JP2000269061A - 金属ボンド磁石の製造方法 - Google Patents

金属ボンド磁石の製造方法

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JP2000269061A
JP2000269061A JP11075195A JP7519599A JP2000269061A JP 2000269061 A JP2000269061 A JP 2000269061A JP 11075195 A JP11075195 A JP 11075195A JP 7519599 A JP7519599 A JP 7519599A JP 2000269061 A JP2000269061 A JP 2000269061A
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bonded magnet
powder
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Fumitoshi Yamashita
文敏 山下
Sunao Hashimoto
直 橋本
Yuichiro Sasaki
雄一朗 佐々木
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁石モ−タの高出力化、低消費電流化のため
に電機子鉄心と小径環状磁石との空隙に強力な静磁界を
発生させる。 【解決手段】 本願発明は、希土類−鉄系急冷凝固薄片
と塑性変形能を有する金属粉末の混合物を冷間圧縮し、
これを解砕分級し、コンパウンドとする工程、コンパウ
ンドを粉末成形して圧粉体とする工程、圧粉体を熱処理
する工程とからなる金属ボンド磁石の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁石モ−タの高出
力化や低消費電流化の要求に応えるための希土類−鉄系
磁石粉体を使用した金属ボンド磁石の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】図1は本発明に係る出力数W以下の磁石
モ−タの断面構成図である。図において、基板1には複
数の突極と中心孔を備えた電機子鉄心2が固定されてお
り、前記突極には駆動巻線3が巻回され、中心孔には軸
受4が挿入されている。この軸受4によって軸5が回転
自在に支持されている。電機子鉄心2から突出した回転
軸5の上端部は回転子枠6の中心孔が固着されている。
回転子枠6は電機子鉄心6を囲み、その周壁内面に多極
着磁された環状磁石7が固着されている。このような、
磁石モ−タの高出力化、低消費電力化の要求に応えるに
は磁石が電機子鉄心と対向した空間に強力な静磁界をつ
くることが必要である。
【0003】ところで、特公平6−87634号公報
に、電機子鉄心と対向した空間に強力な静磁界をつくる
ために磁気的に等方性のR−Fe−B(RはNd/P
r)系希土類−鉄系急冷凝固薄片を結合剤とともに圧縮
成形した外径25mm以下、密度5g/cm3以上の環
状樹脂磁石を搭載した構成の磁石モ−タが開示されてい
る。磁気的に異方性の磁石粉体は環状磁石の小径化に伴
ってのラジアル方向の配向度が低下することから磁石モ
−タの小型化と高出力化の両立が困難であった。しか
し、磁気的に等方性の急冷凝固薄片を結合剤とともに圧
縮成形すれば磁石の径に依存することなく、例えば密度
6.2〜6.3g/cm3とすれば最大エネルギ−積
[BH]max11〜12MGOeに達する。したがっ
て、磁石が電機子鉄心と対向した空間に強力な静磁界を
つくることができ、この種の磁石モ−タの高出力化、低
消費電流化に効果的であった。例えば、Srフェライト
磁石粉体とバインダで構成した厚さ1.55mm、幅
7.2mmの可撓性シ−ト状磁石を帯状に切断し、カ−
リングして内径22.5mmの回転子枠の周壁内面に固
着した環状磁石モ−タの起動トルク1.5mN−mに対
し、R−Fe−B(RはNd/Pr)磁石粉体と結合剤
で構成した外径22.5mm、厚さ1.10mm、高さ
9.4mm、密度5.8g/cm3の圧縮成形環状磁石
を回転子枠に固着した環状磁石モ−タの起動トルクは2
0mN−mに達する。更に特公平6−42409号公報
に記載されているような、磁気的に等方性のFe−B−
R系磁石粉体の結合剤として、例えば室温で固体のビス
フェノ−ル型エポキシの如き分子鎖内にアルコ−ル性水
酸基を有するオリゴマ−とイソシアネ−ト再生体を用い
ればR−Fe−B(RはNd/Pr)系磁石粉体をより
一層強固に接着固定することができる。その理由は、イ
ソシアネ−ト再生体とはイソシアネ−ト化合物に活性水
素化合物を予め付加したもので、熱解離によってイソシ
アネ−ト基を遊離し、遊離したイソシアネ−ト基がアル
コ−ル性水酸基と反応、ウレタン結合などにより架橋す
る。その際、遊離したイソシアネ−ト基の一部がR−F
e−B(RはNd/Pr)系磁石粉体のような金属表面
の吸着水と反応して置換尿素体を生成し、これが金属酸
化物表層とキレ−ト結合を生成することなどによる。そ
のため、磁石粉体が脱落、飛散して環状磁石モ−タの性
能や信頼性に重大な影響を及ぼすことなく、ラジアル磁
場配向が困難な小径の環状磁石を搭載する磁石モ−タの
高出力化、低消費電流化に効果的であった。しかし、磁
気的に等方性のR−Fe−B系樹脂磁石は、その密度か
ら磁気性能が制約され、熱硬化性結合剤で強固に接着固
定されているが高温や高湿の環境下では酸化され易く、
酸素を遮断するため、一般的にスプレ−、電着塗装など
の方法で磁石表面に厚さ10〜30μmのエポキシ樹脂
皮膜を形成する必要があった。しかし、とくに肉厚0.
5mm以下の磁石となると、これを使った磁石モ−タの
電機子鉄心との空隙に占める磁石表面樹脂皮膜の割合が
増し、空隙の静磁界を低下させる原因となるなど、磁石
モ−タの高出力化や低消費電流化を阻害する要因になっ
ていた。
【0004】上記、磁石表面の樹脂皮膜を形成する必要
に対し、特開平4−16753号公報に、150℃以上
300℃以下の溶融温度を有するろう接用ろう材粉末
と磁性合金粉末とからなることを特徴とするボンド磁石
組成物。前記、磁性合金粉末がR−Fe−B(RはNd
/Pr)、1−5SmCo,2−17SmCo系であ
り、それらを熱間圧縮成形するボンド磁石組成物が開示
されている。具体的な実施例によれば、ボンド磁石の結
合剤として10〜30μmのSn−Pb系合金粉末を用
い、前記結合剤とR−Fe−B系急冷凝固薄片との混合
物100重両部に対し、0.02重両部のステアリン酸
亜鉛を混合し、8ton/cm2の圧力で圧粉体とし、
この圧粉体を常圧下200℃で熱処理することが示され
ている。この方法によると、高温高湿環境下で酸化され
難いボンド磁石を得ることができる。しかしながら、
Sn−Pb系合金粉末などの結合剤とR−Fe−B系急
冷凝固薄片は単に混合しただけで、比重や粉体形状、更
に粒度分布も異なるため、混合成分の分離によって均質
な圧粉体を連続生産することが困難、ボンド磁石の耐
熱性が300℃以下に限定される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来、磁気的に等方性
のR−Fe−B(RはNd/Pr)急冷凝固薄片を結合
剤とともに外径25mm以下、密度5g/cm3以上に
圧縮成形した樹脂磁石は磁気特性が密度のみに依存し、
形状依存性がない。そのため小径磁石モ−タの電機子鉄
心と対向した空間に強力な静磁界をつくることができ、
磁石モ−タの高出力化や低消費電流化に効果的である。
しかし、高温高湿環境下では酸化され易いため、一般的
にスプレ−、電着塗装などの方法で磁石表面に厚さ10
〜30μmのエポキシ樹脂皮膜を形成する必要があっ
た。しかし、とくに肉厚0.5mm以下の磁石となる
と、これを使った磁石モ−タの電機子鉄心との空隙に占
める磁石表面の樹脂皮膜の割合が増し、空隙の静磁界を
低下させる原因となるなど、磁石モ−タの高出力化や低
消費電流化を阻害する要因になっていた。
【0006】上記、高温高湿環境下で酸化され易い課題
に対し、特開平4−16753号公報に、150℃以上
300℃以下の溶融温度を有するろう接用ろう材粉末と
磁性合金粉末とからなることを特徴とするボンド磁石組
成物は、高温や高湿環境下で酸化され難いボンド磁石を
得ることができる。しかしながら、Sn−Pb系合金
粉末などの結合剤とR−Fe−B系急冷凝固薄片は単に
混合しただけで、比重や粉体形状、更に粒度分布も異な
るため、混合成分の分離によって均質な圧粉体を連続生
産することが困難、ボンド磁石の耐熱性が300℃以
下に限定される課題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記従来技術
に鑑みてなされたもので、磁石と電機子鉄心とが対向し
た空間に強力な静磁界を与え、磁石モ−タの高出力化や
低消費電力化を促進する金属ボンド磁石の製造方法の提
供を目的とする。
【0008】つまり、本発明の金属ボンド磁石の製造方
法は、希土類−鉄系急冷凝固薄片と塑性変形能を有す
る金属粉末の混合物を冷間で圧縮し、これを解砕分級
し、コンパウンドとする工程、コンパウンドを粉末成
形して圧粉体とする工程、圧粉体を熱処理する工程か
らなる。ここで、希土類−鉄系急冷凝固薄片がソフト磁
性相とハ−ド磁性相を有するナノコンポジット材料とす
ると、より高い最大エネルギ−積の金属ボンド磁石が得
られる。また、Nd,Dy,Fe,Co,B,Ga,Z
rを含み、20℃における固有保磁力がHCJ14kOe
以上の熱間据込み(Die−Up−Setting)ま
たは水素分解/再結晶した磁気的に異方性の R−Fe
−B(RはNd/Pr)系磁石粉体を混合したコンパウ
ンドとすれば、更に、高い最大エネルギ−積の金属ボン
ド磁石が得られる。なお、それらの金属ボンド磁石に使
用する塑性変形能を有する金属粉末をR−Fe−B(R
はNd/Pr)系急冷凝固薄片との濡れ性に優れた亜鉛
としたり、金属ボンド磁石表面に非鉄金属層を設けるこ
とで、300℃以上の耐熱性と耐湿性を確保することも
できる。
【0009】上記、金属ボンド磁石の熱処理の手段とし
ては、コンパウンドを圧縮成形した圧粉体を一対の電極
で挟み、当該電極を介してパルス電流を圧粉体に通電
し、希土類−鉄系急冷凝固薄片の結晶化温度以下、塑性
変形能を有する金属粉末の融点以上に加熱すると、加熱
時の磁気特性の劣化を抑えることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、上記従来技術に鑑みて
なされたもので、磁石と電機子鉄心とが対向した空間に
強力な静磁界を与え、磁石モ−タの高出力化や低消費電
力化を促進する金属ボンド磁石の製造方法の提供を目的
とする。
【0011】つまり、本発明の金属ボンド磁石の製造方
法は、希土類−鉄系急冷凝固薄片と塑性変形能を有す
る金属粉末の混合物を冷間で圧縮し、これを解砕分級
し、コンパウンドとする工程、コンパウンドを粉末成
形して圧粉体とする工程、圧粉体を熱処理する工程か
らなる金属ボンド磁石の製造方法である。
【0012】次に、本発明で言う希土類−鉄系急冷凝固
薄片とは、例えばJ.F.Herbest,“Rare
Earth−Iron−Boron Materia
ls;A New Era in Permanent
Magnets”Ann.Rev.Sci. Vol
−16.(1986)に記載されているようにNd:F
e:Bを2:14:1に近い割合で含む溶湯合金を急冷
凝固し、適宜熱処理により結晶粒径20〜50nmのN
2Fe14B相を析出させたもので、一般に残留磁化J
r=8kG,固有保磁力HCJ≧8kOeの磁気的に等方
性の薄片である。とくに、R−Fe−B(RはNd/P
r)系急冷凝固薄片がソフト磁性相とハ−ド磁性相を有
するナノコンポジット材料であると高い最大エネルギ−
積の金属ボンド磁石が得られる。
【0013】また、1−5SmCo、2−17SmC
o、2−17−3SmFeNなど磁気的に異方性の希土
類−鉄系磁石粉体も対象となる。とくに好ましい磁気的
に異方性の希土類−鉄系磁石粉体は、例えばM.Dos
er,V.Panchanathan;"Pulver
izing anisotropic rapidly
solidified Nd−Fe−B materi
als for bonded magnet";J.
Appl.Phys.70(10),15にあるよう
に、R−Fe−B系急冷凝固薄片をホットプレスしたフ
ルデンス磁石を熱間据込み加工(Dei−Up−Set
ting)で磁気異方化したのち、このバルク磁石を水
素吸蔵粉砕したHD磁石粉体。或いはR.Nakaya
ma,T.Takeshita et al;Magn
etic propertiesand micros
tructures of Nd−Fe−B magn
et powder produced by hyd
rogen treatment.,J.Appl.P
hys.70(7)(1991)に記載されているよう
な水素分解/再結晶磁石(HDDR)粉体である。とく
に、Nd,Dy,Fe,Co,B,Ga,Zrを含み、
20℃における固有保磁力がHCJ14kOe以上の熱間
据込み(Die−Up−Setting)または水素分
解/再結晶した磁気的に異方性の R−Fe−B(Rは
Nd/Pr)系磁石粉体を混合したコンパウンドとすれ
ば、更に、高い最大エネルギ−積の金属ボンド磁石が得
られる。なお、それらの金属ボンド磁石に使用する塑性
変形能を有する金属粉末をR−Fe−B(RはNd/P
r)系急冷凝固薄片との濡れ性に優れた亜鉛したり、金
属ボンド磁石表面に非鉄金属層を設けることにより、3
00℃以上の耐熱性と耐環境性を確保することもでき
る。
【0014】上記、金属ボンド磁石の熱処理の手段とし
ては、コンパウンドを圧縮成形した圧粉体を一対の電極
で挟み、電極を介した圧粉体に直接パルス電流を通電
し、希土類−鉄系急冷凝固薄片の結晶化温度以下、塑性
変形能を有する金属粉末の融点以上に加熱すると、加熱
時の磁気特性の劣化を抑えるのに効果的である。
【0015】したがって、R−Fe−B系急冷凝固薄片
が塑性変形能を有する金属粒子で圧着された構成の均質
なコンパウンドであるため、粉末成形のフィ−ド内で
の成分分離が起こらず、均質な圧粉体を生産することが
できる。加熱時の磁気特性の劣化を抑えながら300
℃以上の耐熱性と耐湿性を有する金属ボンド磁石が得ら
れる。このため、本発明の金属ボンド磁石を実装した磁
石モ−タは、特公平6−87634号公報に開示された
磁気的に等方性のR−Fe−B(RはNd/Pr)系急
冷凝固薄片と結合剤とを圧縮した外径25mm以下、密
度5g/cm3以上の環状樹脂磁石で構成した磁石モ−
タよりも、電機子鉄心との空隙により強い静磁界を発生
させることが可能となり、磁石モ−タの高出力化や低消
費電流化を促進することができる。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例により、更に詳しく説
明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではな
い。
【0017】[顆粒状コンパウンドの作成]R−Fe−
B系急冷凝固薄片として合金組成Nd12Fe77Co
56、Nd11Fe81.5Co0.55.5、Nd10.5Fe83.5
Co0.55.5、Nd10.5Fe83.56、Nd10Fe82.5
0.57の5種を使用した。合金組成Nd12Fe77Co
56急冷凝固薄片は結晶粒子径20〜50nmのNd2
Fe14B相、他の急冷凝固薄片は結晶粒子径20〜50
nmのNd2Fe14B相とαFe相とのナノコンポジッ
ト組織を呈し、磁気的には等方性である。
【0018】図2は250μmの篩を通過した上記R−
Fe−B系急冷凝固薄片の外観を示す。薄片の厚さは2
0〜30μmである。
【0019】上記、急冷凝固薄片5種を、それぞれ粒子
径250μm以下に分級し、平均粒子径5〜6μmの亜
鉛粉末を5,10,15,20,25重量%となるよう
V型混合機で混合し、それら混合物を4ton/cm2
の圧力で冷間圧縮して圧粉体とした。この圧粉体をカッ
タ−ミルで解砕し、解砕物を250μm以下に分級し
た。
【0020】図3は分級した解砕物の走査電子顕微鏡に
よる外観図である。図から明らかなように、解砕物は顆
粒状のコンパウンドとなっている。急冷凝固薄片そのも
のは結晶化温度(約600℃)以下では脆い固体である
から圧縮によって単純に破砕されるだけである。顆粒状
コンパウンドが得られる理由は、急冷凝固薄片間に介在
する亜鉛粉末が冷間圧縮圧力で塑性変形し、その際の機
械的な圧着力が生じることによる。なお、これらの顆粒
状コンパウンドはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カル
シウムなど高級脂肪酸或いはその金属石鹸類などの滑剤
を必要に応じて適宜添加し、粉末成形性を調整すること
もできる。
【0021】一方、特公平6−42409号公報に記載
されているような、R−Fe−B系急冷凝固薄片97.
5wt%と、室温で固体のビスフェノ−ル型エポキシと
イソシアネ−ト再生体からなる結合剤2.5wt%を有
機溶剤で溶液とし、湿式混合、脱溶剤、解砕、分級した
複合物100重量部に0.2重量部のステアリン酸カル
シウムを添加した顆粒状コンパウンドを用意した。
【0022】[粉末成形による圧粉体の製造]上記、本
発明に掛かる顆粒状コンパウンド、および固体エポキシ
樹脂を結合剤とした顆粒状コンパウンドを粉末成形機の
フィ−ダカップに供給し、キャビティへの充填、圧縮、
離型動作など通常の粉末成形によって直径5mm,高さ
5mmの圧粉体をつくった。ただし、圧縮圧力は8to
n/cm2である。何れの顆粒状コンパウンドも、粉末
成形を連続して繰返しても動作に支障なかった。しか
し、特開平4−16753号公報に準拠し、図1のR−
Fe−B系急冷凝固薄片と平均粒子径5〜6μmの亜鉛
粉末を単純に混合した混合物で粉末成形しても、キャビ
ティを形成するダイ、パンチの摺動部の僅かなクリアラ
ンスに粉末が入り込んで成形動作が停止したり、或いは
また、フィ−ダカップの前進後退の動きが原因となって
混合物の分離が生じ、常法にしたがった粉末成形では均
質な圧粉体を連続的に自動成形することができなかっ
た。
【0023】すなわち、均質な圧粉体を連続的に粉末成
形するには、本発明のようにR−Fe−B系急冷凝固薄
片と塑性変形能を有する金属粉末を単に混合するのでは
なく、混合物を冷間圧縮し、金属粉末の塑性変形による
機械的圧着よって急冷凝固薄片相互を固着した図2に示
すような顆粒状コンパウンドとすることが必要である。
【0024】[金属ボンド磁石の製造と磁気性能]上記
顆粒状コンパウンドを粉末成形した圧粉体を50kg/
cm2の圧力で一対の黒鉛電極間に挟み込み、大気中で
電流密度1500A/cm2を0.5sec通電、0.
5sec休止するパルス通電動作を10sec行った。
これによりR−Fe−B系急冷凝固薄片を機械的圧着で
結合している亜鉛粉末は瞬時に溶融拡散し、連続相を形
成する。そのため、圧粉体の機械的強度は亜鉛粉末の混
合量にもよるが、2倍以上に強化された所謂、金属ボン
ド磁石を得た。
【0025】図4は、金属ボンド磁石の磁気特性と密度
を、もとの亜鉛量に対してプロットした特性図である。
ただし、急冷凝固薄片の合金組成はNd11Fe81.5Co
0.55.5、磁磁気性能は50kOeパルス着磁後の金属
ボンド磁石をVSM(試料振動型磁力計:測定磁界Hm
±20kOe)で、密度はアルキメデス法で求めた値で
ある。金属ボンド磁石の磁気特性は通常の樹脂ボンド磁
石と同様にR−Fe−B系急冷凝固薄片の充填率に依存
するが、亜鉛量5wt%のとき、最大エネルギ−積[B
H]maxは12.5MGOeに達する。密度は通常の
ボンド磁石と異なり亜鉛量が増すと増加傾向を示す。
【0026】図5は、合金組成を異にする急冷凝固薄片
そのものと、金属ボンド磁石の最大エネルギ−積[B
H]maxを、もとの急冷凝固薄片の固有保磁力Hcj
でプロットした特性図である。合金組成はNd11Fe
81.5Co0.55.5の金属ボンド磁石が最も高い最大エネ
ルギ−積[BH]maxを示す。また、合金組成に拘わ
らず亜鉛量10wt%で図中白抜き丸プロットした2.
5wt%の固体エポキシを使った樹脂ボンド磁石と、ほ
ぼ同じ最大エネルギ−積[BH]maxが得られる。す
なわち、本発明に掛かる金属ボンド磁石はパルス通電に
よる熱処理で磁気特性の劣化を起こさず、従来の樹脂ボ
ンド磁石の最大エネルギ−積[BH]maxを上回る磁
気性能を引出すこともできる。
【0027】なお、本発明に掛かる顆粒状コンパウンド
に合金組成Nd12.3Dy0.3Fe64. 6Co12.36.0Ga
0.6Zr0.1、粒子径42〜105μmを80wt%以上
含む水素分解/再結晶した磁気的に異方性のR−Fe−
B系磁石粉体(残留磁化Br11.5kG,固有保磁力
Hcj15.3kOe)を90wt%混合し、磁場成形
(12kOe)した圧粉体を50kg/cm2の圧力で
一対の黒鉛電極間に挟み込み、大気中で電流密度150
0A/cm2を0.5sec通電、0.5sec休止す
るパルス通電動作を10sec行って異方性金属ボンド
磁石とした。この異方性金属ボンド磁石の50kOeパ
ルス着磁後の最大エネルギ−積は[BH]maxは1
7.2MGOeであった。すなわち、磁気的に異方性の
R−Fe−B(RはNd/Pr)系磁石粉体を使用する
ことで金属ボンド磁石の最大エネルギ−積[BH]ma
xを更に高めることもできる。
【0028】また、本発明に掛かる顆粒状コンパウンド
に合金組成Sm2Fe173、粒子径2〜3μmの磁気的
に異方性のR−Fe−N系磁石粉末(残留磁化Br1
2.8kG,固有保磁力Hcj8kOe)を混合し、磁
場成形(12kOe)した圧粉体を50kg/cm2
圧力で一対の黒鉛電極間に挟み込み、大気中で電流密度
1500A/cm2を0.5sec通電、0.5sec
休止するパルス通電動作を10sec行って異方性金属
ボンド磁石とした。
【0029】図6は、上記金属ボンド磁石の固有保磁力
Hcjと亜鉛の混合量との関係を示す特性図である。も
とのR−Fe−N系磁石粉末の固有保磁力Hcj8kO
eに対し、パルス通電で金属ボンド磁石の固有保磁力H
cjが向上している。また、亜鉛量15wt%以上であ
れば、その後の熱処理によって更に固有保磁力Hcjが
向上する。
【0030】[金属ボンド磁石の耐湿性]図5は、R−
Fe−B系急冷凝固薄片と亜鉛との顆粒状コンパウンド
を粉末成形して圧粉体をパルス通電によって金属ボンド
磁石としたときの表層の亜鉛量を、もとの亜鉛粉末混合
量に対してプロットした特性図である。ただし、表層の
亜鉛量はエネルギ−分散型X線分析器で測定した結果で
ある。図のように、金属ボンド磁石表層の亜鉛量は、も
との亜鉛粉末混合量よりも多い。すなわち、表層は亜鉛
リッチ層ができている。
【0031】上記のような金属ボンド磁石を60℃、9
0%RHの雰囲気に500hrs放置したときの錆の発
生を調べたが、亜鉛粉末混合量5wt%の金属ボンド磁
石では点状の発錆が僅かに観察されたが、10,15,
20,25wt%の金属ボンド磁石では目視では観察し
難い点状の発錆しかなかった。
【0032】なお、上記金属ボンド磁石に2〜3μmの
亜鉛メッキを施すと一方、特公平6−42409号公報
に記載されているような、R−Fe−B系急冷凝固薄片
97.5wt%と、室温で固体のビスフェノ−ル型エポ
キシとイソシアネ−ト再生体からなる結合剤2.5wt
%を有機溶剤で溶液とし、湿式混合、脱溶剤、解砕、分
級した複合物100重量部に0.2重量部のステアリン
酸カルシウムを添加した顆粒状コンパウンドを粉末成形
して圧粉体としたものを160℃で硬化した樹脂ボンド
磁石は亜鉛粉末混合量5wt%の金属ボンド磁石よりも
広い範囲で発錆が認められた。
【0033】
【発明の効果】以上のように本発明は、上記従来技術に
鑑みてなされたもので、磁石と電機子鉄心とが対向した
空間に強力な静磁界を与え、磁石モ−タの高出力化や低
消費電力化を促進する金属ボンド磁石の製造方法の提供
を目的とする。
【0034】つまり、本発明の金属ボンド磁石の製造方
法は、希土類−鉄系急冷凝固薄片と塑性変形能を有す
る金属粉末の混合物を冷間で圧縮し、これを解砕分級
し、コンパウンドとする工程、コンパウンドを粉末成
形して圧粉体とする工程、圧粉体を熱処理する工程か
らなる。ここで、希土類−鉄系急冷凝固薄片がソフト磁
性相とハ−ド磁性相を有するナノコンポジット材料とす
ると、より高い最大エネルギ−積の金属ボンド磁石が得
られる。また、Nd,Dy,Fe,Co,B,Ga,Z
rを含み、20℃における固有保磁力がHCJ14kOe
以上の熱間据込み(Die−Up−Setting)ま
たは水素分解/再結晶した磁気的に異方性のR−Fe−
B系磁石粉体を混合したコンパウンドとすれば、更に、
高い最大エネルギ−積の金属ボンド磁石が得られる。な
お、それらの金属ボンド磁石に使用する塑性変形能を有
する金属粉末をR−Fe−B系急冷凝固薄片との濡れ性
に優れた亜鉛としたり、金属ボンド磁石表面に非鉄金属
層を設けることで、300℃以上の耐熱性と耐湿性を確
保することもできる。
【0035】上記、金属ボンド磁石の熱処理の手段とし
ては、コンパウンドを圧縮成形した圧粉体を一対の電極
で挟み、当該電極を介してパルス電流を圧粉体に通電
し、希土類−鉄系急冷凝固薄片の結晶化温度以下、塑性
変形能を有する金属粉末の融点以上に加熱すると、加熱
時の磁気特性の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁石モ−タの構成図
【図2】急冷凝固薄片の外観図
【図3】分級した解砕物の外観図
【図4】金属ボンド磁石の磁気特性と密度を、もとの亜
鉛量に対してプロットした特性図
【図5】金属ボンド磁石の最大エネルギ−積[BH]m
axを、もとの急冷凝固薄片の固有保磁力Hcjでプロ
ットした特性図
【図6】金属ボンド磁石の固有保磁力Hcjと亜鉛の混
合量との関係を示す特性図
【符号の説明】
1 基板 2 電機子鉄心 3 巻線 4 軸受 5 回転軸 6 回転子枠 7 磁石
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐々木 雄一朗 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5E062 CD04 CE01 CE04 CG01 CG02 CG03 CG07

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 希土類−鉄系急冷凝固薄片と塑性変形能
    を有する金属粉末の混合物を冷間圧縮し、これを解砕分
    級し、コンパウンドとする工程、コンパウンドを粉末成
    形して圧粉体とする工程、圧粉体を熱処理する工程とか
    らなる金属ボンド磁石の製造方法。
  2. 【請求項2】 希土類−鉄系急冷凝固薄片がソフト磁性
    相とハ−ド磁性相を有するナノコンポジット材料である
    請求項1記載の金属ボンド磁石の製造方法。
  3. 【請求項3】 磁気的に異方性の希土類−鉄系磁石粉体
    を混合したコンパウンドである金属ボンド磁石の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 磁気的に異方性の希土類磁石粉体が溶湯
    合金を急冷凝固、熱間据込み(Die−Up−Sett
    ing)または水素分解/再結晶した R−Fe−B
    (RはNd/Pr)系磁石粉体の1種または2種以上で
    ある請求項1記載の金属ボンド磁石の製造方法。
  5. 【請求項5】 熱間据込み(Die−Up−Setti
    ng)または水素分解/再結晶(HDDR)した R−
    Fe−B(RはNd/Pr)系磁石粉体の20℃におけ
    る固有保磁力がHCJ14kOe以上である請求項4記載
    の金属ボンド磁石の製造方法。
  6. 【請求項6】 水素分解/再結晶した磁石粉体がNd,
    Dy,Fe,Co,B,Ga,Zrを含む請求項5記載
    の金属ボンド磁石の製造方法。
  7. 【請求項7】 塑性変形能を有する金属粉末が亜鉛であ
    る請求項1記載の金属ボンド磁石の製造方法。
  8. 【請求項8】 金属ボンド磁石表面に非鉄金属層を設け
    た請求項1記載の金属ボンド磁石の製造方法。
  9. 【請求項9】 一対の電極で圧粉体を挟み、電極を介し
    たパルス電流で熱処理する請求項1記載の金属ボンド磁
    石の製造方法。
  10. 【請求項10】 塑性変形能を有する金属粉末の融点が
    希土類−鉄系急冷凝固薄片の結晶化温度以下である請求
    項1または請求項9記載の金属ボンド磁石の製造方法。
  11. 【請求項11】 希土類−鉄系急冷凝固薄片と塑性変形
    能を有する金属粉末の混合物を冷間圧縮し、これを解砕
    分級し、コンパウンドとする工程、コンパウンドを粉末
    成形して圧粉体とする工程、圧粉体を熱処理する工程と
    からなる金属ボンド磁石を実装した磁石モ−タ。
  12. 【請求項12】 希土類−鉄系急冷凝固薄片と塑性変形
    能を有する金属粉末の混合物を冷間圧縮し、これを解砕
    分級し、コンパウンドとする工程、コンパウンドを粉末
    成形して圧粉体とする工程、圧粉体を熱処理する工程、
    非鉄金属層を設ける工程とからなる金属ボンド磁石を実
    装した磁石モ−タ。
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