JP3374557B2 - ダイヤモンド基材および表面弾性波素子 - Google Patents

ダイヤモンド基材および表面弾性波素子

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JP3374557B2
JP3374557B2 JP29464894A JP29464894A JP3374557B2 JP 3374557 B2 JP3374557 B2 JP 3374557B2 JP 29464894 A JP29464894 A JP 29464894A JP 29464894 A JP29464894 A JP 29464894A JP 3374557 B2 JP3374557 B2 JP 3374557B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高周波領域(例えば、
数百MHzからGHz帯)で動作させることが可能な表
面弾性波素子、および該素子に好適に使用可能なダイヤ
モンド基材に関し、特に、ダイヤモンドとLiNbO3
圧電体との組合せを含む表面弾性波素子およびダイヤモ
ンド基材に関する。
【0002】
【従来の技術】固体表面を伝播する表面弾性波(以下
「SAW」という)を利用する素子である表面弾性波素
子(以下「SAW素子」という)は、エレクトロメカニ
カル機能部品に共通した以下の特徴を有する。
【0003】小型かつ軽量である。
【0004】耐振性、耐衝撃性に優れている。
【0005】製品のバラツキが少ないため、信頼性が
高い。
【0006】回路の無調整化が図れるため、実装の自
動化、簡略化が容易である。
【0007】上記したエレクトロメカニカル機能部品に
共通の特徴に加え、SAW素子は更に、温度安定性に優
れ、寿命が長く、位相特性に優れる等の種々の特徴を有
しているため、周波数フィルタ、共振器、遅延デバイ
ス、信号処理素子、コンボルバ(convolver )、オプト
エレクトロニクス用機能素子等として、広く好適に利用
可能である。
【0008】近年における衛星通信や移動体通信等を始
めとする通信の分野におけるマルチチャンネル化・高周
波化に伴い、上記したSAW素子の分野においても、よ
り高周波域(例えば、GHz帯)で使用可能な素子の開
発が要請されている。
【0009】このような高周波域における応用を目的と
して、ダイヤモンドと圧電体とからなる積層構造を有す
るSAW素子が提案されている(特開昭64−6291
1号公報、特開平3−198412号公報)。このよう
なSAW素子は、一般に、Si等の板状部材の上に、気
相合成によりダイヤモンド膜を形成し、研磨により該ダ
イヤモンド膜表面を平滑とした後、該平滑化表面上に櫛
型電極と圧電体薄膜とを形成することにより作製されて
来た。上記圧電体薄膜としては、通常はZnO薄膜が用
いられて来た。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、Zn
O圧電体薄膜とダイヤモンドとを積層した構造を有する
従来のSAW素子においては、通常は電気機械結合係数
(K2 )を大きくする(K2 =0.5〜2.0%程度)
ことが困難であったため、従来のSAW素子は広帯域フ
ィルター用途(携帯電話等)には不向きであった。
【0011】上記問題点を解消するため、電気機械結合
係数が大きく、しかも広帯域の高周波用SAW素子が強
く要請され、このような観点から、LiNbO3 を圧電
体としてダイヤモンドと積層した構造を有するSAW素
子の開発が進められている。しかしながら、従来より、
気相合成ダイヤモンド上に、単にLiNbO3 を成膜し
てSAW素子を形成した場合には、良好な特性を有する
SAW素子が得られていなかった。
【0012】したがって、本発明の目的は、電気機械結
合係数が大きく、しかも広帯域のSAW素子に好適に使
用可能なダイヤモンド基材を提供することにある。
【0013】本発明の他の目的は、電気機械結合係数が
大きく、しかも広帯域のSAW素子を提供することにあ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者等は鋭意研究の
結果、従来のSAW素子において良好な特性が得られな
かったのは、LiNbO3 圧電体層の結晶特性が適切で
なかったためであることを見出した。本発明者はこのよ
うな知見に基づき更に研究を進めた結果、ダイヤモンド
上に直接にLiNbO3 層を成膜するのではなく、成膜
すべきLiNbO3 層の結晶特性(結晶性、結晶方向
等)をコントロールする機能を有する層(中間層)を介
して、ダイヤモンド上にLiNbO3 層を配置すること
が、上記課題の解決に極めて効果的なことを見出した。
【0015】本発明のダイヤモンド基材は、上記知見に
基づくものであり、より詳しくは、ダイヤモンドと、該
ダイヤモンド上に配置された中間層と、該中間層上に配
置されたLiNbO3 層とを少なくとも含むことを特徴
とするものである。
【0016】本発明によれば、更に、ダイヤモンド層
と、該ダイヤモンド層上に配置された中間層と、該中間
層上に配置されたLiNbO3 層と、表面弾性波を励振
する電極とを少なくとも含むことを特徴とする表面弾性
波素子が提供される。
【0017】
【作用】本発明において、LiNbO3 圧電層の結晶特
性(結晶性、結晶の方向等)は、その成膜時において下
層たるダイヤモンドの結晶特性の影響を直接に受けるこ
となく、中間層の結晶特性によってコントロールするこ
とが可能であるため、ダイヤモンドの特性を活かしつ
つ、しかも好適な特性を有するLiNbO3 圧電層を中
間層上に容易に得ることができる。
【0018】例えば、気相合成ダイヤモンド(多結晶)
層上にLiNbO3 圧電体層を成膜する場合において
も、上記中間層の結晶特性コントロール機能の利用によ
り、良好な圧電特性を有するLiNbO3 層を得ること
が可能となる。
【0019】このような良好な圧電特性を有する本発明
のLiNbO3 /中間層/ダイヤモンド基材を用いるこ
とにより、電気機械結合係数が大きく、しかも広帯域の
高周波用SAW素子が容易に得られる。
【0020】以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本
発明を詳細に説明する。
【0021】(ダイヤモンド基材)本発明のダイヤモン
ド基材の一態様を、図1の模式断面図に示す。図1を参
照して、この態様におけるダイヤモンド基材は、ダイヤ
モンド1と、該ダイヤモンド1上に配置された中間層2
と、該中間層2上に配置されたLiNbO3 層3とから
なる。
【0022】(ダイヤモンド)本発明において、上記し
たダイヤモンドとしては、単結晶ダイヤモンドおよび/
又は多結晶ダイヤモンドのいずれも使用可能である。該
ダイヤモンドの形状(平面形状、立体形状)、大きさ等
は特に制限されず、本発明のダイヤモンド基材の用途に
よって適宜選択可能である。
【0023】該ダイヤモンドを得る方法は、特に制限さ
れない。より具体的には例えば、このダイヤモンドとし
ては、単結晶ダイヤモンドを用いてもよく、また、他の
材料(他の基材)上に、ダイヤモンド膜を気相成長等に
より成膜して多結晶膜またはエピタキシャル膜として上
記ダイヤモンドを得てもよい。
【0024】このダイヤモンド層成膜用の「他の基材」
は、特に限定されず、ダイヤモンド基材の用途によって
適宜選択することが可能である。本発明において使用可
能な基材としては、例えば、Si等の半導体、金属、ガ
ラス、セラミクス等が挙げられる。
【0025】本発明において、上記ダイヤモンドがダイ
ヤモンド層(ないし膜)である場合、該ダイヤモンド
(薄)層の成長方法は、特に制限されない。より具体的
には例えば、該成長方法として、CVD(化学的気相成
長)法、マイクロ波プラズマCVD法、PVD(物理的
気相成長)法、スパッタ法、イオンプレーティング法、
プラズマジェット法、火炎法および熱フィラメント法等
の公知の方法が使用可能である。
【0026】上記ダイヤモンドないしダイヤモンド層の
面方位は、特に制限されない。面方位は、例えば(11
1)、(100)、(110)等のいずれでもよく、あ
るいかこれらの面方位が混在してもよい。
【0027】上記した気相合成等により得たダイヤモン
ド層上には、そのまま中間層を配置してもよいが、ダイ
ヤモンド表面の平坦性ないし平滑性を増大させるため、
必要に応じて該表面を研磨(例えば、電着ダイヤモンド
砥石を用いる機械研磨)してもよい。
【0028】本発明のダイヤモンド基材を構成するダイ
ヤモンドが「ダイヤモンド層」からなる場合、その層厚
は、SAW素子の用途においては、5μm以上であるこ
とが好ましく、更には20μm以上であることがより好
ましい。
【0029】(中間層)本発明においては、上記したダ
イヤモンドと、後述するLiNbO3 との間に、該Li
NbO3 層の結晶特性をコントロールする機能を有する
「中間層」が配置される。
【0030】LiNbO3 層の結晶特性をコントロール
する機能を有する材料である限り、該中間層を構成する
材料は特に制限されないが、上記ダイヤモンド上でC軸
配向性の中間層を形成することが容易な材料であること
が好ましい。
【0031】(中間層の配向性)中間層の配向性は、例
えば、以下のようなθ−2θ法によって評価することが
可能である(このθ−2θ法の詳細については、例え
ば、文献名:B.D.Cullity著"Elements of X-Ray Diffra
ction" Addition-Wesley Publishing Company,Incを参
照することができる)。
【0032】(1)測定試料をX線ディフラクトメータ
の試料ホルダーに設置する。
【0033】(2)X線ディフラクトパターン法を用い
て、θ−2θ法によりX線回折ピークを測定する。
【0034】(3)上記により測定した回折ピークのう
ち、C軸に対応する面、すなわち(00m)面(m=1
以上の整数)に対応する回折ピーク強度の合計
(IC )、および全ての回折ピーク強度の合計(IT
を、それぞれ求める。
【0035】C軸配向性の中間層の場合、上記ピーク強
度の比(IC /IT )が、80%以上であることが好ま
しく、95%以上であることが更に好ましい。
【0036】(中間層の材料)C軸配向性の中間層を構
成することが容易な材料としては、酸化物が好ましく用
いられる。このような酸化物としては、例えば、Al2
3 (好ましくはC軸配向性)、MgO(好ましくは
(111)配向性)、ZnO;あるいは、Li、Na、
K、Rb、Mn、およびCuから選ばれた1種以上の元
素を含む絶縁性のZnOが挙げられる。この「1種以上
の元素」の含有量は、2モル%以下、更には1〜2モル
%であることが好ましい。このような元素の含有量は、
例えば、二次イオン質量分析法によって定量することが
可能である。
【0037】上記した中間層を構成する材料は、抵抗率
106 Ω・cm以上の絶縁性を有していることが好まし
い。上記した「絶縁性のZnO」の抵抗率は、106
108 Ω・cm程度であることが好ましい。
【0038】本発明において、上記中間層の形成方法
は、特に制限されない。より具体的には例えば、該形成
方法として、CVD法、PVD法、スパッタリング法、
イオンプレーティング法等の公知の気相堆積法が使用可
能である。
【0039】上記中間層の厚さは、下層たるダイヤモン
ドの種類、サイズ、使用目的等により、適宜選択するこ
とが可能であるが、通常、100〜2000オングスト
ローム程度(更には100〜1000オングストローム
程度)であることが好ましい。この層厚が100オング
ストローム未満では、中間層としてのLiNbO3 層の
結晶特性コントロール機能が不充分となり易く、一方、
層厚が2000オングストロームを越えると、下層たる
ダイヤモンドの特性を阻害する傾向が生じ易くなる。こ
の中間層の層厚は、該中間層上に、C軸配向したLiN
bO3 薄膜を良好に形成可能なように選択することが好
ましい。
【0040】本発明者の知見によれば、中間層の材料と
してZnO(2モル%のLiを含有)を選択した場合、
該中間層の膜厚が100〜2000オングストローム
(更には100〜1000オングストローム)の場合
に、好適なC軸配向性のLiNbO3 薄膜が成長可能で
あることが確認されている(「C軸配向性ZnO上のC
軸配向性LiNbO3 の成長」については、清水ら(Ma
saru Shimizu et al. ;Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 32(1
993), pp.4111-4114) を参照することができる)。本発
明者の知見によれば、下層たるダイヤモンド(立方晶)
上にC軸配向性ZnO(六方晶)を配置した場合に、好
適な圧電特性を有するLiNbO3 膜が得られることが
見出されている。
【0041】上記した中間層の厚みは、本発明のダイヤ
モンド基材の切断面を、例えば走査型電子顕微鏡(SE
M)等の膜厚測定手段で観察して求めることが可能であ
る。
【0042】(ダイヤモンド状炭素)上記中間層の材料
としては、ダイヤモンド状炭素を用いることも可能であ
る。
【0043】ここに「ダイヤモンド状炭素」(Diamond-
like carbon ;ないしDLC)は、硬度の高いアモルフ
ァス物質であり、安定性に優れ、しかもダイヤモンドと
同様の炭素原子からなるため、ダイヤモンドへの元素的
拡散や反応について実質的に考慮する必要がない等の特
徴を有している。このため、ダイヤモンド状炭素は、上
記中間層を形成する絶縁性材料として好適に使用可能で
ある。
【0044】上記ダイヤモンド状炭素(i−カーボンな
いしアモルファスカーボンとも称される)は、以下のよ
うな性質を有する物質である。
【0045】(1)通常、炭素の他に水素を含む。この
場合、水素のモル数は、炭素のモル数より小さいことが
好ましい。
【0046】(2)結晶状態はアモルファスである。ダ
イヤモンド状炭素と、ダイヤモンドないしグラファイト
とは、例えば、ラマン分光法によって識別可能である。
図2にダイヤモンド状炭素(アモルファスカーボン)
(a)と、グラファイト(b)と、ダイヤモンド(c)
との典型的なスペクトルを示す。図2のグラフに示した
ように、ダイヤモンド(c)は1332cm-1(sp3
C−C由来)、グラファイト(b)は1580cm
-1(sp2 C−C由来)にそれぞれ鋭いピークを示すの
に対して、ダイヤモンド状炭素(a)は1360cm-1
と1600cm-1とにブロードなピークを示す。
【0047】(3)一般の金属に比べて、高い硬度を有
する。本発明で用いるダイヤモンド状炭素は、ビッカー
ス硬さHv(Vickers hardness)が1, 000〜5, 0
00程度であることが好ましい(ダイヤモンドは、通常
10, 000程度のビッカース硬さHvを有する)。
【0048】(4)電気的には絶縁体である。
【0049】上記したような性質を有するダイヤモンド
状炭素膜は、ダイヤモンドの合成と同様にプラズマCV
D、イオンビーム蒸着法、スパッタリング等の気相プロ
セスに従って作成することが可能である。より具体的に
は例えば、ダイヤモンド状炭素は、ダイヤモンド形成と
同様のCVD条件で、基板温度を下げる(例えば、基板
温度100℃程度)ことにより得ることができる(ダイ
ヤモンド状炭素の詳細については、例えば、平木昭夫・
川原田洋、「炭素」、1987(No. 128)、41頁
(日本炭素学会)を参照することができる)。
【0050】(LiNbO3 層)本発明において、上記
中間層上に形成すべきLiNbO3 層は、単結晶(ない
しエピタキシャル層)であってもよく、また多結晶であ
ってもよいが、LiNbO3 層の良好な圧電特性の点か
らは、C軸配向性を有することが好ましい。
【0051】該LiNbO3 層の厚さは、本発明のダイ
ヤモンド基材ないしSAW素子の用途によって適宜選択
することが可能であり、特に制限されない。
【0052】(LiNbO3 層の配向性)本発明におい
ては、LiNbO3 層の配向性は、例えば、上述した中
間層の配向性と同様にθ−2θ法によって評価すること
が可能である。
【0053】C軸配向性のLiNbO3 層の場合、上記
θ−2θ法によって求めたC軸配向面すなわち(00
m)面(m=1以上の整数)に対応する回折ピーク強度
の合計(IC )と、全ての回折ピーク強度の合計
(IT )ピーク強度との比(IC /IT )が、80%以
上であることが好ましく、95%以上であることが更に
好ましい。
【0054】LiNbO3 層を形成する方法としては、
スパッタリング、蒸着法、CVD法、レーザアニール
法、MOCVD(有機金属CVD)法、MBE(分子線
エピタキシー)法等を始めとする気相堆積法等の公知の
方法を、特に制限なく用いることができる。
【0055】(SAW素子)本発明のSAW素子は、上
記した構成を有するダイヤモンド基材に、更に櫛型電極
(interdigital transducer ;IDT)等からなるSA
W励振電極(必要に応じて、更にSAW受信ないし検出
電極)を配置してなる。
【0056】上記SAW励振電極4は、LiNbO3
3の上(図3)、ダイヤモンド1と中間層2との間に
(図4)、あるいは中間層2とLiNbO3 層3との間
(図示せず)のいずれの位置に配置することも可能であ
るが、中間層2の結晶特性コントロール機能を阻害しな
い点からは、上記図3または図4の位置に配置すること
が好ましい。また、後述するようにSAW励振電極4を
Al(アルミニウム)等の比較的融点の低い金属で形成
する場合には、LiNbO3 層3堆積時の基板温度(例
えば、700℃程度)等の点からは、図3のようにLi
NbO3 層3の上にSAW励振電極4を配置することが
好ましい。
【0057】図4に示すようにAl等からなるSAW励
振電極4をダイヤモンド1上に配置する場合、ZnO主
体の中間層2を該ダイヤモンド/SAW励振電極上に堆
積させることが、中間層2のC軸配向性の点から好まし
い。
【0058】(SAW励振電極)SAW励振電極を構成
する材料は、導電性材料である限り特に制限されない。
SAW励振電極としての加工性およびコストの点から
は、Al、Al−Cu,Al−Si−Cu等が特に好ま
しく使用可能である。
【0059】SAW励振電極の厚さは、該電極としての
機能を発揮する限り特に制限されないが、100〜50
00オングストローム程度(更には100〜500オン
グストローム程度)であることが好ましい。この厚さが
100オングストローム未満では、抵抗率が高くなり損
失が増加する。一方、該電極の厚さが5000オングス
トロームを越えると、電極の厚み、高さによるSAWの
反射を引き起こす質量付加効果が著しくなり、目的とす
るSAW特性を阻害する可能性がある。前記図4に示し
た態様においては、SAW励振電極4の厚さは、中間層
2の厚さより小さいことが好ましく、該中間層の厚さの
1/2以下(特に1/5以下)であることが更に好まし
い。
【0060】SAW励振電極(SAW受信電極)の平面
形状は、該電極としての機能を発揮する限り特に制限さ
れないが、図5に模式平面図を示すような、いわゆるシ
ングル型のIDT電極、図6に模式平面図を示すような
ダブル型のIDT電極等が好適に使用可能である。
【0061】上記したようなSAW励振電極は、必要に
応じて、該電極を形成すべき面(例えば、ダイヤモンド
1の表面)に、埋め込んでもよい。より具体的には例え
ば、溝等の形状を有する凹部を形成し(あるいは該凹部
を予め与えるように、所定の面を形成し)、SAW励振
電極を構成するAl等の導電性材料の全部又は一部を、
このように形成した凹部中に埋めてもよい。このように
SAW励振電極の全部又は一部を埋め込むことにより、
例えば、SAW励振電極の高さを、該電極を形成すべき
面の高さを実質的に等しくすることが可能となり、電極
の厚みによるSAWの反射の影響を低減できる。
【0062】(短絡用電極)本発明のSAW素子におい
ては、必要に応じて短絡用電極(図示せず)を更に配置
してもよい。この短絡用電極は、電界を等電位とするこ
とにより該素子のSAW特性を変化させる機能を有する
電極である。この電極は、金属(薄)膜(例えば、A
l、Au、Al−Cu、Al−Si−Cu等)から構成
されていることが好ましい。短絡用電極は、上記したS
AW励振電極とは異なる機能を有するため、該短絡用電
極を構成する材料は、必ずしもSAW励振電極の材料と
同一である必要はない。
【0063】上記短絡用電極は、前述したSAW励振電
極と同様に、LiNbO3 層3の上、ダイヤモンド1と
中間層2との間、あるいは中間層2とLiNbO3 3と
の間(図示せず)のいずれの位置に配置することも可能
であるが、LiNbO3 層3に関してSAW励振電極4
と反対側に(すなわち、該短絡用電極とSAW励振電極
4との間にLiNbO3 層3が配置されるように)短絡
用電極を配置することが好ましい。この短絡用電極も、
中間層2の結晶特性コントロール機能を阻害しない点か
らは、LiNbO3 層3の上、またはダイヤモンド1と
中間層2との間の位置に配置することが好ましい。
【0064】短絡用電極の厚さは、該電極としての機能
を発揮する限り特に制限されないが、50〜3000オ
ングストローム程度(更には100〜500オングスト
ローム程度)であることが好ましい。この厚さが50オ
ングストローム未満では、等電位の形成が困難となり、
他方、3000オングストロームを越えると、SAWの
反射に影響し易くなる。
【0065】この短絡用電極は、例えば、SAW励振電
極と同様の占有面積を有する「ベタ電極」の平面形状を
有することが好ましい。
【0066】以下実施例により本発明を更に具体的に説
明する。
【0067】
【実施例】実施例1 Si基板上に、メタン濃度2%の水素ガスを用いたマイ
クロ波プラズマCVD法により、厚さ35μmのダイヤ
モンド膜を成長させた。
【0068】(ダイヤモンド膜形成条件) マイクロ波パワー:150W 反応ガス :CH4 :H2 =2:100 ガス圧力 :40mTorr 成膜温度 :800℃ このダイヤモンド膜を電着ダイヤモンド砥石を用いて機
械研磨して、該ダイヤモンド膜の膜厚が20μmのダイ
ヤモンド/Si基板を得た。
【0069】次いで、上記ダイヤモンド/Si基板上
に、スパッタリング法を用いて、ZnO(2モル%のL
iを含有)からなる厚さ0〜2000オングストローム
(後述する表1参照)の中間層を形成した。
【0070】(ZnO膜形成条件) RFパワー :150W スパッタガス: Ar:O2 =80:20 ガス圧力 :50mTorr 成膜温度 :300℃ ターゲット :ZnO(2モル%のLiを含有) 膜厚 :0、50、100、500、100
0、1500、2000オングストロ−ム 上記したZnO中間層の厚さは、走査型電子顕微鏡(S
EM)で測定した。該中間層の配向性を上述したθ−2
θ法により評価したところ、(00m)面(m=1以上
の整数)に対応する回折ピーク強度の合計(IC )と、
全ての回折ピーク強度の合計(IT )ピーク強度との比
(IC /IT )は、95〜100%であり、上記したZ
nO中間層は、全てC軸配向性を有する膜であることが
確認された。
【0071】このようにして得たZnO中間層/ダイヤ
モンド膜/Si基板の上に、LiNbO3 圧電膜をスパ
ッタリング法により形成し、本発明のダイヤモンド基材
を得た。この際、該LiNbO3 の膜厚は、上記ZnO
中間層との膜厚の合計が6700オングストロームとな
るように設定した。
【0072】(LiNbO3 層形成条件) RFパワー :150W スパッタリング :Ar:O2 =80:20 ガス圧力 :20mTorr 成膜温度 :700℃ ターゲット :LiNbO3 該LiNbO3 層の厚さは走査型電子顕微鏡(SEM)
で測定した。このLiNbO3 層の配向性を上述したθ
−2θ法により評価したところ、後述する表1に示すよ
うに、厚さが100オングストロ−ム以上のZnO中間
層上に成長させたLiNbO3 層においては、(00
m)面(m=1以上の整数)に対応する回折ピーク強度
の合計(IC )と、全ての回折ピーク強度の合計
(IT )ピーク強度との比(IC /IT )は、95〜1
00%であり、このようなLiNbO3 層が全てC軸配
向性を有する膜であることが確認された。
【0073】これに対して、ZnO中間層の厚さが0お
よび50オングストロ−ムのZnO中間層上に成長させ
たLiNbO3 層においては、LiNbO3 層は無配向
性を示した。
【0074】上記で得たLiNbO3 層/ZnO中間層
/ダイヤモンド層/Si基板の上に、更に、抵抗加熱蒸
着により50オングストローム/秒の堆積速度で、厚さ
500オングストロームのAl層を形成した(基板温
度:室温)。
【0075】このようにして形成したAl層を、フォト
リソグラフィー法によりパターンニングして、図6に模
式平面図を示すようなダブル型(電極幅d=1.5μ
m、電極間隔=1.5μm、周期=12μm)のAl櫛
型電極(SAW励振電極4およびSAW受信電極5)を
形成し、図7に模式斜視図を示すようなSAW素子を作
製した(SAW励振電極4の電極対数:40、SAW受
信電極5の電極対数:40、入出力電極の中心間の距
離:600μm)。
【0076】上記により得た各SAWフィルターの1.
8GHz近傍の透過帯域から、電気機械結合係数
(K2 )を測定した。
【0077】この測定に際しては、上記SAW素子のS
AW励振(入力)側電極に高周波を印加してSAWを励
振させ、V=fλ(fは中心周波数;λ=8d=12μ
m)の関係から、励起された各モードのSAWの伝搬速
度V(m/s)を求めた。電気機械結合係数(K2
は、ネットワークアナライザ(横河ヒューレットパッカ
ード(YHP)製、8719A)を用いてSAW励振電
極の放射コンダクタンスを測定し、該放射コンダクタン
スの実部Gに基づき、 K2 =(G/8)・f0 ・C・N (f0 :中心周波数、C:櫛型電極の全静電容量、N:
櫛型電極の対数)として求めた。
【0078】上記により求めた電気機械結合係数と、L
iNbO3 配向性との関係を下記表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】上記表1に示したように、本実施例におい
ては、中間層の厚みが100〜2000オングストロー
ム(更には100〜1000オングストローム)の範囲
でLiNbO3 層の好適なC軸配向が得られ、電気機械
結合係数(K2 )の大きい良好な高周波用SAWフィル
ターが作製された。
【0081】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、ダイヤ
モンドと、該ダイヤモンド上に配置された中間層と、該
中間層上に配置されたLiNbO3 層とを少なくとも含
むことを特徴とするダイヤモンド基材が提供される。
【0082】更に、本発明によれば、ダイヤモンド層
と、該ダイヤモンド層上に配置された中間層と、該中間
層上に配置されたLiNbO3 層と、表面弾性波を励振
する電極とを少なくとも含むことを特徴とする表面弾性
波素子が提供される。
【0083】本発明においては、下層たるダイヤモンド
の特性を活かしつつ、上記中間層の結晶特性コントロー
ル機能を利用することにより、好適な特性を有するLi
NbO3 圧電体層が容易に得られる。本発明によれば、
例えば、気相合成ダイヤモンド(多結晶)上にLiNb
3 圧電体層を成膜する場合においても、良好な圧電特
性を有するLiNbO3 層を得ることが容易となる。
【0084】本発明においては、更に、このような良好
な圧電特性を有するLiNbO3 /中間層/ダイヤモン
ド基材を用いることにより、電気機械結合係数が大き
く、しかも広帯域の高周波用SAW素子が容易に得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のダイヤモンド基材の層構成の一態様を
示す模式断面図である。
【図2】アモルファスカーボン(ダイヤモンド状炭素
膜)(a)、グラファイト(b)、およびダイヤモンド
(c)のラマンスペクトルの典型的な例を模式的に示す
グラフである。
【図3】本発明のSAW素子の層構成の一態様を示す模
式断面図である。
【図4】本発明のSAW素子の層構成の他の態様を示す
模式断面図である。
【図5】SAW素子を構成する櫛型電極の平面形状の一
例(シングル電極)を示す模式平面図である。
【図6】SAW素子を構成する櫛型電極の平面形状の一
例(ダブル電極)を示す模式平面図である。
【図7】本発明のSAW素子の構成の一態様(SAW励
振電極およびSAW受信電極を配置してなる)を示す模
式斜視図である。
【符号の説明】
1…ダイヤモンド、2…中間層、3…LiNbO3 層、
4…SAW励振電極、5…SAW受信電極。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北林 弘之 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住 友電気工業株式会社 伊丹製作所内 (72)発明者 鹿田 真一 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住 友電気工業株式会社 伊丹製作所内 (56)参考文献 特開 平6−216051(JP,A) 特開 昭64−62911(JP,A) 特開 平6−326548(JP,A) 特公 昭58−29280(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H03H 9/25 C30B 29/30

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ダイヤモンドと、該ダイヤモンド上に配
    置された中間層と、該中間層上に配置されたLiNbO
    層とを少なくとも含み、前記中間層が、ダイヤモンド
    状炭素からなるダイヤモンド基材。
  2. 【請求項2】 ダイヤモンドと、該ダイヤモンド上に配
    置された中間層と、該中間層上に配置されたLiNbO
    層とを少なくとも含み、前記中間層が、C軸配向性の
    多結晶膜からなるダイヤモンド基材。
  3. 【請求項3】 前記中間層が、Al、MgO、Z
    nO;又はLi、Na、K、Rb、Mn、Cuから選ば
    れた1種以上の元素を含む絶縁性のZnOからなる請求
    記載のダイヤモンド基材。
  4. 【請求項4】 ダイヤモンド層と、該ダイヤモンド層上
    に配置された中間層と、該中間層上に配置されたLiN
    bO層と、表面弾性波を励振する電極とを少なくとも
    含み、前記表面弾性波を励振する電極が、前記ダイヤモ
    ンド層と中間層との間に配置されている表面弾性波素
    子。
  5. 【請求項5】 ダイヤモンド層と、該ダイヤモンド層上
    に配置された中間層と、該中間層上に配置されたLiN
    bO層と、表面弾性波を励振する電極とを少なくとも
    含み、前記中間層が、C軸配向性の多結晶膜からなる表
    面弾性波素子。
  6. 【請求項6】 前記中間層が、Al、MgO、Z
    nO;又はLi、Na、K、Rb、Mn、Cuから選ば
    れた1種以上の元素を含む絶縁性のZnOからなる請求
    記載の表面弾性波素子。
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