁
化方向に悪影響を与えることなく、フリー磁性層16の
磁化方向を第1の固定磁性層12および第2の固定磁性
層14の磁化方向と交差する方向に揃えることができ、
耐熱性に優れたスピンバルブ型薄膜磁気素子を得ること
ができる。
【0184】また、このスピンバルブ型薄膜磁気素子の
製造方法は、第1の積層体の上に軟磁性層19、19を
形成し、前記軟磁性層19、19の上にバイアス層13
0、130を形成する方法であるので、軟磁性層19、
19を形成したのち、真空を破ることなく前記バイアス
層130、130を形成することができ、前記バイアス
層130、130が形成される表面をイオンミリングや
逆スパッタによりクリーニングする必要がないため、再
付着物によるコンタミや、表面の結晶状態の乱れによる
交換異方性磁界の発生に対する悪影響など、クリーニン
グすることに起因する不都合が生じない優れた製造方法
とすることができる。また、前記バイアス層130、1
30を形成する前に前記バイアス層130、130が形
成される面をクリーニングする必要がないため、容易に
製造することができる。
【0185】[第3の実施形態]図9は、本発明の第3
の実施形態のスピンバルブ型薄膜磁気素子を模式図的に
示した横断面図であり、図10は、図9に示したスピン
バルブ型薄膜磁気素子を記録媒体との対向面側から見た
場合の構造を示した断面図である。この例のスピンバル
ブ型薄膜磁気素子においても、上記のスピンバルブ型薄
膜磁気素子と同様に、ハードディスク装置に設けられた
浮上式スライダのトレーリング側端部などに設けられ
て、ハードディスクなどの記録磁界を検出するものであ
る。なお、ハードディスクなどの磁気記録媒体の移動方
向は、図示Z方向であり、磁気記録媒体からの洩れ磁界
の方向は、Y方向である。
【0186】また、この例のスピンバルブ型薄膜磁気素
子も、反強磁性材料からなるバイアス層を用いたエクス
チェンジバイアス方式により、フリー磁性層の磁化方向
を固定磁性層の磁化方向に対して交差する方向に揃える
ものである。このスピンバルブ型薄膜磁気素子は、固定
磁性層のみならず、フリー磁性層も非磁性中間層を介し
て第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の2層に分
断されている。
【0187】図9および図10において、符号Kは、基
板を示している。この基板Kの上には、Al23などの
絶縁下地層200、下部シールド層163、下部ギャッ
プ層164、反強磁性層51が形成され、更に、前記反
強磁性層51の上には、第1の固定磁性層52、非磁性
中間層53、第2の固定磁性層54、非磁性導電層5
5、第2のフリー磁性層56、非磁性中間層59、第1
のフリー磁性層60が順に積層されている。前記第1の
フリー磁性層60の上には、図10に示すように、軟磁
性層61、61がトラック幅Twに相当する間隔を開け
て設けられている。前記軟磁性層61、61の上には、
バイアス層62、62が設けられ、前記バイアス層6
2、62の上には、導電層63、63が形成されてい
る。
【0188】本発明の第3の実施形態のスピンバルブ型
薄膜磁気素子においても、前記反強磁性層51は、上記
のスピンバルブ型薄膜磁気素子と同様にPt、Pd、R
h、Ru、Ir、Os、Au、Ag、Cr、Ni、N
e、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2
種以上の元素と、Mnとを含む合金からなるものであ
り、磁場中熱処理により第1の固定磁性層52、第2の
固定磁性層54をそれぞれ一定の方向に磁化するもので
ある。
【0189】第1の固定磁性層52及び第2の固定磁性
層54は、Co膜、NiFe合金、CoFe合金、ある
いはCoNiFe合金、CoNi合金などから形成され
ている。また、非磁性中間層53は、Ru、Rh、I
r、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合
金で形成されていることが好ましい。
【0190】第1の固定磁性層52は、反強磁性層51
に接して形成され、磁場中アニール(熱処理)を施すこ
とにより、前記第1の固定磁性層52と反強磁性層51
との界面にて交換結合磁界(交換異方性磁界)が発生
し、例えば、図9および図10に示すように、前記第1
の固定磁性層22の磁化が、図示Y方向に固定される。
前記第1の固定磁性層52の磁化が、図示Y方向に固定
されると、非磁性中間層53を介して対向する第2の固
定磁性層54の磁化は、第1の固定磁性層52の磁化と
反平行状態(フェリ状態)で固定される。
【0191】このフェリ状態の安定性を保つためには、
大きい交換結合磁界が必要である。この例のスピンバル
ブ型薄膜磁気素子では、反強磁性層51として、ブロッ
キング温度が高く、しかも第1の固定磁性層52との界
面で大きい交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させ
る上記の合金を使用することで、前記第1の固定磁性層
52及び第2の固定磁性層54の磁化状態を熱的にも安
定して保つことができる。また、前記非磁性導電層55
は、Cuなどで形成されることが好ましい。
【0192】また、前記第1のフリー磁性層56は、図
9および図10に示すように、2層から形成されてお
り、非磁性導電層55に接する側にCo膜57が形成さ
れている。非磁性導電層55に接する側にCo膜57を
形成するのは、第1に△MRを大きくできるためであ
り、第2に非磁性導電層55との拡散を防止するためで
ある。
【0193】前記Co膜57の上には、NiFe合金膜
58が形成されている。更に、前記NiFe合金膜58
上には、非磁性中間層59が形成されている。そして、
前記非磁性中間層59の上には、第1のフリー磁性層6
0が形成されている。前記第1のフリー磁性層60は、
Co膜、NiFe合金、CoFe合金、あるいはCoN
iFe合金、CoNi合金などで形成されている。
【0194】また、第2のフリー磁性層56と第1のフ
リー磁性層60との間に介在する非磁性中間層59は、
Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるい
は2種以上の合金で形成されていることが好ましい。
【0195】前記第2のフリー磁性層56の磁化と第1
のフリー磁性層60の磁化とは、前記第2のフリー磁性
層56と第1のフリー磁性層60との間に発生する交換
結合磁界(RKKY相互作用)によって、図9および図
10に示すように、互いに反平行状態(フェリ状態)に
なっている。
【0196】図9および図10に示すスピンバルブ型薄
膜磁気素子では、例えば、第2のフリー磁性層56の膜
厚tF2は、第1のフリー磁性層60の膜厚tF1よりも
小さく形成されている。そして、前記第2のフリー磁性
層56のMs・tF2は、第1のフリー磁性層60のM
s・tF1よりも小さく設定されており、バイアス層6
2から図示X1方向と反対方向にバイアス磁界が与えら
れると、Ms・tF1の大きい第1のフリー磁性層60
の磁化が、前記バイアス磁界の影響を受けて、図示X1
方向と反対方向に揃えられ、前記第1のフリー磁性層6
0との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、M
s・tF2の小さい第2のフリー磁性層56の磁化は、
図示X1方向に揃えられる。
【0197】図示Y方向から外部磁界が侵入してくる
と、前記第2のフリー磁性層56と第1のフリー磁性層
60の磁化は、フェリ状態を保ちながら、前記外部磁界
の影響を受けて回転する。そして、△MRに奇与する第
2のフリー磁性層56の変動磁化と、第2の固定磁性層
54の固定磁化(例えば図示Y方向と反対方向に磁化さ
れている)との関係によって、電気抵抗が変化し、外部
磁界が電気抵抗変化として検出される。
【0198】前記軟磁性層61、61は、例えば、Ni
Fe合金などで形成されることが好ましい。また、バイ
アス層62、62は、前記反強磁性層51と同様に、P
t、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Au、Ag、C
r、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも
1種または2種以上の元素と、Mnとを含む合金からな
るものとされる。また、導電層62、63は、Au、
W、Cr、Taなどにより形成されることが好ましい。
【0199】この例のスピンバルブ型薄膜磁気素子も、
図1に示すスピンバルブ型薄膜磁気素子とほぼ同様の製
造方法により製造することができる。即ち、本発明のス
ピンバルブ型薄膜磁気素子の製造方法では、基板K上
に、反強磁性層51、第1の固定磁性層52、非磁性中
間層53、第2の固定磁性層54、非磁性導電層55、
第2のフリー磁性層56、非磁性中間層59、第1のフ
リー磁性層60を順次積層して第1の積層体を形成した
のち、前記第1の積層体にトラック幅Tw方向と直交す
る方向である第1の磁界を印加しつつ、第1の熱処理温
度で熱処理し、前記反強磁性層51に交換異方性磁界を
発生させて、前記第1の固定磁性層52の磁化を固定す
る。
【0200】次に、前記第1の積層体の上に、リフトオ
フ用レジストを使用する方法などにより、トラック幅T
wに相当する間隔を開けて軟磁性層61、61を形成
し、続いて、前記軟磁性層61、61の上にバイアス層
62、62を形成し、更に、前記バイアス層62、62
の上に導電層63、63を形成し、図9および図10に
示すスピンバルブ型薄膜磁気素子と同じ形状の第2の積
層体が得られる。
【0201】このようにして得られた第2の積層体に対
し、トラック幅Tw方向に前記反強磁性層51の交換異
方性磁界よりも小さい第2の磁界を印加しつつ、第2の
熱処理温度で熱処理し、前記第1のフリー磁性層60に
前記第1の固定磁性層52および第2の固定磁性層54
の磁化方向と交差する方向のバイアス磁界を付与するこ
とによって図9および図10に示すスピンバルブ型薄膜
磁気素子が得られる。
【0202】このようなスピンバルブ型薄膜磁気素子に
おいても、反強磁性層51およびバイアス層62が、P
t、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Au、Ag、C
r、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも
1種または2種以上の元素とMnとを含む合金からなる
ものであるので、交換異方性磁界の温度特性が良好とな
り、耐熱性に優れたスピンバルブ型薄膜磁気素子とな
る。
【0203】また、ハードディスク装置内の環境温度や
素子を流れるセンス電流によるジュール熱により素子が
高温となる薄膜磁気ヘッドなどの装置に備えられた場合
の耐久性が良好で、温度変化による交換異方性磁界(交
換結合磁界)の変動が少ない優れたスピンバルブ型薄膜
磁気素子とすることができる。更にまた、反強磁性層5
1を上記の合金で形成することで、ブロッキング温度が
高いものとなり、反強磁性層51に大きな交換異方性磁
界を発生させることができるため、第1の固定磁性層5
2および第2の固定磁性層54の磁化方向を強固に固定
することができる。
【0204】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
の製造方法においては、反強磁性層51およびバイアス
層62に、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、A
u、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうち
の少なくとも1種または2種以上の元素とMnとを含む
合金を用い、前記合金の性質を利用して、1度目の熱処
理で第1の固定磁性層52の磁化方向を固定し、2度目
の熱処理で第1のフリー磁性層60の磁化方向を前記第
1の固定磁性層52および第2の固定磁性層54の磁化
方向と交差する方向に揃えるので、第1の固定磁性層5
2の磁化方向に悪影響を与えることなく、第2のフリー
磁性層56および第1のフリー磁性層60の磁化方向を
第1の固定磁性層52および第2の固定磁性層54の磁
化方向と交差する方向に揃えることができ、耐熱性に優
れたスピンバルブ型薄膜磁気素子を得ることができる。
【0205】また、このスピンバルブ型薄膜磁気素子の
製造方法は、第1の積層体の上に軟磁性層61、61を
形成し、前記軟磁性層61、61の上にバイアス層6
2、62を形成する方法であるので、軟磁性層61、6
1を形成した後、真空を破ることなく前記バイアス層6
2、62を形成することができ、前記バイアス層62、
62が形成される表面をイオンミリングや逆スパッタに
よりクリーニングする必要がないため、再付着物による
コンタミや、表面の結晶状態の乱れによる交換異方性磁
界の発生に対する悪影響など、クリーニングすることに
起因する不都合が生じない優れた製造方法とすることが
できる。また、前記バイアス層62、62を形成する前
に前記バイアス層62、62が形成される面をクリーニ
ングする必要がないため、容易に製造することができる
特徴を有する。
【0206】[センス電流磁界の作用]次に、図7〜図
10に示す第2の実施形態および第3の実施形態の構造
において、センス電流磁界の作用について説明する。図
7および図8に示すスピンバルブ型薄膜磁気素子では、
非磁性導電層15の下側に第2の固定磁性層14が形成
されている。この場合にあっては、第1の固定磁性層1
2及び第2の固定磁性層14のうち、磁気モーメントの
大きい方の固定磁性層の磁化方向に、センス電流磁界の
方向を合わせる。
【0207】図7に示すように、前記第2の固定磁性層
14の磁気モーメントは、第1の固定磁性層12の磁気
モーメントに比べて大きく、前記第2の固定磁性層14
の磁気モーメントは、図示Y方向と反対方向(図示左方
向)に向いている。このため前記第1の固定磁性層12
の磁気モーメントと第2の固定磁性層14の磁気モーメ
ントとを足し合わせた合成磁気モーメントは、図示Y方
向と反対方向(図示左方向)に向いている。
【0208】前述のように、非磁性導電層15は、第2
の固定磁性層14及び第1の固定磁性層12の上側に形
成されている。このため、主に前記非磁性導電層15を
中心にして流れるセンス電流112によって形成される
センス電流磁界は、前記非磁性導電層15よりも下側に
おいて、図示左方向に向くように、前記センス電流11
2の流す方向を制御すればよい。このようにすれば、第
1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14との合成磁
気モーメントの方向と、前記センス電流磁界の方向とが
一致する。
【0209】図7に示すように、前記センス電流112
は、図示X1方向に流される。右ネジの法則により、セ
ンス電流を流すことによって形成されるセンス電流磁界
は、紙面に対して右回りに形成される。従って、非磁性
導電層15よりも下側の層には、図示方向(図示Y方向
と反対方向)のセンス電流磁界が印加されることにな
り、このセンス電流によって、第1の合成磁気モーメン
トを補強する方向に作用し、第1の固定磁性層12と第
2の固定磁性層14間に作用する交換結合磁界(RKK
Y相互作用)が増幅され、前記第1の固定磁性層12の
磁化と第2の固定磁性層14の磁化の反平行状態をより
熱的に安定させることが可能になる。
【0210】特に、センス電流を1mA流すと、約30
(Oe)程度のセンス電流磁界が発生し、また素子温度
が約10℃程度上昇することが判っている。更に、記録
媒体の回転数は、10000rpm程度まで速くなり、
この回転数の上昇により、装置内温度は、最高約100
℃まで上昇する。このため、例えば、センス電流を10
mA流した場合、スピンバルブ型薄膜磁気素子の素子温
度は、約200℃程度まで上昇し、更にセンス電流磁界
も300(Oe)と大きくなる。
【0211】このような、非常に高い環境温度下で、し
かも、大きなセンス電流が流れる場合にあっては、第1
の固定磁性層12の磁気モーメントと第2の固定磁性層
14とを足し合わせて求めることができる合成磁気モー
メントの方向と、センス電流磁界の方向とが逆向きであ
ると、第1の固定磁性層12の磁化と第2の固定磁性層
14の磁化との反平行状態が壊れ易くなる。また、高い
環境温度下でも耐え得るようにするには、センス電流磁
界の方向の調節の他に、高いブロッキング温度を有する
反強磁性材料を反強磁性層11として使用する必要があ
る。そのため、本発明では、ブロッキング温度が高い上
記の合金を使用している。
【0212】なお、図7に示す第1の固定磁性層12の
磁気モーメントと第2の固定磁性層14の磁気モーメン
トとで形成される合成磁気モーメントが、図示右方向
(図示Y方向)に向いている場合には、センス電流を図
示X1方向と反対方向に流し、センス電流磁界が紙面に
対し左回りに形成されるようにすればよい。
【0213】図9及び図10は、フリー磁性層が非磁性
中間層を介して第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性
層の2層に分断されて形成されたスピンバルブ型薄膜磁
気素子の実施形態であるが、図9に示すスピンバルブ型
薄膜磁気素子のように、非磁性導電層55よりも下側に
第1の固定磁性層52及び第2の固定磁性層54が形成
された場合にあっては、図7に示すスピンバルブ型薄膜
磁気素子の場合と同様のセンス電流方向の制御を行えば
よい。
【0214】以上のように、上述の各実施の形態によれ
ば、センス電流を流すことによって形成されるセンス電
流磁界の方向と、第1の固定磁性層の磁気モーメントと
第2の固定磁性層の磁気モーメントを足し合わせること
によって求めることができる合成磁気モーメントの方向
とを一致させることにより、前記第1の固定磁性層と第
2の固定磁性層間に作用する交換結合磁界(RKKY相
互作用)を増幅させ、前記第lの固定磁性層の磁化と第
2の固定磁性層の磁化の反平行状態(フェリ状態)を熱
的に安定した状態に保つことが可能である。
【0215】特に、本実施の形態では、より熱的安定性
を向上させるために、反強磁性層にブロッキング温度の
高い反強磁性材料を使用しており、これによって、環境
温度が、従来に比べて大幅に上昇しても、前記第1の固
定磁性層の磁化と第2の固定磁性層の磁化の反平行状態
(フェリ状態)を壊れ難くすることができる。
【0216】また、高記録密度化に対応するためにセン
ス電流量を大きくして再生出力を大きくしようとする
と、それに従ってセンス電流磁界も大きくなるが、本発
明の実施の形態では、前記センス電流磁界が、第1の固
定磁性層と第2の固定磁性層の間に働く交換結合磁界を
増幅させる作用をもたらしているので、センス電流磁界
の増大により、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の
磁化状態は、より安定したものとなる。
【0217】なお、このセンス電流方向の制御は、反強
磁性層にどのような反強磁性材料を使用した場合であっ
ても適用でき、例えば、反強磁性層と固定磁性層(第1
の固定磁性層)との界面で交換結合磁界(交換異方性磁
界)を発生させるために、熱処理が必要であるか、ある
いは必要でないかを問わない。更に、図1に示す第1の
実施の形態のように、固定磁性層が単層で形成されてい
るシングルスピンバルブ型薄膜磁気素子の場合であって
も、前述したセンス電流を流すことによって形成される
センス電流磁界の方向と、固定磁性層の磁化方向とを一
致させることにより、前記固定磁性層の磁化を熱的に安
定化させることが可能である。
【0218】[第4の実施形態]図11は、本発明の第4
の実施形態のスピンバルブ型薄膜磁気素子を記録媒体と
の対向面側から見た場合の構造を示した断面図である。
このスピンバルブ型薄膜磁気素子においても、図1に示
すスピンバルブ型薄膜磁気素子と同様に、ハードディス
ク装置に設けられた浮上式スライダのトレーリング側端
部などに設けられて、ハードディスクなどの記録磁界を
検出するものである。なお、ハードディスクなどの磁気
記録媒体の移動方向は、図示Z方向であり、磁気記録媒
体からの洩れ磁界の方向は、Y方向である。
【0219】また、この例のスピンバルブ型薄膜磁気素
子も、反強磁性材料からなるバイアス層を用いたエクス
チェンジバイアス方式により、フリー磁性層の磁化方向
を固定磁性層の磁化方向に対して交差する方向に揃える
ものである。このスピンバルブ型薄膜磁気素子は、固定
磁性層のみならず、フリー磁性層も非磁性中間層を介し
て第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の2層に分
断されている。
【0220】図11において、符号Kは、基板を示して
いる。この基板Kの上には、先の図10に示す第3の実
施形態の場合と同様に、Al23などの絶縁下地層20
0、下部シールド層163、下部ギャップ層164、反
強磁性層51が形成され、更に、前記反強磁性層51の
上には、第1の固定磁性層52、非磁性中間層53、第
2の固定磁性層54、非磁性導電層55、第2のフリー
磁性層56、非磁性中間層59、第1のフリー磁性層6
0が順に積層されている。前記第2のフリー磁性層60
においてその中央部のトラック幅に相当する部分の両側
に、凹部60a、60aが形成され、これらの凹部60
aを埋め込むように軟磁性層61、61がトラック幅T
wに相当する間隔を開けるように設けられている。更
に、これらの軟磁性層61、61の上には、バイアス層
62、62が設けられ、前記バイアス層62、62の上
には、導電層63、63が形成されている。
【0221】本発明の第4の実施形態のスピンバルブ型
薄膜磁気素子においても、前記反強磁性層51は、上記
のスピンバルブ型薄膜磁気素子と同様にPt、Pd、R
h、Ru、Ir、Os、Au、Ag、Cr、Ni、N
e、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2
種以上の元素と、Mnを含む合金からなるものであり、
磁場中熱処理により第1の固定磁性層52、第2の固定
磁性層54をそれぞれ一定の方向に磁化するものであ
る。
【0222】第1の固定磁性層52及び第2の固定磁性
層54は、Co膜、NiFe合金、CoFe合金、ある
いはCoNiFe合金、CoNi合金などから形成され
ている。また、非磁性中間層53は、Ru、Rh、I
r、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合
金で形成されていることが好ましい。
【0223】第1の固定磁性層52は、反強磁性層51
に接して形成され、磁場中アニール(熱処理)を施すこ
とにより、前記第1の固定磁性層52と反強磁性層51
との界面にて交換結合磁界(交換異方性磁界)が発生
し、例えば、図11に示すように、前記第1の固定磁性
層52の磁化が、図示Y方向に固定される。前記第1の
固定磁性層52の磁化が、図示Y方向に固定されると、
非磁性中間層53を介して対向する第2の固定磁性層5
4の磁化は、第1の固定磁性層52の磁化と反平行状態
(フェリ状態)で固定される。
【0224】このフェリ状態の安定性を保つためには、
大きい交換結合磁界が必要である。この例のスピンバル
ブ型薄膜磁気素子では、反強磁性層51として、ブロッ
キング温度が高く、しかも第1の固定磁性層52との界
面で大きい交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させ
る上記の合金を使用することで、前記第1の固定磁性層
52及び第2の固定磁性層54の磁化状態を熱的にも安
定して保つことができる。また、前記非磁性導電層55
は、Cuなどで形成されることが好ましい。
【0225】また、前記第2のフリー磁性層56は、図
11に示すように、2層から形成されており、非磁性導
電層55に接する側にCo膜57が形成されている。非
磁性導電層55に接する側にCo膜57を形成するの
は、第1に△MRを大きくできるためであり、第2に非
磁性導電層55との拡散を防止するためである。
【0226】前記Co膜57の上には、NiFe合金膜
58が形成されている。更に、前記NiFe合金膜58
上には、非磁性中間層59が形成されている。そして、
前記非磁性中間層59の上には、第1のフリー磁性層6
0が形成されている。前記第1のフリー磁性層60は、
Co膜、NiFe合金、CoFe合金、あるいはCoN
iFe合金、CoNi合金などで形成されている。
【0227】また、第2のフリー磁性層56と第1のフ
リー磁性層60との間に介在する非磁性中間層59は、
Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるい
は2種以上の合金で形成されていることが好ましい。
【0228】前記第2のフリー磁性層56の磁化と第1
のフリー磁性層60の磁化とは、前記第2のフリー磁性
層56と第1のフリー磁性層60との間に発生する交換
結合磁界(RKKY相互作用)によって、図11に示す
ように、互いに反平行状態(フェリ状態)になってい
る。
【0229】図11に示すスピンバルブ型薄膜磁気素子
では、例えば、第2のフリー磁性層56の膜厚tF
2は、第1のフリー磁性層60の膜厚tF1よりも小さく
形成されているが、この逆の関係でも差し支えない。そ
して、前記第2のフリー磁性層56のMs・tF2は、
第1のフリー磁性層60のMs・tF1よりも小さく設
定されており、バイアス層62から図示X1方向と反対
方向にバイアス磁界が与えられると、Ms・tF1の大
きい第1のフリー磁性層60の磁化が、前記バイアス磁
界の影響を受けて、図示X1方向と反対方向に揃えら
れ、前記第1のフリー磁性層60との交換結合磁界(R
KKY相互作用)によって、Ms・tF2の小さい第2
のフリー磁性層56の磁化は、図示X1方向に揃えられ
る。
【0230】図示Y方向から外部磁界が侵入してくる
と、前記第2のフリー磁性層56と第1のフリー磁性層
60の磁化は、フェリ状態を保ちながら、前記外部磁界
の影響を受けて回転する。そして、△MRに奇与する第
2のフリー磁性層56の変動磁化と、第2の固定磁性層
54の固定磁化(例えば図示Y方向と反対方向に磁化さ
れている)との関係によって、電気抵抗が変化し、外部
磁界が電気抵抗変化として検出される。
【0231】前記軟磁性層61、61は、例えば、Ni
Fe合金などで形成されることが好ましい。また、バイ
アス層62、62は、前記反強磁性層51と同様に、P
t、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Au、Ag、C
r、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも
1種または2種以上の元素と、Mnとを含む合金からな
るものとされる。また、導電層62、63は、Au、
W、Cr、Taなどにより形成されることが好ましい。
【0232】この例のスピンバルブ型薄膜磁気素子も、
図10に示すスピンバルブ型薄膜磁気素子とほぼ同様の
製造方法により製造することができる。即ち、本発明の
スピンバルブ型薄膜磁気素子の製造方法では、基板K上
に、反強磁性層51、第1の固定磁性層52、非磁性中
間層53、第1の固定磁性層54、非磁性導電層55、
第2のフリー磁性層56、非磁性中間層59、第2のフ
リー磁性層60を順次積層して第1の積層体を形成した
のち、前記第1の積層体にトラック幅Tw方向と直交す
る方向である第1の磁界を印加しつつ、第1の熱処理温
度で熱処理し、前記反強磁性層51に交換異方性磁界を
発生させて、前記第1の固定磁性層52の磁化を固定す
る。
【0233】次に、前記第1の積層体の上に、図12に
示すようにトラック幅に相当する幅のリフトオフレジス
ト350を使用し、第1のフリー磁性層の一部をイオン
ミリング等の方法で第1のフリー磁性層の数分の一程度
除去するなどにより、凹部60a、60aを形成し、次
いでトラック幅Twに相当する間隔を開けて凹部60a
を埋め込むように軟磁性層61、61を形成し、続い
て、前記軟磁性層61、61の上にバイアス層62、6
2を形成し、更に、前記バイアス層62、62の上に導
電層63、63を形成し、先の実施形態のスピンバルブ
型薄膜磁気素子と同じ形状の積層体が得られる。
【0234】このようにして得られた積層体に対し、ト
ラック幅Tw方向に前記反強磁性層51の交換異方性磁
界よりも小さい第2の磁界を印加しつつ、第2の熱処理
温度で熱処理し、前記第1のフリー磁性層60に前記第
1の固定磁性層52および第2の固定磁性層54の磁化
方向と交差する方向のバイアス磁界を付与することによ
って図11に示すスピンバルブ型薄膜磁気素子が得られ
る。
【0235】このようなスピンバルブ型薄膜磁気素子に
おいても、反強磁性層51およびバイアス層62が、P
t、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Au、Ag、C
r、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも
1種または2種以上の元素とMnとを含む合金からなる
ものであるので、交換異方性磁界の温度特性が良好とな
り、耐熱性に優れたスピンバルブ型薄膜磁気素子とな
る。
【0236】また、ハードディスク装置内の環境温度や
素子を流れるセンス電流によるジュール熱により素子が
高温となる薄膜磁気ヘッドなどの装置に備えられた場合
の耐久性が良好で、温度変化による交換異方性磁界(交
換結合磁界)の変動が少ない優れたスピンバルブ型薄膜
磁気素子とすることができる。更にまた、反強磁性層5
1を上記の合金で形成することで、ブロッキング温度が
高いものとなり、反強磁性層51に大きな交換異方性磁
界を発生させることができるため、第1の固定磁性層5
2および第2の固定磁性層54の磁化方向を強固に固定
することができる。
【0237】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
の製造方法においては、反強磁性層51およびバイアス
層62に、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、A
u、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうち
の少なくとも1種または2種以上の元素とMnとを含む
合金を用い、前記合金の性質を利用して、1度目の熱処
理で第1の固定磁性層52の磁化方向を固定し、2度目
の熱処理で第1のフリー磁性層60の磁化方向を前記第
1の固定磁性層52および第2の固定磁性層54の磁化
方向と交差する方向に揃えるので、第1の固定磁性層5
2の磁化方向に悪影響を与えることなく、第2のフリー
磁性層56および第1のフリー磁性層60の磁化方向を
第1の固定磁性層52および第2の固定磁性層54の磁
化方向と交差する方向に揃えることができ、耐熱性に優
れたスピンバルブ型薄膜磁気素子を得ることができる。
【0238】
【実施例】図1と図2に示す構造を採用したスピンバル
ブ型の薄膜磁気素子を下部シールド層(Co-Nb-Zr
系非晶質合金)と下部ギャップ層(Al23)とを成膜
したアルチック(Al23-TiC)基板上に形成し
た。この基板上にPt50Mn5 0からなる厚さ150Åの
反強磁性層とCoからなる厚さ15Åの第1の固定磁性
層とRuからなる厚さ8Åの非磁性中間層とCoからな
る厚さ25Åの第2の固定磁性層とCuからなる厚さ2
5Åの非磁性導電層と、を積層し、更にNi80Fe20
金からなる厚さ40Åの第2のフリー磁性層(飽和磁化
Ms×膜厚t=7.16×10-4T・nm)と、Ruから
なる厚さ8Åの非磁性中間層と、Ni80Fe20合金から
なる厚さ25Åの第1のフリー磁性層(飽和磁化Ms×
膜厚t=4.52×10-4T・nm)を積層した積層体
を得た。両フリー磁性層のトラック幅方向に沿う幅を
0.6μm、トラック幅方向に直交する素子高さ側の幅
を0.4μmとしてその両側に第1のフリー磁性層と接
するようにNi80Fe20合金からなる厚さ20Åの軟磁
性層と、Pt54Mn46合金からなる厚さ300Åの反強
磁性層と、Crからなる厚さ1000Åの導電層とを積
層した。ここで前述の積層構造において第1のフリー磁
性層と第2のフリー磁性層間の反平行結合磁界は58.
4kA/mであった。
【0239】次に、比較例として、反強磁性層と第1の
固定磁性層と非磁性中間層と第2の固定磁性層と非磁性
導電層と第2のフリー磁性層と非磁性中間層と第1のフ
リー磁性層からなる積層体は前記と同等の構造とし、こ
の積層体の左右両面側に厚さ20ÅのCrの非磁性層を
介してCo85Pt15からなるハードバイアス層(飽和磁
化Ms×膜厚t=1.88×10-3T・nm)を形成し
た。以上の構成において、マグネチックシュミレーショ
ンにより求めた実施例の構造における第1のフリー磁性
層の磁化の方向と第2のフリー磁性層の磁化の方向を膜
面に沿う方向として図25に示し、比較例構造における
第1のフリー磁性層の磁化の方向と第2のフリー磁性層
の磁化の方向を膜面に沿う方向として図20に示した。
図25に示す矢印のように本発明の積層構造において
は、縦バイアスを第1のフリー磁性層のみに印加するこ
とができ、第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の
両方の周辺部分に磁化の向きが乱れた領域が生成されな
い。即ち本発明構造を採用することで図20に示す従来
構造の場合と異なり磁気的競合(フラストレーション)
が無くなり、第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層
ともに磁化分布が均一となることが明らかである。これ
に対して図20に示す磁化の向きを示す矢印では、第1
のフリー磁性層の左右両端のハードバイアス膜からの強
い逆方向磁界がかかり、第2のフリー磁性層が作用させ
ようとする交換結合磁界と競合するために、両端側にお
いて磁化の向きが乱れていることが明らかである。これ
により第2のフリー磁性層の磁化の向きも乱れて結果的
にバルクハウゼンノイズ等の問題を生じ、磁気的安定性
にかけるおそれがある。
【0240】これらの素子を備えた磁気ヘッドにおける
トラック幅方向のアシンメトリ(再生波形の非対称性)
のプロファイルを、記録媒体上に記録された0.1×1
-6m(μm)幅のマイクロトラックパターン上を磁気
ヘッドに走査させることにより測定した。この結果を図
26(従来例の磁気ヘッドのアシンメトリ)と図27
(本発明例の磁気ヘッドのアシンメトリ)に示す。従来
例の測定結果を示す図26では、トラックの両端近傍で
アシンメトリが異常に大きくなっているがわかり、これ
は、図20に示されるように第2のフリー磁性層の磁化
がトラック両端近傍で乱れていて、第2の固定磁性層の
磁化と直交に近い関係から大きく崩れていることに関係
している。これに対して本発明例を示す図27ではこの
ようなトラック両端での大幅なアシンメトリの変化はな
く、安定した波形が得られていることが明らかである。
【0241】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
スピンバルブ型薄膜磁気素子では、反強磁性層およびバ
イアス層が、Pt、Pd、Rh、Ru、Au、Ag、C
r、Niのうちの少なくとも1種または2種以上の元素
とMnとを含む合金からなるものであるので、交換異方
性磁界の温度特性が良好となり、耐熱性に優れたスピン
バルブ型薄膜磁気素子とすることができる。また、装置
内の温度が高温となる薄膜磁気ヘッドなどの装置に備え
られた場合の耐久性が良好で、温度変化による交換異方
性磁界(交換結合磁界)の変動が少ない優れたスピンバ
ルブ型薄膜磁気素子とすることができる。更にまた、反
強磁性層を上記の合金で形成することで、ブロッキング
温度が高いものとなり、反強磁性層に大きな交換異方性
磁界を発生させることができるため、固定磁性層の磁化
方向を強固に固定することが可能なスピンバルブ型薄膜
磁気素子とすることができる。
【0242】また、上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子
においては、前記固定磁性層と前記フリー磁性層の少な
くとも一方が、非磁性中間層を介して2つに分断され、
分断された層どうしで磁化の向きが180度異なるフェ
リ磁性状態とされたことを特徴とするものとしてもよ
い。少なくとも固定磁性層が非磁性中間層を介して2つ
に分断されたスピンバルブ型薄膜磁気素子とした場合、
2つに分断された固定磁性層のうち一方が他方の固定磁
性層を適正な方向に固定する役割を担い、固定磁性層の
状態を非常に安定した状態に保つことが可能となる。一
方、少なくともフリー磁性層が非磁性中間層を介して2
つに分断されスピンバルブ型薄膜磁気素子とした場合、
2つに分断されたフリー磁性層どうしの間に交換結合磁
界が発生し、フェリ磁性状態とされ、外部磁界に対して
感度よく反転できるものとなる。
【0243】更に、本発明のスピンバルブ型薄膜磁気素
子の製造方法では、反強磁性層およびバイアス層に、P
t、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Au、Ag、C
r、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも
1種または2種以上の元素とMnとを含む合金を用い、
前記合金の性質を利用して、1度目の熱処理で固定磁性
層の磁化方向を固定し、2度目の熱処理でフリー磁性層
の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交差する方向
に揃えるので、固定磁性層の磁化方向に悪影響を与える
ことなく、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性
層の磁化方向と交差する方向に揃えることができ、耐熱
性に優れたスピンバルブ型薄膜磁気素子を得ることがで
きる。
【0244】また、このスピンバルブ型薄膜磁気素子の
製造方法は、第1の積層体の上に軟磁性層を形成し、前
記軟磁性層の上にバイアス層を形成する方法であるの
で、軟磁性層を形成したのち、真空を破ることなく前記
バイアス層を形成することができ、前記バイアス層が形
成される表面をイオンミリングや逆スパッタによりクリ
ーニングする必要がないため、再付着物によるコンタミ
や、表面の結晶状態の乱れによる交換異方性磁界の発生
に対する悪影響など、クリーニングすることに起因する
不都合が生じない優れた製造方法とすることができる。
また、前記バイアス層を形成する前に前記バイアス層が
形成される面をクリーニングする必要がないため、容易
に製造することができる。更に、上記悪影響かが残らな
い深さまで、フリー磁性層をイオンミリング等で掘り込
んだ後、軟磁性層、バイアス層を連続成膜することによ
っても、より安定した縦バイアスと高い出力を得ること
ができる。
【0245】また、本発明の薄膜磁気ヘッドは、スライ
ダに上記のスピンバルブ型薄膜磁気素子が備えられてな
るものであるので、耐久性および耐熱性に優れ、十分な
交換異方性磁界が得られる信頼性の高い薄膜磁気ヘッド
とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態であるスピンバルブ
型薄膜磁気素子を記録媒体との対向面側から見た場合の
構造を示す断面図である。
【図2】 図1に示したスピンバルブ型薄膜磁気素子の
製造方法を説明するための図であって、基板上に第1の
積層体を形成した状態を示す断面図である。
【図3】 図1に示したスピンバルブ型薄膜磁気素子の
製造方法を説明するための図であって、リフトオフレジ
ストを形成した状態を示す断面図である。
【図4】 図1に示したスピンバルブ型薄膜磁気素子の
製造方法を説明するための図であって、バイアス層と導
電層を形成した状態を示す断面図である。
【図5】 本発明の第1の実施形態であるスピンバルブ
型薄膜磁気素子を備えた薄膜磁気ヘッドを示す斜視図で
ある。
【図6】 本発明の第1の実施形態であるスピンバルブ
型薄膜磁気素子を備えた薄膜磁気ヘッドの要部を示す断
面図である。
【図7】 本発明の第2の実施形態であるスピンバルブ
型薄膜磁気素子を示す断面図である。
【図8】 図7に示したスピンバルブ型薄膜磁気素子を
記録媒体との対向面側から見た場合の構造を示した断面
図である。
【図9】 本発明の第3の実施形態であるスピンバルブ
型薄膜磁気素子を示す断面図である。
【図10】 図9に示したスピンバルブ型薄膜磁気素子
を記録媒体との対向面側から見た場合の構造を示した断
面図である。
【図11】 本発明の第4の実施形態であるスピンバル
ブ型薄膜磁気素子を記録媒体との対向面側から見た場合
の構造を示した断面図である。
【図12】 図11に示す構造を製造するために第1の
フリー磁性層の上にリフトオフレジストを形成した状態
を示す断面図である。
【図13】 従来のスピンバルブ型薄膜磁気素子の一例
を記録媒体との対向面側から見た場合の構造を示す断面
図である。
【図14】 従来のスピンバルブ型薄膜磁気素子の他の
例を記録媒体との対向面側から見た場合の構造を示す断
面図である。
【図15】 図14に示した従来のスピンバルブ型薄膜
磁気素子の製造方法を説明するための図であって、基板
上に第1の積層体を形成した状態を示す断面図である。
【図16】 図14に示した従来のスピンバルブ型薄膜
磁気素子の製造方法を説明するための図であって、第1
の積層体上にリフトオフレジストを形成した状態を示す
断面図である。
【図17】 図14に示した従来のスピンバルブ型薄膜
磁気素子の製造方法を説明するための図であって、バイ
アス層および導電層を形成した状態を示す断面図であ
る。
【図18】 従来のスピンバルブ型の薄膜磁気素子の他
の例を示す断面図。
【図19】 図18に示す構造のスピンバルブ型の薄膜
磁気素子においてフリー磁性層を2層に分断した構造の
場合、2層構造のフリー磁性層の各層の磁化の向きを外
部磁界の強さに応じて示す図である。
【図20】 図18に示す構造のスピンバルブ型の薄膜
磁気素子において第1のフリー磁性層と第2のフリー磁
性層の磁化の向きを示す図である。
【図21】 Pt55.4Mn44.6なる組成の合金及びPt
54.4Mn45.6なる組成の合金の交換異方性磁界の熱処理
温度依存性を示すグラフである。
【図22】 PtmMn100-mなる組成の合金の交換異方
性磁界のPt濃度(組成比m)依存性を示すグラフであ
る。
【図23】 図21および図22に示すグラフのデータ
の測定に用いられたスピンバルブ型薄膜磁気素子の一例
の構造を記録媒体との対向面側から見た場合の構造を示
す断面図である。
【図24】 図21および図22に示すグラフのデータ
の測定に用いられたスピンバルブ型薄膜磁気素子の他の
例の構造を記録媒体との対向面側から見た場合の構造を
示す断面図である。
【図25】 本発明構造を採用したスピンバルブ型の薄
膜磁気素子における第1のフリー磁性層と第2のフリー
磁性層の磁化の向きを示す図である。
【図26】 従来構造を採用した磁気ヘッドのアシンメ
トリを示す図。
【図27】 本発明構造を採用した磁気ヘッドのアシン
メトリを示す図。
【符号の説明】
1 スピンバルブ型薄膜磁気素子 K 基板 2、11、22、51 反強磁性層 3、23 固定磁性層 4、15、24、55 非磁性導電層 5、16、25 フリー磁性層 6、26、62、130 バイアス層 8、28、63、131 導電層 7、19、61 軟磁性層 Tw トラック幅 a1 第1の積層体 a2 第2の積層体 12、52 第1の固定磁性層 14、54 第2の固定磁性層 13、53 非磁性中間層 56 第1のフリー磁性層 60 第2のフリー磁性層 150 薄膜磁気ヘッド

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 反強磁性層と、前記反強磁性層に接して
    形成され、前記反強磁性層との交換異方性磁界により磁
    化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁性層の上
    に非磁性導電層を介して形成されたフリー磁性層と、前
    記フリー磁性層の上にトラック幅に相当する間隔を開け
    て配置された軟磁性層と、前記軟磁性層の上に形成さ
    れ、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁
    化方向に対して交差する方向に揃えるバイアス層と、前
    記フリー磁性層に検出電流を与える導電層とを基板上に
    有するスピンバルブ型薄膜磁気素子であり、 前記反強磁性層および前記バイアス層は、Pt、Pd、
    Rh、Ru、Ir、Os、Au、Ag、Cr、Ni、N
    e、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2
    種以上の元素と、Mnとを含む合金からなることを特徴
    とするスピンバルブ型薄膜磁気素子。
  2. 【請求項2】 前記固定磁性層と前記フリー磁性層の少
    なくとも一方が、非磁性中間層を介して2つに分断さ
    れ、分断された層どうしで磁化の向きが180度異なる
    フェリ磁性状態とされたことを特徴とする請求項1記載
    のスピンバルブ型薄膜磁気素子。
  3. 【請求項3】 前記反強磁性層は、下記の組成式からな
    る合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項2
    記載のスピンバルブ型薄膜磁気素子。 XmMn100-m 但し、Xは、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Osのう
    ちの少なくとも1種以上の元素であり、組成比を示すm
    は、48原子%≦m≦60原子%である。
  4. 【請求項4】 前記バイアス層は、下記の組成式からな
    る合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項2
    記載のスピンバルブ型薄膜磁気素子。 XmMn100-m 但し、Xは、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Osのう
    ちの少なくとも1種以上の元素であり、組成比を示すm
    は、48原子%≦m≦60原子%である。
  5. 【請求項5】 前記反強磁性層は、下記の組成式からな
    る合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項2
    記載のスピンバルブ型薄膜磁気素子。 PtmMn100-m-nn 但し、Dは、Pd、Rh、Ru、Ir、Osのうちの少
    なくとも1種または2種以上の元素であり、組成比を示
    すm、nは、48原子%≦m+n≦60原子%、0.2
    原子%≦n≦40原子%である。
  6. 【請求項6】 前記バイアス層は、下記の組成式からな
    る合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項2
    記載のスピンバルブ型薄膜磁気素子。 PtmMn100-m-nn 但し、Dは、Pd、Rh、Ruのうちの少なくとも1種
    または2種以上の元素であり、組成比を示すm、nは、
    52原子%≦m+n≦60原子%、0.2原子%≦n≦
    40原子%である。
  7. 【請求項7】 前記軟磁性層は、NiFe合金からなる
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項6記載のスピン
    バルブ型薄膜磁気素子。
  8. 【請求項8】 前記フリー磁性層のトラック幅に相当す
    る部分の両側に凹部が形成され、これらの凹部を埋め込
    むように軟磁性層が積層され、これら軟磁性層が前記フ
    リー磁性層に前記凹部底面を介して直接接合されるとと
    もに、これら軟磁性層上にバイアス層と導電層が積層さ
    れてなることを特徴とする請求項1ないし請求項7のい
    ずれかに記載のスピンバルブ型薄膜磁気素子。
  9. 【請求項9】 前記フリー磁性層が非磁性中間層を介し
    て2つに分断されてなり、前記固定磁性層から遠い側の
    フリー磁性層が第1のフリー磁性層、前記固定磁性層に
    近い側のフリー磁性層が第2のフリー磁性層とされた場
    合に、前記第1のフリー磁性層の磁気的膜厚が前記第2
    のフリー磁性層の磁気的膜厚よりも小さくされてなるこ
    とを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記
    載のスピンバルブ型薄膜磁気素子。
  10. 【請求項10】 基板上に、反強磁性層と、固定磁性層
    と、非磁性導電層と、フリー磁性層とを順次積層して第
    1の積層体を形成する工程と、 前記第1の積層体に、トラック幅方向と直交する方向で
    ある第1の磁界を印加しつつ第1の熱処理温度で熱処理
    し、前記反強磁性層に交換異方性磁界を発生させて前記
    固定磁性層の磁化を固定する工程と、 前記第1の積層体の上に、トラック幅に相当する間隔を
    開けて軟磁性層を形成し、前記軟磁性層の上にバイアス
    層を形成し、前記バイアス層の上に前記フリー磁性層に
    検出電流を与える導電層を形成して第2の積層体とする
    工程と、 トラック幅方向に前記反強磁性層の交換異方性磁界より
    も小さい第2の磁界を印加しつつ、第2の熱処理温度で
    熱処理し、前記フリー磁性層に、前記固定磁性層の磁化
    方向と交差する方向のバイアス磁界を付与する工程とを
    有することを特徴とするスピンバルブ型薄膜磁気素子の
    製造方法。
  11. 【請求項11】 前記反強磁性層、および前記バイアス
    層に、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Au、A
    g、Cr、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少な
    くとも1種または2種以上の元素と、Mnとを含む合金
    を用いることを特徴とする請求項10記載のスピンバル
    ブ型薄膜磁気素子の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記第1の熱処理温度は、220℃〜
    270℃の範囲であることを特徴とする請求項10また
    は請求項11に記載のスピンバルブ型薄膜磁気素子の製
    造方法。
  13. 【請求項13】 前記第2の熱処理熱度は、250℃〜
    270℃の範囲であることを特徴とする請求項10ない
    し請求項12のいずれかに記載のスピンバルブ型薄膜磁
    気素子の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記第2の磁界は、10〜600 O
    e(800〜48000A/m)の範囲であることを特
    徴とする請求項10ないし請求項13のいずれかに記載
    のスピンバルブ型薄膜磁気素子の製造方法。
  15. 【請求項15】 スライダに請求項1ないし請求項9の
    いずれかに記載のスピンバルブ型薄膜磁気素子が備えら
    れてなることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
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