JP2000290382A - ノルボルネン系ポリマー連続成形体の製造方法 - Google Patents

ノルボルネン系ポリマー連続成形体の製造方法

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JP2000290382A
JP2000290382A JP2000027922A JP2000027922A JP2000290382A JP 2000290382 A JP2000290382 A JP 2000290382A JP 2000027922 A JP2000027922 A JP 2000027922A JP 2000027922 A JP2000027922 A JP 2000027922A JP 2000290382 A JP2000290382 A JP 2000290382A
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JP2000027922A
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Hajime Naito
一 内藤
Nobuhiro Goto
信弘 後藤
Masafumi Nakatani
政史 中谷
Takeharu Morita
健晴 森田
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Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 衝撃に強く、しかも厚肉の、硬化不良のない
良好な、ノルボルネン系ポリマー連続成形体を、環境に
左右されず、設備投資も比較的少ない設備・装置で得る
ことのできる、ノルボルネン系ポリマー連続成形体の製
造方法。 【解決手段】 ノルボルネン系モノマー(好ましくはジ
シクロペンタジエン)5と、酸素や水分に対して安定な
触媒4としての特定の一般式で表されるルテニウム−カ
ルベン錯体又はルテニウムビニリデン錯体とを、ポンプ
(ギアポンプ等)6,7にて、引抜金型1への注入直前
において混合しながら、得られた重合性組成物を引抜金
型1に一定量(単位時間当たり一定)を送り込み、引抜
金型内で重合性組成物を重合硬化させつつ引き抜いて、
硬化不良のない良好なノルボルネン系ポリマー連続成形
体(長尺体)2を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はノルボルネン系ポリ
マー連続成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ノルボルネン系モノマーを重合成形する
技術は従来より一般に知られている。例えば、金型内の
空気を不活性ガスに置換させてからノルボルネン系モノ
マーを成形材料として金型内に射出し、重合反応させる
反応射出成形方法が挙げられる(特公平7−73859
号公報参照)。
【0003】しかし、ノルボルネン系モノマーを用いて
重合成形をする場合、酸素や水分の存在により重合反応
が阻害され、完全な不活性ガス雰囲気下でないと、良好
な重合が進行しないという重要な問題があった。すなわ
ち、ノルボルネン系モノマーを用いた重合成形は、閉塞
空間内でしか重合を良好に進行させることができず、こ
のため、反応射出成形(Reaction injection Molding:
RIM)のような、閉じられた金型の中に重合性組成物
を射出成形する以外には成形することができず、衝撃強
度が強い成形品もしくは厚肉成形品、または衝撃強度が
強くてかつ厚肉の成形品を得ることができなかった。か
かるノルボルネン系モノマーを反応射出成形する場合、
以下の、A液及びB液の2種の溶液が用いられており、
これらA液とB液とを金型の直前で衝突混合させ、金型
内に重合性溶液として射出して重合反応させることによ
り、ノルボルネン系モノマーの重合成形体を得ていた。 (A液)ノルボルネン系モノマーと活性剤及び活性調節
剤を含む溶液 (B液)ノルボルネン系モノマーと触媒を含む溶液
【0004】このような溶液において、触媒としては、
タングステン、モリブデン、レニウム、タンタルなどの
ハロゲン化物、 オキシハロゲン化物、酸化物、有機アン
モニウム塩などが用いられており、活性剤としては、ア
ルキル、もしくはアルコキシアルミニウムハライドや有
機スズ化合物などが用いられている。また、活性調節剤
としては、n−プロピルアルコールなどのアルコール類
が使用されている。
【0005】ところで、上記重合性溶液は、ノルボルネ
ン系モノマーに、触媒、活性剤、活性調節剤を配合して
から反応射出成形するまでは、製造現場等で保管されて
いるが、その保管用の貯蔵タンクや成形機などを、水分
や空気の混入を防止できる構造にする必要があった。具
体的には、配管も含めたノルボルネン系モノマーが通る
経路を、できるかぎり不活性ガス(例えば窒素)でパー
ジする必要があり、余分な設備投資が必要となる上に、
管理に細心の注意が必要であった。
【0006】更に、ノルボルネン系ポリマー単体で成形
品を得るのではなく、強化繊維等の強化材と複合化して
成形品を成形する場合には、強化繊維を予め金型内にセ
ットしてから強化繊維内部に含まれる空気を除去しなけ
ればならず、このため、金型内における不活性ガスによ
る入念なパージが必要であり、 手間がかかる上に品質が
安定しないという問題があった。なお、強化材等を混入
する場合にも、空気はもとより、水分の存在が重合反応
を阻害するため、充分な乾燥等により水分を蒸散するこ
とが必要である。
【0007】一方、従来より、プラスチックの連続成形
方法の1種として、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエ
ステル樹脂、フェノール樹脂、及びエポキシ樹脂等の熱
硬化性樹脂を、ガラス繊維等の補強基材に含浸させる
か、あるいはプリプレグ状態で、引抜金型内に引き込み
つつ、型内で硬化させることによって、繊維強化樹脂成
形連続体を得る引抜成形方法が知られていた(特開昭6
1−3731号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記引抜成形
方法には、本発明者等の検討によれば、以下の問題点が
あった。例えば、(1)高温加熱硬化であるため、エネ
ルギ消費量が大きく、(2)樹脂がもろいため、少しの
トラブルにより補強繊維がずれた場合、欠肉となりやす
い。不飽和ポリエステル樹脂や、ビニルエステル樹脂の
引抜成形品の場合は、上記問題点に加えて、(1)特
に、樹脂がもろいために、衝撃に弱く、(2)より高温
で硬化させるため、成形時に内部と外部との温度差が生
じ易く、均一な成形が困難であるので、10mm以上の
肉厚の成形品を得ることは、事実上困難である、という
問題があった。
【0009】本発明は、上記従来の、ノルボルネン系モ
ノマーの重合成形技術、及び引抜成形の一般的技術の問
題点に鑑みてなされたもので、衝撃に強く、しかも厚肉
の、硬化不良のない良好な、ノルボルネン系ポリマー連
続成形体を、環境に左右されず、設備投資も比較的少な
い設備・装置で得ることのできる、その製造方法を提供
することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明のノルボルネン系
ポリマー連続成形体の製造方法は、ノルボルネン系モノ
マーと、触媒としての一般式下記一般式[I]で表され
るルテニウム−カルベン錯体又は下記一般式[II]で表
されるルテニウムビニリデン錯体とを含有してなる重合
性組成物を、引抜金型に供給し、その引抜金型内で重合
性組成物を重合硬化させつつ、 重合成形連続体として引
き抜くことによって特徴づけられる。
【化3】 (式中、R1 及びR2 は、互いに独立に、水素、C2 〜
C20−アルケニル基、C1 〜C20−アルキル基、アリー
ル基、C1 〜C20−カルボキシレート、C1 〜C20−ア
ルコキシ基、C2 〜C20−アルケニルオキシ基、アリー
ルオキシ基、C2〜C20−アルコキシカルボニル基、又
はC1 〜C20−アルキルチオ基(これらは、C1 〜C5
−アルキル基、ハロゲン、C1 〜C5 −アルコキシ基に
よって置換されていてもよいし、あるいはC1 〜C5 −
アルキル基、ハロゲン、C1 〜C5−アルコキシ基によ
って置換されたフェニル基によって置換されていてもよ
い)を表し、X1 及びX2 は、互いに独立に、任意のア
ニオン性配位子を表し、L1及びL2 は、互いに独立
に、任意の中性電子供与体を表し、X1 、X2 、L1
びL2 の内、2個または3個は、一緒に多座キレート化
配位子を形成してもよい)
【化4】 (式中、R3 及びR4 は、互いに独立に、水素、C2 〜
C20−アルケニル基、C1 〜C20−アルキル基、アリー
ル基、C1 〜C20−カルボキシレート、C1 〜C20−ア
ルコキシ基、C2 〜C20−アルケニルオキシ基、アリー
ルオキシ基、C2〜C20−アルコキシカルボニル基、C1
〜C20−アルキルチオ基(これらは、C1 〜C5 −ア
ルキル基、ハロゲン、C1 〜C5 −アルコキシ基によっ
て置換されていてもよいし、あるいはC1 〜C5 −アル
キル基、ハロゲン、C1 〜C5 −アルコキシ基によって
置換されたフェニル基によって置換されていてもよ
い)、又はフェロセン誘導体を表し、X3 及びX4 は、
互いに独立に、任意のアニオン性配位子を表し、L3
びL4 は、互いに独立に、任意の中性電子供与体を表
し、X3 、X4 、L3 及びL4 の内、2個または3個
は、一緒に多座キレート化配位子を形成してもよい)
【0011】なお、本発明のポリマー連続成形体の製造
方法に用いるノルボルネン系モノマーは、入手の容易
さ、反応性、ポリマー物性バランス等の観点から、請求
項3記載野如く、ジシクロペンタジエンであることが好
ましい。
【0012】次に、本発明のポリマー連続成形体の製造
方法のより具体的な例を図1に示す。まず、ノルボルネ
ン系モノマー5と、酸素や水分に対して安定な一般式
[I]で表されるルテニウム−カルベン錯体4又は下記
一般式[II]で表されるルテニウムビリニデン錯体(触
媒)とを、ポンプ(ギアポンプ等)6,7にて、引抜金
型1への注入直前において混合しながら、得られた重合
性組成物を引抜金型1に一定量(単位時間当たり一定)
を送り込む。上記重合性組成物の送り込み量は、引き抜
き速度に合わせて決定する。例えば、幅100mm、高
さ20mmの成形体を毎分2mで引き抜くのであれば、
毎分4Lで注入を行えばよい。なお、重合性組成物を引
抜金型に送り込む際に漏れが生じなくてもよいが、より
均一なポリマー連続成形体を得るには、引抜金型前方か
ら少し漏れる程度の状態で成形するのが好ましい。
【0013】そして、以上のようにして引抜金型1内に
送り込んだノルボルネン系モノマー5を含有する重合性
組成物は、空気を含んだ引抜金型1内であっても、引き
抜かれながら重合を開始するので、硬化不良のない良好
なノルボルネン系ポリマー連続成形体(長尺体)2を得
ることができる。
【0014】本発明のポリマー連続成形体の製造方法に
おいて、ノルボルネン系モノマーと触媒とを定量的に混
合しながら、引抜金型内に供給する際に、その両者の供
給を定量ポンプにて行うが、特に触媒の供給には厳密な
定量供給が要求されるので、ギアポンブ等の定量性に優
れたポンプを用いることが好ましい。また、特に混練性
を必要とする場合には、スタティックミキサーやダイナ
ミックミキサー等による混練部を設けてもよい。
【0015】本発明のポリマー連続成形体の製造方法に
おいて、引き取り速度は50cm/分〜5m/分程度が
好ましく、さらには80cm/分〜3m/分程度が好ま
しい。引き取り速度が5m/分を越えると樹脂の硬化が
追いつかず、50cm/分未満では注入部において樹脂
が硬化する可能性が高いからである。
【0016】なお、引抜金型は加熱してもしなくてもよ
いが、少なくとも注入部は加熱しない構造を採る必要が
ある。すなわち、注入部を加熱すると、樹脂の硬化が促
進されてしまい、注入部で樹脂が固まる可能性があるか
らである。
【0017】本発明のポリマー連続成形体の製造方法に
用いるノルボルネン系モノマーとは、ノルボルネン環を
有するモノマーのことであって、ノルボルネン、ノルボ
ルナジエンなどの二環体、ジシクジシクロペンタジエン
やジヒドロジシクロペンタジエンのような三環体、テト
ラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、
フェニルテトラシクロドデセンなどの四環体、トリシク
ロペンタジエンなどの五環体、テトラシクロペンタジエ
ンなどの七環体及びこれらのアルキル置換体(例えば、
メチル、エチル、プロピル、ブチル置換体など)、アル
キリデン置換体(例えばエチリデン置換体)、アリール
置換体(例えば、フェニル、トリル置換体)はもちろん
の事、エポキシ基、メタクリル基、水酸基、アミノ基、
カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン基、エーテル基、
エステル結合含有基等の極性基を有する誘導体などが挙
げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以
上を混合して用いてもよい。なお、これらモノマーのう
ち、価格・反応性・物性・入手の容易さの点を考慮する
と、ジシクロペンタジエンが最も好ましいと言える。
【0018】本発明のポリマー連続成形体の製造方法に
用いる重合性組成物には、消泡剤、酸化防止剤、充填
材、着色剤、高分子改質剤、難燃剤、発泡剤、揺変性付
与剤、帯電防止剤、分子量調節剤、顔料、染料、耐衝撃
性向上剤としてのエラストマーなどの各種添加剤を配合
してもよい。充填材としては、炭酸カルシウム、水酸化
アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウ
ム、クレー、タルク、マイカ、カオリン、フライアッシ
ュ、モンモリロナイト、ガラスバルーン、シリカバルー
ン、熱膨張性塩化ビニリデン粒子等が挙げられる。エラ
ストマーとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイ
ソプレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共
重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共集
合体、EPDM、エチレン−酢酸ビニル共集合体及びこ
れらの水素化物等が挙げられる。
【0019】次に、上記一般式[I]で表されるルテニ
ウム−カルベン錯体について以下に詳述する。上記一般
式[I]で表されるルテニウム−カルベン錯体の内、好
ましい錯体は以下のものである。すなわち、式中、R1
及びR2 が、互いに独立に、水素、C2 〜C5 −アルケ
ニル基、C1 〜C5 −アルキル基、フェニル基、C1 〜
C5 −カルボキシレート、C1 〜C5 −アルコキシ基、
フェノキシ基、又はC2 〜C5 −アルコキシカルボニル
基(これらは、C1 〜C5 −アルキル基、ハロゲン、C
1 〜C5 −アルコキシ基によって置換されていてもよ
く、あるいはC1 〜C5 −アルキル基、ハロゲン、C1
〜C5 −アルコキシ基によって置換されたフェニル基に
よって置換されていてもよい)であり、また、X1 及び
X2 が、互いに独立に、C1 、Br、C1 〜C5 −カル
ボキシレート、C1 〜C5 −アルコキシ基、フェノキシ
基、C1 〜C5 −アルキルチオ基(これらは、C1 〜C
5 −アルキル基、ハロゲン、C1 〜C5 −アルコキシ基
によって置換されていてもよいし、あるいはC1 〜C5
−アルキル基、ハロゲン、 C1 〜C5 −アルコキシ基に
よって置換されたフェニル基によって置換されていても
よい)の群からのアニオン性配位子であり、さらに、L
1 及びL2 が、互いに独立に、アリール基またはC1 〜
C10−アルキルホスフィン基(これらは、C1 〜C5 −
アルキル基、ハロゲン、C1 〜C5 −アルコキシ基によ
って置換されていてもよいし、あるいはC1 〜C5 −ア
ルキル基、ハロゲン、C1 〜C5 −アルコキシ基によっ
て置換されたフェニル基によって置換されていてもよ
い)の群からの中性配位子である、ルテニウム−カルベ
ン錯体が好ましい。
【0020】更に好ましい一般式[I]で表されるルテ
ニウム−カルベン錯体としては、式中、R1 及びR2
が、互いに独立に、水素、メチル基、エチル基、フェニ
ル基、またはメチル基、エチル基もしくはフェニル基に
よって必要に応じて置換されたビニルであり、また、X
1 及びX2 が、互いに独立に、C1 またはBrであり、
さらに、L1 及びL2 が、互いに独立に、トリメチルホ
スフィン基、トリエチルホスフィン基、トリフェニルホ
スフィン基またはトリシクロヘキシルホスフィン基であ
る、ルテニウム−カルベン錯体が挙げられる。
【0021】次に、一般式[II]で表されるルテニウム
ビニリデン錯体について以下に詳述する。上記一般式
[II]で表されるルテニウムビニリデン錯体の内、好ま
しい錯体は以下のものである。すなわち、式中、R3 及
びR4 は、互いに独立に、水素、メチル基、エチル基、
フェニル基、フェロセニル基、又はメチル基、エチル
基、フェニル基もしくはフェロセニル基によって必要に
応じて置換されたビニル基であり、X3 及びX4は、互
いに独立に、Cl、Brであり、L3 及びL4 は、互い
に独立に、トリメチルホスフィン基、トリエチルホスフ
ィン基、トリフェニルホスフィン基又はトリシクロヘキ
シルホスフィン基である、ルテニウムビニリデン錯体が
好ましい。
【0022】上記一般式[I]で表されるルテニウム−
カルベン錯体又は一般式[II]で表されるルテニウムビ
ニリデン錯体については、一定量のノルボルネン系モノ
マーに混合する必要があることから、液状にすることが
好ましい。その一例として溶媒に希釈して用いることが
好ましい。溶媒の例としては、トルエン、ベンゼン、テ
トラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタンなどが挙
げられる。なお、ルテニウム−カルベン錯体を活性水素
が存在する溶媒あるいは酸に溶解させるのは、錯体の安
定性を損なうので好ましくない。また、一般式[II]で
表されるルテニウムビニリデン錯体については、一般式
[I]で表されるルテニウム−カルベン錯体よりは空気
中での安定性が高いが、同様のことが言える。
【0023】ノルボルネン系モノマーに対する一般式
[I]で表されるルテニウム−カルベン錯体又は一般式
[II]で表されるルテニウムビニリデン錯体の混合比率
は、1/5〜1/500000モルの範囲が好ましく、
更に好ましくは、1/30〜1/200000モルの範
囲である。この範囲で必要な硬化時間を基に、触媒の混
合比率を設定すればよい。
【0024】ここで、本発明の連続成形体の製造方法に
おいて、繊維強化ノルボルネン系ポリマー連続成形体を
成形する場合は、引抜金型内を進行させつつある基材
に、重合性組成物を一体的に重合硬化させるという方法
を採用すればよい。
【0025】その具体的な例としては、図2に示すよう
に、基材(繊維補強材)8を引抜金型1の前方から挿入
し、図中の右方へ引き抜きつつ、ポンプ(ギアポンプ)
6,7から、ノルボルネン系モノマー5とビス−トリシ
クロヘキシルホスフィンベンジリジンルテニウム(IV)
ジクロライド(触媒)4とを含有する重合性組成物を、
引抜金型1に供給して、引抜金型1内で重合性組成物を
基材8と一体的に重合硬化させて引き抜くという方法を
挙げることができる。そして、この例においても、ノル
ボルネン系モノマー5を含有する重合性組成物は引抜金
型1内で重合を開始するので、硬化不良のないノルボル
ネン系ポリマー連続成形体2を得ることがきる。しか
も、図2に示す例では、基材8(繊維補強材)下でノル
ボルネン系モノマーを重合させているので、より高強度
・高弾性率の連続成形体を得ることができる。
【0026】成形体の補強に用いる基材としては、ガラ
ス繊維等の無機繊維や、炭素繊維、アラミド繊維をはじ
めとする有機繊維、PET等の熱可塑性樹脂繊維、ジュ
ート繊維、ケナブ繊維等の天然繊維、これらのマット、
クロスまたはロービング、あるいはポリエチレン等の熱
可塑延伸フィルム等の繊維補強材が挙げられる。これら
繊維補強材は、必要強度に応じて使い分けて、単一また
は複合の基材として用いてもよい。
【0027】基材については、その種類に応じて、ノル
ボルネン系ポリマーと良好な接着性を示す表面処理等を
行えばよいものとする。この場合でも、引抜金型は、少
なくとも注入部の温度が上がらないように、冷却等を行
っておくことが好ましい。
【0028】なお、本発明の製造方法によって得られる
ノルボルネン系ポリマー連続成形体(引抜成形品)は、
土木建築用の補強材や道路・鉄道補強部材等の衝撃がか
かる部分への使用に適している。
【0029】その具体的な製品としては、例えば図6
(A),(B)に示すように、H型またはL型の長尺成
形体が挙げられる。これらの成形体は、衝撃性に優れた
ものである。
【0030】<作用>本発明によれば、従来不可能であ
った、空気存在下での成形法である引抜成形によるノル
ボルネン系モノマーの重合成形が可能となり、高い衝撃
強度を有するノルボルネン系ポリマー連続成形体を得る
ことができる。また、樹脂の硬化収縮が小さいため、1
0mm以上の厚肉成形体を得ることができる。
【0031】さらに、繊維補強材と複合化する際にも、
界面での硬化不良がなく、良好な物性を示す繊維強化ノ
ルボルネン系ポリマー連続成形体を得ることができる。
また、従来のノルボルネン系ポリマー成形品に比べて硬
化不良を大幅に低減できることから、残存モノマーが少
なく、臭気の少ない成形品を得ることができる。
【0032】
【実施例】以下、単に「部」とあるのは「重量部」を意
味する。 <実施例1> モノマー:ジシクロペンタジエン ルテニウム−カルベン錯体:ビス(トリシクロヘキシル
ホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド 溶媒:トルエン
【0033】トルエン200部にビス(トリシクロヘキ
シルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド2
0部を溶解させた溶液と、ジシクロペンタジエンとを、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンル
テニウムジクロリドのジシクロペンタジエンに対するモ
ル比が1/7000になるように、ギアポンプにより定
量的に混合しながら、図1に示す引抜金型1(100m
m×20mm断面、長さ1m)内に注入し(送り込み
量:3L/分)、引取機3により1.5m/分の速度に
て引抜成形を行った。ただし、引抜金型は80℃に加熱
した。以上の製造方法(引抜成形)により、厚肉の構造
品で衝撃強度の高い板状のノルボルネン系ポリマー連続
成形体2を得ることができた。
【0034】<実施例2> モノマー:ジシクロペンタジエン ルテニウム−カルベン錯体:ビス(トリシクロヘキシル
ホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド 非極性溶媒:トルエン 基材:コンティニアスマット(旭ファイバー社製 45
0番手)、ガラス繊維ロービング(旭ファイバー社製
4450)
【0035】図2に示すように、引抜金型の1前方か
ら、基材8(コンティニアスマット9及びガラス繊維ロ
ービング10)を引抜金型1に引き込みながら、繊維体
積含有率が50%になるようにした点を除いて、実施例
1と同様の原材料の配合及び成形条件で成形を行った。
得られた成形体の構成は図3の模式断面図に示す通りで
あった。なお、図3において符号11を付した部材はノ
ルボルネン系ポリマーである。
【0036】以上の製造方法(引抜成形)により、厚肉
の構造品で強度、剛性、衝撃強度の高い板状の繊維強化
ノルボルネン系ポリマー連続成形体を得ることができ
た。
【0037】<実施例3> モノマー:ジシクロペンタジエン ルテニウム−カルベン錯体:ビス(トリシクロヘキシル
ホスフィン)ベンジリデンルテニウムクロリド 非極性溶媒:トルエン 基材:PPバンド用テープ(積水樹脂株式会社製) 基材をコンティニアスマット(旭ファイバー社製 45
0番手)及びガラス繊維ロービング(旭ファイバー社製
4450)から、PPバンド用テープ(積水樹脂株式
会社製)に変えた以外は、実施例2と同条件で、基材8
(PPバンド用テープ12)を引き込みながら成形を行
った。得られた成形体の構成は図4の模式断面図に示す
通りであった。なお、図4において符号11を付した部
材はノルボルネン系ポリマーである。
【0038】<実施例4> モノマー:ジシクロペンタジエン ルテニウムビニリデン錯体:下記の化5で表されるもの
を用いた。
【0039】
【化5】 (式中、Cyはシクロヘキシル基を表し、Fcはフェロ
セニル基を表す。) 溶媒:トルエン トルエン200部に、上記ルテニウムビニリデン錯体2
0部を溶解させた溶液と、ジシクロペンタジエンとを、
ルテニウムビニリデン錯体のジシクロペンタジエンに対
するモル比が1/3000になるように、ギアポンプに
より定量的に混合しながら、図1に示す引抜金型1(1
00mm×20mm断面、長さ1m)内に注入し(送り
込み量:3L/分)、引取機3により速度1.5m/分
にてポリマー連続成形体の製造(引抜成形)を行った。
ただし、引抜金型は100℃に加熱した。
【0040】<実施例5> モノマー:ジシクロペンタジエン ルテニウム−ビリニデン錯体:<実施例4>のものを用
いた。 非極性溶媒:トルエン 基材:コンティニアスマット(旭ファイバー社製 45
0番手)、ガラス繊維ロービング(旭ファイバー社製
4450) 実施例4と同条件で繊維体積含有率が50%になるよう
にし、図2に示すように、引抜金型の1前方から、基材
8(コンティニアスマット9及びガラス繊維ロービング
10)を引抜金型1に引き込みながら成形を行った。そ
の成形体の構成は図3の模式断面図に示す通りである。
なお、図3において符号11を付した部材はノルボルネ
ン系ポリマーである。
【0041】<実施例6> モノマー:ジシクロペンタジエン ルテニウム−ビリニデン錯体:<実施例4>のものを用
いた。 非極性溶媒:トルエン 基材:PPバンド用テープ(積水樹脂株式会社製) 実施例4と同条件で繊維体積含有率が50%になるよう
にし、図2に示すように、引抜金型1の前方から、基材
8(PPバンド用テープ12)を引き込みながら成形を
行った。その成形体の構成は図4の模式断面図に示す通
りである。なお、図4において符号11を付した部材は
ノルボルネン系ポリマーである。以上の引抜成形によ
り、厚肉の構造品で強度、剛性、衝撃強度の高い板状の
繊維強化ノルボルネン系ポリマー連続成形体を得ること
ができた。
【0042】<比較例1> モノマー:イソ系不飽和ポリエステル樹脂 硬化剤 :化薬アクゾ製カヤブチルB 補強基材:コンティニアスマット(旭ファイバー社製
450番手)、ガラス繊維ロービング(旭ファイバー社
製 4450)
【0043】図5に示すように、含浸槽15において基
材8にイソ系不飽和ポリエステル樹脂14を含浸させた
ものを、引取機3により、引抜金型1(100mm×2
0mm断面、長さ1m)内に、速度1.5m/分で引き
込んで引抜成形を行った。なお、引抜金型1は加熱ヒー
タ16にて145℃に加熱した。以上の引抜成形では、
引抜金型1の出口で樹脂が未硬化となり、成形体を引き
抜くことはできなかった。
【0044】<比較例2> モノマー:イソ系不飽和ポリエステル樹脂 硬化剤:化薬アクゾ製「カヤブチルB」 補強基材:コンティニアスマット(旭ファイバー社製
450番手)、ガラス繊維ロービング(旭ファイバー社
製 4450)
【0045】図5に示すように、含浸槽15において基
材8にイソ系不飽和ポリエステル樹脂14を含浸させた
ものを、引取機3により、引抜金型1(100mm×2
0mm断面、長さ1m)内に、速度20cm/分で引き
込んで引抜成形を行った。なお、引抜金型1は加熱ヒー
タ16にて145℃に加熱した。以上の引抜成形では、
ボイド率5%の不飽和ポリエステル繊維強化重合成形連
続体13が得られた。
【0046】次に、以上の実施例1〜実施例3と、比較
例2の各例で得られた成形品について、曲げ強度(JI
S K 7055準拠)、曲げ弾性率(JIS K 7
055準拠)及びアイゾット衝撃(JIS K 711
0)の各物性値を測定した。なお、アイゾット衝撃につ
いては、ノッチ付き試験片で行った。
【0047】その結果を、下記の表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】以上の結果から、本発明の引抜成形方法に
より得られる繊維強化ノルボルネン系ポリマー連続成形
体は、強度、弾性率はもとより、特に耐衝撃性に優れる
ことがわかった。また、繊維で強化しなくとも、十分な
衝撃強度が得られることがわかった。さらに、引抜金型
の温調を行わなくても成形が可能であるため、厚肉品で
の高速成形が可能となるということも確認できた。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のノルボル
ネン系ポリマー連続成形体の製造方法によれば、従来品
に比べ特に衝撃強度の高いノルボルネン系ポリマー連続
成形体を、環境に左右されず、得ることができる。ま
た、厚肉品の生産が可能であるので、その結果、生産性
を高めることも可能となる。さらに、繊維複合時におい
て硬化不良に起因する界面密着不良が生じないので、容
易に高強度・高弾性率の引抜成形によるノルボルネン系
ポリマー連続成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のノルボルネン系ポリマー連続成形体の
製造方法の一例の説明図である。
【図2】本発明のノルボルネン系ポリマー連続成形体の
製造方法の他の例の説明図である。
【図3】本発明の実施例2の説明図である。
【図4】本発明の実施例3の説明図である。
【図5】本発明の比較例1、2の説明図である。
【図6】ノルボルネン系ポリマー連続成形体(引抜成形
品)の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 引抜金型 2 ノルボルネン系ポリマー連続成形体 3 引抜機 4 ルテニウム−カルベン錯体(触媒) 5 ノルボルネン系モノマー 6,7 ポンプ 8 基材 9 コンティニアスマット 10 ガラス繊維ロービング 11 ノルボルネン系ポリマー 12 PPバンド用テープ 13 繊維強化不飽和ポリエステル成形連続体 14 イソ系不飽和ポリエステル樹脂 15 含浸槽 16 加熱ヒータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 65:00 (72)発明者 森田 健晴 大阪府三島郡島本町百山2−1 積水化学 工業株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ノルボルネン系モノマーと、触媒として
    の下記一般式[I]で表されるルテニウム−カルベン錯
    体又は下記一般式[II]で表されるルテニウムビニリデ
    ン錯体とを含有してなる重合性組成物を、引抜金型に供
    給し、その引抜金型内で重合性組成物を重合硬化させつ
    つ、 重合成形連続体として引き抜くことを特徴とするノ
    ルボルネン系ポリマー連続成形体の製造方法。 【化1】 (式中、R1 及びR2 は、互いに独立に、水素、C2 〜
    C20−アルケニル基、C1 〜C20−アルキル基、アリー
    ル基、C1 〜C20−カルボキシレート、C1 〜C20−ア
    ルコキシ基、C2 〜C20−アルケニルオキシ基、アリー
    ルオキシ基、C2〜C20−アルコキシカルボニル基、又
    はC1 〜C20−アルキルチオ基(これらは、C1 〜C5
    −アルキル基、ハロゲン、C1 〜C5 −アルコキシ基に
    よって置換されていてもよいし、あるいはC1 〜C5 −
    アルキル基、ハロゲン、C1 〜C5−アルコキシ基によ
    って置換されたフェニル基によって置換されていてもよ
    い)を表し、X1 及びX2 は、互いに独立に、任意のア
    ニオン性配位子を表し、L1及びL2 は、互いに独立
    に、任意の中性電子供与体を表し、X1 、X2 、L1
    びL2 の内、2個または3個は、一緒に多座キレート化
    配位子を形成してもよい) 【化2】 (式中、R3 及びR4 は、互いに独立に、水素、C2 〜
    C20−アルケニル基、C1 〜C20−アルキル基、アリー
    ル基、C1 〜C20−カルボキシレート、C1 〜C20−ア
    ルコキシ基、C2 〜C20−アルケニルオキシ基、アリー
    ルオキシ基、C2〜C20−アルコキシカルボニル基、C1
    〜C20−アルキルチオ基(これらは、C1 〜C5 −ア
    ルキル基、ハロゲン、C1 〜C5 −アルコキシ基によっ
    て置換されていてもよいし、あるいはC1 〜C5 −アル
    キル基、ハロゲン、C1 〜C5 −アルコキシ基によって
    置換されたフェニル基によって置換されていてもよ
    い)、又はフェロセン誘導体を表し、X3 及びX4 は、
    互いに独立に、任意のアニオン性配位子を表し、L3
    びL4 は、互いに独立に、任意の中性電子供与体を表
    し、X3 、X4 、L3 及びL4 の内、2個または3個
    は、一緒に多座キレート化配位子を形成してもよい)
  2. 【請求項2】 引抜金型内を進行させつつある基材に、
    重合性組成物を一体的に重合硬化させることを特徴とす
    る請求項1記載のノルボルネン系ポリマー連続成形体の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 ノルボルネン系モノマーがジシクロペン
    タジエンであることを特徴とする請求項1または2記載
    のノルボルネン系ポリマー連続成形体の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008274138A (ja) * 2007-04-27 2008-11-13 Daicel Polymer Ltd 繊維強化環状オレフィン系樹脂組成物及び成形体
JP2013533137A (ja) * 2010-06-11 2013-08-22 ティコナ・エルエルシー 中実で線状の形材から形成された構造部材

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JP2013533137A (ja) * 2010-06-11 2013-08-22 ティコナ・エルエルシー 中実で線状の形材から形成された構造部材
US9238347B2 (en) 2010-06-11 2016-01-19 Ticona Llc Structural member formed from a solid lineal profile

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