【発明の詳細な説明】
水平に置かれた円筒形物体を垂直に持ち上げ
る方法及びその方法に使用するための機具技術分野
本発明は、水平に置かれた円筒形物体、特にロケットを、好ましくはクレーン
ビームから懸吊された少くとも1本の持ち上げワイヤを含む持ち上げ機に懸吊さ
れた少くとも1つの持ち上げヨークによってベースから垂直に持ち上げる方法に
関する。
本発明は、又、水平に置かれた円筒形物体、特にロケットを、好ましくはクレ
ーンビームから懸吊された少くとも1本の持ち上げワイヤを含む持ち上げ機に懸
吊された少くとも1つの持ち上げヨークによってベース(ランプ)から垂直に持
ち上げる方法に用いるための機具に関する。背景技術
宇宙へペイロードを搬送するための大型ロケットは、長さが50m以上にもな
ることがある。そのような大型ロケットは、機械系統、電気系統、光学系統等の
多数の近代的技術システムを搭載しており、ロケットの技術システムも、構造設
計も、重量に関して最適化されている。そのため、ロケットは、主として、打ち
上げの際に受ける荷重に耐えられるように設計されており、海上の波の動きや天
候条件によって創生される応力等の小さな外部応力に耐えられるようにしか設計
されていない。
実際のロケットは、それぞれ別個に組立てられる数個のロケット段と、例えば
サテライト(人工衛星)のようなペイロードから成る。ロケットの各段及びペイ
ロードは、別途に組立てられた後、ロケットの据え付け基地へ運ばれてそこでロ
ケットに組み込まれる。
地球の自転を考えれば、赤道がロケットを打ち上げるのに最も有利な場所であ
る。しかしながら、大型ロケットの組立て及び準備には、専門技術の面でも、資
材の点でも有力な供給源が必要とされるが、そのような供給源の大部分を入手す
ることができるのは赤道付近以外の地域からである。
ノルウエー特許願第951693号、951694号及び951695号は、
ロケットを船上で水平姿勢で組立てた後、移動可能な浮きプラットホーム(台)
に載せて打ち上げ基地へ運ばれ、発射されるようにしたロケットの組立て及び打
ち上げ方法を開示している。かくして、ロケットを赤道で打ち上げることができ
、かつ、各種技術機器及び技術専門家を船又はプラットホームに搭載又は搭乗さ
せることができるので、現場で利用することができる。しかしながら、上記各ノ
ルウエー特許願は、ロケットを船からプラットホームヘ移送する方法を教示して
いない。
船と、ロケットの打ち上げプラットホームのような浮き構造体とは、通常は、
水上では異なる動きをする。それらの動きは、波の影響によるものであり、それ
らの動
きの差は、主として、船と浮き構造体とが形状及び質量が異なることと、船と浮
き構造体に作用する波の影響が時間とともに変動することに因る。海上で2つの
船の間で物体を移送する場合、物体を一方の船に設置された持ち上げ機によって
持ち上げたとき、動きの上記差は、物体を他方の船にゴツンとぶつけて損傷させ
ることがあるので、大きな問題となっている。発明の開示
本発明の目的は、水平に置かれた円筒形物体、特にロケットを、好ましくは少
くとも1本の持ち上げワイヤを含む持ち上げ機に懸吊された少くとも1つの持ち
上げヨークによってベース(ランプ)から垂直に持ち上げるための持ち上げ方法
及び持ち上げ装置において、ベースと持ち上げ装置との動きの差によってロケッ
トの持ち上げ作業の初期段階においてロケットを損傷させる欠点を克服すること
ができる持ち上げ方法及び持ち上げ装置を提供することである。
この目的は、本出願の特許請求の範囲に記載された特徴を有する方法及び装置
によって達成される。
本発明の特徴は、物体、例えば水平に置かれたロケットを持ち上げヨークの下
方に位置づけし、その持ち上げヨークを臨界高さにまでジャッキで持ち上げるこ
とによってベースに対するロケットの移動を案内し、それ以降のロケットの持ち
上げ作業を持ち上げワイヤによって周知の態様で継続することにある。
本明細書でいう「臨界高さ」とは、ロケットとそのベース、特にサドルとが衝
突する危険がなくなる最低持ち上げ高さのことをいう。
以下に、本発明をその特定の実施態様を例にとって添付図に基づいて詳しく説
明する。図面の簡単な説明
図1は、ランプ上に置かれた水平姿勢のロケットの側面図である。
図2は、垂直持ち上げ中のロケットの2つの異なる位置にあるところを示す側
面図である。
図3は、ロケットとランプの拡大側面図である。
図4は、持ち上げヨーク及び機具の横断面図である。
図5は、持ち上げに用いるための持ち上げヨーク及び機具の第2実施形態の正
面図である。発明の実施形態
全ての添付図において同様の部品は同様の参照符号で示されている。
図1は、海10に浮かぶ、ポンツーン21及びコラム22を有する浮き構造体
20を示す。コラム22の頂部には、クレーンビーム24を備えたデッキ構造体
23が設置されている。浮き構造体20のそばに船30が位置している。船30
はその船尾31だけが示されている。船30からは、クレーンビーム24の下方
に位置するように細長いランプ40が延長している。
ランプ40の、船30側の端部は、船30に水平軸線
32の周りに枢動自在に連結されている。従って、ランプ40は、船30に対し
て回動することができる。ランプ40の、船30から遠い側の端部は、浮き構造
体20の取付点25(図2参照)から延長した垂直固定ワイヤ73によって懸吊
されることにより浮き構造体20に連結されている。かくして、一端が常時船3
0に連結されており、他端がクレーンビーム24から垂直方向に一定の距離のと
ころに位置づけされたランプ40が得られる。船30の垂直方向の動きは、ラン
プ40の、船30に近い側の端部に伝達され、浮き構造体20の垂直方向の動き
は、ランプ40の、ワイヤ73によって懸吊された端部に伝達される。かくして
、ランプ40は、物体(この例ではロケット)の垂直持ち上げのための、例えば
船の後部甲板よりはるかに優れたベースを構成する。
ロケット50を船30から浮き構造体20へ移送する場合は、ロケットの全体
又は一部分をランプ40上へ運び出し、持ち上げ機70によって浮き構造体20
上へ持ち上げる。持ち上げ機70は、図示の実施例ではクレーンビーム24から
懸吊された持ち上げワイヤ71から成っている。
図2は、ロケットを垂直に持ち上げるところを示し、ロケットが持ち上げ前に
ランプ40上の位置50に置かれているところと、ロケットがクレーンビーム2
4に向けて上方に持ち上げられた位置50’にあるところを示す。ロケットは、
持ち上げビームの形とした後部持ち上
げヨーク61と、フレームの形とした前部持ち上げヨーク61’の2つの持ち上
げヨークによって持ち上げられる。後部持ち上げヨーク61は、ロケット50を
2つの持ち上げ係止部材51によって持ち上げるのに対して、前部持ち上げヨー
ク61’は4つの持ち上げ係止部材51’によって持ち上げる。
図3は、ロケット50とランプ40を拡大図で示す。ロケットは、ボギーの形
とした2つのキャリッジ66上に載せられた細長い支持構造体から成る機具60
上に積載される。機具60は、ロケットをランプ40へ搬送する間支持するサド
ル65を有している。図3に示された実施形態では、ロケットの前部セクション
と後部セクションが、いずれも、2つの持ち上げ係止部材51で持ち上げるため
の持ち上げビームの形とした2つの同じ持ち上げヨーク61によって持ち上げれ
られる。
図4は、ロケット50、持ち上げヨーク61及び機具60の横断面図である。
機具60は、サドル65及びキャリッジ66の他に、2つのジャッキ62を備え
ている。図に示されるように、ロケットは、2本の持ち上げ索又はロープ64を
介してヨーク61に連結されている。
ジャッキ62は、機具60の、ロケット50から離れた両側縁に設置された垂
直液圧シリンダ81を含む液圧ジャッキとして設けられている。各液圧シリンダ
81から垂直上方にピストンロッド68が突出しており、ピストンロッド68の
上端に、持ち上げヨーク61の対応す
る外端の下面に衝接する持ち上げブロック69が付設されている。ジャッキ62
は、更に、ジャッキ62を支持し、ジャッキからランプ40へ垂直方向の力を伝
達するために液圧シリンダ81の延長線上に下方に突出した伸縮自在脚83を備
えている。
図4に示されるように、2本の案内ワイヤ72が、ランプ40から持ち上げワ
イヤ71に平行に、持ち上げヨーク61の対応する外端に設けられた案内63を
通してクレーンビーム24に延長している。案内ワイヤ72は、ロケットを持ち
上げる前に、その水平方向に揺れる可能性をごく限られたものとするために、例
えばジガーウインチのような適当な機具によって適当な張力、例えば1本のワイ
ヤ当たり10トン程度の張力にまで締め付けられる。
ランプ40を浮き構造体20に取付ける場合は、図1を参照して先に述べたよ
うに、ロケット50を積載したランプ40にクレーンビーム24及び持ち上げワ
イヤ71を含む浮き構造体20と同じ垂直運動を与えるように全力が傾けられる
。にもかかわらず、ランプ40と浮き構造体20の垂直運動が完全には一致せず
、持ち上げ作業の決定的に重要な部分は、ロケット50がサドル65にゴツンと
衝突する危険性があるときにロケットをランプから持ち上げる初期段階である。
本発明によれば、持ち上げ作業の初期段階における問題は、持ち上げヨーク61
をロケット50と共にジャッキ62によって所定の
臨界高さにまでランプ40から持ち上げることによって解決される。それによっ
て、サドル65からのロケット50の連続的な円滑な持ち上げが達成され、サド
ル65とロケット50との間の垂直方向の距離がジャッキ62によって制御され
るので、ロケット50がサドル65に衝突する危険がない。
ジャッキによる持上げが持ち上げのための「臨界高さ」に達した後、持ち上げ
ワイヤ71の張力が増大し、それによってロケット50を含む持ち上げヨーク6
1の重量がジャッキ62から持ち上げワイヤ71へ伝達され、それ以降は周知の
態様でワイヤ71によって持ち上げ作業が続けられる。ロケット50を含む持ち
上げヨーク61の重量が持ち上げワイヤ71へ伝達された後可及的迅速に、例え
ばシリンダの液圧流体を迅速に排出することによって、ピストンロッド68が持
ち上げブロック69と共に下降され、ロケットの持ち上げ作業の継続中偶発的な
動きが起きた場合でもロケットがピストンロッド68又は持ち上げブロック69
等の、ベースのどの部分にも、あるいは、ベース上に設置されている機器にもゴ
ツンとぶつかるのを防止する。
ロケットの水平方向の動きは、持ち上げの初期段階においても、以後の段階に
おいても、持ち上げヨーク61の側方を案内ワイヤ72によって案内することに
より制御下におかれる。持ち上げヨーク61、案内ワイヤ72及びジャッキ62
は、全て、同一垂直平面内に配置され
ているので、持ち上げ作業の初期段階から以後の段階へ遷移する際、ロケットを
持ち上げる垂直力の作用点の位置のが変動しない。
図5は、機具60の変型実施形態を示す。この実施形態では、サドル65の構
成が若干異なる。即ち、ロケットを受け止めるためのサドル65の接触面が、図
4に示された実施形態の機具60のそれとはわずかに異なる。更に、ジャッキ6
2は、持ち上げヨーク61に対する持ち上げブロック69の位置を調節するため
に、可撓継手84を備えている。図5に示された変型実施形態の機具60では、
ジャッキ62は、更に、ジャッキをロケットから離れる方向に水平軸線の周りに
傾動することを可能にするピボット継手67を備えている。従って、ロケット5
0を懸吊した持ち上げヨーク61の重量がジャッキ62から持ち上げワイヤ71
に移された後、ジャッキ62をロケット50から離れる方向にピボット継手67
によって画定される水平軸線の周りに迅速に枢動させることができ、それによっ
て、持ち上げ作業の継続中ロケットが偶発的な動きをしたとしても、ロケットが
ジャッキにぶつかるのを防止することができる。
以上、本発明を特定の実施形態に関連して説明したが、本発明は、ここに例示
した実施形態の構造及び形態に限定されるものではなく、本発明の精神及び範囲
から逸脱することなく、いろいろな実施形態が可能であり、いろいろな変更及び
改変を加えることができる。例えば、持
ち上げヨーク61は、2本又は2本以上のビームを組み合わせて構成することも
でき、あるいは、1つの持ち上げフレームによって構成するなどいろいろな態様
で構成することができる。又、ロケットの重量を持ち上げヨークを伝達する態様
も、図に示されるように恒久的に取り付けられた持ち上げ係止部材によってもよ
く、あるいは、例えば剛性又は可撓性の部材で形成されたクレードルにロケット
を載置させることによるなど、いろいろな態様で実施することができ、それによ
って、力をロケットの円筒形周側壁から均一に持ち上げ索又はロープ64に伝え
ることができる。
更に、ジャッキ62の構成も、例えば、ランプの両側に1基づづではなく、2
基づづ設けるなど、いろいろに変更することができる。ジャッキ62をランプの
両側に2基づづ設ける構成は、持ち上げヨーク61を持ち上げビームではなく、
持ち上げフレームによって構成した場合の望ましい選択となる。
又、ジャッキ92の持ち上げ力は、液圧以外の他の手段、例えばねじ機構によ
って得ることもできることは明らかであろう。
更に、ロケット50を担ったジャッキ62の荷重が持ち上げワイヤ71に移さ
れた後、ジャッキ62を迅速にロケットから遠ざける機能も、例えばジャッキに
落下機構を装備することなどいろいろな態様で実施することができる。
上述した各変型例、及び、それに類する、当業者にとって当然の変型実施形態
は、本発明の範囲内に入る。
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