JP2000331310A - 薄膜磁気ヘッド並びにその製造方法 - Google Patents

薄膜磁気ヘッド並びにその製造方法

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JP2000331310A
JP2000331310A JP13816599A JP13816599A JP2000331310A JP 2000331310 A JP2000331310 A JP 2000331310A JP 13816599 A JP13816599 A JP 13816599A JP 13816599 A JP13816599 A JP 13816599A JP 2000331310 A JP2000331310 A JP 2000331310A
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Naoto Matono
直人 的野
Tatsuya Shiromoto
竜也 城本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 導電材料からなるコイル層11と、磁極層1
3とを含み、該磁極層が、磁極先端側に1μm以下のコ
ア幅のポール部13aを有するとともに、コイル層の上
方に位置する幅広のヨーク部13bとを有する薄膜磁気
ヘッドにおいて、磁極層13の構成材料として高飽和磁
束密度のものを採用することによりその磁歪定数が大き
くなっても、ヨーク部13bの磁区構造を、コア幅方向
の180°磁壁を有するものとする。 【解決手段】 コイル被覆層12とヨーク部13bとの
間に、コア幅方向に細長い磁区制御軟磁性層16を、コ
ア深さ方向に複数設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録に用いら
れる薄膜磁気ヘッドに関し、特に、高記録密度化を図る
ために記録コア幅を1μm以下とした場合でも磁極先端
部近傍に十分な磁界を生じさせるために磁極材料として
高飽和磁束密度のものが選択された薄膜磁気ヘッドに関
する。
【0002】
【従来の技術】ハードディスク装置等に内蔵される薄膜
磁気ヘッドの一般的構成は、上下の磁極層と、該上下磁
極層の磁極先端部間に誘導磁界を生じさせるためのコイ
ル層とを備えたものである。即ち、従来から知られてい
る一般的な薄膜磁気ヘッドは、軟磁性材料からなる下部
磁極層と、非磁性材料からなる磁気ギャップ層と、導電
材料からなるコイル層と、該コイル層を覆う非磁性材料
からなるコイル被覆層と、該コイル被覆層上に積層形成
されるとともにコイル中心部で下部磁極層に接続される
軟磁性材料からなる上部磁極層とを有している。これら
磁極層の構成材料としては、高透磁率を有するパーマロ
イ(NiFe合金)が広く用いられている。このパーマ
ロイは、図7に示すように、Ni含有量などによりその
磁気特性が大きく変化する。Ni含有量が80重量%近
傍で、磁歪定数λ、並びに、磁気異方性定数Kが0に近
づくとともに、極めて大きな透磁率を示すことから、N
i量75%〜83%程度のパーマロイが一般的に用いら
れてきた。
【0003】また、大容量で高速な記録再生を達成する
ために、近年のハードディスク装置においては、薄膜磁
気ヘッドとして再生用の磁気抵抗効果ヘッドと記録用の
インダクティブヘッドとを一体化してなる複合ヘッドが
採用されている。かかる複合ヘッドでは、通常、磁気抵
抗効果ヘッドの上部シールド層とインダクティブヘッド
の下部磁極層とが共通の軟磁性層により構成されてい
る。そして、インダクティブヘッドにおける記録コア幅
は、主として上部磁極層の磁極先端側のポール部を幅狭
にすることにより規定されている。
【0004】かかる近年の薄膜磁気ヘッドにおける上部
磁極層の磁区構造は、一般的に、図5に示すような18
0°磁壁を有するものとなされている。即ち、コア幅方
向と平行な180°磁壁をコア深さ方向に複数有すると
ともに、磁極層のコア幅方向両縁には、閉路磁区を形成
する三角磁区が現れる磁区構造となっている。かかる磁
区制御法としては、通常、上部磁極層にコア幅方向の一
軸磁気異方性を付与することで行われている。すると、
静磁エネルギーを低くして安定な磁区構造とするため
に、図5に示すように磁区分割され、180°磁壁が出
現する。なお、安定な磁区構造をとるための因子として
は、磁気異方性エネルギー(自発磁化の方向によって内
部エネルギーが変化することをいい、一般的には磁化容
易軸方向で安定になる。結晶方向によるものを結晶磁気
異方性、人工的に付与されたものを誘導磁気異方性とい
う)や、磁気弾性エネルギー(内部弾性歪による異方
性)があり、これらエネルギーの総和が最小になるよう
な条件によって磁区が決まると考えられている。
【0005】上部磁極層の磁区構造は、記録特性に重大
な影響を及ぼすことが従来から知られている。例えば、
特開平6−162441号公報に開示された薄膜磁気ヘ
ッドでは、上部磁極層の磁極先端側の漏斗状部の磁区構
造を最適化するために、軟磁性材料で形成される第1及
び第2の極層(上下の磁極層)を含み、極先端部及びこ
の極先端部により規定される変換ギャップを含む磁気ヨ
ークと、外部回路に接続される電気コイルとを備え、前
記ヨークは前記コイルを含む主要部及び極先端部を含む
漏斗状部を備えて形成されており、さらに、前記コイル
を取り囲むとともに該コイルと共に前記両極層の間に配
置された絶縁材と、前記絶縁材と両極層のうちの1つと
の間に配置された第1及び第2の整形磁気薄膜を備えて
構成されている。
【0006】また、記録再生両用の単磁極ヘッドのもの
であるが、特開平7−14118号公報に開示された薄
膜磁気ヘッドでは、主磁極の磁区上の全面、若しくは予
想される磁区の形状にあわせた要部(例えば、磁極層の
幅方向両縁の三角磁区部分)に、該磁区の磁化方向と同
一方向の磁気異方性を付与した反強磁性体を配設するこ
とにより、所要部位の磁化方向を反強磁性体との交換結
合磁界によりピン止めすることで磁区構造の安定化を図
り、再生出力値の変動を抑えるとともに、再生出力値の
増大を図ることができると説示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年の記録
密度の更なる向上を図るために、複合ヘッドの上部磁極
層の磁極先端部のコア幅は1μmを下回るほどに狭小化
されている。その一方で、磁気記録媒体である磁気ディ
スク表面の磁性層には高保磁力が要求されており、かか
る高保磁力の記録層へ確実に磁気記録を行うために、イ
ンダクティブヘッドの磁極先端部近傍に大きな磁界を発
生させることが要求されている。そのためには、上部磁
極層の構成材料として、飽和磁束密度の大きい軟磁性材
料を選択する必要が生じている。
【0008】Ni量が80%近傍のパーマロイは、図7
(ii)に示すように高い透磁率を有するが、一方で飽和
磁束密度Bsが比較的低く、これによれば更なる記録密
度の向上は困難となっている。近年の記録密度の向上の
要望に応えるためには、磁極材料の飽和磁束密度を高め
ることが必要不可欠となっている。
【0009】そこで、本願発明者らは、本願発明者ら
は、1μm未満の狭小なコア幅であってもヘッド先端の
記録ギャップ間に所望の磁界強度を得るために、磁極材
料として、飽和磁束密度の高い材料を選択することを試
みている。かかる高飽和磁束密度材料の一つとして、例
えば、Ni45Fe55(at%)がある。しかしながら、この
軟磁性材料を、上記した構造の薄膜磁気ヘッドの上部磁
極層の材料として用いたところ、該磁極層の磁区構造
は、コア幅方向の180°磁壁が消失し、図6に示すよ
うな磁区構造となった。これは、Ni45Fe55は、図7
(i)に示すように磁歪定数が大きくなって、磁気弾性
エネルギーの増大によりコア深さ方向の磁気異方性が増
大するためであると考えられる。
【0010】図6に示す磁区構造では、高周波応答特性
が劣化し、高密度ハードディスクに要求される高転送レ
ートを確保することが困難である。なお、特開平7−1
4118号公報に開示された技術により180°磁壁を
得た場合には、磁極層全体としての保磁力が高まり、や
はり高周波特性が劣化する。したがって、反強磁性体や
常磁性体を用いることなく、磁極層のヨーク部を、コア
幅方向の180°磁壁により分割された磁区構造とする
ことが必要である。
【0011】本発明は、1μm以下のコア幅でも記録ギ
ャップ間の磁界強度を必要且つ十分なものとするため
に、他の磁気特性(磁歪定数λなど)を犠牲にしても、
磁極材料として飽和磁束密度の高いものを用いた場合で
あっても、上部磁極の磁区構造を適正なものとして、高
周波応答特性を向上し、高転送レート化を図ることを目
的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記した本発明の課題
は、数μm程度までのコア幅の磁極の場合には最も好ま
しいとされていた80パーマロイを磁極材料とすること
を断念し、近年の更なる高密度記録化と高転送レート化
を図るために、高飽和磁束密度の磁性材料を選択した場
合に新たに生じたものである。上記課題を解決するため
に、本願発明者は次の技術的手段を講じた。
【0013】即ち、本発明は、導電材料からなるコイル
層と、該コイル層を覆う非磁性材料からなるコイル被覆
層と、該コイル被覆層上に積層される軟磁性材料からな
る磁極層とを含み、該磁極層は、磁極先端側の幅狭のポ
ール部と、前記コイル層の上方に位置する幅広のヨーク
部とを有する薄膜磁気ヘッドにおいて、前記コイル被覆
層とヨーク部との間に、ヨーク部の磁区構造にコア幅方
向の180°磁壁を出現させるためのコア幅方向に細長
い磁区制御軟磁性層が、コア深さ方向に並んで複数設け
られていることを特徴とするものである。これによれ
ば、磁歪定数の比較的大きな軟磁性材料(例えば、Ni
量40〜60重量%のNiFe合金)により磁極層を形
成した場合であっても、磁区制御軟磁性層との磁気的な
カップリングにより磁極層のコア幅方向の磁気異方性エ
ネルギーを高め、図5に示すような理想的な磁区構造を
積極的に出現させることが可能となる。したがって、磁
極層の構成材料の選択の過程で、磁歪定数などの磁気特
性よりも飽和磁束密度を優先させることが可能となり、
より一層のコア幅の狭小化による記録密度の向上を図り
得ると共に、高転送レートを確保することができる。
【0014】また、本発明は、導電材料からなるコイル
層と、該コイル層を覆う非磁性材料からなるコイル被覆
層と、該コイル被覆層上に積層される軟磁性材料からな
る磁極層とを含み、該磁極層は、磁極先端側の幅狭のポ
ール部と、前記コイル層の上方に位置する幅広のヨーク
部とを有する薄膜磁気ヘッドにおいて、前記ヨーク部
は、コア幅方向に細長い上方隆起部をコア深さ方向に複
数有し、これによりヨーク部の磁区構造にコア幅方向の
180°磁壁をコア深さ方向に複数出現させていること
を特徴とするものである。これによれば、上方隆起部に
沿う180°磁壁のピン止め作用、上方隆起部の存在に
よるコア幅方向の磁気異方性の向上や、コア深さ方向の
内部弾性歪による異方性エネルギーの低減作用などによ
り、磁歪定数の比較的大きな軟磁性材料により磁極層を
形成した場合でも、図5に示すような理想的な磁区構造
が積極的に出現させることが可能となる。かかる上方隆
起部は、上記した磁区制御軟磁性層の上に磁極層を積層
形成することによって形成することが好ましく、これに
よれば、磁区制御軟磁性層と上方隆起部の両方の作用に
よってより確実に180°磁壁を有する磁区構造とする
ことが可能となる。
【0015】また、本発明は、導電材料からなるコイル
層と、磁極層とを含む薄膜磁気ヘッドにおいて、前記磁
極層は、磁極先端側に1μm以下のコア幅のポール部を
有するとともに、前記コイル層の上方に位置する幅広の
ヨーク部とを有し、且つ、飽和磁束密度が1.4T以上
で且つ磁歪定数の絶対値が4×10-6以上の軟磁性材料
からなり、ヨーク部の磁区構造が、コア幅方向の180
°磁壁を有することを特徴とするものである。かかる磁
気ヘッドによれば、飽和磁束密度が1.4T以上(80
パーマロイでは、0.8〜0.9T程度)の高密度とさ
れているため、1μm以下のコア幅のポール部であって
も、記録媒体の高保磁力の磁性層に確実に磁気記録し得
る大きな磁界を発生させることが可能となる。その一方
で、ヨーク部の磁区構造が、コア幅方向の180°磁壁
を有するものとされているから、高周波応答特性が良好
で、高転送レート化に対応することが可能である。この
ような磁気特性を有する軟磁性材料としては、Niを4
0重量%以上60重量%以下含むNiFe合金を挙げる
ことができる。なお、図7(i)にはバルク材料である
NiFe合金の磁歪定数特性を例示しているが、合金生
成工程の最適化によって、Ni含有量が同じであって
も、磁歪定数は種々変化するので、工程最適化によって
1.4T以上の飽和磁束密度の場合の最低磁歪定数を、
4×10-6程度にまで低減させることが可能である。な
お、バルク材料であるNiFe合金では、Ni量が40
%以下(かかるNi量の臨界値は、最適化によって35
%程度まで低減させることが可能である。)であると、
図7(ii)に示すように、透磁率μ及び飽和磁束密度B
sが急激に低下し、本発明本来の目的を達成することが
できない。Ni量が60%以上でもほぼ同様である。ま
た、同様の高飽和磁束密度の軟磁性材料としては、例え
ば、CoZr系アモルファス合金、Fe−O系合金、F
e−N系合金、Fe−C系合金などが挙げられる。
【0016】上記磁気ヘッドにおいて、磁歪定数が比較
的大きいにもかかわらず180°磁壁を出現させる方法
は、適宜の手段を採ることができる。例えば、上記薄膜
磁気ヘッドにおいて、コイル層は、非磁性材料からなる
コイル被覆層で覆われており、該被覆層とヨーク部との
間に、ヨーク部の幅方向全長にわたるコア幅方向に細長
い磁区制御軟磁性層が、コア深さ方向に複数設けられて
いるものとすることができる。さらに、この磁区制御軟
磁性層はコア幅方向の一軸磁気異方性を有するものであ
り、該磁区制御軟磁性層との磁気的カップリングにより
ヨーク部に180°磁壁を出現させることが最も好まし
い。ここで、磁区制御軟磁性層の両端部で磁極層との磁
気的カップリングを生じさせ、より適切に180°磁壁
を出現させるために、磁区制御軟磁性層とヨーク部との
間に、適当な膜厚の非磁性薄膜を設けることが好まし
い。
【0017】180°磁壁を出現させる他の手法として
は、コイル層は、非磁性材料からなるコイル被覆層で覆
われており、該被覆層上に、コア幅方向に細長いブロッ
クパターンがコア深さ方向に複数形成されており、該被
覆層上に形成されたヨーク部は、コア幅方向に長い上方
隆起部をコア深さ方向に複数有し、これによりヨーク部
の磁区構造にコア幅方向の180°磁壁を出現させるこ
とができる。
【0018】なお、本発明は、面内記録方式及び垂直記
録方式のいずれの磁気ヘッドの磁極層の磁区制御に用い
ることも可能であり、上下の磁極層間の磁気ギャップに
磁界を発生させて磁気記録を行う構造のものの他、単磁
極ヘッドに適用することも可能である。上下の磁極層を
有する面内記録方式のインダクティブヘッドでは、下部
磁極層と、磁気ギャップ層と、コイル層と、コイル被覆
層と、上部磁極層とを含み、この上部磁極層の磁区構造
を、上記した本発明の特徴的構成によって最適化するこ
とができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0020】図1は本発明の第1の実施形態に係る薄膜
磁気ヘッド1の要部を拡大して示す簡略斜視断面図であ
って、該ヘッド1は、再生用の磁気抵抗効果ヘッドと記
録用のインダクティブヘッドとを一体的に積層してなる
複合ヘッドである。
【0021】このヘッド1は、アンダーコート3が積層
された基板2の表面に、スパッタリング法、CVD法、
メッキ法等の適宜の薄膜形成法や、フォトリソグラフィ
法等を用いて、各構成層を所定パターンで形成すること
によって得られる。
【0022】該ヘッド1は、下層側に磁気抵抗効果ヘッ
ドが設けられ、上層側にインダクティブヘッドが設けら
れている。磁気抵抗効果ヘッドは、非磁性の磁気ギャッ
プ層4を介して設けられた上下のシールド層5,6と、
該シールド層5,6間に設けられた磁気抵抗効果素子7
と、該素子7にセンス電流を流すための一対のリード層
8,9とを備えている。磁気抵抗効果素子7としては、
AMR素子の他、スピンバルブ素子や多層膜GMR素子
などを用いることができる。
【0023】インダクティブヘッドは、上部シールド層
と共通の軟磁性層からなる下部磁極層6と、該磁極層6
上に積層形成された非磁性材料からなる磁気ギャップ層
10と、該磁気ギャップ層10上に積層形成された導電
材料からなるコイル層11と、該コイル層11を覆う非
磁性材料からなるコイル被覆層12と、該コイル被覆層
12上に積層形成された軟磁性材料からなる上部磁極層
13とを備えている。また、図示実施例では、コイル層
11は、磁気ギャップ層10上に積層形成された非磁性
材料からなるコイルベース14上に形成されている。
【0024】上記コイル被覆層12は、コイル層11の
形成後、スピンコート法等の適宜の手段によって基板表
面に非磁性材料を成膜し、フォトリソグラフィ法等によ
ってパターニングした後、ハードベークすることにより
周縁部がなだらかな斜面となるように形成されており、
かかるコイル被覆層12の上面はほぼ平坦となってい
る。
【0025】上部磁極層13は、磁極先端側においては
ギャップ層10を介して下部磁極層6と隔てられてい
て、これにより記録ギャップが形成されており、一方、
コイル中心側では上部磁極層13は下部磁極層6に接続
されている。なお、図中、符号15は、コイルの中心側
端部に接続される電極のための透孔である。
【0026】この上部磁極層13は、磁極先端側の幅狭
のポール部13aと、上記コイル層11の上方に位置す
る幅広のヨーク部13bとを有し、該ヨーク部13bの
ポール部13aとの接続部分は、コイル被覆層12の斜
面に沿って形成されているとともに、先端側にしたがっ
て幅狭となる漏斗状に形成されている。
【0027】上部磁極層13のポール部13aのコア幅
は、1μm以下となされており、記録ギャップにおける
コア幅方向の磁束漏れを低減するために、下部磁極層6
に対してポール部13aをマスクとするトリム加工が施
されている。また、上部磁極層13の構成材料として
は、飽和磁束密度が1.4T以上の軟磁性材料を用いる
ことが好ましく、このような磁性材料としては、例え
ば、Niを40〜60重量%含むNiFe合金を挙げる
ことができる。
【0028】上部磁極層13のヨーク部13bは、その
コア幅長よりもコア深さ長の方が大きくなされ、平面視
において図5に示すような縦長形状にパターニングされ
ている。このヨーク部13bのコア幅長は、50μm〜
10μm程度が一般的である。
【0029】本実施例では、このコイル被覆層12とヨ
ーク部13bとの間に、コア幅方向に長尺の磁区制御軟
磁性層16が形成されている。この磁区制御軟磁性層1
6は、平坦なコイル被覆層12の上面に、メッキ法やス
パッタリング法等の適宜の手段によって積層形成されて
おり、ヨーク部13bのコア幅方向全長にわたって形成
されている。また、その膜厚は、0.3μm〜1.5μ
m程度、コア深さ方向の幅は、1μm〜5μmとしてい
る。かかる磁区制御層16の構成材料としては、1軸異
方性磁界Hkの大きな磁性材料を用いることが好まし
く、好ましくは5Oe以上、更に好ましくは10Oe以
上のものがよい。該磁性材料からなる磁区制御層16
は、その形状異方性によって、コア幅方向の磁気異方性
を示す。なお、該層16の積層を磁場中で行ったり、積
層後に磁場中熱処理を施すことによって、より大きな磁
気異方性を付与することも可能である。
【0030】図示例では、磁区制御軟磁性層16は、コ
ア深さ方向に所定間隔で2つ設けられている。この数は
特に限定されるものではない。このように、コア深さ方
向の複数位置に磁区制御軟磁性層16を形成することで
凹凸化された表面上に、上部磁極層13が形成されてお
り、これによって、ヨーク部13bには、コア幅方向に
長い上方隆起部17がコア深さ方向に複数形成されてい
る。
【0031】なお、上部磁極層13の形成後、非磁性の
保護層(図示せず)が全体を覆うように積層されるとと
もに、電極等の形成などの所望の加工が行われる。
【0032】本実施形態の薄膜磁気ヘッド1によれば、
1μm以下の記録コア幅とするとともに、上部磁極層の
構成材料として飽和磁束密度の高い軟磁性材料を用いる
ことによって、大きな面記録密度を達成することができ
るとともに、高飽和磁束密度の磁性材料を選択すること
によってその磁歪定数の絶対値が4×10-6以上(さら
には、10×10-6以上)の比較的大きいものであって
も、磁区制御軟磁性層16の形状異方性による磁気的カ
ップリングと、上方隆起部17の構造によるコア幅方向
の磁気異方性の向上作用によって、ヨーク部13bの磁
区制御を行い、無磁場下におけるヨーク部13bの磁区
構造を図5に示す理想的なものとすることが可能とな
る。これにより、高周波応答の良好化をも図られ、高転
送レート化を図ることが可能となる。
【0033】図2は、本発明の第2の実施形態を示し、
上記第1実施形態と異なるところは、磁区制御軟磁性層
16上に、0.1μm〜0.2μm程度の非磁性層18
を積層形成した後、上部磁極層13を形成することで、
ヨーク部13bと磁区制御層16との間に磁気ギャップ
を設けた点である。これによれば、磁区制御層16の両
端部でヨーク部13bと磁気的に結合するため、より一
層の180°磁壁の出現を確実化し得る。その他の構成
は同一であるので、同符号を付して詳細説明を省略す
る。
【0034】図3は、本発明の第3の実施形態を示し、
上記第1実施形態と異なるところは、磁区制御軟磁性層
16の上面とコイル被覆層12の上面とがほぼ面一とさ
れ、上部磁極層13のヨーク部13bに上方隆起部が形
成されていない点である。かかる構成によっても、磁区
制御軟磁性層16との磁気的カップリングによって、ヨ
ーク部13bに、コア幅方向の180°磁壁によって分
割された複数の磁区を出現させることが可能である。そ
の他の構成は同一であるので、同符号を付して詳細説明
を省略する。
【0035】図4は、本発明の第4の実施の形態を示
し、上記第1実施形態と異なるところは、磁区制御軟磁
性層の代わりに、これとほぼ同一形状の非磁性材料から
なる段部19を形成した点である。かかる段部19は、
コイル被覆層12上に新たに非磁性材料を積層形成する
ことによって形成してもよく、また、コイル被覆層12
の上部をパターニングすることによって形成してよい。
これによっても、上部磁極層13のヨーク部13bに、
第1実施形態と同様の上方隆起部17を形成することが
でき、ヨーク部13bにコア幅方向の180°磁壁を出
現させることが可能である。
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、1μm以下のコア幅の
ポール部を有する磁極層の構成材料として、飽和磁束密
度が高いが磁歪定数が比較的大きいものを選択した場合
であっても、磁極層のヨーク部の磁区構造を、コア幅方
向の180°磁壁により分割された高周波応答の良いも
のとすることができ、より一層の高記録密度化と高転送
レート化とを共に図ることができる。さらに、磁区構造
を最適化するための構造が非常に簡素であり、他の記録
特性に与える影響を最小限に止めることができるので、
本発明によれば、全体として良好な記録特性を有するパ
ッケージを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッ
ドの要部拡大斜視断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッ
ドの要部拡大斜視断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッ
ドの要部拡大斜視断面図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッ
ドの要部拡大斜視断面図である。
【図5】上部磁極層の理想的な磁区構造を模式的に示す
平面図である。
【図6】高密度記録対応ヘッドの上部磁極層の構成材料
として高飽和磁束密度の軟磁性材料を用いた場合の従来
の磁区構造を模式的に示す平面図である。
【図7】パーマロイのNi含有量の変化による各種磁気
特性の変動を示すグラフであり、(i)はNi含有量と
磁歪定数との関係を示すグラフ、(ii)はNi含有量と
透磁率及び飽和磁束密度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 薄膜磁気ヘッド 11 コイル層 12 コイル被覆層 13 上部磁極層 13a ポール部 13b ヨーク部 16 磁区制御軟磁性層 17 上方隆起部

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電材料からなるコイル層と、該コイル
    層を覆う非磁性材料からなるコイル被覆層と、該コイル
    被覆層上に積層される軟磁性材料からなる磁極層とを含
    み、該磁極層は、磁極先端側の幅狭のポール部と、前記
    コイル層の上方に位置する幅広のヨーク部とを有する薄
    膜磁気ヘッドにおいて、 前記コイル被覆層とヨーク部との間に、ヨーク部の磁区
    構造にコア幅方向の180°磁壁を出現させるためのコ
    ア幅方向に細長い磁区制御軟磁性層が、コア深さ方向に
    並んで複数設けられていることを特徴とする薄膜磁気ヘ
    ッド。
  2. 【請求項2】 導電材料からなるコイル層と、該コイル
    層を覆う非磁性材料からなるコイル被覆層と、該コイル
    被覆層上に積層される軟磁性材料からなる磁極層とを含
    み、該磁極層は、磁極先端側の幅狭のポール部と、前記
    コイル層の上方に位置する幅広のヨーク部とを有する薄
    膜磁気ヘッドにおいて、 前記ヨーク部は、コア幅方向に細長い上方隆起部をコア
    深さ方向に複数有し、これによりヨーク部の磁区構造に
    コア幅方向の180°磁壁をコア深さ方向に複数出現さ
    せていることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  3. 【請求項3】 導電材料からなるコイル層と、磁極層と
    を含む薄膜磁気ヘッドにおいて、 前記磁極層は、磁極先端側に1μm以下のコア幅のポー
    ル部を有するとともに、前記コイル層の上方に位置する
    幅広のヨーク部とを有し、且つ、飽和磁束密度が1.4
    T以上で且つ磁歪定数の絶対値が4×10-6以上の軟磁
    性材料からなり、ヨーク部の磁区構造が、コア幅方向の
    180°磁壁を有することを特徴とする薄膜磁気ヘッ
    ド。
  4. 【請求項4】 導電材料からなるコイル層と、磁極層と
    を含む薄膜磁気ヘッドにおいて、 前記磁極層は、磁極先端側に1μm以下のコア幅のポー
    ル部を有するとともに、前記コイル層の上方に位置する
    幅広のヨーク部を有し、且つ、Niを40重量%以上6
    0重量%以下含むNiFe合金により形成されており、
    前記ヨーク部の磁区構造が、コア幅方向の180°磁壁
    を有することを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  5. 【請求項5】 コイル層は、非磁性材料からなるコイル
    被覆層で覆われており、該被覆層とヨーク部との間に、
    ヨーク部の幅方向全長にわたるコア幅方向に細長い磁区
    制御軟磁性層が、コア深さ方向に複数設けられているこ
    とを特徴とする請求項3又は4に記載の薄膜磁気ヘッ
    ド。
  6. 【請求項6】 磁区制御軟磁性層はコア幅方向の一軸磁
    気異方性を有するものであり、該磁区制御軟磁性層との
    磁気的カップリングによりヨーク部に180°磁壁を出
    現させることを特徴とする請求項5に記載の薄膜磁気ヘ
    ッド。
  7. 【請求項7】 磁区制御軟磁性層とヨーク部との間に非
    磁性薄膜が設けられていることを特徴とする請求項6に
    記載の薄膜磁気ヘッド。
  8. 【請求項8】 コイル層は、非磁性材料からなるコイル
    被覆層で覆われており、該被覆層上に、コア幅方向に細
    長いブロックパターンがコア深さ方向に複数形成されて
    おり、該被覆層上に形成されたヨーク部は、コア幅方向
    に長い上方隆起部をコア深さ方向に複数有し、これによ
    りヨーク部の磁区構造にコア幅方向の180°磁壁を出
    現させていることを特徴とする請求項3又は4に記載の
    薄膜磁気ヘッド。
  9. 【請求項9】 ヨーク部は、そのコア幅長よりもコア深
    さ長が大きいことを特徴とする請求項3乃至8のいずれ
    か1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7463449B2 (en) 2004-11-10 2008-12-09 Tdk Corporation Magnetic head for perpendicular magnetic recording, head gimbal assembly, head arm assembly and magnetic disk drive
US7576950B2 (en) 2004-08-06 2009-08-18 Sae Magnetics (H.K.) Ltd. Perpendicular magnetic recording head utilizing tensile stress to optimize magnetic pole layer domain structure
US7808743B2 (en) 2007-03-05 2010-10-05 Tdk Corporation Perpendicular magnetic write head having a structure that suppresses unintended erasure of information on a write medium at a non-writing time
US8072707B2 (en) 2007-04-25 2011-12-06 Tdk Corporation Perpendicular magnetic recording head with divided auxiliary yoke layer

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