JP2000282166A - 耐摩耗性および熱伝導性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環 - Google Patents

耐摩耗性および熱伝導性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環

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JP2000282166A
JP2000282166A JP11088553A JP8855399A JP2000282166A JP 2000282166 A JP2000282166 A JP 2000282166A JP 11088553 A JP11088553 A JP 11088553A JP 8855399 A JP8855399 A JP 8855399A JP 2000282166 A JP2000282166 A JP 2000282166A
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Kunio Hanada
久仁夫 花田
Ryoji Nakayama
亮治 中山
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Mitsubishi Materials Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性および熱伝導性にすぐれ、かつ相手
攻撃性の小さい遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリ
ング耐摩環を提供する。 【解決手段】 ピストンリング耐摩環を、重量%で、遊
離黒鉛形成成分および素地強化成分としてC:0.5〜
5%、いずれも素地形成成分として、Cr:0.5〜5
%、Mn:0.2〜1%、S:0.05〜1%、B:
0.05〜1%、Ni:1〜12%、Ti:0.5〜5
%、Cu:8.5〜20%、を含有し、さらに必要に応
じてMo:0.1〜2%を含有し、さらに、Hv :60
0〜1800の硬さを有する高合金硬質粒子:1〜35
%、を含有し、残りが素地形成成分としてのFeと不可
避不純物からなる組成、並びに素地の主体が実質的にオ
ーステナイトからなり、遊離黒鉛は、前記素地には実質
的に存在せず、気孔内に析出して成長した状態で存在
し、かつ前記素地には上記の高合金硬質粒子が分散分布
した組織を有する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料で構成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、すぐれた熱伝導
性を有し、ピストンにおけるトップリング溝が上方位置
移動した条件での実用に際しても、すぐれた耐摩耗性を
発揮し、さらに相手攻撃性(ピストンリング攻撃性)も
小さい遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩
環に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば特公昭57−32743号
公報に記載されるように、例えばトラック・バス用ディ
ーゼルエンジンのピストンが、図1(a)の概略縦断面
図および同(b)の要部縦断面図で示される構造を有
し、かつ図示される通りトップランド部直下のトップリ
ング溝にはピストンリング耐摩環がピストン鋳物本体の
鋳造時に鋳ぐるまれて設けられた構造をもつことは良く
知られるところである。また、ピストン鋳物本体が、主
としてSi:8〜13重量%を含有したAl−Si系合
金で構成され、さらに上記ピストンリング耐摩環には、
良好な耐摩耗性と相手攻撃性の低いFe−Ni−Cu系
焼結材料(組成:Fe−8〜25%Ni−3.5〜10
%Cu−2.0%以下C)や、Ni−Cu−Cr系オー
ステナイト鋳鉄であるニレジスト鋳鉄(組成:Fe−
1.5〜3.5%Cr−0.8〜1.5%Mn−3%以
下C−13〜22%Ni−8%以下Cu−1.0〜2.
8%Si、以上重量%、以下%は重量%を示す)などが
広く用いられていることも良く知られるところである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、自動車に対する
排気ガス規制は年々厳しさを増す傾向にあり、この対応
手段の1つとして、トラック・バス用ディーゼルエンジ
ンでは、ピストンのトップランド部直下のトップリング
溝の位置を上方へ移動させてトップランド部外周面、ト
ップリング上面、およびシリンダー内周面で形成される
空隙の容量を小さくし、もって未燃焼のまま大気に排出
されてしまう前記空隙部分のガス量を少なくする試みも
なされているが、このようにトップリング溝の位置を上
方へ移動すると、トップリング溝の温度が急激に高くな
り、この結果ピストンリング耐摩環が上記のFe−Ni
−Cu系焼結材料やニレジスト鋳鉄で構成されていて
も、これの摩耗進行の急速な進行は避けられず、この摩
耗現象は近年のエンジンの高出力化および大型化に伴っ
て一段と加速され、この摩耗部分からガス漏れが発生す
るようになるのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、ピストンにおけるトップリング
溝の上方位置移動を可能にするピストンリング耐摩環を
開発すべく研究を行った結果、原料粉末として、基本的
にFeに、合金成分としてS(硫黄)成分、NiとS成
分、あるいはCrとMnとS成分、さらに必要に応じて
これらの成分に加えてMo成分をそれぞれ所定量含有さ
せてなるアトマイズFe合金粉末と、六方晶窒化ほう素
(以下、h−BNで示す)粉末および/またはほう酸粉
末を用い、さらに水素化チタン(以下、TiHx で示
す)粉末、Ni粉末、Mo粉末、Mn粉末、Cu粉末、
S(硫黄)粉末、および黒鉛粉末を用い、さらに加えて
例えばFe−Mo系合金粉末、Fe−Cr−W−Co系
合金粉末、およびCo−Mo−Cr系合金粉末などの6
00〜1800のビッカース硬さ(Hv )を有する高合
金硬質粉末を用い、これら原料粉末を所定の配合組成に
配合し、通常の条件で混合し、圧粉体にプレス成形した
状態で、前記圧粉体を、還元性雰囲気中、相対的に高い
焼結温度となる1100〜1250℃の範囲内の所定温
度に加熱し、所定時間保持後、相対的に遅い冷却速度、
望ましくは40℃/分以下の冷却速度で、少なくとも6
00℃まで冷却の条件で焼結して、遊離黒鉛形成成分お
よび素地強化成分として、C:0.5〜5%、いずれも
素地形成成分として、 Cr:0.5〜5%、%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 Ni:1〜12%、 Ti:0.5〜5%、 Cu:8.5〜20%、 を含有し、さらに必要に応じて、Mo:0.1〜2%、
を含有し、さらに、Hv :600〜1800の硬さを有
する高合金硬質粒子:1〜35%、を含有し、残りが素
地形成成分としてのFeと不可避不純物からなる組成を
有し、かつ望ましくは6.0〜7.2g/cm3 の密
度、すなわち80〜95%の理論密度比、さらに言い換
えれば光学顕微鏡による断面組織観察で、組織全体に占
める割合で5〜20面積%の気孔をもった鉄系焼結材料
でピストンリング耐摩環を形成すると、このピストンリ
ング耐摩環においては、前記焼結温度で、素地を形成す
る上記Fe合金粉末にC成分(黒鉛粉末)が固溶し、こ
の固溶したC成分が上記h−BN粉末およびほう酸粉末
のB成分と前記Fe合金粉末中に固溶のS成分の共働作
用で、冷却過程で気孔内に遊離黒鉛として析出して、成
長し、この結果析出遊離黒鉛は実質的に気孔内にのみ存
在するようになって、すぐれた耐焼付性と高温潤滑性を
示すようになり、一方素地は、析出遊離黒鉛が実質的に
存在しないので、著しく強化されるようになるばかりで
なく、Ni、Cr,Mn、およびTi成分、さらに必要
に応じてMo成分が固溶して、主体が耐熱性のすぐれた
オーステナイトとなって、低い相手攻撃性で、かつすぐ
れた耐熱塑性変形性を発揮し、さらにCu成分の含有に
よってすぐれた熱伝導性をもつようになり、この結果ピ
ストンにおけるトップリング溝を上方位置移動しても、
前記素地に分散分布する上記のHv :600〜1800
の硬さを有する高合金硬質粒子による耐摩耗性向上効果
と相まって、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮する
ようになるという研究結果を得たのである。
【0005】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、遊離黒鉛形成成分および素地強化
成分として、C:0.5〜5%、いずれも素地形成成分
として、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 Ni:1〜12%、 Ti:0.5〜5%、 Cu:8.5〜20%、 を含有し、さらに必要に応じて、Mo:0.1〜2%、
を含有し、さらに、Hv :600〜1800の硬さを有
する高合金硬質粒子:1〜35%、を含有し、残りが素
地形成成分としてのFeと不可避不純物からなる組成、
並びに素地の主体が実質的にオーステナイトからなり、
遊離黒鉛は、前記素地には実質的に存在せず、気孔内に
析出して成長した状態で存在し、かつ前記素地には上記
の高合金硬質粒子が分散分布した組織を有する遊離黒鉛
析出鉄系焼結材料で構成してなる、熱伝導性にすぐれ、
ピストンにおけるトップリング溝の上方位置移動によっ
てもすぐれた耐摩耗性を発揮し、さらに相手攻撃性も小
さい遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環
に特徴を有するものである。
【0006】つぎに、この発明のピストンリング耐摩環
において、これを構成する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料の
成分組成を上記の通りに限定した理由を説明する。 (a)C C成分には、素地に固溶して強度を向上させるほか、上
記の通りBおよびS成分の共存作用で気孔内に遊離黒鉛
として析出して耐焼付性および潤滑性を向上させ、もっ
て耐摩耗性の向上に寄与すると共に、相手攻撃性を緩和
する作用をもつが、その含有量が0.5%未満では前記
作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が5
%を越えると、強度に急激な低下傾向が現れるようにな
ることから、その含有量を0.5〜5%、望ましくは1
〜3%と定めた。
【0007】(b)Cr Cr成分は、主体がオーステナイトの素地に固溶して、
これの耐熱性および耐熱塑性変形性を向上させ、もって
ピストンリング耐摩環の耐摩耗性向上に寄与する作用を
もつが、その含有量が0.5%未満では前記作用に所望
の向上効果が得られず、一方その含有量が5%を越える
と、B成分およびS成分による黒鉛の析出および成長作
用が抑制されるようになることから、その含有量を0.
5〜5%、望ましくは1〜3%と定めた。
【0008】(c)Mn Mn成分は、素地に固溶して強度を向上させる作用をも
つが、その含有量が0.2%未満では所望の強度向上効
果が得られず、一方その含有量が1%を越えると、B成
分およびS成分による黒鉛化が著しく阻害されるように
なることから、その含有量を0.2〜1%、望ましくは
0.4〜0.8%と定めた。
【0009】(d)SおよびB これらの成分は、共働作用により固溶したC成分を冷却
過程で微細な遊離黒鉛として気孔内に積極的に析出さ
せ、成長させる作用をもち、このような黒鉛化作用は、
S成分については、原則として予めFe、Fe−Ni合
金やFe−Ni−Mo合金、さらにFe−Cr−Mn合
金やFe−Cr−Mn−Mo合金にそれぞれ所定量のS
成分を含有させた溶湯をアトマイズして形成したFe合
金粉末、また、B成分については、ほう素源としてh−
BN粉末およびほう酸粉末をそれぞれ原料粉末として用
いることにより一段と促進されるものであるが、その含
有量が、SおよびB成分のいずれかでも0.05%未満
になると、所望の黒鉛化を図ることができず、この結果
耐焼付性および潤滑性の向上、すなわち耐摩耗性の向上
が不十分となるばかりでなく、硬質のセメンタイト(F
3 C)が析出するようになって、相手攻撃性(ピスト
ンリング攻撃性)が増大するようになり、一方その含有
量が、SおよびB成分のいずれかでも1%を越えると、
焼結性が低下し、所望の強度を確保することができなく
なるばかりでなく、素地にフェライトが出現するように
なり、この結果オーステナイトが減少するようになって
所望の耐熱塑性変形性を確保することができなくなるこ
とから、その含有量を、それぞれS:0.05〜1%、
望ましくは0.1〜0.5%、B:0.05〜1%、望
ましくは0.1〜0.5%と定めた。
【0010】(e)NiおよびTi これらの成分は、共に素地に固溶してオーステナイトの
形成を促進し、かつ上記の通りCr成分との共存固溶に
よって素地の耐熱性および耐熱塑性変形性を向上させ、
もって耐摩耗性の向上に寄与する作用をもつが、その含
有量が、それぞれNi:1%未満、Ti:0.5%未満
では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方その含
有量が、Niにあっては前記オーステナイトが主体の素
地の形成には12%で十分であり、またTiにあっては
5%を越えると強度が低下するようになることから、そ
の含有量を、それぞれNi:1〜12%、望ましくは3
〜8%、Ti:0.5〜3%、望ましくは1〜3%と定
めた。なお、Ti成分に関しては、原料粉末としてTi
x 粉末を用い、焼結の活性化を図ると共に、焼結に際
して分解水素による強力な還元作用を発揮させるように
するのが望ましい。
【0011】(f)Cu Cu成分は、液相焼結による強度向上のほか、熱伝導性
を一段と向上させ、かつ相手攻撃性を緩和する作用をも
つが、その含有量が8.5%未満では前記作用に所望の
効果が得られず、一方その含有量が20%を越えると、
硬さが急激に低下し、耐摩耗性が低下するようになるこ
とから、その含有量を8.5〜20%、望ましくは12
〜18%と定めた。
【0012】(g)高合金硬質粒子 高合金硬質粒子自体の硬さがHv :600未満でも、高
合金硬質粒子の硬さがHv :600以上であっても、そ
の含有割合が1%未満では所望の耐摩耗性を確保するこ
とができず、一方その硬さがHv :1800を越えた
り、その含有割合が35%を越えたりすると、相手部材
であるピストンリングに対する攻撃性が増大し、ピスト
ンリングの摩耗が著しく促進されるようになることか
ら、その硬さをHv :600〜1800、望ましくはH
v :700〜1600、その含有割合を1〜35%、望
ましくは5〜30%と定めた。
【0013】(h)Mo Mo成分は、素地に固溶して、これの強度を一段と向上
させる作用をもつので、必要に応じて含有されるが、そ
の含有量が0.1%未満では所望の強度向上効果が得ら
れず、一方その含有量が2%を越えると、原料粉末(混
合粉末)のプレス成形性(圧縮性)が低下し、この結果
焼結材料の密度が6.0g/cm3 未満となってしま
い、望ましい密度である6.0〜7.2g/cm3 の密
度が得られず、所望の強度を確保することができなくな
ることから、その含有量を0.1〜2%、望ましくは
0.5〜1.5%と定めた。
【0014】
【発明の実施の形態】この発明のピストンリング耐摩環
を実施例により具体的に説明する。原料粉末として、い
ずれも10〜150μmの範囲内の所定の平均粒径を有
するアトマイズFe−S合金粉末(S:0.34%含
有)、アトマイズFe−Ni−Mo−S合金粉末(N
i:4.1%、Mo:1.5%、S:0.12%含
有)、アトマイズFe−Cr−Mn−S合金粉末(C
r:2.3%、Mn:0.72%、S:0.21%含
有)、TiHx 粉末、Ni粉末、Mo粉末、Mn粉末、
Cu粉末、S(硫黄)粉末、黒鉛粉末、h−BN粉末、
およびほう酸粉末、さらに高合金硬質粒子として、Fe
−60%Mo−2%Siの組成およびHv :1200の
硬さを有するFe−Mo系合金粉末(以下、硬質粒子A
粉末と云う)、Fe−35%Cr−25%Co−25%
W−1%Nb−1.5%C%の組成およびHv :150
0の硬さを有するFe−Cr−W−Co系合金粉末(以
下、硬質粒子B粉末と云う)、およびCo−28.5%
Mo−8.5%Crの組成およびHv:800の硬さを
有するCo−Mo−Cr系合金粉末(以下、硬質粒子C
粉末と云う)を用意し、これら原料粉末を表1、2に示
される配合組成に配合し、潤滑材としてステアリン酸亜
鉛を0.7%添加してV型ミキサーで30分間混合し、
6ton/cm2 の圧力で圧粉体にプレス成形し、この
圧粉体をアンモニア分解ガス雰囲気中、温度:1140
℃に1時間保持した後、35℃/分の冷却速度で550
℃まで徐冷後放冷の条件で焼結することにより表1、2
に示される配合組成と実質的に同じ成分組成を有し、か
つ外径:120mm×内径:102mm×厚さ:7mm
の寸法をもった本発明ピストンリング耐摩環(以下、本
発明耐摩環と云う)1〜29をそれぞれ製造した。上記
本発明耐摩環1〜29は、いずれも6.2〜7.1g/
cm3 の範囲内の密度を有し、その任意断面を光学顕微
鏡を用いて、組織観察(倍率:100倍)したところ、
素地がオーステナイト、あるいは主体がオーステナイト
で僅かなパーライトが存在する素地からなり、かつ気孔
内に遊離黒鉛が析出成長し、前記素地には実質的に遊離
黒鉛の析出がなく、また前記素地には高合金硬質粒子が
分散分布する組織を示し、さらに前記光学顕微鏡組織写
真により、組織全体に占める気孔(遊離黒鉛)の割合を
計測したところ、表3に示される結果を示した。また、
比較の目的で、通常の高周波溶解炉にて、同じく表2に
示される成分組成をもったニレジスト鋳鉄の溶湯を調製
し、これをシェルモールド鋳型に鋳造して、同じ寸法を
もった従来ピストンリング耐摩環(以下、従来耐摩環と
云う)を製造した。
【0015】ついで、上記の各種耐摩環を、通常の条件
で前処理、すなわち脱脂、乾燥、および温度:700℃
の後述の鋳造Al−Si系合金溶湯と同じ組成をもった
Al−Si系合金溶湯中に5分間浸漬の前処理を施した
状態で、それぞれピストン精密鋳造金型内に設置し、こ
れにAl−12.1%Si−1.03%Cu−1.05
%Mg−0.87%Niの組成をもったAl−Si系合
金溶湯を鋳造してピストン本体を形成すると共に、前記
耐摩環を鋳包み、ついで前記耐摩環に切削加工にて外周
面に沿って溝深さ:7mm×溝幅:3mmの寸法のトッ
プリング溝を形成することにより、トップランド部上面
とトップリング溝上面間の距離を5mm(この種のピス
トンで従来採用されている前記距離は通常15mm)と
したトップリング溝上方位置移動のAl−Si系合金製
ピストンをそれぞれ製造した。
【0016】さらに、これらのピストンを、排気量:8
200ccの直列6気筒直噴ディーゼルエンジンに組み
込み、回転数:3500rpm、エンジンの冷却温度:
90℃、運転モード:500時間連続運転、負荷:フル
出力の条件で加速運転試験を行ない、試験後の耐摩環の
トップリング溝の溝幅を外周面にそって測定し、この測
定結果より算出した最大摩耗量(試験後の最大溝幅−試
験前の溝幅)をもって耐摩耗性を評価し、また上記トッ
プリング溝に嵌合されたピストンリング(Fe−2.7
%Si−3.5%Cの組成をもった球状黒鉛鋳鉄製でC
rメッキしたもの)の上下面における最大摩耗深さを測
定することにより相手攻撃性を評価した。これらの測定
結果を表3に示した。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
【発明の効果】表3に示される結果から、本発明耐摩環
1〜29は、いずれもトップリング溝の上方位置移動に
もかかわらず、これを構成する遊離黒鉛析出鉄系焼結材
料のもつ、素地には遊離黒鉛が存在せず、実質的に気孔
内にのみ遊離黒鉛が析出して成長し、かつ前記素地中に
高合金硬質粒子が分散分布した組織によって、すぐれた
耐摩耗性を示し、かつ相手攻撃性もきわめて小さいのに
対して、ニレジスト鋳鉄からなる従来耐摩環は十分な耐
摩耗性を具備するものでないために、トップリング溝の
上方位置移動によって摩耗進行が著しく加速されるよう
になるばかりでなく、相手攻撃性も相対的に大きいこと
が明らかである。上述のように、この発明のピストンリ
ング耐摩環は、トップリング溝の位置を上方へ移動した
状態でAl−Si系合金製ピストンに適用しても小さい
相手攻撃性で、すぐれた耐摩耗性を発揮することから、
エンジンの排気ガス規制に十分満足に対応することがで
き、かつこれの具備するすぐれた熱伝導性がエンジンの
高出力化および大型化の促進に寄与するなど工業上有用
な特性をもつるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディーゼルエンジンのピストンを例示する概略
縦断面図(a)および同要部縦断面図(b)である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年5月26日(1999.5.2
6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02F 3/00 F02F 3/00 N F16J 9/26 F16J 9/26 A

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 遊離黒鉛形成成分および素地強化成分として、C:0.
    5〜5%、 いずれも素地形成成分として、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 Ni:1〜12%、 Ti:0.5〜5%、 Cu:8.5〜20%、 を含有し、さらに、 600〜1800のビッカース硬さを有する高合金硬質
    粒子:1〜35%、を含有し、残りが素地形成成分とし
    てのFeと不可避不純物からなる組成、並びに素地の主
    体が実質的にオーステナイトからなり、遊離黒鉛は、前
    記素地には実質的に存在せず、気孔内に析出して成長し
    た状態で存在し、かつ前記素地には上記の高合金硬質粒
    子が分散分布した組織を有する遊離黒鉛析出鉄系焼結材
    料で構成したことを特徴とする耐摩耗性および熱伝導性
    のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング
    耐摩環。
  2. 【請求項2】 重量%で、 遊離黒鉛形成成分および素地強化成分として、C:0.
    5〜5%、 いずれも素地形成成分として、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 Ni:1〜12%、 Ti:0.5〜5%、 Cu:8.5〜20%、 Mo:0.1〜2%、 を含有し、さらに、 600〜1800のビッカース硬さを有する高合金硬質
    粒子:1〜35%、を含有し、残りが素地形成成分とし
    てのFeと不可避不純物からなる組成、並びに素地の主
    体が実質的にオーステナイトからなり、遊離黒鉛は、前
    記素地には実質的に存在せず、気孔内に析出して成長し
    た状態で存在し、かつ前記素地には上記の高合金硬質粒
    子が分散分布した組織高合金硬質粒子が分散分布した組
    織を有する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料で構成したことを
    特徴とする耐摩耗性および熱伝導性のすぐれた遊離黒鉛
    析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環。
JP11088553A 1999-03-30 1999-03-30 耐摩耗性および熱伝導性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環 Withdrawn JP2000282166A (ja)

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