JP2000234152A - 磁気シールド構造用鋼およびその厚鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気シールド構造用鋼およびその厚鋼板の製造方法

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JP2000234152A
JP2000234152A JP11050886A JP5088699A JP2000234152A JP 2000234152 A JP2000234152 A JP 2000234152A JP 11050886 A JP11050886 A JP 11050886A JP 5088699 A JP5088699 A JP 5088699A JP 2000234152 A JP2000234152 A JP 2000234152A
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crystal grain
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Tatsuya Kumagai
達也 熊谷
Masayuki Kodama
正行 児玉
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 均質で安定した高透磁率、強度、靱性を備え
る優れた磁気シールド構造用鋼およびその厚鋼板の製造
方法を提供すること。 【解決手段】重量%で、C:0.007%以下、Si: 0.5%以上2%
以下、Mn:1.5%以下、P:0.05% 以下、S:0.005%以下、C
u: 0.2%以上0.8%以下、Ni: 0.3%以上1.5%以下、Cr:1%
以上3%以下、Al:0.2%以上0.8%以下、N:0.007%以下、残
部Feおよび不可避的不純物からなり、フェライト単相組
織を有し、結晶粒径が 150μm〜 300μmである磁気シ
ールド構造用鋼および前記成分組成の鋼片をAc3 点以上
の温度に加熱し、Ar3 温度以下での圧下率が20%〜40%
で圧延仕上温度がAr1 ℃−20℃〜Ar1−50℃となるよう
に圧延後、800 ℃以上930 ℃以下の下式で計算される熱
処理温度THT±25℃の範囲で120 分以上保持する熱処理
を行なう厚鋼板の製造方法。 式 THT= 800 + 0.74 ×(Ac1−850)(℃)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気シールド構造
用鋼およびその厚鋼板の製造方法に関わるものである。
【0002】
【従来の技術】MRI(核磁気共鳴断層診断装置)に代
表されるような強磁場を利用した設備や各種電子機器か
らの外部への磁場の漏洩或いは精密測定機器やコンピュ
ータに対する外部からの磁場の影響を防ぐ目的で、磁気
シールドの重要性はますます増加している。磁気シール
ド効果は透磁率と厚さの積に比例するが、高純度鉄系の
厚鋼板は、透磁率が高く、また、飽和磁束密度も高いと
いう利点をもつ比較的安価な磁気シールド用材料であ
り、現在も広く用いられている。しかしながら最近で
は、効率的な磁気シールドを行なうために、個々の設備
ごとに磁気シールドをするのではなく、建屋自体を磁気
シールドする方法が提案されており、そのため構造部材
として少なくとも普通鋼並みの400MPaあるいはそれ以上
の強度と靱性とを備えた磁気シールド材料の必要性が増
している。磁気ヨーク用途などでは磁場の乱れを生じさ
せないために、また、精度良い磁界設計を行なうため
に、磁気シールド材には、ロットや板面内の方向に対す
る透磁率のばらつきができるだけ少ないことが重要視さ
れる。さらに、構造材としては普通鋼並みの溶接性も必
要となる。このように、優れた磁気シールド構造用厚鋼
板には、均質で安定した高透磁率と、普通鋼並み以上の
強度、靱性、溶接性が要求される。
【0003】これまでにも、磁気シールド用材料として
は、特開平5−33049号公報、特開平6−1457
97号公報、特開平6−306468号公報、特開平9
−125201号公報、特開平9−157743号公報
等が提案されている。また、磁気シールド用途ではない
が、制振合金としての用途には、フェライト単相組織鋼
の結晶粒径を限定した、特開平7−150296号公
報、特開平9−143622号公報等の提案がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらのうち、特開平
5−33049号公報および特開平9−125201号
公報記載の鋼はいずれも粗粒化を狙ったものであり、強
度、靱性については考慮されていない。特開平6−30
6468号公報記載の鋼は、熱延鋼板の製造方法であ
り、結晶粒径については記載がないが、やはり靱性が考
慮されていない。特開平9−157743号公報記載の
鋼は、切削性と極厚材の特性確保のためとして、むしろ
粗粒化を抑制しており、実施例からは結晶粒径が100 〜
200 μmになっているものと推察される(フェライト粒
度No.2.9〜3.3)。しかし、μmax が15,000未満と比較的
低いものであり、強度についても考慮されていない。特
開平6−145797号公報は、やはり高強度の磁気シ
ールド材として本発明者らが提案したものであるが、こ
こでは磁気特性を優先し、また溶接構造ではなくボルト
締めなどでの利用を前提としたため溶接性は考慮してお
らず、結晶粒径は400 〜800 μm(粒度No.0〜−2)と
かなり粗粒にしており、そのため溶接性が劣る。このよ
うに結晶粒径の範囲が広く、また磁気特性を高めるため
に集合組織の強化を図っており、磁気特性の均質性は高
くない。
【0005】また、フェライト単相組織鋼の制振合金と
しての用途で結晶粒径を限定するのは、結晶粒径が大き
すぎるとかえって制振効果が低下することによるが、例
えば特開平9−143622号公報の実施例では結晶粒
径は100 μm以下であり、磁気特性の記述はないが、磁
気シールド用途には透磁率が不足であると推察される。
また特開平7−150296号公報は、やはり制振用途
で、結晶粒径を50〜300 μmと比較的広く規定している
が、ここでは強度、靱性は全く考慮されていない。この
ように、磁気シールド構造用鋼として、均質で安定した
高透磁率と、普通鋼並み以上の強度、靱性、溶接性をと
もに具備する材料はこれまで得られていない。
【0006】本発明は、以上の点を鑑みなされたもの
で、純鉄系材料の高飽和磁束密度を生かしつつ、均質で
安定した高透磁率と、普通鋼並み以上の強度、靱性、溶
接性をともに具備する、優れた磁気シールド構造用鋼お
よびその厚鋼板の製造方法を提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】(1)重量%で、C:0.
007%以下、Si:0.5%以上、2%以下、Mn:1.5%以下、P:
0.05%以下、S:0.005%以下、Cu:0.2%以上、0.8%以
下、Ni:0.3%以上、1.5%以下、Cr:1%以上、3%以下、A
l:0.2%以上、0.8%以下、N:0.007%以下を有し、残部F
eおよび不可避的不純物からなり、フェライト単相組織
を有しかつその結晶粒径が 150μm〜 300μmであるこ
とを特徴とする磁気シールド構造用鋼。
【0008】(2)前記(1)に記載の鋼と同一組成を
有する鋼に、さらに、重量%で、Mo:0.05%以上、0.5%
以下、B:0.0003%以上、0.005%以下の強化元素群のな
かから1種または2種含み、残部Feおよび不可避的不純
物からなり、フェライト単相組織を有しかつその結晶粒
径が150 μm〜300 μm、であることを特徴とする磁気
シールド構造用鋼。
【0009】(3)重量%で、C:0.007%以下、Si:0.
5%以上、2%以下、Mn:1.5%以下、P:0.05%以下、S:
0.005%以下、Cu:0.2%以上、0.8%以下、Ni:0.3%以上、
1.5%以下、Cr:1%以上、3%以下、Al:0.2%以上、0.8%以
下、N:0.007%以下を有し、残部Feおよび不可避的不純
物からなる鋼片を、Ac3 点以上の温度に加熱し、Ar3 温
度以下での圧下率が20%〜40%で、圧延仕上温度がAr1
℃−20℃〜Ar1 −50℃となるように圧延を行って板厚4.
5mm 以上の厚鋼板とした後、800 ℃以上 930℃以下で、
かつ下記の式で計算される熱処理温度THT±25℃の範囲
で、120 分以上保持する熱処理を行なうことを特徴とす
る板厚4.5mm 以上の磁気シールド構造用厚鋼板の製造方
法。ここでTHTは、鋼材のAc1 温度との関係から導かれ
る、結晶粒径制御のための熱処理温度で、THT= 800 +
0.74 ×(Ac1−850)(℃)である。
【0010】(4)前記(3)に記載の鋼片と同一組成
を有する鋼片に、さらに、重量%で、Mo:0.05% 以上、
0.5%以下、B :0.0003% 以上、0.005%以下の強化元素群
のなかから1種または2種含み、残部Feおよび不可避的
不純物からなる鋼片を、Ac3 点以上の温度に加熱し、Ar
3 温度以下での圧下率が20%〜40%で、圧延仕上温度が
Ar1 ℃−20℃〜Ar1 −50℃となるように圧延を行って板
厚4.5mm 以上の厚鋼板とした後、800 ℃以上 930℃以下
で、かつ下記の式で計算される熱処理温度THT±25℃の
範囲で、120 分以上保持する熱処理を行なうことを特徴
とする板厚4.5mm以上の磁気シールド構造用厚鋼板の製
造方法。ここでTHTは、鋼材のAc1 温度との関係から導
かれる、結晶粒径制御のための熱処理温度で、THT= 8
00 + 0.74×(Ac1−850)(℃)である。
【0011】
【発明の実施の形態】鋼板の透磁率が結晶粒径に大きく
依存することは従来から知られている。しかし、鋼の成
分組成や、不純物、介在物、結晶方位などの影響もある
ので、結晶粒径だけで透磁率が決まるわけではない。本
発明者はまず、各因子の透磁率への影響を明確にし、一
定の高透磁率を安定して得るための手段を検討した。そ
の結果、フェライト単相組織鋼において、不純物や介在
物を大幅に低減し、特定方位への強い集合組織を導入し
ないようにするならば、限定された成分組成範囲では、
結晶粒径と透磁率は極めてよく対応し、透磁率はほぼ結
晶粒径でのみ決定されることを明らかにした。
【0012】集合組織については、磁気特性を向上させ
る手段としても用いられるが、どの方向にも一定の透磁
率を得ようとする場合には、特定方位への強い集合組織
はかえって害な場合もあり、むしろ集合組織をつくらな
いほうがよい。優れた磁気シールド効果を発揮するため
に、μmax(最大透磁率)≧16,000以上を目標値とした場
合、結晶粒径は150 μm以上とすればよく、粗粒ほど透
磁率は良くなる。しかし、粗粒になるほど靱性が低下す
る傾向は避けられない。発明者はNiを添加することで、
このようなフェライト単相組織鋼の靱性を大きく改善で
きることを見いだした。
【0013】一方、構造材としての用途では溶接性を考
慮する必要があるが、結晶粒径が300 μmを超えると溶
接時に熱影響部で割れを生じやすくなる懸念がある。ま
た300 μm超では、靱性確保のために高価なNiを多量に
添加する必要もあることから、実際には結晶粒径は300
μm以下がよいと考えられる。すなわち、フェライト単
相組織で不純物、介在物を低減し、特定方位への強い集
合組織を導入せず、Ni添加を前提としたうえで、結晶粒
径を150 〜300 μm、好ましくは180 〜250 μmに限定
することが、一定の高透磁率を安定して得るための手段
である。
【0014】次に強度を400MPa以上とする方法である
が、フェライト単相を維持しながらの高強度化であるの
で、固溶強化元素が主体となり、それぞれの元素の添加
量も限定される。発明者は検討を重ねた結果、Cr、Si、
Cuをそれぞれ適正範囲添加することで、透磁率および飽
和磁束密度などの磁気特性を低下させないで、400MPa以
上の強度が得られることを知見した。
【0015】本発明者はさらに、上記強度条件を満たす
成分組成の鋼について、前述のような狭い範囲へ鋼板の
結晶粒径を制御するため、製造プロセス条件を種々検討
した。その結果、圧延仕上の温度と圧下率をある範囲に
限定して、圧延後、Ac1 温度で決まる特定温度で熱処理
を行なえば、結晶粒の大きさはほぼいつも同じになるこ
とを知見した。
【0016】圧延仕上の温度と圧下率を限定する意味
は、熱処理前の結晶粒の状態と、結晶粒成長の駆動力と
なる圧延歪量を一定範囲に制御することであり、具体的
には、Ar3 温度以下での圧下率が20%〜40%で、圧延仕
上温度をAr1 ℃−20℃〜Ar1 −50℃となるように圧延を
行なう。
【0017】さらに圧延後の熱処理によって結晶粒成長
を行なうのであるが、本発明鋼では強度確保のための合
金元素が加わっているので、純鉄に比べて結晶粒成長の
制御は容易ではない。特に強度確保に必須のCrは、熱処
理の昇温過程でCと結合して結晶粒界に炭化物を析出
し、ピニング作用のため結晶粒成長を著しく停滞させ、
また熱処理温度を高くするとある時点でピニングが外れ
るため異常粒成長を生じることがある。炭化物量はC量
で決まるため、Cを低減するが、完全にCを除去するこ
とは不可能であり、フェライト単相組織であるために大
部分が結晶粒界に析出することから、微量の炭化物でも
影響がある。
【0018】しかし、検討の結果、C量を0.007%以下と
すれば、800 ℃以上の温度では炭化物は再固溶するの
で、そこで一定時間保持することで正常な均一粒成長が
可能となることを明らかとすることができた。発明者は
さらに、本発明鋼のAc1 変態温度と熱処理温度、および
得られる結晶粒径との関係を詳細に調査した結果、これ
らの間には一定の関係があり、THT= 800 + 0.74 ×(A
c1−850)(℃)の式で計算される温度THTで十分に保持
する熱処理を行なえば、常にほぼ一定の結晶粒径が得ら
れることを見いだした。
【0019】具体的には、THT±25℃で熱処理を行なう
ことで、150 〜300 μmの範囲の結晶粒径が安定して得
られる。この場合のμmax は16,000〜20,000となる。さ
らに好ましくは、熱処理温度を精度良くTHT±15℃とす
れば、結晶粒径はほぼ180 〜250 μmとなり、この場合
のμmax は、17,000〜19,000となる。また、この方法で
製造すれば十分に再結晶が行われるため、圧延時にある
程度の集合組織が導入された場合にも、熱処理後にはほ
ぼ消滅し、板面内のどの方向で測定してもほぼ同じ透磁
率を示す。
【0020】すなわち本発明によれば、上述の鋼の成分
組成を有するとともに、適切な圧延および熱処理条件に
より、結晶粒径を150 〜300 μm、好ましくは180 〜25
0 μmの範囲に制御すれば、μmax が16,000〜20,000、
好ましくは17,000〜19,000のの範囲の高い透磁率を安定
して有し、強度、靱性、溶接性にも優れた磁気シールド
構造用鋼が得られる。
【0021】次ぎに本発明の限定理由を説明する。C
は、本発明の成分組成では主としてCr炭化物を形成し、
熱処理昇温過程での粒界析出によって微量であっても均
一粒成長を著しく阻害する元素である。しかし、0.007%
以下であれば800 ℃以上ではほとんど固溶するので、熱
処理温度を800 ℃以上とすることにより均一粒成長が可
能となる。そのため0.007%以下に低減する。
【0022】Siは、強化に有効であり、フェライトフォ
ーマー(Ac1 を上昇させる)であるため、粗粒化にも有
利である。その効果は0.5%以上で顕著であるが、2%超
では靱性を低下させるため、0.5%以上、2%以下に限定
する。
【0023】Mnは、強化元素として有効であるが、オー
ステナイトフォーマーであり、特に1.5%超では第二相
(パーライト)を生成させ易く磁気特性低下の原因にな
る。そのため上限を1.5%以下とする。
【0024】Pは、フェライトフォーマーであり、また
切削性改善には有効であるが、非金属介在物を生成し、
磁気特性と靱性を低下させるので、添加する場合でも上
限を0.05%とする。
【0025】Sは、非金属介在物を生成して粒成長を阻
害し、かつ靱性も低下させるためできるだけ低減するこ
とが必要である。少なくとも0.005%以下とする。
【0026】Cuは、固溶強化により磁気特性を低下させ
ない強化元素で、0.2%以上で強化作用があるが、0.8%超
では析出し、磁気特性を低下させるため、添加量は0.2%
以上、0.8%以下とする。
【0027】Niは、粗粒のフェライト単相鋼の靱性を向
上させるので0.3%以上の添加は必須である。しかしその
効果は1.5%程度で飽和し、またオーステナイトフォーマ
ーであることと、高価でもあり、1.5%を上限とする。
【0028】Crは、磁気特性を低下させないで強度を向
上させるので、1%以上の添加を行なう。Crは一般には
フェライトフォーマーであるが、本発明の成分組成範囲
では変態温度にほとんど影響しない。しかし、3%超で
は第二相(パーライト)を生成させ易く磁気特性低下の
原因になるため、上限を3%とする。
【0029】Alは、AlN を粗大にして粗粒化に有害な微
細AlN 析出を避けるため、0.2%以上添加する。フェライ
トフォーマーとしても効果が大きい。N固定効果のため
には0.2%以上程度で十分であり、また0.8%超ではAc1 が
高くなり過ぎ結晶粒制御が困難になることから、上限は
0.8%とする。
【0030】Nは、固溶状態としても窒化物として析出
しても磁気特性を低下させるため、できるだけ低減する
ことが望ましく、0.007%以下とする。
【0031】Moは、0.05%以上の添加により、強化元素
として有効であるが、オーステナイトフォーマーであ
り、また炭化物を形成しやすいので磁気特性には不利で
ある。そのため添加する場合、上限は0.5%とする。
【0032】Bは、強度を向上させる元素であるが、効
果は0.0003%以上でほぼ一定であり、また、過剰添加は
靱性を阻害するので、添加する場合の上限は0.005%とす
る。
【0033】製造条件については、加熱温度は、通常の
厚板圧延の加熱であるAc3 以上でよい。圧延は、熱処理
前の結晶粒の状態と、結晶粒成長の駆動力となる圧延歪
量を一定範囲に制御し、かつ強い集合組織を導入しない
条件とする。Ar3 温度以下での圧下率を20%以上とする
のは、適度な圧延歪を導入するためであるが、圧下率が
40%を超えると強い集合組織が導入される場合があるの
で、圧下率の上限は40%とする。圧延仕上温度は、高す
ぎると圧延歪量が十分でなく、低すぎると圧延組織が伸
長粒になるため均一粒成長の妨げになり、また強い集合
組織が導入されることもあるため、Ar1 ℃−20℃〜Ar1
−50℃のフェライト高温域に限定する。
【0034】圧延後の熱処理温度は、本発明の主たる要
件のひとつであり、上述のように、THT= 800 + 0.74
×(Ac1−850)(℃)の式で計算される温度THT付近で十
分に保持する熱処理を行なうことにより、成分組成にか
かわらず常にほぼ一定の結晶粒径を得るのである。具体
的には、THT±25℃で熱処理を行なうことで、150 〜30
0 μmの範囲の結晶粒径が安定して得られる。この場合
のμmax は16,000〜20,000となる。さらに好ましくは、
熱処理温度を精度良くTHT±15℃とすれば、結晶粒径は
ほぼ180 〜250 μmとなり、この場合のμmax は、17,0
00〜19,000となる。ただし、炭化物が固溶しきれない80
0 ℃未満では、均一粒成長は成し得ず、また、930 ℃超
では粒成長速度が速くなるために、まれに異常粒成長が
生じるなど結晶粒径制御が不安定になるので、熱処理温
度範囲は上記関係を満たしつつ、800 ℃〜930 ℃に限定
する。
【0035】
【実施例】表1に示す成分組成の鋼片を作製し、表2に
示す製造条件で5〜100mm 厚さの厚鋼板を製造した。表
中、下線で示しすものは特許範囲を逸脱しているとこ
ろ、または各特性の目標値に達していないところであ
る。各特性の目標値は、最大透磁率μmax ≧16,000、引
張強さ≧400MPa、靱性 0℃シャルピー吸収エネルギー≧
50J とした。表2に示す厚鋼板のうち1-A 〜8-G は本発
明例であり、9-H 〜30-Aは比較例である。これらの鋼板
について、表2に示す製造条件で製造したものの各種特
性を表2に示す。
【0036】鋼板1-A 〜8-G の実施例は、いずれも結晶
粒径が150 〜300 μmの範囲にあり、μmax も16,000〜
20,000の範囲にある。特に、熱処理温度をTHT±15℃の
範囲とした1-A 〜4-D および7-F 〜8-G では、結晶粒径
が180 〜250 μmの範囲にあり、μmax も17,000〜19,0
00の範囲にある。さらに鋼板1-A 〜8-G の実施例は、強
度、靱性ともに良好である。これに対し、比較例9-H は
C が高いため結晶粒径が小さく、透磁率が低い。10-Iは
Siが低いため、15-NはCuが低いため、18-QはCrが低いた
め、それぞれ強度が不足している。11-JはSiが高いた
め、17-PはNiが低いため、22-UはAlが高いため、23-Vは
B が高いためそれぞれ靱性が低値である。12-KはMnが高
いため、13-LはP が高いため、14-MはS が高いため、16
-OはCuが高いため、19-RはCrが高いため、20-SはMoが高
いため、それぞれ靱性が低値であり、透磁率も低い。21
-TはAlが低いため、結晶粒径が小さく、透磁率が低い。
また、比較例25-Aは加熱温度がAc3 に達しておらず、26
-AはAr3 以下での圧下率が低いため、27-Aは逆に高すぎ
るため、29-Aは熱処理温度が低いため、それぞれ結晶粒
成長が不十分で、透磁率が低い。30-Aは、熱処理温度が
高いため、結晶粒が粗大になりすぎ、靱性が低い。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、均質で安定した高透磁
率と高磁束密度、普通鋼並以上の強度と靱性を備える、
優れた磁気シールド構造用鋼およびその厚鋼板が得ら
れ、その工業界への効果は極めて大きい。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.007%以下、Si:0.5%以
    上、2%以下、Mn:1.5%以下、P:0.05%以下、S:0.00
    5%以下、Cu:0.2%以上、0.8%以下、Ni:0.3%以上、1.5%
    以下、Cr:1%以上、3%以下、Al:0.2%以上、0.8%以下、
    N:0.007%以下を有し、残部Feおよび不可避的不純物か
    らなり、フェライト単相組織を有しかつその結晶粒径が
    150μm〜 300μmであることを特徴とする磁気シール
    ド構造用鋼。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の鋼と同一組成を有する鋼
    に、さらに、重量%で、Mo:0.05%以上、0.5%以下、
    B:0.0003%以上、0.005%以下の強化元素群のなかから
    1種または2種含み、残部Feおよび不可避的不純物から
    なり、フェライト単相組織を有しかつその結晶粒径が15
    0 μm〜300 μmであることを特徴とする磁気シールド
    構造用鋼。
  3. 【請求項3】重量%で、C:0.007%以下、Si:0.5%以
    上、2%以下、Mn:1.5%以下、P:0.05%以下、S:0.00
    5%以下、Cu:0.2%以上、0.8%以下、Ni:0.3%以上、1.5%
    以下、Cr:1%以上、3%以下、Al:0.2%以上、0.8%以下、
    N:0.007%以下を有し、残部Feおよび不可避的不純物か
    らなる鋼片を、Ac3 点以上の温度に加熱し、Ar3 温度以
    下での圧下率が20%〜40%で、圧延仕上温度がAr1 ℃−
    20℃〜Ar1 −50℃となるように圧延を行って板厚4.5mm
    以上の厚鋼板とした後、800 ℃以上 930℃以下で、かつ
    下記の式で計算される熱処理温度THT±25℃の範囲で、
    120 分以上保持する熱処理を行なうことを特徴とする板
    厚4.5mm 以上の磁気シールド構造用厚鋼板の製造方法。
    ここでTHTは、鋼材のAc1 温度との関係から導かれる結
    晶粒径制御のための熱処理温度で、THT= 800 + 0.74
    ×(Ac1−850)(℃)である。
  4. 【請求項4】請求項3に記載の鋼片と同一組成を有する
    鋼片に、さらに、重量%で、Mo:0.05%以上、0.5%以
    下、B:0.0003%以上、0.005%以下の強化元素群のなか
    から1種または2種含み、残部Feおよび不可避的不純物
    からなる鋼片を、Ac3 点以上の温度に加熱し、Ar3 温度
    以下での圧下率が20%〜40%で、圧延仕上温度がAr1 ℃
    −20℃〜Ar1 −50℃となるように圧延を行って板厚4.5m
    m 以上の厚鋼板とした後、800 ℃以上 930℃以下で、か
    つ下記の式で計算される熱処理温度THT±25℃の範囲
    で、120 分以上保持する熱処理を行なうことを特徴とす
    る板厚4.5mm 以上の磁気シールド構造用厚鋼板の製造方
    法。ここでTHTは、鋼材のAc1 温度との関係から導かれ
    る、結晶粒径制御のための熱処理温度で、THT= 800 +
    0.74 ×(Ac1−850)(℃)である。
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