JP2000303273A - 紡機用リングの慣らし運転期間短縮方法及び紡機用リング - Google Patents

紡機用リングの慣らし運転期間短縮方法及び紡機用リング

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JP2000303273A
JP2000303273A JP2000037117A JP2000037117A JP2000303273A JP 2000303273 A JP2000303273 A JP 2000303273A JP 2000037117 A JP2000037117 A JP 2000037117A JP 2000037117 A JP2000037117 A JP 2000037117A JP 2000303273 A JP2000303273 A JP 2000303273A
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traveler
flange
spinning
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JP2000037117A
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English (en)
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Manabu Nagamura
学 長村
Yasuo Kotetsu
泰生 小鉄
Yoshimichi Fujii
能理 藤井
Koji Maeda
浩司 前田
Tomohito Itou
友仁 伊藤
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Toyota Industries Corp
Original Assignee
Toyoda Automatic Loom Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 リング精紡機において高速で巻取りを行う場
合に使用されるリングの慣らし運転期間を短縮すること
ができる紡機用リングを提供する。 【解決手段】 リング1はO型のトラベラ2が横向きで
走行するのに適したフランジ1aを有する形状に形成さ
れている。リング1は炭素鋼材を素材として所定形状に
形成され、浸炭焼入れ処理を施した後、フランジ1aの
表面に潤滑性物質層3が形成されている。潤滑性物質層
3の材質にはパラフィンロウ又はステアリン酸が使用さ
れている。新たなリングを使用する際、慣らし運転を行
わずに最初から通常紡出時の最高回転速度の紡出条件で
運転を行うことが可能になる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はリング上を摺動する
トラベラを介して糸の巻き取りを行うリング精紡機、リ
ング撚糸機等の紡機に使用する紡機用リングの慣らし運
転期間短縮方法及び紡機用リングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、リング精紡機においても生産性向
上のため高速化が指向され、スピンドル回転数が250
00rpm程度の高速での巻取りも実施されている。ス
ピンドルの回転速度の高速化に伴ってトラベラがリング
上を周回する速度も大きくなる。トラベラの周回速度が
大きくなると、リングとトラベラ間の摩擦抵抗が大きく
なってリング及びトラベラの摩耗が速く進行し、寿命が
短くなるという問題がある。また、リングとトラベラ間
の摩擦抵抗が大きくなると摩擦熱が多量に発生し、部品
自体の損傷、変形を生じ易く、巻取り糸にも悪影響を及
ぼす。
【0003】リングの耐摩耗性を向上するため、リング
の素材としては切削加工がし易い鋼材を使用し、リング
の表面、特にトラベラが周回するフランジ部に表面処理
を施して硬度を上げ、耐摩耗性を向上させることが従来
種々試みられている。例えば、特開平3−8822号公
報には、鋼材で形成したリングに浸炭焼入れし、フラン
ジ部の表面にSi C複合Ni −P非晶質合金メッキを施
したものが開示されている。即ち、図7に示すように、
フランジ部11の表面に硬質微粒子12を含む複合メッ
キ層13が形成されている。
【0004】一方、トラベラがフランジ部を周回する際
の摩擦抵抗を軽減するため、給油リング(実開平4−1
35977号公報等)やリングの表面に炭素が主成分の
非晶物質からなる固体潤滑皮膜を形成したもの(特開平
4−73221号公報)が提案されている。また、浸炭
処理されたフランジ部の表面にフッ素樹脂コートが施さ
れたリング(PMリング:金井重要工業(株)製の商品
名)が市販されている。
【0005】リング精紡機で、リングを新しいものに交
換した場合、最初から通常の巻取運転時と同じ最高回転
速度となるように運転を行うと、トラベラの焼付きに起
因する糸切れが発生し、正常な運転ができない。そこ
で、一般に最高回転速度が通常の巻取運転時の最高回転
速度の70〜80%の回転速度で運転を開始するととも
に、玉揚げを繰り返しながら最高回転速度を所望の最高
回転速度となるまで徐々に高くする慣らし運転が行われ
る。この慣らし運転の期間は目標の回転速度が高いほど
長くなり、20000rpm以上では数十日(40〜6
0日)必要であった。この慣らし運転中は生産性が低下
するため、慣らし運転の期間を短縮することが望まれて
いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】特開平3−8822号
公報に開示された技術のように、フランジ部に表面処理
を施して硬さを増した場合は、リングの耐摩耗性が向上
して寿命は延びるが、慣らし運転の期間が長期化すると
いう問題がある。
【0007】給油リングの場合はフランジ部に適正な油
膜が形成される量の油を供給するのが難しく、リングの
構造が複雑になるという問題がある。また、横型(O
型)のトラベラでは油が糸に付着し易く製品の品質が低
下するため、油が付着してもよいような糸に適用が限定
されるという問題がある。
【0008】一方、特開平4−73221号公報に記載
のリングでは、20000rpmでの通常運転に必要な
慣らし運転の期間が1/10に短縮される旨が記載され
ている。しかし、固体潤滑被膜の形成に高エネルギーの
イオンビーム発生装置と真空容器が必要となり、製造コ
ストが大幅にアップするという問題がある。
【0009】また、PMリングは慣らし運転期間を大幅
に短縮できるものではない。PMリングについて慣らし
運転が完了したリングのトラベラ摺接部を顕微鏡観察し
たところ、摺接部の樹脂層がなくなっており、下地の浸
炭処理部に綿ロウやセルロースの微粉末が付着してい
た。従って、スピンドルが25000rpm程度の高速
で回転する場合は、フッ素樹脂コート層が潤滑材の役目
を果たすのではなく、摺接部に付着した綿ロウが潤滑物
質として寄与していると考えられる。即ち、慣らし運転
はリングにトラベラ摺接部のなじみ形状を形成する役割
の他にトラベラ摺接部に綿糸に含まれる綿ロウ等の潤滑
作用を有する物質を所定量付着させる役割が有ると考え
られる。
【0010】本発明はこれらの知見に基づいてなされた
ものであって、その目的はスピンドル回転速度が250
00rpm程度の高速で巻取りを行う場合にも、リング
の慣らし運転期間を短縮することができる紡機用リング
の慣らし運転期間短縮方法及び紡機用リングを提供する
ことにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
め請求項1に記載の発明の方法では、リング上を摺動す
るトラベラを介して糸の巻き取りを行う紡機において、
新たなリングの使用を開始する前に、該リングのトラベ
ラ摺接部及びトラベラの少なくとも一方に、液状又はト
ラベラの摺動時の摩擦熱で溶融可能な潤滑性物質を塗布
して巻取り運転を行う。
【0012】請求項2に記載の発明では、少なくとも走
行中のトラベラとの摺接部となる箇所に、トラベラの摺
動時の摩擦熱で溶融可能な潤滑性物質を塗布した。請求
項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明におい
て、前記潤滑性物質はパラフィンロウ又は高級脂肪酸で
ある。
【0013】従って、請求項1に記載の発明の方法で
は、新たなリングが使用される際に、該リングのトラベ
ラ摺接部及びトラベラの少なくとも一方に、液状又はト
ラベラの摺動時の摩擦熱で溶融可能な潤滑性物質が塗布
された状態で巻き取りが行われる。トラベラが移動する
際のリングの摺接部には潤滑性物質の被膜が形成され
て、トラベラとリングとの摩擦抵抗が低減され、トラベ
ラがリング上を滑らかに滑走する。その結果。トラベラ
の焼付きが防止され、糸切れも防止される。最初に塗布
された潤滑性物質がトラベラとの摩擦によって失われる
までに、トラベラを経てボビンに巻き取られる糸に含ま
れる綿ロウが徐々にリング上に供給され、潤滑性物質の
塗布量が少なくても潤滑が維持される。従って、最初の
巻き取り運転から所望の最高速度の運転条件での巻取り
が可能になる。
【0014】請求項2に記載の発明では、少なくとも走
行中のトラベラとの摺接部となる箇所に塗布された潤滑
性物質が、トラベラの摺動時に潤滑被膜となってトラベ
ラとリングとの摩擦抵抗を減少させる。
【0015】請求項3に記載の発明では、請求項2に記
載の発明において、前記潤滑性物質は綿ロウに近い化学
構造のため、糸に付着しても糸品質に悪影響を与えな
い。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した実施の
形態を図1〜図4に従って説明する。図1(a)〜
(c)に示すように、リング1はO型のトラベラ2が横
向きで走行するのに適したフランジ1aを有する形状に
形成されている。フランジ1aの表面には潤滑性物質層
3が形成されている。リング1は炭素鋼材を素材として
所定形状に形成され、浸炭焼入れ処理を施した後、フラ
ンジ1aの表面に潤滑性物質層3が形成される。潤滑性
物質層3は単分子層以上の厚さに形成されている。
【0017】潤滑性物質層3の材質にはパラフィンロウ
又は高級脂肪酸が使用されている。高級脂肪酸としては
例えば、ステアリン酸、パルミチン酸及び両者の混合物
が使用される。これらはいずれも綿ロウ(cotton wax)
に含まれる成分に似た物質である。
【0018】潤滑性物質層3は図2に示すように、潤滑
性物質溶液4にフランジ1aの部分を浸漬した後、乾燥
することにより形成される。潤滑性物質溶液4の溶媒に
は例えば、クロロホルムが使用され、潤滑性物質溶液4
の濃度は0.5〜20g/リットルのものが使用され
る。この濃度の潤滑性物質溶液4を使用することによ
り、フランジ1aへの塗布量が乾燥後で0.1〜5mg
となる。潤滑性物質溶液4の濃度が低すぎると満足でき
る潤滑が得られず、濃度が高すぎると潤滑性物質が均一
に塗布されず、摺動性が悪くなる。
【0019】次に前記のように構成されたリング1の作
用を説明する。図示しないドラフトパートから送出され
た糸Yは、図1(c)に示すように、トラベラ2を経て
高速回転されるボビン(図示せず)に巻き取られる。リ
ング精紡機の通常紡出運転時のスピンドルの最高回転速
度は25000rpm程度であり、トラベラ2は糸Yの
巻取り張力によりフランジ1a上を滑走する。トラベラ
2の滑走姿勢は回転速度により若干異なるが、図1
(c)に示すように、フランジ1aの内側下部に当接し
た状態で滑走する。フランジ1aに潤滑性物質層3が形
成されているため、リング1が新しい状態で最初から最
高回転速度が25000rpmの紡出条件で精紡機を運
転しても、リング1とトラベラ2の摺接部(摺接面)に
適正な潤滑被膜が形成された状態でトラベラ2が滑走す
る。その結果、トラベラ2の滑走が円滑になり、トラベ
ラ2の焼付きが防止されて糸切れも防止される。
【0020】次にフランジ部の表面にSi C複合Ni −
P非晶質合金メッキが施された市販のMXリング(金井
重要工業(株)製の商品名)にステアリン酸の潤滑性物
質層3を形成したものと、慣らし済のMXリングと、新
品のMXリングについて最高回転速度25000rpm
の紡出条件で綿糸の紡出運転を行った場合の結果を図3
に示す。図3は横軸に玉揚げ回数(ドッフ数)を、縦軸
に玉揚げ時までに糸切れせずに残っている錘数(残存個
数)を示すグラフである。試験紡出錘数はいずれも24
錘で、それぞれ玉揚げ回数13回までの結果である。図
3において、四角印は潤滑性物質層3がステアリン酸の
場合、三角印は新品のMXリング(潤滑性物質層3がな
いもの)の場合、×印が慣らし済品の場合を示す。
【0021】各巻取り運転時のスピンドルの回転速度
は、紡出開始から短時間(5〜6分)で約19000r
pmまで上昇させ、その状態から約50分で25000
rpmまで上昇させ、その後は25000rpmで定速
回転となるように変更させた。そして、25000rp
mで三十数分経過した後、15分程度かけて徐々に20
000rpmまで回転数を下げ、所定量巻き取りが行わ
れた時点から停止動作に移行した。
【0022】この試験では、ステアリン酸の潤滑性物質
層3を設けた場合は、6回目の玉揚げまで糸切れは発生
せず、6回目から7回目の玉揚げまでの間に1錘が糸切
れとなり、10回目から11回目の玉揚げの間にさらに
1錘が糸切れとなり、12回目から13回目の玉揚げの
間にさらに1錘が糸切れとなった。潤滑性物質層3とし
てステアリン酸に代えてパラフィンロウを使用した場合
もぼ同様な結果が得られた。
【0023】一方、新品の場合は1回目の玉揚げまでに
2錘が糸切れとなり、その後、6回目から7回目の玉揚
げの間にさらに1錘が糸切れとなり、その後8回目の玉
揚げから13回目の玉揚げの各玉揚げ間に1錘ずつ糸切
れが発生し、13回目の玉揚げまでに合計8錘で糸切れ
が発生した。また、慣らし済のMXリングは1回目の玉
揚げまでに1錘が糸切れとなり、その後、2回目から3
回目の玉揚げの間、6回目から7回目の玉揚げの間、1
0回目から11回目の玉揚げの間及び12回目から13
回目の玉揚げの間にそれぞれさらに1錘が糸切れとな
り、13回目の玉揚げまでに合計5錘が糸切れとなっ
た。
【0024】即ち、即ち、フランジ1aに潤滑性物質層
3を形成した場合は、慣らし運転を行わずに最初から通
常運転時の最高回転速度の紡出運転速度で巻取りを行っ
ても、慣らし運転を行わないことに起因する糸切れが発
生しないか、糸切れ発生率が大幅に低下した。
【0025】また、市販のPMリング(商品名)の樹脂
コート層を研磨除去したリングのフランジにステアリン
酸及びパラフィンロウの潤滑性物質層3をそれぞれ形成
したものと、PMリングの新品と、PMリングの慣らし
途中品について最高回転速度22000rpmの紡出条
件で綿糸の紡出運転を行った場合の結果を図4に示す。
なお、PMリングの慣らし途中品とは、128時間の慣
らし運転を行ったもので慣らし運転が完了していないも
のである。試験紡出錘数はいずれも24錘で、それぞれ
玉揚げ回数12回まで測定を行った。ステアリン酸塗布
品とパラフィンロウ塗布品とで同じ結果が得られた。図
4において、四角印がステアリン酸塗布品、三角印が新
品、×印が慣らし途中品を示す。
【0026】この試験では、ステアリン酸又はパラフィ
ンロウの潤滑性物質層3を設けた場合は、2回目の玉揚
げまで糸切れは発生せず、3回目から4回目の玉揚げま
での間に1錘が糸切れとなり、4回目から5回目の玉揚
げの間にさらに1錘が糸切れとなり、その後は12回目
の玉揚げまで糸切れは発生しなかった。
【0027】一方新品の場合は、1回目の玉揚げまでに
1錘が糸切れとなり、その後、1回目から2回目の玉揚
げの間、3回目から4回目の玉揚げの間、5回目から6
回目の玉揚げの間及び8回目から9回目の玉揚げの間に
それぞれさらに1錘ずつ糸切れとなり、その後は12回
目の玉揚げまで糸切れは発生しなかった。即ち、運転開
始から12回目の玉揚げまでに合計5錘が糸切れとなっ
た。
【0028】また、慣らし途中品の場合は1回目の玉揚
げまでの間に1錘が糸切れとなり、その後、4回目から
5回目の玉揚げの間及び6回目から7回目の玉揚げの間
にそれぞれさらに1錘ずつ糸切れとなり、その後は12
回目の玉揚げまで糸切れは発生しなかった。即ち、12
回目の玉揚げまでに合計3錘が糸切れとなった。
【0029】図4の試験に使用したPMリングはフラン
ジの表面に樹脂コート層が形成されているため、糸切れ
数は少なかった。しかし、樹脂コート層に代えて潤滑性
物質層3を設けたものはそれより糸切れが少なく、潤滑
性物質層3の効果は確認できる。
【0030】潤滑性物質層3は従来技術に開示された固
体潤滑皮膜やPMリングの樹脂コート層と異なり、比較
的低温(70°C程度)で溶融する。その結果、仮に均
一に塗布されなかった状態でも、トラベラ2の摺動時の
摩擦熱で摺接部付近の潤滑性物質層3は溶融して摺接部
にそって均一に拡がり、トラベラ2が安定した状態で滑
走すると考えられる。また、潤滑性物質層3の厚さは薄
く、最初に塗布した量の潤滑性物質層3が長時間潤滑皮
膜を形成するのは難しいと考えられる。しかし、フラン
ジ1aのトラベラ摺接部を観察したところ、玉揚げが3
回終了した時点では、摺接部にセルロースの微粒子や綿
ロウが一面に付着した状態となっていた。即ち、紡出綿
糸の繊維に含まれている綿ロウの一部が、糸がトラベラ
2を通過する際に繊維からはぎ取られるとともにフラン
ジ1aに徐々に付着すると考えられる。従って、潤滑性
物質層3がトラベラ2との長時間の摩擦によって摺接部
から失われても、摺接部に付着した綿ロウが潤滑皮膜を
形成してトラベラ2が円滑にフランジ1a上を滑走する
ようになると考えられる。その結果、潤滑性物質は必ず
しも長期間にわたって摺接部に潤滑皮膜を形成する必要
はなく、摺接部に糸からの綿ロウが所定量付着されるま
での間、潤滑皮膜を形成すればよい。
【0031】この実施の形態では以下の効果を有する。 (1) 新たなリング1を使用する前に、リング1のト
ラベラ摺接部であるフランジ1aに、トラベラ2の摺動
時の摩擦熱で溶融可能な潤滑性物質を塗布して、巻取り
運転が行われる。その結果、最初の巻取り運転から所望
の最高速度の運転条件での巻取りが可能になり、慣らし
運転期間を零とすることも含めて大幅に短縮できて生産
性が向上する。
【0032】(2) フランジ1aに形成される潤滑性
物質層3はトラベラ2の摺動時の摩擦熱で溶融可能な物
質のため、厚さが均一でなくても厚すぎなければトラベ
ラの摺動時に溶融して均一な潤滑皮膜が形成され、トラ
ベラの走行が安定する。
【0033】(3) 潤滑性物質層3は最初の数ドッフ
の間の潤滑性を確保すればよいため、トラベラ2の摺接
部に塗布する潤滑性物質の量が、摩擦抵抗を低減させる
従来の固体潤滑皮膜の場合に比較して極めて少量で済
む。その結果、潤滑性物質の糸への付着がほとんどな
く、糸品質を低下させない。
【0034】(4) 潤滑性物質に綿ロウと類似の物質
であるパラフィンロウあるいはステアリン酸(高級脂肪
酸)が使用されているため、紡出糸に付着しても糸品質
を悪化させない。
【0035】(5) 潤滑性物質としてステアリン酸
(高級脂肪酸)を使用した場合は、極性基であるCOO
H基を有するため、リングを構成する金属表面に化学吸
着し易くなり、極性基のないパラフィンロウに比較して
トラベラ2の摺接部の焼付き防止効果が向上する。
【0036】(6) 潤滑性物質層3の形成を、潤滑性
物質の所定濃度の溶液にフランジ1aを浸漬して乾燥さ
せるという極めて簡単な作業で行うことができ、リング
1の形状に拘らず所望の重量の潤滑性物質層3を容易に
得ることができる。
【0037】(7) フランジ1aに耐摩耗性層が形成
されたリングに適用することにより、慣らし運転期間が
短縮できるとともにリングの寿命も延長できる。なお、
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、
次のように具体化してもよい。
【0038】○ 潤滑性物質層3をフランジ1a全体に
形成する代わりに、滑走中のトラベラ2との摺接部にの
み形成してもよい。この場合は潤滑性物質の塗布量が少
なくなる。
【0039】○ 潤滑性物質層3の形成をフランジ1a
を潤滑性物質溶液中に浸漬させた後乾燥させる代わり
に、図5(a)に示すように、潤滑性物質溶液をスプレ
ー容器5を使用して噴霧塗布してもよい。また、図5
(b)に示すように、潤滑性物質溶液を含浸した棒状の
フェルト6を使用して塗布してもよい。これらの場合は
トラベラ2の摺接部となるフランジ1aの内側箇所にの
み潤滑性物質層3を形成するのが容易となる。
【0040】○ 前記実施の形態では潤滑性物質層3を
形成するのに、潤滑性物質を揮発性の有機溶媒に溶解し
た溶液を使用したが、有機溶媒は一般に人体に有害なた
め、ダクト等の設備を設けて作業者の吸引を防止する必
要があり、設備費が高くなる。この不具合を解消するた
め、有機溶媒を使用せずに潤滑性物質を粉末状態または
加熱により溶融した状態でフランジ1aに付着させ、そ
の後、余分なものを除去して適正量を均一に付着させて
もよい。粉末状態の潤滑性物質をフランジ1aに付着さ
せる方法としては、粉末状の潤滑性物質を直接フランジ
1aに付着させる方法と、粉末状の潤滑性物質を非有機
溶媒(例えば水)に分散させた懸濁液にフランジ1aを
漬ける方法がある。この場合、有機溶媒を使用しないた
め、ダクト等の設備が不要となる。フランジに付着した
余分な潤滑性物質を除去するとともに、均一に塗布され
た状態とするには、リングを潤滑性物質の融点よりやや
高い温度に短時間(数分)加熱する。例えば、加熱炉内
にリングを入れて100℃程度に加熱する。加熱により
潤滑性物質が溶融して拡がり、余分な量の潤滑性物質が
流れ落ち、フランジに均一に付着した状態となる。クロ
ロホルムのように揮発性の高い有機溶媒に潤滑性物質を
溶解させた溶液は、溶液濃度が高くなり易く、塗布量の
管理が面倒であるが、この実施の形態では余分な潤滑性
物質を溶融させて流すことで必要量をフランジに塗布で
きる。
【0041】○ 潤滑性物質を塗布したリングを加熱処
理する方法は、潤滑性物質を有機溶媒に溶解して塗布す
る場合に適用してもよい。この場合、潤滑性物質溶液の
濃度を厳格に管理しなくてもよくなる。
【0042】○ リングに過剰に付着した潤滑性物質を
除去する方法として、加熱処理に代えてフランジ部を布
で擦ってもよい。布で擦ることにより、不均一に付着し
ていた潤滑性物質が均一に拡がるとともに、余分に付着
していた部分が除去されて適正量の潤滑性物質が残る。
【0043】○ 潤滑性物質を塗布する代わりに、紡糸
する糸と同じ糸で織った布をリングのトラベラとの摺接
部に強く擦り付ける処理を行ってもよい。例えば、図6
に示すように、円錐台状の支持部7aに布8を貼り付け
た回転体7を、その回転軸9を介して図示しない駆動装
置で回転させながら、リング1のフランジ1aの所定の
箇所に圧接させる。この処理を行うことにより、フラン
ジ1aにはトラベラとの摺接箇所に、紡糸する糸と同じ
成分、例えば、セルロースの微粒子や綿ロウが一面に付
着した状態となる。この状態は慣らし運転が終了したリ
ングとほぼ同様の状態となるため、リングの慣らし運転
の期間を短縮できる。
【0044】○ リング1の硬化処理を行わずに潤滑性
物質層3を形成してもよい。この場合はリングlの製造
に必要な工数が少なくなる。 ○ 高級脂肪酸としてステアリン酸に代えてパルミチン
酸を使用したり、ステアリン酸とパルミチン酸の混合物
を使用してもよい。
【0045】○ 潤滑性物質は常温で固体のものに限ら
ず、綿実油等の液体を使用してもよい。この場合は、リ
ング1を交換した後、フランジ1aに潤滑性物質を塗布
して紡機の運転を行う。
【0046】○ リング1の形状はO型のトラベラ2に
適したものに限らず、他の形状(例えば、縦型)のトラ
ベラに適した形状としてもよい。 ○ リング1に潤滑性物質を塗布する代わりに、トラベ
ラ2に潤滑性物質を塗布して巻取り運転を行ったり、リ
ング1とトラベラ2の両方に潤滑性物質を塗布してもよ
い。トラベラ2に塗布する潤滑性物質は液状でないもの
が好ましい。これらの場合も慣らし運転の期間を短縮で
きる。
【0047】前記実施の形態から把握できる請求項記載
以外の発明(技術思想)について、以下にその効果とと
もに記載する。 (1) 請求項1に記載の発明において、前記潤滑性物
質はパラフィンロウ又は高級脂肪酸である。この場合、
潤滑性物質が綿ロウと類似の物質であるため、紡出糸に
付着しても糸品質を悪化させない。
【0048】(2) 請求項3に記載の発明において、
前記潤滑性物質はステアリン酸である。この場合、極性
基であるCOOH基を有するため、リングを構成する金
属表面に化学吸着し易くなり、極性基のないパラフィン
ロウに比較してトラベラの摺接部の焼付き防止効果が向
上する。また、市販品を入手し易い。
【0049】(3) 請求項2又は請求項3に記載の発
明において、前記潤滑性物質の塗布は、潤滑性物質をリ
ングに付着させた後、加熱により溶融させて余分な潤滑
性物質を除去することで行われる。この場合、必要量を
簡単にリングのフランジに塗布できる。
【0050】(4) リング上を摺動するトラベラを介
して糸の巻き取りを行う紡機において、新たなリングを
使用する前に、該リングのトラベラ摺接部に、紡出糸と
同じ成分を付着させた後、巻取り運転を行う紡機用リン
グの慣らし運転期間短縮方法。この場合、リングのトラ
ベラ摺接部に付着したセルロースの微粒子や綿ロウが潤
滑性物質の役割を果たし、紡機用リングの慣らし運転期
間を短縮できる。
【0051】(5) 紡機用リングの少なくとも走行中
のトラベラとの摺接部となる箇所に、紡出糸と同じ糸で
織られた布を擦り付けて前記摺接部に紡出糸の成分を付
着させる紡機用リングの処理方法。この場合、新しいリ
ングを短時間で、慣らし運転を長時間行ったものと同様
な状態にすることができ、慣らし運転期間を短縮でき
る。
【0052】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1〜請求項
3に記載の発明によれば、高速で巻取りを行う場合に使
用されるリングの慣らし運転期間を短縮することができ
る。
【0053】請求項2に記載の発明によれば、潤滑性物
質はトラベラの摺動時の摩擦熱で溶融可能な物質のた
め、厚さが均一でなくても厚すぎなければトラベラの摺
動時に溶融して均一な潤滑皮膜が形成されてトラベラの
走行が安定する。
【0054】請求項3に記載の発明によれば、潤滑性物
質が綿ロウと類似の物質であるため、紡出糸に付着して
も糸品質を悪化させない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は一実施の形態のリングの斜視図、
(b)は部分拡大斜視図、(c)は作用を示す模式斜視
図。
【図2】 潤滑性物質の塗布状態を示す概略斜視図。
【図3】 残存個数とドッフ数の関係を示すグラフ。
【図4】 残存個数とドッフ数の関係を示すグラフ。
【図5】 潤滑性物質の別の塗布方法を示す斜視図。
【図6】 リングに紡出糸と同じ成分を付着させる様子
を示す模式図。
【図7】 従来技術のリングの部分拡大断面図。
【符号の説明】
1…リング、1a…フランジ、2…トラベラ、3…潤滑
性物質層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤井 能理 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 前田 浩司 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 伊藤 友仁 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 Fターム(参考) 4L056 AA02 BD48 FA05

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リング上を摺動するトラベラを介して糸
    の巻き取りを行う紡機において、新たなリングを使用す
    る前に、該リングのトラベラ摺接部及びトラベラの少な
    くとも一方に、液状又はトラベラの摺動時の摩擦熱で溶
    融可能な潤滑性物質を塗布して巻取り運転を行う紡機用
    リングの慣らし運転期間短縮方法。
  2. 【請求項2】 少なくとも走行中のトラベラとの摺接部
    となる箇所に、トラベラの摺動時の摩擦熱で溶融可能な
    潤滑性物質を塗布した紡機用リング。
  3. 【請求項3】 前記潤滑性物質はパラフィンロウ又は高
    級脂肪酸である請求項2に記載の紡機用リング。
JP2000037117A 1999-02-17 2000-02-15 紡機用リングの慣らし運転期間短縮方法及び紡機用リング Pending JP2000303273A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015521939A (ja) * 2012-07-13 2015-08-03 ブラウン ゲーエムベーハー 改善された機能ヘッドを備えた脱毛装置

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