JP3103034B2 - 走行列車の情報検出方法 - Google Patents

走行列車の情報検出方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行している列車
の種別情報や速度情報などの走行列車の情報を検出する
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】新幹線は、在来線の列車に比較して高速
に人員等を輸送することができる利点がある反面、沿線
に騒音・振動等の公害を生じさせている。そこで、環境
基準が遵守されているかどうか、新幹線の沿線において
は、騒音計・振動計を用いて騒音・振動測定が行なわれ
ている。これらの測定は線路から所定距離離れた位置に
騒音計・振動計を設置し、列車通過に伴う設置点の騒音
・振動レベルを記録計に記録すると共に測定データをプ
リントアウトしている。
【0003】また、騒音測定の対象となる走行列車の種
別情報、速度情報や上り下り情報などの走行列車情報を
得る方法としては、例えば特開平8−105792号公
報における従来の技術の項に記載されているように、測
定現場に測定者を駐在させ、測定者の視覚・聴覚により
走行列車の接近を感知した時点で騒音・振動記録装置を
人手により始動させ、走行列車の通過後に停止せしめる
ように操作する方法が一般に採用され、その間に列車種
別、上り下りの区別の目視確認及びスピードガンやスト
ップオッチなどにより走行速度の測定・記録を行ってい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術において
は、通過列車の種類や上り下りなどの列車情報は目視確
認で行い、また列車速度は騒音・振動記録装置の他にス
ピードガンなどの速度計を使用して測定しなければなら
ず、煩雑であり、しかも工数が掛かるという問題点を有
していた。
【0005】本発明は、従来の技術が有するこのような
問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすると
ころは、騒音・振動の測定対象となる列車の種別情報や
速度情報などの走行列車の情報を人手によらず自動的に
検出する走行列車の情報検出方法を提供しようとするも
のである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく本
発明は、鉄道線路の近傍地点に列車のパンタグラフに対
向するように指向性集音器を設置し、この指向性集音器
により前記パンタグラフと架線との間で発生する摺動音
や前記パンタグラフの風切り音などの騒音を検出し、前
記指向性集音器が検出した騒音データを演算処理して列
車の種類を判別するものである。
【0007】また、前記走行列車の種類の判別は、前記
パンタグラフの装着数に伴う騒音データのピーク数を演
算処理して行うことができる。また、前記走行列車の種
類の判別は、前記パンタグラフの装着位置に伴う騒音デ
ータのピーク位置を演算処理して行ってもよい。更に、
前記走行列車の種類の判別は、前記パンタグラフの装着
数に伴う騒音データのピーク数及び前記パンタグラフの
装着位置に伴う騒音データのピーク位置を演算処理して
行うことができる。
【0008】また、前記走行列車の種類を判別すると共
に、前記指向性集音器が検出した騒音データの所定レベ
ルにおける出力幅に基づいて走行列車の速度を算出する
ことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を添付
図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係る
走行列車の情報検出方法を実施する列車情報検出装置の
構成図、図2はパラボラ型集音器の設置状況を示す側面
説明図、図3はパラボラ型集音器の設置状況を示す平面
説明図、図4は騒音計の設置状況を示す説明図、図5は
パラボラ型集音器による騒音データをモデル化した図、
図6は本発明に係る走行列車の情報検出方法による騒音
データの演算処理のフローチャートである。
【0010】図1に示すように、走行列車の情報検出方
法を実施する列車情報検出装置は、走行列車の発する騒
音とその列車の種別や速度などの列車情報を同時に検出
する装置で、指向性のあるパラボラ型集音器1と、列車
走行方向識別と騒音レベル測定兼用の騒音計2と、列車
走行方向識別専用の騒音計3を備えている。なお、パラ
ボラ型集音器に代えて複数個のマイクロホンを直線状に
整列させた、いわゆるマイクロホンアレイ型の指向性集
音器を用いてもよい。パラボラ型集音器1は、放物面状
の反射板5と、この反射板5の焦点位置に配置されたマ
イクロホン6からなり、マイクロホン6の出力信号は増
幅器7、フィルタ8、整流回路9を介してA/D変換器
10に入力される。
【0011】列車走行方向識別と騒音レベル測定兼用の
騒音計2と列車走行方向識別専用の騒音計3は、ともに
マイクロホン11,12から騒音を入力し、マイクロホ
ン11,12の出力信号は増幅器13,13、減衰器
(ATT)14,14、増幅器15,15、バンドパス
フィルタ16,16を介してA/D変換器17,18に
入力される。
【0012】そして、2個のマイクロホン11,12と
2台の騒音計2,3が検出した騒音データにより列車の
上り下り情報を得ることができる(特公昭61−131
69号公報参照)。また、マイクロホン11と騒音計2
は、騒音レベルの測定にも使用される。なお、列車の上
り下り情報のみを検出するのであれば、騒音計2,3の
代わりに単なる増幅器を用いてもよいが、マイクロホン
11を騒音測定にも使用しているので、互換性を考慮し
てマイクロホン12に騒音計3を接続している。
【0013】図1において、19はインタフェース、2
0はバスライン、21はA/D変換器10,17,18
の出力データを演算処理するCPU(中央演算処理装
置)、22はA/D変換器10,17,18の出力デー
タ、CPUで演算処理したデータや処理プログラムなど
を記憶するメモリ、23はA/D変換器10,17,1
8の出力データや演算処理結果などをプリントアウトす
る記録計である。
【0014】パラボラ型集音器1は、図2及び図3に示
すように、上り下りの列車25のパンタグラフ26が途
中に遮る物がなく直視できる位置で、線路27に対して
直交する方向を向いて設置されている。その受感角度ω
は、5kHzにおいて約6度である。なお、反射板5と
してBS放送用の直径50cmのパラボラアンテナの反
射板を用い、その焦点位置にマイクロホン6を配置して
パラボラ型集音器1を構成することができる。
【0015】また、図1に示すフィルタ8は、バンドパ
スフィルタであり、中心周波数が5kHzで低域の遮断
周波数が5/(3の平方根)kHzで、高域の遮断周波
数が5×(3の平方根)kHzある。この帯域に列車の
発する騒音成分が多く、且つ指向性が強いからである。
なお、フィルタ特性はこれに限らず、要はパンタグラフ
の発する摺動音や風切り音等を効果的に検出できればよ
いのであるから、例えば、低域の遮断周波数を5kH
z、高域の遮断周波数を10kHzとしてもよい。
【0016】列車の上り下り情報等を捉える2個のマイ
クロホン11,12は、図4に示すように、マイクロホ
ン11,12を所定の間隔で取付けた棒状部材30が線
路27と平行になるように設置される。なお、騒音検出
用のマイクロホン11の設置高さは、地上1.2mと法
律で規定されている。マイクロホン11を設置する地点
の線路27からの距離は、任意である。
【0017】以上のように構成した走行列車の情報検出
方法を実施する列車情報検出装置を、例えば上越新幹線
に適用した場合について説明する。上越新幹線では、図
7に示すように、200系12両編成(パンタグラフ2
個装着、全長300m)、E1系12両編成(通称Ma
x、パンタグラフ2個装着、全長300m)、200系
8両編成(パンタグラフ4個装着、全長200m)の3
種類の車両編成で運行されている。
【0018】また、200系12両編成とE1系12両
編成は、ともに12両編成でパンタグラフが2個装着さ
れている点で共通するが、1個のパンタグラフについて
は装着されている車両ナンバーが異なっている。即ち、
200系12両編成では4号車と10号車に、E1系1
2両編成では6号車と10号車に、夫々パンタグラフが
装着されている。更に、200系12両編成の2号車に
は、下げられたパンタグラフが装着されている。従っ
て、このような車両編成による3種類の列車は、互いに
形態上区別される。なお、これら測定対象となる3種類
の列車による平均的な騒音データ(A/D変換器10の
出力データ)の特徴が予めメモリ22に記憶されてい
る。
【0019】ここでは、図5に示すように、パラボラ型
集音器1により検出され、増幅器7、フィルタ8及び整
流回路9で処理された騒音データをモデル化し、このモ
デル化した図を使用して、図6に示すCPU21が実行
するデータ処理のフローチャートにしたがって走行列車
の情報検出方法を説明する。
【0020】走行列車25が測定地点を通過する際に発
するパンタグラフ26と架線との摺動音やパンタグラフ
26の風切り音などの騒音をパラボラ型集音器1により
取り込み、この取り込んだ騒音データを増幅器7、フィ
ルタ8、整流回路9、A/D変換器10を介してメモリ
22に、縦軸が騒音レベル(単位dB)、横軸が時間
(単位秒)として記憶する。そして、メモリ22に記憶
した騒音データについてCPU21により演算処理を実
行する。
【0021】先ず、騒音データのうち最初のピークP0
と最後のピークPEを取除く(ステップS1)。次い
で、騒音データの最高レベルMaxを読取る(ステップ
S2)。更に、演算(Max−L1)を行う(ステップ
S3)。ここで、L1は予め設定し、L1=2dBを標
準とする。
【0022】次いで、(Max−L1)を超えるピーク
Kの個数が幾つあるかカウントし(ステップS4)、そ
の個数が2〜4であるか否か判断する(ステップS
5)。ピークKの個数が2又は3の場合は、200系1
2両編成又はE1系12両編成と判断し、ピークKの個
数が4の場合は、200系8両編成と判断する(ステッ
プS6)。従って、ピークKの個数が4の場合は、20
0系8両編成と特定される。なお、ピークKの個数が何
れにも当てはまらない場合には、列車の種類が不明とし
て処理を終了する(ステップS12)。
【0023】次いで、200系12両編成であるか、又
はE1系12両編成であるかを特定するため、騒音デー
タの継続時間T1を(Max−L2)を超える騒音レベ
ルが存在する時間として求める(ステップS7)。ここ
で、L2は予め設定し、L2=20dBを標準とする。
【0024】次いで、ピークP1とピークP2の時間間
隔T2を求める(ステップS8)。更に、T2/T1の
演算を行い、T2/T1の値が0.3≦T2/T1≦
0.55であるか否か判断する(ステップS9)。
【0025】T2/T1=0.3〜0.36であれば、
E1系12両編成(原理上T2/T1=0.33)であ
り、T2/T1=0.45〜0.55であれば、200
系12両編成(原理上T2/T1=0.5)であるとみ
なす(ステップS10)。なお、T2/T1の値が何れ
にも当てはまらない場合には、列車の種類が不明として
処理を終了する(ステップS12)。
【0026】以上ステップS1からステップS10にお
いて、パンタグラフの装着数とパンタグラフの装着位置
による騒音データの相違により車種判別と車両数判別が
行われる。
【0027】次いで、騒音データから列車の速度を演算
する(ステップS11)。E1系12両編成の場合に
は、(300/T1)×3.6×Aで時速(km/時)
を計算する。ここで、300は列車の長さ(m)、A=
0.98〜1.02である。
【0028】200系12両編成の場合には、(300
/T1)×3.6×Aで時速(km/時)を計算する。
ここで、300は列車の長さ(m)、A=0.98〜
1.02である。
【0029】200系8両編成の場合には、(200/
T1)×3.6×Aで時速(km/時)を計算する。こ
こで、200は列車の長さ(m)、A=0.98〜1.
02である。なお、Aは補正係数であり、L2の設定値
によって異なる。以上ステップS11で、測定地点にお
ける各種走行列車の速度が求められる。
【0030】図8は、上越新幹線あさひ312号(20
0系12両編成、パンタグラフ2個装着、全長300
m)のパラボラ型集音器1による指向性帯域音圧データ
(縦軸が指向性帯域音圧レベル:単位dB、横軸が時
間:単位秒)の一例である。受感角度ωが5kHzにお
いて約6度のパラボラ型集音器1で検出された騒音デー
タには、パンタグラフの装着数が2個による2つのピー
クが現れている。また、谷の部分は空力騒音の少ない車
輌中間部を表し、谷の数を数えることで12両編成とい
うことが分る。
【0031】図9は、上越新幹線あさひ318号(E1
系12両編成、通称Max、パンタグラフ2個装着、全
長300m)のパラボラ型集音器1による指向性帯域音
圧データ(縦軸が指向性帯域音圧レベル:単位dB、横
軸が時間:単位秒)の一例である。あさひ312号と同
様に、パンタグラフ2個による2つのピークが現れてい
る。また、あさひ312号と同様に、谷の部分は空力騒
音の少ない車輌中間部を表し、谷の数を数えることで1
2両編成ということが分る。ただし、あさひ312号と
あさひ318号では、ともにパンタグラフの装着数が2
個で2つのピークが現れているが、パンタグラフの装着
位置が相違するのでピークの時間間隔に差がある。
【0032】図10は、上越新幹線あさひ368号(2
00系8両編成、パンタグラフ4個装着、全長200
m)のパラボラ型集音器1による指向性帯域音圧データ
(縦軸が指向性帯域音圧レベル:単位dB、横軸が時
間:単位秒)の一例である。あさひ368号は、パンタ
グラフの装着数が4個であるため4つのピークが現れて
いる。そのため谷の部分は明確でないが、前記した他の
列車とは明らかに異なっている。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、騒
音・振動の測定対象となる列車の種別情報や速度情報な
どの走行列車の情報を人手によらず自動的に検出するこ
とができるので、走行列車の情報検出作業の省力化・省
人化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る走行列車の情報検出方法を実施す
る列車情報検出装置の構成図
【図2】パラボラ型集音器の設置状況を示す側面説明図
【図3】パラボラ型集音器の設置状況を示す平面説明図
【図4】騒音計の設置状況を示す説明図
【図5】パラボラ型集音器による騒音データをモデル化
した図
【図6】本発明に係る走行列車の情報検出方法による騒
音データの演算処理のフローチャート
【図7】上越新幹線の3種類の車両編成を示す説明図
【図8】パラボラ型集音器による200系12両編成の
指向性帯域音圧データの一例
【図9】パラボラ型集音器によるE1系12両編成の指
向性帯域音圧データの一例
【図10】パラボラ型集音器による200系8両編成の
指向性帯域音圧データの一例
【符号の説明】
1…パラボラ型集音器(指向性集音器)、2,3…騒音
計、5…反射板、6…マイクロホン、7…増幅器、8…
フィルタ、9…整流回路、10…A/D変換器、21…
CPU、22…メモリ、23…記録計、25…列車、2
6…パンタグラフ、27…線路。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄道線路の近傍地点に列車のパンタグラ
    フに対向するように指向性集音器を設置し、この指向性
    集音器により前記パンタグラフと架線との間で発生する
    摺動音や前記パンタグラフの風切り音などの騒音を検出
    し、前記指向性集音器が検出した騒音データを演算処理
    して走行列車の種類を判別することを特徴とする走行列
    車の情報検出方法。
  2. 【請求項2】 前記走行列車の種類の判別は、前記パン
    タグラフの装着数に伴う騒音データのピーク数を演算処
    理して行う請求項1記載の走行列車の情報検出方法。
  3. 【請求項3】 前記走行列車の種類の判別は、前記パン
    タグラフの装着位置に伴う騒音データのピーク位置を演
    算処理して行う請求項1記載の走行列車の情報検出方
    法。
  4. 【請求項4】 前記走行列車の種類の判別は、前記パン
    タグラフの装着数に伴う騒音データのピーク数及び前記
    パンタグラフの装着位置に伴う騒音データのピーク位置
    を演算処理して行う請求項1記載の走行列車の情報検出
    方法。
  5. 【請求項5】 前記走行列車の種類を判別すると共に、
    前記指向性集音器が検出した騒音データの所定レベルに
    おける出力幅に基づいて走行列車の速度を算出する請求
    項1記載の走行列車の情報検出方法。
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