JP2000288787A - 鉄骨構造物の柱貫通柱の溶接用治具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 鉄骨構造物の柱貫通柱に梁を連結するための
ブラケットを溶接する際に用いる治具に関し、ブラケッ
トの位置決め及び仮溶接作業を正確にかつ熟練をあまり
必要としない簡単な作業で行うことができるようにす
る。 【解決手段】 水平軸方向に間隔を隔てて配置された複
数個の受台とこの受台の側方に前記水平軸と平行に配置
された走行レールと、この走行レール上に移動可能に設
置された作業台車と、この作業台車に搭載された方向ガ
イドを備えたブラケット台と、ブラケット台を作業台車
の台枠に対して前記水平軸と直交する水平方向及び上下
方向に移動位置決めする横送り装置及び上下送り装置と
を備えている。受台２として溶接用回転ポジショナーを
用いると作業性が更に向上する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、鉄骨構造物の柱
貫通柱に梁を連結するためのブラケットを溶接する際に
用いる治具に関するもので、柱貫通柱に対するブラケッ
トの位置や方向を規定する治具に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】鉄骨構造物の骨組の主要部は、柱と梁と
で構成される。柱の構造として柱貫通柱と呼ばれるもの
と、梁貫通柱と呼ばれるものとがあり、柱貫通柱は角パ
イプやＨ型鋼でできた一本のコラムの側面に、各フロア
及び屋根の梁を接続するためのブラケットを溶接した構
造である。一方、梁貫通柱は、各フロアの高さに対応す
る長さの複数本のコラムを接続ブロックなどと呼ばれる
箱型の繋ぎ部材を介して長手方向に溶接した構造をして
おり、梁を接続するためのブラケットは、接続ブロック
の側面に溶接されている。

【０００３】柱貫通柱と梁貫通柱とでは柱へのブラケッ
トの取付手順が全く異なっている。梁貫通柱では接続ブ
ロックに所定の位置及び方向でブラケットを溶接してか
ら、接続ブロック相互を所定間隔に位置決めしてその間
にコラムを仮溶接する。

【０００４】一方柱貫通柱では側面にブラケットの溶接
位置を示すけがき線を設けたコラムを受台上に水平に置
き、クレーンでブラケットを垂直に吊り下げてコラムの
溶接位置へ搬送し、クレーンで吊った状態で、ブラケッ
トの小口をけがき線に合せて位置決めするとともに直角
スコヤなどを用いて角度決めをして、コラムとブラケッ
トを仮溶接すると。ブラケットはコラムから二ないし四
方に延びるのが普通であるから、一方向に延びるブラケ
ットを溶接したら、コラムを受台上で回転して上記作業
を繰返すことによって柱貫通柱を組立てる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】柱貫通柱は、接続ブロ
ックを有していないので梁貫通柱に比べて構造が簡単で
あり、組立てに要する工程数は少なくてよいが、ブラケ
ットの仮溶接時に長大なコラムのハンドリングが必要
で、かつコラムへのブラケットの位置決め作業が面倒で
手数と熟練とを要するので、柱の製造に必要な全体の作
業負担がかえって大きくなり、コストが高くなる。

【０００６】そこでこの発明は、柱貫通柱のブラケット
の位置決め及び仮溶接作業を正確にかつ熟練をあまり必
要としない簡単な作業で行うことができるようにし、更
に同じ作業スペースでブラケットの本溶接も可能にする
技術手段を提供することにより、精度の高い柱貫通柱を
安価に提供することを可能にし、より強固で精度の高い
鉄骨構造物を構築可能にすることを課題としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】請求項１の発明に係る柱
貫通柱の溶接用治具は、水平軸方向に間隔を隔てて配置
された複数個の受台２（２ａ，２ｂ）とこの受台の側方
に前記水平軸と平行に配置された走行レール３と、この
走行レール上に移動可能に設置された１台ないし複数台
の作業台車４と、この作業台車に搭載された方向ガイド
５９を備えたブラケット台５７と、ブラケット台５７を
作業台車の台枠４１に対して前記水平軸と直交する水平
方向及び上下方向に移動位置決めする横送り装置５６及
び上下送り装置５３とを備えている。

【０００８】請求項２の発明は、上記手段を備えた溶接
用治具において、受台２がコラムのクランプ手段３１、
３２、３３と、前記水平軸回りの回転及び角度決め手段
を備えた回転ポジショナーであることを特徴とするもの
である。

【０００９】また請求項３の発明は、上記手段を備えた
溶接用治具において、ブラケット台５７ないしその方向
ガイド５９が垂直軸回りに旋回自在でかつその旋回位置
の固定手段６１を備えていることを特徴とするものであ
る。

【００１０】請求項４の発明は、上記手段を備えた溶接
用治具において、更に、受台２を挟む走行レール３の反
対の側に、前記水平軸に平行に走行可能な溶接ロボット
６を備えているものである。

【００１１】請求項５の発明は、上記溶接用治具のため
のブラケット位置決め用作業台車であって、台枠４１に
軸着された車輪４２と、上下送り装置５３および横送り
装置５６で上下および車輪４２の走行方向と直交する方
向に水平移動可能に設けられたブラケット台５７と、ブ
ラケット台に搭載されたブラケットの長手方向を車輪４
２の走行方向と直交する方向に角度決めする方向ガイド
５９とを備えているものである。

【００１２】上記手段を備えた溶接用治具を用いて柱貫
通柱を組立てるときは、柱貫通柱のコラムを受台２上に
固定し、作業台車のブラケット台５７に溶接しようとす
るブラケットを方向ガイド５９で方向を決めて水平に搭
載し、上下送り装置５３でブラケットの高さを調整し、
かつ横送り装置５６でブラケットの小口端をコラムの側
面に当接させて、仮溶接を行う。柱貫通柱の長手方向の
ブラケットの溶接位置は、走行レール３に沿う作業台車
の移動位置によって設定する。

【００１３】走行レール３上の作業台車４の位置及びブ
ラケット台５７の高さは、コラム側面のけがき線に合せ
て手動、電動、油圧駆動など適宜な駆動源によって行う
ことができるほか、リニアスケールなどの位置検出器と
サーボ駆動装置などを用いることにより、数値制御によ
って設定摺ることもできる。

【００１４】様々な長さの柱貫通柱を製造するときは、
受台２の間隔を変更できるように、その少なくとも１個
を前記水平軸に沿って移動可能に設けるのが便利であ
る。受台２を単なる台としたときは、受台上にコラムの
位置を決める位置決めガイドを設け、転動装置の付いた
吊りベルトで吊ってコラムを回転させる。受台として回
転ボジショナーを使えば、コラムの回転および角度決め
を迅速かつ正確に行うことができるとともに、コラムを
挟んで作業台車４と反対の側に、溶接ロボット６を配置
することにより、コラムにブラケットを仮溶接したあと
の本溶接をコラムを回転ポジショナーから取り外したり
搬送したりすることなく、一連の作業として行うことが
可能になる。

【００１５】ブラケット台５７を旋回可能に設けたとき
は、例えば傾斜した屋根の梁を繋ぐブラケットをコラム
に溶接するときに、そのブラケットの角度を容易正確に
出せる。またコラムに曲がりがあるような場合に、ブラ
ケットの小口面をコラムの側面に正確に面接触させた状
態で仮溶接する際などにおける作業性が改善させる。

【００１６】仮溶接によって組立てられた柱貫通柱や梁
貫通柱を本溶接する設備として、コラムを水平に支持す
る回転ポジショナーとそれに沿って走行する溶接ロボッ
トとを備えた溶接装置が多く存在している。そのような
既存の溶接装置に回転ポジショナーを挟んで溶接ロボッ
トと反対の側に走行レールを配置し、請求項５記載の作
業台車を搭載すれば、この発明の溶接用治具を得ること
ができる。

【００１７】

【発明の実施の形態】図１ないし図６はこの発明の一実
施例を示した図である。この実施例に示す溶接用治具
は、相互の間隔を調整できるように１個を固定、他方を
レール１に沿って移動自在に設けた２個の回転ポジショ
ナー２ａ、２ｂと、この回転ポジショナー２ａ、２ｂの
配置方向と平行に配置された走行レール３に沿って移動
可能な３台の作業台車４とを備えた構造である。なおこ
の実施例の装置に溶接ロボットを設けるときは、図１に
想像線で示すように、回転ポジショナー２ａ、２ｂを挟
んで走行レール３と反対の側にこれと平行な走行レール
５に沿って移動する溶接ロボット６を配置する。

【００１８】作業台車４を案内する走行レール３の２本
のレールのうちの１本は、回転ポジショナー２を案内す
る２本のレールの１本と共通になっている。３台の作業
台車４は２個の回転ポジショナー２ａ、２ｂの間に２台
が配置され、他の１台は移動側回転ポジショナー２ｂの
外側に配置されている。

【００１９】図３および図４は、移動側回転ポジショナ
ーの詳細図である。回転ポジショナーの台車２１には、
レール１に沿って走行する走行車輪２２とその駆動用の
減速機付電動機２３とが搭載されている。台車２１には
外周に歯車を設けたリングギア２４がその側方ないし下
方の円周部分で回転自在に支持されており、外周の歯車
と噛み合ってリングギア２４を回転および角度決めする
減速機付電動機２５が設けられている。

【００２０】リングギア２４の中心には、軸方向の開口
２６が設けられており、リングギア２４がホームポジシ
ョンの角度で停止したとき、そのリングの上端側の円弧
部分２７がそれから一体に延びる支持腕２８の先端の支
点ピン２９を中心として上方へ開放可能となっており、
これを開いた状態で開口２６にコラム７が挿入される。

【００２１】開口２６内にはその開口の中心に向かって
進退する下台３１、上爪３２および両側爪３３が設けら
れており、両側爪３３は下台に装着され、開口２６の中
心に向けて同期して近接離隔する求心移動機構を備えて
いる。下台３１、上爪３２及び両側爪３３は、それぞれ
高さ調整ハンドル３４、クランプハンドル３５および上
クランプハンドル３６に連携されており、これらのハン
ドルを操作することにより、開口２６内に挿入されたコ
ラムの断面中心をリングギア２４の回転中心に一致させ
る。

【００２２】なお図３に符号３７で示す部材は、リング
ギアの開放可能な円弧部分２７を上方へ開くためのパワ
ーシリンダであり、３８は当該円弧部分２７の閉鎖状態
を保持するロックハンドルである。なお固定側回転ポジ
ショナー２ａは、走行車輪やその駆動装置などは設けら
れていないが、リングギアやその駆動装置等の構造は、
移動側固定ポジショナーと同一の構造である。

【００２３】図５および６は作業台車４の詳細図であ
る。作業台車の台枠４１には走行レール３上を転動する
フランジ付き車輪４２が自由回転可能に軸着されてい
る。走行レールの１本には横向きにラック（図示されて
いない）が設けられており、台枠側にこのラックに噛合
するピニオン４３を下端に設けた走行ハンドル軸４４が
垂直に軸支され、この走行ハンドル軸の上端に設けた走
行ハンドル４５を手動で回転することによって作業台車
４が走行レール３に沿って移動する。

【００２４】台枠４１には縦方向のリニアモーションガ
イド４６に案内されて上下移動自在に昇降フレーム４７
が搭載され、この昇降フレームに設けた横方向のリニア
モーションガイド４８に案内されて水平方向に移動自在
に横移動フレーム４９が搭載されている。台枠４１と昇
降フレーム４７との間には、電動機５１の回転をウォー
ムに伝え、このウォームに噛合するホイールで上下方向
のねじ杆５２を螺進退させる構造の、上下送り装置５３
が介装されている。また昇降フレーム４７と横移動フレ
ーム４９との間には、一端に操作ハンドル５４を設けた
送りねじ５５を備えた横送り装置５６が介装されてい
る。

【００２５】横移動フレーム４９には垂直軸まわりに旋
回可能にブラケット台５７が搭載されており、このブラ
ケット台にはＨ型鋼からなるブラケット８をウエブ部分
で支える支持脚５８とブラケットの一方のフランジ面を
押し付けることによってその方向を規定す方向ガイド５
９とが固定されている。横移動フレーム４９には、方向
ガイド５９によるブラケット８のガイド方向を車輪４２
の走行方向と直交する方向に固定するロックピン６１が
設けられている。ブラケット台５７は通常はこのロック
ピン６１で垂直軸回りの旋回が固定されている。

【００２６】上記実施例の装置を用いて柱貫通柱を組立
てる作業の概要を以下に説明する。まず、移動側回転ポ
ジショナー２ｂをレール１に沿って移動して、組立てよ
うとする柱貫通柱のコラムの支持間隔を設定する。次に
固定側および移動側の回転ポジショナー２ａ、２ｂのリ
ングギアをホームポジションにし、その上端の円弧部分
２７を開き、下台３１をコラムの断面形状に合せた位置
に設定し、両側爪３３を開いて、クレーンで吊り下げた
コラムをリングギアの開口２６内に挿入する。次に両側
爪３３でコラム７を左右にクランプし、前記円弧部分２
７を閉じて上爪３２を進出させてコラム７を上下にクラ
ンプする。

【００２７】作業台車４のブラケット台５７には、それ
ぞれブラケット８を方向ガイド５９に当接させてその方
向を決めた状態で、載置する。そして走行ハンドル４５
を回転し、さらに昇降用の電動機５１を動作させて、各
取付台車に搭載したブラケットの小口をコラムの側面に
設けたけがき線に合せる。そして横移動フレーム４９を
コラムに向けて移動して、ブラケットの小口面をコラム
の側面に当接させる。

【００２８】このようにしてブラケットがコラムに位置
決めされたら、ブラケットをコラムに仮溶接する。必要
な本数のブラケットをコラムの一側面に仮溶接したあ
と、固定側と移動側の回転ポジショナーのリングギア２
４を９０度同期回転して、上記と同様な手順によりコラ
ムの他の側面に対するブラケットの仮溶接を行う。ブラ
ケットをコラムの三方ないし四方に取付けるときは、回
転ポジショナーの回転とブラケットの仮溶接作業を繰り
返す。そしてコラムにすべてのブラケットを仮溶接した
あと、溶接ロボット６を用いてすべての仮溶接箇所を本
溶接する。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例装置の全体を示す平面図

【図２】図１の側面図

【図３】回転ポジショナーの正面図

【図４】回転ポジショナーの側面図

【図５】作業台車の正面図

【図６】作業台車の側面図

【符号の説明】

2a,2b 固定ポジショナー ３ 走行レール ４ 作業台車 ６ 溶接ロボット 31 受台 32 上爪 33 両側爪 41 台枠 42 車輪 53 上下送り装置 56 横送り装置 57 ブラケット台 59 方向ガイド 61 ロックピン

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 水平軸方向に間隔を隔てて配置された複
   数個の受台(2)とこの受台の側方に前記水平軸と平行に
   配置された走行レール(3)と、この走行レール上に移動
   可能に設置された１台ないし複数台の作業台車(4)と、
   この作業台車に搭載された方向ガイド(59)を備えたブラ
   ケット台(57)と、ブラケット台(57)を作業台車の台枠(4
   1)に対して前記水平軸と直交する水平方向及び上下方向
   に移動位置決めする横送り装置(56)及び上下送り装置(5
   3)とを備えている、鉄骨構造物の柱貫通柱の溶接用治
   具。
2. 【請求項２】 受台(2)がコラムのクランプ手段(31,32,
   33)と、前記水平軸回りの回転及び角度決め手段を備え
   た回転ポジショナーである、請求項１記載の溶接用治
   具。
3. 【請求項３】 ブラケット台(57)ないしその方向ガイド
   (59)が垂直軸回りに旋回自在でかつその旋回位置の固定
   手段(61)を備えている、請求項１または２記載の溶接用
   治具。
4. 【請求項４】 受台(2)を挟む走行レール(3)の反対の側
   に、前記水平軸に平行に走行可能な溶接ロボット(6)を
   備えている、請求項２または３記載の溶接用治具。
5. 【請求項５】 台枠(41)に軸着された車輪(42)と、上下
   送り装置(53)および横送り装置(56)で上下および車輪(4
   2)の走行方向と直交する方向に水平移動可能に設けられ
   たブラケット台(57)と、ブラケット台に搭載されたブラ
   ケットの長手方向を車輪(42)の走行方向と直交する方向
   に角度決めする方向ガイド(59)とを備えている、溶接構
   造物の柱貫通柱のブラケット位置決め用作業台車。