JP2000278084A - 弾性表面波素子 - Google Patents

弾性表面波素子

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JP2000278084A JP11080550A JP8055099A JP2000278084A JP 2000278084 A JP2000278084 A JP 2000278084A JP 11080550 A JP11080550 A JP 11080550A JP 8055099 A JP8055099 A JP 8055099A JP 2000278084 A JP2000278084 A JP 2000278084A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気機械結合係数K2 を大きくすることによ
り広帯域化と高効率化が図れ、保存安定性に優れた弾性
表面波素子を提供する。 【解決手段】 K1-xNaxNbO3 に対する格子整合性
を持つSrTiO3 等の単結晶バルク材料からなる下地
基板12の上に、K1-xNaxNbO3 単結晶からなる厚
さ500nm程度の圧電体層13が積層されている。そ
して、圧電体層13の上面にAl等の金属からなるすだ
れ状の入力側電極14a、出力側電極14bが形成され
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、弾性表面波特有の
作用を用いたフィルタ、コンボルバ等の弾性表面波素子
に関し、特に、電気機械結合係数に優れたKNbO3
結晶中のKを一部置換したK1-xxNbO3 単結晶を圧
電体層として用いた弾性表面波素子に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】弾性表面波素子とは、電気信号を弾性体
表面を伝搬する弾性表面波(SurfaceAcoustic Wave )
に変換し、特定周波数の信号を取り出すものである。こ
の弾性表面波が圧電体基板で効率良く励振、受信できる
ことが見い出されて以来、電磁波にはない弾性表面波の
優れた性質を利用してフィルタ、コンボルバ等をはじめ
とする種々の信号機能素子への応用が研究され、広い分
野で実用化されている。この弾性表面波素子は、従来、
LiNbO3 、LiTaO3 等の圧電体単結晶上に、電
気信号と弾性表面波との間の変換器として機能するすだ
れ状電極(Inter-digital Transducer)を形成すること
によって作製されていた。
【0003】ところで、弾性表面波素子においては、弾
性体表面を伝搬する弾性波の音速vとすだれ状電極の電
極幅wによって使用周波数fが決定される。その関係
は、 f=v/λ=v/4w (λ:弾性表面波の波長) …… (1) すなわち、電極幅wが小さく、音速vが大きい程、高周
波帯域で使用できることになる。ところが、今後の通信
の分野等で要求されるGHzオーダーの高い周波数を得
ようとすれば、電極幅に関しては微細加工技術の限界が
あることから、音速の大きい弾性体材料を選択する必要
がある。音速の大きい弾性体材料の一例としてダイヤモ
ンドがあり、特開昭64−62911号公報には、ダイ
ヤモンド層上に圧電体層、電極層を順次積層した構造を
持つ弾性表面波素子が開示されている。
【0004】一方、弾性表面波素子の弾性体材料に求め
られる他の条件として、電気信号と弾性表面波の間の変
換能力を示す電気機械結合係数K2 が大きいことが挙げ
られる。K2 が大きい程、効率の良い弾性表面波素子が
得られるというわけである。この観点から、圧電性磁器
材料として従来より知られていたKNbO3 が極めて大
きな電気機械結合係数K2 を示すことが見い出され、実
験によりこれが確認された。この実験によれば、これま
で最も大きな電気機械結合係数K2 を持つとされていた
LiNbO3 に比べて、KNbO3 単結晶のK2 は大き
な値が得られることが確認され、特に、KNbO3 単結
晶の特定の結晶面((001)面)の特定方向([10
0])で、LiNbO3 のK2 =0.055に対してK
2 =0.53と約10倍の値が得られた(「KNbO3
圧電体単結晶を用いた超高結合弾性表面波の伝搬特
性」、山之内和彦他、日本学術振興会弾性波素子技術第
150委員会第50回研究会資料、pp27-31(1996.11.2
7))。
【0005】なお、特開平7−95006号公報には、
基板上にIII−V族化合物膜が設けられ、さらにその上
に3種以上の元素から構成される複合酸化物膜が設けら
れた圧電体基板を有する弾性表面波素子が開示されてい
る。そして、上記複合酸化物膜の例としてKNbO3
記載されている。ただし、この公報では、KNbO3
電気機械結合係数K2 については何ら言及しておらず、
ただ単に3種以上の元素で構成される複合酸化物膜の一
例として挙げたにすぎない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、弾性
表面波素子の弾性体材料としてKNbO3 単結晶を用い
れば、電気機械結合係数K2 が大きく、効率の良い弾性
表面波素子が実現できる感触が得られた。しかしなが
ら、それと同時に、K2 の値はKNbO3 単結晶の結晶
構造中における弾性表面波の伝搬方向に応じて種々に変
化することも判明した。したがって、弾性表面波素子を
作製するにあたり所望のK2 の値を得たい、あるいはK
2 の値を制御したい、といった要求がある場合、弾性表
面波の伝搬面を特定のKNbO3 結晶方位面に合わせる
必要がある。つまり、特定の結晶面に合わせてすだれ状
電極を形成し、弾性表面波の伝搬面とその特定の結晶面
を一致させなければならない。
【0007】ところが、KNbO3 単結晶のバルク材料
を用いようとすると、ある特定の結晶方位を得るために
は、予め結晶方位が判明しているKNbO3 単結晶から
特定の結晶面を切り出すという非常に煩雑な操作が必要
であった。また、KNbO3単結晶自体も結晶成長が難
しく、工業材料として非常に高価なものであった。これ
らの理由から、KNbO3 単結晶のバルク材料は弾性表
面波素子の材料として極めて使い難いものであった。
【0008】そこで、KNbO3 単結晶を、バルク材料
ではなく、何らかの下地の上に積層した薄膜として使用
するという考えに至ることになる。しかしながら、上記
2つの公報に開示された技術では、KNbO3 を積層す
る下地はダイヤモンド層やIII−V族化合物膜に限定さ
れており、これらダイヤモンド層やIII−V族化合物膜
は格子整合性を持たないため、たとえこれらの下地の上
にKNbO3 を積層したところでそのKNbO3 は下地
層と格子整合されない。そのため、ダイヤモンド層やII
I−V族化合物膜上には特定の結晶面を持つKNbO3
単結晶が成長することはなく、電気機械結合係数K2
値を制御し、所望の値を得ることは不可能である。
【0009】ところで、KNbO3 単結晶の薄膜は、レ
ーザーアブレーション法、スパッタリング法、CVD
法、ゾル−ゲル法など、各種の成膜法を用いることによ
って作製が可能である。しかしながら、KNbO3 自体
の、特にKと水分との反応性が高く、均質で平滑な表面
を有する薄膜を得ることが困難なため、圧電特性が安定
せず、特に、KNbO3 単結晶を使用する場合の最大の
利点である大きな電気機械結合係数K2 の値がなかなか
再現されない、という欠点を持っていた。
【0010】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたものであって、単結晶バルク材料から特定の結晶
面を切り出すような煩雑な操作を必要とせず、また、K
NbO3 単結晶が持つ良好な圧電性能を損なうことな
く、高効率化・広帯域化が可能で低コスト、かつ、成膜
の再現性に優れた弾性表面波素子を提供することを目的
とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の弾性表面波素子は、一般式がK1-xx
bO3 で表される単結晶が成長するようなバルク材料か
らなる下地基板と、この下地基板上に積層されたK1-x
xNbO3 単結晶からなる圧電体層と、この圧電体層
の上面または下面に設けられた電極層、を有する構成と
した。なお、ここで、ZはKとFrを除く周期律1族の
元素、すなわちLi、Na、Rb、Csのいずれかのこ
とであり、xは0.0001≦x≦0.5の範囲内の数
値を示している。
【0012】言い換えると、本発明の技術思想は、
(1)K1-xxNbO3 単結晶をバルクの形態ではなく
薄膜の形態で圧電体層として用いること、(2)KNb
3 単結晶の持つ高い圧電性能を維持しながらも薄膜表
面の平滑性を改善するために、KNbO3 単結晶中のK
の一部を他の周期律1族の元素に置換したこと、(3)
1-xxNbO3 単結晶を薄膜として積層する際にK
1-xxNbO3 単結晶が自ずと特定の結晶面を持つよう
に結晶成長するような、いわばK1-xxNbO3 に対す
る格子整合性が良好な下地材料を見い出したこと、にあ
る。なお、Kを他の周期律1族の元素に置換する程度
は、KNbO3 単結晶の圧電性を維持し得る範囲という
点から決定されるため、あくまでもKが主体であり、そ
の範囲が0.0001≦x≦0.5(0.01%〜50
%)である。
【0013】したがって、上記(3)のような下地材料
を用いることによって、その上に成長するK1-xxNb
3 が特定の結晶面を持つ単結晶となり、その結晶面を
弾性表面波の伝搬面とすることができる。その結果、こ
の弾性表面波素子は大きな電気機械結合係数K2 を持つ
ことになるため、広帯域化、高効率化を図ることができ
る。また一般に、このK1-xxNbO3 はKNbO3
比べて水分との反応性が低いため、膜の均質性と膜表面
の平滑性が向上し、大きな電気機械結合係数K2 の値を
再現性良く得ることができる。膜の均質性と膜表面の平
滑性の改善には、Zの元素として上に列挙したもののう
ち、Naが特に有効である。なお、K1-xxNbO3
結晶からなる圧電体層の厚さは、50〜5000nm程
度の範囲とすることが望ましい。
【0014】また、上記結晶面に関して具体的に言え
ば、より大きな電気機械結合係数K2を得るためには、
特に、下地基板としてK1-xxNbO3 単結晶のX軸を
含む全ての結晶面が成長するようなバルク材料を用いる
ことが望ましい。その場合、SrTiO3、SrSn
3、SrZrO3、SrMoO3、SrHfO3、BaM
oO3、MgO、Pt、MgAl24、KTaO3、Ga
As、Siから選ばれる少なくとも1つ以上の単結晶化
合物を用いることができる。なお、図6に示したよう
に、K1-xxNbO3 単結晶はK原子の位置が一定の割
合(x)でZ原子に置き換わった斜方晶であり、X軸を
a(Naの場合、5.512Å)の稜方向、Y軸をc
(Naの場合、3.885Å)の稜方向、Z軸をb(N
aの場合、5.577Å)の稜方向と規定する。
【0015】ここで、下地基板の材料として、「K1-x
xNbO3 単結晶のX軸を含む全ての結晶面が成長す
るようなバルク材料」という表現を用いたのは、以下の
ような意味である。図7はKNbO3 単結晶バルク材料
の回転Y板(Y板とは、単位格子a(Kの場合、5.6
95Å)とb(Kの場合、5.721Å)の各稜を含む
平面をいう)の回転角θと電気機械結合係数K2 の関係
を示すものである。回転Y板の回転角θとは、図6に示
すように、回転Y板、つまり(001)面をX軸を中心
として矢印Aの向きに回転させた際の回転角θのことで
あり、(001)面自体は回転角θ=0°である。図7
に示すように、KNbO3 の電気機械結合係数K2
0.53(53%)と最大値を示すのは回転角θ=0°
の時であるが、回転角θ=90°((010)面に相
当)でも電気機械結合係数K2 は0.2(20%)前後
の値が得られ、LiNbO3 のK2 =0.055に比べ
れば充分大きい。このデータはあくまでもKNbO3
結晶に関するものであるが、この単結晶中のKの一部を
置換したK1-xxNbO3 単結晶も同様の傾向を示すと
考えられる。したがって、本発明においては、K2 の値
が従来のLiNbO3 に比べて高い値を取るような全て
の結晶面を含む表現として、(001)面をX軸を中心
として任意の角度に回転させた面、すなわち「X軸を含
む全ての結晶面」という表現を用いた。
【0016】以上に挙げたSrTiO3、SrSnO3
SrZrO3、SrMoO3、SrHfO3、BaMo
3、MgO、Pt、MgAl24、KTaO3、GaA
s、Si等の材料は、K1-xxNbO3 単結晶に対する
格子整合性を元来有している。したがって、これらの化
合物を下地基板に用いさえすれば、その上のK1-xx
bO3 単結晶を特定の結晶面を持つように成長させるこ
とができるのである。例えばSrTiO3 を用いた場
合、SrTiO3 の結晶面を(100)面にすれば、そ
の上に成長するK1-xxNbO3 は(001)面とな
り、(001)面を弾性表面波の伝搬面とすることがで
きる。その結果、この弾性表面波素子は大きな電気機械
結合係数K2 を持つことになり、広帯域化、高効率化を
図ることができる。
【0017】また、下地基板全体を上記のような特性を
持つ単結晶バルク材料で構成することに代えて、下地基
板にSi、GaAs等の一般の半導体基板を用い、この
下地基板上にK1-xxNbO3 単結晶が成長するような
材料からなるバッファ層を積層し、そのバッファ層の上
にK1-xxNbO3 単結晶からなる圧電体層を積層する
構成としてもよい。なお、このバッファ層は、5〜10
00nm程度の厚さの範囲とすることが望ましい。この
構成の場合も、バッファ層として、上述したようなK
1-xxNbO3 単結晶のX軸を含む全ての結晶面が成長
するような材料を用いるのが効果的である。
【0018】さらに、上記の構成に加えて、下地基板と
バッファ層との間に、音速の大きな結晶材料からなる音
速バッファ層を設けてもよい。この音速の大きな結晶材
料としては、サファイヤ、BNから選ばれる少なくとも
1つ以上の結晶化合物、またはB4C を用いることがで
きる。このような音速バッファ層を設けた場合、弾性表
面波が伝搬する基板表面で弾性表面波の伝搬速度が増大
するため、上記(1)式中のvが大きくなり、使用周波
数fを大きくすることができる。すなわち、より高周波
帯域での使用に好適な弾性表面波素子用基板とすること
ができる。この構造とする場合、バッファ層の厚さを5
〜1000nm程度として音速バッファ層の厚さを10
0〜1000nm程度とすることが望ましい。音速バッ
ファ層の厚さがこれより小さくなると、弾性表面波の伝
搬速度の増大に寄与しなくなってしまうからである。
【0019】そして、上記全ての構成に加えて、上記圧
電体層上に例えばSiO2 からなる温度安定化層を積層
してもよい。この構成とした場合、圧電体層表面がSi
2層で覆われ、圧電体層と逆の温度係数を持つSiO
2 が圧電体層と電極層の熱膨張差によって圧電体層に生
じる歪みを緩和するため、弾性表面波素子の温度特性を
安定化することができる。このSiO2 からなる温度安
定化層の厚さは、100〜10000nm程度の範囲と
することが望ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)以下、本発
明の第1の実施の形態を図1を参照して説明する。図1
(a)、(b)は本実施の形態の弾性表面波素子を示す
図であり、本実施の形態の素子は入力信号から特定周波
数の信号を取り出す弾性表面波フィルタの例である。
【0021】図1(a)、(b)に示すように、SrT
iO3 等の単結晶バルク材料からなる下地基板12の上
に、K1-xNaxNbO3 単結晶(ただし、x:0.00
01≦x≦0.5)からなる圧電体層13が積層されて
いる。そして、圧電体層13の上面にAl等の金属から
なるすだれ状電極14a、14b(電極層)が形成され
ている。圧電体層13の厚さは500nm程度、電極1
4a、14bの厚さは20〜500nm程度である。な
お、圧電体層13の材料としては、K1-xNaxNbO3
の他、K1-xLixNbO3、K1-xRbxNbO3、K1-x
CsxNbO3を用いることができる。下地基板12の材
料としては、SrTiO3の他、SrSnO3、SrZr
3、SrMoO3、SrHfO3、BaMoO3、Mg
O、Pt、MgAl24、KTaO3、GaAs、Si
から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物を用いること
ができる。電極14a、14bの材料としては、Alの
他、Ti、Au、Ag、W、Cu等の金属およびこれら
の合金を用いることができる。
【0022】すだれ状電極14a、14bは、図1
(a)に示すように、処理すべき信号が入力される入力
側電極14aと、選択された特定周波数の信号のみを出
力する出力側電極14bからなり、これら電極14a、
14bが基板の両端に対向するように配置されている。
各電極14a、14bは多数対の電極指を有しており、
例えば弾性表面波の波長をλとしたとき、各電極指の幅
wはλ/4、対数が30、入力側電極14aと出力側電
極14b間の距離Lが50λ、である。
【0023】上記構成の弾性表面波フィルタ11は、下
地基板12上に、レーザーアブレーション法、スパッタ
リング法、CVD法、ゾル−ゲル法等により圧電体層1
3となるK1-xNaxNbO3 単結晶を成膜し、蒸着、ス
パッタリング法等によりAl膜を成膜した後、フォトリ
ソグラフィー技術を用いてAl膜をパターニングし、す
だれ状電極14a、14bを形成することによって、作
製することができる。
【0024】そして、この弾性表面波フィルタ11にお
いては、入力側電極14aに信号を入力すると、圧電体
層13の持つ圧電効果によって隣り合う電極指間に互い
に逆位相の歪みが生じ、基板表面に弾性波が励起され
る。励起された弾性波は基板表面を伝搬し、出力側電極
14bで高周波信号に変換され、取り出される。
【0025】本実施の形態の弾性表面波フィルタ11に
おいては、下地基板12にSrTiO3 等のK1-xNax
NbO3 単結晶に対する格子整合性を有する材料を用い
たことによって、圧電体層13をなすK1-xNaxNbO
3 単結晶が特定の結晶面、例えば(001)面を持つよ
うにすることができる。その結果、この弾性表面波フィ
ルタ11は大きな電気機械結合係数K2 を持つことにな
り、広帯域、高効率の弾性表面波フィルタとすることが
できる。さらに、K1-xNaxNbO3 はKNbO3 に比
べて水分との反応性が低いため、圧電体層13の材料に
1-xNaxNbO3 を用いたことで膜の均質性と膜表面
の平滑性が向上し、大きな電気機械結合係数K2 を再現
性良く得ることができる。
【0026】また、弾性表面波フィルタ11の製造工程
において、従来のようにKNbO3バルク単結晶を結晶
成長させたり、KNbO3 単結晶から(001)面を切
り出すような困難な作業が不要となり、レーザーアブレ
ーション法、スパッタリング法、CVD法、ゾル−ゲル
法等の薄膜形成技術を用いてK1-xNaxNbO3 圧電体
層13を容易に形成することができる。その結果、従来
に比べて製造コストの低減を図ることができる。
【0027】(第2の実施の形態)以下、本発明の第2
の実施の形態を図2を参照して説明する。図2は本実施
の形態の弾性表面波フィルタ21を示す断面図である
が、本実施の形態の弾性表面波フィルタが第1の実施の
形態のフィルタと異なる点は、下地基板上に設けたバッ
ファ層の上に圧電体層を積層した点である。
【0028】図2に示すように、Si等の下地基板22
上に、BaMoO3 等の単結晶材料からなるバッファ層
25、K1-xNaxNbO3 単結晶からなる圧電体層23
が順次積層されている。そして、圧電体層23の上面に
すだれ状電極24a、24b(電極層)が形成されてい
る。例えば、バッファ層25の厚さは20nm程度、圧
電体層23の厚さは500nm程度、である。なお、下
地基板22の材料としては、Siの他、GaAs等の一
般の半導体材料を用いることができる。また、圧電体層
23の材料は、第1の実施の形態における圧電体層とし
て用いた種々の単結晶材料を用いることができる。バッ
ファ層25の材料は、BaMoO3の他、MgO、P
t、MgAl24、KTaO3 から選ばれる少なくとも
1つ以上の単結晶化合物、もしくはSiNx を用いるこ
とができる。電極24a、24bの材料は第1の実施の
形態と同様の金属を用いることができる。
【0029】本実施の形態の弾性表面波フィルタ21に
おいても、大きな電気機械結合係数K2 を持つことで高
効率の弾性表面波フィルタが得られる、膜の均質性と膜
表面の平滑性に優れた弾性表面波フィルタが得られる、
という第1の実施の形態と同様の効果を奏することがで
きる。さらに、本実施の形態の場合、第1の実施の形態
と異なり、SrTiO3 等の単結晶バルク材料を用意す
る必要がなく、BaMoTiO3 等の材料を薄膜状にし
て一般的な半導体基板の上に形成すればよいので、トラ
ンジスタIC等の周辺回路素子と集積化を図ることがで
き、小型で軽量なモノリシック素子を実現することがで
きるという利点をも有している。
【0030】(第3の実施の形態)以下、本発明の第3
の実施の形態を図3を参照して説明する。図3は本実施
の形態の弾性表面波フィルタ31を示す断面図である
が、本実施の形態の弾性表面波フィルタが第1、第2の
実施の形態のフィルタと異なる点は、下地基板上に音速
バッファ層を設け、その上にバッファ層、圧電体層を順
次積層した点である。
【0031】図3に示すように、Si等の下地基板32
上に、サファイヤ等の音速の大きな材料からなる音速バ
ッファ層36、BaMoO3 等の単結晶材料からなるバ
ッファ層35、K1-xNaxNbO3 単結晶からなる圧電
体層33が順次積層されている。そして、圧電体層33
の上面にすだれ状電極34a、34b(電極層)が形成
されている。例えば、音速バッファ層36の厚さは10
0nm程度、バッファ層35の厚さは20nm程度、圧
電体層33の厚さは500nm程度、である。なお、音
速バッファ層36に用いる材料としては、サファイヤの
他、BN 、B4C等を用いることができる。また、圧電
体層33、下地基板32、バッファ層35、電極34
a、34bの材料は第2の実施の形態と同様のものを用
いることができる。
【0032】特に、本実施の形態の弾性表面波フィルタ
31の場合、音速バッファ層36を設けたことにより弾
性表面波が伝搬する基板表面で弾性表面波の伝搬速度が
増大するため、使用周波数を大きくすることができ、高
周波帯域での使用に好適な弾性表面波フィルタとするこ
とができる。
【0033】(第4の実施の形態)以下、本発明の第4
の実施の形態を図4を参照して説明する。図4は本実施
の形態の弾性表面波フィルタ41を示す断面図である
が、本実施の形態の弾性表面波フィルタが第1〜第3の
実施の形態のフィルタと異なる点は、圧電体層上に温度
安定化層を形成した点である。
【0034】図4に示すように、SrTiO3 等の単結
晶バルク材料からなる下地基板42の上にK1-xNax
bO3 単結晶からなる圧電体層43が積層され、その上
面にAl等からなるすだれ状電極44a、44b(電極
層)が形成されている。そして、電極44a、44bの
上方を含む圧電体層43上の全面を覆うようにSiO 2
からなる温度安定化層47が形成されている。この温度
安定化層47の厚さは1000nm程度、圧電体層43
の厚さは500nm程度、である。
【0035】本実施の形態の弾性表面波フィルタ41の
場合、圧電体層43表面がSiO2からなる温度安定化
層47で覆われているが、SiO2 がK1-xNaxNbO
3 と逆の温度係数を持ち、圧電体層43と電極44a、
44bとの熱膨張差によって圧電体層43に生じる歪み
を緩和するため、弾性表面波フィルタの温度特性を安定
化することができる。
【0036】なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態
に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない
範囲において種々の変更を加えることが可能である。例
えば上記実施の形態で挙げた各層の厚さ、電極の寸法等
の具体的な数値はほんの一例にすぎず、適宜設計変更が
可能である。そして、電極に関しては、圧電体層の上面
側に設ける代わりに、圧電体層の下面側(下地基板やバ
ッファ層との界面側)に設けてもよい。また、第4の実
施の形態として、第1の実施の形態の積層構造の上にS
iO2 層を設けた例を示したが、第2、第3の実施の形
態の積層構造の上にSiO2 層を設けてもよいことは勿
論である。さらに、弾性表面波素子として弾性表面波フ
ィルタの例を挙げたが、電極の構成等を代えることによ
って、フィルタ以外にも弾性表面波コンボルバ等をはじ
めとする種々の通信機能素子に本発明を適用することが
できる。
【0037】
【実施例】次に、本発明の効果を実証する実施例につい
て具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明の
一態様を示すものであって、この発明を限定するもので
はなく、本発明の技術範囲において適宜変更可能であ
る。
【0038】(実施例1)実施例1は、上記第1の実施
の形態の構造を持つ弾性表面波フィルタを用いてSrT
iO3下地基板を用い、Kに対するNaの置換割合を変
化させた場合の素子特性上の影響、およびKNbO3
電体層を用いた場合と比較した影響を調べたものであ
る。実施例1で用いた試料は、図5に示すように、入力
側電極54a、出力側電極54bともに開口長が67.
5μm(18λ)で一定のすだれ状Al電極(正規型電
極)であり、測定用のプロービングパッド58を設け
た。弾性表面波の波長λを3.75μmとして、各電極
指の幅を0.9375μm(λ/4)、対数を30、入
力側電極54aと出力側電極54b間の距離を0.18
75mm(50λ)と0.375mm(100λ)の2
種類、とした。そして、Kに対するNaの置換割合
(x)を変えた4種類の試料(構成例1:x=0.00
01,構成例2:x=0.001,構成例3:x=0.
1,構成例4:x=0.5)を作製した。具体的な材料
の組み合わせは表1に示す通りである。
【0039】ここで、K1-xNaxNbO3 の成膜にはゾ
ル−ゲル法を用いた。ゾルゲル液の作製方法と成膜条件
は次の通りである。予め、脱水蒸留した溶媒(メトキシ
エタノール)約150mlに、エトキシカリウム、エト
キシナトリウム、ペンタエトキシニオブの各化合物(全
て高純度化学(株)製)を溶解させた。この溶液を12
4℃(溶媒の沸点)で24時間還流した。その後、必要
に応じ、金属の価数と等モルの配位子を加え、さらに1
24℃で6時間加熱撹拌(還流)し、液を安定化させ
た。反応が終了した時点で室温まで冷却し、溶媒を加
え、濃度調整し、最終的に0.2モル/Lの4種類のN
a置換KNbO3 ゾルゲル液(K1-xNaxNbO3:x
=0.0001,0.001,0.1,0.5)を得
た。なお、K1-xNaxNbO3 のxを変えるには、個々
のゾルゲル液をxの値に応じて混合比を変えてミキシン
グしている。例えばx=0.0001の場合、エトキシ
カリウムを0.9999モル、エトキシナトリウムを
0.0001モル、ペンタエトキシニオブを1.000
0モルとする。また、成膜は、各々に調整されたゾルゲ
ル液をスピンナーによりSrTiO3単結晶基板上に塗
布し、溶媒を150℃で乾燥後、大気中で800℃の温
度で焼成した。得られた膜厚は500nmであった。
【0040】また、比較例として、同じSrTiO3
結晶基板の上にKNbO3 を形成したもの(比較例1)
を作製した。
【0041】各試料につき、表1に示す伝搬方向におけ
る弾性表面波の伝搬速度v、電気機械結合係数K2 、素
子表面粗さRaを測定した。伝搬速度vは、入力側と出
力側の電極間距離Lの異なる2つの試料(Lが50λと
100λ)の入力側電極に高周波パルスをそれぞれ入力
し、その出力側電極への到着時間差Δtを測定し、伝搬
路長の差ΔL(=50λ)から次式により求めた。測定
は25℃で行った。 v=ΔL/Δt ……(2)
【0042】電気機械結合係数K2 は、入力側と出力側
の電極間の伝搬路上をAlで被覆した試料を別に用意
し、Al被覆のない本試料とAl被覆した別試料に対し
て双方の入力側電極に同位相の連続波を入力した時の出
力側電極で得られる2つの出力信号の位相差Δφを測定
し、次式により求めた。 K2 =2・(vopen−vshort)/vopen =(2・vshort・Δφ)/(ω・d) ……(3) ここで、vopenはAlが被覆されていない試料での伝搬
速度、vshortはAlが被覆された試料での伝搬速度、
ωは入力信号の角速度、dはAlで被覆された部分の長
さ、である。測定は25℃で行った。
【0043】素子表面粗さRaは、触針式粗さ計(TE
NCOR社製P−1)を用い、スキャン速度10μm/
secで250μmの範囲の二乗平均粗さで評価した。
評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】この結果から明らかなように、構成例1〜
4の場合、電気機械結合係数K2 は3〜6%と大きな値
をとり、素子表面粗さRaが30〜100Åの値をとる
ことがわかった。また、K1-xNaxNbO3 中のNaの
置換割合を大きくする程、電気機械結合係数K2 が小さ
く、素子表面粗さRaが小さくなることがわかった。ま
た、比較例1の試料では、電気機械結合係数K2 は4%
であったが、素子表面粗さRaが160Åと構成例1〜
4に比べて大きい値であった。すなわち、構成例1〜4
の試料は、弾性表面波の伝搬面とK1-xNaxNbO3
結晶の特定の結晶面が一致し、かつ、素子表面の平滑性
が改良されたため、比較例1と同等以上の電気機械結合
係数K2 を持ち、広帯域で低損失な特性を有することが
わかった。
【0046】(実施例2)実施例1ではKと置換する元
素としてNaを用いたが、実施例2では他の置換元素を
用いた場合の効果を調べた。実施例2で用いた試料も素
子構造に関しては実施例1の試料と同一である。そし
て、K1-xxNbO3 中の置換元素(Z)として、Kと
Frを除く周期律1族の元素であるLi、Rb、Csを
用い、置換割合をx=0.001で一定とした3種類の
試料(構成例5:Z=Li,構成例6:Z=Rb,構成
例7:Z=Cs)を作製した。評価結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】この結果から明らかなように、置換元素と
してLi、Rb、Csを用いた構成例5〜7における電
気機械結合係数K2 は6%であり、置換元素としてNa
を用いた構成例2と同等の電気機械結合係数K2 を得る
ことができた。
【0049】(実施例3)実施例3は、置換元素をN
a、置換割合をx=0.001に固定した上で下地基板
の材料を変え、本発明の効果を調べたものである。実施
例3で用いた試料も素子構造に関しては実施例1の試料
と同一である。そして、置換元素をNa、置換割合をx
=0.001に固定し、下地基板を種々に変えた14種
類の試料(構成例2:SrTiO3(100),構成例
8:SrTiO3(110),構成例9:SrTiO
3(111),構成例10:SrSnO 3(110),構
成例11:SrZrO3(001),構成例12:Sr
MoO3(110),構成例13:SrHfO3(11
0),構成例14:BaMoO3(110),構成例1
5:MgO(100),構成例16:Pt(111),
構成例17:MgAl24(110),構成例18:K
TaO3(110),構成例19:GaAs(11
0),構成例20:Si(110))を作製した。一
方、比較例として下地基板にガラス基板を用いた試料
(比較例2)を作製した。評価結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】この結果から明らかなように、比較例2の
場合、K1-xNaxNbO3 との格子整合性を持たないガ
ラス基板上にK1-xNaxNbO3 を形成したことで特定
の結晶面が得られず、伝搬速度v、電気機械結合係数K
2 ともに測定不能であった。これに対して、構成例2お
よび構成例8〜20の場合、電気機械結合係数K2 は2
〜11%の値をとることがわかった。したがって、構成
例2および構成例8〜20の試料では、従来に比べて大
きい電気機械結合係数K2 が得られ、広帯域で低損失な
特性を有することがわかった。
【0052】(実施例4)実施例1〜3が下地基板バル
ク材料の上に直接圧電体層を形成したのに対し、実施例
4は、上記第2の実施の形態の構造を持つ弾性表面波フ
ィルタを用いて本発明特有のバッファ層を用いた場合の
効果を調べたものである。実施例4で用いた試料は電極
構造に関しては実施例1の試料と同一である。そして、
置換元素をNa、置換割合をx=0.001に固定した
上で、下地基板とバッファ層の組み合わせを代えた8種
類の試料(構成例21:BaMoO3/Si,構成例2
2:MgO/Si,構成例23:Pt/Si,構成例2
4:SiNx/Si,構成例25:MgAl24/S
i,構成例26:KTaO3/Si,構成例27:Ba
MoO3/GaAs,構成例28:BaMoO3/Al2
3)を作製した。具体的な材料の組み合わせは表4に
示す通りである。
【0053】例えば、構成例21の場合、K1-xNax
bO3 の成膜に実施例1と同じゾル−ゲル法を用い、B
aMoO3 の成膜にはレーザーアブレーション法を用い
た。BaMoO3 成膜条件は、ターゲット:BaMoO
3 、基板温度:650℃、使用レーザー:ArF(波
長:193nm)、レーザーパワー:4J/cm2 、1
5Hz、雰囲気(酸素):0.05Torr、膜厚:20n
m、成膜時間20分、とした。
【0054】各試料の評価項目は実施例1の場合と同一
である。評価結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】この結果から明らかなように、構成例21
〜28の場合には、電気機械結合係数K2 は2〜4%の
範囲で大きな値をとることがわかった。したがって、構
成例21〜28の試料は、弾性表面波の伝搬面とK1-x
NaxNbO3 単結晶の特定の結晶面が一致するため、
従来の薄膜圧電材料では得られない広帯域で低損失な特
性を有することがわかった。
【0057】(実施例5)実施例5は、上記第3の実施
の形態の構造を持つ弾性表面波フィルタを用いてバッフ
ァ層と下地基板の間に音速の大きなバッファ層を挿入し
た場合の効果を調べたものである。実施例5で用いた試
料も電極構造に関しては実施例1の試料と同一である。
そして、下地基板をSi(110)基板、バッファ層を
BaMoO3 (110)、圧電体層K1-xxNbO3
置換元素ZをNa、置換割合をx=0.001に固定し
た上で、音速バッファ層の種類を代えた3種類の試料
(構成例29:Al23,構成例30:BN,構成例3
1:B4C)を作製した。具体的な材料の組み合わせは
表5に示す通りである。また、音速バッファ層がない場
合の例として、比較例3(実施例4の構成例21と同
じ)を示した。
【0058】例えば、構成例29の場合、K1-xNax
bO3 の成膜に実施例1と同じゾル−ゲル法を用い、B
aMoO3 の成膜に実施例4と同じレーザーアブレーシ
ョン法を用い、Al23の成膜にはスパッタリング法を
用いた。Al23成膜条件は、ターゲット:Al23
基板温度:650℃、雰囲気圧:0.01Torr、O2
Ar:1/5、RFパワー:300W、成膜時間:30
分、膜厚:100nm、とした。
【0059】各試料の評価項目は実施例1の場合と同一
である。評価結果を表5に示す。
【0060】
【表5】
【0061】この結果から明らかなように、構成例29
〜31の場合、音速バッファ層がない比較例3と比べて
伝搬速度vが1.5〜2.5倍大きくなった。したがっ
て、構成例29〜31の試料は、比較例3の試料に比べ
て伝搬速度が大きくなったことにより、高周波帯域での
使用が可能であることがわかった。
【0062】(実施例6)実施例6は、上記第4の実施
の形態の構造を持つ弾性表面波フィルタを用いて本発明
特有の温度安定化層を用いた場合の効果を調べたもので
ある。実施例6で用いた試料も電極構造に関しては実施
例1の試料と同一である。そして、SrTiO3 基板上
にK1-xNaxNbO3 を積層し、さらに温度安定化層と
してSiO2 膜を積層した構成例32を作製した(表6
に示す通り)。温度安定化層がない場合の例として比較
例4(実施例1の構成例2と同じ)を示した。
【0063】構成例32の場合、K1-xNaxNbO3
成膜に実施例1と同じゾル−ゲル法を用い、SiO2
成膜にはスパッタリング法を用いた。SiO2 成膜条件
は、ターゲット:SiO2 、基板温度:650℃、雰囲
気圧:0.01Torr、O2 /Ar:1/5、RFパワ
ー:300W、膜厚:100nm、成膜時間10分、と
した。
【0064】各試料の評価項目として、実施例1〜5の
伝搬速度vと電気機械結合係数K2に加え、周波数温度
係数TCFを測定した。周波数温度係数TCFは、温度
TをΔTだけ変化させた時の遅延線型オシレータの発振
周波数fの変化Δfを測定し、次式により求めた。 TCF=(1/f)・(Δf/ΔT) ……(4) なお、測定は10℃から65℃の範囲で行った。評価結
果を表6に示す。
【0065】
【表6】
【0066】この結果から明らかなように、温度安定化
層を持つ構成例32は、温度安定化層を持たない比較例
4と比べて、伝搬速度はやや小さくなるものの、電気機
械結合係数K2 は大きい値を維持しつつ、周波数温度係
数TCFをはるかに小さくできることがわかった。した
がって、構成例32の試料は、比較例4の試料に比べて
温度特性を安定化できることがわかった。
【0067】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
弾性表面波素子によれば、下地基板にK1-xxNbO3
単結晶に対する格子整合性を持つ材料を用いたことでK
1-xxNbO3 単結晶が特定の結晶面を持つように成長
させることができるため、弾性表面波素子が大きな電気
機械結合係数K2 を持つことになり、広帯域化、高効率
化を図ることができる。さらに、K1-xxNbO3 はK
NbO3 に比べて水分との反応性が低いため、圧電体層
材料にK1-xxNbO3 を用いたことで膜の均質性と膜
表面の平滑性が向上し、大きな電気機械結合係数K2
再現性良く得ることができる。また、素子を製造する際
には、周知の薄膜形成技術を用いてK1-xxNbO3
電体層を容易に形成でき、従来に比べて製造コストを低
減することができる。そして、音速バッファ層を下地基
板上に設けることにより、高周波帯域化を図ることがで
きる。さらに、K1-xxNbO3 圧電体層上に温度安定
化層を設けることにより、温度特性の安定化を図ること
ができる。一方、K1-xxNbO3 圧電体層、バッファ
層、音速バッファ層、温度安定化層等を一般的な半導体
基板の上で薄膜として使用することで、トランジスタI
C等の周辺回路素子と集積化を図ることができ、小型で
軽量な弾性表面波素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態の弾性表面波フィ
ルタを示す、(a)斜視図、(b)(a)のB−B線に
沿う断面図、である。
【図2】 本発明の第2の実施の形態の弾性表面波フィ
ルタを示す断面図である。
【図3】 本発明の第3の実施の形態の弾性表面波フィ
ルタを示す断面図である。
【図4】 本発明の第4の実施の形態の弾性表面波フィ
ルタを示す断面図である。
【図5】 本発明の実施例で用いた試料の弾性表面波フ
ィルタを示す平面図である。
【図6】 本発明で圧電体層として用いるK1-xxNb
3 の結晶面を示す図である。
【図7】 KNbO3 単結晶の回転Y板における回転角
と電気機械結合係数の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
11,21,31,41 弾性表面波フィルタ 12,22,32,42 下地基板 13,23,33,43 圧電体層 14a,14b,24a,24b,34a,34b,4
4a,44b,54a,54b すだれ状電極(電極
層) 25,35 バッファ層 36 音速バッファ層 47 温度安定化層
フロントページの続き (72)発明者 鈴木 幸俊 静岡県浜松市中沢町10番1号 ヤマハ株式 会社内 (72)発明者 岡田 升宏 静岡県浜松市中沢町10番1号 ヤマハ株式 会社内 (72)発明者 今西 正夫 静岡県浜松市中沢町10番1号 ヤマハ株式 会社内 Fターム(参考) 5J097 AA06 AA19 AA21 AA23 AA29 AA32 BB08 BB11 EE08 EE10 FF01 FF02 HA03 HB08 KK06 KK09

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式がK1-xxNbO3 (Z:KとF
    rを除く周期律1族の元素、x:0.0001≦x≦
    0.5の範囲の数値)で表される単結晶が成長するよう
    なバルク材料からなる下地基板と、該下地基板上に積層
    された前記K1- xxNbO3 単結晶からなる圧電体層
    と、該圧電体層の上面または下面に設けられた電極層、
    を有することを特徴とする弾性表面波素子。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の弾性表面波素子におい
    て、 前記下地基板が、前記K1-xxNbO3 単結晶のX軸を
    含む全ての結晶面が成長するようなバルク材料からなる
    ことを特徴とする弾性表面波素子。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の弾性表面波素子におい
    て、 前記下地基板のバルク材料が、SrTiO3、SrSn
    3、SrZrO3、SrMoO3、SrHfO3、BaM
    oO3、MgO、Pt、MgAl24、KTaO3、Ga
    As、Siから選ばれる少なくとも1つ以上の単結晶化
    合物からなることを特徴とする弾性表面波素子。
  4. 【請求項4】 下地基板と、該下地基板上に積層され、
    一般式がK1-xxNbO3 (Z:KとFrを除く周期律
    1族の元素、x:0.0001≦x≦0.5の範囲の数
    値)で表される単結晶が成長するような材料からなるバ
    ッファ層と、該バッファ層上に積層された前記K1-xx
    NbO3 単結晶からなる圧電体層と、該圧電体層の上面
    または下面に設けられた電極層、を有することを特徴と
    する弾性表面波素子。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の弾性表面波素子におい
    て、 前記バッファ層が、前記K1-xxNbO3 単結晶のX軸
    を含む全ての結晶面が成長するような材料からなること
    を特徴とする弾性表面波素子。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の弾性表面波素子におい
    て、 前記バッファ層の材料が、BaMoO3、MgO、P
    t、MgAl24、KTaO3 から選ばれる少なくとも
    1つ以上の単結晶化合物、もしくはSiNx からなるこ
    とを特徴とする弾性表面波素子。
  7. 【請求項7】 請求項4ないし6のいずれかに記載の弾
    性表面波素子において、 前記下地基板と前記バッファ層との間に、音速の大きな
    材料からなる音速バッファ層が設けられたことを特徴と
    する弾性表面波素子。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の弾性表面波素子におい
    て、 前記音速の大きな材料が、サファイヤ、BNから選ばれ
    る少なくとも1つ以上の結晶化合物、もしくはB4C か
    らなることを特徴とする弾性表面波素子。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれかに記載の弾
    性表面波素子において、 前記圧電体層と逆の温度係数を持ち、前記圧電体層と前
    記電極層の熱膨張差によって圧電体層に生じる歪みを緩
    和する材料からなる温度安定化層が、前記圧電体層上に
    積層されたことを特徴とする弾性表面波素子。
  10. 【請求項10】 請求項9に記載の弾性表面波素子にお
    いて、 前記歪みを緩和する材料がSiO2 であることを特徴と
    する弾性表面波素子。
  11. 【請求項11】 請求項1ないし10のいずれかに記載
    の弾性表面波素子において、 前記K1-xxNbO3 単結晶中のZがNaであることを
    特徴とする弾性表面波素子。
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