JP2001023661A - 燃料電池および固体高分子電解質膜 - Google Patents

燃料電池および固体高分子電解質膜

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JP2001023661A JP11188665A JP18866599A JP2001023661A JP 2001023661 A JP2001023661 A JP 2001023661A JP 11188665 A JP11188665 A JP 11188665A JP 18866599 A JP18866599 A JP 18866599A JP 2001023661 A JP2001023661 A JP 2001023661A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 燃料電池のセル当たりの起電圧を向上する。 【解決手段】 スルホン酸基を含有するスルホン酸基を
有するパーフルオロカーボン重合体からなる水素イオン
交換膜で形成された電解質膜を水素極と酸素極とで挟ん
でセルを構成する。電解質膜の組成を、水素極との接触
部では他の領域よりもスルホン酸基の濃度が1/10程
度に低い状態とする。セルの起電圧は両極の水素イオン
濃度の偏差に応じて変化する。両極でスルホン酸基の濃
度に差違を持たせることにより、発電中における水素極
側の電解質膜内の水素イオン濃度を酸素極側の水素イオ
ン濃度よりも低減することができ、セル当たりの起電圧
を向上することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水素イオンを透過
する電解質層を挟んで水素極と酸素極とを備える燃料電
池、および該燃料電池の一種である固体高分子型燃料電
池の電解質層を形成する固体高分子膜に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、水素イオンを透過する電解質
層を挟んで水素極と酸素極とを備える燃料電池が提案さ
れている。燃料電池では、陰極(水素極)と陽極(酸素
極)でそれぞれ次の反応式(1)(2)に応じた反応が
生じる。水素極で生じた水素イオンは、H+(xH2O)
の水和状態(以下、ヒドラニウムイオンという)で、酸
素極側に電解質層を移動することで下記の反応が進行す
る。 陰極(水素極) H2→2H+ + 2e- ・・・(1) 陽極(酸素極) (1/2)O2+2H++2e- → H2O ・・・(2)
【0003】燃料電池は、電解質層の種類に応じて、リ
ン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体電解質型
燃料電池、アルカリ型燃料電池など種々の形式が提案さ
れている。近年では、出力密度が高く小型化が可能であ
る等の理由により、水素イオン導電性の高分子膜を電解
質層として適用した固体高分子型燃料電池が注目されて
おり、種々の改良が検討されている。
【0004】燃料電池は、いずれの型においても上述の
原理に基づいて発電しており、水素極側と酸素極側の理
論的な電位差、即ち理論的な起電力は約1.23Vであ
るといわれている。現実には、種々の損失に起因して、
出力される電圧は約0.95〜1V程度であった。起電
力を低下させる要因の一つとして、いわゆる内部抵抗、
即ち電解質層における水素イオンの移動が阻害されるこ
とによる抵抗が挙げられる。
【0005】固体高分子型燃料電池について上述の内部
抵抗を低減する技術が種々提案されている。例えば、特
開平6−231781や特開平8−171920に記載
の技術、および特開平7−135004記載の技術など
である。前二者に記載の技術は、電解質層を形成する固
体高分子膜の含水率を、水素極側が高く、酸素極側が低
くなるように偏らせたことを要旨としている。先に説明
した通り、水素イオンは水分子と結合したヒドラニウム
イオンの形で移動する。従って、反応が進むにつれ、水
素イオンを供給する側の水素極では水分子が不足し、酸
素極側では水分子が過剰になる傾向がある。上記技術
は、両極で含水率に差をもたせることによって、水分子
の不足を解消し、水素イオンの移動を容易にする効果が
ある。
【0006】後者、即ち特開平7−135004記載の
技術は、電解質層に含有されるイオン交換基の濃度を向
上することを要旨とする。水素イオンおよびヒドラニウ
ムイオンはイオン交換基の働きによって電解質層中を移
動するため、イオン交換基の濃度を向上することによ
り、内部抵抗を低減することができる。なお、特開平7
−135004には、水素極側のイオン交換基の濃度を
酸素極側のイオン交換基の濃度よりも高くする技術も開
示されている。一般にイオン交換基の濃度を高くすれば
吸水率を向上させることができる。従って、水素極側の
濃度を酸素極側よりも高めることは、水素極側の含水率
を向上し、特開平6−231781や特開平8−171
920に記載の技術と同様の効果をもたらす。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】こうした種々の改良に
より、内部抵抗の低減が図られ、燃料電池の運転効率が
向上してきた。しかしながら、燃料電池の起電圧の向上
は十分に図られていなかった。内部抵抗の低減に伴い起
電圧も若干は向上するものの、本来出力可能な起電圧
1.23Vに対し約1V程度にとどまっていた。
【0008】種々の装置の電源として燃料電池を使用す
る場合には、装置に応じて要求される電圧を出力する必
要がある。セル当たりの起電圧が低ければ、要求電圧を
出力するために接続するセル数が増大する。これは、電
源装置全体の大型化および製造コストの増大を招く。か
かる観点で燃料電池の起電圧の向上は重要な意義を有す
る。しかしながら、従来の改良は内部抵抗の低減による
運転効率の向上に主眼がおかれ、起電圧の向上を主目的
とした改良については十分な検討がなされていなかっ
た。
【0009】上述の課題は、固体高分子型燃料電池に限
らず、種々の型の燃料電池について共通の課題であっ
た。本発明は、上記課題を解決するためになされたもの
であり、燃料電池の起電圧を向上する技術を提供するこ
とを目的とする。また、特に固体高分子型燃料電池につ
いては、起電圧を向上した燃料電池を構成可能な電解質
膜を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
述の課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は
次の構成を採用した。即ち、本発明の燃料電池は、水素
イオンを透過する電解質層を挟んで水素極と酸素極とを
備える燃料電池であって、前記電解質層は、発電時にお
いて酸素極との接触領域における水素イオン濃度が、水
素極との接触領域における水素イオン濃度に対して、目
標起電圧に応じた所定値以上高い状態となる層であるこ
とを要旨とする。
【0011】かかる構成を有する燃料電池によれば、以
下に示す通り、水素極と酸素極との水素イオン濃度の偏
差に起因して起電圧を向上することができる。本発明の
燃料電池をセルとして用いて電源装置を構成すれば、要
求される電圧を出力するために必要となるセル数の低減
を図ることができ、電源装置の小型化や製造コストの低
減などを図ることができる。
【0012】水素イオン濃度の偏差と起電圧との関係に
ついて説明する。燃料電池の起電圧は、水素極と酸素極
の電位差である。両極では、それぞれ先に示した反応式
(1)(2)で示す反応が生じており、発電中は各極で
の反応が平衡状態にある。一般に平衡状態にある場合の
各極の電位は、ネルンストの式と呼ばれる関係式で表さ
れることが知られている。ネルンストの式によれば、水
素極の平衡電位EH、酸素極の平衡電位EOは、それぞれ
次式(3)(4)で表される。なお、水素イオンの活量
と水素イオン濃度とは厳密には異なる場合があるが、本
明細書では両者を同義の用語として用いるものとする。
【0013】 EH = EH0 + (RT/F)×ln(aH) = EH0 − (RT/F)×PH ・・・(3) EO = Eo0 + (RT/F)×ln(aH) = Eo0 − (RT/F)×PH ・・・(4) R:気体定数; T;絶対温度(ケルビン温度); F:ファラデー定数; aH:水素イオンの活量; EH0:aH=1の場合の水素電極電位(0V); Eo0:aH=1の場合の酸素電極電位(1.23V); PH=−ln(aH);
【0014】図1はPH値と水素極および酸素極の平衡
電位との関係を示すグラフである。上記ネルンストの式
(3)(4)を図示したものであり、実線が酸素極の平
衡電位、破線が水素極の平衡電位を示す。図示する通
り、PH値が増加するにつれて、即ち、水素イオン濃度
が低下するにつれて各極の電位は低下する。但し、上式
(3)(4)から明らかな通り、それぞれのPH値にお
ける各極の電位差は1.23Vで一定である。例えば、
PH値が図中のPH1に相当する電解質層を使用した場
合、酸素極の電位は点Vo1で表される値に相当し、水
素極の電位は点Vh1で表される値に相当する。このと
き燃料電池の起電圧は酸素極と水素極の電位差、即ち図
中の電圧V1に相当し、理論的には1.23Vとなる。
水素極と酸素極とで均一な組成の電解質層を利用する限
り、電解質層のPH値に関わらず起電圧の理論値は1.
23Vである。
【0015】これに対し、本発明の燃料電池では、酸素
極と水素極とで電解質層の水素イオン濃度、即ちPH値
に差違がある。水素極側の水素イオン濃度が酸素極側よ
りも低い。換言すれば、水素極側のPH値は酸素極側の
PH値よりも高い。かかる状態の一例を図1に示した。
本発明の燃料電池では、例えば、酸素極側のPH値がP
Hoである場合、水素極側のPH値はPHoよりも高い
値PHhとなる。この結果、酸素極側の電位は図中の点
Vo2で表される値に相当し、水素極側の電位は図中の
点Vh2で表される値に相当する。燃料電池の起電圧は
両者の差異、即ち図中の値V2となる。図および上式
(3)(4)から明らかな通り、この電圧は理論値1.
23Vよりも大きい。また、起電圧は酸素極側と水素極
側のPH値の差分に応じて変動する。
【0016】従来、燃料電池では、当然のようにして水
素極と酸素極とで共通の電解質層が用いられてきた。従
来技術で説明した通り、水素イオンの導電性を向上させ
るために、水素極と酸素極とで含水率に差を持たせる程
度の技術が適用されているに過ぎなかった。本願の発明
者は、燃料電池の起電圧を向上することを主眼におき、
燃料電池の発電原理まで遡って、その対策を検討した。
この結果、ネルンストの式で表される関係、即ち電解質
層のPH値と各極電位との関係に着眼し、両極のPH値
に差を持たせることで起電圧の向上を図ることができる
点を見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
ネルンストの式自体は周知の関係式であるが、燃料電池
において起電圧の向上という観点からこの関係式を再検
討した点、水素極と酸素極で電解質層のPH値の差違が
起電圧の向上につながることを見出した点に本願の主た
る技術的意義が存在する。
【0017】図1および上式(3)(4)から明らかな
通り、本発明において水素極側のPH値と酸素極側のP
H値の差違は、目標起電圧に応じて設定することができ
る。図1等に示したのはあくまでも理論値であり、実際
には種々の損失に起因する電圧降下も考慮して両極のP
H値の差違を設定する。また、本発明は水素極および酸
素極で生じる反応の平衡状態が電解質層のPH値に応じ
て変動する点に着眼してなされたものである。従って、
電解質層の水素イオン濃度は、各電極との接触部、厳密
には電極での平衡反応に影響を与える程度の領域で差違
があればよい。もちろん、水素極側から酸素極側に向か
って電解質層の水素イオン濃度が徐々に増大するように
構成しても構わないが、上述の条件を満たす構造であれ
ば、内部の水素イオン濃度はいかなる値でも構わない。
【0018】本発明は、リン酸型、溶融炭酸塩型など種
々の燃料電池に適用可能であるが、特に、前記電解質層
は、固体高分子で形成される水素イオン交換膜であるも
のとすることが望ましい。即ち、いわゆる固体高分子型
燃料電池に適用することが望ましい。
【0019】固体高分子型燃料電池は、電解質層が高分
子膜で形成されている。このため、従来、電解質層の構
造を両極で変えるという技術になじまなかった。本願
は、かかる偏見を打破し、両極で電解質層の構造を変え
ることの重要性を明確にした点で特に意義がある。一
方、両極で構造を変えた電解質層の形成に際しては、電
解質層が高分子膜で形成されていることにより内部の組
成を変更しやすい特性があり、比較的両極の構造に差違
を持たせ易い利点がある。また、固体高分子膜であるた
め、水素極側と酸素極側とのPH値の差違が長時間維持
しやすい利点もある。
【0020】ここで、水素極と酸素極のPH値の差違
は、種々の構成により実現することができる。例えば、
前記電解質層は、水素イオンに対するイオン交換基の濃
度が、前記酸素極との接触領域では前記水素極との接触
領域よりも高い状態で形成された層であるものとするこ
とができる。
【0021】一般に水素イオンはイオン交換基の働きに
よって水素極側から酸素極側に移動する。イオン交換基
の作用に起因して、水素イオン濃度はイオン交換基の濃
度に依存し、イオン交換基が多く存在する領域では水素
イオンが多数存在することが知られている。上記構成の
燃料電池によれば、酸素極との接触領域でイオン交換基
の濃度が高いため、酸素極側の水素イオン濃度を水素極
側よりも向上することができ、起電圧を向上することが
できる。なお、イオン交換基の濃度は両極の相対関係が
上述の条件を満足していればよい。水素極側の濃度を低
減するものとしてもよいし、酸素極側の濃度を増大する
ものとしてもよい。また、両極の濃度差は、目標とする
起電圧に応じて設定することができる。イオン交換基の
濃度差違は、電解質層の膜を形成する際に含有されるイ
オン交換基の量を両極側で差違を持たせて実現すること
もできるし、イオン交換基の濃度が異なる高分子膜を接
合することによって実現することもできる。
【0022】この場合において、さらに具体的には、前
記電解質層は、スルホン酸基を有するパーフルオロカー
ボン重合体からなる水素イオン交換膜で形成され、前記
イオン交換基はスルホン酸基であるものとすることが望
ましい。もちろん、イオン交換基はスルホン酸基に限ら
れるものではなく、リン酸基など種々のイオン交換基を
使用することができる。
【0023】これらは、固体高分子型燃料電池で通常用
いられている構成であり、現時点では、運転効率、耐久
性等の面で優れた固体高分子型燃料電池を形成すること
ができる材料として知られている。これらに本発明を適
用することにより、従来改良されてきた種々の特性を活
かしつつ、更に起電力の向上を図った燃料電池を構成す
ることができる。なお、上述の材料で燃料電池を構成す
る場合、数十μmの厚さの電解質層に対してスルホン酸
基の濃度を1μm以下程度の領域で変動させるだけで効
果が得られ、水素極側と酸素極側のスルホン酸基の濃度
比を1:10程度にすれば20〜50mV程度の起電圧
の向上を図ることができる。もちろん、濃度比は目標と
する起電圧に応じて種々設定可能である。
【0024】また、固体高分子型燃料電池に本発明を適
用する場合の別の構成として、前記電解質層は、前記水
素極との接触領域近傍に前記酸素極との接触領域近傍よ
りも高い濃度で、水素イオンとは異なる種類の陽イオン
を含有して形成された層であるものとすることも好まし
い。
【0025】かかる構成の燃料電池では、水素極側では
陽イオンと水素イオンとの間でクーロン力が斥力として
作用する。この斥力は水素イオンを水素極側から遠ざけ
る作用をもたらす。この結果、上記構成の燃料電池は水
素イオン濃度が水素極側で低くなり、起電圧を向上する
ことができる。上記構成においては、種々の陽イオンを
含有することが可能であり、例えば、ナトリウムイオン
(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン
(Ca+)、銀イオン(Ag+)などを適用することがで
きる。これらのイオンを含有する際には、電極の触媒層
形成時と同様の手法を適用することができ、例えば、上
述の陽イオンを含む塩の溶液を電解質層に含浸させた
後、高温下で負イオンのみを除去する方法を採ることが
できる。
【0026】本発明は、上述の通り、電解質層自体に特
徴を持たせた構成を採る他、電解質層の外部に特徴を持
たせた構成を採ることもできる。即ち、本発明は、水素
イオンを透過する電解質層を挟んで水素極と酸素極とを
備える燃料電池であって、さらに、発電時における前記
電解質層内の水素イオン濃度を、酸素極との接触領域で
は、水素極との接触領域における水素イオン濃度よりも
目標起電圧に応じた所定値以上増大せしめる増大手段を
備える燃料電池であるものとすることもできる。
【0027】かかる燃料電池によれば、増大手段の働き
により両極の水素イオン濃度に差違を持たせることがで
き、起電圧を向上することができる。増大手段は種々の
方法を適用することができ、例えば、電界の作用によっ
て水素イオンを誘因または排斥するものとしてもよい
し、薬品等を用いた電解質層の表面処理等によって水素
イオン濃度に差違を生じさせるものとしてもよい。上記
構成によれば、電解質層自体は従来の構成をそのまま適
用できるため、比較的容易に起電圧の向上効果を得るこ
とができる利点がある。
【0028】電解質層の外部に特徴を持たせた燃料電池
としてより具体的に、前記電解質層は、固体高分子で形
成される水素イオン交換膜であり、前記水素極および酸
素極の少なくとも一方は、前記電解質層に部分的に接触
する構造からなる電極である場合には、前記増大手段
は、該部分的に接触する構造を有する電極の少なくとも
一方において、該電極と前記電解質層とが接する接触部
と、その他の非接触部とで水素イオン導電率に偏りを生
じさせる機構であるものとすることができる。
【0029】水素イオン導電率とは、水素イオンの移動
しやすさを表す指標であり、導電率が高い程、水素イオ
ンに伴う抵抗が小さいことを意味する。上記構成の燃料
電池によれば、電極の接触部と非接触部とで水素イオン
導電率に偏りを持たせることにより、接触部と非接触部
とで水素イオンの分布を偏らせることができる。例え
ば、酸素極側において、接触部では水素イオン導電率を
高くし、非接触部では水素イオン導電率を低くすれば、
酸素極側に移動してきた水素イオンは接触部で密な分布
となる。電極反応は接触部で生じるから、水素イオンの
分布に偏りが生じることは、酸素極の水素イオン濃度を
向上したのと同様の効果をもたらす。逆に、水素局側に
おいて、非接触部では水素イオン導電率を高くし、接触
部では水素イオン導電率を低くすることもできる。この
場合、水素極で発生した水素イオンは、非接触部で密な
分布となる。これは、水素極の水素イオン濃度を低減し
たのと同様の効果をもたらす。上記構成の燃料電池によ
れば、このように接触部と非接触部の水素イオン濃度に
偏りを生じさせることにより、電極間の水素イオン濃度
に差違をもたせたのと同様の効果、即ち起電圧を向上す
る効果を得ることができる。
【0030】接触部と非接触部とで水素イオン導電率に
偏りを生じさせる方法としては、例えば、前記部分的に
接触する構造を有する電極は前記酸素極であり、前記増
大手段は、前記非接触部において、前記電解質層表面に
設けられた撥水層であるものとすることができる。
【0031】一般に水素イオンは水分子と結合したヒド
ラニウムイオンの形で電解質層を移動する。従って、水
分子の存在は、水素イオン導電率に大きく影響する。上
記構成によれば、酸素極の非接触部に撥水層を設けるた
め、水分子を非接触部から遠ざける効果が生じ、非接触
部の水分子数を低減させることができる。非接触部から
遠ざけられた水分子は、接触部に集中する。この結果、
接触部近傍では水分子が多くなるため、水素イオン導電
率が向上し、非接触部では水素イオン導電率が低減す
る。
【0032】なお、上記構成と同じ効果をもたらす構成
として、水素極側では電極との接触部に撥水層を設ける
ものとしてもよい。また、酸素極側の接触部、または水
素極側の非接触部に親水層を設けるものとしてもよい。
これら種々の処理はいずれも適用することができるが、
酸素極側の非接触部において撥水層を設ける上記構成
は、撥水層を比較的容易に形成できる利点がある。つま
り、撥水層は例えばフッ素系の膜を表面に塗布またはコ
ートするなどの方法により容易に施すことができる。ま
た、接触部での電極反応を阻害しないという利点もあ
る。
【0033】以上で説明した本発明の燃料電池におい
て、前記酸素極と前記電解質層との接触領域の面積が、
前記水素極と前記電解質層との接触領域の面積よりも狭
く構成された水素極および酸素極を備えるものとするこ
とも望ましい。
【0034】電極での反応は電極と電解質層との接触領
域で生じる。接触領域の面積が狭い場合には、反応が生
じにくくなる。つまり、電解質層と電極との間での水素
イオンの移動が阻害される。逆に接触領域の面積が広い
場合には、反応が生じやすくなり、電解質層と電極との
間での水素イオンの移動が促進される。上記構成の燃料
電池によれば、酸素極の接触領域の面積が水素極の接触
領域の面積よりも狭いため、酸素極では水素イオンの移
動が阻害され、電解質層の水素イオン濃度が増大する。
逆に水素極では水素イオンの移動が促進され、水素イオ
ン濃度が低下する。この結果、両極の水素イオン濃度に
差が生じ、既に説明した作用に基づいて起電圧を向上す
ることができる。なお、かかる効果は、比較的小さいた
め、上述した種々の技術と併用することが好ましい。
【0035】固体高分子型燃料電池を対象とする場合、
本発明は、上述の燃料電池と主要部を同一にする構成と
して、以下に示す燃料電池用の固体高分子膜の構成を採
ることもできる。即ち、本発明の固体高分子膜は、水素
イオンを透過する電解質層を挟んで水素極と酸素極とを
備える燃料電池の前記電解質層を形成する固体高分子膜
であって、前記電解質層は、水素イオンに対するイオン
交換基を、前記水素極との接触領域における濃度が前記
酸素極との接触領域における濃度よりも低い状態で含有
することを要旨とする。
【0036】また、別の構成として、水素イオンを透過
する電解質層を挟んで水素極と酸素極とを備える燃料電
池の前記電解質層を形成する固体高分子膜であって、前
記電解質層は、前記水素極との接触領域近傍に水素イオ
ンとは異なる種類の陽イオンを含有するものとしてもよ
い。
【0037】これらの固体高分子膜を適用した燃料電池
を構成すれば、先に説明した作用に基づき、水素極側と
酸素極側の水素イオン濃度を偏らせることができ、起電
圧を向上することができる。なお、本発明の固体高分子
膜においても先に燃料電池で説明した種々の付加的要素
を考慮した構成を適用することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】(1)第1実施例:本発明の実施
の形態を実施例に基づき説明する。図2は本実施例の燃
料電池スタック10の外観を表わす斜視図である。燃料
電池スタック10は、図示する通り、セル100を所定
数積層して形成される。セル100は、それぞれ固体高
分子型燃料電池として形成されており、各セルが1V強
の起電圧を生じる。セル100は、セパレータ110、
120で酸素極136、電解質膜132、水素極134
をこの順序に挟んだ構造をなしている。燃料電池スタッ
ク10では、隣接するセル100のセパレータ110、
120はそれぞれ共有されている。セル100の詳細構
造については後述する。
【0039】燃料電池スタック10は、一端からエンド
プレート12、絶縁板16、集電板18、複数のセル1
00、集電板20、絶縁板22、エンドプレート14の
順に積層されて構成される。エンドプレート12、14
は、剛性を確保するため、鋼等の金属によって形成され
ている。集電板18、20は緻密質カーボンや銅板など
ガス不透過な導電性部材によって形成され、絶縁板1
6、22はゴムや樹脂等の絶縁性部材によって形成され
ている。集電板18、20にはそれぞれ出力端子19、
21が設けられており、燃料電池スタック10で生じた
電力を出力可能となっている。
【0040】一方のエンドプレート14には、燃料ガス
供給口35、燃料ガス排出口36、酸化ガス供給口3
3、酸化ガス排出口34、冷却水供給口31、冷却水排
出口32が設けられている。燃料ガス供給口35から燃
料電池スタック10に供給された燃料ガスは、エンドプ
レート12に向かって流れながら各セル100に分配さ
れる。各セル100に配分された燃料ガスは、図中の上
方から下方にセル100内の流路を流れた後、エンドプ
レート14側に流れ、燃料ガス排出口36から排出され
る。酸化ガスも同様に、酸化ガス供給口33から供給さ
れた後、エンドプレート12に向かって流れながら各セ
ル100に分配され、各セル100内の流路を流れた
後、酸化ガス排出口34から排出される。燃料電池スタ
ック10は、このようなガスの流れを実現できるよう内
部で各セル100のガス流路が形成されている。
【0041】燃料電池スタック10の各セル100を構
成する電解質膜132は、セパレータ110、120と
接する周辺領域がシールされている。このシールは、セ
ル100内部から燃料ガスおよび酸化ガスが漏れ出し、
両者が混合するのを防止する役割を果たす。燃料電池ス
タック10は、図示を省略したが、ボルトとナットで積
層方向に所定の押圧力がかかった状態で締結されて保持
される。押圧力を伴って積層状態を保持するためには、
必ずしもボルトとナットを用いる必要はなく、例えばス
タック収納ケースを用いるものとしてもよい。
【0042】図3はセル100の構造を示す斜視図であ
る。セル100は固体高分子型燃料電池として構成され
ている。セル100は、電解質膜132を水素極13
4、酸素極136で挟み込み、さらにその両側をセパレ
ータ110、120で挟んだ構造を有している。図示の
都合上、酸素極136は、電解質膜132に隠れた位置
に存在する。水素極134、酸素極136は、ガス拡散
電極である。セパレータ110、120は水素極13
4、酸素極136と対向する面に複数の凹凸状のリブが
形成されている。セパレータ110、120が、水素極
134、酸素極136をさらに両側から挟み込むことに
よって、水素極134との間に燃料ガス流路112、酸
素極136との間に酸化ガス流路122が形成される。
セパレータ110、120は両面にリブが形成されてお
り、片面は水素極134との間で燃料ガス流路112を
形成し、他面は隣接するセル100が備える酸素極13
6との間で酸化ガス流路122を形成する。このよう
に、セパレータ110、120は、ガス拡散電極との間
でガス流路を形成するとともに、隣接するセル間で燃料
ガスと酸化ガスの流れを分離する役割を果たしている。
【0043】電解質膜132は、固体高分子材料、例え
ばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオ
ン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。
電解質膜132としては、例えばナフィオン膜(デュポ
ン社製)などを適用することができる。電解質膜132
の表面には、触媒としての白金が塗布されている。本実
施例では、触媒としての白金を担持したカーボン粉を有
機溶剤に分散させ、電解質溶液(例えば、Aldric
h Chemical社、Nafion Soluti
on)を適量添加してペースト化した上で、電解質膜1
32上にスクリーン印刷する方法で触媒を塗布した。触
媒層の形成方法は、他にも種々の方法を適用でき、例え
ば、上記触媒を担持したカーボン粉を含有するペースト
を膜成形してシートを作製し、電解質膜132上にプレ
スするものとしてもよい。また、触媒には白金と他の金
属からなる合金を用いることもできる。水素極134お
よび酸素極136は、炭素繊維を織成したカーボンクロ
スにより形成されている。水素極134および酸素極1
36を炭素繊維からなるカーボンペーパまたはカーボン
フエルトにより形成するものとしてもよい。また、上述
の触媒は、ガス拡散電極と電解質膜132との間に介在
しておればよいため、電解質膜132側に触媒を塗布す
る方法に代えて、水素極134および酸素極136の電
解質膜132と接する側に、触媒を塗布するものとして
もよい。
【0044】セパレータ110、120は、ガス不透過
の導電性部材、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過
とした緻密質カーボンにより形成されている。セパレー
タ110、120はその両面に、平行に配置された複数
のリブが形成されている。リブは、必ずしも両面で平行
に形成する必要はなく、面毎に直交するなど種々の角度
で形成することができる。また、リブは燃料ガスおよび
酸化ガスの流路を形成可能な形状であれば、必ずしも平
行な溝状である必要はない。
【0045】セパレータ110、120には、その周辺
部の2カ所に、円形断面の冷却水孔151、152が形
成されている。この冷却水孔151、152は、セル1
00を積層した際に、燃料電池スタック10を積層方向
に貫通する冷却水路を形成する。セパレータ110、1
120の各辺付近には、それぞれの辺に沿う細長い形状
の燃料ガス孔153、154および酸化ガス孔155、
156が形成されている。燃料ガス孔153、154お
よび酸化ガス孔155、156は、セル100を積層す
ることによって燃料電池スタック10を形成した際に、
燃料電池スタック10を積層方向に貫通する燃料ガス流
路112および酸化ガス流路122を形成する。本実施
例では、図3の上方の辺に沿って燃料ガス供給路、下方
の辺に沿って燃料ガス排出路が形成される。また、左側
の辺に沿って酸化ガス供給路、右側の辺に沿って酸化ガ
ス排出路が形成される。
【0046】燃料電池スタック10の燃料ガス供給口3
5は燃料ガス供給路につながっており、燃料ガス排出口
36は燃料ガス排出路につながっている。燃料ガス供給
口35から供給された燃料ガスは、燃料ガス供給路を通
じて各セル100の燃料ガス流路112に流れ込む。そ
して、水素極134で所定の反応に供された後、燃料ガ
ス排出路から燃料ガス排出口36に流出する。酸化ガス
も同様の経路で流れる。燃料電池スタック10の酸化ガ
ス供給口33は酸化ガス供給路につながっており、酸化
ガス排出口34は酸化ガス排出路につながっている。酸
化ガス供給口33から供給された酸化ガスは、酸化ガス
供給路を通じて各セル100の酸化ガス流路122に流
れ込む。そして、酸素極136で所定の反応に供された
後、酸化ガス排出路から酸化ガス排出口34に流出す
る。
【0047】燃料電池スタック10では、5つのセル1
00ごとに1枚の割合で、冷却セパレータ140が設け
られている。冷却セパレータ140は、セル100を冷
却する冷却水路を形成するためのセパレータである。冷
却セパレータ140には、冷却水孔を連絡する葛折状の
冷却水溝142が形成されている。セパレータ110、
120のうち冷却セパレータ140と対向する面は、リ
ブのないフラットな面となっており、冷却セパレータ1
40に設けられた溝はセパレータ110、120との間
で冷却水路を形成する。なお、セパレータ110、12
0および冷却セパレータ140は、緻密質カーボンの
他、導電性を有する種々の材料によって形成することが
できる。例えば、剛性および伝熱性を重視して銅合金や
アルミニウム合金などの金属で形成してもよい。また、
冷却セパレータ140を設ける割合は、燃料電池スタッ
ク10の要求出力に応じたセル100の発熱量、冷却水
の温度および流量などの条件に応じて冷却に適した範囲
で設定することができる。
【0048】本実施例は、各セル100を構成する電解
質膜132に特徴がある。以下、電解質膜132の構成
について詳細に説明する。図4はセル100の構造を示
す拡大断面図である。既に説明した通り、セル100は
電解質膜132を水素極134、酸素極136、セパレ
ータ110、120で挟んで構成されている。ここでは
図示および理解の容易のため、燃料ガス流路112およ
び酸化ガス流路122がともに紙面に垂直な方向に形成
されている場合を示した。
【0049】既に説明した通り、電解質膜132は、フ
ッ素系スルホン酸高分子樹脂で作成されており、スルホ
ン酸基をイオン交換基として含有している。電解質膜1
32の厚さTHは、数十μmである。本実施例の燃料電
池では、電解質膜132中のスルホン酸基の濃度が膜厚
方向に異なっている。
【0050】図5は電解質膜132内のスルホン酸基の
分布を示すグラフである。実線が本実施例の分布に相当
する。図4に示す通り、水素極134側から酸素極13
6側に向かって膜厚方向の位置を示す座標軸、膜内深さ
を定義し、各位置におけるスルホン酸基の濃度を示した
ものである。縦軸は、酸素極136との接触面近傍にお
ける電解質膜132内のスルホン酸基の濃度(以下、基
準濃度と呼ぶ)に対する割合を示している。
【0051】図5の実線に示す通り、本実施例の電解質
膜132中のスルホン酸基の濃度は、水素極134と接
する表面近傍の厚さth1の領域で低くなっている。具
体的には、基準濃度の1/10の濃度となっている。厚
さth1は約1μm程度である。スルホン酸基の濃度
は、膜内深さth1〜THまでの範囲では基準濃度とな
っている。本実施例では、スルホン酸基の含有量が異な
る2種類のフッ素系スルホン酸高分子樹脂膜を厚さth
1の位置で接合することにより電解質膜132を形成し
た。
【0052】電解質膜132の形成方法について更に詳
細に説明する。フッ素系スルホン酸高分子樹脂の膜は、
そのモノマーつまり、テトラフルオロエチレンとフルオ
ロスルホニル基を含んだパーフルオロビニルエーテルの
共重合および加水分解を経て形成される。かかる過程に
おいて上記モノマーの量や重合度等を変えることで膜内
のスルホン酸基の濃度を変更することができる。
【0053】所定の濃度のスルホン酸基を含んだイオン
交換膜を形成するには、その濃度に応じたモノマーを用
意し、両者を混合・攪拌する。その後、テトラフルオロ
エチレンとパーフルオロビニルエーテルとを共重合させ
て、カレンダーロール法などの適宜な薄膜成型法により
薄膜を形成し、加水分解処理を施す。かかる手法によ
り、水素極134側のスルホン酸基濃度に対応するイオ
ン交換膜と酸素極136側のスルホン酸基濃度に対応す
るイオン交換膜とを形成する。
【0054】こうして別々に形成されたイオン交換膜の
間に上述のモノマーの混合溶液を塗布してホットプレス
する。ホットプレスで混合溶液の共重合を進行させるこ
とによって、上述の2種類のイオン交換膜を接合し、本
実施例の電解質膜132を形成する。なお、電解質膜1
32の生成方法は、必ずしもこの手法に限定されるもの
ではない。
【0055】本実施例の燃料電池における作動の説明と
ともに、水素極134側でスルホン酸基の濃度を低下さ
せたことによる効果を説明する。燃料電池スタック10
に燃料ガスが供給されると、燃料ガスは図4に示す燃料
ガス流路112を流れ、水素極134内に拡散する。燃
料ガスは水素リッチなガスである。水素極134内に燃
料ガスが拡散すると、水素極134と電解質膜132と
の境界に備えられた触媒の働きによって、燃料ガス中の
水素分子は、水素イオンと電子に分解する。この反応が
従来技術において示した式(1)の反応である。こうし
て生じた電子は、水素極134側のセパレータ110、
120を流れ、燃料電池スタック10の集電極から外部
に流出する。水素イオンは電解質膜132内を酸素極1
36側に移動する。
【0056】一方、燃料電池スタック10に酸化ガスが
供給されると、酸化ガスは図4に示す酸化ガス流路12
2を流れ、酸素極136内に拡散する。酸化ガスは酸素
を含む気体である。酸素極136内に酸化ガスが拡散す
ると、酸素極136と電解質膜132との境界に備えら
れた触媒の働きによって、電解質膜132内を移動して
きた水素イオンと酸素とが結びつき、電子を取り込んで
水を生成する。この反応が従来技術において示した式
(2)の反応である。反応に必要な電子は燃料電池スタ
ック10の集電極、酸素極136側のセパレータ11
0、120を通じて外部から供給される。従って、水素
極134側と酸素極136側とを接続する回路が形成さ
れていれば、電子の放出と供給が継続的に行われ、燃料
ガスおよび酸化ガスが供給される間、両極の間に起電圧
を生じ電流が流れる。
【0057】かかる反応において生じる起電圧は、水素
極134および酸素極136で上述の反応が生じる際の
電位差に等しい。一般に化学反応においては、反応前後
の分子、イオン等の存在状態に反応に応じた一定のエネ
ルギ差がある。このエネルギ差が各極の電位を決定す
る。各極で生じる全体のエネルギ差は、反応した分子、
イオン等の数量に比例する。一般に反応(1)(2)の
ような可逆反応においては、平衡状態における各分子、
イオンの濃度は、反応前後で生成される物質の濃度に応
じて定まることが知られている。反応(1)(2)にお
いては、水素イオンの濃度が決定されれば各極の平衡状
態が定まり、各極の電位が決定される。
【0058】燃料電池の各極で生じる反応における電位
は、ネルンストの式と呼ばれる理論式で求められること
が知られている。ネルンストの式とは、先に示した式
(3)(4)であり、この式によれば、各極の電位は水
素イオン濃度に比例する。水素イオン濃度が低くなる
程、電位は低下する。水素イオン濃度をPH値で表せ
ば、PH値が大きくなるほど電位が低下することにな
る。PH値と各極電位との関係は、図1に示した通りで
ある。両極のPH値が同じである限り、起電圧(図1中
の電圧V1に相当)は一定であり、理論的には起電圧は
1.23Vとなる。
【0059】ここで、本実施例の電解質膜132は、水
素極134側のスルホン酸基の濃度が酸素極136側よ
りも低い。水素イオンはスルホン酸基の働きによって電
解質膜132内を移動することが知られている。スルホ
ン酸基にはこのような働きがあるため、電解質膜132
内の水素イオン濃度はスルホン酸基の濃度に依存し、ス
ルホン酸基が多く存在する領域では水素イオンが多数存
在することが知られている。本実施例の燃料電池では、
水素極134との接触領域でイオン交換基の濃度が低い
ため、水素極134側の水素イオン濃度が酸素極136
側よりも低くなる。つまり、水素極134側ではPH値
が大きくなる。図1に即して説明すれば、酸素極136
側のPH値が図中のPHoであるとすれば、水素極13
4側のPH値は図中のPHhに相当する状態となる。こ
のときセル100の起電圧は、両極の電位差V2に相当
する値となる。従って、本実施例の燃料電池によれば、
水素極134のPH値を酸素極136よりも高めること
により、セル100単体の起電圧を増大することができ
る。
【0060】電極での反応の平衡状態は、電極と電解質
膜132との接触部における水素イオン濃度によって定
まる。従って、図5に示した通り、水素極134側のご
く薄い領域において水素イオン濃度を低下させるだけで
起電圧の増大効果を十分に得ることができる。逆に図4
中の膜内深さth1を増大させても、起電圧の向上には
ほとんど寄与しない。但し、水素極134から膜内深さ
th1以上の領域で必ずしもスルホン酸基の濃度を基準
濃度に一致させる必要はない。酸素極136側に近づく
につれてスルホン酸基の濃度を徐々に増大するものとし
てもよいし、段階的に増大するものとしてもよい。
【0061】確認のために記述するが、両極でPH値が
異なることは、各極で反応に供される水素イオンの数に
差があることを意味するものではない。先に示した反応
式(1)(2)に従って、反応が行われ電流が流れる以
上、各極での反応に供される水素イオンの数は同等であ
る。即ち、水素極134での反応によりA個の水素イオ
ンが生じると、このA個の水素イオンが電解質膜132
中を移動し、酸素極136での反応に供される。両極で
PH値が異なる場合、水素極134での反応は周囲に水
素イオンが少ない環境下で進み、酸素極136での反応
は周囲に水素イオンが多い環境下で進むことを意味して
いる。
【0062】起電圧の向上効果は、水素極134のPH
値が酸素極136に対して相対的に低いことによって得
られる。上述の例では、水素極134近傍でスルホン酸
基の濃度を低減する場合を示した。これに対し、酸素極
136近傍でスルホン酸基の濃度を増大するものとして
もよい。かかる場合のスルホン酸基の分布を図5中に破
線で示す。図示する通り、酸素極136側から厚さth
2の領域では、その他の領域の10倍程度にスルホン酸
基の濃度を高めるものとしてもよい。
【0063】水素極134と酸素極136とのPH値の
差違は、目標とする起電圧に応じて設定することができ
る。本実施例で提示した条件、即ち、水素極134のス
ルホン酸基濃度が酸素極136の濃度の1/10という
条件では、水素極134の電位が20〜50mV増大す
ることが確認された。目標とする起電圧が大きい場合に
は、それに応じて両極のスルホン酸基の濃度差を増大す
ればよい。但し、フッ素系スルホン酸高分子樹脂の場
合、一般にスルホン酸基の濃度を増大すると、機械的な
強度の低下に起因して燃料電池の耐久性の低下を招くこ
とが知られている。また、逆にスルホン酸基の濃度を低
減すると、水素イオンの移動が阻害されるため、内部抵
抗が増大することが知られている。従って、両極のスル
ホン酸基の濃度は、目標起電圧、機械的強度、および内
部抵抗を総合的に勘案して適切な値を設定することが望
ましい。なお、本実施例の条件では、水素極134側の
スルホン酸基の濃度を低減することにより内部抵抗の若
干の増大が生じるものの、100〜200mA/cm2
程度の電流密度で電流を流した場合、かかる損失を上回
り、10〜30mVの起電圧の向上が測定された。
【0064】以上で説明した本実施例の燃料電池によれ
ば、セル100単体の起電圧を増大させることができ
る。この結果、燃料電池スタック10を構成する際に、
要求起電圧を実現するために必要となるセル100数を
低減することができ、燃料電池スタック10の小型化、
製造コストの低減を図ることができる。
【0065】(2)第2実施例:次に、第2実施例とし
ての燃料電池について説明する。第2実施例の燃料電池
スタック10の構造は第1実施例と同様である。第2実
施例では、セル100の構成、特に電解質膜132Aの
構造が第1実施例と相違する。
【0066】図6は第2実施例におけるセル100の構
造を示す拡大断面図である。第1実施例と同様、セル1
00は電解質膜132Aを水素極134A、酸素極13
6A、セパレータ110A、120Aで挟んで構成され
ている。ここでは図示および理解の容易のため、燃料ガ
ス流路112Aおよび酸化ガス流路122Aがともに紙
面に垂直な方向に形成されている場合を示した。電解質
膜132Aが、フッ素系スルホン酸高分子樹脂で作成さ
れている点、スルホン酸基をイオン交換基として含有し
ている点、電解質膜132Aの厚さTHは数十μmであ
る点も第1実施例と同様である。但し、第2実施例の電
解質膜132Aは、電解質膜132A中のスルホン酸基
の濃度は均一である点、水素極134A近傍の領域にナ
トリウムイオンを含有している点で第1実施例と相違す
る。
【0067】図7は第2実施例の電解質膜132Aの拡
大断面図である。図示する通り、第2実施例の電解質膜
132Aは、水素極134Aから膜内深さth3の領域
にナトリウムイオンを含有している。厚さth3は約1
ミクロンである。本実施例では、ナトリウムイオンを含
有した厚さth3のイオン交換膜と、ナトリウムイオン
を含有しないイオン交換膜とを接合することで電解質膜
132Aを形成した。
【0068】ナトリウムイオンを含有したイオン交換膜
は種々の方法により形成することができる。本実施例で
は、触媒塗布で用いられるの類似の方法を適用した。硝
酸ナトリウムの溶液を用意し、かかる溶液も混合してフ
ッ素系スルホン酸高分子樹脂を形成する。この膜を加熱
処理して硝酸イオンを除去すると、膜内にはナトリウム
イオンが残存する。ナトリウムイオンを含有したイオン
交換膜をこのように形成した後、第1実施例と同様の方
法によってナトリウムイオンを含まないイオン交換膜と
接合することで第2実施例の電解質膜132Aを形成す
ることができる。もちろん、電解質膜132Aの形成
は、かかる手法に限らない。
【0069】第2実施例の電解質膜132Aによる作用
を説明する。セル100での反応は第1実施例と同じで
ある。水素極134Aで生じた水素イオンは電解質膜1
32A内を酸素極136Aに向かって移動する。ここ
で、第2実施例では、図7に示す通り、水素イオンとナ
トリウムイオンとの間で電気的な斥力が働く。かかる斥
力の作用によって電解質膜132A内の水素イオンは、
酸素極136A側に偏って分布する。かかる偏りに起因
して、水素極134Aおよび酸素極136Aにおける水
素イオン濃度には差違が生じる。つまり、水素極134
A側では水素イオン濃度が低下し、酸素極136A側で
は水素イオン濃度が増大する。両極で水素イオン濃度に
差違がある場合には、第1実施例で説明したのと同様の
作用により、起電圧が増大する。
【0070】上述の例では、ナトリウムイオンを含有す
る場合を例示した。水素極134A側に加える陽イオン
は種々選択可能であり、カリウムイオン、カルシウムイ
オン、その他銀イオンなどの金属の陽イオン等を用いる
ことができる。また、その添加量は目標起電圧に応じて
適宜設定すればよい。
【0071】以上で説明した第2実施例の燃料電池によ
れば、第1実施例と同様、セル100単体の起電圧を増
大することができる。水素極134A側に加える陽イオ
ンの種類および量にも依るが、水素極134A側の電位
を80〜100mV程度増大することができる。また、
第2実施例の燃料電池では、スルホン酸基の濃度に差違
をもたセル100ことなく起電圧を向上することができ
る。従って、電解質膜132Aの機械的強度の低下や内
部抵抗の増大などの弊害を回避しつつ起電圧を向上する
ことができる。
【0072】(3)第3実施例:次に、第3実施例とし
ての燃料電池について説明する。第3実施例の燃料電池
スタック10の構造は第1実施例と同様である。第3実
施例では、セル100の構成、特に電解質膜132Bの
構造および電極の構造が第1実施例と相違する。
【0073】図8は第3実施例におけるセル100の構
造を示す拡大断面図である。第1実施例と同様、セル1
00は電解質膜132Bを水素極134B、酸素極13
6B、セパレータ110B、120Bで挟んで構成され
ている。ここでは図示および理解の容易のため、燃料ガ
ス流路112Bおよび酸化ガス流路122Bがともに紙
面に垂直な方向に形成されている場合を示した。電解質
膜132Bが、フッ素系スルホン酸高分子樹脂で作成さ
れている点、スルホン酸基をイオン交換基として含有し
ている点、電解質膜132Bの厚さTHは数十μmであ
る点も第1実施例と同様である。
【0074】第1実施例と相違し、第3実施例の電極
は、セパレータ110B、120Bの凸部に設けられて
いる。第1実施例では、電極と電解質膜132Bとが全
面に亘って接触するように構成されていた。これに対
し、第3実施例では、電極と電解質膜132Bとはセパ
レータ110B、120Bの凸部において部分的に接触
する。これは、水素極134Bおよび酸素極136Bと
もに同様である。また、触媒も電極と電解質膜132B
との接触部にのみ設けられている。燃料ガス流路112
Bおよび酸化ガス流路122Bは第1実施例と同様の構
成である。従って、電解質膜132Bは非接触部でも燃
料ガスおよび酸化ガスにさらされる。しかしながら、非
接触部には触媒が存在しないため、反応は生じない。各
極での反応は、電解質膜132Bと部分的に接触するそ
れぞれの電極部で生じる。
【0075】また、第3実施例では、セパレータ110
B、120Bの形状が水素極側と酸素極側とで相違す
る。図示する通り、水素極側は酸素極側よりも凸部の数
が多く、また各凸部の面積も大きい。この結果、電極が
電解質膜132Bと接触する面積も水素極134Bの方
が酸素極136Bよりも大きい。
【0076】第3実施例では、電解質膜132Bの構造
も以下の点で第1実施例と相違する。第1に水素極13
4Bとの接触領域近傍には第2実施例と同様ナトリウム
イオンが旦持されている。図8中の黒い点がナトリウム
イオンを意味する。ここでは、水素極134B近傍に局
所的にナトリウムイオンを旦持する場合を図示した。第
2実施例と同様、層状にナトリウムイオンを旦持する領
域を設けるものとしてもよい。
【0077】第2に酸素極136Bとの接触領域近傍で
はスルホン酸基の濃度を高めた。また、酸素極136B
との接触領域以外の領域(非接触領域)ではスルホン酸
基の濃度を低減した。スルホン酸基の濃度の偏りについ
ては、これらのうちいずれか一方のみを適用するものと
してもよい。つまり、非接触領域のスルホン酸基濃度は
他の領域と同等としつつ、電解質膜132B中の接触領
域近傍でスルホン酸基の濃度を増大するものとしてもよ
い。逆に、接触領域近傍のスルホン酸基の濃度を他の領
域と同等としつつ、非接触領域のスルホン酸基の濃度を
低減するものとしてもよい。
【0078】第3に酸素極136B側の非接触領域の表
面に撥水層が設けられている。撥水層はフルオロシリコ
ンの膜を表面に塗布して設けられる。撥水層は厚さ数百
nm〜1μm程度の薄層である。または、これらの膜を
表面からコートするものとしてもよい。撥水層は、フル
オロシリコンに限らず、フッ素系の膜、その他種々の材
料により形成することができる。
【0079】第3実施例の燃料電池の作用について説明
する。第3実施例のセル100は、水素極134B側に
陽イオンが旦持されているため、第2実施例と同様の作
用により、起電圧を向上することができる。また、酸素
極側のスルホン酸基の濃度が電極との接触領域近傍で非
接触領域よりも相対的に高くなっている。従って、酸素
極側に移動してきた水素イオンは接触領域と非接触領域
とで偏って分布し、接触領域近傍では水素イオン濃度が
高くなる。この結果、第1実施例と同様の作用により、
起電圧が向上する。
【0080】第3実施例のセル100は撥水層も起電圧
の向上をもたらす。図9は撥水層の作用を示す説明図で
ある。酸素極136B近傍を拡大して示した。撥水層の
働きによって電解質膜132B中の水分子は非接触部か
ら遠ざけられ、結果として接触部近傍に水分子が偏って
分布する。一般に電解質膜132B内で、水素イオンは
水分子と結合したヒドラニウムイオン、即ちH+(xH2
O)の形で移動することが知られている。従って、水分
子が多く存在する酸素極136B近傍では図9に示す通
り、酸素極136B側に移動してきた水素イオンが多く
存在するようになり、水素イオン濃度が向上する。この
結果、第1実施例に示したのと同様の作用によりセル1
00の起電圧が向上する。
【0081】第3実施例のセル100は水素極134B
と酸素極136Bの接触面積の相違も起電圧の向上効果
をもたらす。既に説明した通り、第3実施例のセル10
0は水素極134Bの接触面積が酸素極136Bよりも
大きい。本実施例では酸素極136Bに対して水素極1
34Bは約5倍程度の接触面積を有している。電極と電
解質膜132Bとの接触抵抗は、両者の接触面積にほぼ
比例する。従って、水素極134Bの接触面積を大きく
すると、水素極134Bから電解質膜132Bへの水素
イオンの移動が促進される。これは、電極から電解質膜
132Bに水素イオンが移動しやすくなるとともに、電
極で生じた水素イオンは電解質膜132B内に速やかに
拡散されることを意味する。逆に電解質膜132Bから
酸素極136Bへの水素イオンの移動は抑制される。こ
れは、電解質膜132Bの水素イオンが酸素極136B
近傍に集中することを意味する。この結果、水素極13
4Bと酸素極136Bとの間で水素イオン濃度に偏りが
生じる。水素極134B側では水素イオン濃度が低減
し、酸素極136B側では水素イオン濃度が向上する。
従って、第1実施例で説明したのと同様の作用により、
起電圧が向上する。
【0082】なお、接触部の面積比はかかる値に限られ
ず、2:1〜10:1程度の範囲で種々設定することが
できる。接触部の面積は、上述の作用による起電圧向上
の目標値、セパレータ110B、120Bおよび電極の
機械的強度などを考慮して適切な値を設定することがで
きる。
【0083】以上の種々の作用により、第3実施例のセ
ル100は、起電圧を100〜150mV程度向上する
ことができる。なお、第3実施例のセル100は、起電
圧の向上を招く種々の特徴を有しているが、これらは必
ずしも同時に適用される必要はなく、個別に適用するこ
とも可能である。例えば、第3実施例のセル100で
は、水素極134B側にナトリウムイオンを旦持するも
のとした。これに対し、ナトリウムイオンの旦持を省略
することもできる。この場合には、90〜130mV程
度の起電圧の向上効果を得ることができる。また、陽イ
オンの旦持を省略することにより、電解質膜132Bは
水素極134B側で均一な組成とすることができるた
め、燃料電池の構造を簡易化することができるととも
に、概ね10000時間以上の長時間に亘って安定して
運転することが可能となる。
【0084】また、第3実施例では、酸素極136Bと
水素極134Bとの接触部の面積に差違を持たせている
が、両者を均等な面積として構成しても構わない。酸素
極側において、接触部と非接触部とでスルホン酸基の濃
度に偏りを持たせているが、均等な濃度としてもよい。
この場合において、水素極134Bと酸素極136Bと
のスルホン酸基の濃度を同等にしてもよい。このように
第3実施例で説明した種々の特徴は、目標とする起電圧
や製造コストの増大等を総合的に勘案して、それぞれ個
別に適用することができる。
【0085】第3実施例では、酸素極側の非接触部に撥
水処理を施すものとした。撥水層は比較的容易にかつ精
度よく形成することができるため、第3実施例のセル1
00によれば、比較的容易に起電圧を向上することがで
きる利点がある。また、電解質膜132Bを形成した後
に別途処理を施すことができるため、電解質膜132B
の形成時に複雑な工程を必要としない利点もある。上述
の通り、第3実施例のセル100は、起電圧の向上を招
く種々の特徴を有しているが、これらは必ずしも同時に
適用される必要はなく、個別に適用することも可能であ
るため、撥水層を省略するものとしてもよい。
【0086】また、撥水層を同等の効果を奏する別の構
成に置換することもできる。第3実施例では、撥水層
は、水分子の分布を偏らせる目的で設けられている。従
って、かかる撥水層に代えて同様の作用を施す種々の処
理を施すものとしてもよい。例えば、酸素極136Bと
電解質膜132Bとの接触部に親水処理を施すものとし
てもよい。水素極側の接触部に撥水処理を施すものとし
てもよい。水素極側の非接触部に親水処理を施すものと
してもよい。もちろん、これらを組み合わせて施すもの
としてもよい。これら種々の処理はいずれも適用するこ
とができるが、酸素極側の非接触部において撥水層を設
ける上記構成は、接触部での電極反応を阻害しないとい
う利点がある。
【0087】以上ではそれぞれ固体高分子型燃料電池に
ついて実施例を例示した。本発明は固体高分子型燃料電
池に限らず、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電
池、固体電解質型燃料電池、アルカリ型燃料電池など種
々の形式の燃料電池に適用することが可能である。例え
ば、リン酸型燃料電池のように電解質が溶液の場合に
は、電解質中に多孔質膜を設けることで両極の水素イオ
ン濃度を偏らせることができる。また、本発明を固体高
分子型燃料電池として構成する際、上記実施例ではスル
ホン酸基をイオン交換基として適用するフッ素系樹脂を
例示したが、イオン交換基および膜の成分はこれに限ら
ず、リン酸基など種々適用可能である。また、本発明
は、固体高分子膜型燃料電池用の固体高分子膜自体とし
て構成するものとしてもよい。
【0088】以上、本発明の種々の実施例について説明
してきたが、本発明はこれらに限定されるものではな
く、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の形態による実
施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】PH値と水素極および酸素極136の平衡電位
との関係を示すグラフである。
【図2】本実施例の燃料電池スタック10の外観を表わ
す斜視図である。
【図3】セル100の構造を示す斜視図である。
【図4】セル100の構造を示す拡大断面図である。
【図5】電解質膜132内のスルホン酸基の分布を示す
グラフである。
【図6】第2実施例におけるセル100の構造を示す拡
大断面図である。
【図7】第2実施例の電解質膜132Aの拡大断面図で
ある。
【図8】第3実施例におけるセル100の構造を示す拡
大断面図である。
【図9】撥水層の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
10…燃料電池スタック 12、14…エンドプレート 16、22…絶縁板 18、20…集電板 19、21…出力端子 20…集電板 31…冷却水供給口 32…冷却水排出口 33…酸化ガス供給口 34…酸化ガス排出口 35…燃料ガス供給口 36…燃料ガス排出口 100…セル 110、110A、110B…セパレータ 120、120A、120B…セパレータ 112、112A、112B…燃料ガス流路 122、122A、122B…酸化ガス流路 132、132A、132B…電解質膜 134、134A、134B…水素極 136、136A、136B…酸素極 140…冷却セパレータ 142…冷却水溝 151、152…冷却水孔 153、154…燃料ガス孔 155、156…酸化ガス孔

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水素イオンを透過する電解質層を挟んで
    水素極と酸素極とを備える燃料電池であって、 前記電解質層は、発電時において酸素極との接触領域に
    おける水素イオン濃度が、水素極との接触領域における
    水素イオン濃度に対して、目標起電圧に応じた所定値以
    上高い状態となる層である燃料電池。
  2. 【請求項2】 前記電解質層は、固体高分子で形成され
    る水素イオン交換膜である請求項1記載の燃料電池。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の燃料電池であって、 前記電解質層は、水素イオンに対するイオン交換基の濃
    度が、前記酸素極との接触領域では前記水素極との接触
    領域よりも高い状態で形成された層である燃料電池。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の燃料電池であって、 前記電解質層は、スルホン酸基を有するパーフルオロカ
    ーボン重合体からなる水素イオン交換膜で形成され、前
    記イオン交換基はスルホン酸基である燃料電池。
  5. 【請求項5】 請求項2記載の燃料電池であって、 前記電解質層は、前記水素極との接触領域近傍に前記酸
    素極との接触領域近傍よりも高い濃度で、水素イオンと
    は異なる種類の陽イオンを含有して形成された層である
    燃料電池。
  6. 【請求項6】 水素イオンを透過する電解質層を挟んで
    水素極と酸素極とを備える燃料電池であって、 さらに、発電時における前記電解質層内の水素イオン濃
    度を、酸素極との接触領域では、水素極との接触領域に
    おける水素イオン濃度よりも目標起電圧に応じた所定値
    以上増大せしめる増大手段を備える燃料電池。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の燃料電池であって、 前記電解質層は、固体高分子で形成される水素イオン交
    換膜であり、 前記水素極および酸素極の少なくとも一方は、前記電解
    質層に部分的に接触する構造からなる電極であり、 前記増大手段は、該部分的に接触する構造を有する電極
    の少なくとも一方において、該電極と前記電解質層とが
    接する接触部と、その他の非接触部とで水素イオン導電
    率に偏りを生じさせる機構である燃料電池。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の燃料電池であって、 前記部分的に接触する構造を有する電極は前記酸素極で
    あり、 前記増大手段は、前記非接触部において、前記電解質層
    表面に設けられた撥水層である燃料電池。
  9. 【請求項9】 請求項1または請求項6記載の燃料電池
    であって、 前記酸素極と前記電解質層との接触領域の面積が、前記
    水素極と前記電解質層との接触領域の面積よりも狭く構
    成された水素極および酸素極を備える燃料電池。
  10. 【請求項10】 水素イオンを透過する電解質層を挟ん
    で水素極と酸素極とを備える燃料電池の前記電解質層を
    形成する固体高分子膜であって、 前記電解質層は、水素イオンに対するイオン交換基を、
    前記水素極との接触領域における濃度が前記酸素極との
    接触領域における濃度よりも低い状態で含有する固体高
    分子膜。
  11. 【請求項11】 水素イオンを透過する電解質層を挟ん
    で水素極と酸素極とを備える燃料電池の前記電解質層を
    形成する固体高分子膜であって、 前記電解質層は、前記水素極との接触領域近傍に水素イ
    オンとは異なる種類の陽イオンを含有する固体高分子
    膜。
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