JP2000346314A - 交互燃焼式蓄熱型バーナシステム及びそれを利用した加熱炉 - Google Patents

交互燃焼式蓄熱型バーナシステム及びそれを利用した加熱炉

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 バッチ炉、連続炉における扉側と炉奥側との
温度差を解消する。 【解決手段】 蓄熱器を通して燃焼用空気の供給と燃焼
ガスの排出とを交互に行って蓄熱器で排ガス温度に近い
高温に予熱された燃焼用空気を得て燃焼させる蓄熱型バ
ーナを対にして短時間に交互に燃焼させることによって
1つの燃焼システムを構成する交互燃焼式蓄熱型バーナ
システムにおいて、対を成す蓄熱型バーナの間で燃焼量
を同じにして燃焼時間を異ならせるようにするか、ある
いは対を成す蓄熱型バーナの間で燃焼時間を同じにして
燃焼量を異ならせるか、若しくは対を成す蓄熱型バーナ
の間で燃焼量および燃焼時間の双方を異ならせるように
している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蓄熱器を利用して
燃焼用空気と排ガスとの間で熱交換させて排ガス温度に
近い高温の予熱空気を得て交互燃焼させる一対の蓄熱型
バーナから成る燃焼システム及びそれを利用した加熱炉
に関する。更に詳述すると、本発明は、一対のバーナ間
での燃焼制御装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】バッチ操業の加熱炉では、被加熱物の装
入装出扉の開閉による冷却のため、扉側の温度が炉奥側
の温度より低く、扉側にある被加熱物の温度上昇が炉奥
にある被加熱物の昇温より遅れる。また、図9に示すよ
うな連続式加熱炉の各ゾーンにおいても、或るゾーン10
1に有る被加熱物Wの扉側の部位P1は、前ゾーン102に有
る温度の低い被加熱物W2に輻射熱を取られながら加熱さ
れ、炉奥側の部位P2は次ゾーン103に有るより高い温度
の被加熱物W3から輻射熱を受けながら加熱されるので、
バッチ炉と同様に扉側の被加熱物の昇温が炉奥側の被加
熱物の昇温より遅れる。
【0003】このような被加熱物の昇温の遅れを解消す
るには、バッチ炉の扉側の炉温を炉奥側の炉温に近づ
け、または連続炉の各ゾーンでは被加熱物装入側の炉温
を炉奥側すなわち被加熱物取出口側の炉温により近づけ
たり、また場合によってはより高くする必要がある。
【0004】そこで、従来の炉例えばレキュペレータ付
ラジアントチューブを加熱源とする炉では、扉側の炉温
と炉奥側の炉温の差を小さくするために、チューブ温度
の高いバーナ側を扉側に近接し、温度の低いレキュペレ
ータ側を炉奥側に向けて取り付けるようにされている。
【0005】また、多くの場合には、1つのゾーン201
に複数のラジアントチューブ(殆どの場合には設置スペ
ースの制限からシングルエンド型ラジアントチューブ)
202,203,204を並べて設置し、扉205寄りに配置されたラ
ジアントチューブ202の燃焼量を炉奥206側に配置された
ラジアントチューブ204の燃焼量より増して炉内の扉205
側と炉奥206側の温度差を解消して炉温の均一化を図る
方法が取られている(図10参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、レキュ
ペレータ付ラジアントチューブのバーナ側とレキュペレ
ータ側との間の温度差を利用するだけでは炉の扉側と炉
奥側の温度差を解消するには至らない。
【0007】また、複数のラジアントチューブを設置し
て扉側のラジアントチューブの燃焼量を奥側のそれより
も上げて扉側と炉奥の温度差を少なくする場合には、炉
の片面(一方の壁面)に一本(両面では2本)のラジア
ントチューブで所要熱量を十分に供給できる場合でも、
複数のラジアントチューブを配置しなければならない問
題を有している。
【0008】更に、シングルエンドラジアントチューブ
300は、二重管の内側の管301の一端にバーナ305を設
け、燃焼ガスが内側の管301を通り一方の開放口303から
外管302との環状隙間304に反転してバーナ305側に戻
り、外管302のバーナ寄りに設けられた出口306からレキ
ュペレータ307を介して大気に放出される構造となって
いる(図11参照)ため、ややもすると内側の管301の
バーナ寄りの部分308が過熱により焼損し易く、殊に燃
焼負荷の大きい扉側に設けられたラジアントチューブに
おいてその問題が顕著となる。
【0009】このように、従来では、炉温均一化のため
に一本のラジアントチューブで十分に所要熱量を供給で
きる場合でも複数のラジアントチューブを必要とし、か
つ、扉側ラジアントチューブのオーバーヒート防止の観
点から所要熱量の分配が制限されるなどのコスト面、操
業面に大きな問題があった。このことは、直火炉及び直
火式バーナにおいても同様である。
【0010】本発明は、このようなバッチ炉、連続炉に
おける扉側と炉奥側との温度差解消に供与される熱源お
よび加熱炉を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
め、請求項1〜3に各々記載の発明は、蓄熱器を備え該
蓄熱器を通して燃焼用空気の供給と燃焼ガスの排出とを
交互に行って蓄熱器で排ガス温度に近い高温に予熱され
た燃焼用空気を得て燃焼させる蓄熱型バーナを対にして
短時間に交互に燃焼させることによって1つの燃焼シス
テムを構成する交互燃焼式蓄熱型バーナシステムにおい
て、対を成す蓄熱型バーナの間で燃焼量(単位時間当た
りの燃焼熱量(燃料量×発熱量)(kcal/h))を同じに
して燃焼時間を異ならせるようにするか、あるいは対を
成す蓄熱型バーナの間で燃焼時間を同じにして燃焼量を
異ならせるか、若しくは対を成す蓄熱型バーナの間で燃
焼量および燃焼時間の双方を異ならせるようにしてい
る。
【0012】したがって、一対のバーナ間で混合気の自
己着火温度以上の高温に予熱された空気と燃料とが大量
の燃焼ガスを巻き込んで低酸素濃度下で緩やかに接触し
て燃焼する高温空気燃焼の特性、即ち発熱領域が広域化
した局所的高温域のない均質な燃焼を実現しながらも、
燃焼時間が長い方あるいは燃焼量が大きい方若しくは燃
焼時間が長くかつ燃焼量が大きい方のバーナ側で発生す
る燃焼熱量(単位時間当たりの燃焼で発生する熱量を指
す場合と実際に発生した熱量を指す場合とがあるが、本
明細書では前者の単位時間当たりの燃焼熱量を燃焼量と
呼び、後者を単に熱量と呼ぶ)が短い方あるいは燃焼量
が小さい方若しくは燃焼時間が短くかつ燃焼量が小さい
方のバーナ側で発生する熱量が少なくなる温度勾配を併
せ持つ。即ち、発熱領域が広域化した均質な燃焼であり
ながら全体としては一対のバーナ間で発熱量の差があり
温度勾配のある温度場を形成できる。
【0013】また、請求項4記載の発明は、請求項1か
ら3のいずれかに記載のバーナシステムにおいて、両バ
ーナ間の燃焼量あるいは燃焼時間若しくは双方の差分に
応じた蓄熱容量を有し接続相手のバーナを切替可能な付
加蓄熱器を備え、それぞれのバーナの燃焼時間または燃
焼量または燃焼時間と燃焼量に応じて付加蓄熱器を必要
なバーナ側へ付加して蓄熱器の容量を適性化する手段を
有するようにしている。この場合、一対のバーナからそ
れぞれ排出される燃焼ガスの量と必要とされる燃焼用空
気の量がそれぞれ異なっても、その差分に応じた付加蓄
熱器が排気バーナと燃焼バーナとに選択的に接続されて
排熱量に応じた蓄熱容量となるため、平衡温度の上昇を
防止すると共に温度効率を低下させずに排熱回収を行う
ことができる。
【0014】また、請求項5記載の発明は、ラジアント
チューブの両端に請求項1から4のいずれかに記載の一
対の蓄熱型バーナを備え、ラジアントチューブ内で燃焼
させるようにしている。この場合、ラジアントチューブ
の表面を局所的高温域を発生させずに一端から他端へ向
けて昇温する温度勾配を持たせて両端付近の温度場にお
いて温度差を付けることができる。
【0015】また、請求項6記載の発明のバッチ式ある
いは連続式の加熱炉は、請求項1ないし4のいずれかに
記載の交互燃焼式蓄熱型バーナシステムを1つのゾーン
に一対または一対以上装備し、燃焼時間が長い方あるい
は燃焼量が大きい方若しくは燃焼時間が長くかつ燃焼量
が大きい方のバーナ側を温度の低くなりがちの方または
温度を上げたい方へ配置すると共に、燃焼時間が短い方
あるいは燃焼量が小さい方若しくは燃焼時間が短くかつ
燃焼量が小さい方のバーナ側を温度の高くなりがちの方
または温度を下げたい方へ配置するようにしている。ま
た、請求項7記載の発明のバッチ式あるいは連続式の加
熱炉は、請求項5に記載の交互燃焼式蓄熱型ラジアント
チューブバーナを1つのゾーンに一本または一本以上装
備し、燃焼時間が長い方あるいは燃焼量が大きい方若し
くは燃焼時間が長くかつ燃焼量が大きい方のバーナ側を
温度の低くなりがちな方または温度を上げたい方へ配置
すると共に、燃焼時間が短い方あるいは燃焼量が小さい
方若しくは燃焼時間が短くかつ燃焼量が小さい方のバー
ナ側を温度の高くなりがちな方または温度を下げたい方
へ配置するようにしている。
【0016】この場合、バッチ操業の炉では、被加熱物
の装入装出扉の開閉による冷却のため、扉側の温度が炉
奥側の温度より低く、扉側にある被加熱物の温度上昇が
炉奥にある被加熱物の昇温より遅れるが、炉奥側に比べ
て扉側のバーナで実際に発生する熱量が大きくなるよう
に制御されるため、扉側における被加熱物の昇温の遅れ
を解消する。また、連続炉の各ゾーンにおいても、扉側
にある被加熱物は、前ゾーン即ち扉側寄りのゾーンにあ
る温度の低い被加熱物に輻射熱を取られながら加熱さ
れ、炉奥側にある被加熱物は次ゾーンにあるより高い温
度の被加熱物から輻射熱を受けながら加熱されるが、1
つのゾーン内で炉奥側に比べて扉側のバーナで実際に発
生する熱量が大きくなるように制御されるため、扉側の
被加熱物の昇温が炉奥側の被加熱物の昇温より遅れるの
を解消する。したがって、被加熱物の加熱を均一にする
ことができる。
【0017】更に、請求項8記載の発明は、請求項6ま
たは7に記載のバッチ炉および連続炉において、各ゾー
ンの炉の扉側と奥側に設けた温度調節計の偏差に応じ
て、対を成す扉側の蓄熱バーナと炉奥側の蓄熱バーナの
各々の燃焼時間または燃焼量または燃焼時間と燃焼量を
調節する燃焼制御手段を有している。この場合、加熱炉
の扉側と奥側(各ゾーンにおける扉側と奥側とを含む)
との間での温度差を任意に設定することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成を図面に示す
実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0019】本発明の交互燃焼式蓄熱型バーナシステム
は、蓄熱型バーナを対にして短時間に交互に燃焼させる
ことによって1つの高温空気燃焼システムを構成するも
のであって、対を成す蓄熱型バーナの間で燃焼量を同じ
にして燃焼時間を異ならせるようにするか、あるいは対
を成す蓄熱型バーナの間で燃焼時間を同じにして燃焼量
を異ならせるか、若しくは対を成す蓄熱型バーナの間で
燃焼量および燃焼時間の双方を異ならせるように計装し
ている燃焼制御手段(図示省略)を備えている。燃焼制
御手段としては、例えばシーケンス制御による調節計
(controller)を併用したフィードバック制御による自
動燃焼制御を行うように計装される。
【0020】ここで、蓄熱型バーナは、蓄熱器を備え該
蓄熱器を通して燃焼用空気の供給と燃焼ガスの排出とを
交互に行って蓄熱器で排ガス温度に近い高温に予熱され
た燃焼用空気を得て燃焼させるもので、一対のバーナを
交互に燃焼させるために燃焼用空気と燃料を選択的に供
給し尚かつ排気する燃焼用空気供給系と排気系並びに燃
料供給系を備えている。これら燃焼用空気供給系と排気
系とは、例えば四方弁などの流路切換手段を介して一対
のバーナにそれぞれ接続され、対をなす一方のバーナを
燃焼させる間に他方のバーナから排気して、排ガスの熱
を蓄熱器で熱回収すると共にその回収熱を燃焼用空気の
予熱に用いるようにしている。
【0021】このように構成された交互燃焼式蓄熱型バ
ーナシステムは、加熱炉内に火炎および燃焼ガスを噴射
して被加熱物を直接加熱する直火式加熱源として1つの
バッチ炉あるいは連続式加熱炉のゾーンに一対または一
対以上装備したり、ラジアントチューブ内で燃焼させる
間接加熱源として1つのバッチ炉あるいは連続式加熱炉
のゾーンに一本または一本以上装備することによって、
バッチ式あるいは連続式の加熱炉を構成するようにして
いる。
【0022】例えば、図1に交互燃焼式蓄熱型ラジアン
トチューブバーナシステムの一例とそれを熱源とする連
続式加熱炉の一例を示す。
【0023】交互燃焼式蓄熱型ラジアントチューブバー
ナシステムは、基本的にはラジアントチューブ14とこ
のラジアントチューブ14の両端部に配置される一対の
蓄熱型バーナ9,11及びこれら一対の蓄熱型バーナ
9,11を交互に燃焼させるために燃焼用空気と燃料を
選択的に供給する燃焼用空気供給系17と燃料供給系1
8並びに排気系19とから構成されている。
【0024】ラジアントチューブ14は、両端の蓄熱型
バーナ9,11がそれぞれ連続式加熱炉・炉体20の外
に配置されるようにして1つのゾーン21に少なくとも
1本が被加熱物Wの搬送方向と平行にあるいは直交させ
て配置される。例えば、図1に示すように、連続式加熱
炉20の1つのゾーン21内に被加熱物Wの搬送方向と
平行に配置され、扉22側と炉奥23側とにそれぞれラ
ジアントチューブ14の両端が位置するように配置され
ている。このとき、ラジアントチューブ14は図6の
(A)に実線で示すように一方の炉壁に沿って1本だけ
配置しても良いが、相対向する他方の炉壁側にも破線で
示すように対となる2本目を配置して左右対称な炉内温
度分布を形成するようにしても良い。また、図6の
(B)に示すように、1つのゾーン21あるいはバッチ
炉内に1本以上のラジアントチューブ14を配置するこ
と、例えば1つのゾーン21内に複数のチューブをゾー
ン手前側から奥側へ並べて配置することも可能である。
このように2本のチューブを配置する場合、1つのゾー
ン内で前ゾーン寄りの温度場と中央の温度場及び後ゾー
ン寄りの温度場との3つの温度差を付けたい温度場を形
成できる。更に、図6の(C)に示すように、1つのゾ
ーン21内で炉を横切る方向に複数のチューブを配置す
ることによっても、ゾーンの左右あるいは上下間で温度
差をつけたり、更にその上に炉長方向でも温度差をつけ
るときに好適である。尚、このラジアントチューブとし
ては、図示のW型に形状が特に限られるものではなく、
U型や直管型などの任意の形態を採りうる。
【0025】ここで、連続式加熱炉20の各ゾーン21
においてもバッチ炉と同様の温度差が生じる。例えば、
被加熱物Wの搬入用扉22が位置するゾーン21では、
扉22の開閉による冷却のため、扉22側の温度が炉奥
23側の温度より低く、扉22側にある被加熱物Wの温
度上昇が炉奥23にある被加熱物Wの昇温より遅れるこ
ととなる。そこで、一対の蓄熱型バーナ9,11の燃焼
制御手段(図示省略)は、扉22側のバーナ例えばAバ
ーナ9と炉奥23側のバーナ例えばBバーナ11との間
で燃焼量を同じにして扉側のAバーナ9が炉奥側のBバ
ーナ11より長い時間燃焼するか、あるいはA,B両バ
ーナ9,11の間で燃焼時間を同じにして扉側のAバー
ナ9が炉奥側のBバーナ11より燃焼量を大きくさせる
か、若しくは扉側のAバーナが炉奥側のBバーナより燃
焼量および燃焼時間の双方において大きくかつ長くなる
ように計装されている。また、他のゾーン21において
も、被加熱物Wの扉22側寄りの部位では前ゾーンに有
る温度の低い被加熱物Wに輻射熱を取られながら加熱さ
れ、炉奥23側寄り部位では次ゾーンに有るより高い温
度の被加熱物Wから輻射熱を受けながら加熱されるの
で、扉22があるゾーンと同様に燃焼制御するように燃
焼制御手段が計装されている。
【0026】また、蓄熱器8,10としては、例えば、
一定の通路断面積でかつ直線的な流路が多数貫通してい
るハニカム形状のセラミックスから成るブロックの使用
が好ましい。この場合、蓄熱容量の割に圧損が低いた
め、給気及び排気用ブロワ(ファン)の能力を上げずに
給気と排気とが実施可能で、例えば300mmAq以下
の低圧損で実現できる。また、蓄熱器としては、このハ
ニカム形状のものに特に限定されるものではなく、管状
蓄熱器を束ねたものやボール状あるいはナゲット状のも
の、若しくは平板や波板の蓄熱材料を放射状にあるいは
環状に配置したブロック状蓄熱器などでも使用可能であ
る。また、蓄熱器はコージライトやムライト、アルミナ
等のセラミックに限られず、それ以外の材質例えば耐熱
鋼等の金属あるいはセラミックスと金属の複合体例えば
ポーラスな骨格を有するセラミックスの気孔中に溶融し
た金属を自発浸透させ、その金属の一部を酸化あるいは
窒化させてセラミックス化し、気孔を完全に埋め尽くし
たAl−Al複合体、SiC−Al
−Al複合体などを用いて製作しても良い。
【0027】各蓄熱型バーナ9,11は、本実施形態の
場合、ラジアントチューブ14のバング部分からバーナ
本体24にかけて蓄熱器8,10を内装するタイプであ
り、パイロットバーナ兼用の燃料ノズル25と、蓄熱器
8,10と、保炎板を兼ねた噴出孔形成手段26などを
有している。なお、噴出孔形成手段26はバッフルとし
て機能し、安定火炎を形成する。
【0028】噴出孔形成手段26はラジアントチューブ
14内の燃焼空間と区画されたエアスロート27をラジ
アントチューブ14の端部に形成している。即ち、バー
ナ本体24がフランジ連結などによって取り付けられた
ラジアントチューブ14の端部では、噴出孔形成手段2
6によってエアスロート27とラジアントチューブ内・
燃焼空間とが実質的に区画形成されている。そして、エ
アスロート27には、噴出孔形成手段26と蓄熱器8,
10との間に空間が形成されるような位置関係で蓄熱器
8,10が内装されると共に、例えば四方弁のような流
路切替手段1を通じて燃焼用空気供給系17及び排気系
19が選択的に接続される。四方弁1は当該バーナの切
換に連動して切り換わり、燃焼用空気供給系17と排気
系19とを択一的にエアスロート27に接続する。即
ち、エアスロート27は、バーナの燃焼時には燃焼用空
気を供給し、かつ燃焼停止時にはラジアントチューブ1
4内から排ガスを排気する。また、エアスロート27の
中央には燃料ノズル25が蓄熱器8,10および噴出孔
形成手段26を貫通するようにほぼ中央に配置されてお
り、その先端が噴出孔形成手段26の中央の貫通孔内に
配置されている。
【0029】また、噴出孔形成手段26には周縁の一部
を例えば半月状に切り欠いてラジアントチューブ14の
内周面に内接あるいは近接するように偏在する噴出孔2
8が設けられている。この噴出孔28は、ラジアントチ
ューブ14の内周面に沿うように偏った高速の空気の流
れを形成する。
【0030】以上のように構成された本発明の交互燃焼
式蓄熱型ラジアントチューブバーナシステムによると、
次のようにして交互燃焼が行われる。
【0031】一対の蓄熱型バーナ9,11は、蓄熱器
8,10を通過して高温例えば800℃程度以上に予熱
された酸化剤(通常は空気)を使用して短時間例えば1
分以内、好ましくは10〜40秒程度の範囲内で交互に
燃焼する。そして、一方のバーナ9(あるいは11)の
燃焼によってラジアントチューブ14内に発生する燃焼
ガスはラジアントチューブ14を加熱した後に反対側の
燃焼停止中のバーナ11(あるいは9)を経て排気され
る。燃焼ガスはエアスロート27に内装された蓄熱器8
(あるいは10)のほぼ全域を通過して蓄熱器8の全体
を有効に利用して熱交換を行い、その熱が蓄熱器8(あ
るいは10)で回収される。そして、蓄熱器8(あるい
は10)に回収された熱は、他方のバーナ9(あるいは
11)を燃焼させる際の燃焼用空気の予熱に使用され、
再びラジアントチューブ14内に戻される。
【0032】このとき、排ガス温度に近い高温例えば約
800℃程度以上に予熱された燃焼用空気は、20〜3
0m/sの流速で噴出される燃料に比べて遙かに高速、
例えば少なくとも60m/s以上、好ましくは100m
/s以上で噴出されるが、混合気の自己着火温度よりも
高温であるため燃料と接触すれば低酸素濃度下でもこれ
を燃焼させることができることから、燃焼用空気の噴射
速度が高速化しても失火を招かずに燃焼を実現できる。
このため、燃料はチューブ14内に広がらず高速の燃焼
用空気の流れに誘引されてチューブ内壁に沿って流れ、
その間に徐々に燃焼用空気流に巻き込まれる。これによ
って、排ガスと燃焼用空気と平行に噴射される燃料ガス
とが燃焼用空気の流れに誘引されて随伴され、徐々に燃
焼用空気の流れに巻き込まれながら発熱領域が広域化し
た均質な燃焼を行いラジアントチューブに好適な長炎を
形成する。殊に、図示実施形態のように噴出孔28がラ
ジアントチューブ14の中心から外れた位置に偏在しか
つエアスロート26の通路面積に比べて絞られていれ
ば、燃焼用空気がラジアントチューブ14の管壁に沿っ
て高速で噴射されて、ラジアントチューブ14の全横断
面に分布せずに偏在した流れとなってその反対側に負圧
を生じさせて強力な排ガス再循環を起こさせる。また、
噴出孔28の付近にまでラジアントチューブ14内を逆
流してくる排ガスの一部は燃焼用空気の流れに直接誘引
されて巻き込まれ燃焼用空気の酸素濃度を低下させた
り、場合によっては燃料噴流と燃焼用空気の噴流との間
に巻き込まれてこれらが直ちに接触するのを防止する。
したがって、発熱領域がより広域化して局所的高温域の
ない均質な燃焼を行い長炎を形成する。
【0033】しかも、一対のバーナ9,11の間では、
燃焼時間あるいは燃焼量若しくは燃焼時間と燃焼量の双
方が異なることにより発熱量が異なるため、一方のバー
ナ寄りのチューブから他方のバーナ寄りのチューブにか
けてチューブ表面温度が漸次低くなる温度勾配を持つ。
より具体的には、扉側(前のゾーン側)のバーナ例えば
バーナ9と炉奥側(次ぎのゾーン側)のバーナ例えばバ
ーナ11との間で燃焼量を同じにして扉側のバーナ9が
炉奥側のバーナ11より長い時間燃焼するか、あるいは
両バーナ9,11の間で燃焼時間を同じにして扉側のバ
ーナ9が炉奥側のバーナ11より燃焼量を大きくさせる
か、若しくは扉側のバーナ9が炉奥側のバーナ11より
燃焼量および燃焼時間の双方において大きくかつ長くな
るように計装されている。
【0034】このため、発熱領域が広域化した均質な燃
焼を実現して長炎を形成しながらも、入口側寄りのチュ
ーブ表面温度が奥側寄りのチューブ表面温度よりも高く
かつ炉奥側あるいは次ぎのゾーンに向けてチューブ表面
温度が漸次低くなる温度勾配を持ち、扉側と炉奥側の炉
温差を解消することができる。
【0035】このような交互燃焼式蓄熱型ラジアントチ
ューブバーナシステム及び加熱炉によると、一対を成す
蓄熱型バーナには、通常、同一容量の蓄熱器8,10を
それぞれ装備しているため、燃焼時間の長い方のバーナ
あるいは燃焼量の大きい方のバーナの排気温度が時間の
短い方もしくは燃焼量の小さい方のバーナからの排気の
温度よりも高くなる。このことは、一方のバーナに合わ
せると平衡温度に達するのが早く無駄に熱を排気して省
エネルギーに貢献しないこととなるし、他方のバーナに
合わせると蓄熱容量を無駄にして空気の予熱温度の低下
を招くこととなることから、両バーナからの排気温度を
均一にすることが望まれる。そこで、この交互燃焼式蓄
熱型バーナシステムは、両バーナ9,11間の燃焼量あ
るいは燃焼時間若しくは双方の差分に応じた蓄熱容量を
有し接続相手のバーナを切替可能な付加蓄熱器12,1
3を備え、それぞれのバーナ9,11の燃焼時間または
燃焼量または燃焼時間と燃焼量に応じて付加蓄熱器1
2,13を必要なバーナ側へ付加して蓄熱器8,10の
容量を適性化する手段を備えることが好ましい。
【0036】この蓄熱器容量の適正化手段の一実施形態
を図2〜図5に示す。この実施形態の交互燃焼式蓄熱型
バーナシステムは、ラジアントチューブ14の両端に備
えられたA、B一対の蓄熱型バーナ9,11の単位時間
当たりの燃焼量を同じにして燃焼時間を異ならせるよう
にしたものである。Aバーナ9の燃焼時間をτa、Bバ
ーナ11の燃焼時間をτbとしたとき、チューブ一本当
たりの燃焼量をQkcal/hとすると、Aバーナ9の
燃焼量はQa=Q{τa/(τa+τb)}で与えら
れ、Bバーナ11の燃焼量はQb=Q{τb/(τa+
τb)}で与えられるから、ラジアントチューブ14の
Aバーナ9側寄りの部位からの伝熱量とBバーナ側寄り
の部位からの伝熱量をそれぞれの燃焼時間に応じて変え
ることができる。
【0037】そこで、この実施形態では、30秒燃焼の
Aバーナ9と、15秒燃焼のBバーナ11とを交互に繰
り返し燃焼させるバーナシステムに適用した場合を例に
挙げている。即ち、本実施形態では、各バーナ9,11
にそれぞれ直結されている蓄熱器8,10の他に、第1
及び第2の切換手段群によって選択的に接続される2つ
の付加蓄熱器12,13を有している。付加蓄熱器1
2,13は蓄熱体であればどのようなものでも使用可能
であり特定の構造や組成物に限定されるものではない
が、蓄熱器8,10と同じ構成の蓄熱体例えばハニカム
形状のセラミックスなどで構成することが好ましい。第
1の切換手段群15は、1つの四方弁1と2つの三方弁
2,3及びこれらを30秒と15秒の2種類の間隔で交
互に繰り返して(30秒、15秒、30秒、15秒、
…)切り替えるアクチュエータ4とから構成されてい
る。アクチュエータ4と四方弁1および三方弁2、3は
リンクで連結され、アクチュエータ4がレバー角90度
で反転することによって四方弁1及び三方弁2,3が連
動して切り替えられる。ここで、四方弁1の2つの固定
ポートには燃焼用空気供給系17と排気系19とが接続
され、残りの2つの切換ポートにはそれぞれ三方弁2,
3の固定ポートが接続されている。また、2つの三方弁
2,3の切換ポートの一方にはAバーナ9とBバーナ1
1の蓄熱器8,10が直接それぞれ接続されている。他
方、第2の切換手段群16は、2つの四方弁5,6とこ
れらを45秒間隔で切り替えるアクチュエータ7とから
構成されている。アクチュエータ7と2つの四方弁5,
6とは、リンクで連結されアクチュエータ7を機械角で
90度だけ反転させることによって2つの四方弁5、6
が連動して切り替えられるように構成されている。そし
て、四方弁5の固定ポートは第1の切換手段群15の三
方弁2,3のそれぞれの切換ポートの一方に接続される
と共に残りの2つの切換ポートが他の四方弁6の切換ポ
ートにそれぞれ付加蓄熱器12,13を介在させてから
接続されている。また、他方の四方弁6の固定ポートに
はAバーナ9とBバーナ11の蓄熱器8,10がそれぞ
れ接続されている。尚、ラジアントチューブ14の両端
には同一容量のバーナAとバーナBが装備され、バーナ
Aは蓄熱器8とバーナ9で構成され、バーナBは著熱器
10とバーナ11で構成されている。バーナ9およびバ
ーナ11のそれぞれには図示されていないがパイロット
バーナ、燃料ノズル、電磁弁等が装備されている。
【0038】このように構成された蓄熱器容量の適正化
手段によると、次のようにして燃焼時間が異なるA,B
の2つのバーナ9,11からの排ガス温度がほぼ等しく
される。
【0039】まず、図2は最初の0〜30秒(30秒
間)のAバーナ燃焼中を示す図で、燃焼用空気供給系1
7から供給される燃焼空気は、切換弁1→切換弁2→切
換弁5→蓄熱器12→切換弁6→蓄熱器8を通ってAバ
ーナ9に供給されラジアントチューブ14内で燃焼す
る。チューブ14内の燃焼ガスは、燃焼していないBバ
ーナ11→蓄熱器10→切換弁6→蓄熱器13→切換弁
5→切換弁3→切換弁1→排気系19の経路を経て大気
中に排出される。
【0040】図3は次の30〜45秒(15秒間)のB
バーナ燃焼中を示す図で、燃焼空気は切換弁1→切換弁
3→蓄熱器10を経由してBバーナ11に供給され、チ
ューブ14内で発生した燃焼ガスは、燃焼していないA
バーナ9→蓄熱器8→切換弁2→切換弁1→排気系19
の経路を辿って大気に放出される。
【0041】図4はその次の45〜75秒(30秒間)
のAバーナ燃焼中を示す図で、燃焼空気は切換弁1→切
換弁2→切換弁5→蓄熱器13→切換弁6→蓄熱器8を
通ってAバーナ9に供給される。ラジアントチューブ1
4内で発生した燃焼ガスは、非燃焼側のBバーナ11→
蓄熱器10→切換器6→蓄熱器12→切換器5→切換器
3→切換器1→排気系19の経路を経て大気中に排出さ
れる。
【0042】図5はその次の75〜90秒(15秒間)
のBバーナ燃焼中を示す図で、燃焼用空気は切換弁1→
切換弁3→蓄熱器10を径由してBバーナ11に供給さ
れ、チューブ14内で発生した燃焼ガスは、非燃焼のA
バーナ9→蓄熱器8→切換弁2→切換弁1→排気系19
の経路を辿って大気に放出される。
【0043】ここで操作は一巡し、その次の90〜12
0秒の30秒間でのAバーナ燃焼中の空気、排気の経路
は図2の0〜30秒の30秒間でのAバーナ燃焼中の空
気、排気の経路に従うことになる。
【0044】尚、この操作例は三方弁2、3と四方弁
1,5,6を構成して切換操作を行っているが、二方弁
を組み合わせて切換操作を行っても良い。また、A、B
両バーナ9,11の燃焼時間を等しくして燃焼量を変え
る場合についても上述の蓄熱器容量の適正化手段を適用
することができる。例えばA、B両バーナ9,11の燃
焼を30秒毎一定周期で切り替え、Aバーナ9の燃焼量
をBバーナ11の燃焼量の2倍としたときについては、
第1の切換手段群15のアクチュエータ4を30秒毎の
一定周期で90度反転切換し、第2の切換手段群16の
アクチュエータ7を60秒毎の一定周期で反転切換させ
て、図2から図5までの操作を反復すればよい。また、
A、Bバーナのそれぞれの燃焼時間と燃焼量を共に変え
る場合についても、それぞれの燃焼時間×燃焼量の比に
従って、第1の切換手段群15および第2の切換手段群
16の切換周期を適切に選んで前述に準じて図2から図
5の操作を行えばよい。
【0045】この蓄熱容量適正化手段を備える蓄熱型ラ
ジアントチューブバーナを例に挙げ、バッチ炉および連
続炉に取り付けた場合に、扉側のバーナの燃焼時間を炉
奥側のバーナの燃焼時間より多くすることにより、扉側
と炉奥側の炉温差を解消することを実験により確認し
た。その実験結果を図8に示す。この実験は、連続炉の
扉寄りの第一ゾーンに設備した蓄熱型ラジアントチュー
ブの燃焼量を同じにして、扉側のバーナと炉奥側のバー
ナの燃焼時間を変えて実験したときの炉温の分布を示し
たものである。この実験によると、燃焼量を同じにして
同じ時間交互に燃焼させると、扉の開閉による冷却のた
め炉奥側に比べて扉側の温度が低くなっているが、扉側
のバーナの燃焼時間を増すにつれて炉温分布が均一化さ
れているのが判る。
【0046】そこで、A、B両バーナ9,11の近傍に
各々熱電対を設置し、温度調節計を設けて各温度調節計
の偏差に応じてA、B両バーナ9,11の燃焼時間ある
いは燃焼量を変化させれば、左右の温度差を任意に設定
することが可能となる。
【0047】なお、上述の実施形態は本発明の好適な実
施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発
明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能で
ある。例えば、本実施形態ではラジアントチューブによ
る間接加熱の炉について主に説明したが、これに特に限
定されず直火型の交互燃焼式蓄熱型バーナシステム及び
これを装備した直火炉にも適用されることは言うまでも
ない。
【0048】この直火式蓄熱型バーナの場合、ラジアン
トチューブ内で燃焼させずに炉内へ直接高温に予熱され
た空気と燃料とを噴射することによって、加熱炉内を燃
焼室として燃焼させる点で構成を異にするが、燃焼制御
手段を除けば蓄熱型バーナとして特別なバーナ構造を必
要とはしないことから、その詳細な説明と図示は省略す
る。この蓄熱型バーナシステムの特徴は、その燃焼制御
に特徴を有し、1つのゾーン内あるいはバッチ炉内で対
を成す蓄熱型バーナ間の温度場に温度差を設けることで
ある。
【0049】そこで、一対のバーナ間で燃焼量を同じに
して燃焼時間を異ならせるようにするか、あるいは対を
成す蓄熱型バーナの間で燃焼時間を同じにして燃焼量を
異ならせるか、若しくは対を成す蓄熱型バーナの間で燃
焼量および燃焼時間の双方を異ならせるようにしてい
る。例えば、一対の蓄熱型バーナの燃焼制御手段は、連
続式加熱炉のゾーンにおいても、被加熱物の搬入用扉の
位置のゾーンではバッチ炉と同様に、扉の開閉による冷
却のため、扉側の温度が炉奥側の温度より低く、扉側に
ある被加熱物の温度上昇が炉奥にある被加熱物の昇温よ
り遅れることから、扉側のバーナと炉奥側のバーナとの
間で燃焼量を同じにして扉側のバーナが炉奥側のバーナ
より長い時間燃焼するか、あるいは両バーナの間で燃焼
時間を同じにして扉側のバーナが炉奥側のバーナより燃
焼量を大きくさせるか、若しくは扉側のバーナが炉奥側
のバーナより燃焼量および燃焼時間の双方において大き
くかつ長くなるように計装されている。また、他のゾー
ンにおいても、被加熱物の扉側寄りの部位では前ゾーン
に有る温度の低い被加熱物に輻射熱を取られながら加熱
され、炉奥側寄り部位では次ゾーンに有るより高い温度
の被加熱物から輻射熱を受けながら加熱されるので、扉
があるゾーンと同様に燃焼制御するように燃焼制御手段
が計装されている。
【0050】ここで、バーナシステムによる高温空気燃
焼は、局所的な高温域のない平坦な温度分布の燃焼場・
炉内雰囲気を形成する。即ち、蓄熱型交番燃焼バーナシ
ステムでは、炉内空間における被加熱物の加熱に使用さ
れた後の燃焼ガスは、燃焼停止中のバーナを排出路とし
て利用して排気される際に、蓄熱器にその顕熱を捨て
る。そして、その顕熱は燃焼時に蓄熱器を通過する燃焼
用空気を排ガス温度に近い高温まで予熱してから炉内へ
供給する。したがって、燃焼側バーナからは、高いエン
タルピを有する酸化剤、即ち高温の燃焼用空気が高速で
噴射される。この燃焼用空気は、高温空気燃焼を実現す
るに充分高いエンタルピを有する空気、即ち燃焼直前に
おける混合気の自己着火温度以上の高温に予熱されてい
る。その温度は燃料種別や酸素濃度などによって異なる
が、多くの場合例えば800℃以上、好ましくは100
0℃以上に予熱されていれば着火温度以上に該当する。
そこで、定格燃焼時にバーナから噴射される燃焼用空気
は、高温予熱のためその流速が常温の空気の場合(20
〜30m/s)よりも遙かに高く例えば80〜100m/
s程度となっても火炎の吹き消えを起こすことがない。
このため、空気速度を高速に維持できることから、炉内
空間での燃焼ガスの循環を活発にし、更に周囲の炉内ガ
スを巻き込みながら炉内空間で強循環気流(噴射される
空気噴流よりも非常に大きなボリュームの循環気流)を
形成して、炉内ガスを強力に攪拌して局所的高温域の発
生を防ぐと共に燃焼用空気の流れに随伴される炉内排ガ
ス量を増やして混合気の酸素濃度を大幅に低下させる。
したがって、混合気の自己着火温度以上の高温でかつ低
酸素濃度の燃焼用空気と燃料とは接触した所で酸化発熱
反応を開始するため、発熱領域が広域化した均質な燃焼
を起こす。即ち、極めて低速の酸化発熱反応となって炉
内の至るところで燃焼し、炉内温度分布に局所的な高温
域を発生させないと共にNOxの発生を抑制する。しか
も火炎の位置が短時間にランダムに変化して移り変わる
非定在加熱のため炉内全体の温度場そのものが均一化・
平坦化される。しかも、一対のバーナの間では、発熱量
が異なるため、一方のバーナ付近の温度場から他方のバ
ーナ付近の温度場にかけて炉内温度が低くなる温度勾配
を有する温度場を形成する。
【0051】したがって、高温空気燃焼を実現可能なバ
ーナシステム、中でも蓄熱型交互燃焼バーナシステムを
使用する場合、発熱領域が広域化した均質な燃焼であり
ながら一方のバーナが形成する温度場と他方のバーナが
形成する温度場との間に温度差が生じ、同じ燃焼時間・
燃焼量の場合に炉内に発生する温度差を解消するような
温度勾配を与え、温度差の少ない炉内温度分布を形成し
てワークを均一に加熱することができると共に炉内平均
温度も上限界温度近くまで引き上げることができる。こ
のため、燃焼室熱負荷が大きくなると共に平均熱流束も
高くなり、偏熱が防止されてワークを均一かつ迅速に加
熱できる。
【0052】ここで、交互燃焼式蓄熱型バーナシステム
は、1つのゾーン内にあるいは1つのバッチ炉内に一対
または一対以上の交互燃焼式蓄熱型バーナシステムを、
例えば図7に示すように、炉長方向に並べて(A,C)
あるいは炉を横切る方向に並べて(A,B)配置し、若
しくは上下方向に並べて配置するようにしている。そし
て、隣るバーナ間(AとCあるいはAとB)で対を成す
ように構成され、対をなすバーナの間に温度場に不確定
に作用する他のバーナ対の一方あるいはその他のバーナ
が配置されることがないように設けられている。また、
A,B,C,Dの4バーナで1つのゾーンを構成してい
る場合、A−Cバーナ間で対をなす時にはB−Dバーナ
間でも対をなし、A−Cバーナ側とB−Dバーナ側との
各温度場で温度差が設けられる。更に、A,B,C,D
の4バーナで1ゾーンを形成し、E,F,G,Hの4バ
ーナで隣のゾーン、I,J,K,Lの4バーナで更に隣
のゾーンを形成しているときには、ワークの前ゾーン
(ワークが通過した直前のゾーン)寄りの部分が前ゾー
ン内のワークに輻射熱を奪われ、後ゾーン(ワークが次
ぎに進入しようとするゾーン)寄りの部分が後ゾーン内
のワークから輻射熱を奪うために温度むらが生じること
を防止するために、各ゾーン内の各バーナ対にもABC
Dバーナ同様の対策を施すことが必要となる。また、炉
長方向の一方の側にのみバーナが設置されているケース
もある。例えば、炉天井にA,C,E,G,I,Kバー
ナが配置され、炉底部にワークが配置される場合におい
ても、隣るバーナで対をなし、それぞれが形成する温度
場に温度差を設けるように燃焼制御しても良い。
【0053】即ち、対を成す蓄熱バーナを扉(あるいは
ワーク搬入口ないしワークが通過した直前のゾーン)側
と炉奥(あるいはワーク搬出口ないしワークが次ぎに進
入しようとするゾーン)側に設置し扉側のバーナの燃焼
時間あるいは燃焼量を炉奥側のバーナの燃焼時間あるい
は燃焼量より多くすることで扉側と炉奥側の炉温差を解
消することができる。
【0054】更に、一対のバーナ間で発熱量の異なる燃
料を使用することによって、各バーナでの1回の燃焼当
たりの燃焼熱量を異ならせることも可能である。
【0055】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項
1〜3に記載の交互燃焼式蓄熱型バーナシステムによる
と、一対のバーナ間で発熱領域が広域化した局所的高温
域のない均質な燃焼を実現しながらも、燃焼時間が長い
方あるいは燃焼量が大きい方若しくは燃焼時間が長くか
つ燃焼量が大きい方のバーナ側で発生する熱量が多く、
燃焼時間が短い方あるいは燃焼量が小さい方若しくは燃
焼時間が短くかつ燃焼量が小さい方のバーナ側で発生す
る熱量が少なくなる温度勾配を併せ持つので、発熱領域
が広域化した均質な燃焼でありながら全体としては一対
のバーナ間で発熱量の差がある温度勾配のある温度場を
形成できる。そこで、被加熱物の加熱が均一となる。
【0056】また、請求項4記載の交互燃焼式蓄熱型バ
ーナシステムによると、一対のバーナからそれぞれ排出
される燃焼ガスの量と必要とされる燃焼用空気の量がそ
れぞれ異なっても、その差分に応じた付加蓄熱器が排気
バーナと燃焼バーナとに選択的に接続されて排熱量に応
じた蓄熱容量となるため、平衡温度の上昇を防止すると
共に温度効率を低下させずに排熱回収を行うことができ
る。
【0057】また、請求項5記載の交互燃焼式蓄熱型バ
ーナシステムによると、ラジアントチューブの表面を局
所的高温域を発生させずに一端から他端へ向けて昇温す
る温度勾配を持たせて両端付近の温度場において温度差
を付けることができる。そこで、発熱量が大きい方のバ
ーナ側を温度が低くなる側に配置すると共に発熱量が小
さい方のバーナ側を温度が高くなる側に配置することに
よって、被加熱物の加熱が均一となる。
【0058】また、請求項6並びに7記載の加熱炉によ
ると、発熱領域が広域化した均質な燃焼により局所的高
温域のない炉内温度分布が形成されるのと同時に、炉内
あるいはゾーン内の温度が低くなりがちな部分での発熱
量を温度の高くなりがちな部分での発熱量よりも増すこ
とにより炉内での温度差を解消できる。例えば、バッチ
操業の炉では、被加熱物の装入装出扉の開閉による冷却
のため、扉側の温度が炉奥側の温度より低く、扉側にあ
る被加熱物の温度上昇が炉奥にある被加熱物の昇温より
遅れるが、炉奥側に比べて扉側のバーナの発熱量が大き
くなるように制御されるため、扉側における被加熱物の
昇温の遅れを解消する。また、連続炉の各ゾーンにおい
ても、扉側にある被加熱物は、前ゾーン即ち扉側寄りの
ゾーンにある温度の低い被加熱物に輻射熱を取られなが
ら加熱され、炉奥側にある被加熱物は次ゾーンにあるよ
り高い温度の被加熱物から輻射熱を受けながら加熱され
るが、1つのゾーン内で炉奥側に比べて扉側のバーナの
発熱量が大きくなるように制御されるため、扉側の被加
熱物の昇温が炉奥側の被加熱物の昇温より遅れるのを解
消する。したがって、被加熱物の加熱を均一にすること
ができる。
【0059】更に、請求項8記載の加熱炉によると、加
熱炉の扉側と奥側(各ゾーンにおける扉側と奥側とを含
む)との間での温度差を任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した交互燃焼式蓄熱型ラジアント
チューブバーナシステムをラジアントチューブに連続式
加熱炉の扉寄りの第1ゾーンに配置した一実施形態を示
す図である。
【図2】本発明の交互燃焼式蓄熱型バーナシステムをラ
ジアントチューブに適用した一実施形態を示す図で、蓄
熱器容量の適正化手段を備えた実施形態においてAバー
ナ燃焼中の状態を示す。
【図3】図2の交互燃焼式蓄熱型ラジアントチューブバ
ーナにおいてBバーナを燃焼中の状態を示す。
【図4】図2のAバーナ燃焼中の状態を示す。
【図5】図2のBバーナ燃焼中の状態を示す。
【図6】連続炉における交互燃焼式蓄熱型バーナシステ
ムのラジアントチューブの配置例を示す概略図である。
【図7】連続炉における交互燃焼式蓄熱型バーナシステ
ムの一対の蓄熱型バーナの配置例を示す概略図である。
【図8】1つのゾーン内における一対のバーナ間での燃
焼時間差と温度分布との関係を示すグラフである。
【図9】任意ゾーンワークからの前ゾーンのワークと次
ゾーンのワークヘの熱授受の説明図である。
【図10】従来型炉の一例を示す概略平面図である。
【図11】レキュペレータ付きシングルエンドラジアン
チューブの構造例を示す縦断面図である。
【符号の説明】 1 流路切換手段(四方弁) 8,10 蓄熱器 9,11 一対の蓄熱型バーナ 12,13 付加蓄熱器 14 ラジアントチューブ 20 連続式加熱炉 21 ゾーン 22 扉 23 炉奥 W 被加熱物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3K017 BA01 BB05 BE11 DC03 3K023 QA03 QB02 QB13 QB18 QB21 QC07 3K065 QC03

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蓄熱器を備え該蓄熱器を通して燃焼用空
    気の供給と燃焼ガスの排出とを交互に行って前記蓄熱器
    で排ガス温度に近い高温に予熱された燃焼用空気を得て
    燃焼させる蓄熱型バーナを対にして短時間に交互に燃焼
    させることによって1つの燃焼システムを構成する交互
    燃焼式蓄熱型バーナシステムにおいて、対を成す前記蓄
    熱型バーナの間で燃焼量を同じにして燃焼時間を異なら
    せることを特徴とする交互燃焼式蓄熱型バーナシステ
    ム。
  2. 【請求項2】 蓄熱器を備え該蓄熱器を通して燃焼用空
    気の供給と燃焼ガスの排出とを交互に行って前記蓄熱器
    で排ガス温度に近い高温に予熱された燃焼用空気を得て
    燃焼させる蓄熱型バーナを対にして短時間に交互に燃焼
    させる1つの燃焼システムを構成する交互燃焼式蓄熱型
    バーナシステムにおいて、対を成す前記蓄熱型バーナの
    間で燃焼時間を同じにして燃焼量を異ならせることを特
    徴とする交互燃焼式蓄熱型バーナシステム。
  3. 【請求項3】 蓄熱器を備え該蓄熱器を通して燃焼用空
    気の供給と燃焼ガスの排出とを交互に行って前記蓄熱器
    で排ガス温度に近い高温に予熱された燃焼用空気を得て
    燃焼させる蓄熱型バーナを対にして短時間に交互に燃焼
    させる1つの燃焼システムを構成する交互燃焼式蓄熱型
    バーナシステムにおいて、対を成す前記蓄熱型バーナの
    間で燃焼量および燃焼時間の双方を異ならせたことを特
    徴とする交互燃焼式蓄熱型バーナシステム。
  4. 【請求項4】 前記バーナシステムは両バーナ間の燃焼
    量あるいは燃焼時間若しくは双方の差分に応じた蓄熱容
    量を有し接続相手のバーナを切替可能な付加蓄熱器を備
    え、それぞれのバーナの燃焼時間または燃焼量または燃
    焼時間と燃焼量に応じて前記付加蓄熱器を必要なバーナ
    側へ付加して蓄熱器の容量を適性化する手段を有するこ
    とを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の交
    互燃焼式蓄熱型バーナシステム。
  5. 【請求項5】 ラジアントチューブの両端に請求項1か
    ら4のいずれかに記載の一対の蓄熱型バーナを備え、前
    記ラジアントチューブ内で燃焼させることを特徴とする
    交互燃焼式蓄熱型バーナシステム。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし4のいずれかに記載の交
    互燃焼式蓄熱型バーナシステムを1つのバッチ炉または
    ゾーンに一対または一対以上装備し、燃焼時間が長い方
    あるいは燃焼量が大きい方若しくは燃焼時間が長くかつ
    燃焼量が大きい方のバーナ側を温度の低くなりがちな方
    または温度を上げたい方へ配置すると共に、燃焼時間が
    短い方あるいは燃焼量が小さい方若しくは燃焼時間が短
    くかつ燃焼量が小さい方のバーナ側を温度の高くなりが
    ちな方または温度を下げたい方へ配置したことを特徴と
    する加熱炉。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載の交互燃焼式蓄熱型ラジ
    アントチューブバーナを1つのバッチ炉またはゾーンに
    一本または一本以上装備し、燃焼時間が長い方あるいは
    燃焼量が大きい方若しくは燃焼時間が長くかつ燃焼量が
    大きい方のバーナ側を温度の低くなりがちな方または温
    度を上げたい方へ配置すると共に、燃焼時間が短い方あ
    るいは燃焼量が小さい方若しくは燃焼時間が短くかつ燃
    焼量が小さい方のバーナ側を温度の高くなりがちな方ま
    たは温度を下げたい方へ配置したことを特徴とする加熱
    炉。
  8. 【請求項8】 炉の扉側と奥側に設けた温度調節計の偏
    差に応じて、対を成す扉側の蓄熱バーナと炉奥側の蓄熱
    バーナの各々の燃焼時間、または燃焼量、または燃焼時
    間と燃焼量を調節する燃焼制御手段を有することを特徴
    とする請求項6または7に記載の加熱炉。
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