JP2001026421A - ゾル・ゲル法による結晶性薄膜の形成方法 - Google Patents

ゾル・ゲル法による結晶性薄膜の形成方法

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JP2001026421A
JP2001026421A JP11200816A JP20081699A JP2001026421A JP 2001026421 A JP2001026421 A JP 2001026421A JP 11200816 A JP11200816 A JP 11200816A JP 20081699 A JP20081699 A JP 20081699A JP 2001026421 A JP2001026421 A JP 2001026421A
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Natsuko Kurata
奈津子 倉田
Yoko Yamashita
洋子 山下
Makoto Kuwabara
誠 桑原
Nobuyuki Kobayashi
伸行 小林
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Fukuoka Prefecture
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温で結晶化するゾル・ゲル法による結晶性
薄膜の形成方法を提供する。 【解決手段】 複数種の金属アルコキシドを高濃度で溶
かしたぺロブスカイト化合物の前駆体組成物溶液を製造
する第1工程と、前駆体組成物溶液を低温制御し、水蒸
気により一部加水分解した中間反応溶液を製造する第2
工程と、中間反応溶液を基板上にコーティングし、エー
ジングすることにより結晶化させる第3工程とを有して
いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゾル・ゲル法によ
る結晶性薄膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】誘電体材料には圧電性、焦電性、半導性
等の機能性を示す材料が多く、光・電子デバイス関連分
野においては、非常に有望な材料である。これらの分野
への応用展開を図るには、高性能化、小型化及び低コス
ト化のニーズのもとで材料を薄膜化することが必要不可
欠であり、薄膜化技術の更なる向上が望まれている。そ
の中で、無機系酸化物薄膜の形成には、スパッタ法、C
VD法、PVD法、ゾル・ゲル法等の多くの形成方法の
適用が従来より研究されている。薄膜形成においては、
材料の高密度化、結晶構造の制御等による素子の高機能
化の実現が重要であるが、同時に電子デバイスの実装の
分野への応用拡大を図るためには、より低温での薄膜形
成と複雑な形状への薄膜形成技術の開発が強く要望され
ている。この点において、ゾル・ゲル法の中でも、アル
コキシドを使用する金属アルコキシド法は、金属アルコ
キシド前駆体溶液の加水分解・重縮合反応により金属酸
化物薄膜を形成する方法であり、他の薄膜形成方法と比
較して、組成の高均一性、低コスト、被コーティング材
の形状を選ばないこと、高価な装置を必要とせず、省エ
ネルギーによる環境負荷の低減ができるという長所があ
り、無機系酸化物薄膜の形成方法としてその実用化研究
が盛んに行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
金属アルコキシド法による薄膜の形成方法は、金属アル
コキシドの濃度が0.5モル%/リットル以下の希薄前
駆体溶液を使用し、水を一度に添加した溶液を基板上に
コーティングし、エージングするものであった。この方
法で得られる薄膜は、室温で結晶化していないため、熱
処理により結晶化させる必要があるが、(1)薄膜が一
次粒子間の不均一な架橋より生じた二次凝集物から構成
されていること、(2)薄膜組成が化学量論組成からず
れていること、(3)異相を生成する場合があること、
などの現象が存在するため、450℃以上の高温での熱
処理が必要である。しかし高温で熱処理を行うことは、
基板の変質や基板との反応等の問題が生じ、製造コスト
面でも不利となる欠点があった。そのため、今後の発展
が予想される電子デバイス分野へのゾル・ゲル法による
薄膜形成技術の応用拡大を図るためには、結晶化温度の
低温化が必要不可欠なものであり、その現実が求められ
ている。本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、
低温で結晶化するゾル・ゲル法による結晶性薄膜の形成
方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記目的に沿う本発明に
係るゾル・ゲル法による結晶性薄膜の形成方法は、複数
種の金属アルコキシドを高濃度で溶かしたぺロブスカイ
ト化合物の前駆体組成物溶液を製造する第1工程と、前
記前駆体組成物溶液を低温制御し、水蒸気により一部加
水分解した中間反応溶液を製造する第2工程と、前記中
間反応溶液を、基板上にコーティングし、エージングす
ることにより結晶化させる第3工程とを有している。
【0005】本発明に係るゾル・ゲル法による結晶性薄
膜の形成方法において、前記ぺロブスカイト化合物の前
駆体組成物溶液は、実質的に等モルのチタンアルコキシ
ドTi(OR14 及びバリウムアルコキシドBa(O
22 を、1種又は2種以上の低級アルコールR3
HとアルコールR4 OHとの混合溶媒に溶解させた溶液
とすることが可能である。なお、上記化学式において、
1 及びR2 はそれぞれ、n=1〜10の−Cn
2n+1、−CH(CH32 、−C24 OCH3 、−
24 OC25 、−CH2 OCH3 、−CH2 OC
25 及び−C24 OC24 OC25 から選ばれ
た1種又は2種以上の基を示す。R3 は、n=1〜10
の−Cn2n+1、−CH(CH32 から選ばれた1種
又は2種以上の基を示す。R4 は、n=1〜10の−C
n2n+1、−CH(CH32 、−C24 OCH3
−C24 OC25 、−CH2 OCH3 、−CH2
25 及び−C24 OC24 OC25 から選ば
れた1種又は2種以上の基を示す。
【0006】本発明に係るゾル・ゲル法による結晶性薄
膜の形成方法において、チタン酸バリウムの前駆体組成
物溶液を低温制御し、水蒸気を用いて一部加水分解し、
加水分解による白濁生成後に再透明化した反応溶液を基
板上にコーティングすることもできる。本発明に係るゾ
ル・ゲル法による結晶性薄膜の形成方法において、基板
上にコーティングした層の水分とアルコール混合溶媒を
飽和状態に保ちながらエージングすることにより結晶化
させることも可能である。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、複数種の金属アルコキ
シドを高濃度で溶かして製造したぺロブスカイト化合物
の前駆体組成物溶液を加水分解し、エージングにより重
縮合反応を進めると、室温でぺロブスカイト化合物の結
晶化が開始し、結晶性の高い薄膜の合成が可能となるこ
とを基本的考えとし、前記基本的考えを結晶性薄膜の形
成方法に応用したものである。前記前駆体組成物溶液の
加水分解溶液(中間反応溶液)を基板上にコーティング
し、エージングすることで結晶性の薄膜を形成させる場
合、コーティングに影響する反応溶液の粘性等の流動特
性の制御と、エージング中の結晶化に影響する重縮合反
応の制御とが重要となる。前駆体組成物溶液を加水分解
して行くと反応溶液の粘性が向上する等の流動特性に大
きな変化が生ずる。そのため、加水分解を終了させず
に、コーティングに最適な加水分解の程度(重縮合度)
となるように制御された中間反応溶液を用いる必要があ
る。最適な中間反応溶液を得るためは、前記前駆体組成
物溶液の加水分解速度を制御し、均一に加水分解する必
要がある。そのために、前記前駆体組成物溶液を低温制
御し、水蒸気による加水分解法を採用している。本発明
では、水蒸気の使用以外に、超音波振動器や噴霧器等で
噴霧状にした水を使用することも可能である。薄膜の結
晶化においては、基板上のコーティング層のエージング
における重縮合反応の促進が必要不可欠である。したが
って、基板上へのコーティング時に、溶媒の急激な脱離
が生じるとエージングにおける重縮合反応の促進が阻害
される。このため、コーティング時に基板を冷却するこ
とが望ましく、エージングにおいては膜中の水分と有機
溶媒を飽和状態に保つことにより溶媒の急激な脱離を防
止した。
【0008】続いて、添付した図面を参照しつつ、本発
明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解
に供する。本発明の一実施の形態に係るゾル・ゲル法に
よる結晶性薄膜の形成方法において、ぺロブスカイト化
合物の前駆体組成物溶液として、実質的に等モルのチタ
ンアルコキシドTi(OR14 及びバリウムアルコキ
シドBa(OR22 を、1種又は2種以上の低級アル
コールR3 OHとアルコールR4 OHとの混合溶媒に溶
解させた溶液を使用している。なお、上記化学式におい
て、R1 及びR2 はそれぞれ、n=1〜10の−Cn
2n+1、−CH(CH32 、−C24 OCH 3 、−C
24 OC25 、−CH2 OCH3 、−CH2 OC2
5 及び−C24 OC24 OC25 から選ばれた
1種又は2種以上の基を示す。R3 は、n=1〜10の
−Cn2n+1、−CH(CH32 から選ばれた1種又
は2種以上の基を示す。R4 は、n=1〜10の−Cn
2n+1、−CH(CH32 、−C24 OCH3 、−
24 OC25 、−CH2 OCH3 、−CH2 OC
25 及び−C24 OC24 OC25 から選ばれ
た1種又は2種以上の基を示す。ここで、チタンアルコ
キシドとしては、テトライソプロポキシチタン、テトラ
イソブトキシチタン等が使用でき、バリウムアルコキシ
ドとしては、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバ
リウム等が使用できる。高濃度で前記2種類の金属アル
コキシド(チタンアルコキシド、バリウムアルコキシ
ド)をアルコールに溶解させると、混合攪拌だけで、使
用した溶媒の種類に応じて種々の複合アルコキシドが形
成される。生成した複合アルコキシドは、アルコールに
対する溶解度が著しく低くなる場合があるため、2種以
上のアルコール成分の混合比率を替えたアルコール系混
合溶媒を使用して、チタンアルコキシド及びバリウムア
ルコキシドの溶解度を調整している。このようにして調
整された金属アルコキシド前駆体組成物溶液は、チタン
アルコキシド及びバリウムアルコキシドの濃度を0.5
〜1.2モル%/リットルの範囲に調整することが可能
となる。通常、ぺロブスカイト化合物の前駆体組成物溶
液を調整した場合、使用する各金属アルコキシドの加水
分解速度が異なることから組成の不均一化が避けられな
い場合があるが、複合アルコキシドを前駆体として用い
ることにより加水分解が均一に生成し、組成の高均質化
及び結晶化温度の低温化が可能となる。
【0009】加水分解速度を制御し均一に加水分解する
ため、最終目的物となるチタン酸バリウムの前駆体組成
物溶液を−10〜5℃の低温に制御して攪拌しながら、
水蒸気をチタン酸バリウム換算の金属アルコキシドモル
数に対して0.1〜4倍の水量に相当する量となるよう
に窒素気流中で添加して行った。前記前駆体組成物溶液
は、加水分解を開始すると反応の初期段階で溶液が一旦
白濁化する。白濁化は、形成している複合アルコキシド
の一部のOR基が加水分解反応に伴いOH基に変化し
て、複合アルコキシド同士の結合による巨大クラスター
を形成し、この巨大クラスターが300nm以上にまで
成長して光を散乱することにより生じている。加水分解
がさらに進行すると、クラスター内でのTi−O−Ti
結合の形成が進み、BaはTiと一旦結合が切れること
によりクラスター間の結合が切れ、巨大クラスターが消
滅する。このため、光の散乱が起こらなくなり、反応溶
液の再透明化が生ずる。
【0010】白濁化現象は、複合アルコキシドがほとん
ど生成しない低濃度のチタン酸バリウムの前駆体組成物
溶液の加水分解では観察されず、高濃度のチタン酸バリ
ウムの前駆体組成物溶液に見られる特有の現象である。
そのため、再透明化以降の加水分解溶液をエージングし
たものを試料とし、その結晶化程度を調査することで、
コーティングに最適な加水分解の程度(重縮合度)を有
する中間反応溶液の製造条件を得ることができる。再透
明化後、種々の時間経過した反応溶液を採取して30℃
で密閉容器内でエージングし、続いて30℃の窒素雰囲
気中で乾燥した試料のX線回折を測定した。その結果を
図1に示す。図1では、白濁溶液から試料を作製した場
合と、ゲル化したものから試料を作製した場合の結果に
ついても示している。その結果、エージング中に重縮合
反応が進むことで結晶化が起きるためには、再透明化後
3時間以降の反応溶液を使用する必要があることが判っ
た。また、再透明化後3時間と6時間の比較で、加水分
解時間を延長することで、エージングして得られる試料
の結晶性が向上することも判った。このことから、ゲル
化するまで加水分解を行わなくても、再透明化後6時間
以上経過した反応溶液はコーティング溶液として十分に
使用できることが判った。したがって、実際の前記前駆
体組成物溶液の加水分解時間(コーティング溶液の調整
時間)の選定は、再透明化後6時間以上経過したもので
あれば、基板にコーティングする際の基板形状や表面状
態に応じて決まるコーティング溶液の粘性等の流動特性
が最適となる条件から、加水分解時間を選定すれば良い
ことになる。
【0011】結晶化にはエージングにおける重縮合反応
の促進が必要不可欠であるが、薄膜の場合、コーティン
グ時において溶媒の急激な脱離が起こってしまうために
エージングによる結晶化が難しくなる。そこで、薄膜形
成においてはいかにエージング処理を行うかが重要とな
る。本発明では、再透明化した反応溶液を−50〜5℃
に冷却した基板上にコーティングすることにより、コー
ティング時において溶媒の急激な脱離を防止している。
また、前記基板上にコーティングした層の水分とアルコ
ール混合溶媒を飽和状態に保ちながらエージングするこ
とにより、エージング中での溶媒の急激な脱離を防止
し、重縮合反応を促進させ結晶化を達成することができ
る。コーティングした層の水分とアルコール混合溶媒を
飽和状態に保つ方法としては、密閉容器内に収納する方
法、水蒸気とアルコール混合溶媒蒸気との雰囲気制御中
に収納する等の方法を用いることができる。
【0012】チタン酸バリウムは、誘電材料、圧電材料
等として非常に優れた特性を呈する材料であり極微量の
ドナー元素を添加した場合には半導性を示し、正の抵抗
温度係数特性を示すことが知られている。具体的には、
バリウム元素の一部を必要量のイットリウム元素やラン
タン元素で置換することで半導体化を達成することがで
きる。これは、バリウムアルコキシドの一部をイットリ
ウムアルコキシドやランタンアルコキシドで置換した前
駆体組成物溶液を調整することにより達成でき、イット
リウムがドープされたチタン酸バリウムやランタンがド
ープされたチタン酸バリウムのゾル・ゲル法による低温
での結晶性薄膜を形成させることが可能である。ここ
で、イットリウムアルコキシドとしては、トリエトキシ
イットリウム、トリイソプロポキシイットリウム等のも
のが使用でき、ランタンアルコキシドとしては、トリエ
トキシランタン、トリイソプロポキシランタン等のもの
が使用できる。さらに、バリウムアルコキシドの一部又
は全量をストロンチウムや鉛のアルコキシドで置換して
チタン酸バリウム・ストロンチウム、チタン酸ストロン
チウム、チタン酸鉛等の前駆体溶液を調整すれば、チタ
ン酸バリウム・ストロンチウム、チタン酸ストロンチウ
ム、チタン酸鉛等のゾル・ゲル法による低温での結晶性
薄膜を形成させることが可能である。ここで、ストロン
チウムのアルコキシドとしては、ジエトキシストロンチ
ウム、ジイソプロポキシストロンチウム等が使用でき、
鉛のアルコキシドとしてはジイソプロポキシ鉛等が使用
できる。
【0013】
【実施例】乾燥窒素中において、濃度1.0モル/リッ
トルとなるように秤量したジエトキシバリウムとびテト
ライソプロポキシドチタンを、脱水したメタノールとジ
メトキシエタノールとの混合溶媒(体積比3:2)に溶
解し、室温の窒素雰囲気下で3日間攪拌してバリウムと
チタンのアルコキシド前駆体組成物溶液を調整した。次
いで、前記前駆体組成物溶液を0℃に保ちながら攪拌
し、あらかじめ脱炭酸した水を0.5マイクロリットル
/分の速度で窒素気流中で噴霧して加水分解した。
【0014】加水分解の初期段階においては、反応溶液
の粘性が上昇すると共に一旦白濁化が発生したが、加水
分解反応の進行に伴い再透明化した。再透明化後の反応
溶液においても加水分解は徐々に進行するため、反応溶
液の粘度は徐々に変化していく。再透明化後の経過時間
の異なる反応溶液を用いて基板へのコーティング条件の
最適化を検討した結果、反応溶液の粘性や取り扱いのし
易さの点から、再透明化後8時間経過したものが良好で
あった。
【0015】液体窒素で冷却した基板上に、再透明化後
8時間経過した反応溶液を、室温、窒素中でコーティン
グして薄膜を形成し、基板ごとすばやく50℃の水蒸気
とジメトキシエタノールとの混合溶液(体積比1:1)
の飽和雰囲気中に収納しエージングを行った後、90℃
の大気中で10時間乾燥を行った。室温でのエージング
条件の最適化を検討するため、エージング時間を変化さ
せて得られた薄膜のX線回折を行い、結晶化の進行状態
を調べた。その結果、12時間以上のエージングではチ
タン酸バリウムの強い回折ピークが観察され、十分な結
晶化が達成されていることが判明した。図2に12時間
のエージングを行った試料のX線回折結果を示す。
【0016】比較例として前記実施例と同様に調整した
前駆体組成物溶液を同じ条件で加水分解し、再透明化後
8時間経過した反応液を、液体窒素で冷却した基板上に
室温、窒素中でコーティングして薄膜を形成し、基板ご
とすばやく50℃の飽和水蒸気雰囲気の密閉容器及びジ
メトキシエタノールの飽和蒸気雰囲気の密閉容器内に収
納し、12時間エージングを行った後、90℃の大気中
で10時間乾燥を行った。得られたそれぞれの薄膜のX
線回折を行い結晶化の進行状態を調べたが、水のみ又は
ジメトキシエタノールのみの飽和蒸気雰囲気では、チタ
ン酸バリウムの強い回折ピークは得られなかった。X線
回折の結果を図2に示す。
【0017】
【発明の効果】請求項1〜4記載のゾル・ゲル法による
結晶性薄膜の形成方法においては、複数種の金属アルコ
キシドを高濃度で溶かしたぺロブスカイト化合物の前駆
体組成物溶液を製造し、続いて前駆体組成物溶液を低温
制御して水蒸気により一部加水分解した中間反応溶液を
製造し、中間反応溶液を基板上にコーティングし、エー
ジングするので、熱処理を行わずに結晶化した薄膜を得
ることができる。特に、複数種の金属アルコキシドを高
濃度で溶かしたぺロブスカイト化合物の前駆体組成物溶
液を使用するため、還流操作無しに混合攪拌だけで複合
アルコキシドが形成され、そのため組成の高均質化と結
晶化温度の低温化が達成できる。また、前駆体組成物溶
液を低温制御し、水蒸気により加水分解させると、加水
分解速度が緩慢となり、均一に加水分解を行うことがで
きる。そのため、組成の高均質化を更に促進できる。特
に、冷却した基板を用いることにより、コーティング層
中の溶媒の急激な脱離を防止することができ、結晶化を
促進することができる。今後、さらに電子機器・電子部
品の軽薄短小化が進む中、各種材料の薄膜化はより一層
求められており、高機能な特性を持つ薄膜材料の形成技
術の確立によって多くの利点がもたらされる。従来法と
比較して大幅に結晶化温度の低下が可能となり、焼成工
程の短縮・簡略化によって製造プロセスが大きく省力化
されると共に、これまでの熱処理温度に耐えられなかっ
たような有機材料等の使用が可能となり、薄膜の多層化
による高機能化、新機能性の発現等による用途の拡大に
よって、大きな利点が見込まれる。
【0018】特に、請求項2記載のゾル・ゲル法による
結晶性薄膜の形成方法においては、高濃度のぺロブスカ
イト化合物の前駆体組成物溶液として、実質的に等モル
のチタンアルコキシド及びバリウムアルコキシドを、1
種又は2種以上の低級アルコールとアルコールとの混合
溶媒に溶解させたチタン酸バリウムの前駆体組成物溶液
を低温制御し、水蒸気を用いて一部加水分解し、一部加
水分解した中間反応溶液を基板上にコーティングし、エ
ージングするので、室温で結晶化するチタン酸バリウム
の薄膜を得ることができる。従来のゾル・ゲル法による
結晶性薄膜の形成では、結晶化させるために450℃以
上の高温で焼成を行う必要があったが、本発明の方法で
は、室温で結晶化が可能となる。チタン酸バリウムは代
表的な強誘電体であり、高誘電率キャパシタ材料やDR
AMへの応用、また半導体元素を添加することにより正
のPTCR特性が得られるため、PTCRサーミスター
等への用途が考えられる。さらに、従来のような高温で
の熱処理が不用になるため、電極材料としては従来使用
されている白金等の高価な材料のかわりにニッケル等の
卑金属の使用が可能となり、大幅なコストの低下が見込
まれる。
【0019】請求項3記載のゾル・ゲル法による結晶性
薄膜の形成方法においては、チタン酸バリウムの前駆体
組成物溶液を低温制御し、水蒸気を用いて一部加水分解
し、加水分解による白濁生成後に再透明化した中間反応
溶液を基板上にコーティングし、エージングするので、
室温で結晶化するチタン酸バリウムの薄膜を得ることが
できる。また、一部加水分解した中間反応溶液を使用す
るので、溶液の粘性や取り扱い状態等の調整が可能とな
り、被コーティング材の形状を選ばず、表面状態に合わ
せた最適なコーティング溶液を調整することが可能とな
る。
【0020】請求項4記載のゾル・ゲル法による結晶性
薄膜の形成方法においては、基板上にコーティングした
層の水分とアルコール混合溶媒を飽和状態に保ちながら
エージングするので、室温で結晶化するチタン酸バリウ
ムの薄膜を得ることができる。室温で結晶化が可能なた
め、基板の変質や基板との反応等の問題が発生せず、ゾ
ル・ゲル法による薄膜形成技術の応用が拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】再透明化後、種々の時間経過した反応溶液を3
0℃エージングした試料のX線回折図である。
【図2】水蒸気とジメトキシエタノールとの混合溶液の
飽和雰囲気中、飽和水蒸気雰囲気中及びジメトキシエタ
ノールの飽和雰囲気中でエージングした薄膜のX線回折
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 桑原 誠 東京都文京区本郷7丁目3−1 東京大学 大学院 工学系研究科内 (72)発明者 小林 伸行 東京都文京区本郷7丁目3−1 東京大学 大学院 工学系研究科内 Fターム(参考) 4G047 CA02 CB06 CC03 CD02 5F058 BA20 BC03 BC04 BC20 BF46 BH01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数種の金属アルコキシドを高濃度で溶
    かしたぺロブスカイト化合物の前駆体組成物溶液を製造
    する第1工程と、前記前駆体組成物溶液を低温制御し、
    水蒸気により一部加水分解した中間反応溶液を製造する
    第2工程と、前記中間反応溶液を、基板上にコーティン
    グし、エージングすることにより結晶化させる第3工程
    とを有することを特徴とするゾル・ゲル法による結晶性
    薄膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のゾル・ゲル法による結晶
    性薄膜の形成方法において、前記ぺロブスカイト化合物
    の前駆体組成物溶液が、実質的に等モルのチタンアルコ
    キシドTi(OR14 及びバリウムアルコキシドBa
    (OR22 を、1種又は2種以上の低級アルコールR
    3 OHとアルコールR4 OHとの混合溶媒に溶解させた
    溶液であることを特徴とするゾル・ゲル法による結晶性
    薄膜の形成方法。ただし、R1 及びR2 はそれぞれ、n
    =1〜10の−Cn2n+1、−CH(CH 32 、−C
    24 OCH3 、−C24 OC25 、−CH2 OC
    3 、−CH2 OC25 及び−C24 OC24
    25 から選ばれた1種又は2種以上の基を示す。R
    3 は、n=1〜10の−Cn2n+1、−CH(CH3
    2 から選ばれた1種又は2種以上の基を示す。R4 は、
    n=1〜10の−Cn2n+1、−CH(CH32 、−
    24 OCH 3 、−C24 OC25 、−CH2
    CH3 、−CH2 OC25 及び−C24 OC24
    OC25 から選ばれた1種又は2種以上の基を示す。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のゾル・ゲル法による結晶
    性薄膜の形成方法において、チタン酸バリウムの前駆体
    組成物溶液を低温制御し、水蒸気を用いて一部加水分解
    し、加水分解による白濁生成後に再透明化した中間反応
    溶液を前記基板上にコーティングすることを特徴とする
    ゾル・ゲル法による結晶性薄膜の形成方法。
  4. 【請求項4】 請求項2又は3記載のゾル・ゲル法によ
    る結晶性薄膜の形成方法において、前記基板上にコーテ
    ィングした層の水分とアルコール混合溶媒を飽和状態に
    保ちながらエージングすることにより結晶化させること
    を特徴とするゾル・ゲル法による結晶性薄膜の形成方
    法。
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