JP2000248269A - 帯電防止膜及び表示装置 - Google Patents

帯電防止膜及び表示装置

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JP2000248269A
JP2000248269A JP11050680A JP5068099A JP2000248269A JP 2000248269 A JP2000248269 A JP 2000248269A JP 11050680 A JP11050680 A JP 11050680A JP 5068099 A JP5068099 A JP 5068099A JP 2000248269 A JP2000248269 A JP 2000248269A
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yttrium
electron
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English (en)
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Nobuaki Oguri
宣明 大栗
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Canon Inc
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  • Vessels, Lead-In Wires, Accessory Apparatuses For Cathode-Ray Tubes (AREA)
  • Cathode-Ray Tubes And Fluorescent Screens For Display (AREA)
  • Elimination Of Static Electricity (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 安定性が高く、再現性が良いスペーサ用帯電
防止膜およびそれを用いた表示装置を提供する。 【解決手段】 イットリウムと遷移金属の合金窒化膜で
あることを特徴とする帯電防止膜10c;および、複数
の冷陰極型電子放出素子を形成した基板2と発光材料を
形成した透明基板7とをスペーサー10を介して対向さ
せた構造を有する表示装置において、スペーサー10
が、絶縁部材10aの表面にイットリウムと遷移金属と
の合金窒化膜10cが被覆されていることを特徴とする
表示装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、帯電防止膜、及
び、帯電防止膜を応用した画像表示装置に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】奥行きの薄い平面型ディスプレイは省ス
ペースかつ軽量であることから、ブラウン管型ディスプ
レイに置き変わるものとして注目される。現在平面型デ
ィスプレイには液晶型、プラズマ発光型、マルチ電子源
を用いたものがある。プラズマ発光型およびマルチ電子
源ディスプレイは視野角が大きく、画質がブラウン管並
みであるために高品位な画像の表示が可能である。
【0003】図1は多数の微小な電子源を使用したディ
スプレイの断面模式図であり、1は基板2上に形成され
た電子源、4は蛍光体が形成されたガラス基板である。
電子源は高密度化が可能な円錐状あるいは針状の先端か
ら電子を電界放出させる電界放出型電子素子あるいは表
面伝導型電子放出素子などの冷陰極電子放出素子が開発
されている。この図は電子源を駆動するための配線は省
略してある。ディスプレイの表示面積が大きくなるにし
たがい、内部の真空と外部の大気圧差による基板の変形
を抑えるため基板および前面ガラス板を厚くする必要が
ある。これはディスプレイの重量を増加させるのみなら
ず、斜めから見たときに画像のひずみをもたらす。そこ
で、比較的薄いガラス板を使用して大気圧を支えるため
基板と前面ガラス間はスペーサあるいはリブと呼ばれる
構造支持体が用いられる。電子源が形成された基板と蛍
光体が形成された前面ガラス間は通常サブミリないし数
ミリに保たれ、前述したように内部は高真空に保持され
ている。電子源からの放出電子を加速するために電子源
と蛍光体との間には数百V以上の高電圧が印加されてい
る。すなわち、蛍光体と電子源との間には電界強度にし
て1kV/mmを越える強電界が印加されるためスペー
サ部での放電が懸念される。また、スペーサは近傍電子
源から放出された電子の一部が当たることにより、ある
いは放出電子によりイオン化した正イオンがスペーサに
付着することにより帯電をひきおこす。スペーサの帯電
により電子源から放出された電子はその軌道を曲げら
れ、蛍光体上の正規な位置とは異なる場所に到達し、表
示画像を前面ガラスを介して見たとき、スペーサ近傍の
画像がゆがんで表示される。この問題点を解決するため
に、スペーサに微小電流が流れるようにして帯電を除去
する提案がなされている(特開昭57−118355
号、特開昭61−124031号)。
【0004】そこでは絶縁性のスペーサの表面に高抵抗
薄膜を形成することにより、スペーサ表面に微小電流が
流れるようにしている。ここで用いられている帯電防止
膜は酸化スズ、あるいは酸化スズと酸化インジウム混晶
薄膜や金属膜である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来例に使用され
た酸化スズ等の半導体型薄膜はガスセンサに応用される
ほど酸素等のガスに敏感なため雰囲気でその抵抗値が変
化しやすい。また、これらの材料や金属膜は比抵抗が小
さいために高抵抗化するには島状に成膜したり、極めて
薄膜化する必要がある。すなわち、従来の高抵抗膜は成
膜の再現性が乏しかったり、ディスプレイ作製工程での
フリット封着やベーキングといった熱工程で抵抗値が変
化しやすいという欠点がある。
【0006】本発明は上記従来スペーサの欠点を克服
し、安定性が高く、再現性が良いスペーサ用帯電防止膜
およびそれを用いた表示装置を提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、イットリウム
と遷移金属の合金窒化膜であることを特徴とする帯電防
止膜である。
【0008】さらに本発明は、複数の冷陰極型電子放出
素子を形成した基板と発光材料を形成した透明基板とを
スペーサーを介して対向させた構造を有する表示装置に
おいて、該スペーサーが、絶縁部材の表面にイットリウ
ムと遷移金属との合金窒化膜が被覆されていることを特
徴とする表示装置である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。
【0010】帯電防止膜は、絶縁性材質の表面を導電性
膜で被覆することにより、絶縁性材質表面に蓄積した電
荷を除去するものであり、通常、帯電防止膜の表面抵抗
(シート抵抗Rs)が12乗Ω以下であることが必要で
ある。さらに、十分な帯電防止効果を得るためにはより
低い抵抗値であればよく11乗Ω以下であることが好ま
しく、より低抵抗であれば除電効果が向上する。
【0011】帯電防止膜を上記ディスプレイのスペーサ
に適応した場合においては、スペーサの表面抵抗値Rs
は帯電防止および消費電力からその望ましい範囲に設定
される。シート抵抗の下限はスペーサにおける消費電力
により制限される。低抵抗であるほどスペーサに蓄積す
る電荷を速やかに除去することが可能となるが、スペー
サで消費される電力が大きくなる。スペーサに使用する
帯電防止膜としては比抵抗が小さい金属膜よりは半導電
性の材料であることが好ましい。その理由は比抵抗が小
さい材料を用いた場合、表面抵抗Rsを所望の値にする
ためには帯電防止膜の厚みを極めて薄くしなければなら
ないからである。薄膜材料の表面エネルギーおよび基板
との密着性や基板温度によっても異なるが、一般的に1
0nm以下の薄膜は島状となり、抵抗が不安定で成膜再
現性に乏しい。
【0012】従って、比抵抗値が金属導電体より大き
く、絶縁体よりは小さい範囲にある半導電性材料が好ま
しいのであるが、これらは抵抗温度係数が負の材料が多
い。抵抗温度係数が負であると、スペーサ表面で消費さ
れる電力による温度上昇で抵抗値が減少し、さらに発熱
し温度が上昇しつづけ、過大な電流が流れる、いわゆる
熱暴走を引き起こす。しかし、発熱量すなわち消費電力
と放熱のバランスがとれた状況では熱暴走は発生しな
い。また、帯電防止膜材料の抵抗温度係数TCRの絶対
値が小さいければ熱暴走しにくい。
【0013】TCRが−1%の帯電防止膜を用いた条件
でスペーサ1平方cm当たりの消費電力がおよそ0.1
Wを越えるようになるとスペーサに流れる電流が増加し
つづけ、熱暴走状態となることが実験で認められた。こ
れはもちろんスペーサ形状とスペーサ間に印加される電
圧Vaおよび帯電防止膜の抵抗温度係数により左右され
るが、以上の条件から、消費電力が1平方cmあたり
0.1Wを越えないRsの値は10×Va2Ω以上であ
る。すなわち、スペーサ上に形成した帯電防止膜のシー
ト抵抗Rsは10×Va2Ωから11乗Ωの範囲に設定
される必要がある。
【0014】上述したように絶縁性スペーサ上に形成さ
れた帯電防止膜の厚みtは10nm以上が望ましい。一
方膜厚tが1μm以上では膜応力が大きくなって膜はが
れの危険性が高まり、また成膜時間が長くなるため生産
性が悪い。従って、膜厚は10nm〜1μm、さらには
20〜500nmであることが望ましい。
【0015】比抵抗ρはシート抵抗Rsと膜厚tの積で
あり、以上に述べたRsとtの好ましい範囲から、帯電
防止膜の比抵抗ρは10-5×Va2〜107Ωcmである
必要がある。さらにシート抵抗と膜厚のより好ましい範
囲を実現するためには、ρは(2×10-5)Va2〜5
×106Ωcmとするのが良い。
【0016】ディスプレイにおける電子の加速電圧Va
は100V以上であり、十分な輝度を得るためには1k
Vの電圧を要する。Va=1kVの条件においては、帯
電防止膜の比抵抗は10〜107Ωcmが好ましい範囲
である。
【0017】以上に述べた帯電防止膜の特性を実現する
材料を鋭意検討した結果、イットリウムと遷移金属との
合金窒化膜が帯電防止膜として極めて優れていることを
見いだした。遷移金属はTi,V,Cr,Mn,Fe,
Co.Ni,Cu,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W
等の中から選ばれるものであり、これらを単独で使用し
ても良いが、2種以上の遷移金属を合わせて用いること
も可能である。遷移金属窒化物は金属的な良導電体であ
り、窒化イットリウムは絶縁体である。イットリウムと
遷移金属との合金窒化膜はイットリウムと遷移金属の組
成を調整することにより、良導電体からほぼ絶縁体まで
広い範囲に比抵抗値を制御できる。すなわち、スペーサ
用帯電防止膜として望ましい上述した比抵抗値を組成を
変えることにより実現することができる。さらには後述
する表示装置作製の工程において抵抗値の変化が少なく
安定な材料であることがわかった。かつ、その抵抗温度
係数は負であるが絶対値は1%より小さく熱暴走しにく
い材料である。さらに、窒化物は酸化物に比較すると二
次電子放出係数が小さいことから、電子の照射により帯
電しにくく、電子線を利用したディスプレイに適した材
料である。
【0018】本発明の帯電防止膜であるイットリウムと
遷移金属との合金窒化膜はスパッタ法、反応性スパッタ
法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、イオ
ンアシスト蒸着法、CVD法等の薄膜形成手段により絶
縁性部材上に形成することができる。たとえばスパッタ
法の場合は、イットリウムおよび遷移金属のターゲット
を窒素あるいはアンモニアを含むガス中でスパッタする
ことにより、スパッタ金属原子を窒化し、イットリウム
と遷移金属との合金窒化膜が得られる。あらかじめ組成
を調整したイットリウムと遷移金属の合金ターゲットを
用いることも可能である。ガス圧、窒素分圧、成膜速度
等のスパッタ条件を調整することにより、窒化膜中の窒
素量が変化するが、十分窒化させたほうが膜の安定性が
良い。
【0019】以上、ディスプレイ用スペーサ帯電防止膜
に関して説明したが、イットリウムと遷移金属との合金
窒化物は高融点材料でかつ硬度が高い性質を有するの
で、ディスプレイのスペーサ用途のみならず他の用途に
対しても有用性が高い材料である。
【0020】本発明帯電防止膜を適応した表示装置につ
いて具体的に述べる。
【0021】図1は、スペーサ10を中心とした表示装
置断面模式図である。1は電子源、2はリアプレート、
3は側壁、7はフェースプレートであり、2、3、7に
より表示パネルの内部を真空に維持するための気密容器
(外囲器8)を形成している。
【0022】スペーサ10は絶縁性基材10aの表面に
本発明の帯電防止膜10cが形成されている。スペーサ
10は外囲器8内を真空にすることにより大気圧を受け
て、真空外囲器8が破損あるいは変形するのを避けるた
めに設けられる。スペーサ10の材質、形状、配置、配
置本数は外囲器8の形状ならびに熱膨張係数等、外囲器
8の受ける大気圧、熱等を考慮して決定される。スペー
サ10の形状には、平板型、十字型、L字型等がある。
スペーサ10の利用は、画像形成装置が大型化するにし
たがって効果が顕著になる。
【0023】絶縁性基材10aはフェースプレート7お
よびリアプレート2にかかる大気圧を支持する必要から
ガラス、セラミクス等機械的強度の高く耐熱性の高い材
料が適する。フェースプレート7、リアプレート2の材
質としてガラスを用いた場合、表示装置作製工程中の熱
応力を抑えるために、スペーサの絶縁性基材10aはで
きるだけこれらの材質と同じものか、同様の熱膨張係数
の材料であることが望ましい。
【0024】絶縁性基材10aにソーダガラス等アルカ
リイオンを含むガラスを使用した場合、例えばNaイオ
ンにより帯電防止膜10cの導電性を変化させるおそれ
がある。窒化シリコン、酸化アルミニウム等のNaブロ
ック層10bを絶縁性基材10aと帯電防止膜10cの
中間に形成することでNa等アルカリイオンの帯電防止
膜10cへの侵入を抑制することができる。
【0025】帯電防止膜10cはイットリウムと遷移金
属の合金窒化膜であり、例えば遷移金属としてTi,C
r,Ta,Mo,W,を用いた。
【0026】ここで、イットリウムと遷移金属の窒素化
合物においては、好ましい比抵抗が得られる遷移金属比
率(遷移金属/イットリウム)はCrの場合でおよそ3
〜40at.%、Taの場合、およそ30〜50at.
%、Tiの場合、およそ25〜45at.%が好ましい
組成範囲である。また、遷移金属がMoの場合はMoの
原子比(Mo/Y)はおよそ、2〜30at.%、Wの
場合はおよそ5〜40at.%である。
【0027】遷移金属とイットリウムの合金窒化膜のイ
ットリウムの表面窒化率[(窒化イットリウム)/(窒
化イットリウム+酸化イットリウム)]が50%以上で
あることが望ましい。イットリウムの表面窒化率が50
%より、低下してイットリウムの酸化物の割合が増加す
ると、電子軌道が曲げられる傾向が見られるからであ
る。但し、電子軌道が曲げられても電子ビームのずれが
実用上問題とならない範囲であるならばイットリウムの
表面窒化率が50%より低くても構わない。
【0028】スペーサ10はメタルバック6およびX方
向配線9と電気的に接続することにより、スペーサ10
の両端にはほぼ加速電圧Vaが印加される。本例ではス
ペーサ10は配線上と接続されているが別途形成した電
極に接続させてもよい。さらに、フェースプレート7と
リアプレート2の間に電子ビームの整形あるいは基板絶
縁部の帯電防止を目的とした中間電極板(グリッド電極
等)を設置した構成においては、スペーサ10が中間電
極板等を貫通してもよいし、中間電極板等を介して別々
に接続してもよい。
【0029】Al,Au等良導電性である電極11をス
ペーサ10の両端に形成すると、帯電防止膜10cとフ
ェースプレート7上の電極およびリアプレート2上の電
極との電気的接続の向上に効果がある。
【0030】次に、上記説明したスペーサ10を用いた
表示装置について説明する。
【0031】図2は、実施例に用いた表示パネルの斜視
図であり、内部構造を示すためにパネルの1部を切り欠
いて示している。
【0032】図中、2はリアプレート、3は側壁、7は
フェースプレートであり、2、3、7により表示パネル
の内部を真空に維持するための気密容器(外囲器8)を
形成している。気密容器を組み立てるにあたっては、各
部材の接合部に十分な強度と気密性を保持させるため封
着する必要があるが、たとえばフリットガラスを接合部
に塗布し、大気中あるいは窒素雰囲気中で、摂氏400
〜500度で10分以上焼成することにより封着する。
気密容器内部を真空に排気する方法については後述す
る。
【0033】リアプレート2には、基板13が固定され
ているが、該基板13上には冷陰極素子1がNxM個形
成されている。(N,Mは2以上の正の整数であり、目
的とする表示画素数に応じて適宜設定される。たとえ
ば、高品位テレビジョンの表示を目的とした表示装置に
おいては、N=3000,M=1000以上の数を設定
することが望ましい。
【0034】本実施例においては、N=3072,M=
1024とした。前記NxM個の冷陰極素子1は、M本
のX方向配線9とN本のY方向配線12により単純マト
リクス配線されている。前記、1、9、12、13によ
って構成される部分をマルチ電子ビーム源と呼ぶ。な
お、マルチ電子ビーム源の製造方法や構造については、
後で詳しく述べる。
【0035】本実施例においては、気密容器のリアプレ
ート2にマルチ電子ビーム源の基板13を固定する構成
としたが、マルチ電子ビーム源の基板13が十分な強度
を有するものである場合には、気密容器のリアプレート
としてマルチ電子ビーム源の基板13自体を用いてもよ
い。
【0036】また、フェースプレート7の下面には、蛍
光膜5が形成されている。本実施例はカラー表示装置で
あるため、蛍光膜5の部分にはCRTの分野で用いられ
る赤、緑、青、の3原色の蛍光体5aが塗り分けられて
いる。各色の蛍光体5aは、たとえば図3の(a)に示
すようにストライプ状に塗り分けられ、蛍光体5aのス
トライプの間には黒色の導電体5bが設けてある。黒色
の導電体5bを設ける目的は、電子ビームの照射位置に
多少のずれがあっても表示色にずれが生じないようにす
る事や、外光の反射を防止して表示コントラストの低下
を防ぐ事、電子ビームによる蛍光膜5のチャージアップ
を防止する事などである。黒色の導電体5bには、黒鉛
を主成分として用いたが、上記の目的に適するものであ
ればこれ以外の材料を用いても良い。
【0037】また、3原色の蛍光体5aの塗り分け方は
前記図3(a)に示したストライプ状の配列に限られる
ものではなく、たとえば図3(b)に示すようなデルタ
状配列や、それ以外の配列であってもよい。
【0038】なお、モノクロームの表示パネルを作成す
る場合には、単色の蛍光体材料を蛍光膜に用いればよ
く、また黒色導電材料は必ずしも用いなくともよい。
【0039】また、蛍光膜5のリアプレート側の面に
は、CRTの分野では公知のメタルバック6を設けてあ
る。メタルバック6を設けた目的は、蛍光膜5が発する
光の一部を鏡面反射して光利用率を向上させる事や、負
イオンの衝突から蛍光膜5を保護する事や、電子ビーム
加速電圧を印加するための電極として作用させる事や、
蛍光膜5を励起した電子の導電路として作用させる事な
どである。メタルバック6は、蛍光膜5をフェースプレ
ート基板4上に形成した後、蛍光膜表面を平滑化処理
し、その上にAlを真空蒸着する方法により形成した。
なお、蛍光膜5に低電圧用の蛍光体材料を用いた場合に
は、メタルバック6は用いない。
【0040】また、本実施例では用いなかったが、加速
電圧の印加用や蛍光膜5の導電性向上を目的として、フ
ェースプレート基板4と蛍光膜5との間に、たとえばI
TOを材料とする透明電極を設けてもよい。
【0041】また、Dx1〜DxmおよびDy1〜Dy
nおよびHvは、当該表示パネルと不図示の電気回路と
を電気的に接続するために設けた気密構造の電気接続用
端子である。Dx1〜Dxmはマルチ電子ビーム源のX
方向配線9と、Dy1〜Dynはマルチ電子ビーム源の
Y方向配線12と、Hvはフェースプレート4のメタル
バック6と電気的に接続している。
【0042】また、気密容器内部を真空に排気するに
は、気密容器を組み立てた後、不図示の排気管と真空ポ
ンプとを接続し、気密容器内を10のマイナス7乗[T
orr]程度の真空度まで排気する。その後、排気管を
封止するが、気密容器内の真空度を維持するために、封
止の直前あるいは封止後に気密容器内の所定の位置にゲ
ッター膜(不図示)を形成する。ゲッター膜とは、たと
えばBaを主成分とするゲッター材料をヒーターもしく
は高周波加熱により加熱し蒸着して形成した膜であり、
該ゲッター膜の吸着作用により気密容器内は1x10マ
イナス5乗ないしは1x10マイナス7乗[Torr]
の真空度に維持される。
【0043】以上、本発明実施例の表示パネルの基本構
成を説明した。
【0044】次に、前記実施例の表示パネルに用いたマ
ルチ電子ビーム源の製造方法について説明する。本発明
の画像表示装置に用いるマルチ電子ビーム源は、冷陰極
素子を単純マトリクス配線した電子源であれば、冷陰極
素子の材料や形状あるいは製法に制限はない。したがっ
て、たとえば表面伝導型放出素子やFE型、あるいはM
IM型などの冷陰極素子を用いることができる。
【0045】ただし、表示画面が大きくてしかも安価な
表示装置が求められる状況のもとでは、これらの冷陰極
素子の中でも、表面伝導型放出素子が特に好ましい。す
なわち、FE型ではエミッタコーンとゲート電極の相対
位置や形状が電子放出特性を大きく左右するため、極め
て高精度の製造技術を必要とするが、これは大面積化や
製造コストの低減を達成するには不利な要因となる。ま
た、MIM型では、絶縁層と上電極の膜厚を薄くてしか
も均一にする必要があるが、これも大面積化や製造コス
トの低減を達成するには不利な要因となる。
【0046】その点、表面伝導型放出素子は、比較的製
造方法が単純なため、大面積化や製造コストの低減が容
易である。また、発明者らは、表面伝導型放出素子の中
でも、電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形
成したものがとりわけ電子放出特性に優れ、しかも製造
が容易に行えることを見いだしている。したがって、高
輝度で大画面の画像表示装置のマルチ電子ビーム源に用
いるには、最も好適であると言える。そこで、上記実施
例の表示パネルにおいては、電子放出部もしくはその周
辺部を微粒子膜から形成した表面伝導型放出素子を用い
た。そこで、まず好適な表面伝導型放出素子について基
本的な構成と製法および特性を説明し、その後で多数の
素子を単純マトリクス配線したマルチ電子ビーム源の構
造について述べる。
【0047】(表面伝導型放出素子の好適な素子構成と
製法)電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形
成する表面伝導型放出素子の代表的な構成には、平面型
と垂直型の2種類があげられる。
【0048】(平面型の表面伝導型放出素子)まず最初
に、平面型の表面伝導型放出素子の素子構成と製法につ
いて説明する。
【0049】図4に示すのは、平面型の表面伝導型放出
素子の構成を説明するための平面図(a)および断面図
(b)である。図中、13は基板、14と15は素子電
極、16は導電性薄膜、17は通電フォーミング処理に
より形成した電子放出部、18は通電活性化処理により
形成した薄膜である。
【0050】基板13としては、たとえば、石英ガラス
や青板ガラスをはじめとする各種ガラス基板や、アルミ
ナをはじめとする各種セラミクス基板、あるいは上述の
各種基板上にたとえばSiO2を材料とする絶縁層を積
層した基板、などを用いることができる。
【0051】また、基板13上に基板面と平行に対向し
て設けられた素子電極14と15は、導電性を有する材
料によって形成されている。たとえば、Ni,Cr,A
u,Mo,W,Pt,Ti,Cu,Pd,Ag等をはじ
めとする金属、あるいはこれらの金属の合金、あるいは
In23−SnO2をはじめとする金属酸化物、ポリシ
リコンなどの半導体、などの中から適宜材料を選択して
用いればよい。電極を形成するには、たとえば真空蒸着
などの製膜技術とフォトリソグラフィー、エッチングな
どのパターニング技術を組み合わせて用いれば容易に形
成できるが、それ以外の方法(たとえば印刷技術)を用
いて形成してもさしつかえない。
【0052】素子電極14と15の形状は、当該電子放
出素子の応用目的に合わせて適宜設計される。一般的に
は、電極間隔Lは通常は数十nmから数十μmの範囲か
ら適当な数値を選んで設計されるが、なかでも表示装置
に応用するために好ましいのは数μmより数十μmの範
囲である。また、素子電極の厚さdについては、通常は
数十nmから数μmの範囲から適当な数値が選ばれる。
【0053】また、導電性薄膜16の部分には、微粒子
膜を用いる。ここで述べた微粒子膜とは、構成要素とし
て多数の微粒子を含んだ膜(島状の集合体も含む)のこ
とをさす。微粒子膜を微視的に調べれば、通常は、個々
の微粒子が離間して配置された構造か、あるいは微粒子
が互いに隣接した構造か、あるいは微粒子が互いに重な
り合った構造が観測される。
【0054】微粒子膜に用いた微粒子の粒径は、10分
の数nmから数百nmの範囲に含まれるものであるが、
なかでも好ましいのは1nmから20nmの範囲のもの
である。また、微粒子膜の膜厚は、以下に述べるような
諸条件を考慮して適宜設定される。すなわち、素子電極
14あるいは15と電気的に良好に接続するのに必要な
条件、後述する通電フォーミングを良好に行うのに必要
な条件、微粒子膜自身の電気抵抗を後述する適宜の値に
するために必要な条件、などである。
【0055】具体的には、十分の数nmから数百nmの
範囲のなかで設定するが、なかでも好ましいのは1nm
から50nmnの間である。
【0056】また、微粒子膜を形成するのに用いられう
る材料としては、たとえば、Pd,Pt,Ru,Ag,
Au,Ti,In,Cu,Cr,Fe,Zn,Sn,T
a,W,Pb,などをはじめとする金属や、PdO,S
nO2,In23,PbO,Sb23,などをはじめと
する酸化物や、HfB2,ZrB2,LaB6,CeB6
YB4,GdB4,などをはじめとする硼化物や、Ti
C,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC,などをは
じめとする炭化物や、TiN,ZrN,HfN,などを
はじめとする窒化物や、Si,Ge,などをはじめとす
る半導体や、カーボン、などがあげられ、これらの中か
ら適宜選択される。
【0057】以上述べたように、導電性薄膜16を微粒
子膜で形成したが、そのシート抵抗値については、10
の3乗から10の7乗[オーム/sq]の範囲に含まれ
るよう設定した。
【0058】なお、導電性薄膜16と素子電極14およ
び15とは、電気的に良好に接続されるのが望ましいた
め、互いの一部が重なりあうような構造をとっている。
その重なり方は、図4の例においては、下から、基板1
3、素子電極14.15、導電性薄膜16の順序で積層
したが、場合によっては下から基板13、導電性薄膜1
6、素子電極14.15、の順序で積層してもさしつか
えない。
【0059】また、電子放出部17は、導電性薄膜16
の一部に形成された亀裂状の部分であり、電気的には周
囲の導電性薄膜16よりも高抵抗な性質を有している。
亀裂は、導電性薄膜16に対して、後述する通電フォー
ミングの処理を行うことにより形成する。亀裂内には、
十分の数nmから数十nmの粒径の微粒子を配置する場
合がある。なお、実際の電子放出部の位置や形状を精密
かつ正確に図示するのは困難なため、図4においては模
式的に示した。
【0060】また、薄膜18は、炭素もしくは炭素化合
物よりなる薄膜で、電子放出部17およびその近傍を被
覆している。薄膜18は、通電フォーミング処理後に、
後述する通電活性化の処理を行うことにより形成する。
【0061】薄膜18は、単結晶グラファイト、多結晶
グラファイト、非晶質カーボン、のいずれかか、もしく
はその混合物であり、膜厚は50nm以下とするが、3
0nm以下とするのがさらに好ましい。
【0062】なお、実際の薄膜18の位置や形状を精密
に図示するのは困難なため、図4においては模式的に示
した。また、平面図(a)においては、薄膜18の一部
を除去した素子を図示した。
【0063】以上、好ましい素子の基本構成を述べた
が、実施例においては以下のような素子を用いた。すな
わち、基板13には青板ガラスを用い、素子電極14と
15にはNi薄膜を用いた。素子電極の厚さdは100
nm、電極間隔Lは2μmとした。
【0064】微粒子膜の主要材料としてPdもしくはP
dOを用い、微粒子膜の厚さは約10nm、幅Wは10
nmとした。次に、好適な平面型の表面伝導型放出素子
の製造方法について説明する。図5の(a)〜(d)
は、表面伝導型放出素子の製造工程を説明するための断
面図で、各部材の表記は前記図4と同一である。
【0065】1) まず、図5(a)に示すように、基
板13上に素子電極14および15を形成する。
【0066】形成するにあたっては、あらかじめ基板1
3を洗剤、純水、有機溶剤を用いて十分に洗浄後、素子
電極14,15の材料を堆積させる。(堆積する方法と
しては、たとえば、蒸着法やスパッタ法などの真空成膜
技術を用ればよい。)その後、堆積した電極材料14,
15を、フォトリソグラフィー・エッチング技術を用い
てパターニングし、(a)に示した一対の素子電極(1
4と15)を形成する。
【0067】2) 次に、同図(b)に示すように、導
電性薄膜16を形成する。
【0068】形成するにあたっては、まず前記(a)の
基板に有機金属溶液を塗布して乾燥し、加熱焼成処理し
て微粒子膜を成膜した後、フォトリソグラフィー・エッ
チングにより所定の形状にパターニングする。ここで、
有機金属溶液とは、導電性薄膜16に用いる微粒子の材
料を主要元素とする有機金属化合物の溶液である(具体
的には、本実施例では主要元素としてPdを用いた。ま
た、実施例では塗布方法として、ディッピング法を用い
たが、それ以外のたとえばスピンナー法やスプレー法を
用いてもよい。)。
【0069】また、微粒子膜で作られる導電性薄膜16
の成膜方法としては、本実施例で用いた有機金属溶液の
塗布による方法以外の、たとえば真空蒸着法やスパッタ
法、あるいは化学的気相堆積法などを用いる場合もあ
る。
【0070】3) 次に、同図(c)に示すように、フ
ォーミング用電源19から素子電極14と15の間に適
宜の電圧を印加し、通電フォーミング処理を行って、電
子放出部17を形成する。
【0071】通電フォーミング処理とは、微粒子膜で作
られた導電性薄膜16に通電を行って、その一部を適宜
に破壊、変形、もしくは変質せしめ、電子放出を行うの
に好適な構造に変化させる処理のことである。微粒子膜
で作られた導電性薄膜16のうち電子放出を行うのに好
適な構造に変化した部分(すなわち電子放出部17)に
おいては、薄膜18に適当な亀裂が形成されている。な
お、電子放出部17が形成される前と比較すると、形成
された後は素子電極14と15の間で計測される電気抵
抗は大幅に増加する。
【0072】通電方法をより詳しく説明するために、図
6に、フォーミング用電源19から印加する適宜の電圧
波形の一例を示す。微粒子膜で作られた導電性薄膜16
をフォーミングする場合には、パルス状の電圧が好まし
く、本実施例の場合には同図に示したようにパルス幅T
1の三角波パルスをパルス間隔T2で連続的に印加し
た。その際には、三角波パルスの波高値Vpfを、順次
昇圧した。また、電子放出部17の形成状況をモニター
するためのモニターパルスPmを適宜の間隔で三角波パ
ルスの間に挿入し、その際に流れる電流を電流計20で
計測した。
【0073】実施例においては、たとえば10のマイナ
ス5乗torr程度の真空雰囲気下において、たとえば
パルス幅T1を1ミリ秒、パルス間隔T2を10ミリ秒
とし、波高値Vpfを1パルスごとに0.1Vずつ昇圧
した。そして、三角波を5パルス印加するたびに1回の
割りで、モニターパルスPmを挿入した。フォーミング
処理に悪影響を及ぼすことがないように、モニターパル
スの電圧Vpmは0.1Vに設定した。そして、素子電
極14と15の間の電気抵抗が1x10の6乗オームに
なった段階、すなわちモニターパルス印加時に電流計2
0で計測される電流が1x10のマイナス7乗A以下に
なった段階で、フォーミング処理にかかわる通電を終了
した。
【0074】なお、上記の方法は、本実施例の表面伝導
型放出素子に関する好ましい方法であり、たとえば微粒
子膜の材料や膜厚、あるいは素子電極間隔Lなど表面伝
導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じて
通電の条件を適宜変更するのが望ましい。
【0075】4) 次に、図5の(d)に示すように、
活性化用電源21から素子電極14と15の間に適宜の
電圧を印加し、通電活性化処理を行って、電子放出特性
の改善を行う。
【0076】通電活性化処理とは、前記通電フォーミン
グ処理により形成された電子放出部17に適宜の条件で
通電を行って、その近傍に炭素もしくは炭素化合物を堆
積せしめる処理のことである(図においては、炭素もし
くは炭素化合物よりなる堆積物を部材18として模式的
に示した。)。なお、通電活性化処理を行うことによ
り、行う前と比較して、同じ印加電圧における放出電流
を典型的には100倍以上に増加させることができる。
【0077】具体的には、10のマイナス4乗ないし1
0のマイナス5乗torrの範囲内の真空雰囲気中で、
電圧パルスを定期的に印加することにより、真空雰囲気
中に存在する有機化合物を起源とする炭素もしくは炭素
化合物を堆積させる。堆積物18は、単結晶グラファイ
ト、多結晶グラファイト、非晶質カーボン、のいずれか
か、もしくはその混合物であり、膜厚は50nm以下、
より好ましくは30nm以下である。
【0078】通電方法をより詳しく説明するために、図
7の(a)に、活性化用電源21から印加する適宜の電
圧波形の一例を示す。本実施例においては、一定電圧の
矩形波を定期的に印加して通電活性化処理を行ったが、
具体的には,矩形波の電圧Vacは14V,パルス幅T
3は1ミリ秒,パルス間隔T4は10ミリ秒とした。な
お、上述の通電条件は、本実施例の表面伝導型放出素子
に関する好ましい条件であり、表面伝導型放出素子の設
計を変更した場合には、それに応じて条件を適宜変更す
るのが望ましい。
【0079】図5の(d)に示す22は該表面伝導型放
出素子から放出される放出電流Ieを捕捉するためのア
ノード電極で、直流高電圧電源23および電流計24が
接続されている(なお、基板13を、表示パネルの中に
組み込んでから活性化処理を行う場合には、表示パネル
の蛍光面をアノード電極22として用いる。)。
【0080】活性化用電源21から電圧を印加する間、
電流計24で放出電流Ieを計測して通電活性化処理の
進行状況をモニターし、活性化用電源21の動作を制御
する。電流計24で計測された放出電流Ieの一例を図
7(b)に示すが、活性化電源21からパルス電圧を印
加しはじめると、時間の経過とともに放出電流Ieは増
加するが、やがて飽和してほとんど増加しなくなる。こ
のように、放出電流Ieがほぼ飽和した時点で活性化用
電源21からの電圧印加を停止し、通電活性化処理を終
了する。
【0081】なお、上述の通電条件は、本実施例の表面
伝導型放出素子に関する好ましい条件であり、表面伝導
型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じて条
件を適宜変更するのが望ましい。
【0082】以上のようにして、図5(e)に示す平面
型の表面伝導型放出素子を製造した。
【0083】図8は電子放出部もしくはその周辺を微粒
子膜から形成した表面伝導型放出素子のもうひとつの代
表的な構成、すなわち垂直型の表面伝導型放出素子であ
る。図8は、垂直型の基本構成を説明するための模式的
な断面図であり、図中の25は基板、26と27は素子
電極、28は段差形成部材、29は微粒子膜を用いた導
電性薄膜、30は通電フォーミング処理により形成した
電子放出部、31は通電活性化処理により形成した薄膜
である。
【0084】垂直型が先に説明した平面型と異なる点
は、素子電極のうちの片方(26)が段差形成部材28
上に設けられており、導電性薄膜29が段差形成部材2
8の側面を被覆している点にある。したがって、前記図
4の平面型における素子電極間隔Lは、垂直型において
は段差形成部材28の段差高Lsとして設定される。な
お、基板25、素子電極26および27、微粒子膜を用
いた導電性薄膜29、については、前記平面型の説明中
に列挙した材料を同様に用いることが可能である。ま
た、段差形成部材28には、たとえばSiO2のような
電気的に絶縁性の材料を用いる。
【0085】(表示装置に用いた表面伝導型放出素子の
特性)以上、平面型と垂直型の表面伝導型放出素子につ
いて素子構成と製法を説明したが、次に表示装置に用い
た素子の特性について述べる。
【0086】図9に、表示装置に用いた素子の、(放出
電流Ie)対(素子印加電圧Vf)特性、および(素子
電流If)対(素子印加電圧Vf)特性の典型的な例を
示す。なお、放出電流Ieは素子電流Ifに比べて著し
く小さく、同一尺度で図示するのが困難であるうえ、こ
れらの特性は素子の大きさや形状等の設計パラメータを
変更することにより変化するものであるため、2本のグ
ラフは各々任意単位で図示した。
【0087】表示装置に用いた素子は、放出電流Ieに
関して以下に述べる3つの特性を有している。
【0088】第一に、ある電圧(これを閾値電圧Vth
と呼ぶ)以上の大きさの電圧を素子に印加すると急激に
放出電流Ieが増加するが、一方、閾値電圧Vth未満
の電圧では放出電流Ieはほとんど検出されない。
【0089】すなわち、放出電流Ieに関して、明確な
閾値電圧Vthを持った非線形素子である。
【0090】第二に、放出電流Ieは素子に印加する電
圧Vfに依存して変化するため、電圧Vfで放出電流I
eの大きさを制御できる。
【0091】第三に、素子に印加する電圧Vfに対して
素子から放出される電流Ieの応答速度が速いため、電
圧Vfを印加する時間の長さによって素子から放出され
る電子の電荷量を制御できる。
【0092】以上のような特性を有するため、表面伝導
型放出素子を表示装置に好適に用いることができた。た
とえば多数の素子を表示画面の画素に対応して設けた表
示装置において、第一の特性を利用すれば、表示画面を
順次走査して表示を行うことが可能である。すなわち、
駆動中の素子には所望の発光輝度に応じて閾値電圧Vt
h以上の電圧を適宜印加し、非選択状態の素子には閾値
電圧Vth未満の電圧を印加する。駆動する素子を順次
切り替えてゆくことにより、表示画面を順次走査して表
示を行うことが可能である。
【0093】また、第二の特性かまたは第三の特性を利
用することにより、発光輝度を制御することができるた
め、諧調表示を行うことが可能である。
【0094】(多数素子を単純マトリクス配線したマル
チ電子ビーム源の構造)次に、上述の表面伝導型放出素
子を基板上に配列して単純マトリクス配線したマルチ電
子ビーム源の構造について述べる。
【0095】図10に示すのは、前記図4の表示パネル
に用いたマルチ電子ビーム源の平面図である。基板上に
は、前記図4で示したものと同様な表面伝導型放出素子
が配列され、これらの素子はX方向配線電極12とY方
向配線電極9により単純マトリクス状に配線されてい
る。X方向配線電極12とY方向配線電極9の交差する
部分には、電極間に絶縁層(不図示)が形成されてお
り、電気的な絶縁が保たれている。
【0096】図10のA−A’に沿った断面を、図11
に示す。
【0097】なお、このような構造のマルチ電子源は、
あらかじめ基板上にX方向配線電極12、Y方向配線電
極9、電極間絶縁層(不図示)、および表面伝導型放出
素子の素子電極14、15と導電性薄膜16を形成した
後、X方向配線電極12およびY方向配線電極9を介し
て各素子に給電通電フォーミング処理と通電活性化処理
を行うことにより製造した。
【0098】
【実施例】以下、実施例により、本発明を更に詳細に説
明する。 12頁の(実施例1)の前に追加 膜の表面組成分析は、以下の装置を使用して各構成元素
の組成や表面窒化率などの較正を行った。
【0099】10のマイナス8乗Pa以上の高真空を保
った同一真空室内に、Arスパッタエッチ機構及びRH
EED(反射高速電子回折パターン計測機構)とXPS
(X線光電子分光分析機構)を備えた装置を使用した。
薄膜形成機構により形成した遷移金属とイットリウムの
合金窒化膜10cをこの分析装置にセットしRHEED
法により遷移金属とイットリウムの合金窒化膜が形成さ
れたことを確認し、その後XPS測定を行った。この時
のY、2pスペクトル及びN lsスペクトルのピーク
面積比を用いて、遷移金属とイットリウムの合金窒化膜
の表面組成を較正した。
【0100】(実施例1)本実施例では、まず、未フォ
ーミングの複数の表面伝導型電子源1をリアプレート2
に形成した。リアプレート2として清浄化した青板ガラ
スを用い、これに図12に示した表面伝導型電子放出素
子を160個、720個マトリクト状に形成した。素子
電極14、15はPtスパッタ膜であり、X方向配線
9、Y方向配線12はスクリーン印刷法により形成した
Ag配線である。導電性薄膜16はPdアミン錯体溶液
を焼成したPdO微粒子膜である。
【0101】画像形成部材であるところの蛍光膜5は図
5bに示すように、各色蛍光体5aがY方向にのびるス
トライプ形状を採用し、黒色導電材5bとしては各色蛍
光体5a間だけでなく、Y方向の画素間を分離しかつス
ペーサー10を設置するための部分を加えた形状を用い
た。先に黒色導電材5bを形成し、その間隙部に各色蛍
光体7aを塗布して蛍光膜5を作成した。ブラックスト
ライプの材料として通常よく用いられている黒鉛を主成
分とする材料を用いた。ガラス基板4に蛍光体5aを塗
布する方法はスラリー法を用いた。
【0102】また、蛍光膜5の内面側に設けられるメタ
ルバック6は、蛍光膜5の作成後、蛍光膜5の内面側表
面の平滑化処理(通常フィルミングと呼ばれる)を行
い、その後、Alを真空蒸着する事で作成した。フェー
スプレート7には、更に蛍光膜5の導電性を高めるた
め、蛍光膜5の外面側に透明電極が設けられる場合もあ
るが、本実験例ではメタルバックのみで十分な導電性が
得られたので省略した。
【0103】スペーサー10は清浄化したソーダライム
ガラスからなる絶縁性基材10a(高さ3.8mm,板
厚200μm,長さ20mm)上に、Naブロック層と
して窒化シリコン膜を0.5μm成膜し、その上にCr
とYの合金窒化膜5cを真空成膜法により形成し成膜し
た。
【0104】本実施例で用いたCrとY合金窒化膜はス
パッタリング装置を用いてアルゴンと窒素混合雰囲気中
でCrとYのターゲットを同時スパッタする事により成
膜した。それぞれのターゲットにかける電力を変化する
ことにより組成の調節を行い、最適の抵抗値を得た。
【0105】詳述すると、スパッタチャンバの背圧は、
2×10のマイナス5乗Paであった。スパッタ時に
は、窒素分圧が30%になるように、アルゴンと窒素の
混合ガスを流した。スパッタガス全圧は0.45Paで
あった。Yターゲットに300Wの高周波電力を投入
し、CCrターゲットの高周波電力及びスパッタ時間を
調整することにより、CrとYの合金窒化膜を作製し
た。作製したCrとYの合金窒化膜は膜厚が43nm、
比抵抗が2.5Ωcm、膜厚が200nm、比抵抗が
2.4×103Ωcm、膜厚80nmで比抵抗4.5x
106Ωcmの3種である。
【0106】膜の表面組成分析は、以下の装置を使用し
て各構成元素の組成や表面窒化率などの較正を行った。
10のマイナス8乗Pa以上の高真空を保った同一真空
室内に、Arスパッタエッチ機構及びRHEED(反射
高速電子回折パターン計測機構)とXPS(X線光電子
分光分析機構)を備えた装置を使用した。上記記載のよ
うに形成したCrとYの合金窒化膜10cをこの分析装
置にセットしRHEED法によりCrとYの合金窒化膜
が形成されたことを確認し、その後XPS測定を行っ
た。
【0107】この時のY、2pスペクトル及びN ls
スペクトルのピーク面積比を用いて、CrとY合金窒化
膜の表面組成を較正した。
【0108】Cr元素とY元素の割合「Cr」/「Y」
は0.08であった。またCr元素は表面ではほとんど
酸化物であるが、Yは窒化物と酸化物が混在しており、
窒化物として存在する割合「窒化イットリウム」/「窒
化イットリウム」+「酸化イットリウム」が0.56〜
0.61であった。
【0109】また、スペーサー10は、X方向配線9あ
るいはメタルバック6との接続を確実にするためにその
接続部にAlによる電極11を設けた。この電極11は
X方向配線からフェースプレートに向かって50μm,
メタルバックからリアプレートに向かって300μmの
範囲で外囲器8内に露出するスペーサー10の4面を完
全に被覆した。CrとYの合金窒化膜による帯電防止膜
10cを成膜したスペーサー10を、等間隔でX方向配
線9上に固定した。
【0110】その後、電子源1の3.8mm上方にフェ
ースプレート7を支持枠3を介し配置し、リアプレート
2、フェースプレート7、支持枠3及びスペーサー10
の接合部を固定した。
【0111】電子源1とリアプレート2の接合部、リア
プレート2と支持枠3の接合部及びフェースプレート7
と支持枠3の接合部はフリットガラスを塗布し、スペー
サ表面の遷移金属とイットリウムとの合金窒化膜が酸化
されないように窒素中で430℃で10分以上焼成する
事で封着した。
【0112】スペーサ10はフェースプレート7側では
黒色導電材5b(線幅300μm)上に、Auを被覆シ
リカ球を含有した導電性フリットガラスを用いることに
より、帯電防止膜10cとフェースプレト7との導通を
確保した。
【0113】以上のようにして完成した外囲器8内の雰
囲気を排気管を通じ真空ポンプにて排気し、十分な真空
度に達した後、容器外端子Dx1〜DxmとDy1〜D
ynを通じ電子放出素子1の素子電極14、15間に電
圧を印加し、電子放出部形成用薄膜16を通電処理(フ
ォーミング処理)する事により電子放出部18を形成し
た。フォーミング処理は、図6に示した波形の電圧を印
加する事により行った。
【0114】次に排気管を通してアセトンを1mTor
rとなるように真空容器に導入し、容器外端子Dx〜D
xmとDy1〜Dynに電圧パルスを定期的に印加する
事により、炭素、あるいは炭素化合物を堆積する通電活
性化処理を行った。通電活性化は図7に示すような波形
を印加する事により行った。
【0115】次に、容器全体を200℃に加熱しつつ1
0時間真空排気した後、10−6Torr程度の真空度
で、排気管をガスバーナーで熱することで溶着し外囲器
8の封止を行った。
【0116】最後に、封止後の真空度を維持するため
に、ゲッター処理を行った。
【0117】以上のように完成した画像形成装置におい
て、各電子放出素子1には、容器外端子Dx1〜Dx
m、Dy1〜Dynを通じ走査信号及び変調信号を不図
示の信号発生手段よりそれぞれ印加する事により電子を
放出させ、メタルバック6には、高圧端子Hvを通じて
高圧を印加する事により放出電子ビームを加速し、蛍光
膜5に電子を衝突させ、蛍光体を励起・発光させること
で画像を表示した。なお、高圧端子Hvへの印加電圧V
aは1kV〜5kV、素子電極14、15間への印加電
圧Vfは14Vとした。
【0118】スペーサー10について帯電防止膜10c
の抵抗値を、組み込み前、フェースプレートへの封着
後、リアプレートへの封着後、真空排気後、素子電極通
電処理後等各工程で計測したところ全行程を通じてほと
んど抵抗値の変動が見られなかった。このことはCrと
Yとの合金窒化膜が非常に安定であり、帯電防止膜とし
て適していることを示している。
【0119】比抵抗2.4x103Ωcmのスペーサに
ついてはスペーサに近い位置にある電子放出素子1から
の放出電子による発光スポットも含め、二次元上に等間
隔の発光スポット列が形成され、鮮明で色再現性の良い
カラー画像表示ができた。このことはスペーサ10を設
置しても電子軌道に影響を及ぼすような電界の乱れは発
生せず、スペーサ10の帯電もおこっていないことを示
している。また、本材料の抵抗温度係数は−0.8%で
あり、Va=5kVにおいても熱暴走はみられなかっ
た。
【0120】比抵抗2.5ΩcmのスペーサのVa=2
kVでの消費電力がほぼ1Wに達するため2kVを印加
することができなかった。また、比抵抗が4.5x10
6Ωcmと大きいスペーサについては、熱暴走はないも
のの、帯電防止の効果が弱く、電子ビームがスペーサに
引き寄せられたためにスペーサ近傍の画像に乱れを生じ
た。
【0121】(比較例)比較例として前記と同様な方法
で導電膜にCrとY合金窒化膜の代わりにSnO2を用
いたところ各組立て工程において導電膜10cの抵抗値
が大きく変動した。全組立工程通過後には比抵抗は9.
2Ωcm、抵抗値で1.8×106Ωになり、Vaを1
kVまで印加する事ができなかった。すなわち、ディス
プレイ作製工程で抵抗が大きく変化し、かつその変化量
が一定でないため、工程終了後の抵抗のバラツキが大き
くなり制御性に乏しい。また、この SnO2の比抵抗
値では膜厚を1nm以下と極めて薄くしなければなら
ず、さらに抵抗の制御性は難しい。
【0122】(実施例2)実施例1と異なるのはスペー
サー10のCrとYの合金窒化膜10cの代わりとして
TaとYの合金窒化膜を用いた。成膜方法については実
験例1と同様でこのときTaとYの合金窒化膜10cは
膜厚がおよそ200nmであり、比抵抗が6.2×10
3Ωcmである。また、抵抗温度係数は−0.6%であ
った。
【0123】また、このスペーサを取り外してXPS
(X線光電子分光装置)により、表面の分析をしたとこ
ろ、Taは表面では酸化物であるが、Yは窒化物と酸化
物が混在しており、その表面窒化率は0.75〜0.8
1であった。
【0124】上記スペーサー10を用いた表示装置を作
製し、実施例1と同様の評価を行った。なお、高圧端子
Hvへの印加電圧Vaは1kV〜5kV,素子電極1
4,15間への印加電圧Vfは14Vとした。
【0125】スペーサ抵抗値を組み込み前、フェースプ
レートへの封着後、リアプレートへの封着後、真空排気
後、素子電極通電処理後等各工程で計測したところ全行
程を通じてほとんど抵抗値の変動が見られなかった。
【0126】また、スペーサ10のリアプレート近傍か
らフェースプレート近傍まで各微少部分の抵抗値を測定
したところ全組立工程を通過した後も場所による抵抗値
の違いは生じず、膜全体が均一な抵抗値を持っていた。
このときスペーサ10に近い位置にある電子放出素子1
からの放出電子による発光スポットも含め、二次元上に
等間隔の発光スポット列が形成され、鮮明で色再現性の
良いカラー画像表示ができた。このことはスペーサ10
を設置しても電子軌道に影響を及ぼすような電界の乱れ
は発生せず、スペーサ10の帯電もおこっていないこと
を示している。
【0127】(実施例3)実施例1のCrとYの合金窒
化膜に代わり、TiとYの合金窒化膜を用いた。成膜方
法については実施例1と同様でこのときTiとYの合金
窒化膜10cは膜厚がおよそ60nm、比抵抗が5.5
×103Ωcm、および膜厚80nm、比抵抗1.9x
105Ωcmの2種である。抵抗温度係数は−0.8%
であった。
【0128】また、このスペーサを取り外してXPS
(X線光電子分光装置)により、表面の分析をしたとこ
ろ、Tiは表面では酸化物であるが、Yは窒化物と酸化
物が混在しており、その表面窒化率は0.50〜0.5
3であった。
【0129】上記スペーサー10を用いた画像形成装置
において、各電子放出素子1には、容器外端子Dx1〜
Dxm,Dy1〜Dynを通じ、走査信号及び変調信号
を不図示の信号発生手段よりそれぞれ印加する事により
電子を放出させ、メタルバック6には、高圧端子Hvを
通じて高圧を印加する事により放出電子ビームを加速
し、蛍光膜7に電子を衝突させ、蛍光体を励起・発光さ
せることで画像を表示した。
【0130】なお、高圧端子Hvへの印加電圧Vaは1
kV〜5kV,素子電極14,15間への印加電圧Vf
は14Vとした。
【0131】スペーサの抵抗値を組み込み前、フェース
プレートへの封着後、リアプレートへの封着後、真空排
気後、素子電極通電処理後等各工程で計測したところ全
行程を通じて増加したものの極端な抵抗値の変動が見ら
れなかった。
【0132】スペーサ10についてリアプレート近傍か
らフェースプレート近傍まで各微少部分の抵抗値を測定
したところ全組立工程を通過した後も場所による抵抗値
の違いは生じず、膜全体が均一な抵抗値を持っていた。
5.5×103Ωcmのスペーサに対してはスペーサに
近い位置にある電子放出素子1からの放出電子による発
光スポットも含め、二次元上に等間隔の発光スポット列
が形成され、鮮明で色再現性の良いカラー画像表示がで
きた。このことはスペーサ10を設置しても電子軌道に
影響を及ぼすような電界の乱れは発生せず、スペーサ1
0の帯電もおこっていないことを示している。一方、比
抵抗が大きいスペーサではスペーサ近傍の電子ビームが
曲げられわずかに画像の乱れが観察された。
【0133】(実施例4)実施例1と異なるのはスペー
サー10のCrとYの合金窒化膜10cの代わりとして
MoとYの合金窒化膜を用いた。成膜方法については実
験例1と同様でこのときMoとYの合金窒化膜10cは
膜厚がおよそ200nmであり、比抵抗が4.2×10
3Ωcmである。また、抵抗温度係数は−0.6%であ
った。
【0134】また、このスペーサを取り外してXPS
(X線光電子分光装置)により、表面の分析をしたとこ
ろ、Moは表面では酸化物であるが、Yは窒化物と酸化
物が混在しており、その表面窒化率は0.60〜0.6
5であった。
【0135】上記スペーサー10を用いた表示装置を作
製し、実施例1と同様の評価を行った。なお、高圧端子
Hvへの印加電圧Vaは1kV〜5kV,素子電極1
4,15間への印加電圧Vfは14Vとした。
【0136】スペーサ抵抗値を組み込み前、フェースプ
レートへの封着後、リアプレートへの封着後、真空排気
後、素子電極通電処理後等各工程で計測したところ全行
程を通じてほとんど抵抗値の変動が見られなかった。
【0137】また、スペーサ10のリアプレート近傍か
らフェースプレート近傍まで各微少部分の抵抗値を測定
したところ全組立工程を通過した後も場所による抵抗値
の違いは生じず、膜全体が均一な抵抗値を持っていた。
このときスペーサ10に近い位置にある電子放出素子1
からの放出電子による発光スポットも含め、二次元上に
等間隔の発光スポット列が形成され、鮮明で色再現性の
良いカラー画像表示ができた。このことはスペーサ10
を設置しても電子軌道に影響を及ぼすような電界の乱れ
は発生せず、スペーサ10の帯電もおこっていないこと
を示している。
【0138】(実施例5)実施例1と異なるのはスペー
サー10のCrとYの合金窒化膜10cの代わりとして
WとYの合金窒化膜を用いた。成膜方法については実験
例1と同様でこのときWとYの合金窒化膜10cは膜厚
がおよそ200nmであり、比抵抗が3.8×103Ω
cmである。また、抵抗温度係数は−0.4%であっ
た。
【0139】また、このスペーサを取り外してXPS
(X線光電子分光装置)により、表面の分析をしたとこ
ろ、Wは表面では酸化物であるが、Yは窒化物と酸化物
が混在しており、その表面窒化率は0.64〜0.68
であった。
【0140】上記スペーサー10を用いた表示装置を作
製し、実施例1と同様の評価を行った。なお、高圧端子
Hvへの印加電圧Vaは1kV〜5kV,素子電極1
4,15間への印加電圧Vfは14Vとした。
【0141】スペーサ抵抗値を組み込み前、フェースプ
レートへの封着後、リアプレートへの封着後、真空排気
後、素子電極通電処理後等各工程で計測したところ全工
程を通じてほとんど抵抗値の変動が見られなかった。
【0142】また、スペーサ10のリアプレート近傍か
らフェースプレート近傍まで各微少部分の抵抗値を測定
したところ全組立工程を通過した後も場所による抵抗値
の違いは生じず、膜全体が均一な抵抗値を持っていた。
このときスペーサ10に近い位置にある電子放出素子1
からの放出電子による発光スポットも含め、二次元上に
等間隔の発光スポット列が形成され、鮮明で色再現性の
良いカラー画像表示ができた。このことはスペーサ10
を設置しても電子軌道に影響を及ぼすような電界の乱れ
は発生せず、スペーサ10の帯電もおこっていないこと
を示している。
【0143】
【発明の効果】以上説明したように、素子基板とフェー
スプレート間に配置された絶縁性部材表面に、遷移金属
とイットリウム合金窒化膜を帯電防止膜として用いると
組立工程中に抵抗値の変化がほとんど起こらず、安定し
た値が得られた。これによりスペーサ近傍でのビームの
電位の乱れは抑止され、ビームが蛍光体に衝突する位置
と、本来発光するべき蛍光体との位置ずれの発生が防止
され、輝度損失を防ぐことができ鮮明な画像表示が可能
となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明帯電防止膜の概略断面図である。
【図2】本発明の実施例である画像表示装置における表
示パネルの一部を切り欠いて示した斜視図である。
【図3】表示パネルのフェースプレートの蛍光体配列を
例示した平面図である。
【図4】マルチ電子ビーム源の基板の平面図である。
【図5】平面型表面伝導型電子放出素子の形成工程であ
る。
【図6】電子ビーム源のフォーミング形成印加パルス波
形である。
【図7】通電活性化工程印加パルス波形である。
【図8】垂直型表面伝導型電子放出素子の断面図であ
る。
【図9】表面伝導型電子放出素子の素子電圧と素子電
流、放出電流の関係である。
【図10】単純マトリクス配線図である。
【図11】平面型表面伝導型電子放出素子の断面図であ
る。
【符号の説明】
1 電子源 2 リアプレート 3 側壁 4 ガラス基板 5 蛍光膜 6 メタルバック 7 フェースプレート 8 外囲器 9 X方向配線 10 スペーサ 11 電極 12 Y方向配線 13 基板 14、15 素子電極 16 導電性薄膜 17 電子放出部 18 通電活性化処理により形成した薄膜 19 フォーミング用電源 20 電流計 21 活性化用電源 22 表面伝導型放出素子から放出される放出電流Ie
を捕捉するためのアノード電極 23 直流高電圧電源 24 電流計 25 基板 26、27 素子電極 28 段差形成部材 29 微粒子膜を用いた導電性薄膜 30 通電フォーミング処理により形成した電子放出部 31 通電活性化処理により形成した薄膜

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イットリウムと遷移金属の合金窒化膜で
    あることを特徴とする帯電防止膜。
  2. 【請求項2】 遷移金属が、クロム、チタン、タンタ
    ル、モリブデン、タングステンから選ばれる少なくとも
    一種類の金属を含む請求項1記載の帯電防止膜。
  3. 【請求項3】 複数の冷陰極型電子放出素子を形成した
    基板と発光材料を形成した透明基板とをスペーサーを介
    して対向させた構造を有する表示装置において、該スペ
    ーサーが、絶縁部材の表面にイットリウムと遷移金属と
    の合金窒化膜が被覆されていることを特徴とする表示装
    置。
  4. 【請求項4】 遷移金属がクロム、チタン、タンタル、
    モリブデン、タングステンから選ばれる少なくとも1種
    類の金属を含む請求項3記載の表示装置。
  5. 【請求項5】 電子の加速電圧Vaのときイットリウム
    と遷移金属との合金窒化膜の膜厚が10nm〜1μmで
    あり、比抵抗が10-5×Va2〜107Ωcm、負の抵抗
    温度係数で値が1%以下である請求項3又は4記載の表
    示装置。
  6. 【請求項6】 遷移金属とイットリウムの合金窒化膜の
    イットリウムの表面窒化率[(窒化イットリウム)/
    (窒化イットリウム+酸化イットリウム)]が50%以
    上である請求項3〜5の何れか一項記載の表示装置。
  7. 【請求項7】 遷移金属とイットリウムの合金窒化膜の
    遷移金属元素とイットリウム元素の割合遷移金属比率
    (遷移金属)/(イットリウム)が50%以内である請
    求項3〜6の何れか一項記載の表示装置。
  8. 【請求項8】 絶縁部材がNaを含有するガラスからな
    り、絶縁部材とイットリウムと遷移金属との合金窒化膜
    の中間に窒化シリコン膜がある請求項3〜7の何れか一
    項記載の表示装置。
  9. 【請求項9】 スペーサーが電子源駆動用配線に電気的
    に接続されている請求項3〜8の何れか一項記載の表示
    装置。
  10. 【請求項10】 スペーサーが放出電子加速電極に電気
    的に接続されている請求項3〜10の何れか一項記載の
    表示装置。
  11. 【請求項11】 冷陰極型電子放出素子が表面伝導型電
    子放出素子である請求項3〜10の何れか一項記載の表
    示装置。
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