JP2000273103A - 変性ジエン系ゴムおよびその変性方法 - Google Patents

変性ジエン系ゴムおよびその変性方法

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誠 芦浦
Keisuke Chino
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ジエン系ゴムの無水マレイン酸による変性を
有効に実施しうる特定のフェノール系酸化防止剤を提供
する。 【解決手段】 分子内にアルキルチオエーテル構造を有
している下式(1)のフェノール系酸化防止剤の存在下
で、ジエン系ゴムと無水マレイン酸とを反応させる。 【化1】 (式中、R1 ,R2 およびR3 は、それぞれ独立してC
1 〜C20の炭化水素基であり、mおよびnは、それぞれ
が1〜4の整数で、m+n≦5である。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な変性ジエン
系ゴムおよびその変性方法に関し、より詳細には、酸化
劣化による分子量の低下およびゲル化を抑制し、無水マ
レイン酸の導入率を高めた変性ジエン系ゴムおよびその
変性方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ジエン系ゴムに無水マレイン酸を反応さ
せ、ジエン系ゴムを変性する手法は、従来より数多く知
られている。そのうち、ポリイソプレン系ゴムの変性方
法としては、特開昭55−133403号公報、特開昭
51−45198号公報など多数の特許が開示されてお
り公知の技術となっている。また、ポリブタジエン系ゴ
ムの変性方法としては、特開昭56−11670号公
報、特開昭62−277403号公報などにより開示さ
れている。
【0003】また、変性反応中のゴムの酸化劣化を抑制
するため、フェノール系酸化防止剤を添加する方法は、
次の特許に記載されている。特開昭56−11670号
公報には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体と無
水マレイン酸を押出機内で反応させる際に、ゲル化防止
剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノー
ル(BHT)を加えることが、また、特開昭55−13
3403号公報には、分子量が8000〜100000
でかつシス−1,4結合量が70%以上の液状ポリイソ
プレンゴムに無水マレイン酸を反応させて変性液状ポリ
イソプレンゴムを製造するに当り、2,6−ジ−t−ブ
チル−4−メチルフェノール(BHT)、2,2′−メ
チレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノー
ル)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチ
ルフェノール)(WX−R)または4,4′−ブチリデ
ンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等の
フェノール誘導体の存在下で反応を行うことが開示され
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、ジエン系
ゴムと無水マレイン酸との反応を、特定のフェノール系
酸化防止剤の存在下に行うことで、通常のフェノール系
酸化防止剤およびフェニルチオエーテル構造を有するフ
ェノール系酸化防止剤を用いた場合以上に酸化劣化によ
る分子量の低下およびゲル化を抑制し、無水マレイン酸
の導入率を上昇させることができた変性ジエン系ゴムお
よびその変性方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、分子内
にアルキルチオエーテル構造を有しているフェノール系
酸化防止剤の存在下で、ジエン系ゴムと無水マレイン酸
とを反応させて得られた変性ジエン系ゴム、またかかる
反応条件下で製造して得るジエン系ゴムの変性方法が提
供される。
【0006】
【発明の実施の形態】一般に、ジエン系ゴムと無水マレ
イン酸を反応させることにより、酸無水物が以下の反応
式で示されるようにジエン系ゴムに導入されるため、該
変性ジエン系ゴムは金属酸化物やジアミン、ジオールな
どで架橋が可能となる。
【0007】
【化3】
【0008】また、この変性ジエン系ゴムは、アミンや
アルコールを持つ化合物と反応させることにより各種官
能基を容易に導入することができるため、様々なゴムの
応用展開が期待されている。
【0009】しかしながら、ジエン系ゴムに無水マレイ
ン酸を反応させて酸無水物を導入する場合、高温で変性
反応を行うために酸化劣化による分子量の低下やゲル化
が併発し、無水マレイン酸の導入率が低下したり、ゴム
の物性が低下してしまうという問題が生じる。この問題
の解決策としては、従来よりフェノール系酸化防止剤を
添加する手法が前記したように知られているが、本発明
では、これに分子内にアルキルチオエーテル構造を有す
るフェノール系酸化防止剤を用いると、通常のBHTの
ようなフェノール系酸化防止剤およびWX−Rのような
フェニルチオエーテル型のフェノール系酸化防止剤より
も優れた酸化劣化防止効果を発揮し、無水マレイン酸の
導入率を向上させるという事実を見い出した。
【0010】一般に、フェノール系酸化防止剤は、水素
を供与することで、ROO・ラジカルをROOHにし、
自らはフェノキシラジカルとなる。この際、硫黄化合物
が存在するとROOHをROHに分解する。分子内にチ
オエーテルを有するフェノール系酸化防止剤も同様の機
構で酸化を防止すると考えられ、通常のフェノール系酸
化防止剤よりも優れた効果を示すと考えられている。先
行技術のWX−Rの場合、分子内の硫黄原子がフェノキ
シラジカルの共鳴に関与し、硫黄原子の反応性、即ち過
酸化物分解能が低下していると考えられる。
【0011】一方、本発明で用いるアルキルチオエーテ
ル型のフェノール系酸化防止剤の場合には、下記の式で
示されるように、分子内の硫黄原子はフェノキシラジカ
ルの共鳴に関与することがなく、硫黄原子の反応性は低
下しないと考えられる。さらに、WX−Rのようなフェ
ニルチオエーテルと本発明でのアルキルチオエーテルを
比較した場合、後者よりも前者の方が硫黄原子近傍の立
体障害が大きくそのため反応性が低いと考えられる。以
上のことから、本発明におけるアルキルチオエーテル型
のフェノール系酸化防止剤は、従来のフェニルチオエー
テル型のフェノール系酸化防止剤よりも優れた効果を発
揮するものと推測される。
【0012】
【化4】
【0013】本発明において使用する、分子内にアルキ
ルチオエーテル構造を有しているフェノール系酸化防止
剤には、典型的に、以下の式1で示される化合物が含ま
れ、
【化5】 (式中、R1 ,R2 およびR3 は、それぞれ独立してC
1 〜C20の炭化水素基であり、mおよびnは、それぞれ
1〜4の整数で、m+5≦5である。)より好ましく
は、分子内に2個のスルフィド結合を有する前記フェノ
ール酸化防止剤が用いられ、更に最も好ましくは、2,
4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−O−クレゾール
が用いられる。
【0014】本発明における反応出発物のジエン系ゴム
には、従来のジエン系ゴムのいずれに対しても適用で
き、例えば、天然ゴム(NR)、各種ブタジエンゴム
(BR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(S
BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、アクリロニトリ
ルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロ
ピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共
重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合
体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等が挙げ
られる。
【0015】本発明における反応系で用いる本発明のフ
ェノール系酸化防止剤の配合量は、0.1〜200重量
部使用され、また、その反応温度は室温〜200℃で実
施され、より好ましくは80〜180℃、最も好ましく
は、100〜160℃である。
【0016】
【実施例】以下、実施例および比較例によって本発明を
更に詳しく説明するが、本発明を以下の実施例に限定す
るものでないことは言うまでもない。
【0017】実施例1〜4および比較例1〜6 ポリイソプレンゴムおよびブタジエン系ゴムの無水マレ
イン化にあたり、本発明のフェノール系酸化防止剤とし
ての2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−O−ク
レゾール(IRGANOX 1520)を用いた例につ
いて、その変性方法および結果を以下に示す。
【0018】変性方法 以下の表1および2に示す各ジエン系ゴムをキシレンに
溶解し、無水マレイン酸(MAH)およびイルガノック
ス1520(IRGANOX 1520)の所定量を加
え、140℃にて約20時間撹拌した。反応溶液をアセ
トリトリルに沈殿させ、減圧乾燥することにより無水マ
レイン酸が導入された各変性ジエン系ゴムを得た。 1
−NMRおよびIR分析により、酸無水物構造が導入さ
れていることを確認した。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【発明の効果】以上の結果より、ジエン系ゴムと無水マ
レイン酸の反応を分子内にアルキルチオエーテル構造を
有するフェノール系酸化防止剤の存在下で行うことで、
通常のフェノール系酸化防止剤およびフェニルチオエー
テル型フェノール系酸化防止剤を用いた場合以上に酸化
劣化による分子量の低下およびゲル化を抑制し、無水マ
レイン酸の導入率を上昇させることができ、極めて有用
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J100 AA02P AA03Q AB02P AB02Q AM02Q AS01P AS02P AS02R AS03P AS03Q AS07P BC55H CA01 CA04 CA05 CA31 FA02 HA53 HC30 HC69 HD04

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分子内にアルキルチオエーテル構造を有
    しているフェノール系酸化防止剤の存在下で、ジエン系
    ゴムと無水マレイン酸とを反応させて得られた変性ジエ
    ン系ゴム。
  2. 【請求項2】 分子内に2個以上のアルキルチオエーテ
    ル構造を有する前記フェノール系酸化防止剤を用いて得
    られた、請求項1に記載の変性ジエン系ゴム。
  3. 【請求項3】 前記フェノール系酸化防止剤が次式1: 【化1】 (式中、R1 ,R2 およびR3 は、それぞれ独立してC
    1 〜C20の炭化水素基であり、mおよびnは、それぞれ
    が1〜4の整数で、m+n≦5である。)で表わされ
    る、請求項1に記載の変性ジエン系ゴム。
  4. 【請求項4】 前記フェノール系酸化防止剤が2,4−
    ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−O−クレゾールであ
    る、請求項1に記載の変性ジエン系ゴム。
  5. 【請求項5】 ジエン系ゴムに無水マレイン酸を反応さ
    せて得られる変性ジエン系ゴムの製造にあたり、分子内
    にアルキルチオエーテル構造を有しているフェノール系
    酸化防止剤の存在下で反応を行なうジエン系ゴムの変性
    方法。
  6. 【請求項6】 分子内に2個以上のアルキルチオエーテ
    ル構造を有する前記フェノール系酸化防止剤を用いる、
    請求項5に記載のジエン系ゴムの変性方法。
  7. 【請求項7】 前記酸化防止剤が次式1: 【化2】 (式中、R1 ,R2 およびR3 は、それぞれ独立してC
    1 〜C20の炭化水素基であり、mおよびnは、それぞれ
    が1〜4の整数で、m+n≦5である。)で表わされ
    る、請求項5に記載のジエン系ゴムの変性方法。
  8. 【請求項8】 前記フェノール系酸化防止剤が2,4−
    ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−O−クレゾールであ
    る、請求項5に記載のジエン系ゴムの変性方法。
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