JP2000246072A - セルロース系血液浄化用膜およびその製造方法 - Google Patents

セルロース系血液浄化用膜およびその製造方法

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JP2000246072A
JP2000246072A JP11054306A JP5430699A JP2000246072A JP 2000246072 A JP2000246072 A JP 2000246072A JP 11054306 A JP11054306 A JP 11054306A JP 5430699 A JP5430699 A JP 5430699A JP 2000246072 A JP2000246072 A JP 2000246072A
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Akira Mochizuki
明 望月
Yoshihiko Abe
吉彦 阿部
Masahito Kudo
雅人 工藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】第三級アミンオキシドを用いたセルロース系溶
液から再生され、高透水性能、高分画特性と優れた血液
適合性、耐熱性を同時に有する人工腎臓用セルロース系
の血液浄化用膜、および、その製造方法の提供。 【解決手段】第三級アミンオキシドを96〜50重量
%、セルロース、および、結晶融解温度またはガラス転
移温度が130℃以上である疎水性ポリマーを4〜25
重量%、セルロースを溶解しない極性希釈剤を0〜25
重量%含有し、該セルロースと該疎水性ポリマーの組成
比(重量比)が98:2〜60:40である製膜用組成
物を、水系凝固浴を用いて製膜してなる血液浄化用膜。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、血液浄化用膜とそ
の製造方法に関する。より詳しくは、高透水性能、高分
画特性と優れた血液適合性、耐熱性とを同時に有するセ
ルロース系の血液浄化用膜、および、その製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】現在、長期慢性腎不全患者の種々の合併
症の発生を低減させるために、尿素等の低分子量物質、
分子量が100〜5000の尿毒性中分子量物質、低分
子量タンパク質であるβ2 −ミクログロブリン(分子量
11800)を効率的に除去し、かつ有用な低分子量タ
ンパク質であるアルブミン(分子量66000)は透過
しないように分画特性を設計された膜を用いて、血液透
析が行われている。治療用のUFR(限外ろ過速度)コ
ントローラーの普及、使用により、血液からの除水量を
任意にコントロールできるようになったため、より高透
水性能と優れた分画特性を同時に有する膜が必要とされ
ている。人工透析膜としては、従来、銅アンモニウム法
で再生された再生セルロース膜が使用されているが、こ
の再生セルロース膜は、透析治療時に、一時的な白血球
減少症とともに、補体の活性化を引き起こすという問題
を持っているため、上述の高透水性能と優れた分画特性
を同時に有する膜としては、合成高分子膜が主流となっ
ている。しかし、セルロース系膜は、機械的強度に優れ
ており、膜厚を薄くすることができるという利点も持っ
ている。さらに、使用後、焼却処分するときに有害なガ
スを発生しない。セルロース系膜のこれらの特徴を生か
すため、高透水性能と優れた分画特性を同時に有する血
液適合性と膜透過性能に優れたセルロース膜が望まれて
いる。
【0003】銅アンモニウム法で再生された再生セルロ
ース膜は、尿素、クレアチニン等の低分子物質溶質透過
性においては優れているものの、中高分子量物質の除去
が十分ではなく、またUFRが低いという問題を持って
いる。銅アンモニウム法に代わるセルロース再生法とし
て、第三級アミンオキシドを用いたセルロース再生法
が、衣料用繊維の分野で近年実用化されており、アミン
オキシド水和物を用いたセルロース溶液及びその溶液の
製造方法、またそのセルロース溶液から再生されたフィ
ルム、膜、繊維、中空繊維等の再生セルロース成形品及
びそれら成形品の製造方法が知られている。第三級アミ
ンオキシド水和物を用いた再生セルロース成形品の中
で、特に、透析膜については、英国特許第115575
9号において、第三級アミンオキシド水和物を用いた再
生セルロース成形品が透析膜に使用することが提案され
ており、さらに特公平4−60692号公報において
は、用途に適した透析性能を有する血液透析用の膜の製
造方法が提案されている。特公平4−60692号公報
に記載されている透析膜の製造方法により得られる再生
セルロース膜は、ビタミンB12に対する透析透過係数が
銅アンモニウム法再生セルロースよりなる透析膜の透析
透過係数よりも明らかに大きく、さらに、水の限外ろ過
能、いわゆる透水量が実際にはもはや測定されない場合
にもなお顕著なビタミンB12に対する透析透過係数を有
することが特徴である。しかしながら、特公平4−60
692号公報の実施例に記載されている再生セルロース
膜は、透水量が5mL/(m2 ・h・mmHg)であ
り、現在要求されている血液浄化用膜、いわゆる人工腎
臓用の膜としては性能が不十分である。
【0004】特開平10−52630号公報において、
第三級アミンオキシド水和物を用いたセルロース溶液か
ら再生されて得られる再生セルロース膜であって、高い
UFR(限外ろ過速度)を示す膜が開示されている。同
公報には、限外濾過速度が数十から100mL/(m2
・h・mmHg)以上の膜が実施例において開示されて
おり、膜性能の観点から、この再生セルロース膜は、実
用に十分耐える膜性能を示している。また、同公報に
は、ベンジルセルロースをはじめとした各種セルロース
誘導体を混合した紡糸溶液を用いることで、再生セルロ
ース膜の血液適合性が改善されることが開示されてい
る。しかしながら、これらのセルロース誘導体は耐熱性
が不十分であるため、セルロースのみからなる膜が有す
る優れた耐熱性が大きく犠牲にされている。従って生産
工程、特に、熱が関与する乾燥工程、滅菌工程等で極め
て大きな制限を受け、滅菌による残留毒性の問題がない
高圧蒸気滅菌による製造が困難であるという問題点を持
っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、第三級アミンオキシドを用いたセルロース系溶液か
ら再生され、高透水性能、高分画特性と優れた血液適合
性、耐熱性を同時に有する人工腎臓用セルロース系の血
液浄化膜、および、その製造方法を提供することにあ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、第
三級アミンオキシドを96〜50重量%、セルロース、
および、結晶融解温度またはガラス転移温度が130℃
以上である疎水性ポリマーを4〜25重量%、セルロー
スを溶解しない極性希釈剤を0〜25重量%含有し、該
セルロースと該疎水性ポリマーの組成比(重量比)が9
8:2〜60:40である製膜用組成物を、水系凝固浴
を用いて製膜してなる血液浄化用膜を提供する。
【0007】前記第三級アミンオキシドがN−メチルモ
ルホリン−N−オキシドであり、前記セルロースを溶解
しない極性希釈剤が水であるのが好ましい。
【0008】前記疎水性ポリマーがセグメント化ポリウ
レタンであるのが好ましい。
【0009】前記血液浄化用膜は、生理食塩水系でのデ
キストランに対するふるい係数が、分子量1,000の
デキストランに対しては0.9以上、かつ、分子量が1
0,000のデキストランに対しては0.3以上0.9
5以下、かつ、分子量が100,000のデキストラン
に対しては0.4以下であるのが好ましい。
【0010】また、本発明は、前記製膜用組成物を、水
系凝固浴を用いて製膜する血液浄化用膜の製造方法を提
供する。
【0011】さらに、本発明は、前記製造方法で製造さ
れる血液浄化用中空糸膜を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、セルロースと、特定の熱特性を有する疎水性
ポリマーと、第三級アミンオキシドと、必要によりセル
ロースを溶解しない極性希釈剤とを含有する製膜用組成
物を、水系凝固浴を用いて製膜してなるセルロース系血
液浄化用膜と、その製造方法に関するものである。
【0013】本発明に用いられる第三級アミンオキシド
としては、一般にセルロース溶液を調製するのに使用さ
れている公知のものが使用可能である。例えば、N−メ
チルモルフォリン−N−オキシド、N, N−ジメチルエ
タノールアミン−N−オキシド、N, N−ジメチルシク
ロヘキシルアミン−N−オキシド、N, N, N−トリエ
チルアミン−N−オキシド、N, N−ジメチルベンジル
アミン−N−オキシド、N−メチルピペリジン−N−オ
キシド等が挙げられる。これらの第三級アミンオキシド
は単独で用いても良く、あるいは2種以上を適当な割合
で混合して使用することもできる。これらの中でも、入
手のしやすさ、使用済み溶剤の回収精製のしやすさ等か
ら、N−メチルモルフォリン−N−オキシドが好まし
い。第三級アミンオキシドを使用するにあたり、安全性
の観点から0〜25重量%の水を含んだものが望まし
い。第三級アミンオキシドの製膜用組成物中における含
有量は、50〜96重量%であり、70〜95重量%が
好ましい。この範囲であれば、後述のセルロース、疎水
性ポリマーを良好に溶解することができ、均一な溶液が
得られる。
【0014】本発明に用いられるセルロースとしては、
一般に人工腎臓用再生セルロース膜の製造に使用されて
いる公知のものが使用可能である。なかでも、長期にわ
たる臨床実績により安全性が確認されている精製コット
ンリンター(α−セルロースが97%以上)であって、
特開平4−11008号公報において提案されている、
TAPPI標準法T230に従い測定された粘度が5〜
20cp、粘度平均重合度が500〜1,500のもの
が好ましい。
【0015】本発明に用いられる疎水性ポリマーとして
は、結晶融解温度(Tm)が130℃以上であるか、も
しくは、ガラス転移温度(Tg)が130℃以上であ
る、水に溶解しない疎水性ポリマーを用いる。具体例と
しては、結晶性ポリアミド、非晶性ポリアミド、ポリイ
ミド、ポリウレタン、セグメント化ポリウレタン、フェ
ノキシ樹脂、ポリベンツイミダゾール等が挙げられる。
【0016】これらのポルアミドとしては、ポリアミド
6(Tm=228℃)、ポリアミド66(Tm=265
℃)、ポリアミド610(Tm=220℃)、ポリアミ
ド12(Tm=173℃)、ポリアミドMXD6(Tm
=244℃)、ポリアミド46(Tm=308℃)、ポ
リフェニレンフタルアミド(Tm=497℃)、ポリシ
クロヘキシレンジメチレンイソフタルアミド(Tg=1
80℃)等が挙げられる。
【0017】ポリイミド(PI)としては、3,3’,
4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物と、
3,3’−ジアミノベンゾフェノンとの共重合反応によ
り得られるもの(Tg=260℃)、トリメリット酸無
水物とメチレンジアアニリンとの共重合反応により得ら
れるもの(Tm>300℃)等が挙げられる。
【0018】ポリウレタンとしては、ポリオール化合物
としてポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTM
G)、ポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタ
ンジイソシアネート(MDI)、鎖延長剤としてエチレ
ンジアミン(EDA)を用いて合成されたポリエーテル
ポリウレタンウレア型のもの、PTMGとMDIとから
1,2−プロピレンジアミン(1,2−PDA)を鎖延
長剤として用いて合成されたもの、PTMGとMDIと
から1,4−ブチレングリコール(1,4−BG)を鎖
延長剤として用いて合成されたポリエーテルポリウレタ
ンとポリジメチルシロキサンポリマーとの複合型のも
の、PTMGとHMDIとから1,4−ブチレングリコ
ール(1,4−BG)を鎖延長剤として用いて合成され
たもの等が挙げられる。
【0019】セグメント化ポリウレタンとしては、例え
ば、カプロラクトンを開環して得られるポリカプロラク
トンポリオールに短鎖ポリオール、例えばブタンジオー
ルの存在下、ポリイソシアネート、例えばMDIを付加
重合して得られるポリカプロラクトン系セグメント化ポ
リウレタン(ポリウレタン部がブタンジオールとMDI
とから合成されるものでは、Tm=180℃)、例えば
アジピン酸とグリコールとのポリアジピン酸エステルポ
リオールに短鎖ポリオール存在下ポリイソシアネートを
付加重合して得られるポリエステル型セグメント化ポリ
ウレタン、テトラヒドロフランを開環重合して得られる
ポリテトラメチレングリコール(PTMG)に短鎖ポリ
オール存在下ポリイソシアネートを付加重合して得られ
るPTMG型セグメント化ポリウレタン、および、ポリ
カーボネート型セグメント化ポリウレタン等が挙げられ
る。短鎖ポリオールとしては、上述のポリウレタンの合
成に用いられるポリオール化合物と同様のものが例示さ
れる。また、ポリイソシアネート化合物としては、上述
のポリウレタンの合成に用いられるポリイソシアネート
化合物と同様のものが例示される。
【0020】フェノキシ樹脂は、ビスフェノールAとエ
ピクロロヒドリンとから合成される樹脂が挙げられる。
【0021】ポリベンズイミダゾールは、主鎖にベンズ
イミダゾール環を持つ耐熱性高分子であり、例えば、ポ
リ−m−フェニレンベンズイミダゾール、ポリ−p−フ
ェニレンベンズイミダゾール、ポリアルキレンベンズイ
ミダゾール等が挙げられる。
【0022】これらの中でも、疎水性ポリマーとして
は、セグメント化ポリウレタンが、入手のしやすさ、安
全性の観点から好ましい。また、セグメント化ポリウレ
タンの中では、Tm=160〜250℃、分子量2万〜
10万のものが好ましく、具体的には、ポリカプロラク
トン系ポリウレタン等が、入手のしやすさ、安定性の観
点から、特に好ましい。
【0023】TgまたはTmが130℃未満のポリマ
ー、例えばベンジルセルロース(Tg=110℃)を用
いて得られる膜や、これらのポリマーをセルロースと共
に含む製膜溶液から得られる膜は、耐熱性に劣り、従っ
て、高圧蒸気滅菌を行った場合には、限外ろ過速度の減
少等、膜性能の顕著な低下が起きる。また、中空糸膜を
用いてモジュールを作成するに当っては、中空糸端部を
ウレタンポッティグする必要があるが、このため中空糸
膜が水を含む場合には、中空糸膜を乾燥する必要があ
り、このためには通常、加熱乾燥工程に通すことが必要
である。膜生産の効率、経済性の観点からは、高温での
乾燥が望まれ、実際の生産工程では、例えば80℃以上
の温度で乾燥することが望まれる。このような乾燥工程
を通すことによっても、TgまたはTmが130℃未満
のポリマーを用いて得られる膜、あるいは、これらのポ
リマーをセルロースと共に含む製膜溶液から得られる膜
は、膜性能の顕著な低下を示す。セルロースと共に含む
疎水性ポリマーのTgまたはTmが130℃以上である
本発明の血液浄化用膜では、熱の関与する工程、例え
ば、高圧滅菌工程、乾燥工程を経過しても、膜性能は維
持される。疎水性ポリマーのTgまたはTmは、好まし
くは、140℃以上である。
【0024】製膜用組成物に占める、上述のセルロース
と疎水性ポリマーの割合は、両者合計で、4〜25重量
%である。4重量%未満では、人工腎臓用の血液浄化用
膜として実際使用するために必要な機械的強度を膜が得
られない。一方、25重量%超であると、製膜用組成物
の粘度が非常に高くなり、均一な溶液調製及び製膜が困
難となる。好ましくは、5〜20重量%、より好ましく
は、6〜10重量%である。
【0025】また、製膜用組成物中のセルロースと疎水
性ポリマーの割合は、重量比で、セルロース/疎水性ポ
リマー=98:2〜60:40である。この範囲で上述
の疎水性ポリマーをセルロースと共に含有すると、得ら
れる本発明の血液浄化用膜が、良好な血液適合性を発現
でき、特に補体の活性化が抑制できる。好ましくは、9
7:3=80:20である。補体の活性化は、セルロー
ス水酸基が強く関与していると考えられており、補体の
活性化の中心となるセルロース水酸基をマスクすれば補
体の活性化が抑制されると考えられている。本発明の血
液浄化用膜では、再生セルロース膜の血液接触面の水酸
基が疎水性ポリマーでマスクされ、このため、本発明の
血液浄化用膜は良好な血液適合性が発現されるものと考
えられる。
【0026】上述の第三級アミンオキシドに、セルロー
ス、疎水性ポリマーが溶解した本発明の製膜用組成物に
は、その溶液粘度をコントロールするために、必要に応
じて極性を有する希釈剤を混合することができる。本発
明で用いられる極性希釈剤は、沸点が100℃以上の極
性溶媒である。具体的には、水、ジメチルスルホキシ
ド、N, N−ジメチルホルムアミド、N, N−ジメチル
アセトアミド、エチレングリコール、プロピレングルコ
ール、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げら
れる。これらの中でも、回収が容易という理由から、水
が好ましい。極性希釈剤の含有量は、製膜用組成物中、
0〜25重量%である。この範囲内であれば、均一な溶
液が得られるからである。各々の極性希釈剤の好適な含
有量は、製膜用組成物中の第三級アミンオキシドの重量
に対し、水では25重量%以下、ジメチルスルホキシド
では50重量%以下、N, N−ジメチルホルムアミド、
N, N−ジメチルアセトアミドでは40重量%以下、エ
チレングリコールでは20重量%以下、プロピレングル
コールでは15重量%以下、グリセリンでは25重量%
以下、ポリエチレングリコールでは10重量%以下が特
に好ましい。含有量がこれらの範囲より高くなると、セ
ルロースの溶解性が低くなり均一なセルロース−疎水性
ポリマー溶液が得られない。
【0027】上記製膜用組成物には、必要に応じて、そ
の製膜用組成物の熱安定性を得るために添加剤を混合す
ることができる。添加剤としては、酸化防止剤、界面活
性剤が挙げられる。好適な酸化防止剤としては、没食子
酸n−プロピル等、界面活性剤としてn−ドデシル硫酸
ナトリウム等が挙げられる。没食子酸n−プロピル、n
−ドデシル硫酸ナトリウムを配合する場合は、その好適
な配合割合は、セルロースに対し、それぞれ1重量%以
下である。
【0028】第三級アミンオキシド、セルロース、疎水
性ポリマー、必要に応じて含有する極性希釈剤、添加剤
を混合して製膜用組成物を調製する方法は、特に限定さ
れず、一般に第三級アミンオキシドを用いた再生セルロ
ース繊維、再生セルロース膜の製造に使用されている公
知の方法が使用可能である。例えば、必要に応じて加熱
ヒーター、減圧脱泡装置を具備したスクリュー式押出
機、ニーダー等を用いることができる。また、その好適
な溶解温度は、80〜120℃である。溶解温度が80
℃未満であると、短時間でのセルロースの溶解が不十分
となりやすく、均一溶液の調製が困難である。一方で
は、120℃超であると、セルロースの重合度が低下す
るため好ましくない。
【0029】本発明の血液浄化用膜の製造方法では、上
記製膜用組成物を、水を主成分とした水系凝固浴を用い
て製膜する。好適な製膜条件として、以下のものが例示
できる。水系凝固浴としては、第三級アミンオキシド水
溶液、極性希釈剤を溶解した水溶液等を示すことができ
る。特に、N−メチルモルフォリン−N−オキシドを0
〜40重量%含有する水溶液が、溶液回収を考慮した観
点から好ましい。水系凝固浴の温度としては、5〜60
℃の範囲で、膜性能を制御した製膜が可能であるが、2
0℃〜40℃の室温近辺での製膜が最も経済的で望まし
い。
【0030】本発明の血液浄化用膜の製造方法として
は、水系凝固浴中に、上述の製膜用組成物を、例えば所
定形状のダイから押し出して、セルロースを再生し成形
する方法を示すことができ、製膜用組成物を凝固浴に浸
漬する凝固再生工程を経ることにより膜状物を得る。膜
状物としては、平膜状物、中空糸膜状物等を例示するこ
とができる。以下に、中空糸膜を製膜する方法を例にと
り、本発明の血液浄化用膜の製造方法についてさらに詳
細に説明する。なお、平膜状物も同様の方法により得る
ことができる。
【0031】紡糸ノズルと凝固浴液面との距離について
は0、即ち完全な湿式紡糸、あるいは、適当なエアギャ
ップを設けるいわゆる乾式紡糸のいずれの方法を用いて
もよい。巻き取り速度は、30m/分〜300m/分の
間で適宜選択することができるが、特に経済的な観点か
ら、60m/分〜200m/分での紡糸が好ましい。中
空糸膜を調製する紡糸工程で使用される2重管ノズルに
おいて、製膜用組成物(以下、ポリマードープ液とも記
す)が吐出される空隙(アウトダイ)の好適値は、内径
が500〜1500μm、外径が1000〜2500μ
mである。中空形状形成のために2重管ノズルの内側ノ
ズルから、セルロースを溶解しない流体を吐出させる必
要がある。この内側ノズルから吐出する流体(芯剤)と
しては、ポリマードープ液と全く相互溶解性のない流
体、例えば、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピ
ル、フタル酸エステル等の非水溶性オイル状物質や、窒
素、空気等のガス;あるいは、ポリマードープ液と相溶
性はあるがセルロースを全く溶解しない液体、例えば
水、低濃度第3級アミンオキシド水溶液、ジメチルスル
フォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセト
アミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、
プロピレングリコール、イソプロパノール等の極性有機
溶剤及びこれらの水溶液が挙げられる。
【0032】次に、凝固浴を通過し得られた中空糸膜を
水で洗浄する。この洗浄工程(平膜の製造においても同
様)では、第三級アミンオキシド、必要により含有され
る極性希釈剤、添加剤が膜に残存しないように、洗浄す
る。洗浄時間を短縮するために、室温〜60℃の水を使
用するのが好ましい。次に、このようにして得られた水
膨潤状態の中空糸膜を乾燥するが、乾燥工程に先立ち、
中空糸膜に孔径維持剤を添着する。孔径維持剤を添着す
る方法としては、孔径維持剤を溶解させた水溶液を膜に
添着する、従来公知の方法を用いることができる。使用
する孔径維持剤としては、一般に使用されている公知な
ものが使用可能である。例えば、グリセリン、プロピレ
ングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコ
ールが挙げられる。これらの中でも、長期にわたる臨床
実績により安全性が確認されているグリセリンが特に好
ましい。グリセリンは、5〜40重量%の水溶液として
用いるのが好ましい。膜を加熱乾燥する乾燥工程におい
て、乾燥温度は、60〜140℃が好ましく、より好ま
しくは80〜120℃である。乾燥時間は、上述の乾燥
温度において、紙・ダンボール水分計KG−40型(サ
ンコウ電子研究所社製)を用いて測定した膜の湿重基準
水分率が3〜30重量%になるように設定することが望
ましく、5〜20重量%がより好ましい。
【0033】上述の凝固再生工程における凝固浴組成と
その温度、添着工程における孔径維持剤を溶解させた水
溶液組成、乾燥工程における乾燥温度とその時間を変動
させることにより、得られる血液浄化用膜の特性を調節
することができる。例えば、凝固浴の温度を上げると、
限外ろ過速度(UFR)を高くすることができる。すな
わち、凝固再生工程における凝固浴組成とその温度、添
着工程における孔径維持剤を溶解させた水溶液組成、乾
燥工程における乾燥温度とその時間について、それぞれ
に記した上述の好適条件範囲で任意に組み合わせること
により、高透水性能と高分画特性と、優れた寸法安定性
を同時に有する人工腎臓用の再生セルロース系の血液浄
化用膜を製造することができる。
【0034】従って、上述の構成を採る本発明の血液浄
化用膜は、平膜状物、中空糸膜状物等の形状をとるセル
ロース系血液浄化用膜であって、高透水性能と高分画特
性とを同時に有し、例えば、下記に示す膜性能を有し、
また、本発明の血液浄化用膜の製造方法では、下記に示
す膜性能の血液浄化用膜を製造することができる。生理
食塩水系でのデキストランに対するふるい係数が、分子
量1,000のデキストランに対しては0.9以上、か
つ、分子量が10,000のデキストランに対しては
0.3以上0.95以下、かつ、分子量が1000,0
00のデキストランに対しては0.4以下の血液浄化用
膜。膜の分画性能は、主に、空孔サイズにより定まり、
膜分画特性の同定は、種々の異なる大きさの分子種の分
子のふるい係数の限外ろ過実験での測定により行うこと
ができるが、本発明では、生理食塩水系でのデキストラ
ンに対する膜のふるい係数(Sieving Coefficient)を測
定して、分画性能を評価する。ここで、ふるい係数は、
得られたCs (ろ液採取開始時の母液のデキストラン濃
度)、Ce (ろ液採取終了時の母液のデキストラン濃
度)、Cf (採取したろ液のデキストラン濃度)を用い
て、下記式(1)により定義される。
【0035】
【数1】
【0036】
【実施例】以下に実施例をあげて、本発明を具体的に説
明する。 <セルロース系血液浄化用膜の調整>以下に示す原料を
用いて、以下に示す方法で、第1表に示す血液浄化用膜
を得た。 (実施例1〜5、比較例1〜3)15重量%の水を含有
するN−メチルモルフォリンオキシド(NMMO)93
0g(93重量%)、セルロース/疎水性ポリマー=9
5:5(重量比)の組成の混合物70g(7重量%)
を、95℃で攪拌溶解し、均一溶液を調整して製膜組成
物を得た。なお、セルロースは、コットンリンター(T
APPI標準法T230による粘度=7.0〜8.0、
α−セルロース97.5%以上、大平製紙社製)を用い
た。疎水性ポリマーの種類は、第1表に示した。得られ
た製膜組成物を、ギアポンプを用い、105℃に加熱さ
れた中空繊維紡糸ノズルに供給し、ノズルより25℃の
水からなる凝固浴に、巻取速度80m/分で紡糸し、中
空糸膜を得た。この時、ノズルと凝固浴液面との距離は
70mmであり、芯剤には炭化水素系オイルを用いた。
こうして得られた含水状態の中空糸膜を、室温の完全脱
塩水で充分に洗浄し、ついで、グリセリン水溶液(8重
量%)浴に連続的に通して処理し、80℃で3分連続乾
燥処理を行った。乾燥処理後の膜の湿重基準水分率は1
0%であった。この中空糸膜を試験体(透析器)にモジ
ュール化し、水湿潤状態で蒸気滅菌処理(110℃、5
5分)(表中、ACと記す)を行った。試験体の膜面積
は300[cm2 ]であった。
【0037】<膜性能および生体適合性の評価>実施例
1〜5、比較例1〜3で得られた各セルロース系中空糸
膜について、膜性能(限外ろ過速度、ふるい係数)、生
体適合性(補体C3aの産生量)を、下記の方法で測定
し評価した。 (1)限外ろ過速度(Ultra Filtration Rate、表中U
FRと記す) 本発明においては、UFRは水の透過速度を表し、単位
時間に、単位圧力で、膜壁を単位膜面積当たり透過する
水の容量と定義される(下記式(2)参照)。測定は、
37℃の逆浸透水(RO水)を使用して行った。RO水
による膜間圧力差は、100[mmHg]に調整した。
【0038】
【数2】 V:透過水容量 [ml] t:時間 [h] A:膜面積 [m2 ] p:膜間圧力差 [mmHg]
【0039】(2)ふるい係数(Sieving Coefficien
t、以下SCとも記す) 生理食塩水系での分子量1000、10,000、10
0,000のデキストランに対するふるい係数を測定し
た。生理食塩水系でのデキストランに対する膜のふるい
係数の測定、算出は、文献(腎と透析別冊、ハイパフォ
ーマンスメンブラン '90、p.38〜41)の方法に
従った。デキストランの生理食塩水溶液をカラムに所定
の流速で導入し、ろ液採取開始時の母液のデキストラン
濃度、ろ液採取終了時の母液のデキストラン濃度、採取
したろ液のデキストラン濃度を測定した。得られたCs
(ろ液採取開始時の母液のデキストラン濃度)、C
e (ろ液採取終了時の母液のデキストラン濃度)、C f
(採取したろ液のデキストラン濃度)を用いて、上記式
(1)より膜のSCを算出した。なお、デキストラン濃
度の測定は、GPS System21(昭和電工社
製)を用い、カラムはOhpak KB−803(昭和
電工社製)を2本連結させたものを用いた。サンプル量
は100μl、移動層は生理食塩水(テルモ社製)、流
速は1ml/min、測定温度は35℃の条件下で、検
出は示差屈折計で行った。デキストランの分子量換算は
プルランP−82(昭和電工社製)を使用して行った。
【0040】(3)活性化補体量 実施例、比較例で得られた膜を生理食塩水へ浸漬した
後、ヘパリン(20u/ml血液)で抗凝固処理したヒ
ト血液から遠心分離により得た血漿を中空系内に充填し
(膜面積10cm2 当たり1ml)、接触させ、37℃
で1時間インキュベーションし、RIA2抗体法によ
り、活性化補体(C3a)の量を測定した。膜性能およ
び生体適合性の測定結果を第1表に示す。
【0041】
【表1】
【0042】表中の疎水性ポリマー: SPU:ポリカプロラクトン系セグメント化ポリウレタ
ン(ポリウレタン部:ブタンジオール/MDI) BC:ベンジルセルロース PI:トリメリット酸無水物、メチレンジアニリン共重
合体
【0043】本発明の血液浄化用膜の製造方法で得られ
た中空糸膜(実施例1〜5)は、Tmが130℃以上の
疎水性ポリマーを含有しており、蒸気滅菌の熱(110
℃、55分)に十分耐え、蒸気滅菌処理後も、好適なU
FR値を維持、ふるい係数も好ましい範囲の値を示すの
に対し、Tmが低いポリマーを使用した膜(比較例1〜
3)では、熱により大きく膜性能が低下していることが
分かる。特に、Tm=110℃のベンジルセルロースを
使用した膜(比較例2、3)では、UFRの低下が著し
いのが分かる。
【0044】
【発明の効果】本発明のセルロース系血液浄化用膜は、
高透水性能、高分画特性とを有し、従って血液適合性に
優れ、高い安全性を有し、さらに、優れた耐熱性を示
す。従って、本発明のセルロース系血液浄化用膜は、人
工腎臓用セルロース系の血液浄化膜として好適に用いる
ことができる。また、本発明のセルロース系血液浄化用
膜の製造方法では、高透水性能、高分画特性とを有し、
優れた耐熱性、寸法安定性を同時に有する血液浄化用膜
の製造が可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 工藤 雅人 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内 Fターム(参考) 4C077 AA05 BB01 BB02 KK12 KK13 KK21 LL01 LL05 LL17 NN02 NN18 PP02 PP07 PP14 PP18 PP21 4D006 GA13 MA01 MA03 MB02 MB06 MB15 MB20 MC11X MC40 MC44 MC53X MC54 MC58X MC86 MC87 MC88 MC89 NA04 NA05 NA10 NA12 NA17 NA18 NA54 NA64 NA71 PA01 PB09 PB52 PC47

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第三級アミンオキシドを96〜50重量
    %、セルロース、および、結晶融解温度またはガラス転
    移温度が130℃以上である疎水性ポリマーを4〜25
    重量%、セルロースを溶解しない極性希釈剤を0〜25
    重量%含有し、該セルロースと該疎水性ポリマーの組成
    比(重量比)が98:2〜60:40である製膜用組成
    物を、水系凝固浴を用いて製膜してなる血液浄化用膜。
  2. 【請求項2】前記第三級アミンオキシドがN−メチルモ
    ルホリン−N−オキシドであり、前記セルロースを溶解
    しない極性希釈剤が水である請求項1に記載の血液浄化
    用膜。
  3. 【請求項3】前記疎水性ポリマーがセグメント化ポリウ
    レタンである請求項1または2に記載の血液浄化用膜。
  4. 【請求項4】生理食塩水系でのデキストランに対するふ
    るい係数が、分子量1,000のデキストランに対して
    は0.9以上、かつ、分子量が10,000のデキスト
    ランに対しては0.3以上0.95以下、かつ、分子量
    が100,000のデキストランに対しては0.4以下
    である請求項1〜3のいずれかに記載の血液浄化用膜。
  5. 【請求項5】請求項1〜3のいずれかに記載の製膜用組
    成物を、水系凝固浴を用いて製膜する血液浄化用膜の製
    造方法。
  6. 【請求項6】請求項5に記載の方法で製造される血液浄
    化用中空糸膜。
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