JP2000279187A - メタノールおよび/またはグリセロール添加により誘導可能なプロモーターを有する新規ベクター - Google Patents
メタノールおよび/またはグリセロール添加により誘導可能なプロモーターを有する新規ベクターInfo
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Abstract
シダーゼ遺伝子を利用した、メタノールおよび/または
グリセロールによって誘導される発現ベクター、および
当該発現ベクターを含有し、異種遺伝子発現産物を著量
蓄積する形質転換細胞、および当該細胞を利用した有用
酵素等の製造法に関する。 【構成】 メタノール酵母が含有するアルコールオキシ
ダーゼ遺伝子由来のプロモーターおよびターミネーター
を利用した発現カセットおよびベクターを構築し、さら
に、本発現ベクターを用いて、有用産物であるアデニル
酸キナーゼ、チトクロームCおよびペルオキシダーゼを
著量生産する。
Description
たはグリセロールの添加により誘導可能であるアルコー
ルオキシダーゼ遺伝子に係るプロモーターの下流に目的
の異種遺伝子が結合し、さらにその下流にアルコールオ
キシダーゼ遺伝子に係るターミネーターが結合した塩基
配列を有する発現ベクターに関する。更に本発明は、当
該発現ベクターを含有する形質転換細胞、および当該細
胞を利用した有用生産物、とりわけアデニル酸キナー
ゼ、チトクロームCおよびペルオキシダーゼの製造法に
関するものである。
炭素源として生育する酵母の一群であるが、菌体収率も
高いことから、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類、
メチルケトン、ギ酸などの合成化学工業原料の製造に用
いられてきた。また、菌体そのものを蛋白質源として利
用することや、菌体成分である、アミノ酸、ビタミン等
の生産に利用することも研究され、実用化されているも
のもある。
は、メタノールと酸素からホルムアルデヒドと過酸化水
素を生成するアルコールオキシダーゼによる酸化反応が
第1のステップであり、生成したホルムアルデヒドは異
化されてエネルギー源となり、また資化されて菌体構成
成分となる。アルコールオキシダーゼはメタノールによ
って誘導生産され、過酸化水素を分解するカタラーゼと
共にパーオキシゾームと呼ばれる細胞内小器官を形成
し、メタノールの酸化反応を効率的に行う。従って、メ
タノール酵母をメタノール存在下に培養すると、アルコ
ールオキシダーゼが著量生産され、その生産量は菌体内
可溶性蛋白質の約 40%にも達する。アルコールオキシダ
ーゼおよびカタラーゼの供給源として、メタノール酵母
はその高活性あるいは培養の簡便さの点から有用であ
る。アルコールオキシダーゼは、アルコール定量用の生
化学試薬およびエタノール消毒の際に殺菌力を強める目
的で利用され、またカタラーゼは食品の殺菌を目的に使
用された過酸化水素の分解除去に利用されている。
(AMP)とアデノシン三リン酸(ATP)から2分子のアデ
ノシン二リン酸(ADP)を生成する酵素で、メタノール
酵母における ATPの生産において律速段階となる反応の
酵素である(タニ(Tani, T.)、p253 in "Biology of Me
thylotrophs", Bufferworth Heinemann, (1991))。ア
デニル酸キナーゼは AMPの定量などの分析に利用され、
また ATPは生化学試薬だけでなく、種々の酵素による生
体内化合物の合成における、エネルギー源として重要で
ある。すなわち微生物の培養液あるいは培養した菌体を
用いて、ATP を安価に大量生産できれば、ATP を必要と
する様々な酵素反応において、安価にその生成物を得る
ことができる。
菌の電子伝達系において重要な働きをしているヘム蛋白
質で、他起源のチトクロームCに比較して、熱に対して
非常に安定であるという特徴がある。近年、チトクロー
ムCを電子素子の材料に利用することが期待され、様々
な研究開発が行われているが、チトクローム C552 は耐
熱性の点で優れた伝達素子材料になる可能性がある。し
かしながら、従来の大腸菌を宿主として用いた生産法で
は、嫌気性条件下でしかチトクローム C552 遺伝子が発
現されないため、生産性が低いという問題点があった。
下で種々の化合物を酸化する酵素であり、近年臨床診断
用試薬として、グルコース、コレステロール、リン脂質
および尿素の定量に種々のオキシダーゼと共に使用され
ている。また、酵素免疫反応法の標識酵素としても利用
されている。とりわけ、糸状菌アルスロマイセス・ラモ
サス(Arthromyces ramosus)が生産する分泌型のペルオ
キシダーゼ(ARP)は、化学発光剤を用いる系での化学発
光触媒能が従来知られていたペルオキシダーゼに比べて
著しく優れている(特開昭62-219398)。しかしながら、
該酵素の生産菌の生育が遅く、酵素の生産コストが高い
という問題点があった。
で大量の菌体を容易に生産できるので、有用物質や有用
酵素の工業的な生産に好適な微生物である。しかしなが
ら、メタノール酵母による有用物質の生産は、アルデヒ
ド類等のメタノール代謝系酵素の反応生成物やアミノ
酸、ビタミン等の菌体成分に限定されていた。また有用
酵素の生産においても、アルコールオキシダーゼやカタ
ラーゼ等のメタノール酸化系の酵素に限られている。
ール酵母がもつメタノール誘導性アルコールオキシダー
ゼ遺伝子の発現系を解明し、異種遺伝子の効果的発現を
達成すべく鋭意研究を行った。すなわち本発明の目的
は、メタノール酵母のアルコールオキシダーゼ遺伝子の
プロモーター、目的の異種遺伝子及びターミネーターを
有する発現カセット、当該発現カセットを有する、メタ
ノールおよび/またはグリセロールの添加によって誘導
される発現ベクター、および当該発現ベクターを含有
し、異種遺伝子の発現産物を著量生産する形質転換細胞
を提供することにある。また、本発現ベクターを利用し
て、メタノール酵母で著量生産させることを特徴とす
る、異種遺伝子の発現産物の製造法を提供することを目
的とする。なお、本明細書中において異種遺伝子という
ときは、メタノール酵母由来のアルコールオキシダーゼ
遺伝子以外の任意の遺伝子を意味する。
解決するために、メタノール酵母が含有するアルコール
オキシダーゼ遺伝子由来の塩基配列をそのプロモーター
およびターミネーターと共に解明し、これら要素を利用
した発現ベクターを構築した。さらに、本発現ベクター
を用いて異種遺伝子を発現させたとき、該遺伝子本来の
発現系を用いるときよりもはるかに効率的に遺伝子産物
を生産することを、アデニル酸キナーゼ、チトクローム
Cおよびペルオキシダーゼの著量生産の成功により確認
し、本発明を完成するに至った。
に存在するアルコールオキシダーゼ(以下 AODと略称す
る場合がある)遺伝子のプロモーターおよびターミネー
ター部分を含む周辺領域を発現カセットとして含み、そ
してAOD 遺伝子コード領域を異種構造遺伝子に置き換え
たものである。これらのプロモーター及びターミネータ
ーはいずれも本発明者らにより発見されたもので、それ
ぞれ配列番号1及び2の塩基配列を有する。
ゼ遺伝子及びその発現系の各要素は、メタノール酵母か
ら精製したアルコールオキシダーゼの N末端アミノ酸配
列に対応する合成オリゴヌクレオチドをプローブとして
使用するコロニーハイブリダイゼーション法あるいはプ
ラークハイブリダイゼーション法により、メタノール酵
母の染色体 DNAの遺伝子ライブラリーをスクリーニング
することにより取得することができる。遺伝子ライブラ
リーの作成法、コロニーハイブリダイゼーション法、プ
ラークハイブリダイゼーション法はいずれも公知の方法
を利用することができる。このようにして取得したアル
コールオキシダーゼ遺伝子の塩基配列を公知の方法で決
定し、その 5' 末端および 3' 末端の非翻訳領域を、プ
ロモーターおよびターミネーターとして各々利用するこ
とができる。このようにして取得したプロモーターとタ
ーミネーターの間に所望の異種遺伝子を挿入し、本発明
の発現カセットを作成する。
子を含む上記の発現カセットを、適当なベクターに挿入
して構成されている。そのために使用されるベクターと
しては、公知の pUC18、pUC19、pBR322等の大腸菌ベク
ターが例示される。これらのベクターに異種遺伝子、AO
D プロモーター及び AODターミネーターを挿入すること
は、後記実施例の記載を参照して、あるいは慣用の技術
により当業者が適宜行うことができる。
換された形質転換細胞及び該細胞を培養し、目的とする
異種遺伝子の発現産物であるペプチド又は蛋白質を単
離、精製する方法にも関する。
び/またはグリセロールの存在下で培養すると異種遺伝
子の発現が誘導され、所望のペプチド又は蛋白質を細胞
中若しくは細胞外に著量生産する。
ベクターで宿主細胞を形質転換すると、該ベクター中に
存在する異種遺伝子が、いわゆる相同的組換えにより宿
主細胞の染色体 DNAに組み込まれ、安定に宿主中に存在
させることができる。この態様における形質転換のため
の宿主細胞としては特に限定されるものではないが、好
ましいのは酵母であり、特に好ましいものは AOD遺伝子
発現系を取得したものと同じか若しくは近縁のメタノー
ル酵母またはサッカロマイセス・セレビジアエである。
宿主の染色体 DNAにベクター中の異種遺伝子を挿入する
には宿主の染色体 DNAと相同な配列をもつ適当な選択マ
ーカーを用いる。そのための選択マーカーは当業者が容
易に決めることができる。一例として、宿主細胞の染色
体 DNA上の代謝に関与する特定の遺伝子を用いることが
好ましい。即ち、染色体 DNA上の上記遺伝子を突然変異
等の適当な手段により機能しないようにした宿主細胞を
用い、相当する正常な遺伝子を含む発現ベクターを用い
て相同的組換えを起こすことにより、正常な代謝遺伝子
を含む形質転換細胞のみを増殖させて選択できるものが
好ましい。発現ベクターにそのようなマーカー遺伝子を
連結しておくことにより、該発現ベクターに連結された
各マーカー遺伝子と染色体 DNAの相同部分との間で相同
的組換えが起こり、異種遺伝子の発現カセットを染色体
DNA中に組み込むことができる。こうして形質転換され
た細胞の選択は、組み込まれた異種遺伝子の発現がメタ
ノールの存在下において誘導され、目的のペプチド等が
生産されることにより行うことができる。
クターは、上記の染色体 DNA組み込み型ベクターに、メ
タノール酵母由来で該宿主内での自律複製を可能ならし
めるDNA断片を付加することによって該宿主内でプラス
ミドとして複製可能な発現ベクターである。大腸菌のベ
クターとしては、上記のとおり公知の pUC18、pUC19、p
BR322等が利用可能である。この場合の好ましい宿主細
胞も上記と同様であるが、特に好ましいものは AOD遺伝
子発現系を取得したものと同一のメタノール酵母あるい
はその近縁の酵母、その他の好メタノール微生物または
サッカロマイセス・セレビジアエを用いることが可能で
ある。
伝子が染色体 DNAに組み込まれた形質転換細胞の取得法
は、公知の方法(サカイ(Sakai, Y.)ら、 J. Bacterio
l., 173, 7458〜7463, (1991))を利用できる。また、
アデニル酸キナーゼ遺伝子は、酵母(Saccharomyces ce
revisiae)由来の遺伝子がすでに開示されている(コン
ラッド(Konrad, M.)、 J. Biol. Chem., 263, 19468〜1
9474, (1988))。また、自律複製を可能ならしめる DNA
断片の例およびそれらのベクターへの組み込みは、クル
ツら(Kurts, M. B. et al., Mol. Cel. Biol., 7, 209-
217, (1987))に開示されている。また、メタノール酵母
の形質転換細胞培養物からのペプチド又は蛋白質の単離
及び精製法は、公知のあらゆる方法を利用することがで
きる。一方、チトクローム C552 の遺伝子は、好熱性水
素細菌(Hydrogenobacter thermophilus)由来の遺伝子が
既に開示されている(Sanbongi, Y., Yang, J. H., Igar
ashi, Y. and Kodama, T., Eur. J. Biochem., 198, 7-
12, 1991)。また、糸状菌アルスロマイセス・ラモサス
(Arthromyces ramosus)が生産する分泌型のペルオキシ
ダーゼ(ARP)は、特開平4-228078に開示されている。
の発現カセットを利用した発現ベクターおよびそれを含
む形質転換細胞は以下のような利点を有する。
ルで誘導される強力なプロモーターを含むので発現の効
率が著しく大きい。
に導入されている態様においては、発現が長期間の培養
において安定であり、安定化のために抗生物質などの薬
剤を培地中に添加する必要はない。
ールおよび/またはグリセロールを添加するだけで誘導
されるので、誘導条件の設定が容易であり、誘導物質
(メタノールおよびグリセロール)も安価である。
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
ールオキシダーゼ遺伝子のプロモーターおよびターミネ
ーターを使用し、またマーカー遺伝子として URA3 遺伝
子を使用して本発明を説明するが、これらに限定される
ものではなく、他のマーカー遺伝子も利用可能なことは
明らかである。また、異種遺伝子としてアデニル酸キナ
ーゼ遺伝子、チトクロームC遺伝子、ペルオキシダーゼ
遺伝子および G418 耐性遺伝子を使用したが、該遺伝子
に限定されるべきでない。
OU-1株(タニ(Tani, Y.)ら、 Agric. Biol. Chem., 49,
2699〜2706, (1985))より、アルコールオキシダーゼ
遺伝子の取得、およびその塩基配列の決定を行った例で
ある。なお、当該株はCandida boidinii SAM1958と命名
され、工業技術院微生物工業技術研究所に受託番号:微
工研条寄第3766号(FERM BP-3766)として、1992年2月
25日に寄託されている。
色体DNAを単離した。DNA の単離法としては、例えばク
リエールらの方法(Cryer, D.R. et al., Meth. Cell. B
iol., 12, 39〜44, (1975))が挙げられる。単離したDN
Aを制限酵素 Sau3AI で部分分解し、0.5%アガロースゲ
ルで電気泳動後、12〜22 kb のDNA断片をゲルより回収
した。この DNA断片を、BamHI で切断した EMBL3 arm
[ストラタジーン社(Stratagene)製;フリシャウフ(Fris
chauf, A.)ら、J. Mol. Biol., 170,827〜842, (1983)]
とライゲーションした。λファージのインビトロ・パッ
ケージングシステム、Giga Pack Gold(Stratagene社
製)により反応生成物のファージ遺伝子ライブラリーを
作成した。大腸菌P2392株を宿主として検定した結果、
1.1 × 105の組換え体ファージが得られた。
で完全分解し、0.7%アガロースゲルで電気泳動後、4〜
7 kbの DNA断片をゲルから回収した。回収した DNA断片
をベクター pBluescript II KS+(Stratagene社製)の
XbaI サイトに挿入し、大腸菌 XL1-Blue 株を形質転換
して、プラスミド・ライブラリーを作成した。
の N末端アミノ酸配列を、ガスフェーズ・ペプチドシー
ケンサー(model 120-A,アプライドバイオシステムズ社
(Applied Biosystems)製)によって、Ala-Ile-Pro-Glu-
Glu-Phe-Asp-Val-Ile-Val-と決定した。この N末端アミ
ノ酸配列に対応する3種の合成ヌクレオチドを合成し
た:プローブ1:5'-TCRAGDGGRATNGCCAT-3'、プローブ
2:5'-ACRATRACRTCRAAYTC-3'、プローブ3:5'-ACRTCR
AAYTCRAGDGG-3'、(R は Aまたは G、Y は Cまたは T、
H は Aまたは Cまたは T、D は Aまたは Gまたは T、N
は G,A,T,Cのいずれかを示す。)。これらの合成ヌクレ
オチドをプローブとして、実施例1−(1)で作成した
遺伝子ライブラリーをプラークハイブリダイゼーション
法あるいはコロニーハイブリダイゼーション法によりス
クリーニングした。ハイブリダイゼーションは、公知の
方法[サンブルック(Sambrook, J.)ら、in "Molecular C
loning", A Laboratory Manual, 2nd edn., (1989)]に
従い 37 ℃で 14時間行い、フィルターを 6×SSC-0.1%S
DS 中で 37 ℃において3回洗浄し、乾燥後、オートラ
ジオグラフィーによって陽性クローンを検出した。ファ
ージライブラリーよりクローン CL701が、プラスミドラ
イブラリーより pMOX620を含有するクローンが陽性クロ
ーンとして選択された。
したところ、XbaI-Sau3AI DNA 断片(2.3kb)を共有す
ることがわかった(図1参照)。CL701 の EcoRI-SalI
DNA 断片(3.3kb、SalIサイトはベクター EMBL3上にあ
る)、pMOX620 のBglII-PstI DNA 断片(1.05kb)およ
び BamHI-XbaI DNA 断片(3.9kb)を、pBluescript II
KS+あるいは KS-に挿入し、各々 pMOX330、 pMOX105お
よび pMOX390を作成した(図1参照)。
105 および pMOX390の挿入 DNA断片の塩基配列を決定し
た。各挿入 DNA断片をファージ M13に両方向にクローニ
ングし、2本鎖 DNA(RF)をおのおの調製した。これら
の二本鎖 DNAに大腸菌エキソヌクレアーゼIIIを反応さ
せ、一方向に欠失が導入された二本鎖 DNAを調製した。
エキソヌクレアーゼIIIを利用した一方向欠失挿入プラ
スミドの作成法に関しては、「続生化学実験講座、第1
巻、遺伝子研究法II」の289-305頁に詳しく記載されて
いる。前記の方法により得られた、一方向に欠失が挿入
された各二本鎖 DNAで大腸菌 JM109を形質転換して、一
方向に欠失が挿入されたファージクローンを作成した。
各ファージクローンから二本鎖 DNAを調製して、制限酵
素による切断パターンから欠失の程度を調べ、適当なク
ローンから一本鎖ファージ DNAを調製した。これら一本
鎖ファージ DNAを鋳型として、ジデオキシ法(サンガー
(Sanger, F.)ら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5
463 (1977))によって塩基配列を決定した。各クローン
の塩基配列をつなぎ合わせることにより、各プラスミド
の挿入 DNA断片の塩基配列を決定し、さらにこれらを結
合することにより、図1中 EcoRIサイトから HindIIIサ
イトまでの 4.2kbの全塩基配列を決定した(図2)。
992番目の TAAで終わる 1989 塩基対からなるオープン
リーディングフレームが存在する。このオープンリーデ
ィングフレームが目的のアルコールオキシダーゼ遺伝子
をコードしていることは以下の点から明らかである。
が、メタノール酵母ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenul
a polymorpha)[レデボエル(Ledeboer, A.M.)ら、 Nucle
icAcids Res., 13, 3063-3082, (1985)]およびピキア・
パストリス(Pichiapastoris)[コウツ(Koutz, P.)ら、 Y
east, 5, 167〜177 (1989)]のアルコールオキシダーゼ
のアミノ酸配列と、各々 77 %および73%の相同性を示
す。
ノ酸配列が、精製酵素の N末端アミノ酸配列と一致する
(図2中、下線部のアミノ酸配列)。
が、精製酵素のアミノ酸組成と一致する。
動法により測定した酵素の分子量(72〜75kDa)が、推
定されるアミノ酸組成から計算した分子量(73,947)と
一致する。
の転写に必要な TATA 配列が、3'側下流域には転写終結
シグナルおよび polyA付加シグナルが認められる(いず
れも図2の塩基配列中に下線で示す)。なお、5'側上流
(プロモーター領域)および3'側下流域(ターミネータ
ー領域)の塩基配列には、上述のH. polymorphaおよび
P. pastorisのそれらとの相同性は全く認められない。
U-1由来のアルコールオキシダーゼ遺伝子のプロモータ
ー、ターミネーター部分を利用した酵母(Saccharomyce
s cerevisiae)由来のアデニル酸キナーゼ遺伝子の発現
ベクターを作成し、キャンディダ・ボイディニイを形質
転換した例である。
ミネーターの間にアデニル酸キナーゼのコード領域を挿
入した発現カセットを作成した(図4)。アデニル酸キ
ナーゼ遺伝子(ADK)の取得法およびその塩基配列は、
コンラッドにより開示されている(Konrad, M., J. Bio
l. Chem., 263, 19468〜19474, (1988))。
ター、ターミネーター部分およびアデニル酸キナーゼの
構造遺伝子部分を切り出すために、PCR(ポリメラーゼ
・チェーン・リアクション)法を用いた。PCR 法のプラ
イマーとして下記の4種類のオリゴヌクレオチドを合成
した。
プライマー(RV: 17mer)は、各々マルチクローニング
サイトの 3'側および 5'側の塩基配列と相同であり、宝
酒造株式会社より購入した。PADK1 および PADK2は、互
いに相補的な塩基配列になっており、AOD プロモーター
と ADKコード領域を結合するために用いた。PADK1、PAD
K2 の下線部は、各々、AOD プロモーターの 3'末端およ
び ADKコード領域の開始コドンから 3'側の塩基配列と
相補的になっている。SPETERM は AODターミネーター部
分の 5'末端と同一塩基配列(下線部)を含み、その 5'
側の4番目から9番目に SpeI サイト(ACTAGT)を持っ
ている。ADKSPEは ADKコード領域の 3'末端側に相補的
な塩基配列を含み、その 5'側の4番目から9番目に Sp
eI サイト(ACTAGT)を持っている。
pMOX330(図1参照)とプライマーRVおよび PADK1とを
混合し、PCR 反応を行った。反応生成物をアガロースゲ
ル電気泳動し、増幅された DNA断片を回収した。回収し
た DNA断片(PAOD 断片)は、AOD プロモーター領域の
5'末端側にマルチクローニングサイトとその 5'上流
域、および 3'末端にプライマー PADK1の配列が付加さ
れた構造を持っている。ADK の構造遺伝子を含むプラス
ミド pADK1(Konrad, M., J. Biol. Chem., 263,19468
〜19474, (1988))とプライマー PADK2および ADKSPE
を混合し、PCR反応を行った。反応生成物をアガロース
ゲル電気泳動で分画後、増幅された DNA断片(CADK 断
片)を回収した。CADK 断片は ADKコード領域の 5'末端
側にプライマー PADK2の配列が、3'末端側に SpeI サイ
トの配列が付加された構造を持っている。
マー RV および ADKSPE を加え PCR反応を行うと PAOD
断片と CADK 断片が結合した DNA断片(PAOD-CADK 断
片)が増幅された。これは PAOD 断片の 3'末端と C
ADK 断片の 5'末端の塩基配列が互いに相補的であるた
め(プライマー PADK1および PADK2の塩基配列を参
照)、その部分で二本鎖 DNAが形成され、PCR反応によ
り PAOD-CADK 断片が生成されるためである。さらに、
この PAOD-CADK 断片の両端にプライマーRVおよびADKSP
Eがアニールし、PCR反応により PAOD-CADK 断片が増幅
されることによる。増幅された PAOD-CADK 断片を XbaI
/SpeIで切断し、アガロースゲル電気泳動後 PCx断片を
回収した。PCx 断片は、AOD プロモーター領域の Xba I
サイトから3'側の部分と ADKコード領域が結合した構造
になっている。一方 pMOX33(図1参照)を EcoRI/XbaI
で切断した後、Px断片を回収した。Px断片は AODプロ
モーター領域のXbaI サイトから 5'側上流域を含んでい
る。
断して得られる 0.6 kb の DNA断片を pBluescript II
KS+ の BamHI/HindIIIサイトに挿入して pMOX078 を作
成した。pMOX078 は AOD遺伝子のターミネーター領域を
含んでいる。pMOX078にプライマー SPETERMおよび NP
を加え PCR反応を行った。SpeI/HindIIIで切断後、アガ
ロースゲル電気泳動により分画し、増幅された DNA断片
(TAOD 断片)を回収した。TAOD 断片は AODターミネー
ター領域の5'末端に SpeI 切断端を、3'末端にHindIII
切断端を持っている。
PCx 断片、TAOD 断片)とベクターpBluescript II KS+
の EcoRI/HindIII切断による DNA断片を T4 リガーゼで
結合し、pECA1 を作成した。pECA1 は、AOD 遺伝子の E
coRIサイトから 3'側下流域のプロモーター領域、ADK
構造遺伝子領域、および AOD遺伝子の HindIIIサイトの
5'側上流域からなる ADK発現カセットを含んでいる。
pRCU350から、URA3遺伝子を含む DNA断片を SalI で切
り出し、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端にした後、pUC1
9 の NdeI サイトに挿入して pCU350 を作成した。キャ
ンディダ・ボイディニイ由来の URA3 遺伝子の取得法お
よび pRCU350の作成法はサカイらによって明らかにされ
ている(Sakai, Y., et al., J. Bacteriol., 173, 7458
〜7463,(1991))。pECA1 から EcoRI/SalI によって発
現カセット部分を切り出し、pCU350の EcoRI-SalI サイ
トに挿入して発現ベクター pTRexを作成した。pTRex の
制限酵素地図を図5に示す。pTRex は pUC19の SalI サ
イトに ADK遺伝子の発現カセットが挿入され、NdeIサイ
トに URA3 遺伝子が挿入された構造を持つ。
要求株(TK62株)を取得した。ウラシル要求株の取得法
およびこのウラシル要求株が URA3 遺伝子の変異株であ
ることは、サカイらによって明らかにされている(Saka
i, Y., et al.,J. Bacteriol., 173, 7458〜7463, 199
1)。
形質転換し、アデニル酸キナーゼを著量生産するキャン
ディダ・ボイディニイの形質転換細胞を取得した。形質
転換法はリチウム法(イトウ(Ito, H.)ら、J. Bacterio
l., 153, 163〜168, (1983))あるいはスフェロプラス
ト法(ヒンネン(Hinnen, A.)ら、Proc. Natl. Acad.Sc
i. USA, 75, 1929〜1933, (1978))によった。形質転換
細胞のスクリーニング法は、サカイらによって詳しく開
示されている(Sakai, Y., et al., J. Bacteriol., 17
3, 7458-7463, (1991))。形質転換細胞では、pTRex の
URA3 遺伝子部分が、キャンディダ・ボイディニイの染
色体 DNA中の URA3 遺伝子部分と相同組換えを起こし、
ADK 発現カセットが染色体 DNA中に組み込まれている。
従って、形質転換細胞は、メタノール添加培地中で培養
することにより、極めて安定にアデニル酸キナーゼを生
産する。
ィダ・ボイディニイの染色体 DNAに組み込まれた形質転
換細胞による、アデニル酸キナーゼの製造法を示した例
である。
その親株(TK62株)を、炭素源としてメタノールあるい
はグルコースを添加した培地で培養し、経時的に菌体量
および菌体内のアデニル酸キナーゼ活性を測定した(図
6)。メタノール酵母の培地はサカイら(Sakai, Y., et
al., Appl. Environ. Microbiol., 53, 1812〜1818,(1
987))によって開示されているが、メタノールあるいは
グルコースの添加量は 2% とした。アデニル酸キナーゼ
活性の測定法はブロリンらによって開示されており(Bro
lin, S. E., et al., Methods of Enzymatic Analysis,
vol. 3, Third Edition, pp540〜544, (1983))、24℃
で 1分間に2μmoleの ADPを生成する酵素活性を 1 Uと
した。メタノール培地において 72 時間後に、1-1 株は
菌体蛋白質 1 mg あたり 93.5 U のアデニル酸キナーゼ
活性、即ち親株の0.0328 Uに比較して 2900 倍の酵素活
性の増加を示した。この酵素活性の増加はグルコース培
地では認められず、アデニル酸キナーゼの発現がメタノ
ールによって誘導されることを示している。
遺伝子のプロモーター領域およびターミネーター領域を
利用した発現ベクターにおいて、アデニル酸キナーゼの
誘導発現がメタノールのみならず、グリセロールによっ
ても誘導されること、また、エタノールやグルコースに
よって抑制されることを示した例である。さらに、該発
現カセットがサッカロマイセス・セレビジアエでも機能
することを、G418耐性遺伝子の発現がグリセロールで強
力に誘導されることで示した例である。
株でグルコース、エタノール、メタノールまたはグリセ
ロールを単独ないし混合して添加し、24時間培養した後
のアデニル酸キナーゼの活性を表1に示す。メタノール
およびグリセロールは AODプロモーターを活性化し、ア
デニル酸キナーゼの発現量を増加させた。メタノールと
グリセロールの両方を添加したときに最も高い発現量が
得られ、メタノール単独の場合の約 1.7倍の生産量が認
められた。メタノールおよびグリセロールによる誘導効
果は、グルコースないしエタノールの共存によって完全
に抑制される。メタノールやグリセロールは安価な炭素
源であるので、本発明の形質転換細胞を使用するなら異
種遺伝子産物を安価に製造することができる。また、グ
リセロールはメタノールと異なり、培養液中に高濃度で
加えても形質転換体の生育阻害も起こさず、最終菌体濃
度も高くすることができるので、該メタノール酵母によ
る生産には最適な炭素源である。
伝子を挿入した発現カセットを作成した。トランスポゾ
ン Tn5由来の G418 耐性遺伝子は、プラスミドPNEO (フ
ァルマシア社製)から取得できる。発現カセットの構築
は、実施例2に記載したのと全く同様に PCR法を利用し
て行った。構築した発現カセットをサッカロマイセス・
セレビジアエ由来の URA3 遺伝子を含んでいる YIp型ベ
クターpRS406 (Stratagene社製)に挿入した。ウラシル
要求性の宿主酵母(サッカロマイセス・セレビジアエ) Y
PH500株(Sikorski, R. et al., Genetics, 122, 19-2
7, (1989))の URA3 遺伝子部位に、相同組換えにより
該発現カセットが組み込まれた形質転換体をウラシル非
要求性を指標にして選別した。形質転換酵母を各種濃度
(0〜100 mg/ml)の G418 を含む培地での生育を指標に
して、G418耐性を調べた。宿主酵母は 0.1 mg/ml以上の
G418 を含む培地で生育できないのに対して、形質転換
酵母は、3%グリセロールを含む培地で、100mg/mlの G41
8 存在下でも生育できた。また、該形質転換酵母を、2%
グルコースを炭素源として培養した場合、宿主酵母と同
様、0.1mg/ml以上の G418を含む培地では生育できなか
った。これらの結果から、メタノール酵母由来の AODプ
ロモーター/ターミネーターを利用した発現カセットは
サッカロマイセス・セレビジアエでも機能し、培地にグ
リセロールを添加することにより、強力に発現が誘導さ
れることがわかった。なお、メタノールのみを添加して
も、メタノールとグリセロールを共に添加しても、同様
に誘導されると考えられる。
取得したキャンディダ・ボイディニイ S2AOU-1由来のア
ルコールオキシダーゼ遺伝子のプロモーター、ターミネ
ーター部分を利用し、その間に制限酵素 NotI の認識部
位の塩基配列を挿入した発現ベクターを作成した(図
7)。この発現ベクターに好熱性水素細菌由来のチトク
ローム C552 遺伝子を挿入し、キャンディダ・ボイディ
ニイを形質転換することにより、チトクローム C552 を
生産した。
ーの単離 アルコールオキシダーゼ(AOD)のプロモーターとターミ
ネーターの間に制限酵素 NotI の認識部位の塩基配列を
挿入した多目的発現カセットを作成した。
ター、ターミネーターの部分を切り出すために、 PCR
(ポリメラーゼチェインリアクション)法を用いた。PC
R 法のプライマーとして下記の3種類のオリゴヌクレオ
チドを合成した。
の認識部位の塩基配列(下線部)を有する。PMAL1 は
AODプロモーターの 3'末端の塩基配列を含み、PMAL2は
AODターミネーターの 5'末端と同一の塩基配列を含む。
PMAL3 は AODプロモーターの途中に存在する XbaI 認識
部位の塩基配列(下線部)を有する。
pMOX330とプライマー PMAL1およびPMAL3を混合し、PCR
反応を行った。反応生成物をアガロースゲル電気泳動
し、増幅された DNA断片を回収した。回収した DNA断片
(PN3 断片)は、AOD プロモーター領域の XbaI 認識部
位より下流領域を含み、3'末端に NotI 認識部位を有す
る構造を持っている。AOD のターミネーター領域を含む
プラスミド pMOX078と、プライマー PMAL2およびプライ
マー NP(実施例1参照)とを混合し、PCR 反応を行っ
た。反応生成物をアガロースゲル電気泳動し、増幅され
た DNA断片を回収した。回収した DNA断片(TN断片)
は、AOD ターミネーターの HindIII認識部位より上流領
域を含み、5'末端に NotI 認識部位を有する構造を持っ
ている。AOD のプロモーター領域を含むプラスミド pMO
X330を制限酵素 EcoRIおよび XbaIで切断し、アガロー
スゲル電気泳動後、XbaI認識部位より上流の AODプロモ
ーター領域を含む DNA断片(PN5 断片)を回収した。
酵素 NotI および HindIIIで切断した TN 断片および X
baI/HindIII 処理したベクター pUC18を、T4DNA リガー
ゼによって結合し、プラスミド pPN1 を作成した。プラ
スミド pPN1 をEcoRI/XbaI 処理後、PN5 断片を挿入し
て、pNOT1 を作成した。キャンディダ・ボイディニイ由
来の URA3 遺伝子を含むプラスミド pRCU350から、URA3
遺伝子を含む DNA断片を制限酵素 SalI で切り出し、T4
DNAポリメラーゼで平滑末端にした後、pNOT1 の NdeI
認識部位に挿入して pNOTe1 を作成した。pNOTe1は、pU
C18 の EcoRI認識部位と HindIII認識部位との間に AOD
プロモーター/ターミネーターからなる発現カセットが
挿入され、AOD プロモーター/ターミネーター間のNotI
認識部位に異種遺伝子を挿入することができる。ま
た、NdeI認識部位に、メタノール酵母の形質転換および
染色体 DNAへの組み込みに必要な URA3 遺伝子が挿入さ
れた構造を持つ(図7参照)。
ドの作成 チトクローム C552 (CytC552)遺伝子の取得方法および
その塩基配列は、サンボンギらにより開示されている(S
anbongi, Y., Yang, J. H., Igarashi, Y. andKodama,
T., Eur. J. Biochem., 198, 7-12, (1991))。ベクタ
ー pUC18の EcoRI認識部位に CytC552の構造遺伝子が挿
入されたプラスミド pKHC12 から該遺伝子を制限酵素 E
coRIおよび SalI で切り出し、そして T4 DNA ポリメラ
ーゼで平滑末端にした。NotIで消化した後、同じく平滑
末端にしたプラスミド pNOTe1 に、この断片を挿入する
ことにより、CytC552 用発現プラスミド pNOTe1C552 を
作成した。
産 形質転換は、実施例2で示した形質転換法と全く同様に
行った。形質転換細胞の培養法、培地等についても実施
例2と全く同様である。
その親株(TK62株)を、炭素源としてメタノールあるい
はグルコースを添加した培地で培養し、そして菌体内の
チトクロームCの発現量を測定した。チトクロームCの
発現量は 552nmにおける吸光度を測定することにより算
出した。メタノール培地において、培養 100時間後に、
1-a 株は培地1リットルあたり 0.8 mgのチトクローム
C552 を生産した。この誘導発現はグルコース培地では
認められず、親株においては、メタノール培地およびグ
ルコース培地のいずれにおいても全く認められなかっ
た。このことは、チトクローム C552 の発現がメタノー
ルにより誘導されることを示している。
配列(ARS)の単離と、その塩基配列の決定、および AR
Sを有することにより該宿主内でプラスミドとしての複
製が可能なプラスミドの作成を示した例である。
NAライブラリーから公知の方法でスクリーニングするこ
とにより行うことができる。キャンディダ・ボイディニ
イの遺伝子ライブラリーの作成法は、Sakai らの方法
(Sakai, Y., Kazarimoto, T and Tani, Y., J. Bacter
iol. 173, 7458-7463(1991))によった。
は、以下のように行った。キャンディダ・ボイディニイ
の染色体 DNAを EcoRIあるいは HindIIIで完全消化後、
キャンディダ・ボイディニイ由来の URA3 を含有するベ
クター pBCU351(Sakai, Y.,Kazarimoto, T. and Tani,
Y., J. Ferment. Bioeng., 73, 255-260 (1992))の E
coRI認識部位あるいは HindIII認識部位に挿入して、大
腸菌 JM109株を形質転換し、ウラシル非要求性を指標に
ARSを含むプラスミドをスクリーニングした。得られた
350のメタノール酵母形質転換細胞からプラスミドを調
製し、再びキャンディダ・ボイディニイを形質転換し、
該大腸菌形質転換細胞からプラスミドを調製してウラシ
ル非要求性を指標に選別した。大腸菌 JM109株を形質転
換し、そしてキャンディダ・ボイディニイに戻すという
この操作を都合3回繰り返すことにより、強い ARS活性
を有する DNA断片を含む 28 種類のプラスミドが得られ
た。このうち、CARS1 と CARS2という2つの強い ARS活
性を有する DNA断片を含むプラスミド pBARCU1および p
BARCU2について、以後解析を進めた(図9参照)。
質転換頻度 サッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cere
visiae)の形質転換用のプラスミドは以下のように構築
した。得られた CARS1および CARS2を含む DNA断片は、
pBARCU1 あるいは pBARCU2をそれぞれ HindIIIあるいは
EcoRI処理することにより調製した。該 DNA断片を、サ
ッカロマイセス・セレビジアエ由来の URA3 遺伝子を含
む YIp型べクターの HindIIIあるいは EcoRI認識部位に
各々挿入して、pRAC1 および pRAC2を作成した。キャン
ディダ・ボイディニイ由来のマーカー遺伝子 URA3、お
よび CARS1あるいは CARS2を含むプラスミドの作成法に
ついては、上記実施例6−(1)に記載されている。作
成した4種類のプラスミドpBARCU1、pBARCU2、pRAC1 お
よび pRAC2については、その構成を図9に示す。
ボイディニイあるいはサッカロマイセス・セレビジアエ
を宿主とした場合の形質転換効率を表2に示す。キャン
ディダ・ボイディニイをこれらのプラスミドで形質転換
した場合、ARS を含まない対照のプラスミドの形質転換
効率は極めて低いのに対して、高い形質転換効率を示し
た。また、サッカロマイセス・セレビジアエをこのベク
ターで形質転換した場合も、キャンディダ・ボイディニ
イを宿主とした場合よりも高い効率で形質転換細胞が得
られた。なお、対照とした pBCU351でもサッカロマイセ
ス・セレビジアエで形質転換細胞が得られたが、これは
該プラスミドに含有されるキャンディダ・ボイディニイ
由来のマーカー遺伝子 URA3 に、サッカロマイセス・セ
レビジアエでの ARS活性があり、且つ、該酵母のウラシ
ル要求性を相補できるためと考えられる。
はキャンディダ・ボイディニイの形質転換効率を向上さ
せ、該宿主における異種遺伝子発現系の構築を容易にす
る。また、これらのベクターはキャンディダ・ボイディ
ニイだけでなく、サッカロマイセス・セレビジアエを形
質転換できることから、これら宿主の間のシャトルベク
ターとしても利用できる。
塩基配列を決定した。塩基配列の決定方法は、公知の S
anger らの方法(Sanger, F., Nicklen, S andCoulson,
A. R., Proc. Natl. Acad. Sci., 74, 5463-5467(197
7))によって行うことができる。この方法により決定
された CARS1の塩基配列を図8に示す。図中、ボックス
で囲まれた部分は、サッカロマイセス・セレビジアエに
おける ARSのコンセンサス配列(5'-(A/T)TTTATRTTT(A/
T)-3')に類似の配列を示し、下線部分は同じくサッカ
ロマイセス・セレビジアエにおける ARSボックス(5'-T
NTRAA-3')に類似の配列を示す。
セレビジアエにおけるCARS1 の機能部位の解析を以下の
ようにして行った。キャンディダ・ボイディニイでの A
RS機能を有する pRAC1、および CARS1が pRAC1とは逆向
きに挿入されたpRAC1R について制限酵素およびヌクレ
アーゼを利用して各種欠失変異プラスミドを作成した。
これらの欠失変異プラスミドによる、キャンディダ・ボ
イディニイおよびサッカロマイセス・セレビジアエを宿
主とした場合の形質転換効率を図10に示す。キャンデ
ィダ・ボイディニイにおける ARS活性を示す最少配列は
塩基番号 1-495であり、サッカロマイセス・セレビジア
エにおける ARS活性を示す最少配列は塩基番号 693-850
であった。
との間に NotI サイトを持つ発現ベクター pNOTe1 に糸
状菌Arthromyces ramosus 由来のペルオキシダーゼ遺伝
子を挿入し、キャンディダ・ボイディニイを形質転換し
て、ペルオキシダーゼを生産した例である。
ーゼ発現プラスミドの作成Arthromyces ramosus ペルオキシダーゼ(ARP)遺伝子の
取得方法およびその塩基配列は、特開平4-228078および
欧州特許公開第0486067号に開示されている。ARPの cDN
A 遺伝子を持つ酵母での発現プラスミド pYEPOD1(特開
平4-228078)を鋳型として用い、合成オリゴヌクレオチ
ド A664 5'-AAGCGGCCGCATGAAGCTCTCGCTTTTCTCCA-3'と A
663 5'-GTGCGGCCGCAGGATGTACCATCTTCACCAGA-3'をプライ
マーとして PCR法にて DNAを増幅した。反応生成物をア
ガロースゲル電気泳動し、増幅された DNA断片を回収し
た。回収した DNA断片は 5'末端(開始コドンに接して
5'側)と 3'末端(終止コドン TGAより 21 bp下流)に
NotI サイトを持つ ARP遺伝子である。この DNA断片を
NotI で消化し、同じく NotI で消化したプラスミド pN
OTe1 に挿入することにより、ARP 発現プラスミド pNOT
e1ARPを作成した。
行った。形質転換細胞の培養法、培地等についても実施
例3と全く同様である。
その親株(TK62株)を、炭素源としてメタノールを添加
した培地で 100時間培養し、集菌後、培養液上清のペル
オキシダーゼ活性を測定した。ペルオキシダーゼ活性の
測定法は、特開平4-228078に開示されているとおりに行
った。その結果、AP-1は137 u/l、TK62株は0.6 u/lのペ
ルオキシダーゼ活性が認められた。したがって、明らか
に、AP-1株では活性型の ARPが発現し、培地中に分泌さ
れていると考えられる。
ィダ・ボイディニイのアルコールオキシダーゼ遺伝子が
取得され、本遺伝子のプロモーターおよびターミネータ
ーを利用した発現カセットおよびベクターが作成でき
た。さらに、この発現ベクターで形質転換された細胞を
液体培養することにより、アデニル酸キナーゼ、チトク
ロームCおよびペルオキシダーゼのメタノールおよび/
またはグリセロールの添加による大量生産が可能となっ
た。
スミドの制限酵素地図およびそれらの作成法を示す図で
ある。
の塩基配列および当該塩基配列より推定されるアミノ酸
配列を示す図である。図中、塩基配列の下線部は TATA
配列、転写終結シグナル、poly A付加シグナルを示す。
アミノ酸配列の下線部は精製酵素のN末端配列と一致す
る部分を示す。
の塩基配列および当該塩基配列より推定されるアミノ酸
配列を示す図である。図中、塩基配列の下線部は転写終
結シグナル、poly A付加シグナルを示す。
およびターミネーターを利用した、アデニル酸キナーゼ
の発現カセットの作成法を示す図である。
の制限酵素地図を示す。図中、太線は ADK遺伝子および
URA3 遺伝子を含む DNA断片を示す。
びその親株である TK62 株について、メタノール培地あ
るいはグルコース培地でのアデニル酸キナーゼの生成量
と菌体量を示した図である。図中、(◇)は TK62株
(メタノール培地)、(△)は 1-1株(メタノール培
地)、(〇)は TK62株(グルコース培地)、(□)は
1-1株(グルコース培地)での菌体量を OD610で測定し
た結果を示し、同じ記号がぬりつぶされているときは、
同じ菌株および培地でのアデニル酸キナーゼ活性を示
す。
およびターミネーターを利用し、その間に制限酵素 Not
I の認識部位の塩基配列を挿入した発現ベクターの作成
法を示す図である。
自律複製配列(ARS)の塩基配列を示す図である。
よび pBARCU2の構築を示す図である。
マイセス・セレビジアエを宿主とした場合の、欠失変異
プラスミドによる形質転換の効率を示す図である。
Claims (10)
- 【請求項1】 配列番号1の塩基配列において1若しく
は2以上の塩基が欠失、置換もしくは付加されたメタノ
ールおよび/またはグリセロールの添加により誘導可能
なプロモーターの下流に、目的の異種遺伝子が結合し、
さらにその下流に配列番号2の塩基配列において1若し
くは2以上の塩基が欠失、置換もしくは付加されたター
ミネーターが結合した発現カセット。 - 【請求項2】 請求項1に記載の発現カセットを有する
発現ベクター。 - 【請求項3】 宿主細胞の染色体DNAと相同な部分を
含み、且つこの部分において相同的組換えを起こすこと
により、請求項1に記載の発現カセットを染色体DNA
に組み込ませることができることを特徴とする請求項2
記載の発現ベクター。 - 【請求項4】 宿主細胞内での自律複製を可能ならしめ
る塩基配列を有する請求項2記載の発現ベクター。 - 【請求項5】 宿主細胞内での自律複製を可能ならしめ
る塩基配列が配列表4の塩基配列である請求項4記載の
発現ベクター。 - 【請求項6】 請求項2乃至5の何れか1項に記載の発
現ベクターにより形質転換された形質転換細胞。 - 【請求項7】 異種構造遺伝子によりコードされるペプ
チド又は蛋白質の製造方法において、請求項6に記載の
形質転換細胞を培養し、該培養物から該異種構造遺伝子
の発現生産物であるペプチド又は蛋白質を単離、精製す
ることを特徴とする製造方法。 - 【請求項8】 異種構造遺伝子がサッカロマイセス・セ
レビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のアデニル
酸キナーゼをコードする遺伝子である請求項7記載の製
造方法。 - 【請求項9】 異種構造遺伝子が好熱性水素細菌(Hydro
genobacter thermophilus)由来のチトクロームC552をコ
ードする遺伝子である請求項7記載の製造方法。 - 【請求項10】 異種構造遺伝子がアルスロマイセス・
ラモサス(Arthromyces ramosus) 由来のペルオキシダー
ゼをコードする遺伝子である請求項7記載の製造方法。
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