【発明の詳細な説明】
医薬用顆粒
発明の分野
本発明は医薬用薬剤配合の顆粒の製法に関する。
発明の背景
経口投与されるべき薬剤の場合、顆粒が適当な形態である。顆粒形の薬剤の一
用量を測定し、サッシェに配合するか、またはスプーンを用いることで投与する
か、あるいはカプセルに配合するか、または舌下錠に処方してもよい。かかる顆
粒は定型の、実質的に球状であり、分散およびカプセル充填または錠剤化を容易
にするために流動性に優れ、ならびに美観に訴えるものであることが好ましい。
球形顆粒はまた、風味マスキング剤、腸溶性/保護剤および徐放性コーティング
剤で被覆することも容易である。
現在、球形顆粒を製造するのに2つの方法がある。1の方法は 「スクイーズ−
アウト」型造粒装置を用いて円筒形顆粒を押し出し、ついでそれをマルメライザ
ー(円筒形の縁を切断する機械)を用いて形状を球形にするものである。この方
法は、その慣用的な使用の妨げとなり、時間のかかる困難な製造条件を伴う。使
用されるもう一つの方法は、遠心流式造粒機を用いて細粒状としたショ糖などの
コア粒子を徐々に被覆するものであるが、この方法は時間がかかり、一般に、顆
粒中の薬剤の容量割合が高い(20%またはそれ以上)広範囲の薬剤には適しな
い。
造粒するのに最も効果的な方法は、2枚の回転ブレード、すなわち、水平な回
転面を有するメインブレードと、その上にある垂直な回転面を有するチョッパー
ブレード(クロスブレード)を用いて、一の操作にて混合と造粒を行う高速攪拌
造粒機を用いることである。薬剤と賦形剤を予め該造粒機に入れ、ついでブレー
ドを回転させながら、結合剤溶液を上部から該造粒機に注入するか、または噴霧
する。この方法によれば、顆粒を迅速かつ容易に調製できるが、その欠点は、得
られた顆粒はその形状が不規則で球形でなく、球形顆粒に付随する利点が無いこ
とである。
この度、意外にも、本発明者らは、このような「スクイーズアウト」およびマ
ルメラーザー法の使用を回避する、高速攪拌造粒機を用いて実質的に球形の顆粒
を調製する方法を見出した。
発明の詳細な記載
したがって、本発明は、医薬用の薬剤を含む医薬用の実質的に球形の顆粒を調
製する高速攪拌造粒方法であって、その薬剤が0.01ないし0.30g/mlの
水溶解度を有し、少なくとも5%の結晶セルロースを有してなる薬剤と賦形剤の
混合物を造粒機に導入し、結合剤溶液として水またはエタノールと水の混合物を
噴霧することからなる方法を提供する。
適当な薬剤として、水溶解度が0.02g/mlのカフェイン、水溶解度が0.
22g/mlの塩酸ピリドキシンおよび水溶解度が0.25g/ml以上の、特
に経口投与用抗ウイルス性化合物である、ファムシクロビル(famciclovir)お
よびアシクロビル(acydovir)が挙げられる。顆粒組成物中の薬剤の賦形剤に対
する割合は、55%までの薬剤を配合することもできると考えられるが、一般に
、25%まで、例えば、5%、10%、20%までである。
薬剤と賦形剤の混合物は、少なくとも5%、例えば、10%、20%、30%
、40%、50%、60%、70%、80%および90%までの結晶セルロース
を有する。他の適当な添加賦形剤としてラクトースが挙げられるが、球形顆粒の
収率は、その混合物が単一賦形剤として結晶セルロースを含有する場合、例えば
、組成物が25%の薬剤と75%の結晶セルロースを含有する場合に最も高収率
である。
結合剤溶液は75%までのエタノールであってもよく、エタノール濃度が高い
ほど顆粒の球形度が高いことが判明したが、製造環境の見地から、残った有機溶
媒に由来するいずれの問題も回避するために、結合剤溶液として純水を使用する
ことが望ましい。顆粒の大きさと結合剤溶液の配合量の間に線状の関係が観察さ
れ、その結果、顆粒の大きさはこの方法により制御できる (結合剤溶液の配合量
が多いほど、顆粒は大きくなる)。スプーンで投与するのに適する顆粒は、一般
に、粒径が500μm以上、有利には700μm以上で、1500μmまで、有
利には1000μmまでである。カプセルまたは錠剤に適する顆粒は、通常、5
00μmよりも小さい。
顆粒は、結合剤溶液を噴霧した後、適宜、造粒機中で攪拌し、その球形を改良
し、顆粒の表面を滑らかにする。攪拌時間は、造粒機の大きさおよびメインブレ
ードおよびクロスブレードの回転速度と共に、顆粒の大きさおよび顆粒の組成に
依存するであろう。攪拌時間は、一般に、2ないし30分の範囲にある。
本発明は、一の態様にて、ファムシクロビルと、5%またはそれ以上の結晶セ
ルロースと、任意のコーティング剤とからなる、医薬用の実質的に球形の顆粒を
提供するものである。好ましい態様において、本発明は、ファムシクロビルおよ
び単一賦形剤として結晶セルロースとからなる顆粒、例えば、25%のファムシ
クロビルおよび75%のセルロースを含有する顆粒を提供する。
以下の実施例は本発明の方法を説明するものである。以下の添付図面および表
は、ピリドキシン顆粒に関して説明するものである。
図面の簡単な記載
図1は顕微鏡を介して撮影した顆粒の写真(x5)である。(A)は結合剤溶
液が水の場合であり、(B)は結合剤溶液が70%エタノールの場合である。
図2は顕微鏡を介して撮影した顆粒の写真(x5)である。(A)は20%結
晶セルロースを用いており、(B)は75%結晶セルロースを用いる。
図3は結合剤溶液の配合量と顆粒の大きさの間の関係を示すグラフである。
図4は、顆粒の形状関数に関して、メインブレードとクロスブレードの攪拌時
間の関係を示すグラフである。
図5(A)、(B-1)および(C)は、攪拌時間が、各々、0、14および3
0分である、顕微鏡を介して撮影した顆粒の写真(x5)を示す。図5(B-2)
は、攪拌時間が14分である、顕微鏡を介して撮影した顆粒の写真(x15)を
示す。
図6は顆粒の溶解曲線を示すグラフである。
図7は溶解試験後の顕微鏡を介して撮影した顆粒の写真(x10)を示す。
表Iは結晶セルロース含量に関する種々の顆粒の組成を示す。
表IIは結合剤溶液中のエタノール濃度の形状関数および顆粒収率に対する効
果を示す。
表IIIは微結晶セルロース濃度の形状関数および顆粒収率に対する効果を示
す。
表IVは25%ピリドキシン顆粒の粒径分布に対する結合剤溶液の配合量の効
果を示す。
表Vは25%ピリドキシン顆粒の形状関数の再現性を示す。
表VIは25%ピリドキシン顆粒の粒径分布および収率の再現性を示す。
実施例 調製例1(10%カフェイン球形顆粒)
この調製例において、以下の組成を有する混合物(700g)をまず攪拌式造
粒機(タイプVG−5、Powlex Corp.製、日本)に充填し、ついで結合剤液とし
て20%エタノール−水の溶液(180ml)を、造粒機中にある混合物上に、
該造粒機のメインブレードおよびクロスブレードを、各々、600および300
0rpmで回転させながら、100ml/分の速度で噴霧した。噴霧終了後、造
粒操作をさらに2分間続けた。得られた細粒を対流式乾燥オーブンを用いて50
℃で12時間乾燥させて球形顆粒を得た。
混合物の組成
カフェイン 10部
ラクトース 82部
結晶セルロース 8部
この得られた球形顆粒の粒径は500−850μmであり、収率85.5%で
あった。
調製例2(25%カフェイン球形顆粒)
この調製例において、以下の組成を有する混合物(709g)をまず攪拌式造
粒機(タイプVG−5、Powlex Corp.製、日本)に充填し、ついで結合剤液とし
て70%エタノール−水の溶液(370ml)を、造粒機中にある混合物上に、
該造粒機のメインブレードおよびクロスブレードを、各々、600および300
0rpmで回転させながら、100ml/分の速度で噴霧した。噴霧終了後、メ
インブレードおよびクロスブレードを、各々、300および1000rpmで回
転させながら、その造粒操作をさらに5分間続けた。得られた細粒を対流式乾燥
オーブンを用いて50℃で12時間乾燥させて球形顆粒を得た。
混合物の組成
カフェイン 25部
ラクトース 55部
結晶セルロース 20部
この得られた球形顆粒の粒径は710−1180μmであり、収率77.7%
であった。
調製例3(25%塩酸ピリドキシン球形顆粒)
この調製例において、以下の組成を有する混合物(500g)をまず攪拌式造
粒機(タイプVG−5、Powlex Corp.製、日本)に充填し、ついで結合剤液とし
て水(350ml)を、造粒機中にある混合物上に、該造粒機のメインブレード
およびクロスブレードを、各々、600および3000rpmで回転させながら
、100ml/分の速度で噴霧した。噴霧終了後、メインブレードおよびクロス
ブレードを、各々、300および1000rpmで回転させながら、その造粒操
作をさらに14分間続けた。得られた細粒を対流式乾燥オーブンを用いて50℃
で12時間乾燥させて球形顆粒を得た。
混合物の組成
塩酸ピリドキシン 25部
結晶セルロース 75部
この得られた球形顆粒の粒径は710−1180μmであり、収率96.4%
であった。
調製例4(25%ファムシクロビル球形顆粒)
この調製例において、以下の組成を有する混合物(500g)をまず攪拌式造
粒機(タイプVG−5、Powlex Corp.製、日本)に充填し、ついで結合剤液とし
て458または459mlの水を、造粒機中にある混合物上に、該造粒機のメ
インブレードおよびクロスブレードを、各々、600および3000rpmで回
転させながら、65ml/分の速度で噴霧した。噴霧終了後、メインブレードお
よびクロスブレードを、各々、300および1000rpmで回転させながら、
その造粒操作をさらに30分間続けた。得られた細粒を対流式乾燥オーブンを用
いて50℃で12時間乾燥させて球形顆粒を得た。
混合物の組成
ファムシクロビル 25部
結晶セルロース 75部
458mlの結合剤液を用いると、得られた球形顆粒の粒径は、600−85
0μmであり、収率97.1%であった。459mlの結合剤液を用いると、得
られた球形顆粒の粒径は、710−1000μmであり、収率97.0%であっ
た。
調製例5(25%塩酸ピリドキシン球形顆粒)
この調製例において、以下の組成を有する混合物(500g)をまず攪拌式造
粒機(タイプVG−5、Powlex Corp.製、日本)に充填し、ついで結合剤液とし
て326mlの水を、造粒機中にある混合物上に、該造粒機のメインブレードお
よびクロスブレードを、各々、600および3000rpmで回転させながら、
80ml/分の速度で噴霧した。噴霧終了後、メインブレードおよびクロスブレ
ードを、各々、400および2000rpmで回転させながら、その造粒操作を
さらに30分間続けた。得られた細粒を対流式乾燥オーブンを用いて50℃で1
2時間乾燥させて球形顆粒を得た。
混合物の組成
塩酸ピリドキシン 25部 結晶セルロース
75部 得られたこの球形顆粒の粒径は300−500μ
mであり、収率90.7%であった。
表I.ピリドキシン球形顆粒の処方(%)
処方番号 PSG-1 PSG-2 PSG-3 PSG-4 PSG-5 PSG-6 PSG-7 PSG-8
塩酸ピリドキシン 25 25 25 25 25 25 25 25
微結晶セルロース 10 20 30 40 50 60 70 75ラクトース
65 55 45 35 25 15 5 0
表II. 結合剤溶液中のエタノール濃度のピリドキシン球形顆粒の形状関数お
よび収率に対する効果
エタノール 形状関数 収率(%)
濃度(%) SF1 SF2
0 124.4 111.1 88.9
10 120.3 111.3 85.3
30 119.5 110.3 85.6
50 118.6 109.7 89.4
70 117.1 109.0 85.0
表III. 微結晶セルロース濃度のピリドキシン球形顆粒の形状関数および収
率に対する効果
微結晶セルロース 形状関数 収率(%)
濃度(%) SF1 SF2
10 120.6 111.1 70.3
20 119.5 109.8 79.3
30 119.7 110.1 83.7
40 119.4 109.6 84.5
50 119.1 111.8 88.9
60 117.3 109.4 94.3
70 115.9 109.9 95.8
75 115.6 109.5 96.6
表IV. 結合剤溶液の25%ピリドキシン球形顆粒の粒径分布に対する効果
粒径 結合剤溶液の配合量(ml)
(μm) 490 500 510 520
1400-1700 0.3% 0.5% 0.9% 1.5%
1180-1400 0.5 1.5 49.0 82.4
1000-1180 1.1 11.9 42.5 12.3
850-1000 1.9 74.0 5.9 2.5
710-850 7.5 10.6 1.1 0.6
500-710 87.7 1.3 0.4 0.3
355-500 0.8 0.1 0.1 0.1
0-355 0.2 0.1 0.1 0.1
D50% 617μm 875μm 1180μm 1270pm
表V. 25%ピリドキシン球形顆粒の形状関数の再現性
番号 SF1 SF2
1 114.1 108.2
2 114.3 108.0
3 114.2 107.9
4 114.4 108.2
表VI. 25%ピリドキシン球形顆粒の粒径分布および収率の再現性
粒径 番号
(μm) No.1 No.2 No.3 No.4
1400-1700 0.9 0.2 0.2 0.4
1180-1400 1.8 1.0 1.0 1.6
1000-1180 5.8 4.1 3.4 3.5
850-1000 61.7 67.4 61.5 66.3
710-850 27.7 24.9 30.8 25.7
500-710 2.1 2.1 2.9 2.1
355-500 0.0 0.2 0,1 0.4
0-355 0.0 0.0 0.1 0.0
収率(710-1180)95.2 96.4 95.7 95.5
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DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
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GE,HU,IL,IS,JP,KG,KR,KZ,L
C,LK,LR,LT,LV,MD,MG,MK,MN
,MX,NO,NZ,PL,RO,RU,SG,SI,
SK,TJ,TM,TR,TT,UA,US,UZ,V
N
(72)発明者 上野 高志
群馬県高崎市大八木町168番地 スミスク
ライン・ビーチャム製薬株式会社 高崎研
究所