JP2000309414A - 食品等搬送用非付着コンベヤベルト - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 非付着コンベヤベルトにはカーリングを生じ
やすい問題があり、硬さを低下させると耐摩耗性が低
下し、傷が入り易く、太い横糸を織り込むと表面に横
糸による凹凸が現れる、表裏カバー層を同材質、同厚
さとした場合には、コンベヤベルトが硬くなり小径プー
リに馴染まなくなる課題がある。 【解決手段】 心体層５の裏面に表カバー層４の収縮率
と同程度の収縮率を有する裏カバー層６を積層してい
る。裏カバー層６としてはナイロンシート、ポリウレタ
ンシート若しくは綿帆布７またはこれらを組み合わせた
シートが使用される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、表カバー層とし
てポリオレフィンシートを用いた食品等の搬送に使用さ
れる非付着コンベヤベルト（単に非付着コンベヤベルト
ともいう）であって、搬送に付帯する業務、例えば、検
数、取り出しなどが容易であるコンベヤベルトに関す
る。

【０００２】パン、ビスケット等未包装の食品を搬送す
るためのコンベヤベルトは、表カバー層として食品等が
付着せず、人体に有害な組成物を含まずかつ柔軟な弾性
体であるポリオレフィンシートを使用することが多い。
ポリオレフィンは結晶性が高く、溶融してベルト状に成
形した後、時間の経過とともに結晶化が進み全体的に収
縮する。従って、殆ど収縮しない心体層を使用し、ポリ
オレフィンシートを表カバー層として使用すると、時間
の経過により表カバー層側に凹にカーリングする傾向が
ある。カーリングとは、コンベヤベルトの幅方向両端部
が浮き上がり樋状となることをいい、コンベヤベルトの
幅方向より被搬送物を検知したり、引取ったりする作業
を妨げることがある。

【０００３】図３は、従来の構成を有する非付着コンベ
ヤベルト１の走行中の状態を示す斜視図であり、非付着
コンベヤベルト１は、走行路に延べられた平板状の支持
板３の上面に展張され、矢印ハの方向に走行される。ポ
リオレフィンシートを表カバー層とした非付着コンベヤ
ベルト１は、ベルト製作後、時間の経過とともに側端部
２が上方にカーリングして、被搬送物１０、例えばパン
などを走行中に側面より計数したり、一部を取り出した
りする作業に支障を来すことがある。

【０００４】

【従来の技術】非付着コンベヤベルトは、心体層とし
て、例えばポリオレフィンと接着可能に処理をしたポリ
エステル帆布を使用し、溶融状態のポリオレフィンシー
トを積層し冷却して製造する。この非付着コンベヤベル
トは、このままでは上記のように表カバー層、即ち搬送
面側にカーリングすることが多い。図２（ａ）にカーリ
ング対策をしない従来の非付着コンベヤベルト１の断面
図を示す。支持板３に支持された非付着コンベヤベルト
１は、心体層５の上面に表カバー層４としてポリオレフ
ィンシートを積層し、その上面に被搬送物を載置して搬
送する。側端部２はポリオレフィンシートの収縮により
矢印イの方向にカーリングする。

【０００５】この非付着コンベヤベルト１のカーリング
防止対策として次の改善が検討された。

【０００６】 表カバー層４として用いるポリオレフ
ィンシートの硬さ（分子量など）を下げることにより、
収縮率、即ち、カーリングしようとする力を弱くする。

【０００７】 心体層５（ポリエステル帆布等）の横
剛性を向上する、即ち、心体層５の横糸１１としてポリ
エステル等のモノフィラメントを使用して、表カバー層
４のカーリングしようとする力に対抗する剛性を付与す
る。

【０００８】 心体層５の裏側（下側）に表カバー層
４と同じ材質であって同じ厚さの裏カバー層６（図２
（ｂ）参照）を積層して表裏のカバー層の収縮率を均衡
させる。 上記〜を組み合わせる。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような構成を有する従来の非付着コンベヤベルトは、次
の課題を残している。

【００１０】前記の表カバー層の硬さを低下させたコ
ンベヤベルトでは、i）カバー層の耐摩耗性が低下して
コンベヤベルトの寿命が短くなり、ii)被搬送物の搭
載、取出しの際またはスクレーパ等により傷が入り易い
問題がある。

【００１１】前記の心体の横剛性を向上させるとき
は、まず、i)心体の横糸の太さに限度があり、十分な剛
性を有する横糸を織り込んだ帆布が得られない。また、
ii)太い横糸を織り込んだ心体層を使用したコンベヤベ
ルトは、その表面に横糸による凹凸が現れ、コンベヤベ
ルトの表面を平坦とし、または、表面に絞模様を入れる
ためには表カバー層を更に厚くする必要が生じ、かえっ
てカーリングが生じやすくなることがある。

【００１２】前記の表・裏カバー層を同一材質、同一
厚さとした場合には、i)コンベヤベルトが硬くなり小径
プーリを用いたコンベヤには馴染まなくなる問題があ
り、ii)裏カバー層と支持板との摩擦が大きくなる。

【００１３】前記の上記〜を組み合わせた構成に
おいても、上記課題は解決されず逆に課題が重なりその
まま残される。

【００１４】

【課題を解決するための手段】上記した課題を解決する
ために本発明の非付着コンベヤベルトは、表カバー層と
してポリオレフィンシートを搬送面側（表面）に積層し
た心体層の裏面側に前記ポリオレフィンカバー層の経時
による収縮と同程度の収縮を有する裏カバー層を積層し
ている。

【００１５】食品等を搬送するコンベヤベルトの表カバ
ー層としては、衛生的見地より有害物を含まず、かつ必
要な柔軟性と耐摩耗性を有するポリオレフィンシートを
使用することが多い。ポリオレフィンシートは、この特
性に加えて水分を含む食品等との離型性に優れており食
品等を載置して搬送し取り出す工程においても付着が少
なく、好ましく使用される。ポリオレフィンシートは上
記のように成形後、時間とともに収縮する性質を有し、
心体層は収縮しないので、コンベヤベルトとしては表カ
バー層側に凹にカーリングする。そこで心体層を中心と
して表カバー層の経時による収縮と同程度に収縮する裏
カバー層を積層して表・裏カバー層の収縮を均衡させて
平坦なコンベヤベルトを得る。裏カバー層としてはナイ
ロンシート、ポリウレタンシート若しくは綿帆布または
これらを組み合わせたシートが使用される。

【００１６】請求項２に記載の食品等搬送用非付着コン
ベヤベルトは、前記裏カバー層が、ナイロンシートまた
はポリウレタンシートである。ナイロンシート、ポリウ
レタンシートは、成形した後収縮する性質を有するた
め、表カバー層に近似する収縮率を有するように設計す
ることができる。有害物質を含まず、コンベヤベルトと
して必要な特性を有するので非付着コンベヤベルトの裏
カバー層としても好ましく使用される。また、心体層の
保護としても効果がある。

【００１７】請求項３に記載の食品等搬送用非付着コン
ベヤベルトは、前記裏カバー層が、織布または編み物で
ある。織布としては綿帆布、ポリエステルスパン糸帆布
が使用され、これらの長さ方向のモジュラスは低く設計
される。外径の小さいプーリ間に懸回され使用されるた
めである。また、幅方向の収縮率は、ベルトが長さ方向
に僅かながら伸張されることにより生じ、表カバー層の
収縮に近似するように厚さ、収縮率等が設計される。コ
ンベヤベルトが支持板(被搬送物の重さによりベルトが
垂れ下がることを防止する板体）に支持される場合には
織布により滑りがスムーズであり、必要な駆動力も少な
くなる。

【００１８】請求項４に記載の食品等の搬送用非付着コ
ンベヤベルトは、前記裏カバー層として、心体層の裏面
にポリウレタンシートまたはナイロンシートを積層し、
このポリウレタンシートまたはナイロンシートの裏面に
更に織布または編み物を積層している。心体層と織布等
との間にポリウレタンシートまたはナイロンシートを積
層することにより、搬送面へのカーリングが防止され、
織布等により支持板との滑りが改善される。

【００１９】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る非付着コンベ
ヤベルトについて各実施の形態を図面に基づいて説明す
る。図１は本発明に係る非付着コンベヤベルトを示す断
面図、図２（ａ）はカーリングした従来の非付着コンベ
ヤベルトを示す断面図、図２（ｂ）は本発明にかかる非
付着コンベヤベルトを示す断面図である。

【００２０】まず、図２により本発明の非付着コンベヤ
ベルトによるカーリング防止作用を説明する。図２
（ａ）に示すように、従来の非付着コンベヤベルト１
を、幅方向に短冊状に裁断して表カバー層を上面として
平坦な支持板３に載置すると、表カバー層４（ポリオレ
フィンシート）が時間とともに収縮し、心体層５は収縮
しないので矢印イの方向にカーリングする。図２（ｂ）
に示すように本発明の非付着コンベヤベルトは、表カバ
ー層４の収縮による矢印イの方向のカーリングしようと
する力に対抗して、心体層５の裏側に表カバー層４と同
等の収縮率を有する裏カバー層６を積層しているので、
裏カバー層６は矢印ロの方向の収縮する。これによって
表・裏カバー層４、６の収縮率は均衡され、非付着コン
ベヤベルトは平坦に保たれる。この作用を有する裏カバ
ー層６としては次のシートが使用され、表カバー層とし
て使用されるポリオレフィンシートと対比して収縮率等
を表１に示す。

【００２１】

【表１】 *1は、ＰＥ帆布は、ポリエステル帆布を表す。 *2は、収縮率の測定法方法は２０mm×２５０mmの試料を１５０℃、３０分間、 平板上に無負荷で載置して寸法変化を測定した。

【００２２】上記の構成を有する各部材を収縮率を勘案
して、表カバー層としてのポリオレフィンシートと裏カ
バー層としての綿帆布等の収縮率が均衡するように設計
する。

【００２３】

【実施例】本発明の非付着コンベヤベルト１の実施例を
図１により説明する。

【００２４】実施例１ 図１（ａ）に断面図を示す非付着コンベヤベルトは、 表カバー層４＝ポリオレフィンシート（厚さ＝0.5mm、
収縮率＝0.2~0.4％） 心体層５ ＝ポリエステル帆布 （厚さ＝0.7m
m、）、 裏カバー層６＝ポリウレタンシート （厚さ＝0.5mm、
収縮率＝0.8％） を使用した。

【００２５】幅が３００mmであって所定の長さを有する
試験用の非付着コンベヤベルトを製作し、長さ（ベルト
の長さ方向をいう）２５mmの短冊状に裁断してカーリン
グ測定試料とした。カーリング測定方法は、図４に示す
様に、試料１７を表カバー層４を上にして平板２０上に
載置して所定温度で所定時間を経過した後、この試料１
７の両端部２，２’を結んだ線と中央部１８の上面との
間隔を測定してカーリングの程度Ｈとした。カーリング
程度Ｈは３mmであった。

【００２６】実施例２ 図１（ｂ）に断面図を示す非付着コンベヤベルトは、実
施例１と同じ表カバー層４、心体層５を使用し、裏カバ
ー層６として綿帆布７（厚さ＝0.5mm、収縮率＝2.0％）
を接着層９を介して積層して、実施例１と同様な試験用
の非付着コンベヤベルトを製作した。つづけて実施例１
と同様にカーリングの程度Ｈを測定した。カーリング程
度Ｈは1.5mm であった。

【００２７】実施例３ 図１（ｃ）に断面図を示す非付着コンベヤベルトは、実
施例１と同じ表カバー層４、心体層５を使用し、裏カバ
ー層６は、中間層８としてポリウレタンシート（厚さ＝
0.3mm、収縮率＝0.8％）を積層し、更に、この裏面（下
側）に綿帆布７（厚さ＝0.3mm、収縮率＝1.5％）を積層
して、実施例１と同様な試験用非付着コンベヤベルトを
製作した。つづけて実施例１と同様にカーリングの程度
Ｈを測定した。カーリング程度Ｈは 2 mm であった。

【００２８】比較例１ 実施例１と同じ表カバー層４、心体層５を使用し、裏カ
バー層６は使用しない従来の非付着コンベヤベルトを製
作し、このコンベヤベルトベルトを、実施例１と同様に
カーリングの程度Ｈを測定した。カーリング程度Ｈは
20 mm であった。

【００２９】上記の実施例、比較例の仕様と試験結果を
表２にまとめる。但し、表カバー層、心体層は、実施例
１に記載したものを共通して使用した。

【００３０】

【表２】 このように実施例１〜３のコンベヤベルトは比較例１に
比してカーリングの程度は大幅に改善できた。

【００３１】

【発明の効果】以上説明したことから明らかなように、
請求項１の非付着コンベヤベルトは、表面カバー層とほ
ぼ同じ収縮率を有する裏カバー層を積層することによ
り、表カバー層が収縮しても裏カバー層も同程度に収縮
してカーリングを生じることがない。

【００３２】請求項２に記載の非付着コンベヤベルトで
は、裏カバー層として表カバー層とほぼ同じ収縮率を有
するナイロンシートまたはポリウレタンシートを使用す
ることにより、カーリングは抑制される。また帆布であ
る心体層の裏面は平滑で、被搬送物の一部等が付着する
ことを防止できるので、食品等の搬送に好適である。な
お、太い横糸等を使用しないので表カバー層に凹凸が現
れることがなく、絞付けなども良好となる。

【００３３】請求項３に記載の非付着コンベヤベルト
は、織布または編み物を裏カバー層とすることにより、
カーリングの発生を防止するとともに走行中に支持板と
の摩擦が少なく駆動力が少なくなる。

【００３４】請求項４に記載の非付着コンベヤベルト
は、中間層としてポリウレタンシート等を挟んで綿帆布
等を積層しているので、カーリングを抑制するとともに
支持板との良好な滑りを維持できる。なお、中間層を設
けることにより表カバー層に織布の凹凸が現れることが
なく、絞付けなども良好となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に係る非付着コンベヤベルトを
示す断面図で、図１（ａ）は実施例１のコンベヤベルト
を示し、図１（ｂ）は実施例２のコンベヤベルトを示
し、図１（ｃ）は実施例３に係るコンベヤベルトを示
す。

【図２】本発明に係るカーリング防止効果を説明する断
面図で、図２（ａ）は従来コンベヤベルト（比較例１）
を示し、図２（ｂ）は本発明のコンベヤベルトを示す。

【図３】従来の非付着コンベヤベルトの走行状態を説明
するための部分斜視図である。

【図４】本発明の実施例に係る非付着コンベヤベルトに
おけるカーリングの程度を測定する方法を説明するため
の断面図である。

【符号の説明】

１：非付着コンベヤベルト ２、２’：側端部 ３：支持板 ４：表カバー層 ５：心体層 ６：裏カバー層 ７：綿帆布 ８：中間層

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 食品等の搬送に使用される非付着コンベ
   ヤベルトにおいて、 表カバー層としてのポリオレフィンシートを搬送面側に
   積層した心体層の裏面側に、前記表カバー層の経時によ
   る収縮と同程度に収縮する裏カバー層を積層しているこ
   とを特徴とする食品等搬送用非付着コンベヤベルト。
2. 【請求項２】 前記裏カバー層が、ナイロンシートまた
   はポリウレタンシートである請求項１に記載の食品等搬
   送用非付着コンベヤベルト。
3. 【請求項３】 前記裏カバー層が、織布または編み物で
   ある請求項１に記載の食品等搬送用非付着コンベヤベル
   ト。
4. 【請求項４】 前記裏カバー層として、心体層の裏面に
   ポリウレタンシートまたはナイロンシートを積層し、こ
   のポリウレタンシートまたはナイロンシートの裏面に更
   に織布または編み物を積層している請求項１に記載の食
   品等搬送用非付着コンベヤベルト。