JP2000326108A - 硬質皮膜被覆工具 - Google Patents
硬質皮膜被覆工具Info
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- Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
- Physical Vapour Deposition (AREA)
Abstract
着性を犠牲にすること無く更に耐酸化性を改善し、切削
加工の乾式化、高速化に対応する硬質皮膜被覆工具を提
供することを目的とする。 【構成】 高速度鋼、超硬合金、サーメット、セラミッ
クスの何れかを母材とし、金属成分のみの原子%で、S
iが10%以上60%以下、B、Al、V、Cr、Y、
Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの1種または2種以
上で10%未満、残Tiで構成される窒化物、炭窒化
物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれかで、Si3N4お
よびSiが独立した相として化合物中に存在するa層
と、金属成分のみの原子%が、Al:40%越え75%
以下、B、Si、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、H
f、Ta、Wの1種または2種以上で10%未満、残T
iで構成される窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化
物のいずれかであるb層が、それぞれ一層以上交互に被
覆され、かつ母材表面直上には金属成分としてTiを主
体とする窒化物で層厚が0.1μm以上1μm以下のc
層があり、さらにc層直上はb層であることを特徴とす
る硬質皮膜被覆工具。
Description
加工に使用される硬質皮膜被覆工具に関するものであ
る。
削工具が汎用的かつ一般的であった。TiNは比較的耐
酸化性に優れるため、切削時の発熱によって生じる工具
のすくい面摩耗に対して、優れた耐摩耗性を示すだけで
なく、母材との密着性も良好であることが特長である。
また、TiCNは、TiNに比べ高硬度であるため、工
具の逃げ面摩耗に対して優れた特性を示す。しかしなが
ら、金属加工の高能率化を目的とした切削速度の高速化
傾向に対し、上記硬質皮膜では、十分な耐酸化性、耐摩
耗性を示さなくなった。この様な背景から、皮膜の耐酸
化性、耐摩耗性をより向上させる研究がなされ、その結
果、特開昭62−56565号、特開平2−19415
9号に代表されるTiAlN皮膜が開発され切削工具に
適用されている。
の皮膜中に含有するTiとAlの成分比率により異なる
ものの、概略2300〜2800のビッカース硬さを有
すだけではなく、耐酸化性が、前記TiN、TiCNに
比べ優れるため、刃先が高温に達する切削条件下におい
ては、切削工具の性能を著しく向上させる。しかしなが
ら、近年では切削速度が更に高速化する傾向に加え、乾
式での切削加工が環境問題上重要視され、切削工具の使
用環境はますます苛酷なものとなってきている。
るTiAlN皮膜の酸化開始温度は、TiNの450℃
に対し、Alの添加量に依存して750〜900℃に向
上する。しかしながら、前述の乾式高速切削加工におい
ては、使用する工具の刃先温度が900℃以上の高温に
達するため、前記TiAlN皮膜では、十分な工具寿命
が得られないのが現状である。
であって、従来のTiAlN皮膜に対し、更に耐酸化
性、耐摩耗性を改善し、切削加工の乾式化、高速化に対
応する硬質皮膜被覆工具を提供することが目的である。
耐酸化性、耐摩耗性および密着性に及ぼす、様々な元素
の影響および皮膜の層構造について詳細な検討を行った
結果、Siを適量含有したTiを主成分とする窒化物、
炭窒化物、酸窒化物もしくは酸炭窒化物(以下、TiS
i系窒化物等と記す)と、TiとAlを主成分とした窒
化物、炭窒化物、酸窒化物もしくは酸炭窒化物(以下、
TiAl系窒化物等と記す)に含まれる金属成分を特定
値内に制限した皮膜を、TiSi系窒化物等の微細組織
構造が、Tiを主成分とする窒化物、炭窒化物、酸窒化
物もしくは酸炭窒化物中に、Si3N4およびSiが独
立した相として存在するよう、それぞれ一層以上交互に
被覆し、その際、金属成分としてTiを主体とする窒化
物層を母材表面直上に成膜することで、乾式の高速切削
加工において、切削工具の性能が極めて良好となること
を見出し本発明に到達した。
サーメット、セラミックスの何れかを母材とし、金属成
分のみの原子%で、Siが10%以上60%以下、B、
Al、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、
Wの1種または2種以上で10%未満、残Tiで構成さ
れる窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれ
かで、Si3N4およびSiが独立した相として化合物
中に存在するa層と、金属成分のみの原子%が、Al:
40%越え75%以下、B、Si、V、Cr、Y、Z
r、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの1種または2種以上
で10%未満、残Tiで構成される窒化物、炭窒化物、
酸窒化物、酸炭窒化物のいずれかであるb層が、それぞ
れ一層以上交互に被覆され、かつ母材表面直上には金属
成分としてTiを主体とする窒化物で層厚が0.1μm
以上1μm以下のc層があり、さらにc層直上はb層で
あることを特徴とする硬質皮膜被覆工具であり、上記硬
質皮膜は、物理蒸着法により被覆されたことが望まし
い。
して、その構成要件について詳しく述べる。一般にTi
AlN皮膜は、大気中で酸化テストを行うと、皮膜表面
近傍のAlが最表面に外向拡散し、そこでアルミナ層を
形成する。本発明者らの研究によれば、このことが耐酸
化性向上の理由と考えられるが、この時、アルミナ層直
下には、Alを含有しない非常にポーラスなTi酸化物
が形成する。静的である酸化テストにおいては、最表面
に形成されたアルミナ層が、酸化の進行である酸素の内
向拡散に対し、酸化保護膜として機能するものの、動的
な切削加工においては、最表面のアルミナ層は、その直
下のポーラスなTi酸化物層より容易に剥離してしま
い、酸化の進行に対し十分な効果を発揮しない。
自体の耐酸化性が極めて高いだけでなく、最表面に酸化
保護膜となるSiを含有する非常に緻密な複合酸化物層
が形成され、また、その直下には酸化保護膜の剥離原因
となるポーラスなTi酸化物が形成されないことを確認
した。上記効果を得るには、Siが皮膜の金属成分のみ
の原子%で、10%以上含有していなければならず、逆
に60%を越えて含有すると、皮膜の延性ないしは硬さ
の低下が顕著になり、切削工具としての使用に耐えられ
なくなる。
o、Hf、Ta、Wは、TiSi系窒化物等の皮膜中に
おいて固溶強化元素として働き、皮膜の高硬度化に有効
である。そのため、必要に応じB、Al、V、Cr、
Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの1種または2
種以上を微量添加することが望ましい。しかしながら皮
膜の金属成分のみの原子%で10%以上添加すると、前
述したSi含有による耐酸化性向上効果が得られなくな
る。よって、B、Al、V、Cr、Y、Zr、Nb、M
o、Hf、Ta、Wは、1種または2種以上で10%未
満とする。
化物、炭窒化物、酸窒化物もしくは酸炭窒化物中に、S
i3N4およびSiが独立した相として存在する構造に
することで高硬度化が達成でき、著しく耐摩耗性に優れ
た皮膜が得られる。この様な構造を持つ皮膜、つまり本
発明a層を形成するには、アーク放電方式イオンプレー
ティングや、スパッタリングといった物理蒸着法の違い
や、同様の手法であっても成膜装置の基本的な仕様によ
って、その絶対値は異なるものの、被覆の際、基体に印
加するバイアス電圧を−10〜−100Vといった比較
的低い値にすることで達成できる。
成要件について詳しく述べる。TiAl系窒化物等の皮
膜であるb層におけるAlの役割は、皮膜の耐摩耗性お
よび耐酸化性を向上させることである。皮膜の耐摩摩耗
性および耐酸化性は、皮膜中のAl含有量の増加に伴っ
て向上する。しかしながら、75%を越えて含有する
と、皮膜の硬さが低下し、工具として必要な耐摩耗性が
得られなくなる。そのため、耐摩耗性、耐酸化性をバラ
ンス良く得るためには、b層中のAl含有量を、皮膜の
金属成分のみの原子%で、40%越え75%以下に調整
することが重要である。
o、Hf、Ta、Wは、TiAl系窒化物等の皮膜中に
おいて固溶強化元素として働き、皮膜の高硬度化に有効
である。そのため、必要に応じB、Si、V、Cr、
Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの1種または2
種以上を微量添加することが望ましい。しかしながら皮
膜の金属成分のみの原子%で10%以上添加すると、皮
膜の靭性が極端に低下する。そのため、耐摩耗性、耐酸
化性、靭性をバランス良く得るためには、B、Si、
V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wは1
種または2種以上で10%未満とする。
密着性においては十分でない。そのため、母材表面直上
には、b層および母材との密着性に優れ、適度に耐摩耗
性、耐酸化性等を有す金属成分としてTiを主体とする
窒化物のc層が必要である。c層はa層およびb層に比
べ硬さの低いTiNであることが望ましいが、TiNに
周期律表IVa族、Va族、VIa族金属およびAl、S
i、Y、Co等を微量に含有する場合、具体的には金属
成分のみの原子%で10at%未満の含有量においても
同様の効果が得られる。
限定される。c層の層厚が厚いほど密着性の向上は顕著
になる。しかしながら、一般に切削中においては、刃先
部の皮膜は斜め断面の形態で摩耗するため、a層および
b層に比べ耐酸化性の低いc層より優先的に酸化が進行
する。そのためc層の層厚が厚い場合、つまり切削中の
摩耗によるc層の露出面積が大きい場合は、c層の優先
酸化が顕著となり、切削工具の性能は著しく向上しな
い。また、極端にc層の層厚が薄い場合は、密着性向上
効果が顕著に表れない。以上のような理由からc層の層
厚を0.1μm以上1μm以下とする。望ましくは0.
2μm以上0.4μm以下である。
密着性に優れるc層を母材表面直上に被覆し、その上に
皮膜自体の耐摩耗性および耐酸化性をバランス良く有す
b層と、著しく耐酸化性、耐摩耗性に優れるa層を被覆
することが極めて重要であり、その結果、乾式の高速切
削に対応する切削工具を得ることが可能となる。また、
母材表面直上にc層を被覆し、その上にb層を被覆した
後、a層ならびにb層をそれぞれ交互に積層した多層皮
膜によっても同様の効果が得られる。
て窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれか
に調整でき、それらを被覆した工具についても同様の効
果が得られる。
法については、特に限定されるものではないが、被覆母
材への熱影響、工具の疲労強度、皮膜の密着性等を考慮
した場合、比較的低温で被覆でき、被覆した皮膜に圧縮
応力が残留するアーク放電方式イオンプレーティング、
もしくはスパッタリング等の被覆母材側にバイアス電圧
を印加する物理蒸着法であることが望ましい。以下、本
発明を実施例に基づいて説明する。
い、金属成分の蒸発源である各種合金製ターゲット、な
らびに反応ガスであるN2ガス、CH4ガス、Ar/O
2混合ガスから目的の皮膜が得られるものを選択し、被
覆基体温度400℃、反応ガス圧力3.0Paの条件下
にて、被覆基体である超硬合金製6枚刃エンドミル(外
径8mm)および超硬合金製ドリル(外径8mm)に、
全皮膜の厚みが4μmとなるように成膜を行った。な
お、本発明例の全てと、比較例51、52、53、5
4、55、56、57、58については、−30Vのバ
イアス電圧を印加し成膜したが、比較例59について
は、−200Vのバイアス電圧を印加し成膜した。ま
た、本発明例ならびに比較例のc層および従来例につい
ては、全て−150Vのバイアス電圧を印加し成膜し
た。本発明例および比較例のa層およびb層の厚みにつ
いては、基本的にほぼ1:1であるが、表中の総積層数
が2層のものについては、a層を約0.5μmとしたた
め、b層は全皮膜の厚みよりa層、c層(表中記載)を
差し引いた層厚である。
リルを用い、次に示す乾式の高速切削条件にて、刃先の
欠けないしは摩耗等により工具が切削不能となるまで加
工を行い、その時の切削長を工具寿命とした。表1に本
発明例、表2に比較例、表3に従来例の硬質皮膜に関す
る詳細およびそれらの切削結果を示す。a層中のSi3
N4ならびにSiの有無についてはXPSにて確認を行
い、Si3N4ならびに(もしくは)Siの存在が認め
られた皮膜については表中に記した。
金製6枚刃エンドミル、外径8mmを用いて、側面切削
をダウンカットで、被削材はSKD11(HRC6
0)、切り込み量Ad=12mm、Rd=0.2mm、
切削速度=200m/min、送り量0.03mm/t
ooth、切削油=なし、但し、エアーブローを使用で
行った。
硬合金製ドリル、外径8mmを用いて、被削材SCM4
40(HRC30)の穴加工を、切削速度=90m/m
in、送り量=0.2mm/rev、切削油=なし、但
し、エアーブローを使用し、穴深さ24mmの止まり穴
の加工で行った。また、加工穴数は最高2000穴で終
わりとした。
比較例ならびに従来例と比べて、工具寿命が著しく向上
しており、乾式高速切削加工に十分対応することがわか
る。比較例50は、皮膜の組成、層構造およびa層の組
織構造ともに本発明例に含まれるものであるため、比較
例の中では最も工具性能は優れるが、c層の層厚が厚す
ぎるために本発明例に比べて工具寿命が劣る結果となっ
た。また、比較例51は、皮膜の組成については本発明
に含まれるものであるが、皮膜の層構造が異なるため、
エンドミルおよびドリル、両工具の切削において、皮膜
の剥離が早期に生じ、非常に短寿命となった。比較例5
8は、皮膜の組成、層構造については本発明に含まれる
ものであるが、a層には、Si相のみしか存在していな
いため、十分な皮膜硬さが得られず本発明例に比べ短寿
命となった。
は、従来の被覆工具に比べ優れた耐酸化性、耐摩耗性を
有すことから、乾式高速切削加工において格段に長い工
具寿命が得られ、切削加工における生産性の向上だけで
なく環境問題への対応にも極めて有効である。
Claims (2)
- 【請求項1】 高速度鋼、超硬合金、サーメット、セラ
ミックスの何れかを母材とし、金属成分のみの原子%
で、Siが10%以上60%以下、B、Al、V、C
r、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの1種また
は2種以上で10%未満、残Tiで構成される窒化物、
炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれかで、Si3
N4およびSiが独立した相として化合物中に存在する
a層と、金属成分のみの原子%が、Al:40%越え7
5%以下、B、Si、V、Cr、Y、Zr、Nb、M
o、Hf、Ta、Wの1種または2種以上で10%未
満、残Tiで構成される窒化物、炭窒化物、酸窒化物、
酸炭窒化物のいずれかであるb層が、それぞれ一層以上
交互に被覆され、かつ母材表面直上には金属成分として
Tiを主体とする窒化物で層厚が0.1μm以上1μm
以下のc層があり、さらにc層直上はb層であることを
特徴とする硬質皮膜被覆工具。 - 【請求項2】 請求項1記載の硬質皮膜を物理蒸着法に
より被覆したことを特徴とする硬質皮膜被覆工具。
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