JP2000221185A - 鉄鋼中のほう素分析方法および装置 - Google Patents

鉄鋼中のほう素分析方法および装置

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JP2000221185A
JP2000221185A JP11026166A JP2616699A JP2000221185A JP 2000221185 A JP2000221185 A JP 2000221185A JP 11026166 A JP11026166 A JP 11026166A JP 2616699 A JP2616699 A JP 2616699A JP 2000221185 A JP2000221185 A JP 2000221185A
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vessel
cooling
boron
distilling
container
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Kunimasa Takahashi
邦正 高橋
Akio Awayama
昭男 粟山
Fumio Kamimoto
文夫 神本
Yuji Tateno
雄二 立野
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高度な測定や分析の技術を必要としないで
も、鉄鋼中のほう素を高精度で安定して分析可能とす
る。 【解決手段】 鉄鋼試料20は、溶解容器12中で、王
水21によって溶解される。溶解容器12は、下方から
ヒータ22で加熱される。溶解容器12の上には溜出容
器13および冷却容器14が連結される。溜出容器13
にはコック15が設けられ、硫酸とりん酸との混酸を貯
留しておく。溶解容器12からの蒸発成分は、側管16
から冷却容器14の内管17内に導かれ、流水で冷却さ
れて凝集し、内管17の内壁から滴下して、溜出容器1
3内に溜る。コック15を開けば、混酸が鉄鋼試料20
を溶解し、冷却容器14からの滴下液も含めて、溶解容
器12内にほう素を含む溶液が得られる。ほう素が揮発
しても、冷却容器14の内壁に付着して回収され、損失
を防ぐことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄鋼材料中のほう
素の含有量を調べるための鉄鋼中のほう素分析方法およ
び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、鉄鋼材料にほう素(B)を含
有させると、種々の特性が改善されることが知られてい
る。たとえば機械的強度が向上したり、放射線の吸収能
が向上したりすることが期待される。
【0003】鉄および鋼中のほう素の含有量を分析する
方法としては、たとえばJIS G1227-1992に、
「鉄及び鋼中のほう素定量方法」として日本工業規格が
定められている。JISの規定では、ほう素含有率0.
10%以上5.0%未満の試料に、蒸留分離水酸化ナト
リウム滴定方法が適用される。図7に、JIS規格に従
ってほう素を定量分析するための蒸留器の例を示す。蒸
溜器は、蒸留フラスコ1、冷却管2および受器3を、主
要な構成要素として含む。蒸留フラスコ1内には分析対
象となる試料を移し入れておき、試薬注入管4の上部の
試薬受け5に所定の試薬を貯留し、コック6を開いて試
料の溶解を行う。試料の溶解の際には、蒸留フラスコ1
の底部から加熱も行う。試料中のほう素は蒸発し、キャ
リヤガス導入口7から導入されるキャリヤガスで分岐管
8を経て冷却管2に搬送される。冷却管2内で冷却され
た水蒸気などは凝縮し、冷却管流出口9から受器3中に
溜まってくる。受器3に溜まった蒸留液を定量分析すれ
ば、試料中のほう素含有量を求めることができる。
【0004】図8は、図7に示すような蒸溜器を用いて
行うJIS G 1227-1992に規定されている蒸留分
離水酸化ナトリウム滴定法の概略的な操作手順を示す。
ステップa1では、試料を秤量する。秤量値は、ほう素
含有率が0.10%以上0.50%未満では1.0g、
0.50%以上1.5%未満では0.50g、1.5%
以上3.0%未満では0.20g、3.0%以上5.0
%未満では0.10gと定められている。計り取られた
試料は、ステップa2で蒸留フラスコ1内に移し入れら
れる。蒸留フラスコ1は、たとえば200mlの容積を
有し、塩酸(HCl)10mlおよび硝酸(HNO3
5mlが加えられる。このような塩酸および硝酸の組合
せは、王水とも呼ばれている。試料は王水によって溶解
され、ステップa3では室温での溶解が終了するまで放
置する。試料の溶解が進まなくなると、ステップa4で
加熱して、さらに試料を分解させる。加熱して試料が分
解すると、リン酸(H3PO4)10mlおよび硫酸(H
2SO4)5mlを加え、引き続き加熱する。ステップa
5では硫酸白煙が発生する。ステップa6では、硫酸白
煙の発生後、290±10℃で30分間加熱し、ステッ
プa7で放冷する。ステップa6の加熱は、ガラス製温
度計または熱電対を入れて温度の確認をしながら行う。
【0005】ステップa8では、80g/lの水酸化ナ
トリウム(NaOH)溶液を5ml入れ、冷却管流出口
9の先端がその水酸化ナトリウム溶液の中に浸るように
する。蒸溜フラスコ1内に回転子10を入れ、外部から
電磁的に回転させる。冷却管2には10℃以下の冷水を
通し、蒸溜フラスコ1内にはメタノールを50mlだ
け、試薬注入管3から少しずつ加える。蒸溜フラスコ1
内に受器3中の溶液が逆流しない程度にキャリヤガス導
入口7からキャリヤガスを送りながら、15〜20分間
で30mlを蒸溜するように加熱器で加熱する。受器3
中の液量が35mlになったら加熱を止め、蒸留手順を
終了する。次に、冷却管流出口5の先端を少量のメタノ
ールで洗浄し、ステップa9の抽出手順を終了する。ス
テップa10では、ステップa9までで得られる蒸溜溶
液および洗い液を白金皿または四フッ化エチレン樹脂ビ
ーカなどに少量のメタノールで洗い移し、沸騰しない程
度に加熱してメタノールを揮散させ、さらに加熱を続け
て固形分を残すように蒸発乾固させる。
【0006】ステップa11では、ステップa10で蒸
発乾固した蒸発残留物に少量の水を加え、加熱して蒸発
残留物を溶解させる。次にビーカに水を用いて移し入
れ、水を加えて液量を150mlとする。次にビーカを
時計皿で覆い、硫酸(1+5)20mlを加えて加熱
し、ステップa11で約10分間煮沸して二酸化炭素を
追い出す。次いで冷却した後、時計皿の下面およびビー
カの内壁を水で洗って時計皿を取り除き、pH計の電極
を溶液中に挿入し、溶液を回転子10で掻きまぜながら
水酸化ナトリウム溶液(200g/l)を加えて、pH
を6.0〜6.5の範囲に調整する。ビーカの内壁を少
量の水で洗い、さらに0.05mol/lの水酸化ナト
リウム標準液を用いて、pH=6.8となるように調節
する。ステップa13では、pHを6.8に調節した溶
液中に、マンニトール7gを加え、溶解したらステップ
a14で0.05mol/lの濃度の水酸化ナトリウム
標準溶液を滴下して、pHが正確に6.8となるまでに
使用する水酸化ナトリウム標準溶液の量を求める滴定を
行う。このようにして求められる水酸化ナトリウム標準
溶液の使用量をV1mlとする。ステップa1およびス
テップa2のような試料の秤量および蒸溜フラスコ1中
への移し入れを行わないで、試薬のみを用いて同様な定
量分析を行い、得られる水酸化ナトリウム標準溶液の使
用量をV2とする。ほう素含有率は、次の第1式に従っ
て算出することができる。
【0007】
【数1】
【0008】ここで、fは、0.05mol/l水酸化
ナトリウム標準溶液1mlに相当するほう素量(g)を
示し、mはステップa1での試料の秤量値(g)を示
す。水酸化ナトリウム標準溶液1mlに相当するほう素
量fは、予め標準ほう素溶液を作製して所定の操作手順
で求めておく。
【0009】ほう素の定量分析方法としては、図8に示
すような蒸溜分離水酸化ナトリウム滴定法ばかりではな
く、誘導結合プラズマ発光分光分析法を適用することも
できる。誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いてほう
素含有率を求める先行技術は、たとえば特開昭56−1
12649などに開示されている。この先行技術では、
ガラス結晶化法で製造される磁性材料や非晶質合金中の
ほう素の分析を、密閉分解器内に収納し、無機酸ととも
に120〜250℃に加熱して溶解させ、溶液を誘導結
合プラズマ発光分光分析法で定量分析するようにしてい
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】図8に示すような手順
での定量分析では、ステップa3での室温放置で約30
分の時間を要し、さらにステップa6の加熱で290±
10℃で30分間加熱しなければならない。また、ステ
ップa7までは、冷却管流出口9が大気中に露出されて
おり、ステップa8で受器3を冷却管流出口9の先端に
配置する操作を必要とする。また、ステップa10で試
料からの溶解物を一旦蒸発乾固させた後、ステップa1
1で再び溶解し煮沸する処理を行う必要もある。このよ
うに繁雑な作業手順を必要とするので、鉄鋼材料の生産
の際に、熟練していない作業者が分析すると、時間がか
かり、しかも正確な分析を行うことが困難である。
【0011】また、ほう素は温度を上げると揮発しやす
く、図8のステップa3からステップa6まででは、加
熱しながら冷却管流出口9の先端を大気中に開放してい
るので、揮発したほう素が大気中に流出してしまい、定
量分析値に誤差を生じてしまう。また、溶解や抽出処理
を1つの試料毎に行うと、時間的な条件の違いなどによ
っても、種々の誤差が生じやすい。
【0012】本発明の目的は、高度な測定や分析の技術
を必要としないでも高精度で安定した分析を行うことが
でき、しかもほう素の揮発も防止することができる鉄鋼
中のほう素分析方法および装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、鉄鋼試料を酸
溶液中で加熱溶解させ、溶液の冷却後にほう素の定量分
析を行う方法において、秤量した鉄鋼試料を溶解容器中
に移し入れて、第1の酸溶液を加え、溶解容器上に、下
部に開閉弁を備え、開閉弁よりも下方から上部に連通す
る側管を有する溜出容器を連結して、開閉弁を閉じた状
態で、第2の酸溶液を溜出容器内に貯留させ、溜出容器
上に、溜出容器の側管からの蒸発気体を冷却し、凝縮液
を溜出容器中に落下させる冷却容器を連結し、溶解容
器、溜出容器および冷却容器を連結して、一体化した状
態で溶解容器を加熱しながら、第1の酸溶液による鉄鋼
試料の溶解処理を行い、溜出容器の開閉弁を開けた状態
にして、第2の酸溶液による鉄鋼試料の溶解処理を行
い、溶解容器中の溶液を、冷却後に定量分析することを
特徴とする鉄鋼中のほう素分析方法である。
【0014】本発明に従えば、秤量した鉄鋼試料を溶解
する溶解容器には、第1の酸溶液を加えて鉄鋼試料の溶
解を行う。溶解容器上には溜出容器を連結し、溜出容器
中には第2の酸溶液を貯留させ、かつ第1の酸溶液によ
って鉄鋼試料を溶解する際に発生する蒸気を第2の酸溶
液を貯留する開閉弁よりも下方から溜出容器の上部に通
過させる側管を設けておく。側管から出る蒸気は、溜出
容器の上に連結される冷却管中で冷却され、凝縮液は溜
出容器中に落下して貯留される。溜出容器中には、開閉
弁を閉じた状態で、第2の酸溶液を貯留しておき、溶解
容器中での第1の酸溶液による溶解が終了してから、開
閉弁を開けた状態として、第2の酸溶液による鉄鋼試料
の溶解を行う。溶解容器中で溶解され、加熱によって蒸
発した成分は、溜出容器の側管を通って冷却管に導か
れ、凝縮して溜出容器中に落下する。開閉弁を開いた後
では、溜出容器中に落下した液は、さらに分解容器中に
移行する。したがって、最終的に蒸留によって得られる
溶液は分解容器中に貯留されるので、分解容器、溜出容
器および冷却容器を相互に連結して組み立てた状態で、
試料の溶解処理を行うことができ、作業手順で熟練を要
する部分が少なくなるので、迅速かつ安定した精度の高
い分析を行うことができる。また、試料中のほう素が揮
発しても、冷却管中で冷却される際に凝縮溶液中に捕捉
され、最終的には溶解容器中の溶液に回収されるので、
ほう素の流出がなく、正確な分析値を得ることができ
る。
【0015】また本発明で前記定量分析を、誘導結合プ
ラズマ発光分光分析装置を用いて行うことを特徴とす
る。
【0016】本発明に従えば、鉄鋼試料を溶解した後で
の定量分析を誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用い
て行うので、蒸留分離水酸化ナトリウム滴定法よりも簡
便にかつ迅速で正確な分析を行うことができる。
【0017】また本発明で複数組の前記溶解容器、溜出
容器および冷却容器を、前記一体化した状態で、同一の
熱源で溶解容器を加熱し、かつ同一の冷却源で冷却容器
を冷却することを特徴とする。
【0018】本発明に従えば、複数組の溶解容器、溜出
容器および冷却容器を一体化した状態で、同一の熱源で
加熱し、かつ同一の冷却源で冷却しながらほう素の分析
を行うことができるので、多くの試料を同一条件で分析
することができ、効率的でかつ正確な分析を行うことが
できる。
【0019】さらに本発明は、鉄鋼試料を酸溶液中で加
熱溶解させ、溶液の冷却後にほう素の定量分析を行う装
置において、秤量した鉄鋼試料を、下方から加熱しなが
ら酸溶液で溶解させるための溶解容器と、溶解容器の上
方に連結可能で、下部に開閉弁を備え、開閉弁よりも下
方から上部に連通する側管を有する溜出容器と、溜出容
器の上方に連結可能で、溜出容器の側管からの蒸発気体
を冷却し、凝縮液を溜出容器中に落下させるように、下
方から上方に延びる形状を有する冷却管を収納し、冷却
管の周囲を流水で冷却可能な冷却容器とを含むことを特
徴とする鉄鋼中のほう素分析装置である。
【0020】本発明に従えば、分解容器と溜出容器と冷
却容器とを連結して一体化した状態で、分解容器中の鉄
鋼試料を、最初に分解容器中に入れる試薬で分解し、さ
らに溜出容器中に貯留させておく試薬によって試料の溶
解を行うことができる。試料を溶解し、蒸発成分は、冷
却管で冷却され、凝縮して溜出容器中に落下し、開閉弁
が開いた状態でさらに蒸発容器中に落下するので、試料
中のほう素が揮発しても、水蒸気成分とともに回収し
て、精度の高い分析を行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の一形態と
しての還流冷却装置11の概略的な構成を示す。溶解容
器12は、三角フラスコであり、透明な石英ガラスを用
いて形成される。溶解容器12の内容積は、たとえば2
50mgである。溶解容器12上には、溜出容器13が
連結可能である。溜出容器13の下部は、溶解容器12
の上部の開口部に嵌合し、接触部分は擦り合わせ面を形
成して、気密状態で連結可能である。溜出容器13の上
部には開口部が設けられ、上方から冷却容器14を挿入
することができる。冷却容器14の下部と溜出容器13
の上部の開口部との接合部も、擦り合わせ面となって、
気密に連結することができる。溜出容器13の下部に
は、開閉弁であるコック15が設けられ、コック15を
閉じた状態で、溜出容器13内に溶液を貯留することが
できる。溜出容器13には、コック15の下方と上部と
の間を連通する側管16も設けられている。冷却容器1
4には、側管16の上部から溜出する蒸気が下方から上
方に向かって導かれる内管17が収納される。内管17
の周囲は、流水入口18から供給され、流水出口19に
流れる流水によって冷却される。溜出容器13および冷
却容器14は、たとえば商品名「パイレックス」と呼ば
れるような耐熱ガラスで形成される。
【0022】図1に示す還流冷却装置11は、溶解容器
12に鉄鋼試料20を挿入し、第1の酸溶液である王水
21で溶解する。この際に、溶解容器12の底面下方か
らヒータ22で加熱も行う。溜出容器13内には、第2
の酸溶液である、たとえば硫酸とリン酸との混合酸が貯
留されており、コック15を開くと、混合酸は溶解容器
12内に入り込み、鉄鋼試料20の溶解を続けることが
できる。溶解容器12から水蒸気とともに揮発するほう
素は、側管16を通って冷却容器14の内管17内に導
かれ、周囲の流水で冷却されて、内管17の内壁に付着
する。水蒸気も凝縮して内管17の内側に付着するの
で、水分とほう素とは内管17内を落下し、溜出容器1
3内またはコック15を通って溶解容器12内に集ま
る。
【0023】図2は、図1の還流冷却装置11を用いて
行う鉄鋼試料20中のほう素の定量分析の手順を示す。
本実施形態では、鉄鋼試料20中のほう素含有量が0.
10%以上1.3%未満の試料に適用する。分析に使用
する試薬としては、濃塩酸が2で濃硝酸が1の割合の混
酸である王水と、濃硫酸1、濃リン酸2および水1の割
合の混酸と、500μg/mlの標準ほう素溶液とを用
いる。標準ほう素溶液は、ほう酸1.430gを計り取
り、300mlのビーカに移し入れ、水約50mlで溶
解した後、500mlのフラスコに移し入れ、水を標線
まで注ぎ足して精製する。
【0024】図2のステップb1では、鉄鋼試料20の
計り取りを行う。秤量する鉄鋼試料20の重量は、ほう
素含有率が0.10%以上0.80%未満であれば0.
50gとし、ほう素含有率が0.80%以上1.30%
未満であれば0.30gとする。次にステップb2で、
計り取った試料を溶解容器12に移し入れる。これに王
水20mlを加えた後、溜出容器13を溶解容器12上
に連結する。溜出容器13は、ソックスレイ抽出器と呼
ばれる実験室で溶剤抽出を行う場合に使用するガラス機
器に類似する構成を有する。ただし、本実施形態での使
用方法は、ソックスレイ抽出器本来の使用方法とは異な
る。溜出容器13のコック15は閉じた状態とし、溜出
容器13内に混酸20mlを入れて貯留させる。さらに
冷却容器14を、溜出容器13の上方に連結し、溶解容
器12、溜出容器13および冷却容器14を一体化させ
た状態で、溶解容器12内の鉄鋼試料20が室温で分解
するように放置する。ステップb3で、約30分の室温
放置を終了すると、ステップb4で溶解容器12の底面
下方から加熱して王水による鉄鋼試料20の加熱分解を
行わせる。次にステップb5で、コック15を開けて、
溜出容器13中に貯留されている混酸を溶解容器12中
に移し入れ、硫酸白煙が発生するまで加熱して、ほう素
化合物を完全に分解させる白煙処理を行う。白煙処理で
ほう素化合物が完全に分解すれば、ステップb6で放冷
し、溶液を室温付近まで冷却する。ステップb7では、
冷却後に、溜出容器13内の容器を溶解容器12内に移
し入れ、さらに冷却容器14の内管17内を上方から水
で洗い、冷却容器14および溜出容器13を溶解容器1
2から取り外す。ステップb8では、溶解容器内の溶液
をよく振りまぜた後、5Aの濾紙を用いて250mlの
メスフラスコ内に濾過し、移し入れる。ステップb9で
は、メスフラスコに純水を注入して標線まで薄めるメス
アップを行う。次にステップb10で、誘導結合プラズ
マ発光分光分析(ICP)装置による測定で定量分析を
行う。本実施形態では、ステップb3の室温放置からス
テップb6の放冷まで、還流冷却装置11内に密閉した
状態で行うことができ、ほう素の揮発による損失を防ぐ
ことができる。
【0025】図3は、図2のステップb10で定量分析
に用いるICP装置30の原理的構成を示す。ICP装
置30は、高周波プラズマ発生装置31で試料溶液を含
むアルゴンガスのプラズマを発生させ、発光成分を、集
光レンズ32で集光し、分光装置33で所定の波長を有
する光の強度を、ほう素の量に対応する強度としてホト
マルなどを用いて測定する。高周波プラズマ発生装置3
1では、約6000℃の高温のプラズマを発生し、他の
元素とともに、ほう素についても特定の波長で存在の確
認およびその量の測定を行うことができる。日本工業規
格にも、JISG 1258-1989に「鋼の誘導結合プラ
ズマ発光分光分析方法」として、鉄を92wt%以上含
む鋼に適用され、ケイ素、マンガン、リン、ニッケル、
クロム、モリブデン、銅、バナジウム、コバルト、チタ
ンおよびアルミニウムの分析に用いることが規定されて
いる規格が存在する。誘導結合プラズマ発光分光分析方
法を、ほう素の分析に適用することが可能であること
も、たとえば前述の特開昭56−112649に示され
ている。ただしこの先行技術のように、完全に密閉され
た容器中で加熱分解を行う方法では、2種類の酸溶液を
使い分けるような溶解方法を採ることができず、効率的
にほう素の溶解と抽出を行うことができない。
【0026】図4は、本発明の実施の他の形態として、
図1に示すような還流冷却装置11を複数並べて一連化
し、複数の鉄鋼試料を分析するための同時処理が可能な
装置の構成を示す。分析テーブル40には、複数の還流
冷却装置11が同時に載置可能である。各還流冷却装置
11に対しては、加熱用のヒータ22がそれぞれ配置さ
れ、分析テーブル40が全体として一つの熱源となり、
全部の還流冷却装置11を下方から同時に加熱すること
ができる。還流冷却装置11は、流水供給チューブ41
から供給される流水を共通の冷却源として、冷却され
る。流水供給チューブ41は、1番目の還流冷却装置1
1の流水入口18に冷却用の流水を供給する。隣接する
還流冷却装置11間は連結チューブ42で連結され、上
流側の流水出口19から下流側の流水入口18まで冷却
用の流水が流れる。最後の還流冷却装置11の流水出口
19からは、流水排出チューブ43に流水が排出され
る。このような構成によって、多くの鉄鋼試料中のほう
素を迅速かつ容易に分析することができる。
【0027】図5は、ほう素を含む試料溶液に対して、
図4の装置を用いる方法と、JISに規定されている方
法とを適用して分析を行った結果の例を示す。図5
(a)は試料溶液として0.7%のほう素を含むように
調製した標準溶液についての分析結果を示し、図5
(b)はステンレス鋼の実試料についての分析結果を示
す。各試料について、Aでは本実施形態を適用した分析
結果を示し、BではJISに規定されている図8のよう
な分析方法を用いたときの分析結果を示す。なお、現行
のJISの規定は、図8のステップa3に示すように室
温放置を行っているけれども、これを行わずに王水を加
えて加熱して試料を分解する方法がかつてJISに規定
されていた。この旧JISの規定に従った分析結果を、
Cとして併せて示しておく。
【0028】図5(a)および(b)の分析結果に対す
る数値データを次の表1および表2にそれぞれ示す。な
お、「σ」は標準偏差、「d」は0.7%である目標値
からの平均値のずれ、「t0 」は各データのt検定用の
統計量、「回収率」は0.7に対する平均値の百分率で
ある。なお、n=6であるので自由度は5となり、t分
布におけるt(5%)=2.571、t(1%)=4.
032となり、JIS法や旧JIS法では元の母集団と
は異なる母集団についてのデータを分析するという仮定
が有意であることを示している。このことは、高温とな
ったほう素が揮発損失していることを裏付けていると考
えられる。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】図5(a)および表1に示す分析結果は、
ほう素を含有しないSUS304のステンレス鋼試料を
0.50g(または0.30g)を5個の石英三角フラ
スコに量り取り、これに、ほう素標準溶液(500μg
/ml)を、分析試料のほう素予想含有率を中心にして
前後2点を段階的に加え、以下、図2や図8に示す手順
に従って分析して得られる。本実施形態で誘導結合プラ
ズマ発光分光分析を行う際に用いる検量線溶液は、次の
表3に例示するように調製する。
【0032】
【表3】
【0033】誘導結合プラズマ発光分光分析に基づくI
CP測定では、各検量線溶液の発光強度を測定して、検
量線を作成しておく。鉄鋼試料の分析の際には、分析試
料のほう素含有率(%)に近似の検量線溶液を分析試料
の5,6試料毎に測定して誤差管理を行う。ほう素含有
率を求める計算は、試料溶液の測定前後に測定した検量
線溶液の測定値(%)の偏差とドリフトとを補正して行
う。
【0034】図6は、ICP測定の際に、イットリウム
(Y)を添加する内標準法が有効であるか否かについて
の測定結果を示す。図6(a)は0.6%ほう素(B)
試料について、生の強度に基づく含有率を示す。図6
(b)は、図6(c)に示すイットリウムの強度で補正
した内標準法による強度に基づく含有率を示す。イット
リウムとほう素とは挙動が異なるので、内標準法の効果
はほとんど認められない。したがって、生強度法を採用
することにしている。
【0035】ICP装置によるほう素の含有率の測定値
は偏差とドリフトとを含むため、5または6程度の実試
料についての分析の前後に、測定対象のほう素含率に近
い標準試料を測定し、標準値と測定値との差を補正する
ことが好ましい。
【0036】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、必要な機
器を一体化した状態で試料を溶解し、ほう素の揮発によ
る損失を防止することができるので、高度な測定技術が
なくても、高精度で安定した分析を行うことができる。
【0037】また本発明によれば、ほう素の定量分析を
誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いて行うので、
水酸化ナトリウムでの滴定などの方法よりも、簡単でか
つ迅速な定量分析を行うことができる。
【0038】また本発明によれば、複数の試料につい
て、同時処理で溶解や抽出を行うことができるので、誤
差を少なくして、効率的かつ迅速な分析を行うことがで
きる。
【0039】さらに本発明によれば、相互に連結して一
体化することができる溶解容器、溜出容器および冷却容
器を用い、鋼中のほう素の含有量を定量分析するための
溶解および抽出の作業を、高度な測定技術を有していな
い作業者でも、簡単かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態として、ほう素分析のた
めの還流冷却装置11の概略的な構成を示す簡略化した
斜視図である。
【図2】図1の還流冷却装置11を用いてほう素を分析
する手順を示すフローチャートである。
【図3】図2のステップb10で行うICP測定の概要
を示す図である。
【図4】本発明の実施の他の形態として、図1に示す還
流冷却装置11を複数個、一連化した装置の構成を示す
図である。
【図5】本発明によるほう素含有率の分析結果をJIS
法と比較して示すグラフである。
【図6】ICP装置によるほう素分析結果を、生強度法
とY内標準法とで比較して示すグラフである。
【図7】JISに規定のほう素分析装置の概要を示す図
である。
【図8】図7の装置を用いる分析手順を示すフローチャ
ートである。
【符号の説明】
11 還流冷却装置 12 溶解容器 13 溜出容器 14 冷却容器 15 コック 16 側管 17 内管 18 流水入口 19 流水出口 20 鉄鋼試料 21 王水 30 ICP装置 31 高周波プラズマ発生装置 33 分光装置 40 分析テーブル 41 流水供給チューブ 42 連結チューブ 43 流水排出チューブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神本 文夫 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社周南製鋼所内 (72)発明者 立野 雄二 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社周南製鋼所内 Fターム(参考) 2G043 AA01 BA01 BA07 CA03 DA02 EA08 GA07 GB28 HA01 JA04 LA02 NA01 NA11 NA13 2G055 AA03 BA01 CA28 DA08 DA25 DA38 EA04 EA10 FA02

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄鋼試料を酸溶液中で加熱溶解させ、溶
    液の冷却後にほう素の定量分析を行う方法において、 秤量した鉄鋼試料を溶解容器中に移し入れて、第1の酸
    溶液を加え、 溶解容器上に、下部に開閉弁を備え、開閉弁よりも下方
    から上部に連通する側管を有する溜出容器を連結して、
    開閉弁を閉じた状態で、第2の酸溶液を溜出容器内に貯
    留させ、 溜出容器上に、溜出容器の側管からの蒸発気体を冷却
    し、凝縮液を溜出容器中に落下させる冷却容器を連結
    し、 溶解容器、溜出容器および冷却容器を連結して、一体化
    した状態で溶解容器を加熱しながら、第1の酸溶液によ
    る鉄鋼試料の溶解処理を行い、 溜出容器の開閉弁を開けた状態にして、第2の酸溶液に
    よる鉄鋼試料の溶解処理を行い、 溶解容器中の溶液を、冷却後に定量分析することを特徴
    とする鉄鋼中のほう素分析方法。
  2. 【請求項2】 前記定量分析を、誘導結合プラズマ発光
    分光分析装置を用いて行うことを特徴とする請求項1記
    載の鉄鋼中のほう素分析方法。
  3. 【請求項3】 複数組の前記溶解容器、溜出容器および
    冷却容器を、前記一体化した状態で、同一の熱源で溶解
    容器を加熱し、かつ同一の冷却源で冷却容器を冷却する
    ことを特徴とする請求項1または2記載の鉄鋼中のほう
    素分析方法。
  4. 【請求項4】 鉄鋼試料を酸溶液中で加熱溶解させ、溶
    液の冷却後にほう素の定量分析を行う装置において、 秤量した鉄鋼試料を、下方から加熱しながら酸溶液で溶
    解させるための溶解容器と、 溶解容器の上方に連結可能で、下部に開閉弁を備え、開
    閉弁よりも下方から上部に連通する側管を有する溜出容
    器と、 溜出容器の上方に連結可能で、溜出容器の側管からの蒸
    発気体を冷却し、凝縮液を溜出容器中に落下させるよう
    に、下方から上方に延びる形状を有する冷却管を収納
    し、冷却管の周囲を流水で冷却可能な冷却容器とを含む
    ことを特徴とする鉄鋼中のほう素分析装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006241566A (ja) * 2005-03-07 2006-09-14 Fujitsu Ltd めっき液の建浴方法と銅めっき装置
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CN102252883A (zh) * 2011-05-03 2011-11-23 武钢集团昆明钢铁股份有限公司 测定直接还原铁中锰、磷、砷、钾、钠和铜含量的方法

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