【発明の詳細な説明】
胃炎、逆流食道炎、十二指腸炎、消化不良および潰瘍の治療用調合薬品
発明の背景
十二指腸潰瘍および胃潰瘍、胃食道逆流疾患(GERD)及び一般の胃炎は、
30年以上の期間にわたって悪化と緩和を繰り返す慢性病である。H2受容体拮
抗物質は1976年頃に紹介され、公知の副作用を別にして、広く許容されてお
り、潰瘍の治療に関してかなりの効果をあげている。
さらに最近では、オメプラゾール((ロセックR)(Omeprazol)(LosecR))の
ような酸ポンプ阻害体が、胃酸の分泌をかなりの程度まで抑制し、十二指腸潰瘍
と胃潰瘍に迅速に作用してより高いパーセンテージで治癒させることが知られて
きた。主要な問題は、一旦十二指腸潰瘍と胃潰瘍が治癒しても、十二指腸潰瘍と
胃潰瘍が殆ど改善されている状態のGERDや、胸焼けを伴うGERDが再発す
ることである。消化性潰瘍は、治療を停止すると、1年以内に約80%、2年以
内には100%の確率で再発することが予想されている。
GERDのこの高い再発率は、恐らく、病原性カンピロバクター菌(ヘリコバ
クター・ピロリ菌(Helicobacter Pylori))が食道及び胃の粘膜に集落を形成
することによるものであろう。すでに80年代に幾つかの研究がなされ、十二指
腸潰瘍と胃潰瘍の再発の確率は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染を根絶すれば
劇的に減少することが示されている。BellとPower(Scand.J Gastroent.19
93年;196:7−11)は、8つの研究論文のデータを要約し、ヘリコバク
ター・ピロリ菌を根絶すると(即ち治療後6−2ヶ月間菌が検出されなければ)
十二指腸潰瘍の再発率は3%に減少するが、この菌を保有している十二指腸潰瘍
患者の場合の再発率は65%に達することを示している。
実際に、十二指腸潰瘍患者は、HP(ヘリコバクター・ピロリ菌)の
感染に関し全員が陽性を示しており、また、胃潰瘍患者の約70%は、HPの存
在を示している。しかしながら、最近の幾つかの研究によれば、HPの根絶は十
二指腸潰瘍と胃潰瘍の再発を減少させる必須条件である。
Graham他(Am.Intern.Med.1992年;116:705−708)は、HP
が陽性の胃潰瘍患者26人を無作為に選び、ラニチジン(Ranitidine)だけか又は
三重投薬治療(テトラサイクリン(tetracycline)、メトロニダゾール(Metronida
zole)及び次サルチル酸ビスマス(bismuth subsalicylate))にラニチジンを加え
て摂取させた。1年間の追跡治療の後、潰瘍の再発率はラニチジンのみで治療し
た患者の場合74%で、ラニチジンと三重投薬で治療した患者の場合は僅か13
%であった。
最近のドイツの複数の胃潰瘍研究センターでなされた研究では、130人の患
者を無作為に選び、オメプラゾールを毎日20mg摂取させる治療、又は次サルチ
ル酸ビスマス600mgを1日3回8週間、アモキシシリンR500mg毎日2回、
チニダゾールR(TinidazoleR)1gを毎日1−1
他、J.Med.Sci.1992年;161:10:30)。6ヶ月後における潰瘍の
再発率は、治療後にHPが陰性と成った患者では僅か3%であったのに対し、H
Pが陽性のままであった患者の場合は33%に達した。かよう、ビスマス塩はH
Pを根絶させるのに有効であり、また食道と胃の粘膜に対し治療効果があり、G
ERDの臨床症状を長期的に改善することが判明している。
最も有名なビスマス製剤デノールR(De NolR)はペプチドと結合した次クエン
酸ビスマスより成り、食道と胃の粘膜を被覆するコロイド状の溶液を形成してH
Pを根絶し、粘膜を治癒させる。しかしながら、GERD発病の原因となる因子
としては、恐らく他の因子が含まれている。
最も重要な因子の1つは、下部食道括約筋LESの収縮能力の低下であり、そ
のために胃袋の高酸性内容物が食道下部に逆流する。食道の粘膜は、胃液の影響
を受けて刺激され(胸焼けとして自覚される)、逆流の持続反復により最後には
潰瘍が発生する。
胸焼け及び逆流吐出しを改善するために、アルギン製剤ガビスコーンR(Gavis
coneR)が長年使用されている。このガビスコーンRは、重炭酸ナトリウムとアル
ギン酸の組み合わせより成り、胃の中で傘状の特殊な泡を形成して胃の内容物が
食道に入るのを阻止する。同時に、ガビスコーンRは、酸性胃液を緩衝し、比較
的長時間胃中に留まる。
発明の要約
本発明の目的は、胃炎、逆流食道炎、十二指腸炎、消化不良及び潰瘍の治療に
用いる新調合薬品を提供することである。この調合薬品は、ヘリコバクター・ピ
ロリ菌(HP)のようなカンピロバクター菌を根絶し、胃の内容物の逆流を能動
的に防止するものである。また、この調合薬品は、旅行者の下痢及び他の種類の
細菌全腸炎の様な消化管の他の感染症の治療と予防をするものである。
本発明の目的は、本発明によるクエン酸ビスマスとアルギン酸の混合物と反応
生成物、特にアルギン酸ビスマスを含有する調合薬により達成された。アルギン
酸とビスマスの組合わせは、粘膜の保護とHPのようなカンピロバクター菌の根
絶の両方を可能にする。
また、本発明によるこの調合薬品は、高率で安定した根絶率を得るために1つ
又は複数の抗生物質を含有している。かような抗生物質は、アモキシシリンR(A
moxicillinR)及び/又はメトロニダゾールが考えられる。
この調合薬品は、例えば重炭酸ナトリウムのような、胃中の酸環境内において
酸性胃液に緩衝効果を与えるアルギン酸を同時に泡立てる作用物質をさらに含む
ことが好ましい。
発明の説明
この発明によるアルギン酸ビスマス調合薬品は、吸収速度が遅く血漿中のビス
マス濃度の増加も小さいので、既知のビスマス調合薬品より毒性が低い。このビ
スマスイオンはアルギン酸と堅固に結合しており、吸
収が容易な他のビスマス調合薬品について医学文献に報告されているような腎毒
性作用又は全身作用を阻止又は少なくとも減少させる。このビスマスは、局部的
に作用するが、消化管で吸収されずに通過する。
本発明によるこのアルギン酸ビスマス調合薬品は、クエン酸アンモニウムビス
マス(K,NH4)5Bi6(OH)11(C6H5O7)または次クエン酸アンモニウムビスマスをアル
ギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム及び/又はアルギン酸カルシウムと混合
することにより調合出来る。また胃酸環境の中和と泡立て効果とを高めるために
重炭酸ナトリウムを追加してもよい。また、アルギン酸カルシウムのビーズを生
成するために、塩化カルシウムを反応媒に同時に添加してもよい。このマイクロ
カプセル化手順の目的は、アルギン酸ビスマスの解離と拡散プロセスを遅くさせ
ることにある。アルギン酸カルシウムで被覆するのは、アルギン酸ビスマスから
ビスマスが解離拡散し、血流に吸収される速度を減じるためである。血漿中のビ
スマス濃度が高いことが、他のビスマス調合薬品において述べられている合併症
を発生させる必要条件である。
本アルギン酸ビスマスは、HPの根絶率が高いので、GERDの投薬治療に単
独で使用できる。また、抗菌物質と組み合わせて二重、三重及び四重投薬治療に
使用することも出来る。かような抗菌物質として、アモキシシリンR及び/又はメ
トロニダゾール(チニダゾールR)がある。これらの抗菌物質は、1つの調合薬
品中でアルギン酸ビスマスと組合わせるか、或いは、個別に投与される。アルギ
ン酸ビスマスを、スクラルフェート(Sucralfate)と組合わせて二重投薬治療に、
また、スクラルフェートとアモキシシリンRと組合わせて三重投薬治療に使用す
ることも可能である。
1ヶ月、6ヶ月、及び12ヶ月後の血清学的検査による1年間の追跡研究を実
施した我々の研究5によれば、バイオガストリン(Biogastrin)(本発明による
アルギン酸ビスマス調合薬品)+アモキシシリンRで治療したグループ中の1名
の患者だけが陽性の血清反応を示し、バイオガストリン+チニダゾールR(ファシ
ジン・ファイザー(Fasigyn Pfizer))
で治療したメトロニダゾール感受性をもつ患者は誰1人陽性の血清反応を示さな
かったが、一方、ロセックRとアモキシシリンRの組合わせで治療した患者の30
%が再感染の指標(陽性血清)を示した。HP菌がメトロニダゾールとアモキシ
シリンRに対しては耐性を示したが、ビスマスに対しては耐性を発揮しないこと
は注目に値する。
この研究によれば、バイオガストリン+アモキシシリンR及びバイオガストリ
ン+チニダゾールRの組み合わせは、オメプラゾール+アモキシシリンRに比して
、HP菌の根絶に関しては優れており、GERD症候の改善に関しては同等であ
る。
抗菌治療(アモキシシリンR、フルオロキノレーンス(Fluoroquinolanes)、メ
トロニダゾール等)はどれも単独で投与した場合は十分な根絶率を得られない。
メトロニダゾールを単独投薬すると、殆どの場合、薬剤耐性が生じる結果となる
。メトロニダゾール(チニダゾールR)をアルギン酸ビスマス(バイオガストリ
ン)と組合わせた場合は、耐性は減少する。
実験によれば、菌を一時的に駆逐することは比較的容易であるが、これを根絶
するのはかなり難しい。これは、抗生物質レベルが殺菌レベルに達し得ない胃の
粘膜と小穴の中で菌が生き延びるからであろう。これは、抗生物質の摂取を止め
ると、保護域に潜伏している僅かな細菌が増殖し、細菌数が検出可能なレベルに
達することを意味する。
GERDの場合、アルギン酸ビスマスの単独投与でも40−50%のHP根絶
率が期待出来、胸焼けや消化不良の症状もかなり緩解される。単独投薬剤として
アルギン酸ビスマスはガビスコーンR及びデノールR(De NolR)(コロイド状ビス
マス基質(CBS-Colloidal Bismuth Substrate))を単独で投与した場合よりも
優れている(研究5にて後述)。
アルコール−ヘリコバクター・ピロリ菌
ヘリコバクター・ピロリ種は、非常に活発なアルコール脱水素酵素(ADH)
を有している。HP感染患者の体中には、いわゆる低アルコール
飲料を摂取した後の非常に低いエタノール濃度でも、非常に毒性の強い(発癌性
及び免疫原性を生み出す自由基の)アセトアルデヒド(ACH)が生成される。
さらに、ACHは、腔粘膜中の胃上皮細胞の増殖を阻害する。これは、正常な胃
粘膜の保護と補修を阻害する重要な病原性因子として扱うべきであろう。ヘリコ
バクター・ピロリ菌の存在とアルコールの結合に関する証拠が益々重要になって
きている。異なるビスマス化合物は、非常に低い濃度でも細胞質ゾル・ヘリコバ
クター・ピロリ菌のADHの活性を93%(!)阻止する。
オメプラゾールをバイオガストラム(Blogastram)/バイオガストロゾール(
Biogastrozol)に加えることによりNIR(ニトロイミドゾール−メトロニダゾ
ール(Nitroimidozole-Metronidazol))耐性患者における根絶率を確実に増大さ
せる。これが、最初の証拠であるように思える。
かように、バイオガストリンはGERD又はNUG(非潰瘍性胃炎)、及び消
化性又は潰瘍性疾病をもち、或る量のアルコールを摂取した後、特に、少量のワ
インまたは他のアルコール飲料を飲んだ後で胸焼け又は他の消化不良の症状の悪
化を感じる全ての患者に対して選択する薬品として扱われるべきである。
尿素−アンモニア
ヘリコバクター・ピロリ菌は、高レベルの尿素分解酵素活性によって特徴付け
られており、尿素をアンモニアに変える特性を持つ。アンモニアが胃粘膜細胞に
対し細胞毒性を有することが提言されているが(M.R.Bawer他、J.Clin.Pathol
.1988年;41:597)、その根拠として、水素の逆拡散の増大(Hazell,
S.L.Lee,A.Lancet.1986年;15−17)と、胃の血清濃度による酸の分泌
の刺激(Switch,J.T.L他、Gut.1990;31:522−525)がある。ヘリ
コバクター・ピロリ菌が入り込んだ患者の胃の粘膜は、好中球を大量に蓄積して
いるのが特徴的である(Morns,A他、Am.J.Gastroenterolog.1987;82:1
92−199)。活性化した好中球は、超酸化物の陰イオンと過酸化水素を発生
させる。
並行して細胞外の空間に分泌されたミエロペルオキシダーゼ(Myeloperoxidase
)は、その触媒作用によって、過酸化水素により塩素を酸化させ、次亜塩素酸と
モノクロアミンを産出させる。モノクロアミンは、特に反応性が高く毒性も高い
と報告されている(Thomas,E.L.,Grisham,M.D,Jeffersson,M.M.Method Enzymol
og.1986年;132:586−593)。Mucarami他(Gastroenterology 1
990年,98:A210)とMorishita他(Europ.J.Gastroenterol.& Hepe
t.1993年;5.Suppl.1:5133−5136)は、最近、抗好中球性血清
とタウリン(モノクロアミンと結合)が、(胃潰瘍患者の体内で)アンモニアと
ヘリコバクター・ピロリ菌によりもたらされる胃粘膜の損傷から人間及びラット
を保護することを報告している。アルギン酸ビスマスは、アンモニアを緩衝し排
除する活性を有するので、殺菌活動とは別に胃の粘膜を保護する効果を有する。
投与
アルギン酸ビスマスと抗菌作用物質は、別々で投与しても一つの調合薬品とし
て投与してもよい。投与の際の形状としては、徐放剤、例えばアルギン酸カルシ
ウムを塗布した錠剤又はカプセル又は液状で用いることができる。この調合薬に
加えた全ての物質はその添加量において製薬上受容可能で且つ無害でなければな
らない。単独投与治療の場合のアルギン酸ビスマスの適当な投薬量の非拘束例で
は、各々アルギン酸ビスマス500mgを含むカプセルを毎回1−2本、1日3回
投与する。
アモキシシリンRと組合わせたアルギン酸ビスマスの投薬量例では、各々アル
ギン酸ビスマス500mgとアモキシシリンR250mgを含むカプセルを毎回2本
、1日3回投与する。
チミダゾール及びアモキシシリンRと組合わせたアルギン酸ビスマスの投薬量
例では、各々アルギン酸ビスマス500mgとチミダゾール25
0mgとアモキシシリンR250mgを含むカプセルを毎回2本、1日3回投与する
。
上述の通り、抗菌物質は別個に交互に投与できる。スクラルフェートと組合わ
せたアルギン酸ビスマスの投薬量例では、スクラルフェート1gと共にアルギン
酸ビスマス500mgを1日3回投与する。三重投与治療の場合は、アモキシシリ
ンR250mgと共に1日3回投与する。
例
以下に記述する研究において、下記の物質を混合して調製した薬品“バイオガ
ストリン”を使用した。
プロタナール(Protanal)LF200RB 40.00g
クエン酸アンモニウムビスマス 10301 345.00g
プロビドン(Providon) K30 95.00g
塩化カルシウム 20.00g
計 500.00g
プロタナールLF200RBは、ノルウェーのPronova Drammen社より取得した。プロ
タナールLF200RBの代わりに、マコンブ(Laminaria)タイプの海藻(藻類)からつ
くられる異なる粘度の他のアルギン酸(alginate)、及び/又は海藻を処理する加
工ユニットにより生成されるアスコフィラム・ノードサム(Ascophylum Nodosum
)を同様に使用できる。
クエン酸アンモニウムビスマス10301は43−461のビスマス
エン酸アンモニウムビスマス又は次クエン酸アンモニウムビスマスも使用可能で
ある。最終製品はレシチンで被覆でき、さらに必要があれば顆粒状にしてマイク
ロカプセルに入れてもよい。顆粒は、小袋(sachet)に入れて用いることができ
る。または、アルギン酸ビスマスを含有しているアルギン酸カルシウムのビーズ
をカプセルに直接入れてもよい。
アルギン酸ビスマス(バイオガストリン)及び次クエン酸ビスマス(De NolR
)に対するヘリコバクター・ピロリ菌の感受性試験を試験管内で
実施した。バイオガストリンを先ず生理食塩水溶液に溶解し、0、1、2、4、
8、16及び32mg/lの濃度にそれぞれ希釈する。溶液をブルセラ寒天に混ぜ合
わせ、7つの培養基質を作製した。各培養基質に、10種の異なるHP菌株サン
プルを滴下した(表1)。DE−NOLRについても同様に処置した(表2)。
培養基質を酸素(5%)、二酸化炭素(10%)及び窒素(85%)よりなる環
境下におき、48時間摂氏35度の温度で培養した。その後、HPの増殖を目で
測定した。HPの増殖が何も観察されなかった最低濃度をMIC(最小発育阻止
濃度)とみなした。
接種物の場合、10個のHPの菌株を牛肉株中に接種して24時間培養し、マ
ックファーランドスケール(MacFarland-scale)で0.5の濃度に希釈した。M
ICを2回、1994年の1月と2月に測定した。このバイオガストリン(アル
ギン酸ビスマス)は、スウェーデン、AskimのKrotex International社から、ま
た、DE−NOLRはフィンランド、HelsinkiのAlgol社から入手した。
結果
バイオガストリンのMICは4mg/lから32mg/lの範囲であり、1994年の
1月に実施した研究においては中央値の16m/lを用い、1994年2月の研究
では8mg/lを用いた。DE−NOLRのMICは4mg/lから8mg/lの範囲であり
、2回の研究共、中央値の8mg/lを用いた。結果を表1と2に示す。バイオガス
トリンは金属ビスマスを34%含んでおり、DE−NOLRは90%含んでいる
。
表1
1994年の1月と2月に実施したバイオガストリンに対する
HPの感受性
HP 菌株 バイオガストリンの濃度 増殖強度:増殖スケールで0,1,2及び3。最初の数字は、1994年1月
の試験における増殖を示し、後の数字は1994年2月の試験時の増殖を示す。
表2
1994年1月と2月に行った研究により得られたDE−NOLRに対
するHPの感受性
HP 菌株 DE-NOLR の濃度 増殖強度:増殖スケールで0,1,2及び3。最初の数字は、1994年1月
の試験での増殖を示し、後の数字は1994年2月の試験時の増殖を示す。
バイオガストリン中のビスマスの重量パーセントは34%で、DE−NOLR
中では90%であり、MICの中央値は関連比較を可能にするために補正する必
要がある。補正後のバイオガストリンの中央値は、ビスマス5.44mg/l及び2.
72mg/lとなり、DE−NOLRの場合は7.20mg/lとなる。かように、バイオ
ガストリンに対するHPの感受性は、DE−NOLRに対する感受性に同等であ
る。この実験においてはバイオガスリンの方がDE−NOLRよりもMICにお
いて勝っているが、この差は、あまり重要ではない。視覚によるMICの測定は
甘くなり勝ちで、これらの薬品の関連比較を阻害する。しかしながら、バイオガ
ストリンは、生体外試験において、良好な抗ヘリオバクター特性を有しているよ
うである。
研究1
この研究の目的は、長期の比較的治療耐性の高い患者群におけるバイオガスト
リンの治療効果をシメチジン(Cimetidine)(タガメット(Tagamet))の治療効果
と比較することであった。
患者と方法
男性8名、女性12名の合計20名の患者がこの研究に割り当てられた。選考
基準は年齢であった。即ち、65歳より若く、心臓血管、腎臓または代謝(糖尿
病)に異常がなく、胃食道逆流(gastrosophageal reflux)の治療以外の薬物治療
を受けたことがなく、少なくとも5年間以上の胸焼け及び吐き戻しの治療耐性症
候を伴う逆流食道炎(refluxesophagitis)の病歴を有していた。逆流による食道
炎の進行度の診断検証は、a)内視鏡検査、b)食道内のpHの24時間監視(病
院に予備入院)、c)患者より報告された全ての症状の詳細な記録を用いて行っ
た。
臨床症状、胸焼け、吐き戻し、体位症候を、目で見るアナログスケールVAS
を用いて各症状毎に患者全員に点数を記録して貰った。カンプリバクター菌がい
ることを検証するために、内視鏡検査時に生体細胞試料を採取した。試料は、a
)組織学的に検査し、b)グラム菌及びウレアーゼ活性試験のため培養した。患
者全員はこの研究に参加する迄にタガメットを投与されており、この治療は本研
究に先立ち6ヶ月間続けられていた。全患者は、内視鏡検査を受け、(先に定義
したSavaryとMilerの修正等級による)等級2−3に該当する内視鏡写真を撮っ
ている。検査時に抗生物質を服用している患者はいなかった。
研究の計画
非公式に口頭で同意を表明した後で、患者はシメチジン(タガメット)800
gを夜に、バイオガストリンを1日3回食後30分に2カプセル服用するグルー
プ、またはシメチジンとプラセボを服用するグループのどちらかの二重盲検実施
要綱に無作為に割り当てられた。(これは最初
の研究であったので、我々は敢えてタガメットを除外しなかった。本研究の目的
は、すでにH2感受体遮断薬で治療されている治療耐性患者にバイオガストリン
を追加することにより、プラセボを与えた場合と比較して治療効果が改善される
かどうかを査定することであった。)
上記の治療は3週間後に中断され、この期間後に改善を示した患者には、さら
に、3週間、但し、シメチジンの投与を止め、バイオガストリンによる治療(同
量毎日3回、各3カプセルを投与)のみを実施した。改善を示さなかった患者に
は以前のタガメットによる治療が続けられた。
プラセボ投与グループにおいては、改善が見られない患者は、この期間(期間
B)同じ治療を受けた。
結果
シメチジンとバイオガストリンで治療された10名の患者の中で、8名が内視
鏡検査で明らかな改善を示した。研究開始時点において3名が等級3(Savaryと
Millerのスケールによる)、4名が等級2、3名が等級1であったが、タガメッ
トとバイオガストリンによる3週間の治療後、8名の患者の食道粘膜は正常又は
ほぼ正常な内視鏡映像を示した。これに反し、プラセボとタガメットを投薬した
グループにおいては、6名の患者は何の改善をも示さず、1名が等級2から1に
、3名が等級3から2に改善を示した。
この差は明らかに重要である。食道のただれまたは潰瘍の平均数は、プラセボ
+タガメットのグループの場合、4,8+0.5から3.8+0.4に減少した。
食道の培養において9例のCP(カンピロバクターピロリ菌)が陽性(及び8
例の組織が陽性)であることが検出された。9名の患者の中の6名がバイオガス
トリン+タガメットの組合わせ治療グループに割り振られた。カンピロバクター
菌(CP)の培養が陽性であった場合は、常にバイオガストリン+タガメットの
投与によってCP菌が根絶され、ウレアーゼ試験が陰性になり組織の改善が認め
られた。これに反し、当初
からCPに関し陽性であった3名の患者は、3週間のプラセボ+タガメットによ
る治療が終了後も陽性であった。
期間Bは、(二重盲検ではなく)公開で実施された。(先のプラセボ+タガメ
ットの治療では)改善されなかった6名の患者は全員が症状及び内視鏡検査でか
なりの改善を示した。(3名が等級0に、1名が等級3から1に、2名が等級2
から0に改善した。)期間A後にCPの陽性培養を示した3名の患者が、期間B
の間バイオガストリンの投与を受けて陰性に転じた。期間Bの間、バイオガスト
リンだけを投与された患者は、全員(計12名)再発の兆候も逆流食道炎の症候
も示さなかった。
連続的にH2受容体遮断薬を摂取している慢性的な逆流食道炎の患者にバイオ
ガストリンを投与することにより、症候状態(胸焼け及び消化不良)が明らかに
改善されると結論できる。自覚的な総体症状(VAS等級により確認される)の
改善は、食道粘膜の内視鏡写真の改善とカンピロバクターピロリ菌の根絶による
。最初の3週間の治療(タガメット+バイオガストリン投与による)を受けて改
善を示した患者は、バイオガストリンのみで治療を続け、獲得した無症状の状態
を十分に維持出来た。
患者の治療にバイオガストリンを加えることにより、新しい治療アプローチが
得られることが示唆されている。即ち、CPの培養が陽性である場合、生検組織
中のCPの存在は、バイオガストリンによる治療を実施する明らかな指標となる
。
研究2
この研究の目的は、スクラルフェートの治療効果とバイオガストリンの治療効
果とを比較することであった。両薬品は、マウスでの治癒効果において、胃及び
食道の上皮に対する結合特性、プロスタグランジンの合成作用、及び逆流酸性内
容物からの保護作用等幾つかの類似点を有している。症候の悪化を惹起するため
に、予め適当に治療された患者は、2週間、無緩衝のアスピリンを摂取した。こ
の特殊な研究において、我々
は、各グループを互いに比較でき、容易に対抗させ得るように症候を一時的に悪
化させた。
れた。患者は全員、抗酸薬品を用いた散発性の薬物治療を要する胸焼けと吐き戻
しを主な症状とする慢性消化不良と食道炎(胃食道逆流病GERD)をコントロ
ールするために診療をうけた。症候を悪化させるために22名の患者全員が無緩
衝のアスピリンを500mg、1日2回2週間服用した。
11名の患者(グループS)は、スクラルフェート1gを1日4回、10mlの
混合液を含む10mlの服用量で、また、他の11名の患者(グループB)は、バ
イオガストリン1gを1日3回、3mlのコロイド液で同じ期間に服用した。第一
週を経過した時点で、グループSはスクラルフェートをバイオガストリンに変え
、グループBはバイオガストリンをスクラルフェートに変えた。この研究は、二
重盲検法で実施された。
患者は研究開始前に全員内視鏡検査を受け、等級1−2でただれ、潰瘍、狭窄
食道炎、及びGERDがないことが確かめられた(これを受け入れ基準とした)
。その他の基準として、抗酸剤を除く、他の医薬品を投与しておらず、心臓、腎
臓、肝臓または代謝の異常がないこととした。患者の年齢は28歳から62歳の
間(平均37+8)で、体重は61−87kg(平均74+6)で、BMIは22
−28kg/m(平均24.3+3.11kg/m)であった。グループの交替の前に、患
者は全員一週間何も投薬を受けずに待機した。
結果
最初の一週間のアスピリン摂取後、グループSの患者の中の7名と、グループ
Bのの患者の中の1名が、上腹部の灼け感覚と頻繁な反芻を報告している。第2
週の間、グループSで第1週に胸焼けと反芻を報告した患者全員が、期間Bのバ
イオガストリン投与治療を受けた後、症状が
かなり改善されたことを報告した。この研究により、逆流による食道炎の典型的
な症状を悪化させる典型的なプロスタグランジンの合成遮断薬の影響を予防する
点において、バイオガストリンがスクラルフェートより優れていることが確認さ
れた。
研究3
この研究は、研究1の補足先行試験として考えられた。この研究の目的は、逆
流食道炎の治療を受ける患者をバイオガストリンにより治療出来ることを確認す
ることであった。
ラニチジン(Ranitidine)(ザンタック−グラクソ(Zantac-Glaxo))150
mgを毎日2回投与した長期治療にも拘わらず胸焼けと頻繁な反芻に苦しむ7名
の患者を通常の内視鏡で検査した。3名の患者が等級3(MillerとSavaryのスケ
ールによる)の内視鏡像を示し、4名が等級2の内視鏡像を示した。7名の患者
全員にバイオガストリン1gを1日4回(及び以前の通りザンタックを)一週間
投与したところ、7名の中の5名が症状が明らかに軽減されたことを報告した。
尚、この5名の患者は、さらに6週間、バイオガストリンだけを投与する単一治
療を受けた。患者は全員、改善された症候を変わらずに維持出来た。3周間後、
6周間後及び12周間後に内視鏡検査を実施した。
最初の6週間の治療後、3名の患者の内視鏡検査が等級3から1への改善を示
し、他の2名は等級2から0に改善された。その後の6週間の追加治療後の内視
鏡検査では、患者の食道及び胃の粘膜に病理学的変化は何も発見されなかった。
本研究は、研究1に類似しており、H2受容体遮断薬を習慣的に摂取する治療
に耐性を示す患者にはバイオガストリンが、有効であることを示した。日常の治
療(ザンタックまたはタガメット)にバイオガストリンを追加したことにより、
急速に症状が改善され、以後はバイオガストリンだけによる治療が可能となった
。
研究4
この研究の目的はガビスコーンR(GavisconR)の主要適応症である逆流・反芻及
び上腹部の灼け痛み/不快感に関する治療効果を、バイオガストリンとガビスコ
ーンRにおいて比較検定することであった。バイオガストリンに関する初期の実
験が少なかったので、我々は古典的な手法、即ち二重盲検クロスオバーを敢えて
計画せず、この治療に責任を負う医療チームは段階的でより安全な方式の臨床検
査を選択した。
総体的症候(実際の、及び病歴による)を有し、内視鏡検査で確認された逆流
食道炎に対し、ラニチジン(ザンタック−グラクソ)を150mgを1日2回投与
する治療と、アルギン酸(Gaviscone-Ferring)を2gを1日4回投与する治療
とを受けてきた16人の患者がこの研究に割り当てられた。患者は、全員治療を
受けているにも拘わらず、1日に少なくとも3回、逆流の問題及び/又は胸焼け
を訴えていた。研究に割り当てる患者の判断には、最近の4年間における再発の
治療と急性食道炎の期間を基準として用いた。患者は全員内視鏡検査を受け、等
級3から2(SavaryとMillerによる)の内視鏡像を示した。
患者は全員同意を表明し、ガビスコーンRから切り替えて、バイオガストリン
1g(3ml)を毎日3回服用した。この研究に参加した16人の患者の中で、12
名が胸焼けの症状に関しかなりの改善があったことを報告し、10名が反芻がす
っかり無くなったことを報告した。治療を変えてから4週間後の内視鏡検査では
、10名が等級3から等級2に、6名が等級1から等級0(病理学的に異常のな
い等級)に改善されたことが判明した。追加の4週間の治療後、1人の患者を除
き全員が等級0の内視鏡像を示した。
このグループの患者12名は、最初の4週間の治療後ラニチジンによる治療を
中止し、次の4週間はバイオガストリンだけの治療を受けた。
他の2名の患者も、最初の6週間の治療後症状がはっきりと改善されたので、同
様にその次の2週間はバイオガストリンのみの治療を受けた。
この研究で、逆流による食道炎の典型的な症状の改善に関するバイオ
ガストリンの効果が確認された。研究結果においては、バイオガストリンがガビ
スコーンRと恐らく同様に作用し、口回りの身体部(下部食道括約筋)の自然な
防護を強化するコロイド状のアルギン酸ビスマスの栓を作り出し、鋭敏な食道粘
膜が胃汁(逆流反芻時に上昇する)の酸内容物にさらされることを阻止している
。
要約すれば、幾つかの治療に耐性を有する患者(他の適当な治療を受けている
)の場合に得られる重要な改善は、カンピロバクター菌に対するバイオガストリ
ンの特別な作用によるものと考えられよう。(この研究の場合の患者の選抜と患
者の治療耐性は、本研究に参加した患者中にCP感染者が過剰に存在することを
示している。)アルギン酸ビスマスのコロイド状の“栓”が逆流反芻に影響を及
ぼし、症状の改善に最も貢献する。予備試験結果を確認するためにさらなる研究
を必要とする。
研究5
オメプラゾール、及びオメプラゾール+アモキシシリンRは、GERD(胃食
道の逆流病)における症状の改善とヘリコバクター・ピロリ菌の根絶に有効であ
ることが最近明らかにされている。しかしながら、この種の治療は、自覚症状(
胸焼けを伴う逆流)とヘリコバクター・ピロリ菌の再発生(再集落形成)の両方
により、継続的な治療を要する。
バイオガストリンは、メトロニダゾールに対する不感応性を低減し、二重、三
重及び四重治療により根絶率を高めることを示している。この研究の目的は、2
週間治療に対する長期の影響を調査することである。
この評価は、根絶率(組織学+細菌検査)と血漿血清学の判定の両方に関する。
検査は全て、治療を終了してから6週間、6ヶ月及び12ヶ月後に行い、結果
を標準ロセックR(LosecR)+アモキシシリンR(AmoxicillinR)の治療結果と比較
した。
患者と治療
(A)胃食道逆流疾患(GERD)の検査と組織学的細菌検査を受け、または
、ヘリコバクター・ピロリ菌(HP)の感染検査を受けた平均年齢47.4歳(
年齢範囲24.2歳から60.7歳まで)の63人の患者が選ばれ、無作為に3つ
のグループに分けられた。グループ1はオメプラゾール+アモキシシリンR(オ
メプラゾール20mgを1日2回、アモキシシリンR500mgを1日3回)服用し
た。グループ2には、バイオガストリン+アモキシシリンR(バイオガストリン
500mgとアモキシシリンR500mgを1日3回)を投与した。グループ3には
、バイオガストリンのみ(バイオガストリン500mgを1日3回とチニダゾールR
50mgを1日2回)を投与した。
上記の治療を2週間、全グループにおいて実施した。年齢、体重、期間及びG
ERDの発症度(胃鏡検査、組織所見及び総体的症候、特に胸焼けの強さと頻度
)に重大な差は無かった。細菌根絶の判定基準は、追跡生検試料に細菌が存在し
ないことを組織学的又は培養検査又は両方の方法で確認することであった。
検査
組織学的検査のためのサンプルとして、粘膜細胞が十二指腸球部と幽門洞と胃
体部から採取され、また、細菌培養検査のためのサンプルとして、粘膜細胞が幽
門洞及び胃体部から採取された。ヘマトキシリン・エオシンとギムザ(Giemsa)
染色法を組織学的検査に使用した。ヘリコバクター・ピロリ菌培養検査用試料は
、0.5mlの20%グルコースに入れ、乳鉢で粉砕し、選択又は非選択の個別プ
レート中で4時間以内培養した。
ヘリコバクター・ピロリ菌に対する抗体は、IgG,IgA及びIgM毎に個
別に酵素免疫測定法(EIA)で測定した。使用した抗原は、酸グリセリン抽出
物で、ヘリコバクター・ピロリ菌株NCTC11637から超遠心分離して得ら
れた細菌性超音波処理物であった。
吸光度の読みを終点力価の逆数に変換した。終点力価は、一定の希釈
溶液で正の基準血清プールの光学的密度により規定されるカットオフレベルにお
ける血清の希釈溶液の力価であった。
個別の基準プールを免疫グロブリンA,G及びMに使用し、各々の微量滴定プ
レートに設置し、患者から採取した全ての試料をKosunen他(Lancet,1992
;339:893−895)による3倍の希釈液中で検査した。
前処理試料と追跡試料を、治療開始後6(+/2)週間及び6(+/2)ヶ月の時点で
採取した。試料には、組織学的検査と細菌培養検査用の生検試料とヘリコバクタ
ー・ピロリ菌抗体循環用の血清サンプルを含んでいた。
患者は、研究実施要綱に関し説明を受けた後に全員同意を表明した。コロイド
状ビスマス、抗生物質、H2受容体、拮抗体又はオメプラゾール(蛋白質の輸送
遮断薬)を使用した治療を受けていない患者で、少なくとも1ヶ月から3ヶ月の
間に消化不良と胸焼けをおこしている患者のみを研究対象に含めた。最近の消化
器系の出血が検査で発見されたか又は確認された患者と、胃の手術を受けた患者
は除外された。
2週間の全期間を通し、治療は良好に実施された。2名の患者が本治療に無関
係の家族問題が原因で試験から抜けた。
結果
治療前に、63名の患者の全員がすでに細菌を保有しており、組織学的に及び
胃鏡検査によって活発な慢性の胃炎と食道炎に罹っていることが確かめられた。
ほぼ全員の患者が、循環するヘリコバクター・ピロリ菌の抗体の高い力価を有し
ていた。高力価のIgG抗体が98%の患者に、IgA抗体が94%の患者に、
IgM抗体が48%の患者において確認された。
グループ1(オメプラゾル+アモキシシリンR)において、82%の患者が、
胸焼けと消化不良が少し改善されたと報告した。グループ2(バイオガストリン
+アモキシシリンR)においては、該当数は80%であった。グループ3(バイ
オガストリン+チニダゾールR)においては、
84%であった(メトロニダゾール/チニダゾールRに感受する患者に対してで
あり、メトロニダゾールに耐性を有する患者の場合は68%であった)。
治療終了後6週間経過した時点で、ヘリコバクター・ピロリ菌はグループ1に
属する患者の74%において根絶され、グループ2においては72%において根
絶された。グループ3にけるヘリコバクター・ピロリ菌の根絶率は、HPメトロ
ニダゾール/チニダゾールRの感受株に感染した患者の82%に達し、HPメト
ロニダゾール/チニダゾールRに不感受であるHPを有する患者の54%に達す
ることが判明した。
IgG抗体はグループ1の患者の70%において、またグループ2の患者の7
2%において、6週間で僅かに減少した。グループ3においては、IgG抗体は
、メトロニダゾールに感受する患者の78%においてかなりの低下が見られ、メ
トロニダゾールに不感受である患者の48%にもかなりの低下が観察された。
IgAの力価はグループ1の患者の64%とグループ2の患者の72%におい
て減少し、グループ3の患者のメトロニダゾールに感受な患者の78%、メトロ
ニダゾール不感受な患者の43%において低下した。
治療終了後6ヶ月経過した時点で、細菌に陰性な患者におけるIgGの力価は
前処理値の平均で22%であり、IgAの力価は36%であった。
12ヶ月後に細菌に陰性な患者から採取した試料は、抗体力価が連続して減っ
ていることを示していた。
グループ1の症候が無くなった患者の中で、8名の患者が、治療終了後にひど
い胸焼けを経験し、最初の6ヶ月間代替え治療(ガビスコーンとスクラルフェー
ト)を受けなければならなかった。同じことが、グループ2の2名の患者とグル
ープ3の4名の患者に生じた。残りの患者は全員、6ヶ月の試験時にメトロニダ
ゾールに耐性を有し、HP陽性の患者に属していた。
IgMはグループ1の患者の67%とグループ2の患者の71%にお
いて減少し、グループ3の患者の63%(但し、メトロニダゾールに感受性を有
する患者の74%)において減少した。
細菌に陰性を示す患者において、抗体の力価は、最初の6週間を越えて低下し
続けた。陽性の患者の場合、力価は観察期間を通して高い生産レベルを維持した
。
治療終了後6ヶ月経過した時点で、グループ1の患者の64%だけがHPに対
し陰性であった。グループ2の場合の陰性患者の割合は、72%と変わらず、グ
ループ3の場合は、メトロニダゾールに耐性を有する患者において54%から4
5%に減少し、メトロニダゾールに感受性を有する患者は80%の高いレベルを
変わらずに維持している。
治療終了後12ヶ月経過した時点で、グループ1の患者における根絶率は56
%で、グループ2の場合72%、グループ3の場合、メトロニダゾールに耐性を
有する患者において42%、感受性を有する患者において80%であった。
議論
本研究の結果は、6週間後における細菌の根絶指標としてのIgGの力価の5
0%低下という高い感度を示している。この試験の感度は、時間の経過と共に増
大し、その低下は、6ヶ月及び12ヶ月経過した各々の時点においてより特徴的
になる。前処置値の40%以下の力価は、治療終了直後の細菌に陰性な患者にお
いてのみ観察された。3つの治療法の有効性は、6週間後の試験においてGER
Dを伴う主要な症状の改善に関しては互いに同等であった。
また、HPの根絶率も比較し得る。(但し、バイオガストリンで治療したメト
ロニダゾールに耐性を有する患者の場合は根絶率が低く、メトロニダゾール/チ
ニダゾールRに感受性を有する患者の場合は根絶率が高くなる。)しかしながら
、グループ1(オメプラゾール+アモキシシリンR)の患者は、ヘリコバクター
・ピロリ菌の再感染(または再発)率がかなり高い。同様に、症状の悪化により
逆流阻止剤及び抗酸治療薬
の再使用を要したことも事実である。或程度同様な状況が、バイオガストリンと
チニダゾールRの組合わせで治療したメトロニダゾール/チニダゾールRに耐性を
もつ患者においても観察された。グループ1の患者の84%とグループ3の患者
の26%が代替え治療(ガビスコーンR+スクラルフェート)を必要とした。
この研究結果は、バイオガストリンによる二重治療の方がオメパラゾール+ア
モキシシリンRの組合わせによる治療よりも、3週間の治療終了後の6ヶ月及び
12ヶ月後における高い根絶率が確認されており、より好ましい治療であること
を示している。
また、この研究の結果においては、蛋白質移送遮断薬とアンピシリン(Ampicil
lin)との組合わせによる二重治療は、長期的には十分ではなく、“バイオガスト
リンとアモキシシリンR”または“チニダゾールR”との組合わせによる三重又は
二重治療の方がヘリコバクター・ピロリ菌の根絶とGERDの主要症状の改善の
両方にとって長期的にかなり良好な結果が得られることが示されている。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61K 33/24 A61K 33/24
47/04 47/04
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ
,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU
,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,
CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,G
B,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE,KG
,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,
LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,N
O,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG
,SI,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,
US,UZ,VN,YU