【発明の詳細な説明】
無電解ニッケルめっき浴からのオルト亜燐酸塩イオンの除去発明の分野
本発明は、次亜燐酸塩(ハイポホスファイト)還元剤を使用する無電解ニッケ
ルめっき浴に関する。特に、本発明は、(a)無電解めっき反応間に副生物とし
て生成する望ましくない亜燐酸塩(ホスファイト)陰イオンを制御除去し、(b
)浴中でのスラッジの形成を最小限にし、そして(c)望ましくないイオンの存
在及び影響を最小限にすることによって長時間運転するようにされた改良無電解
ニッケルめっき浴に関する。また、本発明は、低い多孔度及び低い圧縮応力を有
するニッケルめっき層に関する。発明の背景
無電解ニッケルめっき法は、外部のめっき電流を必要とせずに金属又は非金属
基体にニッケル金属被覆の連続めっき層を形成するための広く利用されているめ
っき法である。かかる方法は、一般には所望のニッケル金属を付着させるための
制御自動触媒化学的還元法と記載され、そして所望の基体をめっき水溶液中に適
当な無電解めっき条件下に浸漬することによって簡単に達成される。
特に次亜燐酸塩を還元剤として使用した浴から無電解ニッケルめっきを行う際
には、その浴は、基本的には、硫酸ニッケルのようなニッケル陽イオンの源及び
次亜燐酸ナトリウムのような次亜燐酸塩還元剤を含有する。付着反応は浴で行わ
れ、そして一般には所望の基体表面上にめっき層としてニッケル金属合金を形成
するためのニッケル陽イオンの還元を包含する。この還元反応は、一般には、次
の式によって表される。
3H2PO2 -+Ni+22→3/2H2↑+H++2HPO3 -2+P+Ni0
無電解反応は、亜燐酸塩イオン、水素イオン及び水素ガスを生成することが分
かる。また、それは、使用したニッケル源化合物の対イオン、典型的には、SO4 -2
も生成する。ニッケル及び次亜燐酸塩は反応において消費され、従ってそれ
らは頻繁に再補充されなければならない。加えて、反応で生成した水素イオンが
蓄積するにつれて、それらは最適なめっき範囲からのpHの低下をもたらす。所
望のpH範囲を維持するためには、そして通常の実施態様では、めっき反応の間
に特にナトリウムの如きアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩のようなpH調整剤
がしばしば添加される。これは、無電解めっき浴の一価ナトリウム陽イオン濃度
を有意に増大させる。
加えて、最適ニッケル濃度を維持するためにニッケルが通常は硫酸ニッケルの
形態で添加され、これによって望ましくない硫酸塩陰イオンの濃度が増大する。
反応が続くにつれて、副生物及びこれによって形成される浴条件は、所望のめっ
き処理に悪影響を及ぼす問題を提起する。
これらの問題は、次亜燐酸塩還元剤の酸化から生じる亜燐酸塩陰イオンの蓄積
、使用するニッケル塩(典型的には、硫酸塩)の陰イオンの蓄積、並びに外部陽
イオン(特にはナトリウム)の濃度の増大である。かかる陰イオン及び陽イオン
が浴中で蓄積するにつれてのこれらの濃度の増大は、めっき反応に対して有害な
影響をもたらし、そして基体に付着するめっきの品質にも悪影響を及ぼす。特に
、亜燐酸塩陰イオンは、ニッケルめっき層の応力の増大を引き起こし、そしてそ
の応力を圧縮から引張に変える。この増大した応力は、ニッケルめっき層の耐腐
食性を低下させる。また、浴におけるイオン性種の蓄積は、ニッケルめっき層の
品質を低下させ、且つそれをコンピューターのハードデスクの如きハイレベル用
途に対して、並びにCD−ROMや他の光学デスクの貯蔵に対して受け入れでき
ないものにする。更に、亜燐酸塩陰イオンは、しばしばニッケル陽イオンと反応
してそれを亜燐酸ニッケルとして沈殿させることによって浴に悪影響を及ぼす。
これによって、ニッケルの付着速度が遅らされ、浴を長時間運転続けることが妨
げられ、そして浴が不満足なものになり、かくして浴は低レベルの金属の回転数
(即ち、元のニッケル源が補充される回数)で停止される。かくして、亜燐酸塩
、並びに添加されたアルカリ金蔵陽イオン及び硫酸塩の蓄積は、高価なめっき溶
液の長時間で経済的な使用を妨げ、そしてニッケルめっき層に悪影響を及ぼす。
これらの有害な因子そして特に亜燐酸塩及び硫酸塩陰イオンの蓄積は、様々な
処理法の使用によって対処されてきた。これらの処理法は、従来技術では、G.G.
Gawrilovの“Chemical Nickel Plating”,Portcullis Press,England,1974、We
i-chi Ying及びRobert R.Bonkの“Metal Finishing”,85,23-31(Dec.1987)、E.W
.Anderson及びW.A.Neffの“Plating and Surface Finishing”,79,18-26(march1
992)、並びにK.Parkerの“Plating and SurfaceFinishing”,67,48-52(march198
0)のような文献に例示記載されている。
典型的には、これらの従来技術の方法は、めっき浴溶液をカルシウム又はマグ
ネシウム塩、塩化第二鉄及び陰イオン交換樹脂で処理することを包含していた。
例えば、カルシウム及びマグシウムの使用は、アルカリ土類金属の亜燐酸塩及び
硫酸塩イオンの不溶性によって引き起こされる浴での多量のスラッジ発生をもた
らす。塩化第二鉄の添加は、pHを下げそして鉄を浴に導入する。
Malloryの米国特許5338342では、副生物である亜燐酸塩陰イオンは、
水酸化リチウムでの沈殿によって除去されている。発明の概要
しかしながら、ここに本発明において、次亜燐酸塩還元剤又はpH調整剤によ
ってしばしば導入されるナトリウムのような陽イオンが添加されない浴を達成し
ながら、多量のスラッジを発生させずに且つ従来技術の方法の不利益を伴わずに
めっき浴溶液から副生物である亜燐酸塩陰イオンを容易に除去することができる
ことが見い出された。
更に、操作において、高応力レベルではニッケル合金めっき層の耐腐食性が低
下するので、ニッケル合金めっき層の応力を低く保つのが望ましいことが分かっ
た。浴中におけるオルト亜燐酸塩のレベルは、めっき層の応力の重要な決定因子
である。実施例から分かるように、めっき層の応力は、無電解ニッケルめっき浴
のオルト亜燐酸塩(亜燐酸塩)レベルが増大したときに圧縮から引張に変わる。
上記の結果は、無電解ニッケルめっき浴において不溶性亜燐酸塩(これは、浴
から容易に除去されることができる)を形成するアルカリ又はアルカリ土類金属
陽イオンの添加によって達成することができる。アルカリ又はアルカリ土類金属
陽イオンは、めっきしようとする基体が浴中にないときに浴に添加されることが
好ましい。
この処理は、アルカリ又はアルカリ土類金属陽イオンを次亜燐酸塩(これは、
系に外部陽イオンの蓄積を引き起こさせずに不溶性亜燐酸塩の形成を促進する)
の形態で配合することによって更に向上されることができる。この方法は、オル
ト亜燐酸塩が形成されたときにそのほとんど瞬時の除去を可能にし、低応力ニッ
ケル合金めっき層の形成を可能にし、外部陽イオンの蓄積を回避し、そして30
回又はそれ以上程の多くの金属回転数(ターンオーバー)の後でさえも連続した
高いめっき速度を可能にする。
先に記載したように、硫酸塩陰イオンは、浴からオルト亜燐酸塩を沈殿させる
同じアルカリ金属及びアルカリ土類金属陽イオンと不溶性塩を形成する傾向があ
る。これは、浴で多量の粒状物の形成を引き起こす。このスラッジの容量は、約
7回以上の金属回転数(metal turnover)で無電解ニッケル浴を操作するのを困
難にする。それ故に、本発明の好ましい具体例では、ニッケル陽イオンは、オル
ト亜燐酸塩を沈殿させるのに使用した陽イオンと可溶性塩を形成する陰イオンの
塩として系に導入される。発明の詳細な説明
1つの面では、本発明は、新規な無電解ニッケルめっき浴及びかかる浴の操作
法に関する。
他の面では、本発明は、無電解ニッケルめっき浴において亜燐酸塩(ホスファ
イト)陰イオンの除去及びその蓄積の防止のための方法に関する。
更に他の面では、本発明は、浴において不溶性物質の形成を最小限にする無電
解ニッケルめっき浴の操作法に関する。
更に他の面では、本発明は、無電解ニッケルめっき浴からオルト亜燐酸塩(オ
ルトホスファイト)陰イオンを除去するのに使用した陽イオンと可溶性塩を形成
する陰イオンのニッケル塩を該浴で使用することに関する。この面の具体例では
、本発明は、平滑で低い多孔度の無電解ニッケルめっき層に関するものである。
更に他の面では、本発明は、無電解ニッケルめっき浴を操作するための連続法
に関する。1つの具体例では、本発明は、ニッケル及び次亜燐酸塩(ハイポホス
ファイト)を補充するのに使用される補給用溶液に関する。本発明のこれらの及
び他の面は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
無電解ニッケルめっき浴に関する本発明は、次亜燐酸塩イオン、ニッケルイオ
ン、アルカリ金属又はアルカリ土類金属イオン、アルキル硫酸から誘導されるイ
オン、そして随意成分としての緩衝剤、安定剤、錯化剤、キレート化剤、促進剤
、抑制剤又は光沢剤を含む。
1つの具体例では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物は、相当する不
溶性アルカリ金属又はアルカリ土類金属亜燐酸塩を形成するために無電解ニッケ
ル反応の間に浴に添加される。この不溶性亜燐酸塩は、適当なろ過及び/又は分
離操作を使用して浴から除去される。
他の具体例では、無電解ニッケル反応後で且つニッケルを付着させようとする
基体の取り出し後に化学量論的量よりも少ない量(オルト亜燐酸塩と比較して)
のアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物が浴に添加される。このアルカリ金
属又はアルカリ土類金属化合物は不溶性亜燐酸塩を形成する。この不溶性亜燐酸
塩は、適当なろ過及び/又は分離操作を使用して浴から除去される。
いずれの方法でも、浴のオルト亜燐酸塩は最小限にされる。アルカリ金属又は
アルカリ土類金属化合物は、浴中で可溶性になるがしかし不溶性オルト亜燐酸塩
を形成するように選択される。一例として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属
化合物は、リチウム、カリウム、マグネシウム、バリウム及び/又はカルシウム
の酸化物、水酸化物及び炭酸塩であってよい。浴への外部イオンの導入を回避す
るためには、アルカリ金属又はアルカリ土類金属陽イオンを次亜燐酸塩として導
入すること、そして好ましい具体例では次亜燐酸カルシウムを浴に添加すること
が好ましい。次亜燐酸塩からのカルシウムは形成時のオルト亜燐酸塩と反応する
のに有効であるので、望まれないイオンは浴に全く導入されずそしてニッケル合
金めっき層の応力は最小限になる。
別法として、他の好ましい具体例では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属陽
イオンは、部分的に又は全体的にアルキルモノスルホン酸又はアルキルポリスル
ホン酸の塩として添加されることができる。これらのスルホン酸は、ニッケル塩
に関して以下で詳細に記載さている。例えば、次亜燐酸カルシウムの一部分又は
全部を可溶性のメタンスルホン酸カルシウムによって置き換えることができる。
このような場合には、次亜燐酸塩は、次亜燐酸として供給することができる。更
に、次亜燐酸を使用することを選択する場合には、pHは、炭酸アルカリ土類金
属を添加してオルト亜燐酸塩を沈殿させ且つpHを調整することによって制御さ
れることができる。ここでもまた、ニッケル合金めっき膜の応力が最小限にされ
る。
本発明の1つの面の好ましい具体例では、ニッケル化合物は、浴からオルト亜
燐酸塩を沈殿させるのに使用する陽イオンと可溶性塩を形成する対イオンの水溶
性ニッケル塩である。
先に記載したように、オルト亜燐酸塩を除去するのにアルカリ土類金属が使用
されるところの浴において硫酸ニッケルを使用すると、硫酸アルカリ土類金属の
形成がもたらされる。これらは浴において不溶性であり、そしてそこで望ましく
ないスラッジを形成する。
可溶性アルカリ又はアルカリ土類金属塩を形成する陰イオンの塩としてニッケ
ル陽イオンを導入すると、スラッジの堆積が減少されそしてオルト亜燐酸塩の連
続的除去及び浴の連続連続的操作が可能になる。
ニッケルは次亜燐酸、硝酸、酢酸、スルファミン酸、塩酸、乳酸、ぎ酸、プロ
ピオン酸、トリクロル酢酸、トリフルオル酢酸、グリコール酸、アスパラギン酸
、ピルビン酸又はそれらの混合物のような酸の塩として導入されることができる
けれども、実際にはこれらの塩は広範囲には使用されない。というのは、(a)
それらは高応力のめっき層の原因となるか、(b)それらは浴の好ましい操作温
度で分解するか、又は(c)それらの水溶解度は実用的で経済的な工業的用途に
対するそれらの使用を不可能にするかのどちらかであるからである。
1つの好ましい具体例では、ニッケルイオンは、アルキルスルホン酸の塩とし
て導入される。メタンスルホン酸のニッケル塩が特に好ましく、そして無電解ニ
ッケルめっき浴の全ニッケルイオン含量はアルキルスルホン酸塩の形態で供給す
ることができる。
他の具体例では、ニッケルイオンは、次亜燐酸、酢酸、スルファミン酸、乳酸
、ぎ酸又はプロピオン酸及び上記式のアルキルスルホン酸の如き酸の混合塩とし
て導入される。アルキルスルホン酸の導入によって、例えば次亜燐酸のニッケル
塩の溶解度を有意に向上させることができる。
通常の無電解ニッケル浴では、使用するニッケルイオン濃度は典型的には約1
〜約18g/リットル(g/l)であり、そして約3〜約9g/lの濃度が好ま
しい。換言すれば、ニッケル陽イオンの濃度は、0.02〜約0.3モル/リッ
トルの範囲内、好ましくは約0.05〜約0.15モル/リットルの範囲内にあ
る。
アルキルスルホン酸から誘導されるイオンは、式
[式中、
a、b及びcはそれぞれ独立して1〜3の整数であり、
yは1〜3の整数であり、
R”は水素又は低級アルキル(これは、非置換であるか又は酸素、Cl、F、
Br、I、CF3又は−SO2OHによって置換される)であり、
R及びR’はそれぞれ独立して水素、Cl、F、Br、I、CF3又は低級ア
ルキル(これは、非置換であるか又は酸素、Cl、F、Br、I、CF3又は−
SO2OHによって置換される)であり、そして
a+b+c+yの合計=4]
を有する。
代表的なスルホン酸の例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸及び
プロパンスルホン酸のようなアルキルモノスルホン酸、並びにメタンジスルホン
酸、モノクロルメタンジスルホン酸、ジクロルメタンジスルホン酸、1,1−エ
タンジスルホン酸、2−クロル−1,1−エタンジスルホン酸、1,2−ジクロ
ル−1,1−エタンジスルホン酸、1,1−プロパンジスルホン酸、3−クロル
−1,1−プロパンジスルホン酸、1,2−エチレンジスルホン酸及び1,3−
プロピレンジスルホン酸のようなアルキルポリスルホン酸が挙げられる。
入手容易性のために、好ましいスルホン酸は、メタンスルホン酸及びメタンジ
スルホン酸である。
本発明に従って浴中に使用される次亜燐酸塩還元剤は、次亜燐酸ナトリウムの
如く無電解ニッケルめっきに通常使用されるもののどれであってもよい。
しかしながら、本発明に従った特に好ましい具体例では、反応に使用される次
亜燐酸塩還元剤はニッケル塩又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属塩例え
ば次亜燐酸カルシウムであり、そしてこれは更に反応浴へのナトリウム陽イオン
の外部導入を最小限にする働きをする。更に、次亜燐酸カルシウムの使用は、所
望の亜燐酸カルシウムの形成を促進するために浴へのカルシウムの追加的な源を
提供する。
めっき浴中に使用される還元剤の量は、無電解ニッケル反応におけるニッケル
陽イオンを遊離ニッケル金属に化学量論的に還元するのに少なくとも十分なもの
であり、そしてかかる濃度は、通常は、約0.05〜約1.0モル/リットルの
範囲内である。換言すれば、次亜燐酸塩還元剤は、約2〜約40g/lまでそし
て好ましくは約12〜25g/lの次亜燐酸塩イオン濃度を提供するように導入
されるが、約15〜約20g/lの濃度が最適である。使用するニッケルイオン
及び次亜燐酸塩イオンの特定濃度は、浴中におけるこれらの2つの成分の相対的
濃度、浴の特定の操作条件、並びに存在する他の浴成分の種類及び濃度に依存し
て変動する。通常の実施態様として、還元剤は反応間に補充される。
上記の記載は開始時から浴を形成することを企図しているけれども、既存の硫
酸ニッケル浴を迅速に変換することが可能である。これは、アルキルスルホン酸
のアルカリ土類金属塩(例えば、メタンスルホン酸カルシウム)を、硫酸アルカ
リ金属を沈殿させそしてスルホン酸アルキルをニッケル対イオンとして残すのに
十分な量で導入することによって達成される。しかる後、次亜燐酸カルシウムが
徐々に添加され、これによってオルト亜燐酸塩が沈殿される。
本発明に従った浴は、ニッケル及び次亜燐酸塩の源の他に、他の慣用浴添加剤
、例えば、緩衝剤、錯化剤、キレート化剤、並びに促進剤、安定化剤、抑制剤及
び光沢剤を含有することができる。
めっき浴に対して使用される温度は、一部分、所望のめっき速度及び浴の組成
の関数である。典型的には、温度は約25℃から100℃における常圧沸点の通
常の範囲内であるけれども、好ましい具体例では特定のめっき溶液温度は通常は
約90℃でありそして約30〜95℃の範囲内である。
無電解ニッケルめっき浴は、約4〜約10までのpHにおける酸性側及びアル
カリ側を含めた広いpH範囲にわたって操作することができる。酸性浴では、p
Hは一般には約4〜約7までの範囲にわたってよいが、約4.3〜約4.2のp
Hが好ましい。アルカリ性浴では、pHは一般には約7〜約10までの範囲にわ
たってよいが、約8〜約9のpH範囲が好ましい。浴はその操作間に水素イオン
の形成によってより酸性になる傾向を有するので、pHは、アルカリ金属やアン
モニウムの水酸化物、炭酸塩及び重炭酸塩のような浴に可溶性で且つ相容性のア
ルカリ性物質を添加することによって定期的に又は連続的に調整される。また、
操作pHの安定性は、酢酸、プロピオン酸、ホウ酸等の如き種々の緩衝剤化合物
を約30g/lまでの量で添加することによって提供されることができるが、約
4から約12g/lの量が典型的である。
本発明の方法を実施するに当たっては、使用する特定の態様又は操作は、安定
化をバッチ法として実施するか又は連続法として実施するかによって左右される
。
しかしながら、一般には、通常のめっき操作を適当な無電解ニッケルめっき条
件下に続けた場合には、めっき処理は、めっきされつつしつつある基体の取り出
しによって終了される。めっき処理の終了点又は期間は、めっき層に望まれるニ
ッケル金属の量、めっき速度、めっき温度及び浴組成のような幾つかの因子に左
右される。本発明の1つの具体例に従えば、めっきを終了した後にオルト亜燐酸
塩の濃度を制御するためにアルカリ金属又はアルカリ土類金属例えばカルシウム
を添加することが好ましい。
形成した不溶性アルカリ金属又はアルカリ土類金属亜燐酸塩の除去は、デカン
テーション、遠心分離又はろ過の如き適当な分離技術を使用して達成することが
できる。しかしながら、操作の容易性のためにろ過が好ましい操作であり、そし
てこれは不溶化した亜燐酸塩を捕捉するのにほぼ正確な細孔寸法を有する適当な
ろ過媒体にめっき浴を通すことによって実施することができる。かかる目的に対
して、約5ミクロン以下の範囲の捕捉寸法を有するろ過器が好適である。
本発明の特に好ましい有益な特徴は、浴を連続態様で操作するのが可能になる
ことである。本発明の無電解ニッケルめっき浴の連続操作を実施するに際しては
、所望の浴成分を含有するがしかし好ましくはせいぜい極低レベルでアルカリ金
属又はアルカリ土類金属陽イオンを含むめっき浴が、ガラス又はプラスチックタ
ンクのような適当なめっき容器又は浴帯域に維持される。めっき処理は、無電解
ニッケルめっき条件下に適当な基体に対して行われる。次いで、めっき容器から
浴の流れ部分が連続的に抜き出され、そして適当な配管手段によって容器又はタ
ンクのような分離帯域に送られる。めっき容器からの抜き取り速度は、亜燐酸塩
濃度蓄積を監視することによって制御することができ、そして抜き取り速度は、
所望の亜燐酸塩濃度を一般には約0.4モル/リットル以下に維持するように高
低されることができる。亜燐酸塩の濃度は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属
陽イオンを分離帯域に添加して懸濁した不溶性アルカリ金属又はアルカリ土類金
属亜燐酸塩を形成し次いでそれを除去帯域に送り、そこで不溶性亜燐酸塩を浴の
溶液から分離することによって制御される。かかる除去帯域は、おおよそ、約0
.5ミクロン以下の粒度のものを連続態様で分離する能力を有する通常設計のろ
過器であってよい。次いで、浴の流れ部分は、浴溶液に亜燐酸塩陰イオンを実質
上含まない補充浴溶液を連続的に加えるために浴帯域に連続的に戻される。
かくして、この連続法は、ニッケル及び次亜燐酸塩めっき材料の源を通常態様
で補給して長時間のめっき操作が可能な浴を得ることによって長時間にわたって
操作されることができる。
上記の改善は、出発時から必要な成分を使用して処方された浴の連続操作と関
係を有していた。しかしながら、標準硫酸ニッケル浴を補充して利益を得るため
に個々に記載の材料を使用することができる(ゆっくりそして長時間にわたるけ
れども)。かくして、標準浴中のニッケルは、アルキルスルホン酸のニッケル塩
で補充されることができる。このアルキルスルホン酸は、浴中の他の成分と相容
性である。同時に、次亜燐酸塩濃度は、次亜燐酸カルシウムで補充されることが
できる。実施例
次の実施例は、本発明の無電解ニッケルめっき浴及び本発明を実施する態様を
例示するために提供されるものである。例1
種々の無電解ニッケル浴溶液組成物(NiSO4対NiMSA対NiHypo
)中の亜燐酸塩イオンを除去するためのカルシウムイオンの添加が被膜の特性に
及ぼす影響を調べた。
サウスカロナイナ州ロックヒル所在のアトテク・USA・インコーポレーテッ
ド(商品名“Nichem”の下に販売)、コネチカット州ウオーターベリ所在のマク
ダーミッド(商品名“Niklad systems”の下に販売)、マサチューセッツ州マー
ルボロー所在のシップレイ(商品名“Duraposit,Niculloy systems”の下に販売
)、ニュージャージー州ニューアーク所在のフィデリティ(商品名“Fidelity E
N systems”の下に販売)、及びコネチカット州ニューヘブン所在のエソン(商
品名“Enplate systems”の下に販売)によって販売されるような市販の錯化剤
及び/又は緩衝剤パッケージを使用することによって無電解ニッケル溶液を調製
した。各例では、Nichem 2500製品を使用した。
無電解ニッケル溶液を次の如くして処方した。溶液1A:硫酸ニッケルを基材
アトテク・USA・インコーポレーテッドから商品名 “Nichem 2500”の下
に販売される市販の組成兼補充溶液を使用した。硫酸ニッケルは、Nichem 2500
A溶液であった。この原液から、組成時に80ml/lを加えた。Nichem 2500
Bを150ml/lで加え、そして最終容量は1000mlであった。めっきの
間、1回の金属の回転数当たり80ml/lのNichem 2500A及び80ml/l
のNlchem 2500Cを使用して各成分の濃度を維持した。溶液1B:メタンスルホン酸ニッケルを基材
150g/lのNiCO3を360ml/lの70%MSA中に溶解させるこ
とによってNi(MSA)2原液を調製した。この溶液に、0.031g/lの
Cd(OEs)2及び0.025g/lのチオ尿素を添加した。同じNichem 2500
B及びC成分をそれぞれ、組成(15%のNichem 2500 B)及び補充(8%のN
ichem 2500 C)に使用した。溶液1C:次亜燐酸ニッケルを基材
70gの炭酸ニッケルを156mlの50%次亜燐酸溶液中に溶解させ次いで
1リットルに希釈することによってNi(H2PO2)2原液を調製した。Ni+2
の最終濃度は35g/lであり、そしてH2PO2 -は78g/lであった。この
溶液に、0.014g/lのエタンスルホン酸カドミウムCd(OEs)2及び
0.009g/lのチオ尿素を添加した。無電解ニッケル溶液の組成時にこの原
液の合計171ml/lを加えた。Ni+2をNi(H2PO2)2として添加する
ことによって、このA成分から13.6g/lのH2PO2 -(NaH2PO2・H2
Oとして22.5g/l)も添加される。それ故に、A成分からの次亜燐酸塩添
加を補うためにB成分を調節することが必要であった。また、組成及び補充間に
A成分の添加された容量を補うためにチオ尿素及びCd+2濃度も調節された。
次亜燐酸塩浴の成分Bは、Nichem 2500 Bと同じくなるように製造された。こ
れは、次の組成を有していた。
NaH2PO2・H2O−50g/l
乳酸−200ml/l
酢酸−100ml/l
プロピオン酸−15ml/l
グリシン−35g/l
NaOH−125g/l
Pb(NO3)2−15ppm
次亜燐酸塩浴の成分C(補充用)は、Nichem 2500 Cと同じくなるように製造
された。これは、次の組成を有していた。
NaH2PO2・H2O−95g/l
乳酸−5ml/l
酢酸−2.5ml/l
プロピオン酸−1ml/l
グリシン−2g/l
NaOH−30g/l
NH3−3ml
Pb(NO3)2−150 ppm
Cd(OEs)2−150 ppm
B及びC成分の容量は、それぞれ溶液1A及び1Bにおけるように同じで15
%及び8%v/vのままであった。溶液Aの各々へのCa+2の添加の結果−溶液老化(金属の回転数)がめっき速度 に及ぼす影響
この速度は、めっき前後に低炭素鋼クーポンを計量することから測定された。
無電解ニッケル被覆の重量をめっきした表面の面積によって割って1cm2当た
りのニッケル−燐被覆のg数(g/cm2)を得た。次いで、この値をこの被覆
の密度(7.9g/cm3)によって割ってcm単位の厚さを得、次いでこれを
ミクロンに転換した。
3種のすべての被覆は平滑で、そして3のMTOまで光沢があった。一般には
、3種のすべてのめっき層の表面モルホロジーは、走査電子顕微鏡を使用して特
徴づけたときに同じであった。3のMTOにおいて、表面に小さな表面ノジュー
ルが見られる。これらのノジュールは、約2〜5μmの寸法である。約4のMT
Oでは、小さな表面ノジュールは、寸法が約5〜10μmに増大している。既存
の表面ノジュールに隣接して又はその頂部に存在する幾つかの小さなノジュール
がしばしば見られる。5のMTOでは、表面全体に大きなノジュールがなお分散
されているが、しかし多数のより小さなノジュール(1〜3μm)がENめっき
層の表面を完全に覆っている。6のMTOでは、そのより小さなノジュールは約
2〜6μmに成長する。既存のノジュールの上で成長する多くのより小さなノジ
ュールが再び見られる。これらの丸い山は、割れ目によって囲まれている。7の
MTOでは、ノジュールを囲む割れ目は深くなるようであった。ENめっき層の
表面全体に小さな亀裂が成長し始めた。8のMTOでは、より小さな重なったノ
ジュール状構造を持つ大きなノジュールが表面を覆っている。割れ目は深かった
。
8のMTO及びオルト亜燐酸塩H2PO3 -の分析の後に、溶液に化学量論的量
のCa+2をCa(MSA)2(1.5M Ca+2及び3.0M メタンスルホン
酸塩)として添加した。その後、沈殿物Ca(H2PO3)2をろ過によって除去
した。
Ca+2処理後、8のMTO後に存在するこれらのノジュールは、完全に消滅し
たか、又は寸法や密度が有意に減少され、そして硫酸ニッケル系を除いてめっき
速度が向上した。これは、H2PO3 -の不完全除去によるものである。というの
は、カルシウムイオンのいくらかが硫酸塩イオンと反応しているからである。表1.溶液老化(金属の回転数)がめっき速度に及ぼす影響
めっき速度(ミクロン/Hr)
1A 1B 1C
MTO NiSO4 NiMSA NiHypo
0 20.3 20.7 19.3
1 20.7 18.8 21.4
2 19.3 18.2 20.5
3 19.9 18.1 19.3
4 18.8 17.4 18.9
5 18.7 18.1 18.9
6 17.9 17.7 19.6
7 18.2 16.5 17.9
8 17.2 16.2 18.5
9 17.1 18.5 19.9
10 16.2 18.7 19.2B−溶液老化(金属の回転数)がニッケル被覆の応力に及ぼす影響
米国フィラデルフィア州フェアフィールド所在のスペシャルテイ・テスティン
グ・アンド・デベロップメント・カンパニーから得られる応力ストリップを使用
して内部応力を測定した。応力タブを温和なアルカリ性溶液中に50℃で15秒
間浸漬することによって浄化した。水で濯いだ後、タブを乾燥しそして計量した
。めっき後に、応力ストリップを再計量しそして被覆の重量を計算した。次いで
、スペシャルテイ・テスティング・アンド・デベロップメント・カンパニーから
得られる用途パンフレットに記載されるようにしてストリップの常数、重量増加
、及び被覆の密度から応力を測定した。
初期において、すべてのめっき層の応力は圧縮であり、そして2のMTOのた
めに増大した。2〜7の間のMTOでは、すべての被覆において応力が徐々に増
大したがしかし約7のMTOまで圧縮のままであった。
8のMTO後に、応力が張力であるときに、そしてオルト亜燐酸塩H2PO3 -
の分析後に、溶液に化学量論的量のCa+2をCa(MSA)2として添加しそし
て沈殿をろ過によって除去した。NiMSA及びNiHypo溶液中のH2PO3 -
の完全除去によって、応力は張力から圧縮のもとの状態に戻された。NiSO4
溶液は、H2PO3-のすべてを除去する困難さの故になお引張応力を示した。
H2PO3 -除去後の応力は元の溶液におけるとほぼ同じであることに注目される
。表2.溶液老化(金属の回転数)がニッケル被覆の応力に及ぼす影響
内部応力(PSI)
1A 1B 1C
MTO NiSO4 NiMSA NiHypo
0 −10500 −5097 −7300
1 −9000 −12917 −8200
2 −9250 −13800 −8500
3 −8700 −8400 −7200
4 −8200 −7500 −5000
5 −5400 −3200 −3800
6 −2800 −1050 −2100
7 −1100 +550 −150
8 +850 +1025 +2000
9 +1700 −8345 −5100
10 +3200 −7450 −6100例2 ナトリウム、硫酸塩及びメタンスルホン酸の如き外部イオンの蓄積なし
次の溶液組成物を調製した。
溶液2A 溶液2B 溶液2C 溶液2D
NiS04・6H20 g/l 27 −− −− −−
Ni(MSA)・xH2O g/l −− 27 −− −−
Ni(H2PO2) g/l −− −− 19.2 19.2
MSA ml/l −− −− −− 14.4
Ni+2として g/l 6 6 6 6
乳酸 ml/l 30 30 30 30
酢酸 ml/l 15 15 15 15プロピオン
酸 ml/l 5 5 5 5
H3PO2 ml/l 44 44 17.4 17.4
NaOH g/l 25 25 25 30
Pb(N03)2 g/l 0.003 0.003 0.003 0.003
Cd(OEs)2 g/l 0.0024 0.0024 0.0024 0.0024
チオ尿素 g/l 0.0016 0.0016 0.0016 0.0016
NH3 pH4.8にするのに十分な量
註書:
1.硫酸ニッケル溶液は硫酸ニッケル結晶(333g/l)を使用して調製さ
れた。Ni+2の最終濃度は75g/lであった。この溶液に0.030g/lのエ
タンスルホン酸カドミウムCd(OEs)2及び0.020g/lのチオ尿素を
加えた。この原液から、80ml/lを溶液Aの組成時に加えた。
2.メタンスルホン酸ニッケル溶液である溶液Bは、150gの炭酸ニッケル
を約360mlの70%メタンスルホン酸及び水中にNi+2の最終濃度が75g
/lになるように溶解させることによって調製された。この溶液に0.030g
/lのエタンスルホン酸カドミウムCd(OEs)2及び0.020g/lのチ
オ尿素を加えた。この原液から、80ml/lを溶液Bの組成時に加えた。
3.次亜燐酸ニッケル溶液である溶液Cは、70gの炭酸ニッケルを156m
lの50%次亜燐酸溶液に溶解させ次いで1リットルに希釈することによって調
製された。Ni+2の最終濃度は35g/lであり、そしてH2PO2 -は78g/lで
あった。この溶液に0.014g/lのエタンスルホン酸カドミウムCd(OE
s)2及び0.009g/lのチオ尿素を加えた。無電解ニッケル溶液を作るの
にこの原液の合計171m/lを加えた。
4.混合した対イオン溶液である溶液Dは、上記の註3におけるようにして調
製された。この溶液に14.4ml/lのメタンスルホン酸を加えた。
5.還元剤である次亜燐酸塩(H2PO2 -)は、酸、即ち、次亜燐酸として添
加された。44ml/lの50%溶液の添加は、H2PO2-として22g/lをもた
らした(NaH2PO2として30g/l)。
6.75gの炭酸カルシウムCaCO3を196ml/lの50%次亜燐酸中
に溶解させ次いで1リットルに希釈することによって次亜燐酸カルシウム溶液を
調製した。これは、30g/lの最終Ca+2濃度及び97.5g/lとしてのH2PO2 -
をもたらした。
7.1g/lのチオ尿素を含有するチオ尿素の原液を調製した。
8.14g/lのエタンスルホン酸カドミウムを含有するエタンスルホン酸カ
ドミウムの原液を調製した。
9.11.2g/lの硝酸鉛を含有する硝酸鉛の原液を調製した。
10.すべての溶液のpHは4.8〜4.95であり、そして操作温度は89〜
92℃の間に保たれた。
11.150g/lのCaCO3を400mlのメタンスルホン酸中に溶解させ
ることによってCa(MSA)2の原液を調製した。この溶液をろ過すると、C
a+2としての60g/lの最終濃度及び286g/lのメタンスルホン酸塩の最
終濃度が得られた。
これらの溶液を使用して、オルト亜燐酸塩(H2PO3 -)の補充及び除去につ
いて研究を行った。例2A−硫酸ニッケル溶液
鋼クーポンを温和なアルカリ性洗浄剤中で浄化し次いで10%塩酸溶液中に室
温で5秒間浸漬して活性化した。このクーポンを溶液Aにおけるめっき前後に計
量した。
クーポン#1
めっき前の重量−7.9243g
めっき後の重量−10.028g
めっき層の総重量−2.1037g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、26mlの硫酸ニッケル原液、1.87ml
のチオ尿素原液、0.30mlのエタンスルホン酸カドミウム原液、0.30m
lの硝酸鉛原液、75mlの次亜燐酸カルシウム原液及び5mlの水酸化アンモ
ニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置してからろ過した。溶液を90℃に
再加熱した。
クーポン#2
めっき前の重量−8.0211g
めっき後の重量−10.0728g
めっき層の総重量−2.0517g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、26mlの硫酸ニッケル原液、1.87ml
のチオ尿素原液、0.30mlのエタンスルホン酸カドミウム原液、0.30m
lの硝酸鉛原液、75mlの次亜燐酸カルシウム原液及び5mlの水酸化アンモ
ニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置してからろ過した。溶液を91℃に
再加熱した。
クーポン#3
めっき前の重量−7.9461g
めっき後の重量−10.0377g
めっき層の総重量−2.0916g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、26mlの硫酸ニッケル原液、1.87ml
のチオ尿素原液、0.30mlのエタンスルホン酸カドミウム原液、0.30m
lの硝酸鉛原液、75mlの次亜燐酸カルシウム原液及び5mlの水酸化アンモ
ニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置してからろ過した。
3個のクーポン後に、溶液から約6g/lのNi+2がめっきされたが、これは
1回の金属の回転に相当する。3個のクーポン後に加えた次亜燐酸カルシウムの
総量は225ml/lであった。それ故に、6.75g/lのCa+2(0.17
M)及び22g/lのH2PO2-が添加された。標準沃素−チオ硫酸塩操作を使
用して次亜燐酸塩(H2PO2 -)及びオルト亜燐酸塩(H2PO2 -)の分析を行っ
た。分析は、無電解ニッケル溶液が23.8g/lのH2PO2 -及び14.7g/
lのH2PO3 -を含有することを示した。1回の金属の回転では、約27g/l
のH2PO3 -(0.33M)が溶液中に形成された。それ故に、溶液から理論上
すべてのH2PO3 -を沈殿させるのに十分なカルシウムが次亜燐酸カルシウム原
液から加えられた。しかしながら、カルシウムの一部分が硫酸塩と反応したに違
いない。というのは、依然としてかなりの量のH2PO3 -が溶液中に存在してい
たからである。例2B.NiMSA溶液
鋼クーポンを温和なアルカリ性洗浄剤中で浄化し次いで10%塩酸溶液中に室
温で5秒間浸漬して活性化した。このクーポンを溶液Bにおけるめっき前後に計
量した。
クーポン#1
めっき前の重量−7.8244g
めっき後の重量−9.8002g
めっき層の総重量−1.9758g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、26mlのメタンスルホン酸ニッケル原液、
1.87mlのチオ尿素原液、0.30mlのエタンスルホン酸カドミウム原液
、0.30mlの硝酸鉛原液、75mlの次亜燐酸カルシウム原液及び5mlの
水酸化アンモニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置してからろ過した。溶
液を90℃に再加熱した。
クーポン#2
めっき前の重量−8.2246g
めっき後の重量−10.3369g
めっき層の総重量−2.1123g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、26mlのメタンスルホン酸ニッケル原液、
1.87mlのチオ尿素原液、0.30mlのエタンスルホン酸カドミウム原液
、0.30mlの硝酸鉛原液、75mlの次亜燐酸カルシウム原液及び5mlの
水酸化アンモニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置してからろ過した。溶
液を90℃に再加熱した。
クーポン#3
めっき前の重量−7.8562g
めっき後の重量−9.7808g
めっき層の総重量−1.9246g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、26mlのメタンスルホン酸ニッケル原液、
1.87mlのチオ尿素原液、0.30mlのエタンスルホン酸カドミウム原液
、0.30mlの硝酸鉛原液、75mlの次亜燐酸カルシウム原液及び5mlの
水酸化アンモニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置してからろ過した。
3個のクーポン後に、溶液から約6g/lのNi+2がめっきされたが、これは
1回の金属の回転に相当する。3個のクーポン後に加えた次亜燐酸カルシウムの
総量は225ml/lであった。それ故に、6.75g/lのCa+2(0.17
M)及び22g/lのH2PO2 -が添加された。標準沃素−チオ硫酸塩操作を使
用して次亜燐酸塩(H2PO2 -)及びオルト亜燐酸塩(H2PO3 -)の分析を行っ
た。分析は、無電解ニッケル溶液が21.3g/lのH2PO2一及び1.4g/l
のH2PO3 -を含有することを示した。1回の金属の回転では、約27g/lの
H2PO3 -(0.33M)が溶液中に形成された。それ故に、溶液から理論上す
べてのH2PO3 -を沈殿させるのに十分なカルシウムが次亜燐酸カルシウム原液
から加えられた。カルシウムの大部分がオルト亜燐酸塩と反応しそして亜燐酸塩
が溶液からろ過によって除去されたようである。例2C−次亜燐酸Ni溶液
鋼クーポンを温和なアルカリ性洗浄剤中で浄化し次いで10%塩酸溶液中に室
温で5秒間浸漬して活性化した。このクーポンを溶液Cにおけるめっき前後に計
量した。
クーポン#1
めっき前の重量−7.9246g
めっき後の重量−10.1349g
めっき層の総重量−2.2103g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、57mlの次亜燐酸ニッケル原液、1.90
mlのチオ尿素原液、0.28mlのエタンスルホン酸カドミウム原液、0.3
4mlの硝酸鉛原液、30mlのCa(H2PO2)2原液、2g/lの水酸化ナ
トリウム及び5mlの水酸化アンモニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置
してからろ過した。溶液を90℃に再加熱した。
クーポン#2
めっき前の重量−8.1278g
めっき後の重量−10.0821g
めっき層の総重量−1.9543g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、57mlの次亜燐酸ニッケル原液、1.90
mlのチオ尿素原液、0.28mlのエタンスルホン酸カドミウム原液、0.3
4mlの硝酸鉛原液、30mlのCa(H2PO2)2原液、2g/lの水酸化ナ
トリウム及び5mlの水酸化アンモニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置
してからろ過した。溶液を90℃に再加熱した。
クーポン#3
めっき前の重量−8.0566g
めっき後の重量−10.1354g
めっき層の総重量−2.0788g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、57mlの次亜燐酸ニッケル原液、1.90
mlのチオ尿素原液、0.28mlのエタンスルホン酸カドミウム原液、0.3
4mlの硝酸鉛原液、30mlのCa(H2PO2)2原液、2g/lの水酸化ナト
リウム及び5mlの水酸化アンモニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置し
てからろ過した。溶液を約90℃に再加熱した。
3個のクーポン後に、溶液から約6g/lのNi+2がめっきされたが、これは
1回の金属の回転に相当する。合計90mlのCa(H2PO2)2原液が次亜燐
酸ニッケル溶液に添加された。分析は、次亜燐酸塩濃度が24.2g/lであり
そしてオルト亜燐酸塩が18g/lでることを示した。添加したカルシウムの総
量は、Ca+2として2.7g/lであった(0.067M)。1回の金属の回転で
は、約27g/lのH2PO3 -(0.33M)が溶液中に形成された。それ故に
、溶液から理論上すべてのH2PO3 -を沈殿させるには不十分なカルシウムが次
亜燐酸カルシウム原液から加えられた。カルシウムの全部がオルト亜燐酸塩と反
応しそして亜燐酸塩の一部分が溶液からろ過によって除去されたようである。例2D.次亜燐酸Ni溶液+メタンスルホン酸
鋼クーポンを温和なアルカリ性洗浄剤中で浄化し次いで10%塩酸溶液中に室
温で5秒間浸漬して活性化した。このクーポンを溶液Cにおけるめっきの前後に
計量した。
クーポン#1
めっき前の重量−8.1342g
めっき後の重量−10.2652g
めっき層の総重量−2.1310g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、57mlの次亜燐酸ニッケル原液、1.90
mlのチオ尿素原液、0.28mlのエタンスルホン酸カドミウム原液、0.3
4mlの硝酸鉛原液、30mlのCa(H2PO2)2原液、2g/lの水酸化ナ
トリウム及び5mlの水酸化アンモニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置
してからろ過した。溶液を約90℃に再加熱した。
クーポン#2
めっき前の重量−7.8975g
めっき後の重量−9.9918g
めっき層の総重量−2.0943g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、57mlの次亜燐酸ニッケル原液、1.90
mlのチオ尿素原液、0.28mlのエタンスルホン酸カドミウム原液、0.3
4mlの硝酸鉛原液、30mlのCa(H2PO2)2原液、2g/lの水酸化ナ
トリウム及び5mlの水酸化アンモニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置
してからろ過した。溶液を約90℃に再加熱した。
クーポン#3
めっき前の重量−8.0784g
めっき後の重量−10.2049g
めっき層の総重量−2.1265g
(1回の金属の回転の約1/3に相当する)
クーポンを溶液中に入れないで、57mlの次亜燐酸ニッケル原液、1.90
mlのチオ尿素原液、0.28mlのエタンスルホン酸カドミウム原液、0.3
4mlの硝酸鉛原液、30mlのCa(H2PO2)2原液、2g/lの水酸化ナ
トリウム及び5mlの水酸化アンモニウムを加えた。溶液混合物を30分間放置
してからろ過した。溶液を約90℃に再加熱した。
3個のクーポン後に、溶液から約6g/lのNi+2がめっきされたが、これは
1回の金属の回転に相当する。合計90mlのCa(H2PO2)2原液が次亜燐
酸ニッケル溶液に添加された。分析は、次亜燐酸塩濃度が22.9g/lであり
そしてオルト亜燐酸塩が17g/lでることを示した。添加したカルシウムの総
量は、Ca+2として2.7g/lであった(0.067M)。1回の金属の回転で
は、約27g/lのH2PO3 -(0.33M)が溶液中に形成された。それ故に
、溶液から理論上すべてのH2PO3 -を沈殿させるには不十分なカルシウムが次
亜燐酸カルシウム原液から加えられた。カルシウムの全部がオルト亜燐酸塩と反
応しそして亜燐酸塩の一部分が溶液からろ過によって除去されたようである。例3 オルト亜燐酸塩の現場除去
この研究は、カルシウムの添加が好ましくは別個のめっきタンクにおいてオフ
ラインで行われるか、又はめっきタンクに基体が存在しない場合にだけ主めっき
タンクで行われることを示すものである。
この研究では、上記の溶液2B(メタンスルホン酸ニッケル)が使用された。
補充を行いつつ2回の金属の回転までめっきした後に、溶液を次亜燐酸塩及びオ
ルト亜燐酸塩について分析した。操作する溶液は、H2PO2 -として23.5g
/l及びH2PO3 -として57g/lを含有していた。一片の低炭素鋼を無電解
ニッケル溶液中に浸漬しそしてニッケル−燐めっき層で被覆しつつある間に、5
0ml/lのメタンスルホン酸カルシウム原液を操作溶液に徐々に添加した。溶
液中に浮遊する白色沈殿が見られた。30分間のめっき後に、無電解ニッケル溶
液から鋼クーポンを取り出し、乾燥させ、そして走査電子顕微鏡で調べた。めっ
き層の表面は粗く、そして大きな結節状で不規則な突起を有していた。元素分析
によれば、これらの粗い領域はカルシウム及び燐の含量が高かった。これらの大
きな突起は吸蔵された亜燐酸カルシウムのようである。それ故に、亜燐酸塩を除
去する現場法は、本発明の好ましい方法ではないようである。亜燐酸塩の沈殿は
好ましくは、めっきタンクでめっきが行われないときに又はそれが別のタンクで
オフラインで行われなければならないときに生じるはずである。無電解ニッケル
溶液では過剰量のカルシウムはオルト亜燐酸塩の自発的沈殿のために望まれない
。0.05〜2.0MのH2PO3 -のように僅かに過剰量の亜燐酸塩を使用する
のが好ましい。というのは、これらの濃度は、無電解ニッケル被覆の特性に悪影
響を及ぼさないからである。
本発明をニッケルめっき層に関連して説明したけれども、他の金属をめっきし
て燐合金を形成することが可能である。かかる金属は、鉄、コバルト、タングス
テン、チタン及びホウ素を包含する。