JP3704017B2 - 弾性表面波素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波特有の作用を用いたフィルタ、コンボルバ等の弾性表面波素子に関し、特に、KNbO3 単結晶を圧電体層として用い、電気機械結合係数や挿入損失によって表される伝送特性が優れた弾性表面波素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
弾性表面波素子とは、電気信号を弾性体表面を伝播する弾性表面波(Surface Acoustic Wave )に変換し、特定周波数の信号を取り出すものである。この弾性表面波が圧電体により効率良く励振、受信できることが見い出されて以来、電磁波にはない弾性表面波の優れた性質を利用してフィルタ、コンボルバ等をはじめとする種々の信号機能素子への応用が研究され、広い分野で実用化されている。
図10に示すように、この弾性表面波素子141は、従来、LiNbO3 、LiTaO3 等からなる圧電体単結晶のブロック143上に、電気信号と弾性表面波との間の変換器として機能する櫛歯状電極(Inter-digital Transducer)114a.114bを形成することによって作製されていた。
【0003】
この弾性表面波素子141は、弾性体表面を伝播する弾性波の音速vと櫛歯状電極114a.114bの電極幅wとによって適用周波数fが決定される。その関係は下記式(1)によって表される。
f=v/λ=v/4w (λは弾性表面波の波長) …… (1)
すなわち、電極幅wが小さく、音速vが大きい程、高周波帯域で使用できることになる。そこでこれを、今後の通信分野等で要求されるGHz オーダーの高い周波数帯域で用いようとすれば、電極幅に関しては微細加工技術の限界があるので、音速の大きい弾性体材料を選択する必要がある。音速の大きい弾性体材料の一例としてダイヤモンドがあり、特開昭64−62911号公報には、ダイヤモンド層の上に圧電体層、電極を順次形成した構造を持つ弾性表面波素子が提案されている。
【0004】
一方、弾性表面波素子の弾性体材料に求められる他の条件として、電気信号と弾性表面波の間の変換効率を示す電気機械結合係数K2 が大きいことが挙げられる。電気機械結合係数K2 が大きい程、伝送効率の良い弾性表面波素子が得られる。そこで電気機械結合係数K2 が大きい素材が探索された結果、圧電性磁器材料として知られるKNbO3 が極めて大きな電気機械結合係数K2 を示すことが見出された。このKNbO3 の単結晶は、従来最も大きな電気機械結合係数K2 を有するとされていたLiNbO3 に比べて、より大きな電気機械結合係数値が得られることが確認され、特に、KNbO3 単結晶の特定の結晶面である(001)面の〈100〉軸方向を用いた場合には、LiNbO3 のK2 =0.055に対してK2 =0.53と約10倍の値が得られた(「KNbO3 圧電体単結晶を用いた超高結合弾性表面波の伝播特性」、山之内和彦他、日本学術振興会弾性波素子技術第150委員会第50回研究会資料、pp27-31(1996.11.27))。
【0005】
なお、特開平7−95006号公報には、基板上にIII −V族化合物膜が形成され、更にその上に3種以上の元素からなる複合酸化物膜が形成された圧電体基板を有する弾性表面波素子が開示されている。そして、上記複合酸化物膜の例としてKNbO3 が記載されている。ただし、この公報では、KNbO3 の電気機械結合係数K2 については何ら言及しておらず、ただ単に3種以上の元素で構成される複合酸化物膜の一例として挙げているにすぎない。
【0006】
前記のように、弾性表面波素子の圧電体材料としてKNbO3 単結晶を用いれば、電気機械結合係数K2 が大きく、伝送効率の良い弾性表面波素子が実現できる可能性が認められた。しかしそれと同時に、KNbO3 単結晶におけるK2 の値は、その結晶構造中における弾性表面波の伝播方向に応じて種々に変化することも判明した。そこで、所望のK2 値を有する弾性表面波素子を作製しようとする場合、あるいはK2 の値を制御しようとする場合には、電極を形成する面における弾性表面波の伝播方向とKNbO3 単結晶の配向方向とを整合させる必要がある。つまり、特定の配向方向を有する結晶面上に、その配向方向に合わせて櫛歯状電極を形成する必要がある。
【0007】
ところで、ある特定の配向方向を有する結晶面を得るためには、予め結晶方向が判明しているKNbO3 単結晶のブロックから図6に示すように、特定の角度θで結晶面をカットオフする(切り出す)という非常に煩雑な操作が必要になる。また、KNbO3 単結晶自体も大きいブロックに成長させることは困難で、工業材料として非常に高価なものである。これらの理由から、KNbO3 単結晶を基材とする弾性表面波素子を実用化することは極めて困難であった。
【0008】
そこで、KNbO3 単結晶の特定面を結晶ブロックからカットオフするのではなく、何らかの下地基板の上に成膜した薄膜として形成する方法が探索された。しかし、ガラス、Pt、Al23、GaAs、Si等の一般的な基板材料の上に直接KNbO3 をスパッタリングやゾルゲル法等により成膜しても、上下層の結晶どうしの格子整合がとれないため、KNbO3 の単結晶はエピタキシャルに成長しない。この問題を解決するために、PIONEER R&D Vol.7 No.1,「SHG用非線形光学結晶薄膜の気相成長」(文献1)およびMat. Res. Soc. Symp. Proc.Vol.271.1992 Materials Research Society,"THE GROWTH OF SINGLE CRYSTAL-LIKE AND POLYCRYSTAL KNbO3 FILMS VIA SOL-GEL PROCESS"(文献2)は、図7に示すように、ペロブスカイト型の結晶構造を持つSrTiO3単結晶のブロックから切り出した下地基板112の面上に有機金属気相成長法(MOCVD法)またはゾルゲル法を用いてKNbO3 薄膜からなる圧電体層113を成膜し、この上に入力側電極114aおよび出力側電極114bを形成した弾性表面波素子111を開示している。また特開平11−116397号公報は、図8に示すように、LiTaO3 単結晶のブロックから切り出した下地基板122の面上に、例えば物理蒸着法(PVD法)によりKNbO3 薄膜からなる圧電体層113を成膜し、この上に入力側電極114aおよび出力側電極114bを形成した弾性表面波素子121を開示している。
【0009】
しかしこれらは、いずれも特性的には優れた結果が得られるものの、下地基板112または122として用いるSrTiO3 にせよLiTaO3 にせよ、いずれも大きな(大口径の)単結晶としてブロックに成長させることが難しいために高価であり、実用化は困難であった。また下地基板112または122と圧電体層113との結晶配向の整合性を高めるためには下地基板のカットオフ等の煩雑な加工も必要であった。
【0010】
そこで本発明者らは先に、特願平11−80553号において、図9に示すように、SrTiO3 、MgO、Pt、Al23、GaAs、Siなどのブロックからなる下地基板132と、この下地基板上に成膜された一般式SrZO3 で表されるSrTiO3 、SrZrO3 、SrMoO3 、SrSnO3 、SrHfO3 等のペロブスカイト型化合物からなるバッファ層135と、このバッファ層上に成膜されたKNbO3 単結晶からなる圧電体層113と、この圧電体層の上面または下面に設けられた入力側電極114a,出力側電極114bとを有する弾性表面波素子131を提供した。
【0011】
前記特願平11−80553号に提供した弾性表面波素子131は、ペロブスカイト型の結晶構造を有するKNbO3 単結晶からなる圧電体層113に接する下層として、格子整合性が良好な一般式SrZO3 で表されるペロブスカイト型化合物を用いたことにより、比較的容易に入手し得る下地基板132を用いながら、結晶配向特性の優れたKNbO3 圧電体層113が薄膜として得られ、この結果、電気機械結合係数K2 が向上した弾性表面波素子が得られるようになった。しかも、この弾性表面波素子は、ゾルゲル法、レーザアブレーション法、スパッタリング、CVD法等、従来から一般に用いられている成膜技術が容易に適用できるので、単結晶ブロックのカットオフ等に比べて遙かに容易かつ低コストに製造でき、更に、前記KNbO3 圧電体層113の上に温度安定化層(図示せず)を成膜すれば、温度変化に対する周波数安定性にも優れた弾性表面波素子が得られる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし前記特願平11−80553号に開示した技術は、あくまでバッファ層135となるSrZO3 化合物が下地基板132上に良好なペロブスカイト型の結晶格子を形成することが前提となる。しかし実際には、基板材料として通常用いられ安価なAl23、Si等の上にSrZO3 化合物を成膜しても、常に良好なペロブスカイト型の結晶格子を形成するとは限らず、電気機械結合係数および挿入損失によって示される伝送特性が必ずしも満足できるものではなかった。
本発明は前記の課題を解決するためになされたものであって、従ってその目的は、安価な下地基板を用い、しかも優れた電気機械結合係数および挿入損失を有する弾性表面波素子を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために本発明は、Al の単結晶からなる下地基板と、この下地基板上に成膜されたLiTaO 結晶からなるバッファ層と、このバッファ層上に成膜されたKNbO 単結晶からなる圧電体層と、この圧電体層に接して配設された電極とを有し、Al 結晶面(11−20)からの傾斜角が0.5°〜5°となるように前記下地基板がカットオフされてなることを特徴とする弾性表面波素子を提供する。
【0014】
本発明の前記弾性表面波素子は、KNbO3 単結晶を良好にエピタキシャル成長させることができるLiTaO3 結晶を、その結晶格子が1方向に配向した薄膜として下地基板上に成膜してなるものであるので、高価なKNbO3 単結晶やLiTaO3 結晶のブロックを基板材料として用いることなく、またこれらの基板材料のブロックを配向面や配向軸を選んでカットオフする煩雑な加工も必要なく、しかも性能的にはKNbO3 単結晶単体や、LiTaO3 結晶を基板材料としてこの上にKNbO3 単結晶膜を成膜した場合と同様に優れた電気機械結合係数および挿入損失を得ることができる。
【0015】
また、下地基板として用いるAlの単結晶、すなわちサファイアは、前記バッファ層となるLiTaO 結晶がエピタキシャル成長可能な基板材料として6インチほどの大口径のものが生産されており、安価かつ容易に入手でき、また結晶格子整合効果も高い。
【0016】
さらに本発明は、下地基板であるAl結晶面(11−20)からの傾斜角が0.5°〜5°となるように前記下地基板がカットオフされていることを特徴としている。また、KNbO 単結晶の結晶面が(010)であることが好ましい。
カットオフ、すなわち結晶格子の特定の面から特定の傾斜角(オフセット角)を設けて面を切り出すことによって、圧電体層のKNbO 単結晶は、結晶格子が所定の方向に整列配向する、いわゆるエピタキシャル成長が促進され、この弾性表面波素子の電気機械結合係数K および挿入損失ILを大幅に改善することができる。このオフセット角は0.5°〜5°の範囲内とすることが好ましい。
【0017】
前記において圧電体層は、電界印加による分極処理を施されていることが好ましい。
これによって、この弾性表面波素子の電気機械結合係数K2 および挿入損失ILは更に向上する。電界印加は、加熱下に圧電体層の厚み方向に電圧を印加することによって行うことができる。この際の温度は100℃〜800℃の範囲内、電圧は100V 〜10kVの範囲内とすることが好ましい。
【0018】
前記において圧電体層の上層には、温度変化に対して周波数特性を安定化させる温度安定化層が設けられていることが好ましい。またこの温度安定化層は、SiO2 からなることが好ましい。
圧電体層の上層に温度安定化層を設けることによって周波数温度係数TCFが小さくなり、温度変化に抗して安定した周波数特性を有する弾性表面波素子が得られる。SiO2 層は、圧電体層の熱的歪みを緩和し弾性表面波素子の周波数温度係数TCFを小さくする効果がある。この温度安定化層の厚みは100nm〜10000nmの範囲内とすることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を実施例により図面を用いて具体的に説明する。ただし以下の実施例は本発明を何ら制限するものではない。
(実施例1)
図1は、本発明の弾性表面波素子の一実施例を示している。この弾性表面波素子11は、入力信号から特定周波数の信号を取り出す弾性表面波フィルタとしての機能を有している。
【0020】
図1に示すように、この弾性表面波素子11は、下地基板12上に順次、バッファ層13、および圧電体層14が成膜され、この圧電体層14に接して、間隙Lを隔てて櫛歯状の電極15a,15bが配設されてなっている。
下地基板12はAl23単結晶、すなわちサファイアのブロックからなり、成膜面におけるAl23単結晶の結晶面および櫛歯状電極の方向、すなわち弾性表面波の伝播する方向(図1のL方向)に垂直な方向での結晶軸の配向は(11−20)〈2−21〉となっている。この結晶面は通称サファイアA面と呼ばれ、LiTaO3 結晶がエピタキシャル成長可能な結晶格子を有している。
バッファ層13は、LiTaO3 結晶からなり、その結晶面および前記サファイア結晶軸〈2−21〉方向にエピタキシャル成長する結晶軸の配向は(11−20)〈2−21〉となっている。
圧電体層14は、KNbO3 単結晶からなり、その結晶面および前記サファイア,LiTaO3 結晶軸〈2−21〉方向にエピタキシャル成長する結晶軸の配向は(010)〈001〉となっている。
【0021】
実施例1の電極15a,15bは、いずれもAl薄膜からなり、かつ一対の櫛歯状の電極枝が間隙を隔てて組み合わされてなっている。本発明の弾性表面波素子において電極15a、15bは、Alの他に、例えばTi、Au、Ag、W、Cu等の金属およびこれらの合金を用いて形成することができる。
この電極15a、15bは、図1に示すように、処理すべき信号が入力される入力側電極15aと、選択された特定周波数の信号のみを出力する出力側電極15bとからなり、これら電極15a、15bは基板の両端に対向するように配置されている。それぞれの電極15a、15bは互いに対向する多数対の電極枝を有しており、例えば弾性表面波の波長をλとするとき、各電極枝の幅wはλ/4、電極枝対の数は30、入力側電極15aと出力側電極15bとの距離Lは50λとされる。
【0022】
この実施例1の弾性表面波素子11は、下地基板12上に順次、バッファ層13、および圧電体層14を成膜し、この圧電体層14の上に、間隙Lを隔てて櫛歯状の電極15a,15bを形成して作製した。
下地基板12の成膜面として、Al23単結晶の(11−20)面、すなわちサファイアA面を用いた。
バッファ層13は、イソプロポキシリチウムおよびペンタイソプロポキシタンタルを出発原料としてLiTaO3 のゾルゲル液を調製し、スピンコータを用いて前記の下地基板12上に塗布し、150℃で乾燥後に大気中800℃で焼成するゾルゲル法により成膜した。このバッファ層13の膜厚は100nmであった。圧電体層14は、エトキシカリウムおよびペンタエトキシニオブを出発原料としてKNbO3 のゾルゲル液を調製し、スピンコータを用いて前記バッファ層13上に塗布し、150℃で乾燥後に大気中800℃で焼成するゾルゲル法により成膜した。この圧電体層14の膜厚は2000nmであった。
入力側および出力側電極15a、15bは、前記圧電体層14上に蒸着、スパッタリング等によりAl膜を成膜した後、フォトリソグラフィー技術を用いてパターニングして形成した。
【0023】
上記の弾性表面波素子11は、下地基板12と圧電体層14との間にこれらの結晶格子の整合性を向上させるLiTaO3 結晶層がバッファ層13として設けられているので、バッファ層の結晶自体が良好にエピタキシャル成長しており、従ってこの上に成膜された圧電体層14のKNbO3 単結晶も1方向に配向しエピタキシャル成長していることが認められた。すなわち図3に示すように、上記の弾性表面波素子11についてθ−2θ法により測定したX線回折チャートは、ゾルゲル法により成膜した圧電体層14のKNbO3 単結晶が1方向に良好に配向していることを示している。また、下地基板12,バッファ層13および圧電体層14のそれぞれの結晶軸の配向についてはポールフィギュア法により測定したX線回折チャートにより確認した。
【0024】
この実施例1の弾性表面波素子11は、弾性表面波フィルタとして機能するものであり、入力側電極15aの対向する電極枝間に交流信号を入力すると、隣り合う電極枝間の圧電体層14の表面に圧電効果によって互いに逆位相の物理的歪みが生じ、基板表面に固有振動数を有する弾性波が励起される。励起された弾性波は基板表面を結晶軸に沿って伝播し、出力側電極15bの対向する電極枝間において前記弾性波の波長に対応した高周波電気信号に変換されて出力される。
【0025】
実施例1の弾性表面波素子について、入力信号に対する弾性波生成効率の指標となる電気機械結合係数K2 、および入・出力間の伝送エネルギー損失の指標となる挿入損失ILを測定した。
電気機械結合係数K2 の測定は、入力側と出力側の電極間の伝播路上をAlで被覆した試料を別に用意し、Al被覆のない供試試料とAl被覆した参照試料に対して双方の入力側電極に同位相の連続波を入力した時の出力側電極で得られる2つの出力信号の位相差Δφを測定し、次式により求めた。
Figure 0003704017
ここで、vopenはAlが被覆されていない供試試料での伝播速度、vshortはAlが被覆された参照試料での伝播速度、ωは入力信号の角速度、dはAlで被覆された部分の長さである。測定は25℃で行った。
なお、上記の伝播速度vは、入力側と出力側の電極間距離Lの異なる2つの試料(Lが50λと100λ)の入力側電極に高周波パルスをそれぞれ入力し、その出力側電極への到着時間差Δtを測定し、伝播路長の差ΔL(=50λ)から次式により求めた。測定は25℃で行った。
v=ΔL/Δt ……(3)
また挿入損失ILの測定は、50Ω系ベクトル・ネットワーク・アナライザ(HP8752C)により、整合回路を用いずに測定した。なお、挿入損失ILは次式により定義される。
IL=−20log10|S21| [dB] ……(4)
(Sij:Sパラメータ)
【0026】
実施例1について、中心周波数が1GHz となる電極パターンを用いて測定した電気機械結合係数K2 および挿入損失ILの測定結果を表1に示す。
実施例1の弾性表面波素子11は、圧電体層14のKNbO3 単結晶が1方向に良好に配向した結果として、電気機械結合係数K2 および挿入損失ILがいずれも良好な値を示した。
【0027】
(実施例2)
図2は、本発明の弾性表面波素子の他の一実施例を示している。この弾性表面波素子21は、入力信号から特定周波数の信号を取り出す弾性表面波フィルタとしての機能を有している。図2において、図1で説明した実施例1の弾性表面波素子と同様の要素は、図1と同じ番号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0028】
図2に示す実施例2の弾性表面波素子21は、下地基板12上に順次、バッファ層23、および圧電体層14が成膜され、この圧電体層14に接して、間隙Lを隔てて櫛歯状の電極15a,15bが配設されてなっている。
この実施例において前記下地基板12、圧電体層14および電極15a、15bは実施例1のものと同様である。
バッファ層23は、スパッタリングにより成膜されたLiTaO3 結晶の薄膜からなり、その結晶面および下地基板のサファイア結晶軸〈2−21〉方向にエピタキシャル成長する結晶軸の配向は(11−20)〈2−21〉となっている。
【0029】
この実施例2の弾性表面波素子21は、下地基板12上にバッファ層23をスパッタリングにより成膜した以外は実施例1と同様にして作製した。
バッファ層23は、LiTaO3 をターゲットとし、基板温度800℃、Ar+O2 混合ガス雰囲気中でスパッタリングを行って成膜した。このバッファ層23の膜厚は30nmであった。
【0030】
上記の弾性表面波素子21は、バッファ層13をゾルゲル法により成膜した実施例1と同様に、この上に成膜された圧電体層14のKNbO3 単結晶が1方向に配向し良好にエピタキシャル成長していることが認められた。すなわち図4に示すように、上記の弾性表面波素子21についてθ−2θ法により測定したX線回折チャートは、圧電体層14のKNbO3 単結晶が1方向に良好に配向していることを示している。また下地基板12、バッファ層23および圧電体層14のそれぞれの結晶軸の配向については、ポールフィギュア法により測定したX線回折チャートにより確認した。
この結果、実施例2の弾性表面波素子21は、実施例1と同様にして測定した電気機械結合係数K2 および挿入損失ILがいずれも良好な値を示した。測定結果を表1に示す。
【0031】
(比較例1)
実施例1に対する比較例1として、SrTiO3 (110)のブロックを下地基板として用い、この上にゾルゲル法を用いて膜厚100nmのSrSnO3 からなるバッファ層を成膜し、この上にゾルゲル法を用いて膜厚2000nmのKNbO3 単結晶(010)からなる圧電体層を成膜した弾性表面波素子を作製した。電気機械結合係数K2 および挿入損失ILを実施例1と同様にして測定した結果を表1に示す。
【0032】
(比較例2)
実施例1に対する比較例2として、Al23(1−102)を下地基板として用い、この上にゾルゲル法を用いて膜厚100nmのSrSnO3 からなるバッファ層を成膜し、この上にゾルゲル法を用いて膜厚2000nmのKNbO3 単結晶(010)からなる圧電体層を成膜した弾性表面波素子を作製した。電気機械結合係数K2 および挿入損失ILを実施例1と同様にして測定した結果を表1に示す。
【0033】
(比較例3)
実施例1に対する比較例3として、Al23(11−20)を下地基板として用い、この上にゾルゲル法を用いて膜厚100nmのSrSnO3 からなるバッファ層を成膜し、この上にゾルゲル法を用いて膜厚2000nmのKNbO3 単結晶(010)からなる圧電体層を成膜した弾性表面波素子を作製した。電気機械結合係数K2 および挿入損失ILを実施例1と同様にして測定した結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0003704017
【表2】
Figure 0003704017
【表3】
Figure 0003704017
【表4】
Figure 0003704017
【0035】
表1において、比較例1はSrTiO3 のブロックを下地基板を用いたことによって良好な電気機械結合係数K2 および挿入損失ILが得られたものであって、逆に、実施例1および実施例2に例示される本発明の弾性表面波素子は、安価なAl23 下地基板を用いながら、高価なSrTiO3 下地基板を用いた比較例1と同等またはそれ以上の特性を得ることを目的とするものであり、実施例1および実施例2はいずれもこの目的を達成していることが確認された。
比較例2および比較例3は下地基板としてそれぞれAl23(1−102)およびAl23(11−20)を用いているが、この場合にはバッファ層としてSrSnO3 を用いたことにより下地基板上のSrSnO3 の結晶軸が互いに直交する2方向に成長し、これに伴って圧電体層14のKNbO3 (010)面も〈100〉軸が2方向となり、弾性表面波が伝播する方向と伝播しない方向とが混在し、結果として電気機械結合係数K2 が小さくなり、特に比較例3では電気機械結合係数K2 も挿入損失ILも検知できない状態となった。表1ではこの結果を「なし」と表記した。
【0036】
(実施例3および実施例4)
実施例3および実施例4は、実施例1と同様の構成であるが、ただし下地基板であるAl23単結晶板の成膜面を(11−20)面から傾斜してカットオフした場合を示している。この内、実施例3は、Al23単結晶板の(11−20)面をオフセット角((11−20)面からの傾斜角)が1°となるように、また実施例4は、オフセット角が5°となるようにカットオフした。
実施例3および実施例4はそれぞれ、前記カットオフした下地基板の上に実施例1と同様にして順次、バッファ層13、および圧電体層14を成膜し、この上に電極15a,15bを形成して作製した。
【0037】
作製した実施例3および実施例4について、実施例1と同様にして電気機械結合係数K2 および挿入損失ILを測定した。結果を表2に示す。
表2から、実施例3および実施例4は下地基板にオフセット角を設けたことによって、他の構成は同一である実施例1に比べ、電気機械結合係数K2 および/または挿入損失ILが更に改善されていることがわかる。
【0038】
(実施例5〜実施例8)
実施例5〜実施例8は、それぞれ前記実施例1〜実施例4の弾性表面波素子について、圧電体層14に分極処理を施した場合を示している。
この分極処理は、弾性表面波素子の表裏面すなわち圧電体層14の上面および下地基板12の背面にそれぞれAuをスパッタリングして電極層を成膜し、試料を700℃に保持した状態で前記電極層に3kVの電圧を印加して行った。
作製した実施例5〜実施例8について、実施例1と同様にして電気機械結合係数K2 および挿入損失ILを測定した。結果を表3に示す。
【0039】
表3の結果から、実施例5〜実施例8の弾性表面波素子は、分極処理が施されていない実施例1〜実施例4に比べてそれぞれ電気機械結合係数K2 および挿入損失ILがいずれも大幅に改善されている。
【0040】
(実施例9)
図5は実施例9の弾性表面波素子31を示している。図5においてこの実施例9は、実施例5の弾性表面波素子の分極処理された圧電体層34の上層に温度安定化層36が成膜されている。温度安定化層36の成膜は、試料の圧電体層34上にSiO2 をターゲットとしてスパッタリングにより行った。SiO2 膜の膜厚は1000nmとした。
作製した実施例9について、実施例1と同様にして電気機械結合係数K2 および挿入損失ILを測定した。測定結果を表4に示す。
【0041】
また実施例9について、温度安定化層36を有しない以外は同様な構成を有する実施例5と比較して、周波数温度係数TCFを測定した。
この周波数温度係数TCFは、温度TをΔTだけ変化させた時の遅延線型オシレータの発振周波数fの変化Δfを測定し、次式により求めた。
TCF=(1/f)・(Δf/ΔT) ……(5)
すなわち、TCFの絶対値が小さい程、温度変化に対する周波数特性が安定していることを示す。なお、測定は10℃から65℃の範囲で行った。測定結果を表4に示す。
【0042】
表4の結果から、温度安定化層36は弾性表面波素子の電気機械結合係数K2 および挿入損失ILに悪影響を与えることなく、温度変化に対して周波数特性を安定化させていることがわかる。
【0043】
前記各実施例は、下地基板としてAl23の単結晶を用いている。Al23単結晶は下地基板として好ましい素材ではあるが、他にMgO、Pt、GaAs等を下地基板として用いても同様の結果が得られることを確認した。
【0044】
【発明の効果】
本発明の弾性表面波素子は、下地基板とKNbO3 圧電体層との間にLiTaO3 結晶からなるバッファ層が設けられているので、KNbO3 圧電体層の結晶格子の配向性が改善され、より高い伝送特性(電気機械結合係数K2 および/または挿入損失IL)を有する弾性表面波素子が安定的に得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を示す斜視図。
【図2】 本発明の他の一実施例を示す断面図。
【図3】 本発明の一実施例におけるX線回折チャート。
【図4】 本発明の他の一実施例におけるX線回折チャート。
【図5】 本発明の更に他の一実施例を示す断面図。
【図6】 結晶面のカットオフを示す概念図。
【図7】 弾性表面波素子の先行技術の一例を示す斜視図。
【図8】 弾性表面波素子の他の先行技術を示す断面図。
【図9】 弾性表面波素子の更に他の先行技術を示す断面図。
【図10】弾性表面波素子の更に他の先行技術を示す斜視図。
【符号の説明】
11…弾性表面波素子
12…下地基板
13…バッファ層
14…圧電体層
15a…入力側電極 15b…出力側電極
21…弾性表面波素子
23…バッファ層
31…弾性表面波素子
34…圧電体層
36…温度安定化層

Claims (5)

  1. Al の単結晶からなる下地基板と、この下地基板上に成膜されたLiTaO 結晶からなるバッファ層と、このバッファ層上に成膜されたKNbO 単結晶からなる圧電体層と、この圧電体層に接して配設された電極とを有し、Al 結晶面(11−20)からの傾斜角が0.5°〜5°となるように前記下地基板がカットオフされてなることを特徴とする弾性表面波素子。
  2. 前記KNbO 単結晶の結晶面が(010)であることを特徴とする請求項に記載の弾性表面波素子。
  3. 前記圧電体層が、電界印加による分極処理を施されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波素子。
  4. 前記圧電体層の上層に、温度変化に対して周波数特性を安定化させる温度安定化層が設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれかに記載の弾性表面波素子。
  5. 前記温度安定化層がSiO からなることを特徴とする請求項に記載の弾性表面波素子。
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