JP2001037474A - 酵素液とその製造方法、酵素剤、蛋白質分解酵素剤、蛋白質分解酵素生産菌 - Google Patents
酵素液とその製造方法、酵素剤、蛋白質分解酵素剤、蛋白質分解酵素生産菌Info
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Abstract
れた蛋白質低分子化能力とを併せ備える蛋白質分解酵素
を提供する。 【解決手段】 バチルス・ズブチリスM2−4株を培養
して取得される酵素液、これから酵素蛋白質を分離して
なる酵素剤、これらの酵素液や酵素剤を有効成分として
含む蛋白質分解酵素剤。
Description
素液とその製造方法、酵素液から得られる酵素剤、これ
らの酵素液あるいは酵素剤を有効成分として含む蛋白質
分解酵素剤、及び蛋白質分解酵素生産菌に関する。
酸に分解する技術は、例えば医療用の経腸栄養剤や食品
素材としての栄養補給剤の調製,大豆蛋白等に含まれる
難分解性蛋白質の分解効率を高めることによる食品利用
効率の向上,原料蛋白質からのアミノ酸調味料の製造,
ふくらみの増強されたパンの製造等、極めて多様な産業
分野において広範囲に利用されている。
る化学的分解方法は、効率が良いとは言え、分解条件が
過酷であるために好ましくない副産物を生成する懸念も
あり、特に食品,調味料や栄養素材等の人体に関連する
産業分野においては、蛋白質をマイルドな条件で分解で
きる酵素分解方法が好ましく利用されている(例えば特
公平7−53106号公報,特開平11−75765号
公報等)。
うな目的で工業的に利用する蛋白質分解酵素は、主とし
て各種の細菌やカビを利用して生産しているが、一般的
に、細菌から取得された蛋白質分解酵素とカビから取得
された蛋白質分解酵素とは互いに一長一短があると言わ
れており、工業的に利用する蛋白質分解酵素として充分
に満足できる活性や安定性を備えた蛋白質分解酵素は必
ずしも得られていない。
耐熱性に優れるが、蛋白質をアミノ酸にまで分解するペ
プチダーゼ活性もしくは蛋白質低分子化能力が低い点が
指摘されている。従って、その分解生成物には高分子量
のペプチドが多く含まれることとなり、食品素材や調味
料等として苦味が強かったり、栄養素材としては腸から
の吸収速度が遅い等と言う不具合がある。又、細菌由来
の蛋白質分解酵素が耐熱性に優れるとは言え、例えば6
0°C程度の高温度域でペプチダーゼ活性を維持する高
耐熱性のものは殆ど報告されていない。
ペプチダーゼ活性,ペプチド結合に対する分解特異性の
広さ,蛋白質の低分子化能力等の面で優れているが、耐
熱性(例えば、50°Cもしくはそれ以上の中〜高温度
域での蛋白質分解能力)が劣るために、比較的低温度域
で蛋白質分解工程を行うことを余儀無くされて、雑菌の
繁殖を許し易かった。
域で失活しない熱安定性と、優れた蛋白質低分子化能力
とを併せ持つ蛋白質分解酵素が提供されていなかった。
難分解性蛋白質が含まれており、これを有効に分解する
ためには蛋白質のペプチド結合に対する分解特異性の広
さがキー・ポイントになると考えられるが、上記のよう
な熱安定性と優れた蛋白質低分子化能力とを備えたもと
で、かかる難分解性蛋白質に対して有効な分解能力を示
すものが提供されていなかった。
での熱安定性と優れた蛋白質低分子化能力とを併せ持
ち、更に好ましくは難分解性蛋白質を有効に分解するこ
とができる酵素的な蛋白質分解手段を提供することを、
解決すべき課題とする。
ある「饅頭(マントウ)」の生地より分離したバチルス
属の細菌を培養して得られる酵素液が、このような酵素
活性を示すことを見出し、本願発明を完成した。
課題を解決するための本願第1発明(請求項1に記載の
発明)の構成は、バチルス属の細菌を培養して得られる
蛋白質分解活性を示す酵素液であって、pH7における
60〜65°Cでの1時間の熱処理に対して実質的に1
00%の残存活性を示す高耐熱性ペプチダーゼ活性を備
える、酵素液である。
めの本願第2発明(請求項2に記載の発明)の構成は、
前記第1発明に係る酵素液が、更にプロテアーゼ活性と
コラゲナーゼ活性とを併せ備えることである。
めの本願第3発明(請求項3に記載の発明)の構成は、
前記第1発明又は第2発明に係る酵素液が、下記1)〜
4)の少なくとも一の特性を示すことである。
も10種類以上のアミノ酸の結合部位を切断するペプチ
ド分解部位特異性を示す。
性で200単位の前記酵素液を添加して17時間の分解
を行うことにより、分子量1000以下のペプチド又は
アミノ酸を前記酸カゼインに対して50重量%以上生成
すると言う蛋白質低分子化能力を示す。
5°C及び60°Cの温度条件での分解において同等に
発現される。
の作用条件において50%以上の可溶化率を示す。
めの本願第4発明(請求項4に記載の発明)の構成は、
前記第1発明〜第3発明に係る酵素液が、FERM B
P−7155号として国際寄託されているバチルス・ズ
ブチリス( Bacillus subtilis)M2−4株を培養して
得られるものであることである。
めの本願第5発明(請求項5に記載の発明)の構成は、
バチルス属の細菌を培養し、培養物から第1発明〜第4
発明のいずれかに係る酵素液を取得する、酵素液の製造
方法である。
めの本願第6発明(請求項6に記載の発明)の構成は、
第5発明に係る酵素液の製造方法により得られた酵素液
から酵素蛋白質を分離して得られる、酵素剤である。
めの本願第7発明(請求項7に記載の発明)の構成は、
第1発明〜第4発明のいずれかに係る酵素液あるいは第
6発明に係る酵素剤を有効成分として含み、難分解性蛋
白質の分解,アミノ酸調味料の製造,パンの製造,食肉
の軟化,ペプチドの製造,低アレルゲン化蛋白質の製
造,チーズの製造のいずれかの用途に用いる、蛋白質分
解酵素剤である。
めの本願第8発明(請求項8に記載の発明)の構成は、
バチルス・ズブチリスM2−4株(FERM BP−7
155)である、蛋白質分解酵素生産菌である。
明の酵素液を用いることにより、雑菌の繁殖を許さない
温度条件、例えば50°C以上、もしくは60〜65°
Cに至る中〜高温度域で蛋白質分解工程を行うことが可
能となり、しかもペプチダーゼ活性によって充分な蛋白
質低分子化能力を期待することができる。
液は、上記高耐熱性のペプチダーゼ活性に加えてプロテ
アーゼ活性を併せ備えるため、更に優れた蛋白質低分子
化能力と、プロテアーゼ活性の一般的な特徴である反応
初速度の早さとを期待することができ、蛋白質分解反応
の高速度化を図ることができる。
を併せ備えるので、例えば食肉を軟化させる際、ペプチ
ダーゼ活性やプロテアーゼ活性による肉質の軟化と結合
組織のコラーゲンの分解とが同時に進行し、食味の良い
肉とすることができる。
解酵素において、そのペプチド結合分解活性は、通常は
5,6種類以下、多くとも10種類未満のアミノ酸の結
合部位に対して示される程度である。しかしながら、第
3発明の酵素液は、前記1)の特性として述べたよう
に、少なくとも10種類以上(例えば、12種類)のア
ミノ酸の結合部位を切断するペプチド分解部位特異性を
示すので、非常に優れた蛋白質低分子化能力が担保され
る。又、恐らくはこの広範囲なペプチド分解部位特異性
のために、従来の蛋白質分解酵素によっては分解するこ
とが困難とされて来た大豆等の難分解性蛋白質に対し
て、4)の特性として述べるような有効な分解活性が発
現される。
て述べたように、蛋白質原料から分子量1000以下の
ペプチド又はアミノ酸を非常に効率良く生成することが
できるので、苦味のない高品質なアミノ酸素材やアミノ
酸調味料を調製することができ、又、消化管からの吸収
性の良好な栄養素材を調製することができる。
上記の蛋白質低分子化能力が60°Cでの分解において
45°Cでの分解の場合と同等に発現されるので、蛋白
質低分子化工程を雑菌の繁殖を許さない温度条件で行う
ことができる。
として述べたように、大豆の難分解性蛋白質に対して、
所定の作用条件において50%以上の可溶化率を示すの
で、蛋白質原料として有力である大豆を、その難分解性
蛋白質も含めて、有効にアミノ酸に分解することができ
る。
の酵素液については、カラムクロマトグラフィによって
分子量の異なる複数種類の蛋白質分画を得ると共に、こ
れらの各分画に係る蛋白質を個別に分離して酵素活性試
験に供することにより、酵素液中にアミノペプチダー
ゼ,中性プロテアーゼ,酸性プロテアーゼ及びコラゲナ
ーゼが含まれることを確認している。従って、第1発明
又は第2発明の酵素液に係る高耐熱性ペプチダーゼ活
性,プロテアーゼ活性及びコラゲナーゼ活性や、第3発
明の酵素液に係る前記1)〜4)の特性が、これらの酵
素の作用に基づくものであることは確実である。但し、
前記1)〜4)の個々の特性に対する各酵素の関与の種
類及び度合いについては、常識的に推定可能な事項を除
き、未だ実験的に確認していない。
1発明〜第3発明の酵素液は、「FERM BP−71
55号」として既に国際寄託しているバチルス・ズブチ
リスM2−4株を培養することにより、その培養液とし
て、あるいは該培養液の除菌液もしくはその濃縮液とし
て、確実に取得することができる。
方法により取得した酵素液より、硫酸アンミニウム(硫
安)塩析等の公知の適宜な方法で蛋白質を分離して、粗
酵素粉末や、その緩衝液溶液等の剤型の酵素剤を得るこ
とができる。これらの酵素剤は前記酵素液と同様の酵素
活性及び特性を示す。
発明に係る酵素液や、第6発明に係る酵素剤を用いて、
従来にない高耐熱ペプチダーゼ活性,優れた蛋白質低分
子化能力,コラゲナーゼ活性等を示す蛋白質分解酵素剤
を提供することができる。この蛋白質分解酵素剤は、難
分解性蛋白質の分解,アミノ酸調味料の製造,パンの製
造,食肉の軟化,ペプチドの製造,低アレルゲン化蛋白
質の製造又はチーズの製造と言う用途に特に有効に利用
することができる。なお、パンの製造に用いた際には、
体積増加(ふくらみの増強)と言う効果を得ることがで
きる。
て、上記各種の酵素液,酵素剤及び蛋白質分解酵素剤の
有効な製造手段が提供される。
の形態を説明する。以下において単に「本発明」と言う
時は、第1発明〜第8発明を一括して指している。
白質分解活性を有する酵素液の生産に用いる微生物は、
バチルス属に属し、より好ましくはズブチリス種の細菌
であって、その最も代表的なものがバチルス・ズブチリ
スM2−4株である。
ゴル地方の伝統的な小麦粉自然発酵食品である饅頭(マ
ントウ)の生地より分離された複数種類の蛋白質分解酵
素生産菌の内、特に実用的に優れたものであって、同定
試験の結果、末尾の表1の成育状態(栄研社製普通寒天
培地による30°C、48時間培養時のコロニー)を示
すこと、末尾の表2の菌学的形態が観察されること、及
び、末尾の表3の生理的性質を示すことから、バチルス
・ズブチリス( Bacillus subtilis)と同定し、「バチ
ルス・ズブチリスM2−4株」と命名したものである。
本菌株は生命研菌寄 P−17388号として平成11
年5月12日に工業技術院生命工学工業技術研究所(特
許微生物寄託センター)に寄託され、平成12年5月1
1日にFERM BP−7155号としてブダペスト条
約に基づく国際寄託に移管されている。
は、バチルス属の所定の細菌、例えば上記バチルス・ズ
ブチリスM2−4株を培養することにより取得すること
ができる。そのための培養条件には特段の限定はなく、
通常の栄養培地を用いて通常の条件で培養しても良く、
必要に応じて特殊な培地や特殊な培養条件を採用しても
良い。
た場合における培地を、そのまま除菌することなく使用
することもできるし、濾過や遠心分離等の手段により菌
体を除菌したり固形物の排除した後の酵素液を使用する
こともでき、更にはこれを、限外濾過膜等を利用したマ
イルドな手段で濃縮した酵素液として使用することもで
きる。
の酵素液は、ペプチダーゼ活性、より具体的にはアミノ
ペプチダーゼ活性を示し、かつ、pH7における60〜
65°Cでの1時間の熱処理に対して実質的に100%
の残存活性を示すと言う高耐熱性を備えている。
ノペプチダーゼ活性に加え、プロテアーゼ活性とコラゲ
ナーゼ活性とを併せ備え、かつ、前記プロテアーゼ活性
には好適pHを中性域に持つ中性プロテアーゼ活性と、
好適pHをアルカリ性域に持つアルカリ性プロテアーゼ
活性とが認められる。これらの活性については、現在の
処、必ずしも高耐熱性は確認されていない。
酵素液は、1)非常に広範囲なペプチド分解部位特異性
と、2)優れた蛋白質低分子化能力と、3)難分解性蛋
白質に対する有効な分解活性とを示す。なお、コラーゲ
ンに対する分解活性も認められる。
性に関しては、10種類以上、より好ましくは12種類
のアミノ酸の結合部位をカルボキシル末端において切断
するペプチド分解部位特異性が認められる。このような
アミノ酸として、具体的にはロイシン,イソロイシン,
フェニルアラニン,リシン,バリン,アラニン,スレオ
ニン,グリシン,セリン,グルタミン,アスパラギン,
アルギニンが挙げられる。
は、従来の蛋白質分解酵素に比較して、同一量の蛋白質
原料に対して同一条件で同一の酵素活性単位量を作用さ
せた時、分子量1000以下のペプチド又はアミノ酸の
生成量が著しく多いことと、そのような蛋白質低分子化
能力が比較的中温度域に近い45°Cの温度条件でも、
かなりの高温度域である60°Cの温度条件でも同等に
発現されることとが、非常に特徴的である。
ては、既に大豆の難分解性蛋白質に対して高い可溶化率
を示すことが確認されているが、例えば食肉の結合組織
等の他種の難分解性蛋白質に対しても高い分解活性を示
すことが期待できる。この特性には、上記の広範囲なペ
プチド分解部位特異性、とりわけ、従来の蛋白質分解酵
素において余り見られないグリシン,バリン,アスパラ
ギン等のアミノ酸の結合部位に対する分解部位特異性が
関与している可能性がある。
な手段により酵素蛋白質を分離することで調製され、酵
素液に比較して高品位化できる点で有利である。酵素蛋
白質の分離手段は限定されないが、硫安等を用いた塩析
や、エタノールによる沈澱等の適宜な手段を任意に採用
することができる。酵素剤は、酵素粉末,その緩衝液等
の溶液等の任意の剤型とすることができる。
は、上記の酵素液あるいは酵素剤を有効成分として含
み、各種の具体的な用途、例えば難分解性蛋白質の分
解,アミノ酸調味料の製造,パンの製造,食肉の軟化,
ペプチドの製造,低アレルゲン化蛋白質の製造,チーズ
の製造等に用いるものを言う。
のグルコース,1%のペプトン,0.3%のゼラチン,
0.1%の酵母エキス,0.7%のリン酸2カリウム,
0.1%のリン酸1カリウム,0.05%のクエン酸及
び0.01%の硫酸マグネシウムから組成される培地
を、500mL(ミリリッター)容の坂口フラスコに1
00mL入れて、120°Cで20分間殺菌した後、こ
の培地にバチルス・ズブチリスM2−4株を接種し、3
0°Cで40時間の振盪培養を行った。振盪培養の後、
フラスコの培養液を遠心分離して除菌を行い、粗酵素液
を得た。
ロースCL6B」のカラムクロマトグラフィを行ったと
ころ、図2に示すように、蛋白質を示す分子量の抽出フ
ラクションにA〜Hの複数のピークが認められた。
クションを個別に回収して各種の酵素活性試験に供した
ところ、ピークBの回収液にはコラゲナーゼが、ピーク
C及びピークDの回収液にはアルカリ性プロテアーゼ
が、ピークE及びピークFの回収液にはアミノペプチダ
ーゼが、ピークG及びピークHの回収液には中性プロテ
アーゼが、それぞれ含まれることを確認した。上記の酵
素活性は、それぞれ次の方法によって測定した。
ミルクカゼイン溶液(pH7.0)に1mLのフラクシ
ョン回収液を加え、37°Cで60分間の反応を行った
後に2mLの0.4Mトリクロロ酢酸溶液を添加して酵
素反応を停止させる。この溶液を37°Cで25分間静
置した後に濾紙で濾過する。別に調製した5mLの0.
4M炭酸ナトリウム溶液に、上記した濾液を1mL添加
した後に更に1mLのフォーリン試液(和光純薬製)を
加えて、37°Cで20分間静置する。この液について
660nmでの吸光度を測定する。盲験として、上記操
作法において、2mLの0.4Mトリクロロ酢酸溶液の
添加後に1mLのフラクション回収液を加える順序で反
応を行う。なお、上記反応条件下での濾液中に0.1m
gのチロシン相当量のアミノ酸を生成させる活性を1単
位とする。
のコラーゲン溶液(pH7.5)に0.1mLのフラク
ション回収液を加え、30°Cで30分間の反応を行っ
た後に0.5mLの0.1M酢酸溶液を添加する。この
溶液を遠心分離して上清を取得する。この上清液0.1
mLに0.9mLのクエン酸緩衝液(pH5)、0.1
mLの塩化スズ溶液及び2mLのニンヒドリン溶液を添
加して沸騰水中で20分間加熱する。その後、水を添加
して10mLとし、570nmでの吸光度を測定する。
盲験として、沸騰水中で5分間加熱処理をしたフラクシ
ョン回収液を使用して、同一の測定操作を行う。なお、
上記反応条件下での1分間に1マイクロモルのチロシン
相当量のアミノ酸を生成させる活性を1単位とする。
イシン−p−ニトロアニリド溶液(0.072%)に
0.1Mトリス緩衝液(pH7.0)を加え、0.2m
Lのフラクション回収液を添加後、37°Cで60分間
の反応を行う。その後に2mLの0.7%塩酸/エタノ
ール溶液を添加し、次いで2mLの0.06%p−ジメ
チルアミノ・ケイ皮アルデヒド溶液を加え、10分後に
540nmでの吸光度を測定する。盲験として、沸騰水
中で5分間加熱処理をしたフラクション回収液を使用し
て、同一の測定操作を行う。なお、上記反応条件下での
1分間に1マイクロモルのロイシンを生成させる活性を
1単位とする。
ピークE及びピークFの回収液については、分画分子量
3000のUF膜(アミコン社製のミニタンプレート)
を用いて濃縮を行い、アミノペプチダーゼの熱安定性を
評価した。その結果、図3に示すように、pH7におけ
る40〜65°Cの各温度域での1時間の熱処理に対し
て、いずれもほぼ100%の残存活性を示すと言う高耐
熱性を確認した。
と同じ組成の培地を各100mL入れた20本の坂口フ
ラスコに、それぞれバチルス・ズブチリスM2−4株を
接種して、実施例1と同じ条件で振盪培養し、次いで遠
心分離により除菌して粗酵素液を得た後、これらの粗酵
素液を一緒にした(合計量約1900mL)。この粗酵
素液において、中性プロテアーゼ活性は11.0u/m
L、アルカリ性プロテアーゼ活性は12.1u/mL、
コラゲナーゼ活性は4.4u/mL、アミノペプチダー
ゼ活性は0.48u/mLであった。
ミコン社製のミニタンプレート(分画分子量3000)
の膜を用いて濃縮し、濃縮酵素液約90mLを得た。こ
の濃縮酵素液において、中性プロテアーゼ活性は166
u/mL、アルカリ性プロテアーゼ活性は180u/m
L、コラゲナーゼ活性は66.4u/mL、アミノペプ
チダーゼ活性は5.9u/mLであった。
じ組成の培地20Lを用いて、30L容のジャーファー
メンターにて、30°C、回転数250rpm、通気量
20L/分の条件でバチルス・ズブチリスM2−4株を
40時間培養した。
得て、これを旭化成(株)製のUF膜(分画分子量13
000)で900mLに濃縮した。この濃縮液を硫安
0.8飽和で塩析を行い、生成した沈澱を凍結乾燥し
て、75gの粗酵素粉末からなる酵素剤を得た。
ゼ活性が1992u/mL、アルカリ性プロテアーゼ活
性が2200u/mL、コラゲナーゼ活性が790u/
mL、アミノペプチダーゼ活性が71u/mLであっ
た。
の1%酸カゼイン溶液に対して、実施例3で調製した酵
素剤、及び、比較対照としてのバチルス・ズブチリス起
源の中性プロテアーゼである「プロテアーゼN」と、バ
チルス・ズブチリス起源のアルカリ性プロテアーゼであ
る「プロレザー」(いずれも天野製薬(株)製)を、酸
カゼイン1g当たりpH7のプロテアーゼ活性で200
単位添加となるように添加し、45°Cで17時間分解
反応を行って、反応物の分子量分布を測定した。
社製のFPLCシステムにより、分析カラムは Amarcia
m 社製の「スーパーロース12」を用いた。又、分子量
の標準物質として、血清アルブミン(分子量6700
0),キモトリプシノーゲン(分子量25000),チ
トクロームC(分子量12300),トリプシンインヒ
ビター(分子量6500)及びバシトラシン(分子量1
450)を使用した。
図4(a)に、プロレザーについての測定結果を図4
(b)に、プロテアーゼNについての測定結果を図4
(c)にそれぞれ示す。
うに、プロレザー及びプロテアーゼNによる分解ペプチ
ドには、分子量が1000超〜10000の高分子量ペ
プチドが多く、分子量1000以下の低分子量ペプチド
が少なかった。そして、高分子量ペプチド(X)の低分
子量ペプチド(Y)に対する量比X/Yは、いずれも約
4以上であった。
例に係る酵素剤による分解ペプチドでは、分子量100
0以下の低分子量ペプチドが大半を占め、高分子量ペプ
チド(X)の低分子量ペプチド(Y)に対する量比X/
Yは0.7以下であって、図4(b)及び図4(c)の
結果とは顕著な差異を示した。
は、消化管からの吸収速度が早く、医療用の経腸栄養剤
や食品素材たる栄養補給剤として有効であると言われて
おり、実施例に係る酵素剤を用いて得られたペプチド
は、このような目的に適う。
能力〕pH7の1%酸カゼイン溶液に対して、実施例3
で調製した酵素剤と、比較対照としてのアスパーギルス
・オリゼー( Aspergillus oryzae )起源の中性プロテ
アーゼである「プロテアーゼA」(天野製薬(株)製)
とを、酸カゼイン1g当たりpH7のプロテアーゼ活性
で200単位添加となるように添加し、45°C及び6
0°Cでそれぞれ17時間分解反応を行って、反応物の
分子量分布を測定した。測定法は実施例4と同様であ
る。
おける分解の場合の測定結果を図5(a)に、同60°
Cにおける分解の場合の測定結果を図5(b)に、プロ
テアーゼAについて、45°Cにおける分解の場合の測
定結果を図5(c)に、同60°Cにおける分解の場合
の測定結果を図5(d)に、それぞれ示す。
図5(c)より明らかなように、45°Cにおける分解
の場合にも実施例4と同様に高分子量ペプチドが多い傾
向が認められるが、図5(d)に見られるように、60
°Cにおける分解の場合にはこの傾向が一層顕著にな
り、高温度域におけるプロテアーゼAのかなりの活性低
下が推測される。
るように、実施例に係る酵素剤による分解ペプチドで
は、60°Cにおける分解の場合にも、45°Cにおけ
る分解の場合とほぼ同等に、分子量1000以下の低分
子量ペプチドが大半を占めており、優れた低分子化能力
と同時に高耐熱性が裏付けられた。
的スケールでペプチドを製造する際、雑菌の繁殖による
微生物汚染を生じ得る50°C以下での分解操作を回避
して、55°C以上(例えば、60°C)での工程管理
が可能となるため、大きな工業的利点が得られる。
の分離大豆蛋白質である不二製油(株)製の「ニューフ
ジプロR」100gを1000mLの水に溶解し、前記
「プロレザー」及び「プロテアーゼA」各1gを添加し
て、50°Cで17時間の分解反応を行った。その後、
分解液を遠心分離して上記プロテアーゼ剤で分解できな
かった沈澱物を分離、乾燥して、水に不溶の25gの難
分解性物質を取得した。
蛋白質の定量を行った処、原料蛋白質に対して20重量
%の蛋白質が含まれていた。上記乾燥した難分解性物質
5gを100mLの水に懸濁し、前記実施例1で得た粗
酵素液6mLを添加して、50°Cで17時間の分解反
応を行った。
た難分解性物質の懸濁液の各100mLに対して、それ
ぞれプロレザー0.1gを添加したものと、プロテアー
ゼA0.1gを添加したものとを準備し、上記と同条件
で分解反応を行った。
心分離を行って、上清液の蛋白量をケルダール法で定量
し、難分解性蛋白質の可溶化率を算出した。その結果、
プロレザーによる分解例では5%、プロテアーゼAによ
る分解例では4%の可溶化率であったのに対し、実施例
に係る粗酵素液による分解例では、70%の可溶化率で
あった。
とにより、難分解性蛋白質を含む蛋白質原料を用いるペ
プチドもしくはアミノ酸の製造において、難分解性蛋白
質を有効に資化し、ペプチドの収率を向上させ、廃棄物
量を低減させることができると言う工業的メリットが得
られる。
H7の1%酸カゼイン溶液に対して、実施例3で調製し
た酵素剤と、比較対照としてのプロレザー及びプロテア
ーゼNとを、適宜な同一単位量添加して分解反応を行
い、その後、各例の分解反応液に酵母カルボキシペプチ
ダーゼYを添加して遊離アミノ酸を分析することによ
り、分解されたペプチドのカルボキシル末端を推定し
た。
矢印で示すように、プロテアーゼNはロイシン,フェニ
ルアラニン及びスレオニンの3種のアミノ酸のカルボキ
シル側を切断し、プロレザーはロイシン,フェニルアラ
ニン,リシン,アラニン,セリン及びグルタミンの6種
のアミノ酸のカルボキシル側を切断するのに対して、実
施例に係る「M2−4」と表記する酵素剤は、ロイシ
ン,イソロイシン,フェニルアラニン,リシン,バリ
ン,アラニン,スレオニン,グリシン,セリン,グルタ
ミン,アスパラギン,アルギニンの12種のアミノ酸の
カルボキシル側を切断すると言う、非常に広範囲にわた
るペプチド分解部位特異性を示す事が分かった。
蛋白質低分子化能力や、難分解性蛋白質に対する分解力
には、上記の広範囲にわたるペプチド分解部位特異性が
関係しているものと考えられる。
7の10%酸カゼイン溶液に対して、実施例3で調製し
た酵素剤と、比較対照としてのプロレザー及びプロテア
ーゼAを、それぞれ酸カゼイン1g当たりpH7のプロ
テアーゼ活性で200単位添加となるように添加し、5
5°Cでそれぞれ17時間分解反応を行った後、遠心分
離した上清についてアミノ酸分析及び呈味の官能評価を
行った。
ける遊離アミノ酸の生成量が15%で、苦味があり、旨
味に欠けていた。プロテアーゼAによる分解例では、上
清液における遊離アミノ酸の生成量が36%であった
が、やや苦味があり、やはり旨味に欠けていた。一方、
実施例に係る酵素剤による分解例では、上清液における
遊離アミノ酸の生成量が46%に達し、呈味性に優れて
いた。
強力粉と100gの薄力粉に、10gの砂糖及び1gの
食塩を添加混合し、これに30°Cの温湯を105mL
添加して、良く混合した。この混合物に、実施例1で調
製した酵素液及び市販のパン酵母(オリエンタル酵母工
業(株)製)を4g添加して、30°Cで4時間の1次
発酵後に、20gずつに分割・成形を行い、30°Cで
4時間の2次発酵を行った。その後、沸騰湯浴上で6分
間蒸して、中華饅頭とした。
酵母(オリエンタル酵母工業(株)製)のみを4g添加
して、同様の方法にて中華饅頭を調製した。
体積を測定した処、実施例に係る酵素液添加の中華饅頭
は、対照に係る酵素液無添加の中華饅頭に比較して、約
15%の体積増加が認められた。
麦粉、50gの砂糖、20gの食塩、40gのショート
ニング及び30gの市販パン酵母(オリエンタル酵母工
業(株)製)を混合し、それに水690mLと実施例1
で調製した酵素液50mLを添加して、27〜29°C
で混合を行った。そして30分間の1次発酵後に450
gに分割し、30分間の2次発酵を行った。これを食パ
ンケースに入れ、230°Cで25分間の焼成を行っ
た。
上記と同様の方法で1次発酵,2次発酵及び焼成した。
を測定した処、実施例に係る酵素液添加のパンは、対照
に係る酵素液無添加のパンに比較して、約10%の体積
増加が認められた。
の乾燥パン酵母(オリエンタル酵母工業製)100gに
水を加えて1Lとした。これを2モルの塩酸溶液にてp
H7に調整した後、90°Cで30分間加熱を行った。
この溶液に溶菌酵素「YL−15」(天野製薬製)を1
g添加して、攪拌しつつ50°Cで16時間の反応を行
った。その後、90°Cで20分間加熱を行うことによ
り、酵母菌体を溶菌してエキスを抽出した。抽出液の遠
心分離を行い、上清液を凍結乾燥して70gの酵母エキ
ス粉末を得た。本粉末中の蛋白質の含有量は35%であ
った。
の水に溶解すると共に2モルの塩酸溶液にてpH7に調
整した溶液を用いて、本発明の酵素剤による遊離アミノ
酸の生成率を、前記プロテアーゼN「アマノ」を対照と
して比較した。上記酵母エキス溶液に所定単位の酵素剤
を添加した後、50°Cで17時間反応させ、90°C
で20分間加熱を行った。得られた酵素処理溶液につい
てアミノ酸分析を行い、遊離アミノ酸生成率を算出し
た。なお、酵素剤の添加量は酵母エキス粉末1g当たり
のプロテアーゼ活性として表示した。
アーゼN「アマノ」との比較結果を末尾の表4に示し
た。表4より明らかなように、本発明の酵素剤による処
理群は遊離アミノ酸の生成率が高く、かつ呈味性に優
れ、苦味がなく酵母エキスとして優れた特色を有してい
た。
ある。
る。
る。
Claims (8)
- 【請求項1】 バチルス属の細菌を培養して得られる蛋
白質分解活性を示す酵素液であって、pH7における6
0〜65°Cでの1時間の熱処理に対して実質的に10
0%の残存活性を示す高耐熱性ペプチダーゼ活性を備え
ることを特徴とする酵素液。 - 【請求項2】 前記酵素液が更にプロテアーゼ活性とコ
ラゲナーゼ活性とを併せ備えることを特徴とする請求項
1に記載の酵素液。 - 【請求項3】 前記酵素液が、下記1)〜4)の少なく
とも一の特性を示すことを特徴とする請求項1又は請求
項2のいずれかに記載の酵素液。 1)蛋白質のペプチド鎖における少なくとも10種類以
上のアミノ酸の結合部位を切断するペプチド分解部位特
異性を示す。 2)酸カゼイン1g当たりプロテアーゼ活性で200単
位の前記酵素液を添加して17時間の分解を行うことに
より、分子量1000以下のペプチド又はアミノ酸を前
記酸カゼインに対して50重量%以上生成すると言う蛋
白質低分子化能力を示す。 3)上記2)の蛋白質低分子化能力が、45°C及び6
0°Cの温度条件での分解において同等に発現される。 4)大豆の難分解性蛋白質に対して、所定の作用条件に
おいて50%以上の可溶化率を示す。 - 【請求項4】 前記酵素液がバチルス・ズブチリス( B
acillus subtilis)M2−4株(FERM BP−71
55)を培養して得られるものであることを特徴とする
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の酵素液。 - 【請求項5】 バチルス属の細菌を培養し、培養物から
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の酵素液を取得す
ることを特徴とする酵素液の製造方法。 - 【請求項6】 請求項5に記載の酵素液の製造方法によ
り得られた酵素液から酵素蛋白質を分離して得られるこ
とを特徴とする酵素剤。 - 【請求項7】 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の
酵素液あるいは請求項6に記載の酵素剤を有効成分とし
て含み、難分解性蛋白質の分解,アミノ酸調味料の製
造,パンの製造,食肉の軟化,ペプチドの製造,低アレ
ルゲン化蛋白質の製造,チーズの製造のいずれかの用途
に用いることを特徴とする蛋白質分解酵素剤。 - 【請求項8】 バチルス・ズブチリス M2−4株(F
ERM BP−7155)であることを特徴とする蛋白
質分解酵素生産菌。
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