JP2000239771A - Ni基超合金、その製造方法およびガスタービン部品 - Google Patents

Ni基超合金、その製造方法およびガスタービン部品

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Tadaharu Yokogawa
忠晴 横川
Koji Harada
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Hiroaki Yoshioka
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Abstract

(57)【要約】 【課題】クリープ強度および耐高温腐食性に優れたNi
基超合金およびその製造方法を提供する。また、Ni基
超合金をガスタービン動翼および静翼などに適用するこ
とで、長寿命化を図ったガスタービン部品を得る。 【解決手段】重量%で、Co:10%〜14%、Cr:
1%〜4%、Mo:2.1%〜4.0%、W:4.5%
〜6.5%、Al:5%〜7%、Ti:1%以下、T
a:4%〜8%、Ru:0.5%〜2.5%、Re:4
%〜6%およびHf:0.05%〜0.15%を含有
し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特
徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クリープ強度およ
び耐高温腐食性に優れたNi基超合金およびその製造方
法、また、このNi基超合金を適用したガスタービン部
品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガスタービンの高効率化にともなう燃焼
温度の上昇により、タービン動静翼にはクリープ寿命の
向上が求められてきている。クリープ寿命の向上を図る
ために、タービン動静翼は、従来使用されてきた普通鋳
造翼から応力軸方向の結晶粒界を無くし高温強度を高め
た一方向凝固動翼、さらに結晶粒界を消失させることに
より、熱処理特性を低下させる原因であった粒界強化元
素を除去し、最適な熱処理によりγ′の析出率を高める
ことで、高温でのクリープ特性を更に向上させた単結晶
動翼へと変化してきた。また、単結晶動翼においてもR
eを含まないCMSX−2(米国特許第4,582,5
48号)、Rene’N4(米国特許第5,399,3
13号)、PWA1480(米国特許第4,209,3
48号)およびPWA1483(英国特許212812
A)などの第1世代の単結晶合金から、Reを3%程度
含むCMSX−4(米国特許第4,643,782
号)、PWA1484(米国特許第4,719,080
号)およびRene’N5(特開平5−59474)な
どの第2世代の単結晶合金、さらに、Reを5〜6%程
度含むCMSX−10(特開平7−138683)等の
第3世代の単結晶合金へと開発が行われてきた。これは
主として航空機用ジェットエンジン、小型ガスタービン
の分野で目ざましく進歩してきた技術であるが、産業用
の大型ガスタービンにおいても燃焼効率の向上を目的と
した高温化により、技術の転用が図られてきている。
【0003】すでに、1500℃級産業用ガスタービン
には第2世代の単結晶合金が使用されており、さらに次
世代ガスタービンには第3世代の単結晶合金並の強度が
要求されると考えられる。しかしながら第3世代の単結
晶合金は、クリープ特性が向上した反面、相安定性が悪
く長時間の使用によりTCP(Topollogical ClosedPac
ked)相といわれる脆化相が析出し、急激に強度が低下
するという問題があった。これは点検期間が数百時間か
ら数千時間と、比較的点検期間が短い航空機用ジェット
エンジンでは問題が少ない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、点検期
間が数万時間と長い産業用ガスタービンでは問題を有し
ていた。
【0005】また、産業用の大型ガスタービンでは、航
空機用ジェットエンジン、小型ガスタービンと異なり、
腐食性のつよい硫黄成分を多く含む燃料を使用する。こ
れより産業用ガスタービンでは優れた耐高温腐食性が要
求されるが、前述した航空機用ガスタービン翼材料とし
て開発されてきた合金では、要求される耐高温腐食性を
得ることができない。
【0006】本発明は、このような問題点を解決するた
めになされたものであり、クリープ強度および耐高温腐
食性に優れたNi基超合金およびその製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0007】また、このNi基超合金をガスタービン動
翼および静翼などに適用することで、長寿命化を図った
ガスタービン部品を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載のNi基超
合金は、重量%で、Co:10%〜14%、Cr:1%
〜4%、Mo:2.1%〜4.0%、W:4.5%〜
6.5%、Al:5%〜7%、Ti:1%以下、Ta:
4%〜8%、Ru:0.5%〜2.5%、Re:4%〜
6%およびHf:0.05%〜0.15%を含有し、残
部がNiおよび不可避的不純物からなることを特徴とす
る。
【0009】請求項2記載のNi基超合金は、重量%
で、Co:11%〜13%、Cr:2.0%〜3.5
%、Mo:2.1%〜3.0%、W:5.5%〜6.5
%、Al:5.5%〜6.5%、Ti:1%以下、T
a:5%〜7%、Ru:1%〜2%、Re:4.5%〜
5.5%およびHf:0.05%〜0.15%を含有
し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特
徴とする。
【0010】請求項1および2記載の発明において、合
金組成における各添加元素の効果および組成限定理由を
述べる。
【0011】Co(コバルト)は、γ′相(Ni(ニッ
ケル)とAl(アルミニウム)との金属間化合物Ni
Al)の固溶温度を低下させて溶体化温度幅を広くする
ために必要な元素である。その効果を十分に得るために
は、10%以上の添加が必要であるが、添加量が14%
を超えると高温域でのクリープ強度の低下を招く。従っ
て、Coの添加量を10%以上14%以下とした。な
お、添加量は、11%以上13%以下とするとさらに好
ましい。
【0012】Cr(クロム)は、合金の耐高温腐食性を
向上させるために必要な元素である。その効果を十分得
るためには、本合金組成系では1%以上の添加が必要で
あるが、添加量が4%を超えるとシグマ相などの有害相
の析出傾向が強くなり、クリープ強度の低下を招く。従
って、Crの添加量は1%以上4%以下とすると良い。
なお、添加量は2.0%以上3.5%以下とするとさら
に好ましい。
【0013】Mo(モリブデン)は、合金の固溶強化、
および負の格子定数ミスフィットによる整合界面強化に
よるクリープ強度向上に必要な元素である。本発明にお
ける合金では、シグマ相の析出を抑制するためにCrの
添加量を1%〜4%と抑えており、耐高温腐食性を維持
するために耐高温腐食性を低下させる主原因であるWの
添加量を4.5〜6.5%としている。しかしながら、
Wの添加量はクリープ強度向上に効果がある。このため
Wの代用としてMoを2%以上添加して、高温強度の向
上を図った。しかしながら、Moの添加量が4%を超え
るとシグマ相など有害相の析出傾向が強くなりクリープ
強度の低下を招き、さらに耐高温腐食性も悪化する。従
って、Moの添加量は2%以上4%以下とすると良い。
なお、添加量は2%以上3%以下とするとさらに好まし
い。
【0014】W(タングステン)は、合金の固溶強化に
よるクリープ強度向上に必要な元素である。その効果を
十分に得るには、4.5%以上の添加が必要であるが、
添加量が6.5%を超えるとシグマ相などの有害相の析
出傾向が強くなり、クリープ強度の低下を招くとともに
耐高温腐食性を低下させてしまう。従って、Wの添加量
は4%以上8%以下とすると良い。なお、添加量は5.
5%以上6.5%以下とするとさらに好ましい。
【0015】Al(アルミニウム)は、γ′相の析出量
を増加させてクリープ強度を向上させるために必要な元
素である。その効果を十分得るためには、5%以上の添
加が必要であるが、添加量が7%を超えると高温域での
クリープ強度の低下を招くとともに、γ′固溶温度を上
昇させて熱処理特性を低下させてしまう。従って、Al
の添加量は5%以上7%以下とすると良い。なお、添加
量は5.5%以上6.5以下とするとさらに好ましい。
【0016】Ti(チタン)は、γ′相を固溶強化して
クリープ強度を向上させるとともに、耐高温腐食性を向
上させる元素である。本発明において、目的とする強度
を得るためにはTiの添加は必ずしも必要ではないが、
更なる耐高温腐食性の向上およびクリープ強度の向上を
図るためにTiを添加することが望ましい。しかしなが
ら、Tiの1%を超える添加は共晶γ′の生成を招き、
逆に強度低下の原因となるためその最大添加量を1%と
規定した。なお、0.5%以下とするとより好ましい。
【0017】Ta(タンタル)は、γ′を固溶強化して
クリープ強度を向上させるために必要な元素である。そ
の効果を十分得るためには、4%以上の添加が必要であ
るが、添加量が8%を超えると高温域でのクリープ強度
の低下を招く。従って、Taの添加量を4%以上8%以
下と規定した。なお、添加量は4.5%以上6.5%以
下とするとより好ましい。
【0018】Re(レニウム)は、γ相(Niマトリッ
クス)を固溶強化してクリープ強度を向上させるととも
に、耐高温腐食性を向上させる元素である。目的の強度
を得るためには4%以上の添加が必要である。しかしな
がら、本合金組成系において、Reを6%を超えて添加
するとRe−W相等のシグマ相を生成しクリープ強度の
低下を招くため、添加量を4%以上6%以下と規定し
た。なお、添加量は、4.5%以上5.5%以下とする
とさらに好ましい。
【0019】Ru(ルテニウム)は、γ相を固溶強化し
クリープ強度を向上させる元素である。しかしながら、
本発明の合金組成系においてはRuを2.5%を超えて
添加するとRu−W等のシグマ相を生成し、クリープ強
度の低下を招くため、Ruの添加量を0.5%以上2.
5%以下と規定した。なお、好ましい添加量は1%以上
2%以下である。
【0020】Hf(ハフニウム)は、合金の融点の低下
により熱処理特性が低下するため、従来のNi基単結晶
合金においては添加されないものであるが、単結晶ター
ビンブレード鋳造時に生成する異結晶や、その後の熱処
理と加工とにより生ずる再結晶の粒界を強化し、タービ
ン動静翼の歩留まりを向上させるため、本発明の合金で
は0.05%〜0.15%の範囲で添加している。
【0021】請求項3記載の発明は、請求項1または2
記載のNi基超合金において、重量%で、Cを0.1%
〜0.5%含有することを特徴とする。
【0022】請求項4記載の発明は、請求項1から3ま
でのいずれかに記載のNi基超合金において、重量%
で、Zrを0.1%〜0.5%含有することを特徴とす
る。
【0023】請求項5記載の発明は、請求項1から4ま
でのいずれかに記載のNi基超合金において、重量%
で、Bを0.1%〜0.5%含有することを特徴とす
る。
【0024】請求項3から5までに記載の発明におい
て、B(ホウ素)、C(炭素)およびZr(ジルコニウ
ム)は粒界強化元素である。しかし、これらの元素はH
fと同様に、添加により合金の融点を低下させ熱処理特
性を悪化させるため、従来のNi基超合金では全く添加
されていない。
【0025】本発明においては、単結晶合金の組成を有
する合金にBを0.1%〜0.5%、Cを0.1%〜
0.5%およびZrを0.1%〜0.5%の範囲で添加
することで、現在の一方向凝固合金のクリープ強度を超
える一方向凝固合金を得ることができる。
【0026】請求項6記載のNi基超合金の製造方法
は、Ni、Co、Cr、Mo、W、Al、Ti、Ta、
Ru、ReおよびHfを含む合金材料を用いて、121
0℃以上1350℃以下の温度範囲において溶体化熱処
理を行った後、1050℃以上1200℃未満の温度範
囲において1段時効熱処理を行い、単結晶化することを
特徴とする。
【0027】請求項7記載のNi基超合金の製造方法
は、Ni、Co、Cr、Mo、W、Al、Ti、Ta、
Ru、ReおよびHfを含有し、C、ZrまたはBのい
ずれか一種以上を含有する合金材料を用いて、1150
℃以上1250℃以下の温度範囲において溶体化熱処理
を行った後、1000℃以上1200℃未満の温度範囲
において1段時効熱処理を行い、一方向凝固することを
特徴とする。
【0028】請求項8記載のガスタービン部品は、請求
項1または2記載のNi基超合金により構成される。
【0029】請求項9記載のガスタービン部品は、請求
項6記載の製造方法で作製されたNi基超合金により構
成される。
【0030】請求項10記載のガスタービン部品は、請
求項3から5までのいずれかに記載のNi基超合金によ
り構成される。
【0031】請求項11記載のガスタービン部品は、請
求項7記載の製造方法で作製されたNi基超合金により
構成される。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図1〜
図10および表1〜表7を用いて説明する。なお、以下
に示す実施例は本発明と他の超合金や物品との関係を例
示するものであり、いかなる意味においても本発明の範
囲が限定されるものではない。
【0033】第1実施形態(図1〜図3、表1) 本実施形態においては、本発明の合金組成を有する単結
晶化させたNi基超合金が優れたクリープ破断特性およ
び耐高温腐食性を有することを説明する。なお、本実施
形態においては、実施例、比較例および従来例を用い
た。
【0034】実施例(試料No.1〜No.8) 本実施例においては、表1に示す試料No.1〜No.
8の成分組成範囲のNi基超合金材料を用いた。
【0035】
【表1】
【0036】表1に示すように、試料No.1〜No.
8のNi基超合金材料は、重量%で、Co:10%〜1
4%、Cr:1%〜4%、Mo:2.1%〜4.0%、
W:4.5%〜6.5%、Al:5%〜7%、Ti:1
%以下、Ta:4%〜8%、Ru:0.5%〜2.5
%、Re:4%〜6%およびHf:0.05%〜0.1
5%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からな
る。
【0037】比較例(試料No.9〜No.27) 本比較例においては、表1に示す試料No.9〜No.
27の成分組成範囲のNi基超合金材料を用い、本発明
の成分組成範囲以外のNi基超合金材料を用いた。
【0038】従来例(試料No.28(CMSX−
4)) 本従来例においては、表1に示す試料No.28として
CMSX−4を用いた。表1に示すように、CMSX−
4の合金材料は、重量%で、Co:9.0%、Cr:
6.5%、Mo:0.6%、W:6.0%、Al:5.
6%、Ti:1.0%、Ta:6.5%、Re:3.0
%およびHf:0.1%を含有し、残部がNiおよび不
可避的不純物からなる。
【0039】実施例および比較例の成分組成を有する合
金について、各試験片を作成するために、あらかじめ表
1に示す組成になるように、原材料を適当な割合として
真空溶解により精練を行った。その後、再溶解用インゴ
ットを作り、これを直径100×1000mm程度のメ
ルティングストックに鋳造した。このメルティングスト
ックを必要量に小割りにし、その後、引き抜き法により
直径9×100mmの丸棒形状の単結晶合金を鋳造し
た。
【0040】そして、実施例、比較例および従来例にお
ける試料No.1から試料No.28までの組成からな
る各試験片について、塩酸と過酸化水素水とをグリセリ
ンで希釈した腐食液にてエッチングを行い、試験片全体
が単結晶化していること、ならびに成長方向が引き抜き
方向に対して10°以内になっていることを目視にて確
認した。
【0041】その後、表1に示す実施例、比較例および
従来例における試料No.1から試料No.28までの
組成からなり、単結晶化させた各試験片について、図1
に示す溶体化処理および時効熱処理を以下のように施し
た。
【0042】図1は、実施例および比較例の熱処理シー
ケンスを示す図である。
【0043】図1に示すように、まず試料No.1から
試料No.27までの各試験片を1280℃の温度で1
時間の予備加熱処理を施した。その後、1300℃の温
度で5時間の溶体化熱処理を施した後、室温にてガス冷
却(GFC;Gas fan Cooling)を行った。次に、110
0℃の温度で4時間の1段時効熱処理を行い、室温にて
ガス冷却(GFC)を行った後、続いて、780℃の温
度で20時間の2段時効熱処理を行い、室温にてガス冷
却(GFC)を行った。
【0044】一方、試料No.28のCMSX−4は部
分溶体化熱処理後、1080℃の温度で4時間の1段時
効熱処理を行い、室温にてガス冷却(GFC)を行った
後、続いて、870℃の温度で20時間の2段時効熱処
理を行い、室温にてガス冷却(GFC)を行った。
【0045】このように試料No.1から試料No.2
8までの各試験片について処理を施した後、試験片を直
径8×2mmの高温腐食試験用試験片に加工した。そし
て、大気中、温度1100℃および応力138MPaの
条件下にてクリープ破断試験を行い、クリープ破断寿命
を測定した。その結果を図2に示す。
【0046】図2に示すように、本発明の合金組成範囲
である実施例の試料No.1〜試料No.8では、温度
1100℃および138MPaの試験条件下では、クリ
ープ破断寿命が198.1〜212.1時間となってお
り、従来例の試料No.28の合金CMSX−4と比較
すると、クリープ破断寿命の大幅な向上が見られた。こ
れに対し、本発明の合金組成範囲外である比較例の試料
No.9では、Co添加量が少ないため相安定性が低下
し、TCP相が析出することによりクリープ破断寿命が
低下した。試料No.10では、Coの過剰添加により
逆に相安定性が低下し、クリープ破断寿命が低下した。
また、試料No.13、No.15およびNo.20で
は、固溶強化元素であるMo、WおよびTaの添加量が
少なく、強度に有効に作用しないため破断寿命が低下し
た。試料No.18ではAlの添加量が少なく、析出強
化の主要因子であるγ′析出量が低下することによりク
リープ破断寿命が低下した。試料No.12、No.1
4、No.16、No.21、No.23およびNo.
25では、Cr、Mo、W、Ta、ReおよびRuの過
剰添加により、Re−W、Ru−W、α−Wおよびα−
Mo等のTCP相が析出しクリープ破断寿命が低下し
た。試料No.17およびNo.19では、Alおよび
Tiの過剰添加によりγ−γ′共晶が生成し、これがク
リープ時にクラックの生成箇所となることにより、クリ
ープ破断寿命が低下した。さらに、試料No.27で
は、Hfの過剰添加により、部分的に合金の融点が低下
してクリープ破断寿命が低下した。
【0047】次に、試験片を平行部の直径4mm×20
mm、全長60mmのクリープ試験片に加工した。そし
て、耐高温腐食性を評価する目的で、90%NaSO
+10%NaClの組成を有する混合塩を試験片表面
積あたり40mg/cm塗布し、850℃にて40時
間加熱保持し、腐食浸食量を測定した。その結果を図3
に示す。
【0048】図3に示すように、本発明の合金組成範囲
内にある試料No.1〜試料No.8では、従来例の合
金CMSX−4に対し、良好な耐高温腐食性を示した。
【0049】従って、本実施形態によれば、優れたクリ
ープ破断特性および耐高温腐食性を有するNi基超合金
を得ることができる。
【0050】第2実施形態(表2〜表3、図4〜図5) 本実施形態においては、熱処理温度を変化させて単結晶
化したNi基超合金を作製した。
【0051】あらかじめ表1に示す試料No.1の合金
組成になるように、原材料を適当な割合として真空溶解
により精練を行った。その後、再溶解用インゴットを作
り、これを直径100×1000mm程度のメルティン
グストックに鋳造した。このメルティングストックを必
要量に小割りにし、その後、引き抜き法により直径9×
100mmの丸棒形状の単結晶合金を鋳造した。これを
試料No.29とした。
【0052】このようにして得られた試料No.29の
合金組成を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】表2に示すように、試料No.29のNi
基超合金の合金組成は、重量%で、Co:11.0%、
Cr:3.0%、Mo:2.1%、W:6.0%、A
l:5.8%、Ta:5.8%、Re:4.9%、R
u:1.5%およびHf:0.1%を含有し、残部がN
iおよび不可避的不純物からなる。
【0055】その後、この試験片を塩酸と過酸化水素水
とをグリセリンで希釈した腐食液にてエッチングを行
い、試験片全体が単結晶化していること、ならびに成長
方向が引き抜き方向に対して10°以内になっているこ
とを目視にて確認した。
【0056】このようにして得られた試験片に対して、
図4に示す熱処理シーケンスにより熱処理を施した。
【0057】図4に示すように、まず、過熱による局部
溶融を防止するため、溶体化温度より20℃低い温度に
おいて1時間、予備熱処理を施した。その後、表3に示
す熱処理No.1から熱処理No.8までに示す温度に
おいて溶体化熱処理(I) を施し、室温にてガス冷却(G
FC)を行った。次に、表3に示す熱処理No.1から
熱処理No.8までの温度で4時間の1段時効熱処理(I
I)を行い、室温にてガス冷却(GFC)を行った後、続
いて、780℃の温度で20時間の2段時効熱処理を行
い、室温にてガス冷却(GFC)を行った。
【0058】
【表3】
【0059】熱処理後、試験片を平行部径の直径4mm
×20mm、全長60mmのクリープ試験片に加工した
後、大気中、温度1100℃および応力138MPa条
件下においてクリープ試験を実施した。その結果を図5
に示す。
【0060】図5に示すように、本発明の熱処理範囲に
ある熱処理No.l〜熱処理No.4の温度で熱処理を
施した試験片では、クリープ破断寿命が151〜207
時間となり、本発明の熱処理範囲外である比較例の熱処
理No.5〜熱処理No.8の温度で熱処理を施した試
験片と比較して、良好なクリープ破断寿命を示した。
【0061】従って、本実施形態によれば、溶体化熱処
理および1段時効熱処理などの熱処理温度を最適とする
ことで、優れたクリープ破断特性を有するNi基超合金
を得ることができる。
【0062】第3実施形態(表4〜表5、図6〜図8) 本実施形態においては、本発明の組成範囲にある合金に
C、ZrおよびBを添加し、一方向凝固化したNi基超
合金を用いた。
【0063】試験片は、まず第1実施形態で使用した試
料No.1の合金組成を目標に、表4に示す組成のメル
ティングストックを作製した。
【0064】
【表4】
【0065】このメルティングストックに、表5に示す
C、ZrおよびBを添加し、引き抜き法により直径9×
100mmの丸棒形状の一方向凝固試験片として、試料
No.30から試料No.40までの組成からなる各試
験片を得た。なお、試料No.30から試料No.36
までの各試験片は本発明の組成範囲内にある実施例であ
り、試料No.37から試料No.40までの各試験片
は、本発明の組成範囲外にある比較例である。
【0066】
【表5】
【0067】これらの各試験片に対して、塩酸と過酸化
水素水とによりエッチングを行い、結晶成長方向が引き
抜き方向に対して10°以内になっていることを目視に
て確認した。
【0068】従来例として、表5に示さないCM247
LC(試料No.41)を除く試料No.30から試料
No.40までの11種類の各試験片について、図6に
示す熱処理を施した。
【0069】図6に示すように、11種類の各試験片を
1200℃の温度で4時間の溶体化熱処理を施した後、
室温にてガス冷却(GFC;Gas fan Cooling )を行っ
た。次に、1080℃の温度で4時間の1段時効熱処理
を行い、室温にてガス冷却(GFC)を行った後、続い
て、780℃の温度で20時間の2段時効熱処理を行
い、室温にてガス冷却(GFC)を行った。
【0070】一方、試料No.41としてのCM247
LCは溶体化熱処理後、1080℃の温度で4時間の1
段時効熱処理を行い、室温にてガス冷却(GFC)を行
った。そして、続いて870℃の温度で20時間の2段
時効熱処理を施し、室温にてガス冷却(GFC)を行っ
た。
【0071】熱処理後、試験片を直径8×2mmの高温腐
食試験用試験片および平行部の直径4mm×20mm、
全長60mmのクリープ試験片に加工した。そして、大
気中、温度1100℃および応力138MPaの条件下
にてクリープ破断試験を行い、クリープ破断寿命を測定
した。その結果を図7に示す。
【0072】図7に示すように、実施例における合金
は、比較合金および従来合金CM247LCに対し、ク
リープ破断寿命が向上した。
【0073】また、耐高温腐食性を評価する目的で、9
0%NaSO+10%NaClの組成を有する混合
塩を試験片表面積あたり40mg/cmの量を塗布
し、温度850℃にて40時間加熱保持後、腐食浸食量
(mm)を測定した。その結果を図8に示す。
【0074】図8に示すように、試料No.30から試
料No.36までの実施例の合金は、試料No.37か
ら試料No.40までの比較例およびCM247LCで
ある従来例の合金に比較して、良好な耐高温腐食性を示
した。
【0075】従って、本実施形態によれば、優れたクリ
ープ破断特性および耐高温腐食性を有するNi基超合金
を得ることができる。
【0076】第4実施形態(表6〜表7、図9〜図1
0) 本実施形態においては、熱処理温度を変化させて一方向
凝固化したNi基超合金を作製した。
【0077】あらかじめ表5に示す試料No.30の合
金組成になるように、原材料を適当な割合として真空溶
解により精練を行った。その後、再溶解用インゴットを
作り、これを直径100×1000mm程度のメルティ
ングストックに鋳造した。このメルティングストックの
合金組成を表6の試料No.42に示す。
【0078】
【表6】
【0079】表6に示すように、試料No.42のNi
基超合金の合金組成は、重量%で、Co:11.2%、
Cr:3.2%、Mo:2.2%、W:6.1%、A
l:5.8%、Ta:5.9%、Re:4.9%、R
u:1.5%、Hf:0.1%およびC:0.1%を含
有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
【0080】このメルティングストックを必要量に小割
りにし、その後、引き抜き法により直径9×100mm
の丸棒形状の一方向凝固試験片を鋳造した。
【0081】この試験片に対して、塩酸と過酸化水素水
とによりエッチングを行い、結晶成長方向が引き抜き方
向に対して10°以内になっていることを目視にて確認
した。
【0082】このようにして得られた試験片に対して、
図9に示す熱処理シーケンスにより熱処理を施した。
【0083】図9に示すように、まず、表7に示す熱処
理No.9から熱処理No.15までに示す温度におい
て溶体化熱処理(I) を施し、室温にてガス冷却(GF
C)を行った。次に、表7に示す熱処理No.9から熱
処理No.15までの温度で4時間の1段時効熱処理(I
I)を行い、室温にてガス冷却(GFC)を行った後、続
いて、780℃の温度で20時間の2段時効熱処理を行
い、室温にてガス冷却(GFC)を行った。
【0084】
【表7】
【0085】表7に示すように、熱処理No.9から熱
処理No.11は溶体化熱処理の温度が1150℃以上
1200℃以下、1段時効熱処理の温度が1000℃以
上1200℃未満であり本発明の範囲内の処理条件で行
った実施例であり、熱処理No.12から熱処理No.
15は本発明の範囲外の処理条件により熱処理を行った
比較例である。
【0086】次に、熱処理後の各試験片を平行部径の直
径4mm×20mm、全長60mmのクリープ試験片に
加工し、大気中、温度1100℃および応力138MP
a条件下にてクリープ試験を実施し、クリープ破断寿命
を測定した。その試験結果を図10に示す。
【0087】図10に示すように、本発明の範囲内の実
施例における熱処理では、クリープ破断寿命は50〜6
1時間となり、比較例における熱処理に対し、良好なク
リープ破断寿命を示した。
【0088】従って、本実施形態によれば、単結晶合金
に粒界強化元素を添加して、一方向凝固合金とした場合
においても、優れたクリープ特性を有するNi基超合金
を得ることができる。
【0089】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
優れたクリープ破断寿命と耐高温腐食性とを有するNi
基超合金をガスタービン動翼および静翼などのガスター
ビン部品に適用することで、その効率向上に大きく寄与
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態における、実施例および
比較例の熱処理シーケンスを示す図。
【図2】本発明の第1実施形態における、実施例、比較
例および従来例のクリープ試験結果を示す図。
【図3】本発明の第1実施形態における、実施例、比較
例および従来例の高温腐食試験結果を示す図。
【図4】本発明の第2実施形態における、熱処理シーケ
ンスを示す図。
【図5】本発明の第2実施形態における、実施例および
比較例のクリープ試験結果を示す図。
【図6】本発明の第3実施形態における、熱処理シーケ
ンスを示す図。
【図7】本発明の第3実施形態における、実施例、比較
例および従来例のクリープ試験結果を示す図。
【図8】本発明の第3実施形態における、実施例、比較
例および従来例の高温腐食試験結果を示す図。
【図9】本発明の第4実施形態における、熱処理シーケ
ンスを示す図。
【図10】本発明の第4実施形態における、実施例およ
び比較例のクリープ試験結果を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 650 C22F 1/00 650A 651 651B 691 691B (72)発明者 小泉 裕 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁 金属材料技術研究所内 (72)発明者 中澤 静夫 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁 金属材料技術研究所内 (72)発明者 横川 忠晴 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁 金属材料技術研究所内 (72)発明者 原田 広史 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 科学 技術庁 金属材料技術研究所内 (72)発明者 日野 武久 神奈川県横浜市鶴見区末広町二丁目4番地 株式会社東芝京浜事業所内 (72)発明者 吉岡 洋明 神奈川県横浜市鶴見区末広町二丁目4番地 株式会社東芝京浜事業所内 (72)発明者 永田 晃則 神奈川県横浜市鶴見区末広町二丁目4番地 株式会社東芝京浜事業所内 Fターム(参考) 3G002 EA06

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、Co:10%〜14%、C
    r:1%〜4%、Mo:2.1%〜4.0%、W:4.
    5%〜6.5%、Al:5%〜7%、Ti:1%以下、
    Ta:4%〜8%、Ru:0.5%〜2.5%、Re:
    4%〜6%およびHf:0.05%〜0.15%を含有
    し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特
    徴とするNi基超合金。
  2. 【請求項2】 重量%で、Co:11%〜13%、C
    r:2.0%〜3.5%、Mo:2.1%〜3.0%、
    W:5.5%〜6.5%、Al:5.5%〜6.5%、
    Ti:1%以下、Ta:5%〜7%、Ru:1%〜2
    %、Re:4.5%〜5.5%およびHf:0.05%
    〜0.15%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純
    物からなることを特徴とするNi基超合金。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載のNi基超合金に
    おいて、重量%で、Cを0.1%〜0.5%含有するこ
    とを特徴とするNi基超合金。
  4. 【請求項4】 請求項1から3までのいずれかに記載の
    Ni基超合金において、重量%で、Zrを0.1%〜
    0.5%含有することを特徴とするNi基超合金。
  5. 【請求項5】 請求項1から4までのいずれかに記載の
    Ni基超合金において、重量%で、Bを0.1%〜0.
    5%含有することを特徴とするNi基超合金。
  6. 【請求項6】 Ni、Co、Cr、Mo、W、Al、T
    i、Ta、Ru、ReおよびHfを含む合金材料を用い
    て、1210℃以上1350℃以下の温度範囲において
    溶体化熱処理を行った後、1050℃以上1200℃未
    満の温度範囲において1段時効熱処理を行い、単結晶化
    することを特徴とするNi基超合金の製造方法。
  7. 【請求項7】 Ni、Co、Cr、Mo、W、Al、T
    i、Ta、Ru、ReおよびHfを含有し、C、Zrま
    たはBのいずれか一種以上を含有する合金材料を用い
    て、1150℃以上1250℃以下の温度範囲において
    溶体化熱処理を行った後、1000℃以上1200℃未
    満の温度範囲において1段時効熱処理を行い、一方向凝
    固することを特徴とするNi基超合金の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1または2記載のNi基超合金に
    より構成されたガスタービン部品。
  9. 【請求項9】 請求項6記載の製造方法で作製されたN
    i基超合金により構成されたガスタービン部品。
  10. 【請求項10】 請求項3から5までのいずれかに記載
    のNi基超合金により構成されたガスタービン部品。
  11. 【請求項11】 請求項7記載の製造方法で作製された
    Ni基超合金により構成されたガスタービン部品。
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