JP2001040454A - Fe−Ni系シャドウマスク用材料 - Google Patents
Fe−Ni系シャドウマスク用材料Info
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Abstract
リング (全体むら) のない、Fe−Ni系シャドウマスク材
料を提案すること。 【解決手段】Ni:34〜38wt%、Mn:0.1 wt%以下を含有
する鉄ニツケル合金シャドウマスク用材料において、
(111)極点図における立方体方位(100)<00
1>とその双晶方位である(221)<212>とのX
線強度比Irが0.5 〜5:1の範囲にある集合組織を有
し、かつ JIS G 0555 の定めるところによる断面清浄度
が0.05%以下であること。
Description
ウン管などの材料として用いられるFe−Ni系シャドウマ
スク用材料に関するものであり、例えば、塩化第二鉄溶
液を主成分とするエッチング液などによるフォトエッチ
ング時に、すじむらやモトリング (以下、「すじむら
等」という) の発生を見ることのなく、かつプレス成形
性に優れた低熱膨張のFe−Ni系シャドウマスク用材料に
ついて提案する。
炭素アルミキルド鋼板が用いられている。この鋼板は、
中間冷間圧延後の鋼板を、連続焼鈍またはバッチ焼鈍炉
により適切な歪とり中間焼鈍を施し、必要に応じて疵と
りを実施し、その後、仕上げの冷間圧延および調質圧延
(ダル圧延を含む)を行うという工程を経て製造されて
いる。これに対し近年、低熱膨張Fe−Ni系合金板が、高
品位カラーテレビブラウン管やディスプレー用の材料と
して注目を浴びている。このFe−Ni系の合金板は、それ
以前にシャドウマスク用材料として用いられていた低炭
素アルミキルド鋼板に代わるものとして開発されたもの
である。かかるFe−Ni系合金が着目されている理由は、
上記低炭素アルミキルド鋼板に比較すると、色ずれ防止
の点で優れているからであり、特にディスプレーや大型
テレビ等の用途では欠かせない材料の一つとなってい
る。
トエッチング性やプレス成形性に課題を残していた。即
ち、Fe−Ni系合金は、アルミキルド鋼に比べるとフォト
エッチング時の穿孔形状が悪くかつ、すじむらと呼ばれ
る欠陥が発生し易いことが指摘されている。とくに、こ
のすじむらと呼ばれる欠陥は、カラーブラウン管におけ
る映像の白色部にすじ状のコントラストむらを発生し
て、ディスプレーとしての品位を著しく低下させること
がわかっている。このすじむら発生の原因としては、非
金属介在物の存在やNi等の成分偏析による影響が考えら
れている。そのため、すじむらの軽減を図るには、これ
らの原因を取り除くことが有効である。しかし、これら
の原因を全て取り除いたとしても、解消できないすじむ
らがなお残ることから、発明者らは、これには別の要因
があるものと想像し、研究を続けた。また、プレス成形
性に関しては、アルミキルド鋼に比べて耐力が大きく、
ヤング率が低いことから、エッチング後の透過孔加工後
プレス成形加工時にスプリングバックが発生するという
問題がある。
よって起こるすじむらやモトリング(全体むら) の真の
原因をつきとめ、これらの発生がない、Fe−Ni系シャド
ウマスク用材料を提供することにある。また本発明によ
れば、チューブメーカーでのプレス前焼鈍後の軟化がよ
り低温(800 ℃以下) でかのうであり、かつ良好なプレ
ス成形性を有するFe−Ni系シャドウマスク材料を提供す
ることができる。また、本発明によれば、エッチング穿
孔性が良好で該穿孔時の孔形状がきれいなFe−Ni系シャ
ドウマスク材料を提供することが可能である。さらに、
本発明では、映像のきれいなカラーブラウン管やディス
プレー用の材料を安価にかつ確実に提供することができ
る。
解決課題として残している、すじむら等の問題について
鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。即ち、
シャドウマスク用材料に発生するすじむら等は、エッチ
ング面における個々の結晶粒の配向の乱れによるもので
あることがわかった。そして、その配向の乱れは、Ni偏
析、非金属介在物および焼鈍途中に発生した粗大粒によ
る混粒組織の残留、特定の集合組織の配向などが原因で
あり、またこれらの要素が相互に絡み合って発生するこ
とがわかった。さらに、かかる結晶粒の配向は個々の結
晶粒が持つ結晶方位に依存していることから、このすじ
むら等の発生を防止するためには、どうしても集合組織
を制御することが必要になるとの結論に達した。
エッチング後のプレス前焼鈍およびそれに引き続くプレ
ス成形、黒化処理工程があるが、Fe−Ni合金というの
は、従来から使用されてきたアルミキルド鋼に比べると
耐力が高く、かつスプリングバックが高いため、プレス
成形する際のスプリングバックが大きく、いわゆる形状
凍結性 (プレス成形性) が悪いという問題がある。この
ための対策としては、プレス時に温間 (200 ℃程度) で
成形をおこない、0.2 %耐力を下げてスプリングバック
を小さくする試みがなされている。さらに、不純物を規
制し炭化物、窒化物の生成を制限することやCr, Mn, Ti
等の元素を添加してプレス性を改善することも有効であ
ることがわかっている (特開平 7−166278号公報) 。
(例えば、0.05%以下) によるものや低Mn化とN量の関
係を制御することが有効であるとの知見がある (特開平
9−157800号公報) 。
ら、プレス前の集合組織の制御を行うことにより、プレ
ス前焼鈍時の硬さおよび耐力を下げ、またスプリングバ
ックを小さくすることを目指した。さらに、本発明で
は、シャドウマスク材としては、エッチング穿孔性に優
れ、穿孔後の孔形状を良好にするためには、上記の制御
に加え、製品の粗さ制御や介在物個数の制御も望まし
く、さらには上記Mn組成の限定と集合組織の制御に併せ
て、表面粗さと介在物個数の制御も有効であるとの結論
を得た。このような点を検討した結果、発明者らは、従
来の36%Niアンバー材のMn含有量は0.2 〜0.3 wt%が主
流であったが、Mn:0.1 wt%以下、好ましくは0.05wt%
の低Mn素材について実用化することが有効であるとの知
見に達した。
料である。即ち、本発明は、Ni:34〜38wt%、Mn:0.1
wt%以下を含有する鉄ニツケル合金シャドウマスク用材
料において、(111)極点図における立方体方位(1
00)<001>とその双晶方位である(221)<2
12>とのX線強度比Irが0.5 〜5:1の範囲にある
集合組織を有し、かつ JIS G 0555 の定めるところによ
る断面清浄度が0.05%以下であることを特徴とするFe−
Ni系シャドウマスク用材料である。
1 wt%以下、S:0.1 wt%以下を含有する鉄ニッケル合
金シャドウマスク用材料において、(111)極点図に
おける立方体方位(100)<001>とその双晶方位
である(221)<212>とのX線強度比Irが0.5
〜5:1の範囲にある集合組織を有し、かつ JIS G 055
5 の定めるところによる断面清浄度が0.05%以下であ
り、Mn (wt%) /S (wt%) の値が2以上であることを
特徴とするFe−Ni系シャドウマスク用材料である。
るビッカース硬さがHv 150以上、より好ましくは、Hv:
160 以上、さらに好ましくはHv:170 以上のFe−Ni系シ
ャドウマスク用材料を提供する。
(X線カウント数比) は、上述したように 0.5〜5 :1
を基本とするが、好ましい強度比の下限は 0.5以上、さ
らに好ましくは1以上、より好ましくは 1.5以上で、好
ましい強度比の上限は5以下、さらに好ましくは 4.5以
下、より好ましくは 4.0以下である。
n:0.1 wt%以下を含有し、残部が実質的にFeよりなる
合金を、常法に従って処理して得た冷間圧延材を焼鈍す
るに当たり、最終圧延の前に焼鈍温度:900 〜1150℃、
均熱時間:5〜60秒の中間焼鈍を施し、その後、焼鈍温
度:700 〜900 ℃、均熱時間:60〜600 秒の最終焼鈍を
施すことにより製造することができる。なお、上記製造
方法において、各焼鈍条件は、図1のa,b,cおよび
dに図示された範囲内で行うことが好ましい。
5 ≦Rsk にすること、 表面の粗度が、0.2 μm≦Ra≦0.9 μm、−0.5 ≦
Rsk 、かつ20μm≦Sm≦250 μmにすることも有効であ
る。さらに本発明では、 板表面から任意の深さまで研磨した面に分布する10
μm以上の介在物の個数が、100 mm2 の単位面積当たり
65個以下であること、 板厚方向の断面に分布する10μm以上の介在物の個
数が、100 mm2 の単位面積当たり80個以下であるこ
と、さらにはまた、 JIS G 0551 による方法にて測定した結晶粒度番号
が、7.0 以上の大きさを示すものであること、が好まし
い材料と言える。
01〜0.5 mm、好ましくは 0.1〜0.5 mmの範囲が一般的で
ある。
較的個々のすじの幅が太く見える, いわゆる偏析に起因
するむらと、比較的すじの太さが細い絹目状に見える,
いわゆる結晶方位に起因するすじむら(絹目状すじ)と
に分類することができる。また、両者が相互に混在して
いる形態のものも存在する。本発明は、これらのむらの
うち後者のむら、すなわち結晶方位に依存するすじむら
の改善を試みるものである。そのために、本発明では、
立方体方位の (100) 面の双晶方位を導入することに
よってこれを分断することにて、結晶粒配向の乱れを制
御するようにした。以下に、本発明の結晶粒配向の方法
について説明する。
って熱間圧延し、必要に応じて再結晶焼鈍や酸洗等を施
したのち、例えば中間冷間圧延を行い、その後、最終圧
延前に中間焼鈍を施す。この中間焼鈍は、立方体方位
(100)<001>の発達を制御するために行うもの
である。この中間焼鈍は 900〜1150℃の温度で行う。そ
の温度が低い場合(<900 ℃)、最終製品での立方体方
位が発達しすぎて、双晶方位(221)<212>の割
合が低くなってしまうことから、すじむら品位が低下す
る。双晶方位の割合が少なくなることによりすじむら品
位が悪くなる理由は、立方体方位の集積により圧延方向
における優先方位<001>が個々の結晶粒単位で整合
性が微妙に乱れ、これがすじ状に見えるものと考えられ
る。逆に、中間焼鈍の温度が高温の場合(>1150℃)、
立方体方位の発達が悪くエッチング速度が低下し、シャ
ドウマスクのパターンエッチング時において個々のエッ
チング孔のコヒーレンス性が低下し、モトリングと呼ば
れる全体むらが発生するようになる。
5〜60秒の範囲が好適であり、この時間が5秒よりも短
い場合には回復・再結晶が十分になされず、混粒状態の
組織のままとなりエッチング品位が低下する。一方、こ
の時間が60秒よりも長い場合には粗粒となり、立方体方
位の発達が低下し、やはり混粒組織となるためにエッチ
ング性の低下を招く。
鈍の条件のみならず、さらに最終焼鈍の条件についても
規制することが有効である。即ち、その最終焼鈍は、製
品の結晶粒を微細かつ均一に整え、モトリングの発生原
因となるエッチング後の孔壁面のガサツキを防止するた
めに行うものであって、700 〜900 ℃の焼鈍温度で、60
〜600 秒の均熱時間で処理することが有効である。その
理由は、かかる最終焼鈍において焼鈍温度が700 ℃より
も低い場合、再結晶が不十分となり、一方、900 ℃より
も高い場合、粗粒化しエッチング品位が低下するからで
ある。
個々の結晶粒の成長および結晶方位の発達の程度に応じ
て60〜600 秒の範囲内が好ましい。例えば、その均熱時
間が短い (<60秒) と立方体方位の発達が不十分とな
り、またエッチング速度の低下、モトリングが発生す
る。一方、この均熱時間が長い (>60秒) 場合は、結晶
粒が粗大化するほか、立方体方位に対し双晶方位の方が
発達しすぎてしまい、すじむら品位が低下することにな
る。これらの焼鈍条件 (中間、最終) については、適性
範囲というものがあり、図1のa,b,c,dで囲まれ
た領域が好適である。
て、耐力を下げなければならない。このために、本発明
では、低Mn (0.1 wt%以下) とする必要があるが、併せ
てSの量をも制御してMnSを生成させることにより、低
耐力化を図る。ところで、前述の集合組織の制御は、プ
レス前焼鈍時に現れるプレス成形に有効とされる (11
1) 結晶方位の出現に対して重要な影響を及ぼし、特に
X線強度比Ir が 0.5〜0.5 の範囲でプレス前焼鈍を行
うと、 (111) 方位の出現強度が最も高くなる。した
がって、このような方法に従えは、モトリングがなくす
じむら品位を有し、かつプレス性の良好なシャドウマス
ク用素材を得ることができる。
スク用材料の成分組成を限定する理由を述べる。Cは、
0.1 wt%以上含有すると炭化物が析出しエッチング性を
阻害するだけでなく、シャドウマスク成形加工後の形状
凍結性に悪影響を及ぼす。しかも、このC量が多いと耐
力が上昇してスプリングバックが大きくなり、成形加工
時の型なじみが悪くなる。従って、本発明においては、
C量を0.1 wt%以下とする。
が多すぎると、素材自体の硬さが増大すると同時に、C
と同様に成形加工性にも悪影響が出る他、その量が多く
なるにしたがって耐力の上昇を招いてスプリングバック
が大きくなる。しかも、エッチング時のすじむらに影響
を及ぼし、これが多いとすじむら発生の原因をつくる。
従って、本発明においてはSi量は0.5 wt%以下が好まし
い。
性に対して有害なSと結合してMnSを形成するため適正
に添加すれば熱間加工性が改善できる。しかし、その添
加量が多すぎると、熱膨張係数を上げると共にキュリー
点を高温側に変位させる。従って、本発明においてMn量
は、0.1 wt%以下とする。好ましくは0.075 wt%以下、
より好ましくは0.07wt%以下、さらに好ましくは0.06wt
%以下、最も好ましくは0.05wt%以下がよい。本発明に
おいては、従来のMnの添加量が 0.2〜0.3 wt%程度であ
ったものを 0.1wt%以下としたことにより、Sによる熱
間加工性劣化により歩留り低下が懸念される。この点に
ついて、本発明では、SとMnとの関係をさらに検討し、
製品歩留りを考慮する場合には、Mn (wt%) /S (wt
%) の値が2以上に制御するか、さらにMn (wt%) /S
(wt%) の値は2.5 以上、より好ましくは3以上、さら
に好ましくは4以上、最も好ましくは5以上にするのが
よい。
を調整しても熱間加工性が極端に悪化する。
り、このNi量が34wt%より少ないと、熱膨張係数が大き
くなり、またマルテンサイト変態を生じてエッチングむ
ら発生のおそれがある。一方、Niの量が38wt%より多く
なると、同じような熱膨張係数が大きくなり、カラーブ
ラウン管などに適用した場合に色むらが発生したりする
問題がある。従って、良好なエッチング性とカラーブラ
ウン管の色むら品位を向上させるのに、Ni量は34〜38wt
%とする。
るために、上述した成分組成に関する合金設計に加え
て、さらに集合組織を制御する。発明者らは、集合組織
の形態については、良好なすじむら品位を得るための要
素として、以下の条件を満たすことが必要であること
を、種々の実験により確認した。それは、本発明にかか
るシャドウマスク用材料として好ましい集合組織として
は、(111)極点図において、立方体方位(100)
<001>とその双晶方位である(221)<212>
とのX線強度比Irを制御することである。その範囲は
(111)極点図のX線強度比(X線カウント数比I
r)で、0.5 〜5:1、好ましくは1〜4.5 :1、より
好ましくは1〜4.0 :1、さらに好ましくは1.5 〜4.0
:1であり、すじむら品位に優れるシャドウマスク材
を製造するための最適比は、2〜3.5 :1であることが
わかった。
びに測定条件は下記のとおりである。まず、X線強度比
Irの測定方法は、板の一方の面をテフロンシールで覆
った後、反対の面を市販化学研磨液 (三菱瓦斯化学製
C.P.E1000) にて化学研磨し、板厚の70〜30%になるよ
うに減厚して測定面とした。その測定面としては、板厚
みの中心部近傍を測定するのが望ましい。このようにし
て得られた化学研磨後の試料表面について、schulzの反
射法による(111)極点測定を下記表1の測定条件で
実施し、これにより得られた極点図をもとに(100)
<001>方位のX線強度と(221)<212>方位
のX線強度との比を求めた。それぞれのX線強度は、最
大X線強度 (最大X線カウント数) をもとめ、その強度
を15等分し、得られた極点図から(100)<001>
および(221)<212>に対応する強度に該当する
等高線強度を読み取り、その強度をそれぞれのX線強度
と定義した。そして、このようにして得られた(10
0)<001>方位および(221)<212>方位の
それぞれの比を求めてX線強度比Irとした。なお、X
線強度比Irは、下記のように定義されるものである。
Ir=立方体方位(001)<001>のX線強度/双晶方位(221)<
212>のX線強度
図にまとめたものである。この図は、横軸にX線強度比
Irの対数をとり、縦軸にエッチングファクター (パタ
ーンエッチングを行ったときの深さ方向のエッチング量
を幅方向のエッチング量 (サイドエッチ) で割った値)
すじむら、モトリング品位を示したものである。図に示
すように、X線強度比Irが大きくなるほど (双晶の割
合が減少するほど) エッチングファクター (板厚方向の
エッチング速度) が増大することが認められる。一方、
すじむら品位は、X線強度比Irが大きすぎても小さす
ぎても悪くなる。図示した結果からわかるように、X線
強度比Irの適正な範囲は0.5 〜5の範囲であることが
わかる。なお、モトリングに関しては、エッチング速度
が大きい方が有利であるが、図からわかるように、ほぼ
Ir:1.0 を越えると大きな変化がなくなり、差がない
と考えられる。
て、表3に示す条件で製造したものを検討したものであ
る。例えば、No. 11は(100)<001>の立方体方
位がより発達しており、(221)<212>双晶方位
とのX線強度比Ir は13.91 となっている。この試料
(比較材11)のエッチング性に関しては表3中に示すよ
うに、エッチング速度が速いためモトリングは良好なも
のとなっているものの、すじむらが明瞭に認められ、実
際のシャドウマスク製品としては適していないことがわ
かる。
れ本発明に適合する材料である。比較材No. 6は、(1
00)<001>立方体方位が非常に弱く、規格化強度
比は0.36:1となっているものである。この比較材No.
6のエッチング性に関しては、モトリングの品位が悪い
という結果なっており、これもまたシャドウマスク製品
として不適当である。
成分の適性範囲を規定し、それによりシャドウマスク用
素材に発生するエッチング時のすじむらならびにモトリ
ングとよばれる全体むらの発生を防止した材料である。
r で示される集合組織の限定に加え、さらに JIS G 055
5 の定めるところによる断面清浄度を0.05%以下、好ま
しくは0.03%以下、より好ましくは0.02%以下、さらに
好ましくは0.017 %以下にする。この理由は、断面清浄
度dが上記の数値を超えると、エッチング精度が低下
し、製品不良率が悪くなるからである。
G 0555 に準拠して行う。具体的には、製品を圧延方向
に30mmの長さに切断し、その断面を研磨したのち、縦
横各20本の格子線をもつグリッドを顕微鏡に装着し、
視野を図5に示すようにジグザグ状に動かしながら、4
00倍で60視野観察することにより行った。従って、
測定面は圧延方向と平行な断面であり、測定面積は、板
厚×30mmとなる。上記断面清浄度dは、格子点の数を
Pとし、視野の数をfとし、f個の視野における総格子
点中心の数をnとしたとき、下記式 d(%)=(n/P×f)×100 によって決定されるものである。
カース硬さ硬さがHv:150 以上、より好ましくはHv:16
0 以上、さらに好ましくはHv:170 以上であることを特
徴とするFe−Ni系シャドウマスク用材料を提供する。そ
の理由は、この程度の硬さを有するFe−Ni合金であれ
ば、その後、エッチングをし、焼鈍したときにプレス成
形のための軟化がしやすいからである。硬さを制御する
ためには、最終焼鈍後のダル圧延において圧延率を数%
から20%程度で制御することにより可能である。
で表される材料表面の粗度を、適正に制御することが好
ましい。 まず、製品の表面粗さにおいて中心線平均粗さRa
は、粗さの平均的な大きさを示すパラメータであり、こ
の値が大きすぎると露光時の散乱が強くなるとともにエ
ッチング時に穿孔開始時間に差が生じ、孔の形状が悪く
なる。逆に、小さすぎる場合は、真空引きのときに排気
が十分になされず、パターンと素材との密着不良がおこ
りやすい。そこで、本発明では、0.2 ≦ Ra ≦0.9 とす
る。中心線平均粗さRaの好ましい下限は0.25μm以上、
より好ましくは0.3 μm以上、さらに好ましくは0.35μ
m以上がよい。一方、上限については、0.85μm以下が
好ましく、より好ましくは0.8 μm以下、さらに好まし
くは0.7 μm以下である。
ついては、パターンが凸か凹かを端的に示すパラメータ
であり、振幅分布曲線 (ADF)分布の中心線に対する
対称性を下記式に準じて数値で表したものである。 Rsk=1/σ3 ∫Z3 P(z)dz ここで、σは自乗平均値、∫Z3 P(z)dz は振幅分布曲
線の3次モーメントを示す。このRsk の値が負で大きく
なると、露光時の散乱が強くなり、孔の形状が悪くな
る。逆に、正で大きすぎる場合は、真空引きの排気が十
分になされずパターンと素材との密着不良がおこりやす
い。そこで、本発明では、−0.5 ≦Rsk とする。好まし
い下限は0以上、より好ましい下限は0.1 以上がよい。
一方、上限については、好ましくは1.3 以下、より好ま
しくは1.1 以下で、1.0 以下を最適例とする。
さの山谷のピッチの大きさを示しており、このような粗
さは、凹凸が大きすぎた場合に生じる部分的な真空引き
不良、小さすぎた場合に生じる露光時の散乱が強くなる
ための孔形状の不良を端的に示すものと言える。本発明
で、このSmは、20μm≦ Sm ≦ 250μmとする。このSm
の好ましい下限は40μm以上、より好ましくは50μm以
上、さらに好ましくは80μm以上である。一方、好まし
い上限は 200μm以下、より好ましくは160μm以下、
さらに好ましくは 150μm以下で、130 μm以下を最適
例とする。
にかかるシャドウマスク用素材を最終寸法に冷間圧延す
る際に、ダルロールを用いることにより容易に実現し得
る。ダルロールは、所定の表面粗度を有するロールであ
って、このロールを用いて本合金によるシャドウマスク
素材を圧延することにより、その反転模様を適切な転写
率で圧印することができる。このようなダルロールを得
るためには、放電加工、レーザー加工、ショットブラス
ト法などにより加工することで容易に得ることができ
る。例えば、ショットブラスト法によるロール加工条件
として、#120 のスチールグリッドを用いて行うことで
可能である。
物の個数を制御することは有効である。即ち、板表面か
ら任意の深さまで研磨を行い、その面に分布するところ
の10μm以上の介在物の個数が、100 mm2 の単位面積当
たり65個以下に制御することが好ましい。この場合、好
ましくは50個以下、より好ましくは30個以下、さらに好
ましくは25個以下で、20個以下であることが最も好まし
い。このように限定する理由は、一般に、シャドウマス
クは、微細なエッチング技術を必要とすることから、素
材中の介在物はできるだけ少ないほうがよいからであ
る。なお、この介在物個数と断面清浄度は類似する概念
であるが、断面清浄度dだけでは異物の面積を規定した
だけであり、不良率をさらに少なくするためには、板表
面部の介在物の大きさも制限することが有効である。上
記介在物個数の測定方法は、板表面を研磨し、最後はバ
フ研磨で仕上げて、板表面と平行な面を顕微鏡で観察
し、個数を測定した。測定は、10mm×10mmの面を観察し
た。不良の原因となる大型介在物の写真を図3、4に示
す。
在物個数の制御に加え、板断面において測定した10μm
以上の介在物個数を100 mm2 の単位面積当たり80個以下
に制御することが有効である。この個数は、好ましくは
70個以下、より好ましくは50個以下、さらに好ましくは
40個以下で、30個以下、とくに20個以下を最適例とす
る。というのは、上述した断面清浄度dだけを制御して
いただけでは、不良率を0にすることはできないからで
あり、介在物の大きさをも制限することにより、不良率
をさらに低下させることができるからである。なお、こ
の板厚方向の断面における介在物の個数の測定方法は、
圧延方向と平行断面を研磨し、バフ研磨で仕上げ、顕微
鏡で観察した。測定は、板厚×25 mm長さの断面を3つ
程度測定し、100 mm2 に換算した。不良の原因となる大
型介在物の写真を図9に示す。本発明においで、上述し
た清浄度や介在物個数の制御方法としては、精錬過程に
おいて、介在物を取鍋で浮上分離させることにより可能
である。
き、JIS G 0551による方法にて測定した結晶粒度番号で
7.0 以上の大きさを示す粒度 (より細かく制御) にする
ことが好ましい。好ましくは8.0 以上、より好ましくは
8.5 以上、さらに好ましくは9.5 以上である。このよう
に限定する理由は、結晶粒度番号が7.0 以上を示す結晶
にすることが必要な理由としてまず、結晶粒が大きいと
エッチング時の孔の径がそれぞれの結晶方位のエッチン
グ速度が異なるため、ばらつき、エッチング孔の不揃い
による透過光むらが生じ、ひいてはモトリングと呼ばれ
る現象が発生するとともに、孔不良が発生し、歩留りを
低下させることが挙げられる。また、プレス加工時に結
晶粒が大きくなりすぎてプレス不具合を生じるからであ
る。上記結晶粒度の測定方法は、圧延直角方向の板断面
を顕微鏡面とし、バフ研磨後王水にてエッチングを行
い、観察倍率200 倍にてJIS G 0551に記載されているオ
ーステナイト組織標準結晶粒度の図に比較対照して結晶
粒度番号を決定する。なお、標準結晶粒度図は 100倍の
観察倍率を基準としているので、標準図の結晶粒度番号
に対し+2.0 補正した。 (結晶粒度番号は0.5 刻みで測
定する)
塊を、真空脱ガスプロセスにより溶製し、その後熱間圧
延を施して5mmの熱延板とし、さらにこれを表3に示す
条件で冷間圧延および焼鈍を繰り返して製造し、0.13t
の製品厚さに調製した後、実際のフォトエッチングプロ
セスを経て実際のシャドウマスク製品として評価を行っ
た。エッチングは、0.26mmピッチのマスクパターンを用
いて、塩化第二鉄溶液46ボーメ、液温50℃、スプレー圧
2.5 kgf/cm2で行なった。表2中の試料No. 1〜5が本
発明に従って製造した例であり、試料No. 6〜11は比較
材の例である。なお、得られたシャドウマスク製品のエ
ッチング後の特性を評価したところ、本発明材について
はいずれも、プレス成形性における金型への型なじみ性
および張り剛性が良好であり、また、黒化性に関しても
密着性がよく十分な輻射特性が得られる黒化膜が生成し
ていることを確認することができ、シャドウマスク製品
として優れた特性を示すことがわかった。
範囲内であれば、従来のシャドウマスク材と比較して、
品質および製品歩留りの点で十分満足できるシャドウマ
スク材であるが、さらに、歩留り等を向上させるために
各種要因との組み合わせを検討してみた。その結果を表
4に示す。表4は、断面清浄度、表面粗さ (Ra, Rsk, S
m)、平面および断面の10μm以上の介在物個数および結
晶粒度番号とプレス前焼鈍時における焼き付きの有無、
孔不良率の関係を示したものである。表面粗さ計は
(株) 東京精密 サーフコム1500Aを用いた。その結
果、以下のことが明らかとなった。 断面清浄度が0.05%を超えると孔不良率がやや多く
なる (No.44)。 平面および断面で観察される10μm以上の介在物個
数がそれぞれ単位面積当たり65個、および80個を超える
と孔不良の発生がやや増加することが確認された(No.5
0, 51)。 結晶粒度番号が7.0 以下になると孔不良率がやや増
加しているが、これは個々の結晶粒が大きいためそれぞ
れの結晶方位に依存した開孔形状となり、均一な孔を開
けることが比較的難しくなるためである (No.52)。 前述したように、適正な表面粗さはエッチング前の
レジスト塗布、露光工程においてレジストの密着性を高
め、また真空引きを改善すると共に露光によるハレーシ
ョンを防止する役割を持つほか、プレス前焼鈍時にシャ
ドウマスク同士の密着を防止し、ひいては密着による黒
化 (酸化) 皮膜のむらを防止する。これらの点を裏付け
るべくRa, Rsk, Sm の組み合わせによってはエッチング
起因の孔不良率や焼き付き (プレス前焼鈍時に板同士の
密着) による黒化むらが生じていることが確認された
(No.45, 46, 47, 48, 49)。
ある。プレス成形性に関しては、エッチング焼鈍後の型
なじみ性で評価しており、温間プレスにて実施した。発
明例1〜4はいずれも熱間圧延での歩留りもよく、エッ
チング焼鈍後のプレス性も 180℃の比較的低温のプレス
条件において良好である。参考例5は、Mn/Sの値が1
であるため若干熱間圧延での歩留りが低下しているもの
の、プレス成形性については極めて良好であり、実用上
問題はない。これに対し、比較例6〜8は、本発明の範
囲を外れており、Mnの高いもの、あるいはX線集合度比
Irが範囲を外れているものに関してはプレス成形性が
劣っている。また、エッチング前にHv150 以上の材料
は、その後のエッチング・焼鈍 (750 ℃) 後のHvが低
い傾向があり、加工性がよくなる傾向が認められる。
ッチング特性に優れたFe−Ni系合金、とくにエッチング
時のすじむらやモトリングの発生のない低熱膨張のFe−
Ni系シャドウマスク用材料を提供することができる。従
って、映像のきれいなカラーブラウン管やディスプレー
用の材料を確実にかつ高い収率で提供することができ
る。
性範囲の関連性を示す説明図である。
モトリングの品位との関係を示す説明図である。
鏡写真である。
鏡写真である。
る。
Claims (9)
- 【請求項1】 Ni:34〜38wt%、Mn:0.1 wt%以下を含
有する鉄ニツケル合金シャドウマスク用材料において、
(111)極点図における立方体方位(100)<00
1>とその双晶方位である(221)<212>とのX
線強度比Irが0.5 〜5:1の範囲にある集合組織を有
し、かつ JIS G 0555 の定めるところによる断面清浄度
が0.05%以下であることを特徴とするFe−Ni系シャドウ
マスク用材料。 - 【請求項2】 Ni:34〜38wt%、Mn:0.1 wt%以下、
S:0.01wt%以下を含有する鉄ニツケル合金シャドウマ
スク用材料において、(111)極点図における立方体
方位(100)<001>とその双晶方位である(22
1)<212>とのX線強度比Irが0.5 〜5:1の範
囲にある集合組織を有し、かつ JIS G 0555 の定めると
ころによる断面清浄度が0.05%以下であり、Mn (wt%)
/S (wt%) の値が2以上であることを特徴とするFe−
Ni系シャドウマスク用材料。 - 【請求項3】 JIS Z 2244で規定されるビッカース硬さ
がHv 150以上であることを特徴とする請求項1または2
記載のFe−Ni系シャドウマスク用材料。 - 【請求項4】 表面の粗度が 0.2μm≦Ra≦0.9μm であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に
記載のFe−Ni系シャドウマスク用材料。 - 【請求項5】 表面の粗度が 20μm≦Sm≦250μm であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に
記載のFe−Ni系シャドウマスク用材料。 - 【請求項6】 表面の粗度が −0.5≦Rsk であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に
記載のFe−Ni系シャドウマスク用材料。 - 【請求項7】 板表面から任意の深さまで研磨した面に
分布する、10μm以上の介在物の個数が100 mm2 の単
位面積当たり65個以下であることを特徴とする請求項
1〜6のいずれか1項に記載のFe−Ni系シャドウマスク
用材料。 - 【請求項8】 板厚方向の断面に分布する10μm以上
の介在物の個数が100 mm2 の単位面積当たり80個以下
であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に
記載のFe−Ni系シャドウマスク用材料。 - 【請求項9】 JIS G 0551 による方法にて測定した結
晶粒度番号が、7.0以上の大きさを示すものであること
を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のFe−
Ni系シャドウマスク用材料。
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JP21402099A JP3288656B2 (ja) | 1999-07-28 | 1999-07-28 | Fe−Ni系シャドウマスク用材料 |
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JP2001040454A true JP2001040454A (ja) | 2001-02-13 |
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JP21402099A Expired - Fee Related JP3288656B2 (ja) | 1999-07-28 | 1999-07-28 | Fe−Ni系シャドウマスク用材料 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2003035920A1 (fr) * | 2001-10-22 | 2003-05-01 | Nippon Yakin Kogyo Co., Ltd. | Alliage a base de fe-ni destine a un materiau brut de masque perfore possedant une excellente resistance a la corrosion et materiau de masque perfore |
CN108779569A (zh) * | 2016-03-09 | 2018-11-09 | Jx金属株式会社 | 镀Ni的铜或铜合金材料、使用该材料的连接器端子、连接器以及电子部件 |
-
1999
- 1999-07-28 JP JP21402099A patent/JP3288656B2/ja not_active Expired - Fee Related
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WO2003035920A1 (fr) * | 2001-10-22 | 2003-05-01 | Nippon Yakin Kogyo Co., Ltd. | Alliage a base de fe-ni destine a un materiau brut de masque perfore possedant une excellente resistance a la corrosion et materiau de masque perfore |
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CN100343405C (zh) * | 2001-10-22 | 2007-10-17 | 日本冶金工业株式会社 | 耐蚀性能优异的荫罩原料用Fe-Ni系合金和荫罩材料 |
CN108779569A (zh) * | 2016-03-09 | 2018-11-09 | Jx金属株式会社 | 镀Ni的铜或铜合金材料、使用该材料的连接器端子、连接器以及电子部件 |
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