JP2000238516A - タイヤ空気圧推定装置 - Google Patents

タイヤ空気圧推定装置

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JP2000238516A JP4171499A JP4171499A JP2000238516A JP 2000238516 A JP2000238516 A JP 2000238516A JP 4171499 A JP4171499 A JP 4171499A JP 4171499 A JP4171499 A JP 4171499A JP 2000238516 A JP2000238516 A JP 2000238516A
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Masahiro Yonetani
正弘 米谷
Yozo Iwami
陽三 岩見
Koji Umeno
孝治 梅野
Toshiaki Nakagawa
稔章 中川
Yuichi Inoue
祐一 井上
Yukio Mori
雪生 森
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和宏 神谷
Kenji Asano
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Abstract

(57)【要約】 【課題】タイヤ付きホイールである車輪の回転速度を検
出する車輪速センサから出力された車輪速信号に基づ
き、タイヤの空気圧であるかまたはそれに関連するパラ
メータである目的パラメータを推定するために用いられ
る基礎パラメータを逐次取得するとともに、今回取得さ
れた基礎パラメータを含んで今回以前に逐次取得された
複数個の基礎パラメータに基づいて目的パラメータを推
定するタイヤ空気圧推定装置において、目的パラメータ
の推定精度を向上させる。 【解決手段】基礎パラメータが依存性を示す物理量であ
ってタイヤ空気圧を除くものが実質的に変化しないと予
想される長さの設定期間T2 が経過するごとに、目的パ
ラメータであるばね定数変化量ΔKPRO1を、最新の一設
定期間T2 中に取得された、リム側部角速度ωR ,外乱
2 ,ベルト側部角速度ωB およびねじれ角θRBを1組
とするM組の基礎パラメータに基づいて推定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タイヤ付きホイー
ルである車輪のタイヤ空気圧を推定する装置に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】特開平7−089304号公報には上記
タイヤ空気圧推定装置の一従来例が記載されている。こ
の従来例は、(a) ホイールに装着されたタイヤの内部に
空気が封入されて構成された車輪の回転速度を検出する
車輪速センサと、(b) その車輪速センサから出力された
車輪速信号に基づき、タイヤの空気圧であるかまたはそ
れに関連するパラメータである目的パラメータを推定す
るために用いられる基礎パラメータを逐次取得するとと
もに、今回取得された基礎パラメータを含んで今回以前
に取得された複数個の基礎パラメータに基づいて目的パ
ラメータを推定する推定器とを備えるように構成されて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および発
明の効果】本発明者らは、この種のタイヤ空気圧推定装
置において、タイヤ空気圧の推定精度を向上させること
を目的として研究を行い、その結果、次の事実に気がつ
いた。
【0004】今回の目的パラメータを推定するために用
いられる複数個の基礎パラメータの値は、タイヤ空気圧
の影響を受けるのはもちろんであるが、さらに、基礎パ
ラメータが取得される環境の影響も受ける。その環境の
構成要素としては、車輪が走行する路面の凹凸状況,車
両の走行速度または車輪の回転速度,車輪の接地荷重等
がある。したがって、目的パラメータの推定精度を向上
させるためには、今回の目的パラメータを推定するため
に用いられる複数個の基礎パラメータがそれぞれ互いに
実質的に等しい環境の下で逐次取得されることが望まし
い。このようにして複数個の基礎パラメータが取得され
る場合には、各基礎パラメータの値が環境に依存して減
少する場合にはその減少分を補い、増加する場合にはそ
の増加分を削るという補正を各基礎パラメータに対して
行うことが容易となる。
【0005】また、それら複数個の基礎パラメータが取
得される間に経過する時間が短い場合において長い場合
におけるより、それら複数個の基礎パラメータがそれぞ
れ互いに実質的に同じ環境で取得される可能性が高い。
また、複数個の基礎パラメータが取得される間に経過す
る時間が短いほど、取得される基礎パラメータの個数が
少ない。
【0006】このように、今回の目的パラメータを取得
するために用いられる基礎パラメータの個数と目的パラ
メータの推定精度との間には特定の関係があるのであ
る。
【0007】そして、本発明者らは、そのような知見に
基づいて基礎パラメータの個数を適正化すれば、目的パ
ラメータの推定精度を向上させることができるという事
実に気がついた。
【0008】このような事情を背景として、本発明は、
タイヤ空気圧またはそれに関連するパラメータである目
的パラメータの推定精度を向上させることを課題として
なされたものであり、本発明によって下記各態様が得ら
れる。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に
番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式
で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴およ
びそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためで
あり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが
以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
【0009】(1) ホイールに装着されたタイヤの内部に
空気が封入されて構成された車輪の回転速度を検出する
車輪速センサと、その車輪速センサから出力された車輪
速信号に基づき、前記タイヤの空気圧であるかまたはそ
れに関連するパラメータである目的パラメータを推定す
るために用いられる基礎パラメータを逐次取得するとと
もに、今回取得された基礎パラメータを含んで今回以前
に取得された複数個の基礎パラメータに基づいて目的パ
ラメータを推定する推定器とを備えたタイヤ空気圧推定
装置において、前記推定器を、前記基礎パラメータが依
存性を示す物理量であって前記タイヤ空気圧を除くもの
が実質的に変化しないと予想される長さの設定期間が経
過するごとに前記目的パラメータを、最新の一設定期間
中に逐次取得された複数個の前記基礎パラメータに基づ
いて推定するパラメータ推定部を含むものとしたことを
特徴とするタイヤ空気圧推定装置〔請求項1〕。この装
置においては、今回の目的パラメータを推定するために
用いられる複数個の基礎パラメータが、それら基礎パラ
メータが依存性を示す物理量であってタイヤ空気圧を除
くものが実質的に変化しないと予想される長さの設定期
間中に取得されたものとされる。したがって、この装置
によれば、実質的に同じ環境の下に取得された複数個の
基礎パラメータに基づいて今回の目的パラメータが推定
される傾向が強くなるため、互いに異なる環境の下で取
得された複数個の基礎パラメータに基づいて今回の目的
パラメータが推定される傾向が弱い場合におけるより高
い精度で目的パラメータの推定を行い得る。パラメータ
推定部は、逐次取得された複数個の基礎パラメータに対
して最小二乗法を適用することにより、今回の目的パラ
メータを推定する態様で実施することが可能である。そ
して、この態様においては、逐次取得された複数個の基
礎パラメータの中に、他の基礎パラメータと値が大きく
異なる特異な基礎パラメータが存在する場合には、その
特異な基礎パラメータが一般には、目的パラメータの推
定精度を低下させる要因となる可能性が高いにもかかわ
らず、その特異な基礎パラメータが比較的重視されて今
回の目的パラメータが推定されてしまう傾向がある。ま
た、そのような特異な基礎パラメータは、車輪における
リム側部とベルト側部との相対角であるねじれ角が増加
するにつれて、それらリム側部とベルト側部とを相対回
転可能に互いに連結するねじりばねのばね定数が減少す
る特性、いわゆる、タイヤ剛性の非線形性を原因として
生ずる場合がある。これに対して、今回の目的パラメー
タを推定するために用いられる複数個の基礎パラメータ
の個数が少なくなれば、それら複数個の基礎パラメータ
の中に特異な基礎パラメータが存在する可能性が低くな
り、今回の目的パラメータが、そのような特異な基礎パ
ラメータが全く存在しない複数個の基礎パラメータに基
づいて推定される可能性が高くなる。特異な基礎パラメ
ータが特異でない基礎パラメータから分離されて目的パ
ラメータが推定される可能性が高くなるのである。した
がって、逐次取得された複数個の基礎パラメータに対し
て最小二乗法を適用することにより、今回の目的パラメ
ータを推定する態様をパラメータ推定部において採用す
る場合に、本項に記載のタイヤ空気圧推定装置を適用す
れば、特異な基礎パラメータの影響をできる限り受けな
い状態で推定される目的パラメータの個数が増加し、全
体として、目的パラメータの推定精度が向上する。本項
に記載のタイヤ空気圧推定装置において「基礎パラメー
タが依存性を示す物理量であってタイヤ空気圧を除くも
の」は、車輪が走行する路面の凹凸状況と、車両の走行
速度または車輪の回転速度と、車輪の接地荷重と、車輪
速信号の振幅と、車輪または車両の駆動力と、車輪また
は車両の横力との少なくとも一つを含むように構成する
ことができる。また、本項に記載のタイヤ空気圧推定装
置は、タイヤ空気圧が判定値より低いか否かを判定して
運転者に報知する判定・報知部を出力部として有する態
様で実施したり、タイヤ空気圧を運転者に表示する表示
部を出力部として有する態様で実施することができる。 (2) 前記パラメータ推定部が、車輪に対して、相対回転
可能なリム側部とベルト側部とが少なくともねじりばね
により互いに連結されたモデルが想定され、そのモデル
に基づき、車輪の回転運動に係る運動システムが想定さ
れ、その運動システムにおいて、前記タイヤ空気圧の変
化に伴う前記ねじりばねのばね定数の変化を車輪に対す
る外乱とみなし、前記リム側部の角速度を表す信号であ
る前記車輪速信号に基づき、前記外乱を前記運動システ
ムの状態変数の一つとして推定するとともにベルト側部
の角速度とリム側部とベルト側部との相対回転角である
ねじれ角とのうち少なくともねじれ角を推定する外乱オ
ブザーバと、前記車輪速センサにより検出されたリム側
部の角速度と、前記外乱オブザーバにより推定された外
乱および前記少なくともねじれ角とをそれぞれ前記基礎
パラメータとし、かつ、それら基礎パラメータに基づ
き、前記ねじりばねのばね定数の変化量であるばね定数
変化量を前記目的パラメータとして同定するパラメータ
同定部とを含む(1) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置。 (3) 前記パラメータ推定部が、前記車輪速信号の複数の
周波数成分のうち設定周波数範囲内において強度が実質
的に最大となるものの周波数を前記基礎パラメータと
し、かつ、その基礎パラメータに基づいて前記目的パラ
メータを推定するものである(1) 項に記載のタイヤ空気
圧推定装置。 (4) 前記推定器が、さらに、前記パラメータ推定部によ
る目的パラメータの推定値を、その推定値が依存性を示
す物理量であって前記タイヤ空気圧を除くものに基づい
て補正するパラメータ補正部を含む(1) ないし(3) 項の
いずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置〔請求項2〕。
本発明者らは、目的パラメータの推定精度を低下させる
要因について研究を行い、その結果、目的パラメータの
推定値が、車輪速信号の振幅,車輪または車両の駆動
力,車輪または車両の横力,車両の走行速度または車輪
の回転速度,ねじれ角速度信号の振幅,路面から車輪に
入力される振動の周波数等、各種の物理量に対して依存
性を有するという事実に気がついた。すなわち、タイヤ
空気圧の実際値が同じであっても、それら物理量が変化
すれば、目的パラメータの推定値も変化してしまうとい
う事実に気がついたのである。この事実に鑑み、本項に
記載のタイヤ空気圧推定装置においては、パラメータ推
定部による目的パラメータの推定値が、その推定値が依
存性を示す物理量であってタイヤ空気圧を除くものに基
づいて補正される。その結果、目的パラメータの推定値
を、その推定値が依存性を示す物理量であってタイヤ空
気圧を除くものに対する依存性が除去されるように補正
し得、よって、そのような物理量の変化にもかかわら
ず、目的パラメータを精度よく推定可能となる。本項に
記載のタイヤ空気圧推定装置において「推定値が依存性
を示す物理量であってタイヤ空気圧を除くもの」は、車
輪速信号の振幅と、車輪または車両の駆動力と、車輪ま
たは車両の横力と、車両の走行速度または車輪の回転速
度と、リム側部の角速度とベルト側部の角速度との差で
あるねじれ角速度を表すねじれ角速度信号の振幅と、路
面から車輪に入力される振動の周波数との少なくとも一
つを含むように構成することができる。本項に記載の特
徴は、前記(1) ないし(3) 項に記載の特徴から独立して
実施することが可能である。 (5) 前記パラメータ補正部が、前記車輪速信号の振幅が
増加するにつれて絶対値が減少する負の補正量を算出
し、その算出した補正量を、前記パラメータ推定部によ
る目的パラメータの推定値に加算することにより、その
推定値を補正する第1補正手段を含む(4) 項に記載のタ
イヤ空気圧推定装置。 (6) 前記パラメータ補正部が、車両の走行速度または車
輪の回転速度が増加するにつれて絶対値が減少する正の
補正量を算出し、その算出した補正量を、前記パラメー
タ推定部による目的パラメータの推定値に加算すること
により、その推定値を補正する第2補正手段を含む(4)
または(5) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置。 (7) 前記推定器が、さらに、前記パラメータ推定部によ
る目的パラメータの推定値を平滑化する平滑化処理部を
含む(1) ないし(6) 項のいずれかに記載のタイヤ空気圧
推定装置〔請求項3〕。本発明者らの研究により、パラ
メータ推定部による目的パラメータの推定値を平滑化し
て出力した方が、平滑化しないで出力する場合より、当
該装置の出力の精度が向上するという事実が判明した。
目的パラメータの推定値を平滑化すれば、それの推定ば
らつきが低減されるという事実が判明したのである。こ
の事実に基づき、本項に記載のタイヤ空気圧推定装置に
おいては、パラメータ推定部による目的パラメータの推
定値が平滑化される。したがって、このタイヤ空気圧推
定装置によれば、その装置の出力の精度を容易に向上さ
せ得る。本項に記載の特徴は、前記(1) ないし(6) 項に
記載の特徴から独立して実施することが可能である。パ
ラメータ推定部により逐次取得された複数個の基礎パラ
メータに基づいて今回の目的パラメータを逐次推定し、
このようにして逐次推定された複数個の目的パラメータ
の値を考慮し、今回推定された目的パラメータを平滑化
する場合が考えられる。さらに、この場合に、同じ時間
が経過するごとに一回の出力を行うために、2つの手法
が考えられる。第1の手法は、比較的短い期間内に逐次
取得された比較的少ない数の基礎パラメータに基づいて
今回の目的パラメータを推定することを比較的多数回繰
り返すというものである。第2の手法は、比較的長い期
間内に逐次取得された比較的多い数の基礎パラメータに
基づいて今回の目的パラメータを推定することを比較的
少数回繰り返すというものである。第1の手法を実施す
る場合には、今回の目的パラメータを推定するのに用い
られる複数個の基礎パラメータが取得される期間を、前
記(1) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置におけると同様
に設定することが望ましい。一方、本発明者らは、前述
のタイヤ剛性の非線形性が存在する場合には、上記第2
の手法を採用すると、目的パラメータの推定値が変動す
る傾向が強く現れるが、上記第1の手法を採用すれば、
その傾向がそれほどには強く現れないという事実に気が
ついた。したがって、このような事実を考慮すれば、本
項に記載のタイヤ空気圧推定装置は、上記第1の手法を
実施するものであるため、タイヤ剛性の非線形性が存在
する場合であっても、目的パラメータを精度よく推定し
得る。 (8) 前記平滑化処理部が、前記パラメータ推定部による
目的パラメータの推定値の個数が基準個数と等しくなっ
たときに、それら基準個数の推定値を加算平均して平滑
化する第1平滑化手段を含む(7) 項に記載のタイヤ空気
圧推定装置。 (9) 前記第1平滑化手段が、前記基準個数を、車両の走
行速度または車輪の回転速度が増加するにつれて増加す
るように変更する基準個数変更手段を含む(8)項に記載
のタイヤ空気圧推定装置。 (10)前記平滑化処理部が、前記パラメータ推定部により
目的パラメータが推定されるごとに、目的パラメータの
今回推定値を含む過去複数個の推定値を考慮して今回推
定値を平滑化して平滑化値を逐次取得するとともに、取
得された複数個の平滑化値がそれらの取得順序に対して
変動する状態が基準状態以下になったときに最新の平滑
化値を出力し、基準状態以下にならないうちは出力しな
い第2平滑化手段を含む(7) 項に記載のタイヤ空気圧推
定装置。 (11)前記平滑化処理部が、前記パラメータ推定部による
目的パラメータの複数個の推定値の分布が実質的に正規
分布を示したときにそれら複数個の推定値を考慮して目
的パラメータの今回推定値を平滑化して出力し、正規分
布を示さないときは出力しない第3平滑化手段を含む
(7) 項に記載のタイヤ空気圧推定装置。 (12)前記推定器が、さらに、前記パラメータ補正部によ
り補正された目的パラメータの推定値を平滑化する平滑
化処理部を含む(4) ないし(6) 項のいずれかに記載のタ
イヤ空気圧推定装置〔請求項4〕。このタイヤ空気圧推
定装置においては、目的パラメータを推定するのに用い
られる複数個の基礎パラメータがそれぞれ互いに実質的
に同じ環境の下で取得され、さらに、目的パラメータの
推定値が、その推定値が依存性を示す物理量であってタ
イヤ空気圧を除くものに基づいて補正され、さらにま
た、そのようにして補正された目的パラメータの推定値
が平滑化され、これにより、当該タイヤ空気圧推定装置
の出力が生成される。したがって、このタイヤ空気圧推
定装置によれば、目的パラメータを一層高い精度で推定
し得る。 (13)前記推定器が、さらに、前記パラメータ推定部によ
る目的パラメータの推定値を予め設定された許容範囲を
超えないように補正するガード処理を行うガード処理部
を含む(1) ないし(12)項のいずれかに記載のタイヤ空気
圧推定装置〔請求項5〕。パラメータ推定部による目的
パラメータの推定値は、タイヤ空気圧の変化という予定
された要因のみならず、予定外の要因、例えば、路面か
ら車輪に入力される振動等によっても変化する。予定外
の要因が生じると、タイヤ空気圧がほとんど変化してい
ない場合であっても、目的パラメータの推定値が変化し
てしまう。これに対して、本項に記載のタイヤ空気圧推
定装置においては、目的パラメータの推定値が予め設定
された許容範囲を超えないように補正される。したがっ
て、目的パラメータの推定値がその許容範囲を超えた要
因が、上述の予定外の要因である場合に、そのことが当
該タイヤ空気圧推定装置の出力に現れずに済み、目的パ
ラメータの推定精度を容易に向上させ得る。本項に記載
のタイヤ空気圧推定装置においては、その装置がタイヤ
空気圧が判定値より低いか否かを判定する異常判定部を
有する場合に、許容範囲の中心値をその判定値と等しく
設定することができる。このようにすれば、その異常判
定部の精度を確保することが特に必要である領域で目的
パラメータの精度が確保されることになる。 (14)前記ガード処理部が、各回のガード処理において用
いる前記許容範囲の中心値を、前回のガード処理の影響
を受けた目的パラメータの推定値と等しくなるように設
定する中心値設定手段を含む(13)項に記載のタイヤ空気
圧推定装置。 (15)前記ガード処理部が、前記許容範囲の幅を時間の経
過につれて減少させる幅減少手段を含む(13)または(14)
項に記載のタイヤ空気圧推定装置。 (16)前記ガード処理部が、前記パラメータ推定部による
目的パラメータの推定値が前記許容範囲を逸脱すること
が設定回数連続した場合に、その許容範囲の幅を増加さ
せる幅増加手段を含む(13)ないし(15)項のいずれかに記
載のタイヤ空気圧推定装置。ここに「推定値が許容範囲
を逸脱する」とは、推定値が許容範囲の上限値を上回る
ことと、許容範囲の下限値を下回ることとの少なくとも
一方を意味する。 (17)前記ガード処理部が、前記パラメータ推定部による
目的パラメータの推定値が前記許容範囲の上限値を上回
ることが設定回数連続した場合に、その推定値を、前記
タイヤ空気圧の標準値に相当する値に補正する推定値補
正手段を含む(13)ないし(16)項のいずれかに記載のタイ
ヤ空気圧推定装置。 (18)前記推定器が、さらに、前記平滑化処理部により平
滑化された目的パラメータの推定値を予め設定された許
容範囲を超えないように補正するガード処理を行うガー
ド処理部を含む(7) ないし(12)項のいずれかに記載のタ
イヤ空気圧推定装置。 (19)前記推定器が、(7) ないし(12)項のいずれかに記載
の平滑化処理部と、(13)ないし(18)項のいずれかに記載
のガード処理部とを含み、当該タイヤ空気圧推定装置
が、さらに、前記平滑化処理部から出力された目的パラ
メータの推定値と、前記ガード処理部から出力された目
的パラメータの推定値とに基づき、前記タイヤ空気圧が
異常であるか否かを判定する異常判定部を含む(1) ない
し(6) 項のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置。 (20)前記異常判定部が、前記平滑化処理部から出力され
た目的パラメータの推定値と、前記ガード処理部から出
力された目的パラメータの推定値とのいずれかでも、予
め設定された条件を満たさない場合に、前記タイヤ空気
圧が異常であると判定するものである(19)項に記載のタ
イヤ空気圧推定装置。 (21)ホイールに装着されたタイヤの内部に空気が封入さ
れて構成された車輪の回転速度を検出する車輪速センサ
と、その車輪速センサから出力された車輪速信号に基づ
き、前記タイヤの空気圧であるかまたはそれに関連する
パラメータである目的パラメータを推定するパラメータ
推定部を含む推定器とを備えたタイヤ空気圧推定装置に
おいて、前記推定器を、さらに、前記パラメータ推定部
による目的パラメータの推定値を予め設定された許容範
囲を超えないように補正するガード処理を行うガード処
理部を含むものとしたことを特徴とするタイヤ空気圧推
定装置。パラメータ推定部による目的パラメータの推定
値は、タイヤ空気圧の変化という予定された要因のみな
らず、予定外の要因、例えば、路面から車輪に入力され
る振動等によっても変化する。予定外の要因が生じる
と、タイヤ空気圧がほとんど変化していない場合であっ
ても、目的パラメータの推定値が変化してしまう。これ
に対して、本項に記載のタイヤ空気圧推定装置において
は、目的パラメータの推定値が予め設定された許容範囲
を超えないように補正される。したがって、目的パラメ
ータの推定値がその許容範囲を超えた要因が、上述の予
定外の要因である場合に、そのことが当該タイヤ空気圧
推定装置の出力に現れずに済み、目的パラメータの推定
精度を容易に向上させ得る。本項に記載のタイヤ空気圧
推定装置においては、その装置がタイヤ空気圧が判定値
より低いか否かを判定する異常判定部を有する場合に、
許容範囲の中心値をその判定値と等しく設定することが
できる。このようにすれば、その異常判定部の精度を確
保することが特に必要な領域で目的パラメータの推定精
度が確保されることになる。 (22)前記ガード処理部が、各回のガード処理において用
いる前記許容範囲の中心値を、前回のガード処理の影響
を受けた目的パラメータの推定値と等しくなるように設
定する中心値設定手段を含む(21)項に記載のタイヤ空気
圧推定装置。 (23)前記ガード処理部が、前記許容範囲の幅を時間の経
過につれて減少させる幅減少手段を含む(21)または(22)
項に記載のタイヤ空気圧推定装置。 (24)前記ガード処理部が、前記パラメータ推定部による
目的パラメータの推定値が前記許容範囲を逸脱すること
が設定回数連続した場合に、その許容範囲の幅を増加さ
せる幅増加手段を含む(21)ないし(23)項のいずれかに記
載のタイヤ空気圧推定装置。ここに「推定値が許容範囲
を逸脱する」とは、推定値が許容範囲の上限値を上回る
ことと、許容範囲の下限値を下回ることとの少なくとも
一方を意味する。 (25)前記ガード処理部が、前記パラメータ推定部による
目的パラメータの推定値が前記許容範囲の上限値を上回
ることが設定回数連続した場合に、その推定値を、前記
タイヤ空気圧の標準値に相当する値に補正する推定値補
正手段を含む(21)ないし(24)項のいずれかに記載のタイ
ヤ空気圧推定装置。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明のさらに具体的な実
施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】本発明の第1実施形態はタイヤ空気圧異常
警告装置である。図1において10はロータ、12は電
磁ピックアップとして構成された車輪速センサを示す。
ロータ10は図2に示す車輪14と共に回転するもので
あり、外周に多数の歯16を備えている。車輪速センサ
12はそれらの歯16の通過に応じて周期的に変化する
電圧を発生する。この電圧は図1に示す波形整形器18
によって矩形波に整形され、コンピュータ20の入出力
装置としてのI/Oポート22に供給される。車輪14
は4個あり、それらに設けられている各車輪速センサ1
2が全て波形整形器18を経てコンピュータ20に接続
されるが、図1には代表的に1組のみが示されている。
【0012】車輪14は図2に示すように、ホイール2
4の外周にタイヤ26が取り付けられたタイヤ付ホイー
ルであるが、図3に示すように、相対回転可能なリム側
部28とベルト側部30とが、互いに並列に接続された
ねじりばね32とダンパ34とによって連結されたモデ
ルで近似することができる。このモデルと車輪14との
関係を説明すれば、リム側部28が剛体としてのホイー
ル24に対応し、ベルト側部30が弾性体としてのタイ
ヤ26に対応する。なお、ロータ10はホイール24と
一体的に回転するように取り付けられるため、車輪速セ
ンサ12は結局、リム側部28の角速度ωR を検出する
ことになる。
【0013】コンピュータ20は図1に示すように、プ
ロセッサとしてのCPU48と、それぞれメモリとして
のROM49およびRAM50とを備えている。図5に
はROM49の構成が概念的にブロック図で示されてい
る。
【0014】ROM49には、リム側部角速度演算ルー
チンが記憶されており、これにより、図4に示すリム側
部角速度演算部45が構成されている。リム側部角速度
演算部45は、車輪速センサ12から波形整形器18を
経て入力された車輪速信号(アナログ信号)に基づき、
角速度ωR を設定周期T1 (例えば、5ms)で逐次演
算する。
【0015】ROM49には、さらに、タイヤ空気圧異
常判定ルーチン,各種初期値,各種マップ等が記憶され
ている。コンピュータ20にそれらタイヤ空気圧異常判
定ルーチン等が記憶されることによって、図4に示す外
乱オブザーバ52,パラメータ同定部54,パラメータ
補正部56,平滑化処理部58,ガード処理部60およ
び異常判定部62が構成されている。図6にはRAM5
0の構成が概念的にブロック図で示されている。RAM
50には各種メモリが設けられている。
【0016】ROM49には、さらに、図5に示すよう
に、前処理フィルタ作動ルーチンが記憶されており、そ
れにより、図4に示す前処理フィルタ64が構成されて
いる。この前処理フィルタ64により、リム側部角速度
演算部45からの回転速度信号(角速度ωR の演算値が
時間と共に変化することを表すデジタル信号)が直ちに
外乱オブザーバ52に供給されるのではなく前処理フィ
ルタ64を経て供給される。回転速度信号は、車輪14
に関連する周波数成分のみならず、車輪14以外の要
素、例えば、駆動系に関連する周波数成分をも含んでい
る。前処理フィルタ64は、回転速度信号から、車輪1
4に関連する周波数成分のみを抽出するバンドパスフィ
ルタとして機能する。
【0017】ROM49には、さらに、図5に示すよう
に、車両の走行速度である車速を検出する車速検出ルー
チンが記憶されており、それにより、図4に示す車速検
出部68が構成されている。車速検出部68は、各車輪
に設けられた複数の車輪速センサ12からの信号に基づ
き、複数の車輪の車輪速(リム側部角速度ωR に相当す
る)のうち最大のものが実車速に等しいという事実を利
用して、実車速を推定する。
【0018】コンピュータ20のI/Oポート22に
は、図1に示すように、異常判定部62の判定結果を運
転者に知らせる表示装置66が接続されている。I/O
ポート22には、さらに、温度センサ70も接続されて
いる。温度センサ70は、車両の前面部(フロントバン
パー近傍)に搭載され、そこにおける車両の外気温度Θ
をタイヤ26の温度として、サーミスタの抵抗値によっ
て検出する。
【0019】外乱オブザーバ52は、車輪14の図3に
示すモデルに基づいて構成されている。同図に示すモデ
ルは、図7に示すように、いわゆる2慣性モデルに単純
化することができる。
【0020】ただし、 mR :リム側部28の等価慣性質量 mB :ベルト側部30の等価慣性質量 KW :ねじりばね32の等価ばね定数 DW :ダンパ34の等価減衰係数 xR :リム側部28の等価直線変位 xB :ベルト側部30の等価直線変位 xRB:リム側部28の等価直線変位xR とベルト側部3
0の等価直線変位xBとの差である相対等価直線変位 Fd :路面からタイヤ26への等価外乱力(路面の段差
等によって突発的に発生するころがり抵抗力や路面の凹
凸によって定常的に発生するころがり抵抗力による外乱
トルクTd を直線力に換算したもの)
【0021】ここで、この2慣性モデルにおける各種変
数と図3のモデル(以下、「基本モデル」という)にお
ける各種変数との関係について説明する。
【0022】リム側部28およびベルト側部30の等価
慣性質量mR ,mB は、基本モデルの慣性モーメントJ
R ,JB とそれぞれ等価である。また、等価ばね定数K
W および等価減衰係数DW は、基本モデルのねじりばね
32のばね定数Kおよびダンパ34の減衰係数Dとそれ
ぞれ等価である。また、リム側部28およびベルト側部
30の等価直線変位xR ,xB は、基本モデルのリム側
部28およびベルト側部30の回転角θR ,θB とそれ
ぞれ等価である。また、等価直線変位速度xR′,
B ′は、基本モデルのリム側部28およびベルト側部
30の角速度ωR ,ωB とそれぞれ等価である。また、
等価直線変位加速度xR ”,xB ”は、基本モデルのリ
ム側部28およびベルト側部30の角加速度ωR ′,ω
B ′とそれぞれ等価である。また、相対等価直線変位x
RBは、図3のモデルのねじれ角θRB(=θR −θB )と
等価である。また、相対等価直線変位速度xRB′は、基
本モデルのねじれ角速度θRB′(=ωR −ωB )と等価
である。また、等価外乱力Fdは、基本モデルの外乱ト
ルクTd と等価である。
【0023】したがって、基本モデルを記述する状態方
程式は次の(1) 式となる。
【0024】
【数1】
【0025】なお、この状態方程式は、車輪14の回転
運動を線形システムとして記述するものである。
【0026】また、この状態方程式には、エンジンまた
はブレーキからリム側部28に作用する駆動・制動トル
クT1 に対応するパラメータが存在しないが、これは、
その状態方程式は基本モデルの回転運動のうち特に振動
に着目し、各パラメータについてはそれの変動成分をも
って記述することとし、一方、駆動・制動トルクT1
他のパラメータとの関係において固定値とみなすことが
できるからである。すなわち、この状態方程式において
は、角速度ωR ,ωB ,ねじれ角θRB,ばね定数Kおよ
び減衰係数Dの各々が、固定成分を除いた変動成分を意
味しているのである。
【0027】なお、前述のように、リム側部角速度演算
部45から出力された回転速度信号は、前処理フィルタ
64により、周波数が設定周波数帯域内にある変動成分
のみが抽出されて外乱オブザーバ52に供給されるた
め、外乱オブザーバ52には角速度ωR の変動成分が入
力されることとなる。
【0028】いま、タイヤ26の空気圧が変化し、ばね
定数Kおよび減衰係数Dが共に変化し、その結果、K=
K+ΔKおよびD=D+ΔDとなった場合、上記(1) 式
は次の(2) 式となる。
【0029】
【数2】
【0030】このように、ばね定数Kおよび減衰係数D
が共に変化し、K=K+ΔKおよびD=D+ΔDとなる
ことは、正常なタイヤ26に、上記(2) 式の右辺の最終
項で表される外乱が加えられるのと等価である。この外
乱には、ばね定数Kの変化量ΔKの情報と、減衰係数D
の変化量ΔDの情報とが含まれており、かつ、ばね定数
Kおよび減衰係数Dはタイヤ26の空気圧に応じて変化
するので、この外乱を推定することによってタイヤ26
の空気圧の変化量を推定することができる。この外乱の
推定に外乱オブザーバの手法を用いるのであり、いま路
面からのトルクTd をも外乱として扱うとすれば、推定
すべき外乱wは次の(3) 式で表される。
【0031】
【数3】
【0032】しかし、理論上、外乱[w]の中の一つの
要素しか推定することができないため、この外乱のうち
第2要素であるw2 を推定することとする。外乱w2
次の(4) 式で表される。
【0033】 w2 =(ΔD/JB )(ωR −ωB )+(ΔK/JB )θRB−Td /JB +n ・・・(4)
【0034】ここに「n」は、外乱を第2要素しか推定
しないために生ずる誤差項である。
【0035】したがって、車輪14の状態方程式は次の
(5) 式となる。
【0036】
【数4】
【0037】外乱オブザーバ52は外乱をシステムの状
態変数の一つとして推定するものである。そこで、前記
(4) 式の外乱w2 をシステムの状態に含めるため、推定
すべき外乱w2 のダイナミクスを次の(6) 式で近似す
る。
【0038】w2 ′=0・・・(6)
【0039】これは、図8に示すように連続して変化す
る外乱を階段状に近似(零次近似)することを意味し、
外乱オブザーバ52の外乱推定速度を推定すべき外乱の
変化に比べて十分速くすれば、この近似は十分に許容さ
れる。上記(6) 式より、外乱w2 をシステムの状態に含
めると、次の(7) 式の拡張系が構成される。
【0040】
【数5】
【0041】上式においてリム側部角速度ωR のみが検
出可能であり、[ωB θRB2T (=状態
[z])が検出することができない状態となる。したが
って、このシステムに基づいて外乱オブザーバ52を構
成すれば、外乱w2 と、元々測定できない状態変数
ωB ,θRBとを推定することができる。
【0042】記述を簡単にするために、上記(7) 式のベ
クトルおよび行列を分解して次のように表すこととす
る。
【0043】
【数6】
【0044】このとき、状態[z]=[ωB θRB
2T を推定する最小次元オブザーバの構成は次の(8)
式で表される。
【0045】 [zp ′]=[A21][xa ]+[A22][zp ]+[B2 ][u]+[G] {[xa ′]−([A11][xa ]+[A12][zp ]+[B1 ][u])}= ([A21]−[G][A11])[xa ]+([A22]−[G][A12])[zp ]+[G][xa ′]+([B2 ]−[G][B1 ])[u]・・・(8)
【0046】ただし、 [zp ] :[z]の推定値 [zp ′]:推定値[zp ]の変化率 [G] :外乱オブザーバ52の推定速度を決めるゲ
イン
【0047】この方程式をブロック線図で表わすと図9
のようになる。なお、図において[I]は単位行列、s
はラプラス演算子である。
【0048】また、真値[z]と推定値[zp ]との誤
差[e]を[e]=[z]−[zp]とおき、誤差
[e]の変化率を[e′]とすると、次の(9) 式の関係
を得る。
【0049】 [e′]=([A22]−[G][A12])[e]・・・(9)
【0050】これは外乱オブザーバ52の推定特性を表
しており、行列([A22]−[G][A12])の固有値
がすなわち外乱オブザーバ52の極となる。したがっ
て、この固有値がs平面の左半面において原点から離れ
るほど外乱オブザーバ52の推定速度が速くなる。オブ
ザーバゲイン[G]は希望の推定速度になるように決定
すればよい。
【0051】以上のようにして構成された外乱オブザー
バ52においては、リム側部角速度演算部54から前処
理フィルタ64を経て入力された角速度ωR に基づき、
ねじりばね32のばね定数KがΔK変化し、ダンパ34
の減衰係数DがΔD変化した場合の、前記(4) 式で表さ
れる外乱w2 が推定され、さらに、検出が不可能である
角速度ωB およびねじり角θRBも推定される。
【0052】図10には、前記タイヤ空気圧異常判定ル
ーチンがフローチャートで表されている。このルーチン
は、車両走行中繰返し実行される。以下、このルーチン
を図10に基づいて説明するが、まず、概略的に説明す
る。
【0053】このタイヤ空気圧異常判定ルーチンの各回
の実行時には、まず、ステップS50(以下、単に「S
50」で表す。他のステップについても同じとする)に
おいて、前処理フィルタ64が作動させられる。それに
より、リム側部角速度演算部45からの回転速度信号か
ら、車輪14に関連する周波数成分のみが抽出される。
【0054】次に、S100において、外乱オブザーバ
52が作動させられ、それにより、今回の角速度ω
R (i) から、今回の外乱w2 (i) ,角速度ωB (i) およ
びねじれ角θRB(i) が推定される。
【0055】その後、S200において、現時点までに
取得された、角速度ωR ,外乱w2,角速度ωB および
ねじれ角θRBを1組とするM組分の基礎パラメータに基
づき、ばね定数Kの今回の変化量ΔK(j) が同定され
る。
【0056】ばね定数変化量ΔK(j) は、外乱オブザー
バ52における目的パラメータである。また、ばね定数
変化量ΔK(j) は、タイヤ26の空気圧Pの変化量ΔP
に応じて増加するパラメータであるから、ばね定数変化
量ΔK(j) を同定することは結局、空気圧変化量ΔPを
推定することを意味する。
【0057】続いて、S300において、S200にお
いて同定されたばね定数変化量ΔK (j) が、温度Θと車
速Vと角速度振幅|ωR |(このパラメータの意味は後
に詳述する)とに基づいて補正される。S200におい
て同定されたばね定数変化量ΔK(j) を第1暫定値ΔK
PRO1(j) として記述することとすれば、S300におい
ては、その第1暫定値ΔKPRO1(j) が補正されて第2暫
定値ΔKPRO2(j) が取得されることになる。
【0058】その後、S400において、今回以前に取
得されたN個の第2暫定値ΔKPRO2が加算平均により平
滑化され、それにより第3暫定値ΔKPRO3が取得され
る。
【0059】続いて、S500において、その第3暫定
値ΔKPRO3が許容範囲から逸脱しないようにガードさ
れ、それにより、ばね定数変化量の最終値ΔKFNL が取
得される。
【0060】その後、S600において、その最終値Δ
FNL がしきい値ΔKTHより低いか否かが判定され、低
い場合には、タイヤ空気圧Pが低いと判定され、そのこ
とが運転者に告知される。なお、しきい値ΔKTHの符号
は、外乱オブザーバ52におけるばね定数K(固定値)
の設定次第で正であったり負であったりする。以上でこ
のタイヤ空気圧異常判定ルーチンの一回の実行が終了す
る。
【0061】次に、このタイヤ空気圧異常判定ルーチン
を図11ないし図22に基づいて詳細に説明する。
【0062】図11には、S100、すなわち、外乱オ
ブザーバ52を作動させるステップの詳細が外乱オブザ
ーバ作動サブルーチンとしてフローチャートで表されて
いる。
【0063】この外乱オブザーバ作動サブルーチンにお
いては、まず、S101において、前処理フィルタ64
から最新の角速度ωR が今回の角速度ωR (i) として取
り込まれる。次に、S102において、外乱オブザーバ
52により、その今回の角速度ωR (i) を入力として、
外乱w2 (i) ,角速度ωB (i) およびねじれ角θRB(i )
が前述のようにして推定される。その後、S103にお
いて、演算された角速度ωR (i) と、推定された外乱w
2 (i) ,角速度ωB (i) およびねじれ角θRB(i ) とが、
回数iに関連付けてωR 等メモリにストアされる。ωR
等メモリは図6に示されているように、RAM50に設
けられている。以上でこのサブルーチンすなわちS10
0の一回の実行が終了する。
【0064】この外乱オブザーバ作動サブルーチンは、
角速度ωR (i) から外乱w2 (i) ,角速度ωB (i) およ
びねじれ角θRB(i) を推定することを設定周期T1 (例
えば、5ms)で繰り返すように設計されており、図1
2の上側には、外乱オブザーバ52が繰返し作動させら
れるタイミングが概念的に示されている。
【0065】図13には、S200、すなわち、パラメ
ータ同定を行うステップの詳細がパラメータ同定サブル
ーチンとしてフローチャートで表されている。以下、こ
のサブルーチンを図13に基づいて詳細に説明するが、
それに先立ち、このサブルーチンが採用している理論を
説明する。
【0066】ばね定数変化量ΔK(=第1暫定値ΔK
PRO1(j) )の同定は、最小二乗法により行われる。最小
二乗の和が次の(10)式で表され、それが最小になるよう
に、すなわち、最小二乗和Sをばね定数変化量ΔKで偏
微分した場合の値と減衰係数変化量ΔDで偏微分した場
合の値とがそれぞれ0となるようにばね定数変化量ΔK
を取得するのである。
【0067】
【数7】
【0068】具体的には、ばね定数変化量ΔKが次の(1
1)式を用いて同定される。
【0069】
【数8】
【0070】なお、最小二乗法によれば、ばね定数変化
量ΔKのみならず減衰係数変化量ΔDをも同定可能であ
るが、本実施形態においては、空気圧変化量ΔPをばね
定数変化量ΔKで代用してタイヤ空気圧Pが低いか否か
を判定するように設計されていて、その異常判定に減衰
係数変化量ΔDは必要ではないため、減衰係数変化量Δ
Dの同定は行われない。
【0071】次に、このパラメータ同定サブルーチンを
図13に基づいて詳細に説明する。
【0072】このサブルーチンにおいては、まず、S2
01aにおいて、回数iが1増加させられる。次に、S
201bにおいて、ωR 等メモリに、角速度ωR ,外乱
2,角速度ωB およびねじれ角θRBを1組とする基礎
パラメータがM組ストアされたか否か、すなわち、回数
iの現在値が基準値Mに到達したか否かが判定される。
今回は、基準値Mに到達していないと仮定すれば、判定
がNOとなり、以上でこのサブルーチンすなわちS20
0の一回の実行が終了する。
【0073】これに対して、今回は、回数iの現在値が
基準値Mに到達したと仮定すれば、S201bの判定が
YESとなり、S202において、ωR 等メモリから角
速度ωR ,外乱w2 ,角速度ωB およびねじれ角θRB
いう基礎パラメータが読み出される。続いて、S203
において、それら基礎パラメータに基づき、最小二乗法
により、今回の第1暫定値ΔKPRO1(j) が目的パラメー
タとして前述のようにして演算される。その後、S20
4において、演算された第1暫定値ΔKPRO1(j ) がΔK
PRO1メモリにストアされる。ΔKPRO1メモリは図6に示
すように、RAM50に設けられている。続いて、S2
05において、前記ωR 等メモリがクリアされ、その
後、S206において、回数iが0にセットされる。以
上でこのサブルーチンすなわちS200の一回の実行が
終了する。
【0074】本実施形態においては、最小二乗法により
1個の第1暫定値ΔKPRO1を取得するために用いられる
基礎パラメータの組数が基準値Mとされている。基準値
Mは、設定周期T2 (例えば、1s)が経過する間に外
乱オブザーバ52が作動させられる回数として設定され
ている。図12には、基礎パラメータが設定周期T
1(<T2 )で逐次取得されるのに対して、第1暫定値
ΔKPRO1が設定周期T2 で取得されるタイミングが示さ
れている。
【0075】ここで、設定周期T2 の設定について詳し
く説明する。
【0076】図14には、設定周期T2 を60秒に設定
し、60秒ごとに最小二乗法によりばね定数変化量ΔK
を推定する実験を行った場合に、その推定値が時間
(秒)と共に変化する様子が、「60秒推定」なるタイ
トルが付されている破線グラフで示されている。この実
験は、ばね定数変化量ΔKの真の値が約35である状況
で行われた。このグラフから明らかなように、設定周期
2 を60秒に設定した場合には、推定値が落ち込むこ
とが確認された。
【0077】以下、この推定値が落ち込む原因を数学的
に解析するが、設定周期T2 を60秒とし、60秒ごと
に推定値を取得し、それを最終値とする場合と、設定周
期T 2 を1秒とし、1秒ごとに推定値を取得し、60秒
間に取得された60個の推定値の平均値を最終値とする
場合とを互いに比較しつつ説明する。
【0078】外乱オブザーバ52により設定周期T
1 (例えば、5ms)ごとに推定される各回のねじれ角
θRB(j) と外乱w2 (j) との積をE(j) 、各回のねじれ
角θRB(j ) の二乗をD(j) で表すこととすれば、60秒
間における積E(j) の合計値Eと二乗D(j) の合計値D
とはそれぞれ、次の(21)式と(22)式とで表される。
【0079】
【数9】
【0080】よって、60秒ごとにばね定数変化量の推
定値を取得することにすれば、その推定値ΔKは、次の
(23)式で表される。
【0081】
【数10】
【0082】一方、1秒ごとに推定値を取得することに
すれば、その推定値ΔK(j) は、次の(24)式で表され
る。
【0083】
【数11】
【0084】このようにして60秒間に取得した60個
の推定値の平均値ΔKm は、次の(25)式で表される。
【0085】
【数12】
【0086】前記(24)式を変形すると、次の(26)式が得
られる。
【0087】
【数13】
【0088】この式より、次の(27)式が得られる。
【0089】
【数14】
【0090】この式と前記(21)式とから、次の(28)式が
得られる。
【0091】
【数15】
【0092】この式の両辺をDで割り算すると、次の(2
9)式が得られる。
【0093】
【数16】
【0094】ここで、F(j) =D(j) /Dとおき、さら
に、推定値ΔK(j) の、平均値ΔK m からのばらつきδ
(j) を次の(30)式により定義する。
【0095】
【数17】
【0096】この式と上記(29)式とから、次の(31)式が
得られる。
【0097】
【数18】
【0098】したがって、ΔK=ΔKm なる式が成立す
るためには、ばらつきδ(j) とF(j ) との間に相関が成
立しないことが必要である。
【0099】ところで、車輪14には、それのねじれ角
θRBが増加するにつれてタイヤ26のばね定数K(剛
性)が低下する特性がある。タイヤ剛性が非線形性を示
すのである。この特性に基づき、ねじれ角θRBが増加す
るにつれて回転速度信号の共振周波数も低下する。この
性質は、ばらつきδ(j) とF(j) との間に負の相関が成
立することを意味し、このことは次の(32)式で表され
る。
【0100】
【数19】
【0101】この式と上記(31)式とから、次の(33)式が
得られる。
【0102】
【数20】
【0103】したがって、ばね定数Kがねじれ角θRB
依存するという性質が存在することが原因で、60秒ご
とに推定される推定値ΔKは、1秒ごとに推定されて6
0秒間の合計値に対して推定される平均値ΔKm に対し
て落ち込むことが分かる。また、ばらつきδ(j) とF
(j) との間に負の相関が成立する場合には、推定値ΔK
の推定周期を長くすると(すなわち、基礎パラメータの
組数を多くすると)、その負の相関がさらに強くなるた
め、推定精度がさらに低下する可能性がある。
【0104】このような知見に基づき、本実施形態にお
いては、設定周期T2 が1秒とされ、設定周期T3 が6
0秒とされ、1秒ごとにばね定数変化量ΔKの推定値を
取得し、60秒間に取得された60個の推定値ΔKの平
均値が最終値とされるようになっている。このような条
件で実験を行った場合の結果の一例が、図14に、「1
秒推定,60点平均」なるタイトルが付された実線グラ
フで示されている。このグラフから明らかなように、本
実施形態によれば、推定値が真の値に対して落ち込むこ
とが、60秒ごとに推定値を取得する、前述の実験例に
おけるより抑制される。さらに、このグラフから明らか
なように、推定値の変動幅も、その実験例におけるより
抑制される。その結果、本実施形態によれば、その実験
例におけるよりタイヤ空気圧Pの推定精度が向上する。
【0105】本実施形態においては、タイヤ空気圧Pを
推定するために同定することが必要な目的パラメータ、
すなわち、ばね定数変化量ΔKを同定するために必要な
基礎パラメータ、すなわち、角速度ωB ,外乱w2 およ
びねじれ角θRBを1組とするパラメータが取得される設
定時間T2 が1秒に設定されているが、例えば、2秒以
内とすることができ、また、望ましくは、0.5〜1秒
とすることができる。0.5秒以下では、基礎パラメー
タの組数が目的パラメータの同定精度との関係において
不足する傾向があり、また、2秒以上では、基礎パラメ
ータが取得される環境、例えば、路面の凹凸状況の変化
や角速度ωR の振幅の変化が、目的パラメータの同定精
度との関係において過大となる傾向があるからである。
【0106】図15には、S300、すなわち、パラメ
ータ補正を行うステップの詳細がパラメータ補正サブル
ーチンとしてフローチャートで表されている。以下、こ
のサブルーチンを同図に基づいて詳細に説明するが、そ
れに先立ち、このサブルーチンが採用している理論を説
明する。
【0107】本発明者らは、本発明に先立ち、実験対象
品に選ばれた車輪14のタイヤ空気圧Pの実際値を圧力
センサで検出した後、タイヤ26の温度Θ,車速Vおよ
び角速度ωR をそれぞれ変化させつつ外乱オブザーバ5
2によりばね定数変化量ΔKを推定するという実験を行
った。その結果、次のような事実が判明した。すなわ
ち、図16の(a) に示すように、温度Θが低下するにつ
れて外乱オブザーバ52による推定値(すなわち、ばね
定数変化量ΔK)が増加するという事実が判明したので
ある。さらに、図17の(a) に示すように、車速Vが低
下すると、推定値が減少するという事実も判明した。さ
らにまた、図18の(a) に示すように、変動成分である
角速度ωR の振幅である角速度振幅|ωR |が減少する
と、推定値が増加するという事実も判明した。このよう
に、外乱オブザーバ52による推定値には、温度Θ,車
速Vおよび角速度振幅|ωR |にそれぞれ依存するとい
う特性があることが判明したのである。
【0108】このような知見に基づき、本実施形態にお
いては、第1暫定値ΔKPRO1が、温度Θ,車速Vおよび
角速度振幅|ωR |に基づき、第2暫定値ΔKPRO2に補
正される。具体的には、 ΔKPRO2=ΔKPRO1+ΔKCOM1+ΔKCOM2+ΔKCOM3 なる式を用いて第2暫定値ΔKPRO2が演算される。
【0109】ここに、「ΔKCOM1」は、温度Θに応じて
変化する第1部分補正量であって、図16の(b) に示す
ように、温度Θが低下するのに応じて絶対値が増加する
負の数値である。また、「ΔKCOM2」は、車速Vに応じ
て変化する第2部分補正量であって、図17の(b) に示
すように、車速Vが低下するのに応じて絶対値が増加す
る正の数値である。また、「ΔKCOM3」は、角速度振幅
|ωR |に応じて変化する第3部分補正量であって、図
18の(b) に示すように、角速度振幅|ωR |が低下す
るのに応じて絶対値が増加する負の数値である。なお、
角速度振幅|ω R |は、変動成分である角速度ωR を二
乗した値で代用することができる。角速度振幅ωR の正
負を問わず、それの絶対値を簡易に取得するためであ
る。
【0110】なお、上記の演算式においては、3個の部
分補正量ΔKCOM1,ΔKCOM2,ΔK COM3につき、第2暫
定値ΔKPRO2に対する重みが互いに等しくされている
が、それら部分補正量ΔKCOM1,ΔKCOM2,ΔK
COM3に、相互に独立ではないものが存在すること等を考
慮することにより、必要に応じて互いに異なる重みを持
たせることが可能である。
【0111】このような補正を行うことにより、タイヤ
空気圧Pの実際値が変化しない限り、外乱オブザーバ5
2による推定値が、温度Θ,車速Vおよび角速度振幅|
ωR|の変化にもかかわらず実質的に一定となるように
補償される。
【0112】次に、このパラメータ補正サブルーチンす
なわちS300を図15に基づいて詳細に説明する。
【0113】このサブルーチンにおいては、まず、S3
01aにおいて、最新の第1暫定値ΔKPRO1(i) が取得
された直後であるか否かが判定される。直後ではない場
合には、判定がNOとなり、直ちにこのサブルーチンの
一回の実行が終了する。これに対して、直後である場合
には、判定がYESとなり、S301bに移行する。
【0114】S301bにおいては、最新の第1暫定値
ΔKPRO1(i) を取得するのに経過した期間と同じ期間に
取得された複数個の角速度ωR についてそれぞれ角速度
振幅|ωR |が演算され、さらに、それら複数個の角速
度振幅|ωR |の平均値が演算される。以後、その平均
値が今回の角速度振幅|ωR |として使用される。次
に、S302において、今回の角速度振幅|ωR |が最
大値MAX以上であるかまたは最小値MIN以下である
か否かが判定される。最大値MAX以上であるかまたは
最小値MIN以下である場合には、判定がYESとな
り、直ちにこのサブルーチンすなわちS300の一回の
実行が終了する。
【0115】これに対して、今回の角速度振幅|ωR
が最大値MAX以上でもなく最小値MIN以下でもない
場合には、S302の判定がNOとなり、S303にお
いて、ΔKPRO1メモリから最新の第1暫定値ΔK
PRO1(i) が読み込まれる。続いて、S304において、
車速検出部68から最新の車速Vが読み込まれ、S30
5において、温度センサ70から最新の温度Θが読み込
まれる。
【0116】その後、S306において、第1ないし第
3部分補正量ΔKCOM1,ΔKCOM2およびΔKCOM3が決定
される。第1部分補正量ΔKCOM1は、読み込まれた温度
Θに応じ、ROM49に記憶されたマップが規定する両
者の関係に従って決定される。その関係は例えば、図1
6の(b) に示すものとされる。第2部分補正量ΔKCO M2
は、読み込まれた車速Vに応じ、ROM49に記憶され
たマップが規定する両者の関係に従って決定される。そ
の関係は例えば、図17の(b) に示すものとされる。第
3部分補正量ΔKCOM3は、今回の角速度振幅|ωR |に
応じ、ROM49に記憶されたマップが規定する両者の
関係に従って決定される。その関係は例えば、図18の
(b) に示すものとされる。
【0117】続いて、S307において、最新の第1暫
定値ΔKPRO1と、今回演算された3個の部分補正量ΔK
COM1,ΔKCOM2およびΔKCOM3とを、前述の、 ΔKPRO2=ΔKPRO1+ΔKCOM1+ΔKCOM2+ΔKCOM3 なる式に代入することにより、今回の第2暫定値ΔK
PRO2(j) が演算される。その後、S308において、演
算された第2暫定値ΔKPRO2(j) が、RAM50に設け
られたΔKPRO2メモリに、回数jに関連付けてストアさ
れる。
【0118】以上で、このパラメータ補正サブルーチン
すなわちS300の一回の実行が終了する。
【0119】なお付言すれば、このパラメータ補正サブ
ルーチンにおいては、外乱オブザーバ52によるばね定
数変化量ΔKの推定値が角速度振幅|ωR |によって補
正されるが、角速度振幅|ωR |に代えてねじれ角速度
振幅|ωR −ωB |を用いることができる。ねじれ角速
度振幅|ωR −ωB |は、前処理フィルタ64から外乱
オブザーバ52に入力された角速度ωR と、その角速度
ωR に基づいて外乱オブザーバ52により推定された角
速度ωB とを用いて演算することができる。
【0120】さらに付言すれば、上記パラメータ補正サ
ブルーチンにおいては、第3部分補正量ΔKCOM3と角速
度振幅|ωR |との関係が、実験結果等に基づいて予め
設定された関係であって、車輪14の実際の状態(タイ
ヤ26の剛性等)に追従して変化することはなく、か
つ、4輪に共通の関係とされている。しかし、その関係
の設定は種々の手法により行い得る。タイヤ空気圧Pが
標準値(例えば、2.0kgf/cm2 )であると推定される
状況において実際に取得された関係として設定すること
ができる。例えば、タイヤ空気圧Pが標準値であると推
定される状況において、ばね定数変化量ΔKの推定値と
角速度振幅|ωR |との関係を実際に取得し、その取得
した関係に基づいて、第3部分補正量ΔKCOM3と角速度
振幅|ωR|との関係を設定することができる。タイヤ
空気圧Pが標準値であると推定される状況には例えば、
車両のイグニションスイッチがOFFからONに操作さ
れた直後や、タイヤ空気圧Pが標準値と等しいことが運
転者により入力されたときや、第3部分補正量ΔKCOM3
と角速度振幅|ωR |との関係を再度設定することが必
要になったことが運転者から入力されたときを選ぶこと
ができる。このような関係設定を行う場合には、車輪1
4の実際の状態に則して、かつ、各輪ごとに個別に第3
部分補正量ΔKCOM3と角速度振幅|ωR |との関係を設
定可能となり、タイヤ空気圧Pの推定精度を容易に向上
可能となる。
【0121】さらに付言すれば、前記パラメータ補正サ
ブルーチンにおいては、外乱オブザーバ52によるばね
定数変化量ΔKの推定値が温度Θと車速Vと角速度振幅
|ω R |とにそれぞれ依存するという性質に鑑み、推定
値が温度Θと車速Vと角速度振幅|ωR |とによって補
正されるが、以下に説明するように、推定値は他のパラ
メータにも依存する。
【0122】前述のように、リム側部角速度演算部45
から出力される回転速度信号のうち、外乱オブザーバ5
2がばね定数変化量ΔKを精度よく推定するのに必要な
周波数成分のみが外乱オブザーバ52に入力されること
なるように、それらリム側部角速度演算部45と外乱オ
ブザーバ52との間に前処理フィルタ64が設けられて
いる。しかし、何らかの理由により、回転速度信号の周
波数特性が変化すると、外乱オブザーバ52による推定
精度が低下する。一方、路面から車輪14に入力される
振動は、回転速度信号の周波数特性を変化させる原因と
なり得る。したがって、外乱オブザーバ52によるばね
定数変化量ΔKの推定値は、路面から車輪14に入力さ
れる振動の周波数にも依存する。
【0123】したがって、推定値は、路面から車輪14
に入力される振動の周波数によって補正することも望ま
しい。なお、その周波数は、路面の凹凸の変化状況を超
音波,撮像結果等を用いて、車速Vと共に検出する(必
要に応じて車輪14の接地荷重も検出する)ことによ
り、それら検出値相互の関係から推定することが可能で
ある。路面の突起間の間隔と、それら突起を車輪14が
通過する際の速度と、路面の複数の突起(大きいものや
小さいものがある)のうち実際に車輪14に対する加振
源となるもの(これは、車輪14の接地荷重等によって
変化する)とのうち少なくとも前2者が判明すれば、路
面から車輪14に入力される振動の周波数を推定可能で
あるからである。
【0124】図19には、S400、すなわち、平滑化
処理を行うステップの詳細が平滑化処理サブルーチンと
してフローチャートで表されている。
【0125】このサブルーチンにおいては、まず、S4
01aにおいて、回数jが1増加させられる。次に、S
401bにおいて、ΔKPRO2メモリにストアされている
第2暫定値ΔKPRO2の数、すなわち、回数jの現在値が
基準値Nに到達したか否かが判定される。今回は、到達
していないと仮定すれば、判定がNOとなり、以上でこ
のサブルーチンすなわちS400の一回の実行が終了す
る。
【0126】これに対して、回数jの現在値が基準値N
に到達したと仮定すれば、S401bの判定がYESと
なり、S402において、ΔKPRO2メモリから、N個の
第2暫定値ΔKPRO2(1) 〜ΔKPRO2(N) が読み出され
る。その後、S403において、それらN個の第2暫定
値ΔKPRO2(1) 〜ΔKPRO2(N) に対して加算平均が行わ
れ、それら第2暫定値ΔKPRO2が平滑化されることによ
り、第3暫定値ΔKPRO3が演算される。その演算式は同
図に示されている。
【0127】その後、S404において、演算された第
3暫定値ΔKPRO3が、RAM50に設けられたΔKPRO3
メモリにストアされる。続いて、S405において、Δ
PR O2メモリがクリアされ、その後、S406におい
て、回数jが0にセットされる。以上でこのサブルーチ
ンすなわちS400の一回の実行が終了する。
【0128】本実施形態においては、平滑化処理により
1個の第3暫定値ΔKPRO3を取得するために用いられる
第2暫定値ΔKPRO2のデータの数が基準値Nとされてい
る。基準値Nは、設定周期T3 (例えば、60s)が経
過する間に第2暫定値ΔKPR O2が演算される個数として
設定されている。図12には、第2暫定値ΔKPRO2が設
定周期T2 (<T3 )で逐次取得されるのに対して、第
3暫定値ΔKPRO3が設定周期T3 で取得されるタイミン
グが示されている。
【0129】なお付言すれば、基準値Nは固定値とする
ことができ、この場合、60個としたり、120個とす
ることができる。また、可変値とすることができ、この
場合、第2暫定値ΔKPRO2がばらつく程度に応じて変化
するパラメータ、例えば、車速Vまたは車輪の回転速度
に応じて変化させることができる。車速Vまたは車輪の
回転速度に応じて変化させる場合、車速Vまたは車輪の
回転速度が増加するにつれて増加するように基準値Nを
変化させることができる。
【0130】図20には、S500、すなわち、ガード
処理を行うステップの詳細がガード処理サブルーチンと
してフローチャートで表されている。以下、このサブル
ーチンを説明するが、まず、概略的に説明する。
【0131】このサブルーチンにおいては、今回の第3
暫定値ΔKPRO3(k) が、上限値と下限値とで規定される
許容範囲内にあるか否かが判定され、許容範囲内にあれ
ば、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が今回の最終値ΔK
FNL (k) とされ、許容範囲の上限値より大きい場合に
は、その上限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされ、許
容範囲の下限値より小さい場合には、その下限値が今回
の最終値ΔKFNL (k) とされる。また、許容範囲の中心
値は、前回の第3暫定値ΔKPRO3(k-1) と等しくされ、
その結果、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が、前回の第
3暫定値ΔKPRO3 (k-1) と比較されるとともに、前回の
第3暫定値ΔKPRO3(k-1) からの外れ量が許容範囲の幅
の半値ΔKGRD より大きいか否かが判定され、その判定
結果に応じて、今回の最終値ΔKFNL (k) が決定される
ことになる。
【0132】ただし、車両の走行開始スイッチとしての
イグニションスイッチがOFFからONに操作された直
後にあっては、前回の第3暫定値ΔKPRO3(k-1) が存在
しない。この場合、本実施形態においては、前回の最終
値ΔKFNL (k-1) が、標準値ΔKSTD とされる。ここ
に、「標準値ΔKSTD 」は、車輪14のホイール24に
装着されているタイヤ26が正規のものであり、かつ、
それの空気圧Pが標準値であるときに、ばね定数変化量
ΔKが取るべき値である。ただし、前回の最終値ΔK
FNL (k-1) は例えば、前記しきい値ΔKTHより少し大き
い値に設定することもできる。
【0133】次に、このガード処理サブルーチンを図2
0に基づいて具体的に説明する。
【0134】このサブルーチンにおいては、まず、S5
01において、このサブルーチンの今回の実行が、イグ
ニションスイッチ(図において「IG」と略称する)が
OFFからONに操作された後、初回であるか否かが判
定される。今回は、初回であると仮定すれば、判定がY
ESとなり、S502において、ばね定数変化量ΔKの
最終値ΔKFNL の前回値ΔKFNL (k-1) が仮に、標準値
ΔKSTD とされる。今回は、前回の最終値ΔK
FNL (k-1) が存在しないからである。
【0135】その後、S503において、ΔKPRO3メモ
リから今回の第3暫定値ΔKPRO3(k ) が読み込まれる。
続いて、S504において、その第3暫定値ΔK
PRO3(k) が、前回の最終値ΔKFNL (k-1) (許容範囲の
中心値として機能する)に許容範囲の半値ΔKGRD を足
し算した値、すなわち、許容範囲の上限値より大きいか
否かが判定される。今回は、大きくはないと仮定すれ
ば、判定がNOとなり、S505に進む。S505にお
いては、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が、前回の最終
値ΔKFNL (k-1) から許容範囲の幅の半値ΔKGRD を引
き算した値、すなわち、許容範囲の下限値より小さいか
否かが判定される。今回は、小さくはないと仮定すれ
ば、判定がNOとなり、S506に進む。S506にお
いては、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が今回の最終値
ΔKFNL (k) とされる。その後、S507において、今
回の最終値ΔKFNL (k) が、RAM50に設けられたΔ
FNL メモリに、回数kに関連付けてストアされる。以
上で、このガード処理サブルーチンすなわちS500の
一回の実行が終了する。
【0136】これに対して、今回は、今回の第3暫定値
ΔKPRO3(k) が、前回の最終値ΔK FNL (k-1) に許容範
囲の半値ΔKGRD を足し算した上限値より大きいと仮定
すれば、S504の判定がYESとなり、S508にお
いて、その上限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされ
る。その後、S507に移行する。また、今回の第3暫
定値ΔKPRO3(k) が、前回の最終値ΔKFNL (k-1) から
許容範囲の幅の半値ΔK GRD を引き算した下限値より小
さいと仮定すれば、S505の判定がYESとなり、S
509において、その下限値が今回の最終値ΔK
FNL (k) とされる。その後、S507に移行する。
【0137】以上、イグニションスイッチがOFFから
ONに操作された直後である場合を説明したが、そうで
ない場合には、S501の判定がNOとなり、S502
がスキップされ、その後、S503において、ΔKPRO3
メモリから最新の第3暫定値ΔKPRO3(k) (今回の第3
暫定値ΔKPRO3(k) )が読み込まれる。続いて、S50
4ないしS506において、最新の第3暫定値ΔK
PRO3(k) が、前回の最終値ΔKFNL (k-1) を中心値とす
る許容範囲内にある場合には、今回の第3暫定値ΔK
PRO3(k) が今回の最終値ΔKFNL (k) とされ、許容範囲
の上限値より大きい場合には、その上限値が今回の最終
値ΔKFNL (k) とされ、許容範囲の下限値より小さい場
合には、その下限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされ
る。
【0138】以上要するに、イグニションスイッチがO
FFからONに操作された直後である場合、すなわち、
前回の第3暫定値ΔKPRO3(k-1) が存在しない場合に
は、前述のように、第3暫定値ΔKPRO3とは無関係に、
標準値ΔKSTD が許容範囲の中心値とされるが、前回の
第3暫定値ΔKPRO3(k-1) が存在する場合には、その前
回の第3暫定値ΔKPRO3(k-1) が許容範囲の中心値とさ
れる。したがって、このサブルーチンが繰り返される
間、許容範囲の中心値が、例えば、図21にグラフで示
すように、第3暫定値ΔKPRO3に接近するように変化さ
せられるとともに、第3暫定値ΔKPRO3が変化すれば、
それに追従して変化させられることになる。
【0139】ところで、第3暫定値ΔKPRO3の時間的変
化をもたらす要因を考慮するに、タイヤ空気圧Pの変化
という予定された要因のほかに、路面から車輪14に入
力された振動,タイヤ26の温度変化等、予定外の要因
もある。予定された要因は3つに分類することができ
る。タイヤ26がバーストしてタイヤ空気圧Pが素早く
低下するという要因と、タイヤ26から空気が自然に漏
れてタイヤ空気圧Pが緩やかに低下する(1月当たり
0.1kgf/cm2 程度)という要因と、路面上に落ちてい
た釘がタイヤ26に刺さったためにタイヤ空気圧Pが低
下するが釘がタイヤ26に刺さったままであるためにタ
イヤ空気圧Pが緩やかに低下する(1時間当たり1kgf/
cm2 程度)という要因とに分類される。
【0140】そして、上記予定外の要因によって第3暫
定値ΔKPRO3が素早く変化した場合には、その急変によ
る影響が最終値ΔKFNL に及ばないように第3暫定値Δ
PR O3に対して前記ガード処理を行うことは必要である
が、予定された3つの要因のうち、自然漏れという要因
と釘刺さりという要因とについては、それらの影響が最
終値ΔKFNL に及ばないように第3暫定値ΔKPRO3に対
してガード処理を行うことが必要ではない。
【0141】このような知見に基づき、このガード処理
サブルーチンにおいては、自然漏れという要因または釘
刺さりという要因によって第3暫定値ΔKPRO3が変化す
ることが予想される変化幅より広くなるように前記許容
範囲の幅が設定されている。
【0142】なお付言すれば、このガード処理サブルー
チンにおいては、許容範囲の幅の半値ΔKGRD が固定値
とされているが、可変値とすることが可能である。可変
値とする場合には、半値ΔKGRD を種々の手法で変化さ
せることができる。
【0143】例えば、半値ΔKGRD は、経過時間に応じ
て変化させることができる。例えば、半値ΔKGRD は、
経過時間が長くなるにつれて小さくなるように変化させ
ることができる。
【0144】また、過去の複数個の第3暫定値ΔKPRO3
の分布が実質的に正規分布を示すと仮定した場合に、半
値ΔKGRD を、その正規分布の特性に応じて変化させる
ことができる。例えば、その正規分布において一定確率
で存在する信頼区間の幅に対応するように半値ΔKGRD
を変化させることができる。
【0145】さらに、半値ΔKGRD を、第3暫定値ΔK
PRO3と許容範囲との相対的な位置関係の履歴に応じて変
化させることができる。例えば、第3暫定値ΔKPRO3
許容範囲の下限値を下回ることが設定回数連続した場合
には、ガード処理なしで第3暫定値ΔKPRO3をそのまま
最終値ΔKFNL とすることが適当であるとして、半値Δ
GRD を一定値だけ増加するように変化させたり、ま
た、半値ΔKGRD を実質的に無限大に増加するように変
化させることができる。半値ΔKGRD が実質的に無限大
になることは、第3暫定値ΔKPRO3が必ず、そのまま最
終値ΔKFNL とされることを意味する。また、第3暫定
値ΔKPRO3と許容範囲の上限値を上回ることが設定回数
連続した場合には、ガード処理なしで第3暫定値ΔK
PRO3をそのまま最終値ΔKFNL とすることが適当である
として、半値ΔKGRD を一定値だけ増加するように変化
させたり、また、半値ΔKGRD を実質的に無限大に増加
するように変化させることができる。また、第3暫定値
ΔKPRO3と許容範囲の上限値を上回ることが設定回数連
続した場合には、タイヤ26に空気が補充されてそれの
空気圧Pが標準値に増加させられたと推定して、その標
準値を最終値ΔKFNL とすることができる。
【0146】図22には、S600、すなわち、異常判
定を実行するステップが異常判定サブルーチンとしてフ
ローチャートで表されている。
【0147】この異常判定サブルーチンにおいては、ま
ず、S601において、ΔKFNL メモリから最新の最終
値ΔKFNL (k) が読み込まれる。次に、S602におい
て、その最終値ΔKFNL (k) がしきい値ΔKTHより小さ
いか否かが判定される。今回は、小さいと仮定すれば、
判定がYESとなり、S603において、今回はタイヤ
空気圧Pが低いと判定され、表示装置66によるタイヤ
空気圧異常警告が運転者に対して行われる。これに対し
て、最終値ΔKFNL (k) がしきい値ΔKTHより小さくは
ない場合には、S602の判定がNOとなり、S603
がスキップされ、表示装置66によるタイヤ空気圧異常
警告が行われない。いずれの場合にも、以上で、この異
常判定サブルーチンすなわちS600の一回の実行が終
了する。
【0148】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、ばね定数変化量ΔKが「目的パラメー
タ」の一例を構成し、リム側部角速度ωR とベルト側部
角速度ωB と外乱w2 とねじれ角θRBとを1組とするパ
ラメータが「基礎パラメータ」の一例を構成し、コンピ
ュータ20のうち外乱オブザーバ52とパラメータ同定
部54とを構成する部分が「パラメータ推定部」の一例
および「推定器」の一例を構成しているのである。
【0149】なお付言すれば、本実施形態においては、
図4に示すように、パラメータ補正部56がパラメータ
同定部54の下流側に配置されているが、上流側に配置
することが可能である。外乱オブザーバ52とパラメー
タ同定部54との間に配置し、温度Θと車速Vと角速度
振幅|ωR |とねじれ角速度振幅|ωR −ωB |との少
なくとも一つに基づく補正を上記基礎パラメータに対し
て行うようにすることが可能なのである。さらに付言す
れば、本実施形態においては、各輪ごとの基礎パラメー
タが、4輪に関して共通に車速Vが用いられて補正され
るが、車速Vに代えて各輪の回転速度すなわちリム側部
角速度ωR を用いて基礎パラメータを補正することが可
能である。このようにすれば、基礎パラメータが各輪ご
とにその各輪の事情を正確に考慮して精度よく補正する
ことが容易になる。
【0150】次に、本発明の第2実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は、第1実施形態とガード処理に関
する構成のみが異なり、他の構成については共通である
ため、他の構成については図示および文章による説明を
省略し、ガード処理に関する構成については詳細に説明
する。
【0151】図23には、本実施形態におけるガード処
理サブルーチンがフローチャートで表されている。以
下、このサブルーチンを同図に基づいて説明するが、ま
ず、概念的に説明する。
【0152】リム側部角速度演算部54からの回転速度
信号のうち、車輪14の振動を反映した周波数成分は、
外乱オブザーバ52に供給することが必要である周波数
成分である。また、その周波数成分の周波数(以下、単
に「車輪振動周波数」という)は、車輪14に装着され
ているタイヤ26の仕様(剛性)に応じて変化する。
【0153】そこで、本実施形態においては、リム側部
角速度演算部54からの回転速度信号のうち、外乱オブ
ザーバ52に供給される周波数成分の周波数が、タイヤ
26の種類に応じて変化するように前処理フィルタ64
の特性、すなわち、回転速度信号のうち外乱オブザーバ
52に供給するために前処理フィルタ64により抽出さ
れる周波数成分の周波数(以下、「狙い値」という)が
自動的に調整される。
【0154】具体的には、タイヤ26の仕様が標準仕様
と等しいと仮定した場合に、回転速度信号のうち外乱オ
ブザーバ52に供給することが望ましい周波数成分が外
乱オブザーバ52に供給されるように前処理フィルタ6
4の狙い値が事前に設定される。さらに、その仮定が実
際と一致する場合に外乱オブザーバ52により推定され
ることが予想されるばね定数変化量ΔKと、タイヤ26
の実際の仕様の下で外乱オブザーバ52により実際に推
定されたばね定数変化量ΔKとが互いに比較される。さ
らに、それらばね定数変化量ΔKの予想値(正規値)と
推定値との相対的な関係に応じて、前処理フィルタ64
の狙い値が、タイヤ26の実際の仕様の下で外乱オブザ
ーバ52により推定されることが予想されるばね定数変
化量ΔKと、狙い値を調整した後に外乱オブザーバ52
により推定されることが予想されるばね定数変化量ΔK
とが互いに実質的に一致するように調整される。なお、
このフィルタ調整の実行中においては、タイヤ26の実
際の空気圧Pが標準値に等しいと仮定される。
【0155】次に、このガード処理サブルーチンを図2
3に基づいて詳細に説明する。
【0156】このサブルーチンにおいては、まず、S5
21において、前処理フィルタ64の狙い値を調整する
ことが必要であるか否かが判定される。このS521は
例えば、イグニションスイッチがOFFからONに操作
された直後である場合にその調整が必要であると判定し
たり、タイヤ26を交換したという事実が運転者から知
らされた場合に前処理フィルタ64の狙い値の調整が必
要であると判定するように設計することができる。調整
指令を自動的に発したり、手動的に発するように設計す
ることができるのである。
【0157】今回は、前処理フィルタ64の狙い値の調
整が必要であると仮定すれば、S521の判定がYES
となり、S522において、第3暫定値ΔKPRO3(k)
対してガード処理を行う際の許容範囲の中心値ΔKCTR
の初期値が7個、ROM49から読み込まれる。すなわ
ち、中心値ΔKCTR0,ΔKCTR1,ΔKCTR2,ΔKCTR3
ΔKCTR4,ΔKCTR5およびΔKCTR6の各値が読み込まれ
るのである。それらの中央に位置する中心値ΔK
CTR3は、タイヤ26の仕様が標準仕様であり、かつ、そ
れの空気圧Pが標準値である場合のばね定数変化量Δ
K、すなわち、標準値ΔKSTD と等しく設定されてい
る。
【0158】その後、S523において、ΔKPRO3メモ
リから最新の第3暫定値ΔKPRO3(k ) が読み込まれる。
続いて、S524において、その読み込まれた第3暫定
値ΔKPRO3(k) に対してガード処理が、7個の中心値Δ
CTR に関してそれぞれ行われ、それにより、7個の最
終値ΔKFNL0,ΔKFNL1,ΔKFNL2,ΔKFNL3,ΔK
FNL4,ΔKFNL5,ΔKFNL6が取得される。
【0159】このガード処理は、第1実施形態における
ガード処理に準じて行われるものであるため、7個の中
心値のうちの一つである中心値ΔKCTR0に関して行われ
る場合を例にとり、簡単に説明する。
【0160】まず、第3暫定値ΔKPRO3(k) が、中心値
ΔKCTR0に許容範囲の半値ΔKGRDを足し算した上限値
より大きいか否かが判定される。今回は、大きくはない
と仮定すれば、第3暫定値ΔKPRO3(k) が、中心値ΔK
CTR0から許容範囲の半値ΔK GRD を引き算した下限値よ
り小さいか否かが判定される。今回は、小さくはないと
仮定すれば、第3暫定値ΔKPRO3(k) が、中心値ΔK
CTR0に対応する最終値ΔKFNL0とされる。また、今回
は、第3暫定値ΔKPRO3(k) が上限値より大きいと仮定
すれば、その上限値が、中心値ΔKCTR0に対応する最終
値ΔKFNL0とされる。また、今回は、第3暫定値ΔK
PRO3(k) が下限値より小さいと仮定すれば、その下限値
が、中心値ΔKCTR0に対応する最終値ΔKFNL0とされ
る。
【0161】このようなガード処理が7個の中心値に関
して実行されると、第3暫定値ΔK PRO3(k) が例えば、
7個の中心値ΔKCTR に対して図24に示すように相対
的に位置させられる場合には、同図に示すように、7個
の最終値ΔKFNL が取得されることになる。
【0162】その後、S525において、各中心値ΔK
CTR ごとに、中心値ΔKCTR と最終値ΔKFNL との差で
ある誤差値dが演算される。具体的には、誤差値d0
1,d2 ,d3 ,d4 ,d5 ,d6 がそれぞれ次式を
用いて演算される。
【0163】d0 =ΔKFNL0−ΔKCTR01 =ΔKFNL1−ΔKCTR12 =ΔKFNL2−ΔKCTR23 =ΔKFNL3−ΔKCTR34 =ΔKFNL4−ΔKCTR45 =ΔKFNL5−ΔKCTR56 =ΔKFNL6−ΔKCTR6
【0164】そして、図24に示す例では、誤差値d0
〜d6 が同図に示すように、取得される。同図には、誤
差値d1 が示されていないが、第3暫定値ΔKPRO3(k)
が、中心値ΔKCTR1に対応する許容範囲内に位置させら
れていて、誤差値d1 が0であるからである。
【0165】続いて、S526において、演算された7
個の誤差値d0 〜d6 のうち最小値が検索され、さら
に、演算された7個の最終値ΔKFNL0〜ΔKFNL6のう
ち、誤差値dが最小値であるものが、今回の最終値ΔK
FNL(k)として選択される。図24に示す例では、誤差値
1 が最小値であるため、暫定値ΔKFNL1が今回の最終
値ΔKFNL(k)として選択されることになる。
【0166】その後、S527において、選択された最
終値ΔKFNL (k) がΔKFNL メモリに、回数kに関連付
けてストアされる。
【0167】続いて、S528において、前処理フィル
タ64の狙い値が、図24に示すように、それの調整前
の狙い値であるΔKCTR3と最終値ΔKFNL (k) との差S
に応じた量ADJで、かつ、調整後の狙い値が最終値Δ
FNL (k) (次回の最終値ΔKFNL (k+1) にほぼ等しい
と考えられる)に近づく向きに調整される。狙い値の調
整量ADJは例えば、差Sを、その狙い値を単位量(例
えば、1Hz)変更することに応じてばね定数変化量Δ
Kの推定値が変化することとなる量で割り算することに
より取得できる。以上でこのサブルーチンの一回の実行
が終了する。
【0168】これに対して、今回は、前処理フィルタ6
4の狙い値の調整が済んだ後であるため、再度の調整は
不要であると仮定すれば、S521の判定がNOとな
り、S531に移行する。S531ないしS535にお
いては、今回の第3暫定値ΔK PRO3(k) に対してガード
処理が、第1実施形態におけるに準じて行われる。
【0169】具体的には、S531において、ΔKPRO3
メモリから今回の第3暫定値ΔKPR O3(k) が読み込ま
れ、続いて、S532において、その第3暫定値ΔK
PRO3(k)が、許容範囲の中心値ΔKCTR (後に説明す
る)に許容範囲の半値ΔKGRD を足し算した上限値より
大きいか否かが判定される。今回は、大きくはないと仮
定すれば、判定がNOとなり、S533に進む。S53
3においては、今回の第3暫定値ΔKPRO3(k) が、中心
値ΔKCTR から許容範囲の半値ΔKGRD を引き算した下
限値より小さいか否かが判定される。今回は、小さくは
ないと仮定すれば、判定がNOとなり、S534に進
む。S534においては、今回の第3暫定値ΔK
PRO3(k) が今回の最終値ΔKFNL (k) とされる。その
後、S535において、今回の最終値ΔKFNL (k) が、
RAM50に設けられたΔKFNL メモリに、回数kに関
連付けてストアされる。以上で、このサブルーチンの一
回の実行が終了する。
【0170】これに対して、今回は、今回の第3暫定値
ΔKPRO3(k) が上限値より大きいと仮定すれば、S53
2の判定がYESとなり、S536において、その上限
値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされる。その後、S5
35に移行する。また、今回は下限値より小さいと仮定
すれば、S533の判定がYESとなり、S537にお
いて、その下限値が今回の最終値ΔKFNL (k) とされ
る。その後、S535に移行する。
【0171】ここで、中心値ΔKCTR の設定について説
明する。
【0172】中心値ΔKCTR は、第1実施形態における
と同様に、前回の最終値ΔKFNL (k -1) と等しく設定す
ることができる。このように設定する場合には、タイヤ
空気圧Pの実際値を、それの変化領域全体において同じ
精度で推定できるという利点が得られる。また、標準値
ΔKSTD と等しく設定することもできる。さらに、タイ
ヤ空気圧異常判定のためのしきい値ΔKTHと等しく設定
することもできる。このように設定する場合には、異常
判定のためにタイヤ空気圧Pを精度よく推定することが
特に必要である領域において、タイヤ空気圧Pを精度よ
く推定できるという利点が得られる。
【0173】次に、本発明の第3実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は、第1および第2実施形態と共通
する要素については同一の符号を使用することにより詳
細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明
する。
【0174】第1および第2実施形態においては、図4
に示すように、パラメータ補正部56に対して平滑化処
理部58とガード処理部60とが互いに直列に接続さ
れ、パラメータ補正部56により取得された第2暫定値
ΔKPRO2に対して平滑化処理部58が作動させられ、そ
れにより取得された第3暫定値ΔKPRO3に対してガード
処理部60が作動させられ、それにより取得された最終
値ΔKFNL が異常判定部62に供給される。
【0175】これに対して、本実施形態においては、図
25に示すように、パラメータ補正部56に対して平滑
化処理部100とガード処理部102とが互いに並列に
接続され、パラメータ補正部56により取得された第2
暫定値ΔKPRO2に対して平滑化処理部100とガード処
理部102とが互いに実質的に並行に作動させられる。
【0176】平滑化処理部100は、第1および第2実
施形態における平滑化処理部58と同様にして取得した
「第3暫定値ΔKPRO3」を「第1最終値ΔKFNL1」とし
て異常判定部104に出力する。
【0177】ガード処理部102は、パラメータ補正部
56により取得された「第2暫定値ΔKPRO2」が、第1
および第2実施形態においては平滑化処理部58から入
力された「第3暫定値ΔKPRO3」に代えて入力され、そ
の「第2暫定値ΔKPRO2」に基づき、第1および第2実
施形態におけるガード処理部60と同様にして取得した
「最終値ΔK」を「第2最終値ΔKFNL2」として異常判
定部104に出力する。
【0178】異常判定部104は、それら平滑化処理部
100とガード処理部102とから入力された第1最終
値ΔKFNL1と第2最終値ΔKFNL2とに基づき、タイヤ空
気圧Pが低いか否かを判定する。具体的には、異常判定
部104は、第1最終値ΔK FNL1と第2最終値ΔKFNL2
とのいずれかでも、しきい値ΔKTHより小さい場合に、
タイヤ空気圧Pが低いと判定する。
【0179】図26には、このような異常判定を行うた
めのサブルーチンがフローチャートで表されている。
【0180】この異常判定サブルーチンにおいては、ま
ず、S651において、平滑化処理部100から第1最
終値ΔKFNL1が読み込まれ、次に、S652において、
ガード処理部102から第2最終値ΔKFNL2が読み込ま
れる。その後、S653において、読み込まれた第1最
終値ΔKFNL1がしきい値ΔKTHより小さいか否かが判定
される。今回は、小さいと仮定すれば、判定がYESと
なり、S654において、タイヤ空気圧Pが低いことが
表示装置66により運転者に告知される。以上でこのサ
ブルーチンの一回の実行が終了する。
【0181】これに対して、今回は、第1最終値ΔK
FNL1がしきい値ΔKTHより小さくはないと仮定すれば、
S653の判定がNOとなり、S655において、読み
込まれた第2最終値ΔKFNL2がしきい値ΔKTHより小さ
いか否かが判定される。今回は、小さいと仮定すれば、
判定がYESとなり、S654において、タイヤ空気圧
Pが低いことが表示装置66により運転者に告知され
る。以上でこのサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0182】また、第1最終値ΔKFNL1も第2最終値Δ
FNL2もしきい値ΔKTHより小さくはないと仮定すれ
ば、S653の判定もS655の判定もNOとなり、S
654がスキップされ、運転者への異常警告が行われる
ことなく、このサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0183】次に、本発明の第4実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は、第1実施形態と平滑化処理に関
する構成のみが異なり、他の構成については共通である
ため、他の構成については図示および文章による説明を
省略し、平滑化処理に関する構成については詳細に説明
する。
【0184】図27には、本実施形態における平滑化処
理サブルーチンがフローチャートで表されている。以
下、このサブルーチンを同図に基づいて説明するが、ま
ず、概念的に説明する。
【0185】第1実施形態においては、第2暫定値ΔK
PRO2の取得数が固定値である基準値Nに到達したとき
に、取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2の平均値が
第3暫定値ΔKPRO3とされる。
【0186】これに対して、本実施形態においては、第
2暫定値ΔKPRO2が取得されるごとに、その時点で取得
されたすべての第2暫定値ΔKPRO2の平均値AVE(j)
が逐次演算され、その平均値AVE(j) の時間的変動が
基準状態以下にならないうちは第3暫定値ΔKPRO3を演
算せず、基準状態以下になったなったときに、その時点
で取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2の平均値AV
(j) が第3暫定値ΔKPRO3とされる。
【0187】次に、この平滑化処理サブルーチンを図2
7に基づいて詳細に説明する。
【0188】このサブルーチンにおいては、まず、S4
21aにおいて、回数jが1増加させられる。次に、S
421bにおいて、回数jの現在値が基準値j0 に到達
した以上であるか否かが判定される。基準値j0 以上で
ない場合には、判定がNOとなり、以上でこのサブルー
チンの一回の実行が終了する。したがって、第2暫定値
ΔKPRO2の取得数が一定値に到達しない場合には、たと
え平均値AVE(j) の時間的変動が基準状態以下であっ
ても、第3暫定値ΔKPRO3が演算されず、これにより、
誤った第3暫定値ΔKPRO3に基づいてタイヤ空気圧Pの
異常判定がなされずに済む。
【0189】これに対して、今回は、回数jの現在値が
基準値j0 に到達したと仮定すれば、S421bの判定
がYESとなり、S422に進む。S422において
は、現時点で取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2
すなわち、ΔKPRO2メモリにストアされているすべての
第2暫定値ΔKPRO2の平均値AVE(j) が演算される。
その後、S423において、演算された今回の平均値A
VE(j) から前回の平均値AVE(j-1) (RAM50に
ストアされている)を引き算することにより、今回の変
化量ΔAVE(j) (第2暫定値ΔKPRO2の1回微分値に
相当する)が演算される。続いて、S424において、
演算された今回の変化量ΔAVE(j) の絶対値がしきい
値G以下であるか否かが判定される。今回は、しきい値
G以下ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、以上
でこのサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0190】これに対して、今回は、今回の変化量ΔA
VE(j) の絶対値がしきい値G以下であると仮定すれ
ば、S424の判定がYESとなり、S425におい
て、今回の平均値AVE(j) が第3暫定値ΔKPRO3とさ
れる。その後、S426において、その第3暫定値ΔK
PRO3がΔKPRO3メモリにストアされる。続いて、S42
7において、ΔKPRO2メモリがクリアされ、その後、S
428において、回数jが0にセットされる。以上でこ
のサブルーチンの一回の実行が終了する。
【0191】次に、本発明の第5実施形態を説明する。
ただし、本実施形態は、第1実施形態と平滑化処理に関
する構成のみが異なり、他の構成については共通である
ため、他の構成については図示および文章による説明を
省略し、平滑化処理に関する構成については詳細に説明
する。
【0192】図28には、本実施形態における平滑化処
理サブルーチンがフローチャートで表されている。以
下、このサブルーチンを同図に基づいて説明するが、ま
ず、概念的に説明する。
【0193】第1実施形態においては、第2暫定値ΔK
PRO2の取得数が固定値である基準値Nに到達したとき
に、取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2の平均値が
第3暫定値ΔKPRO3とされる。
【0194】これに対して、本実施形態においては、過
去の複数個の第2暫定値ΔKPRO2の分布が実質的に正規
分布を示すに至ったときに、取得されたすべての第2暫
定値ΔKPRO2の平均値が第3暫定値ΔKPRO3とされる。
【0195】次に、この平滑化処理サブルーチンを図2
8に基づいて詳細に説明する。
【0196】このサブルーチンにおいては、まず、S4
41aにおいて、回数jが1増加させられる。次に、S
441bにおいて、回数jの現在値が基準値j0 に到達
した以上であるか否かが判定される。基準値j0 以上で
ない場合には、判定がNOとなり、以上でこのサブルー
チンの一回の実行が終了する。したがって、第2暫定値
ΔKPRO2の取得数が一定値に到達しない場合には、たと
え過去の複数個の第2暫定値ΔKPRO2の分布が実質的に
正規分布を示す場合であっても、第3暫定値ΔKPRO3
演算されず、これにより、誤った第3暫定値ΔKPRO3
基づいてタイヤ空気圧Pの異常判定がなされずに済む。
【0197】これに対して、今回は、回数jの現在値が
基準値j0 に到達したと仮定すれば、S441bの判定
がYESとなり、S442に進む。S442において
は、現時点で取得されたすべての第2暫定値ΔKPRO2
すなわち、ΔKPRO2メモリにストアされているすべての
第2暫定値ΔKPRO2の分布が実質的に正規分布を示すが
否かが判定される。具体的には、例えば、それら第2暫
定値ΔKPRO2の歪度b1(分布の左右非対称度を示す指
標)が実質的に0であり、かつ、尖度b2 (分布の尖り
または裾の長さを示す指標)も実質的に0であるか否か
が判定され、そうであれば、それら第2暫定値ΔKPRO2
の分布が実質的に正規分布を示すと判定される。
【0198】ここに、歪度b1 は、 b1 =Σ[(ΔKPRO2(j) −AVE(j) )/s]3 /j なる式で定義され、また、尖度b2 は、 b1 =Σ[(ΔKPRO2(j) −AVE(j) )/s]4 /j
−3 なる式で定義される。これらの式において「AV
(j) 」は、ΔKPRO2メモリにストアされているすべて
の第2暫定値ΔKPRO2の平均値を表す。
【0199】今回は、それら第2暫定値ΔKPRO2の分布
が実質的に正規分布を示さないと仮定すれば、判定がN
Oとなり、以上でこのサブルーチンの一回の実行が終了
する。
【0200】これに対して、今回は、ΔKPRO2メモリに
ストアされているすべての第2暫定値ΔKPRO2の分布が
実質的に正規分布を示すと仮定すれば、S442の判定
がYESとなり、S443において、それら第2暫定値
ΔKPRO2の平均値AVE(j)が演算される。その後、S
444において、その演算された今回の平均値AVE
(j) が第3暫定値ΔKPRO3とされる。その後、S445
において、その第3暫定値ΔKPRO3がΔKPRO3メモリに
ストアされる。続いて、S446において、ΔK PRO2
モリがクリアされ、その後、S447において、回数j
が0にセットされる。以上でこのサブルーチンの一回の
実行が終了する。
【0201】なお、本実施形態においては、過去の複数
個の第2暫定値ΔKPRO2の分布が実質的に正規分布を示
すに至った時に、それら第2暫定値ΔKPRO2の平均値A
VEが第3暫定値ΔKPRO3とされるようになっている
が、それら第2暫定値ΔKPRO2が示す実質的な正規分布
における中央値が第3暫定値ΔKPRO3とされるように変
更することが可能である。
【0202】以上、本発明のいくつかの実施形態を図面
に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本
発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決
手段および発明の効果〕の項に記載された態様を始めと
して、当業者の知識に基づいて種々の改良,変形を加え
た形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるタイヤ空気圧異常
警告装置の構成を示すブロック図である。
【図2】上記タイヤ空気圧異常警告装置によりタイヤ空
気圧を推定される車輪の一部を示す断面図である。
【図3】上記車輪の力学モデルを示す図である。
【図4】上記タイヤ空気圧異常警告装置の機能を示すブ
ロック図である。
【図5】図1におけるROM49の構成を概念的に示す
ブロック図である。
【図6】図1におけるRAM50の構成を概念的に示す
ブロック図である。
【図7】図3の車輪モデルを簡略化して示す図である。
【図8】上記タイヤ空気圧異常警告装置における外乱の
ダイナミクスの近似を説明するためのグラフである。
【図9】図4における外乱オブザーバの構成を示すブロ
ック線図である。
【図10】図1におけるROM49に記憶されているタ
イヤ空気圧異常判定ルーチンを示すフローチャートであ
る。
【図11】図10におけるS100の詳細を外乱オブザ
ーバ作動サブルーチンとして示すフローチャートであ
る。
【図12】図10のタイヤ空気圧異常判定ルーチンの実
行結果の一例を説明するためのタイミングチャートであ
る。
【図13】図10におけるS200の詳細をパラメータ
同定サブルーチンとして示すフローチャートである。
【図14】上記タイヤ空気圧異常警告装置によるばね定
数変化量の推定値が時間と共に変化する様子を参考例と
比較しつつ説明するためのグラフである。
【図15】図10におけるS300の詳細をパラメータ
補正サブルーチンとして示すフローチャートである。
【図16】上記パラメータ補正サブルーチンにおける温
度Θと推定値との関係を示すグラフと、温度Θと補正量
ΔKCOM1との関係を示すグラフである。
【図17】上記パラメータ補正サブルーチンにおける車
速Vと推定値との関係を示すグラフと、車速Vと補正量
ΔKCOM2との関係を示すグラフである。
【図18】上記パラメータ補正サブルーチンにおける角
速度振幅|ωR |と推定値との関係を示すグラフと、角
速度振幅|ωR |と補正量ΔKCOM3との関係を示すグラ
フである。
【図19】図10におけるS400の詳細を平滑化処理
サブルーチンとして示すフローチャートである。
【図20】図10におけるS500の詳細をガード処理
サブルーチンとして示すフローチャートである。
【図21】上記ガード処理サブルーチンの実行結果の一
例を説明するためのタイミングチャートである。
【図22】図10におけるS600の詳細を異常判定サ
ブルーチンとして示すフローチャートである。
【図23】本発明の第2実施形態であるタイヤ空気圧異
常警告装置におけるコンピュータにより実行されるガー
ド処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【図24】上記ガード処理サブルーチンの実行結果の一
例を説明するための図である。
【図25】本発明の第3実施形態であるタイヤ空気圧異
常警告装置の構成を示すブロック図である。
【図26】図25におけるコンピュータのROMに記憶
されている異常判定サブルーチンを示すフローチャート
である。
【図27】本発明の第4実施形態であるタイヤ空気圧異
常警告装置のコンピュータにより実行される平滑化処理
サブルーチンを示すフローチャートである。
【図28】本発明の第5実施形態であるタイヤ空気圧異
常警告装置のコンピュータにより実行される平滑化処理
サブルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ロータ 12 車輪速センサ 14 車輪(タイヤ付ホイール) 20,47 コンピュータ 24 ホイール 26 タイヤ 28 リム側部 30 ベルト側部 32 ねじりばね 34 ダンパ 52 外乱オブザーバ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 000000011 アイシン精機株式会社 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 (72)発明者 大橋 秀樹 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 米谷 正弘 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 岩見 陽三 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 梅野 孝治 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 中川 稔章 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 井上 祐一 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 (72)発明者 森 雪生 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内 (72)発明者 神谷 和宏 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内 (72)発明者 浅野 憲司 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内 Fターム(参考) 2F055 AA12 BB20 CC60 EE40 FF11 FF28 FF31 GG49 HH19

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ホイールに装着されたタイヤの内部に空気
    が封入されて構成された車輪の回転速度を検出する車輪
    速センサと、 その車輪速センサから出力された車輪速信号に基づき、
    前記タイヤの空気圧であるかまたはそれに関連するパラ
    メータである目的パラメータを推定するために用いられ
    る基礎パラメータを逐次取得するとともに、今回取得さ
    れた基礎パラメータを含んで今回以前に取得された複数
    個の基礎パラメータに基づいて目的パラメータを推定す
    る推定器とを備えたタイヤ空気圧推定装置において、 前記推定器を、前記基礎パラメータが依存性を示す物理
    量であって前記タイヤ空気圧を除くものが実質的に変化
    しないと予想される長さの設定期間が経過するごとに前
    記目的パラメータを、最新の一設定期間中に逐次取得さ
    れた複数個の前記基礎パラメータに基づいて推定するパ
    ラメータ推定部を含むものとしたことを特徴とするタイ
    ヤ空気圧推定装置。
  2. 【請求項2】前記推定器が、さらに、前記パラメータ推
    定部による目的パラメータの推定値を、その推定値が依
    存性を示す物理量であって前記タイヤ空気圧を除くもの
    に基づいて補正するパラメータ補正部を含む請求項1に
    記載のタイヤ空気圧推定装置。
  3. 【請求項3】前記推定器が、さらに、前記パラメータ推
    定部による目的パラメータの推定値を平滑化する平滑化
    処理部を含む請求項1または2に記載のタイヤ空気圧推
    定装置。
  4. 【請求項4】前記推定器が、さらに、前記パラメータ補
    正部により補正された目的パラメータの推定値を平滑化
    する平滑化処理部を含む請求項2に記載のタイヤ空気圧
    推定装置。
  5. 【請求項5】前記推定器が、さらに、前記パラメータ推
    定部による目的パラメータの推定値を予め設定された許
    容範囲を超えないように補正するガード処理を行うガー
    ド処理部を含む請求項1ないし4のいずれかに記載のタ
    イヤ空気圧推定装置。
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