JP2001026269A - 高速鉄道における列車のすれちがい検知システム - Google Patents

高速鉄道における列車のすれちがい検知システム

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Abstract

(57)【要約】 【課題】車両が受ける風圧を利用してすれちがいを検知
するについて、すれちがいによる風圧だけを高精度で検
知できるように、車両表面圧力の検知の特別な仕方を工
夫すること。 【解決手段】列車の中間車両の両側面に表面圧力ンセン
サーをそれぞれ設け、上記表面圧力センサーで表面圧力
を電気的に検出し、上記表面圧力センサーからの電気信
号を微分し、基準値と比較して対向列車とのすれちがい
を判別すること。対向列車とのすれちがい時の上記両表
面圧力ンセンサーによる表面圧力測定信号は独特の波形
を示すから、他の要因による表面圧力の変動によるそれ
とは明確に区別され、したがって、これに基づいて対向
列車とのすれちがいを高精度で検知することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、いわゆる新幹線等の
高速鉄道における列車のすれちがいを検知する検知シス
テムに関するものであり、すれちがう対向列車の車両の
形状の如何に拘らず鉄道車両のすれちがいを高精度で検
知することができるものである。
【0002】
【従来の技術】上記高速鉄道においては、軌道不整や車
両の異常振動を検知するための車体動揺装置を車両に搭
載していて、これによって車両の車体、台車、台車軸受
等の加速度信号を常時計測し、この計測結果を瞬時に分
析・評価して軌道異常、台車、台車軸受等の異常を検知
する技術が公知である(特開平9ー269217号公
報)。上記の車体動揺装置による加速度信号の計測デー
タには軌道不整や車両内で生じた振動による加速度の外
の要因、例えば地震、風圧などによる車両の振動の加速
度も含まれるので、これらがノイズとなる。その中で
も、対向列車とのすれちがいによる車両振動が上記ノイ
ズの大きな要因となるので、対向列車とのすれちがいを
正確、かつ瞬時に検知して加速度測定データの分析・評
価においてこれらを排除することが必要である。現在
は、対向列車とのすれちがいを反射型光電センサーを用
いて検知している。ところで、上記の反射型光電センサ
ーによる対向列車の車両検知センサーは、対向列車の車
両に向かってビーム光線を発射し、対向列車の車両表面
からの反射光を検知するものであるが、対向列車の車両
検知センサーにおける反射型光電センサーは対向列車の
車両の外表面からの反射光を検知するものであるから、
対向列車の車両の外面形状により反射方向が異なるのた
めに反射光の検知精度が安定しない。このため、反射方
光電センサーのゲイン調整、受光方向の調整が微妙で、
反射光の受光精度を可及的に高くするために、ゲイン調
整、受光方向を頻繁に調整する必要があり、また、実際
のすれちがい車両を用いて調整する必要がある。
【0003】最近の新幹線の車両においては車体表面は
比較的曲率が大きい曲面であってその形状が異なる車両
が多種類混用されているが、これに対する適切な対応は
容易でなく、新型車両が投入される度に反射方光電セン
サーを調整する必要があり、殊に最近の新型車両は表曲
面の曲率半径が小さく(曲率が大きく)なる傾向がある
ため、反射型光電センサーによる反射光の受光率が低下
し、検知確率が低下する傾向が大である。高速鉄道にお
いては対向列車とすれちがうときに強い風圧を受けるか
ら、この風圧を利用してすれちがいを検知することがで
きることは比較的容易に想到し得ることであるが、列車
がトンネルに突入するとき、あるいは自然の突風によっ
ても強い風圧を受ける。したがって、車両表面にかかる
風圧を利用してすれちがいを検知するには、すれちがい
による風圧のみを高精度で検知できるように、その検知
システムを工夫することが必要である。
【0004】
【解決しようとする課題】そこで、車両が受ける風圧を
利用してすれちがいを検知するについて、すれちがいに
よる風圧だけを高精度で検知できるように、車両表面圧
力の検知の特別な仕方を工夫することが必要であり、こ
れを工夫することが本発明の課題である。
【0005】
【課題解決のために講じた手段】上記課題解決のために
講じた手段は次の要素(イ)(ロ)(ハ)によって構成
されるものである。 (イ)列車の中間車両の両側面に表面圧力ンセンサーを
それぞれ設けたこと、(ロ)上記表面圧力センサーで表
面圧力を電気的に検出すること、(ハ)上記表面圧力セ
ンサーからの電気信号に基づいて対向列車とのすれちが
いを判別すること。なお、上記の「中間車両」は、先頭
車両と最後尾車両との間の車両を意味する。
【0006】
【作用】列車が高速ですれちがうときに車両表面の圧力
変動は、列車の前部、中間部、後部においてそれぞれ異
なり、先頭車両表面の空気流れは不安定であってその圧
力変動は激しいが、中間部の車両表面の空気流れは安定
しているのでその圧力変動は比較的安定している。した
がって、列車の中間車両の両側面に表面圧力ンセンサー
をそれぞれ設けたことによって、対向列車とのすれちが
いによる表面圧力の変動を安定した測定信号として取り
出すことができる。そして、対向列車とのすれちがい時
の上記両表面圧力ンセンサーによる表面圧力測定信号は
独特の波形を示すから、他の要因による表面圧力の変動
によるそれとは明確に区別され、したがって、これに基
づいて対向列車とのすれちがいを高精度で検知すること
ができる。なお、表面圧力センサーを中間車両の側面に
設けることの技術的意義は、上記のとおり、先頭車両、
最後尾車両の表面に比して中間車両の表面の空気流れが
安定していて、圧力変動が比較的安定しているので、対
向列車とのすれちがいによる圧力変動の計測データが比
較的安定し、したがって判別精度を向上させることがで
きることである。したがって、この計測データの安定性
を考慮しなければ、先頭車両、最後尾車両の側面に表面
圧力センサーを設けて、本発明を実施することもできな
いではない。
【0007】
【実施態様1】解決手段における上記表面圧力センサー
からの電気信号を微分して、これを基準値と比較して、
基準値をこえているとき対向列車とのすれちがい有りと
判別すること。なお、上記の基準値は、対向列車が通過
する時の圧力測定信号を微分して予め設定している基準
値である。
【0008】
【作用】上記表面圧力信号の波形は独特の波形を示すか
ら、これを微分して基準値と比較し、基準値を越えてい
るとき、車両表面の圧力変動は対向列車とのすれちがい
によるものであると判断され、これによって対向列車と
のすれちがいを高精度で検知することができる。ところ
で、対向列車とすれちがう側の車両表面に設けた表面圧
力センサーS1による計測圧力信号の波形P1は図1の
グラフに示すとおりであって、対向列車の先頭が上記表
面圧力センサーS1とすれちがうときの圧力変動がW1
であり、また、最後尾が上記表面圧力センサーS1とす
れちがうときの圧力変動がW2である。すれちがう相対
速度の如何によって上記圧力変動W1とW2の間の時間
間隔は異なり、また圧力変動の大きさは異なるが、計測
信号の波形P1のパターンは基本的には変わらない。ち
なみに、対向列車とすれちがう側とは反対側の車両表面
に設けた圧力センサーS2による計測圧力信号の波形P
2は図1のグラフに示すとおりであり、列車とすれちが
うことによってはほとんど有意な圧力変動は見られな
い。また、列車がトンネルに突入するときも、車両表面
の圧力は変動するが、この場合の表面圧力センサーS
1,S2による圧力測定信号の波形は図2のとおりであ
って、両波形は同じであり、かつ当該波形は対向列車と
のすれちがいによる上記波形P1,P2とは全く異なる
から、このときの表面圧力変動はすれちがいによる圧力
変動と高精度で区別される。
【0009】
【実施態様2】解決手段における上記表面圧力センサー
からの電気信号を差動増幅器で増幅し、これを基準値と
比較して対向列車とのすれちがいを判別すること。
【0010】
【作用】対向列車とすれちがうときの上記表面圧力セン
サーS1による計測電気信号は相手車両の先頭が通過す
る時、及び最後尾が通過する時に大きく変動すること
は、図1のW1,W2に示されているとおりであり、ま
た、すれちがう側とは反対側の表面に設けた圧力センサ
ーS2による計測信号はほとんど変動せず、これは図1
に示すとおりである。この両表面圧力センサーS1,S
2による計測信号の波形の違いは対向列車とのすれちが
いによる風圧独特のものである。両表面圧力センサーS
1,S2による両計測信号を差動増幅器で増幅し、これ
を微分し、これを基準値と比較することによって対向列
車とのすれちがいを検知する。両表面圧力センサーS
1,S2による両計測信号を差動増幅器で増幅してこれ
を基礎とすることによって、他の要因による表面圧力の
変動によるものとの違いを増大させることができ、した
がって、対向列車とのすれちがい検知精度を一層高める
ことができる。
【0011】
【実施例】次いで図面を参照しながら実施例を説明す
る。 〔実施例1〕この実施例1は対向列車とすれちがう側の
表面圧力測定データを微分して、これを基準値と比較し
て対向列車とのすれちがいを判別する実施例であり、1
6両編成の列車の前から3両目の左右両側面(最も空気
流が安定する位置)に表面圧力センサーP1,p2を設
けている。この表面圧力センサーP1,P2をそれぞれ
微分器10に接続し、さらにこの微分器10を比較器1
1に接続している。対向列車とのすれちがい時の表面圧
力を予め測定し、これに基づいて基準値を定め、これを
上記比較器に基準信号として入力している。上記微分器
10からの出力信号を上記基準信号と比較して、当該基
準値を越えるとき比較器11からすれちがい信号が出力
される。なお、上記微分器10からの出力と基準信号と
の比較判断は、誤差範囲を10%(±5%)程度見込ん
で設定している。すれちがうときの相対速度の如何、す
れちがう対向列車の車両の形状、自然条件の如何によっ
て、測定値の微分値が若干異なるので、上記基準値はこ
れらを勘案して平均的な微分波形に基づいて定めてある
が、誤差範囲(補正範囲)を10%程度とすることによ
って、すれちがい検知精度をほとんど100%にするこ
とができる。なお、判別のための基準値は、相手車両の
先頭が通過するとき、及び最後尾が通過する時の変動値
(図1のW1,W2)に対応して設けてあり、微分器1
0からの出力が上記W1,W2に対する基準値を越える
とき、すれちがい比較器11からすれちがい信号が出力
され、その時の車体動揺装置(車体動揺測定装置)によ
る車両振動測定結果を無効にして、すれちがいによるノ
イズを排除している。このように、対向列車とのすれち
がい時における車両振動測定結果を無効にしても車両自
体の異常による振動はすれちがい前後の振動測定によっ
て検知することができ、また、すれちがい位置における
軌道の異常が万一あったとしてもそれは後続の車両によ
って検知されるので、実際上は全く問題ない。すれちが
い信号が出されたときは、車両振動測定データからすれ
ちがいによる振動成分を電気的に除去することによっ
て、すれちがい時の真の車両振動測定データを得て、こ
れを分析・評価の対象にすることも可能であるが、その
ようにすることの実際上の効果はほとんどない。
【0012】〔実施例2〕この実施例2は車両の左右両
側面の表面圧力センサーP1,P2の測定データの差に
基づいて対向列車とのすれちがいを判別する実施例であ
り、表面圧力センサーの配置は上記実施例1と違いはな
い。左右の表面圧力センサーP1,P2を差動増幅器2
0に接続し、この差動増幅器20を微分器21に接続
し、さらにこの微分器21を比較器22に接続してい
る。比較器には、実施例1と同様にして設定した基準信
号を入力している。上記の微分器21からの出力信号を
上記基準信号と比較して、基準値を越えたとき比較器2
2からすれちがい信号が出力される。表面圧力センサー
P1,P2の電気信号の出力の差を増幅し、これを微分
してすれちがい判別のデータとしているので、すれちが
い時の表面圧力センサーP1,P2の電気信号の出力差
の波形の特徴が顕著になり、したがって、他の要因によ
る表面圧力センサーP1,P2からの測定信号の出力差
の波形との判別精度が顕著に向上する。
【0013】
【その他】以上、対向列車の先頭とすれちがうときの表
面圧力変動W1,最後尾とすれちがうときの表面圧力変
動W2とを判断対象にすることによって、トンネルに突
入するときの風圧、突風等の他の要因による表面圧力変
動との峻別を高精度で行えるようにしたが、対向列車と
のすれちがい時の表面圧力以上の表面圧力を発生させる
突風等に見舞われることは極めてまれであるから、突風
等の他の要因による表面圧力変動との高精度の峻別を考
慮外とすれば、対向列車の先頭とすれちがうときの表面
圧力変動W1だけを判断対象とすることも可能であり、
このようにしても実用上は格別の支障はない。
【0014】また、列車が対向列車とすれちがうときに
は、対向列車から到達する音が他の音とは違うので、こ
れを検知することによって対向列車とのすれちがいを検
出することも可能である。この音圧を電気的に検知した
測定データによってすれちがいを検知するシステムの場
合は、音の高さのピーク値を利用することも可能である
が、ドプラー効果による周波数変化を利用するのが最も
有利である。しかし、測定された音圧測定データには、
対向列車から発せられる音の他に自らの車両から発する
音など、様々な音が含まれているので、特定の音の検出
信号のみを取り出し、これに対応する基準値を設ける必
要がありその処理は複雑であって検出装置が高価なもの
にならざるを得ず、また、高精度な検知結果を得るのは
容易ではない。対向列車の車種の違いによって到達する
音波は微妙に違うことを勘案すればなおさらである。こ
れに比して表面圧力の変動を利用する本発明のすれちが
い検知システムはかるかに廉価で、簡便なシステムで高
精度で検知することができる。
【0015】
【効果】本発明は、高速列車が対向列車とすれちがうと
きの車両表面の圧力変動を検出して、この圧力変動の特
性を利用して対向列車とのすれちがいを検知するもので
あり、対向列車とすれちがうときの表面圧力の変動は、
対向列車の車両の表面形状の違いに関わらず安定してい
るから、表面圧力の測定値と一つの基準値との比較によ
って、対向列車の車種の違いに関わりなく、高精度です
れちがいを検知することができる。また新たな車種を導
入する度に対向列車とのすれちがい検知システムを調整
する必要がある従来のものにおいては、この調整のため
のコスト、検知精度維持のためのメンテナンスコストが
かさむが、本発明によれば、対向列車の車両の表面形状
の大幅な違いに拘らず、これとのすれちがいを高精度で
検知できるので、新車種導入の度にすれちがい検知シス
テムを調整する必要はない。また、車体形状が大幅に異
なる新車種の将来の導入に対しても、本発明の検知シス
テムは十分対応できるので、本発明のすれちがい検知装
置を導入する際して、将来の大幅な車体表面形状の変化
を考慮する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、高速鉄道において対向列車とすれちがう側
の車両表面の圧力測定信号の波形図及び同車両の反対側
表面の圧力測定信号の波形図である。
【図2】は高速鉄道の列車がトンネルに突入したときの
一方の車両表面の圧力測定信号の波形図及び他方の車両
表面の圧力測定信号の波形図である。
【図3】は車両における表面圧力センサーの配置を示す
模式図である。
【図4】は実施例1の模式図である。
【図5】は実施例2の模式図である。 符号の説明 P1,P2:表面圧力センサー 10:微分器 11:比較器 20:差動増幅器 21:微分器 22:比較器

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車両の両側面に表面圧力ンセンサーをそれ
    ぞれ設け、上記表面圧力センサーで表面圧力を電気的に
    検出し、 上記表面圧力センサーからの電気信号に基づいて対向車
    両とのすれちがいを判別する高速列車のすれちがい検知
    システム。
  2. 【請求項2】上記表面圧力センサーを設ける車両を列車
    の中間車両とした請求項1の高速列車のすれちがい検知
    システム。
  3. 【請求項3】上記表面圧力センサーからの電気信号を微
    分して、これを基準値と比較して、基準値を越えるとき
    対向車両とのすれちがい有りと判別する請求項1または
    請求項2の高速車両のすれちがい検知システム。
  4. 【請求項4】車両の両側に配置した上記表面圧力センサ
    ーからの電気信号を差動増幅器で増幅し、これを基準値
    と比較して対向列車とのすれちがいを判別する請求項1
    または請求項2の高速列車のすれちがい検知システム。
  5. 【請求項5】車両の両側に配置した上記表面圧力センサ
    ーからの電気信号を差動増幅器で増幅し、差動増幅信号
    を微分器で微分し、これを基準値と比較して対向列車と
    のすれちがいを判別する請求項3の高速列車のすれちが
    い検知システム。
  6. 【請求項6】対向車両の先頭が通過するときの表面圧力
    変動、および対向車両の最後尾が通過するときの表面圧
    力変動の両方とこれらに対する基準値とによって対向列
    車とのすれちがいを判別する、請求項1乃至請求項5の
    高速列車のすれちがい検知システム。
  7. 【請求項7】対向車両の先頭が通過するときの表面圧力
    変動に対する基準値によって対向列車とのすれちがいを
    判別する、請求項1乃至請求項5の高速列車のすれちが
    い検知システム。
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