JP2000198731A - 毒性の低減されたリポソ―ム - Google Patents

毒性の低減されたリポソ―ム

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JP2000198731A
JP2000198731A JP30719099A JP30719099A JP2000198731A JP 2000198731 A JP2000198731 A JP 2000198731A JP 30719099 A JP30719099 A JP 30719099A JP 30719099 A JP30719099 A JP 30719099A JP 2000198731 A JP2000198731 A JP 2000198731A
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polymer
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nonionic
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Yuji Kasuya
裕司 粕谷
Junichi Okada
純一 岡田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 血中滞留性を維持したまま毒性を軽減させた
リポソーム。 【解決手段】 正荷電化合物を、負に帯電した非イオン
性水溶性高分子で修飾されたリポソームの構成成分とし
て配合し、負の帯電状態を小さくすることにより、血中
滞留性を維持したまま毒性が軽減されたリポソーム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】生理的pHの水性媒体中にお
いて、負に帯電する非イオン性水溶性高分子で修飾され
たリポソームに対し、さらに正荷電化合物を構成成分と
して配合し、負の帯電状態を小さくするかまたは無帯電
にすることにより毒性が軽減された、非イオン性水溶性
高分子で修飾されたリポソームに関する。
【0002】
【従来の技術】生体内での薬物濃度の維持や薬物の血中
滞留性を確保するため、あるいは疾患部位への薬物のタ
ーゲティングを目的として、しばしばリポソーム等の微
粒子の薬物運搬体が利用されている。
【0003】リポソームの血中滞留性は、ポリエチレン
グリコール(polyethylene glycol。以下、PEGとす
る。)等の非イオン性水溶性高分子での修飾により微粒
子表面に水和構造を付与することによって高めることが
できる(K.Maruyamaら、Biochim. Biophys. Acta、44-4
9(1992)参照)。従って、非イオン性水溶性高分子に
よって修飾されたリポソームを薬物運搬体とすることに
よって薬物の血中滞留性を向上させることが行われてい
る。
【0004】このように、非イオン性水溶性高分子によ
って修飾された血中滞留性の高いリポソームは生医学分
野において有用性が広く認められている(A.Rolland
編、「Pharmaceutical particulate carriers: therap
eutic applications」、 MarcelDekker Inc.(1993)/
D.LasicとF.Martin(編)、「Stealth liposomes」、
CRC Press(1995)参照。)。
【0005】しかしながら、修飾に利用される非イオン
性水溶性高分子は溶血等の毒性がある(特開平7-173079
公報参照。)にもかかわらず、該高分子を構成成分とす
るリポソームの毒性に関しては知られていない(D.D.La
sic、「Liposomes: from physics to applications」,
Elsevier Science Publishers,pp.305-307(1993)参
照。)。
【0006】更に、非イオン性水溶性高分子で修飾され
た負荷電脂質、正荷電脂質、中性脂質から構成されるリ
ポソームはすでに開示されている(特表平10-506395号
公報参照。)。しかしそのリポソームの帯電状態及び毒
性については明らかにされていない。
【0007】
【本発明が解決しようとする課題】本発明者らは、非イ
オン性水溶性高分子によって修飾されたリポソーム自体
に毒性が存在することを見出した。そこで、その毒性の
軽減を図ることで該リポソームの有用性が増大すると考
え、リポソームの毒性の低減について鋭意検討した。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、生理的p
Hの水性媒体中において、負に帯電する非イオン性水溶
性高分子で修飾されたリポソームに対し、さらに正荷電
化合物を構成成分として配合し、負の帯電状態を小さく
するかまたは無帯電とすることにより、毒性が軽減され
ることを見出し、上記課題を解決した。
【0009】すなわち、本発明は生理的pHの水性媒体
中において負に帯電する非イオン性水溶性高分子で修飾
されたリポソームに対し、さらに正電荷化合物を構成成
分として配合し、負の帯電状態を小さくするかまたは無
帯電としたリポソームに関する。
【0010】本発明において正荷電化合物とは、生理的
pH、すなわち約pH6.5乃至7.5の水性媒体中に
おいて負荷電より多くの正荷電を有する化合物である。
【0011】本発明において使用される正荷電化合物と
しては正荷電脂質、カチオン性界面活性剤またはカチオ
ン性水溶性高分子を挙げることができる。また、これら
は1種または2種以上を用いることができる。
【0012】ここに正荷電脂質としては、例えば ステアリルアミンのようなアルキルアミン類; 3−β−[N−(N′、N′−ジメチルアミノエタ
ン)カルバモイル]コレステロールのようなコレステロ
ールのアミン誘導体; N−α−トリメチルアンモニオアセチルジドデシル
−D−グルタメートクロライドのようなN−α−トリメ
チルアンモニオアセチルジ(炭素数10乃至20のアル
キルまたはアルケニル)−D−グルタメートクロライド
類; N−[1−(2、3−ジオレイルオキシ)プロピ
ル]−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロライド
のようなN−[1−(2、3−ジ(炭素数10乃至20
のアルキルまたはアルケニル)オキシ)プロピル]−
N、N、N−トリメチルアンモニウムクロライド類;の
ような正荷電脂質が挙げられる。
【0013】ここに、上記アルキル基としては例えば、
ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデ
シル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イ
コシル、ドコシル、テトラコシル、ヘキサコシル、オク
タコシル、トリアコンタシル基等が挙げられる。
【0014】これらのアルキル基は、好適には炭素数5
乃至30のアルキル基であり、より好適には炭素数10
乃至20のアルキル基である。
【0015】上記「炭素数10乃至20のアルキルまた
はアルケニル」基としては、例えば、デシル、ウンデシ
ル、ドデシル、トリデシリル、テトラデシル、ペンタデ
シル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノ
ナデシル、イコシル、デセニル、デシニル、ウンデシニ
ル、ドデシニルまたはトリデシニル基等が挙げられる。
【0016】これらの正荷電脂質のうち、好適にはアル
キルアミン、N−α−トリメチルアンモニオアセチルジ
(炭素数10乃至20のアルキルまたはアルケニル)−
D−グルタメートクロライドが挙げられ、さらに好適に
はN−α−トリメチルアンモニオアセチルジドデシル−
D−グルタメートクロライドが挙げられる。
【0017】本発明においては、特にカチオン性界面活
性剤およびカチオン性水溶性高分子も正荷電化合物とし
て使用できる。
【0018】ここにカチオン性界面活性剤としては、当
業者周知( M. J. Rosen(著)、坪根および坂本(監
訳)「界面活性剤と界面現象」、pp.16-20、フレグラン
スジャーナル社(1995)参照。)の界面活性剤を挙げる
ことができる。
【0019】このようなカチオン性界面活性剤として
は、例えば 下記式で示される長鎖アルキルアミンまたはその塩
【0020】
【化1】 [式中、R1乃至R3の少なくともひとつがアルキル基を
示し、他は有機基を示す。]であり、例えばステアリル
アミンまたはジメチルステアリルアミン等; 下記式で示される長鎖アルキルまたは長鎖アラルキ
ル第4級アンモニウム塩
【0021】
【化2】 [式中、R1乃至R4の少なくともひとつがアルキル基ま
たはアラルキル基を示し、他は有機基を示す。X-は1
価の負イオンを示す。]であり、例えばトリメチルステ
アリルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム
または塩化ベンゼトニウム等; N−長鎖アルキル含窒素芳香族第4級アンモニウム
塩 [ここに、N−長鎖アルキルとは、芳香環に含まれる窒
素原子にアルキル基が結合してアンモニウムイオンとな
っており、1価の負イオンと対を形成している。]であ
り、例えばN−ステアリルピリジニウムクロライド等; 下記式で示されるポリオキシエチレン付加長鎖アル
キルアミンまたはその塩
【0022】
【化3】 [式中、R5はアルキル基、nは1乃至20の整数を示
す。]であり、例えばN、N−ジポリオキシエチレンステ
アリルアミン等; 下記式で表されるポリキシエチレン付加長鎖アルキ
ル第4級アンモニウム塩
【0023】
【化4】 [式中、R6およびR7のうち、少なくともひとつがアル
キル基を示し、他は有機基を示す。X-は1価の負イオ
ンを示す。]であり、例えばN、N−ジポリオキシエチレ
ン−N−メチルステアリルアミンクロライド等; 下記式で示される長鎖アルキルアミンオキシド
【0024】
【化5】 [式中、R8乃至R10のうち少なくともひとつはアルキ
ル基を示し、他は有機基を示す。]であり、例えばN、N
−ジメチルステアリルアミンオキシド等;などが挙げら
れる。
【0025】上記乃至のアルキル基としては例え
ば、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、
ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシ
ル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、ヘキサコシ
ル、オクタコシル、トリアコンタシル基等が挙げられ
る。
【0026】これらのアルキル基は、好適には炭素数5
乃至30のアルキル基であり、より好適には炭素数10
乃至20のアルキル基である。
【0027】上記アラルキル基としては、例えばベンジ
ル、フェネチル基等が挙げられ、好適にはベンジル基で
ある。
【0028】これらのアラルキル基のアルキル部分は、
好適には炭素数1乃至10のアルキル基であり、より好
適には炭素数1乃至5のアルキル基である。
【0029】上記1価の負イオンとしては、例えばハロ
ゲンイオンが挙げられ、好適には塩素イオン、臭素イオ
ン、ヨウ素イオンであり、さらに好適には塩素イオンで
ある。
【0030】これらのカチオン性界面活性剤のうち好適
には、長鎖アルキルアミンまたはその塩、長鎖アルキル
または長鎖アラルキル第4級アンモニウム塩、ポリオキ
シエチレン付加長鎖アルキルアミンまたはその塩、ポリ
オキシエチレン付加長鎖アルキル第4級アンモニウム塩
および長鎖アルキルアミンオキシドが挙げられ、さらに
好適には長鎖アルキルアミンまたはその塩、長鎖アルキ
ルまたは長鎖アルケニル第4級アンモニウム塩およびポ
リオキシエチレン付加長鎖アルキルアミンまたはその塩
が挙げられ、特に好適には長鎖アルキルアミンまたはそ
の塩が挙げられる。
【0031】これらのカチオン性界面活性剤は高濃度に
おいてリポソームを崩壊させるが、少量であればリポソ
ームに包含され構成成分とすることができる(Urbaneja
ら、Biochem. J. 270、305-308(1990)参照。)。従っ
て、リポソームの形成を阻害しない量のカチオン性界面
活性剤を配合するか、または形成されたリポソームを崩
壊させない量のカチオン性界面活性剤を配合するか、あ
らかじめ製造されたリポソームの分散液中にカチオン性
界面活性剤を添加しリポソーム表面に吸着させることに
よって、該リポソームの構成成分のひとつとし、高分子
修飾リポソームの負の帯電状態を小さくすることができ
るのである。
【0032】さらに、本発明において使用されるカチオ
ン性水溶性高分子としては、当業者周知( G.Allenら
(編)、「Comprehensive polymer science」vol.6、Pe
rgamonPress(1989)参照。)の、カチオン性水溶性高
分子を挙げることができる。
【0033】このようなカチオン性水溶性高分子として
は、例えば ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリアミ
ン類,ポリ−N、N−ジメチルアミノエチルアクリレー
ト、ポリ−N、N−ジメチルアミノエチルメタクリレー
ト、ポリ−N、N−ジエチルアミノエチルアクリレー
ト、ポリ−N、N−ジメチルアミノエチルメタクリレー
ト等のポリアクリレート類,等のカチオン性モノマー単
位と、ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、ビニ
ルピロリドン、ビニルオキサゾリドン、ビニルメチルオ
キサゾリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、
N-ビニルサクシンイミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビ
ニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N
-ビニル-N-メチルアセトアミド、2-ヒドロキシエチルメ
タクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,
N-ジメチルアクリルアミド、N-iso-プロピルアクリルア
ミド、ジアセトンアクリルアミド、メチロールアクリル
アミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピロリ
ジン、アクリロイルピペリジン、スチレン、クロロメチ
ルスチレン、ブロモメチルスチレン、酢酸ビニル、メチ
ルメタクリレート、ブチルアクリレート、メチルシアノ
アクリレート、エチルシアノアクリレート、n-プロピル
シアノアクリレート、iso-プロピルシアノアクリレー
ト、n-ブチルシアノアクリレート、iso-ブチルシアノア
クリレート、tert-ブチルシアノアクリレート、グリシ
ジルメタクリレート、エチルビニルエーテル、n-プロピ
ルビニルエーテル、iso-プロピルビニルエーテル、n-ブ
チルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエーテル、tert
-ブチルビニルエーテル等の2重結合をもつ非イオン性
化合物,から選択される少なくとも一つの非イオン性モ
ノマー単位とから構成されるカチオン性水溶性ビニル系
合成高分子; ポリリジン、ポリアルギニン等のカチオン性水溶性
ポリアミノ酸; リジン、アルギニン等のカチオン性アミノ酸のモノ
マー単位から選択される異なるモノマー単位から構成さ
れるカチオン性水溶性合成ポリペプチド; リジン、アルギニン等のカチオン性アミノ酸のモノ
マー単位とグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イ
ソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、セリン、ス
レオニン、アスパラギン、グルタミン等の非イオン性ア
ミノ酸のモノマー単位から選択される少なくとも一つの
モノマー単位から構成されるカチオン性水溶性合成ポリ
ペプチド; キトサン等の多糖類,アグルチニン、アコニター
ゼ、亜硝酸レダクターゼ、アスパラギナーゼ、アセチル
コリンエステラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、α−ア
ミラーゼ、β−アミラーゼ、アルブミン、インスリン、
エラスターゼ、エラスチンa、カルシトニン、グルカゴ
ン、コンカナバリンA、シトクロムc、DNAポリメラ
ーゼ、トランスフェリン、トロポニン、ヘモグロビン、
ラクトフェリン、リゾチーム、免疫グロブリンG等のタ
ンパク,などのカチオン性水溶性天然高分子; ジエチルアミノエチルデキストラン等のカチオン性
水溶性改変天然高分子; 乃至のカチオン性水溶性高分子から選択される
高分子と、該高分子とは異なる上述のカチオン性水溶性
高分子から選択される高分子とを構成単位とするカチオ
ン性水溶性高分子; 乃至のカチオン性水溶性高分子から選択される
高分子と、後述する非イオン性水溶性高分子とを構成単
位とするブロック共重合体またはグラフト共重合体; 乃至のカチオン性水溶性高分子から選択される
高分子と、例えばエチレン、プロピレンまたはジメチル
シロキサンなどの非水溶性高分子の構成単位であるモノ
マー単位とから構成されるブロック共重合体またはグラ
フト共重合体(ここに、該共重合体が水溶性または非水
溶性のいずれになるかは該高分子中の各々のモノマー単
位の比率および/または配列によって変化するが、本発
明で使用可能なカチオン性高分子は、水溶性となる比率
および/または配列のものである。);などが挙げられ
る。
【0034】これらのカチオン性水溶性高分子のうち、
好適にはカチオン性水溶性ビニル系合成高分子、カチオ
ン性水溶性ポリアミノ酸、カチオン性水溶性合成ポリペ
プチド、カチオン性水溶性天然高分子またはカチオン性
水溶性改変天然高分子が挙げられ、さらに好適にはカチ
オン性水溶性ビニル系合成高分子、カチオン性水溶性ポ
リアミノ酸またはカチオン性水溶性合成ポリペプチドが
挙げられ、特に好適にはカチオン性水溶性ビニル系合成
高分子が挙げられる。
【0035】これらカチオン性水溶性高分子の吸着は、
低分子化合物の吸着とは異なり、高分子の固体表面への
吸着は安定であり不可逆である( G.Allenら(編)、
「Comprehensive polymer science」vol. 2、pp.733-75
4、Pergamon Press(1989)参照。)。従って、カチオ
ン性水溶性高分子は負に帯電したリポソームに吸着する
ことによって該リポソームの負の帯電状態を小さくする
ことができるのである。
【0036】本発明の目的のリポソームにおいては、上
記の正荷電化合物を生理的pHの水性媒体中において負
に帯電する非イオン性水溶性高分子で修飾されたリポソ
ームに配合し、生理的pHの水性媒体中において負の帯
電状態を小さくするかまたは無帯電としたリポソームで
ある。
【0037】ここに水性媒体とは、 i) 水、 ii)緩衝液、 iii)水および/または緩衝液を50重量%以上含み、エ
タノール、ジメチルアセトアミド等の水溶性有機溶媒を
他の成分とする媒体、 iv)i)乃至 iii)のいずれかの媒体に電解質および/ま
たは糖類などの水溶性物質を溶解した媒体、のいずれか
を意味する。
【0038】また、正に帯電および正荷電とは、表面の
ゼータ電位が正であることを意味し、負に帯電および負
荷電とは、表面のゼータ電位が負であることを意味し、
無帯電とは、表面のゼータ電位が0であることを意味す
る。
【0039】本発明における非イオン性水溶性高分子で
修飾されたリポソームとは、 A) 脂質 および、 B) 非イオン性水溶性高分子が−CO(CH22CO
−基または−CO−基などを介するか、または直接脱水
縮合反応等により結合した(以下、「修飾」という。)
脂質が、膜状に集合したものならびに内部の水相から構
成される閉鎖小胞のことである(.Rolland編、「Pharma
ceutical particulate carriers: therapeutic applic
ations」、 Marcel Dekker Inc.(1993)/ D.Lasicと
F.Martin(編)、「Stealth liposomes」、 CRC Press
(1995)参照。)。
【0040】上記脂質としては、一般にリポソームの構
成成分として使用される中性脂質および負荷電脂質が挙
げられる。
【0041】ここに中性脂質とは、生理的pHの水性媒
体中において等しい正電荷数と負電荷数を有する脂質を
意味し、例えば ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチ
ジルエタノールアミンなどのホスファチド酸誘導体; ジガラクトシルグリセリド、ガラクトシルグリセリ
ドなどの糖脂質; スフィンゴミエリンなどのスフィンゴシン誘導体; コレステロール、エルゴステロール、ラノステロー
ルなどのステロール類;が挙げられる。
【0042】これらの中性脂質のうち、好適にはホスフ
ァチド酸誘導体、糖脂質またはステロール類であり、さ
らに好適にはホスファチド酸誘導体、ステロール類であ
り、さらにより好適にはホスファチド酸誘導体であり、
特に好適にはジ(炭素数10乃至22のアルカノイルま
たはアルケノイル)ホスファチジルコリンであり、最適
にはジパルミトイルホスファチジルコリンである。
【0043】ここに、「炭素数10乃至22のアルカノ
イルまたはアルケノイル」基としては、例えばデシリ
ル、ウンデシリル、ドデシル、トリデシリル、テトラデ
シリル、ペンタデシリル、ヘキサデシリル、ヘプタデシ
リル、オクタデシリル、ノナデシリル、イコシル、ヘニ
コシル、ドコシル、デセニル、ドデセニル、テトラデセ
ニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、イコセニルま
たはドコセニル基等が挙げられる。
【0044】また、ジ(炭素数10乃至22のアルカノ
イルまたはアルケノイル)とは、ホスファチジルコリン
の2つの水酸基に、それぞれ炭素数10乃至22のアル
キル基および/またはアルケニル基を有するカルボン酸
がエステル結合していることを意味する。
【0045】コレステロール等のステロール類はそれ自
体リポソームの構成成分として使用されるが、他の中性
脂質に加えて必要に応じて使用することができる。
【0046】負荷電脂質とは、生理的pHの水性媒体中
において正荷電より多くの負荷電を有する脂質を意味
し、例えば ジパルミトイルホスファチジルグリセロール等のホ
スファチジルグリセロール類; ジパルミトイルホスファチジルセリン等のホスファ
チジルセリン類; ジパルミトイルホスファチジルイノシトール等のホ
スファチジルイノシトール類;等の負荷電脂質が挙げら
れる。
【0047】これらの負荷電脂質のうち、好適にはホス
ファチジルグリセロール類であり、特に好適にはジパル
ミトイルホスファチジルグリセロールである。
【0048】上記非イオン性水溶性高分子で修飾された
脂質としては、例えば i)下記式で表されるN−(非イオン性水溶性高分
子)サクシニルホスファチジルエタノールアミン
【0049】
【化6】 [式中、−NH−PEはホスファチジルエタノールアミ
ンの窒素原子から水素原子1個が脱離した原子団を表
す。]であり、例えばN-モノメトキシポリエチレング
リコールサクシニルホスファチジルエタノールアミン, ii)下記式で表されるN−(非イオン性水溶性高分
子)カルボニルホスファチジルエタノールアミン
【0050】
【化7】 [式中、−NH−PEはホスファチジルエタノールアミ
ンの窒素原子から水素原子1個が脱離した原子団を表
す。]であり、例えばN-モノメトキシポリエチレング
リコールカルボニルホスファチジルエタノールアミン,
等の非イオン性水溶性高分子で修飾された負荷電脂質; 下記式で表される(非イオン性水溶性高分子)コレ
ステリルエーテル
【0051】
【化8】 [式中、-O-Chはコレステロールの水酸基と非イオン性
水溶性高分子がエーテル結合していることを表す。]で
あり、例えばポリオキシエチレンコレステリルエーテル
(H.Ishiwataら、Chem. Pharm. Bull. 43、1005-1011
(1995)参照。)等の非イオン性水溶性高分子で修飾さ
れた中性脂質; 下記式で示されるN−(非イオン性水溶性高分子)
サクシニル−2,3−ジアルカノイルオキシプロピルアミ
【0052】
【化9】 [式中、Rは炭素数10乃至20のアルキル基を表
す。]であり、例えばN−モノメトキシポリエチレング
リコールサクシニル−2,3−ジステアロイルオキシプロ
ピルアミン等の非イオン性水溶性高分子で修飾された正
荷電脂質;などが挙げられる。
【0053】これらの非イオン性水溶性高分子で修飾さ
れた脂質のうち、好適にはN−(非イオン性水溶性高分
子)サクシニルジ(炭素数10乃至22のアルカノイル
またはアルケノイル)ホスファチジルエタノールアミン
またはN−(非イオン性水溶性高分子)カルボニルジ
(炭素数10乃至22のアルカノイルまたはアルケノイ
ル)ホスファチジルエタノールアミンであり、さらに好
適にはN−(非イオン性水溶性高分子)サクシニルジス
テアロイルホスファチジルエタノールアミンまたはN−
(非イオン性水溶性高分子)カルボニルジステアロイル
ホスファチジルエタノールアミンであり、さらにより好
適にはN−(非イオン性水溶性高分子)サクシニルジス
テアロイルホスファチジルエタノールアミンであり、特
に好適にはN−モノメトキシポリエチレングリコールサ
クシニルジステアロイルホスファチジルエタノールアミ
ンが挙げられる。ここに、「炭素数10乃至22のアル
カノイルまたはアルケノイル」基としては、前述したの
と同意義を示す。またジ(炭素数10乃至22のアルカ
ノイルまたはアルケノイル)とは、ホスファチジルエタ
ノールアミンの2つの水酸基に、それぞれ炭素数10乃
至22のアルキル基および/またはアルケニル基を有す
るカルボン酸がエステル結合していることを意味する。
【0054】ここに前述した「非イオン性水溶性高分
子」とは、水や緩衝液等の水性媒体中において末端を除
いて解離基を有しない高分子または該高分子の末端をア
ルコキシとした高分子である。このような非イオン性水
溶性高分子としては、例えば ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、ビニル
ピロリドン、ビニルオキサゾリドン、ビニルメチルオキ
サゾリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-
ビニルサクシンイミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニ
ル-N-メチルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-
ビニル-N-メチルアセトアミド、2-ヒドロキシエチルメ
タクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,
N-ジメチルアクリルアミド、N-iso-プロピルアクリルア
ミド、ジアセトンアクリルアミド、メチロールアクリル
アミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピロリ
ジン、アクリロイルピペリジン、スチレン、クロロメチ
ルスチレン、ブロモメチルスチレン、酢酸ビニル、メチ
ルメタクリレート、ブチルアクリレート、メチルシアノ
アクリレート、エチルシアノアクリレート、n-プロピル
シアノアクリレート、iso-プロピルシアノアクリレー
ト、n-ブチルシアノアクリレート、iso-ブチルシアノア
クリレート、tert-ブチルシアノアクリレート、グリシ
ジルメタクリレート、エチルビニルエーテル、n-プロピ
ルビニルエーテル、iso-プロピルビニルエーテル、n-ブ
チルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエーテル、tert
-ブチルビニルエーテルなどのモノマー単位を構成成分
とする非イオン性のビニル系高分子または該高分子の末
端がアルコキシ化された高分子; グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイ
シン、プロリン、フェニルアラニン、セリン、スレオニ
ン、アスパラギン、グルタミンのようなアミノ酸から選
択されるいずれかひとつのモノマー単位を構成成分とす
る非イオン性ポリアミノ酸または該高分子の末端がアル
コキシ化された高分子; グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイ
シン、プロリン、フェニルアラニン、セリン、スレオニ
ン、アスパラギン、グルタミンのようなアミノ酸から選
択される2種以上のモノマー単位を構成成分とする非イ
オン性合成ポリペプチドまたは該高分子の末端がアルコ
キシ化された高分子; グリコール酸および乳酸から選択されるモノマー単
位を構成成分とする非イオン性ポリエステルまたは該高
分子の末端がアルコキシ化された高分子; メチレングリコール、エチレングリコール、n-プロ
ピレングリコール、iso-プロピレングリコール、ヒドロ
キシプロピレングリコールのようなグリコール類から選
択されるモノマー単位を構成成分とする非イオン性ポリ
エーテルまたは該高分子の末端がアルコキシ化された高
分子; デキストラン、ペクチン、プルランのような糖類な
どの、非イオン性天然高分子または該高分子の末端がア
ルコキシ化された高分子; メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース
のようなセルロース類などの非イオン性改変天然高分子
または該高分子の末端がアルコキシ化された高分子; 上記乃至の異なる2種以上の高分子を構成単位
とするブロック重合体またはグラフト共重合体または該
共重合体の末端がアルコキシ化された共重合体;などを
挙げることができる。
【0055】これらの非イオン性水溶性高分子のうち、
好適には非イオン性ポリエーテル、非イオン性ポリエス
テル、非イオン性ポリアミノ酸もしくは非イオン性合成
ポリペプチドまたはこれらの高分子の末端がアルコキシ
化された高分子であり、更に好適には非イオン性ポリエ
ーテルもしくは非イオン性ポリエステルまたはこれらの
高分子の末端がアルコキシ化された高分子であり、更に
より好適には非イオン性ポリエーテルまたは非イオン性
モノアルコキシポリエーテルであり、特に好適にはポリ
エチレングリコールまたはモノメトキシポリエチレング
リコールであり、最適にはモノメトキシポリエチレング
リコールである。また、これらの非イオン性水溶性高分
子の平均分子量は、好適には1000乃至12000で
あり、より好適には、1000乃至5000である。
【0056】前記リポソーム内部を構成する水相として
は、通常、塩化ナトリウム水溶液、一般に使用される各
種緩衝液、グルコース水溶液、トレハロース水溶液等が
挙げられる。
【0057】なお、卵黄レシチンおよび大豆レシチン等
のように、通常種々の炭素数および/または不飽和度を
有する脂質が混合した状態で入手できるものは、これら
を単一成分に分離精製することなく使用することができ
る。さらに、必要に応じて抗酸化作用等を目的として、
α−トコフェロール等の添加物を脂質構成成分として使
用することができる。
【0058】上記脂質の中で、保存時および生体中での
リポソームの形態安定性、物質透過性、対象とする薬物
の包含特性およびリポソームの体内動態特性等を考慮
し、種々の脂質の種類および混合比が選択される。
【0059】本発明における目的のリポソームの直径と
しては、そのサイズ調節法の種類により異なるが、その
製造可能な下限はおよそ20nm程度である(D.D.Lasi
c、「liposomes: from basic to applications」、Else
vier Science Publishers、pp.3-7(1993)参照。)。
本発明においてはリポソームサイズの下限についてはこ
れ以外の特別な制約は受けない。一方、上限について
は、血管内投与が可能な乳濁性注射剤の規格(第13改正
日本薬局方、日本公定書協会、pp.11(1996)参照。)
に従い、7μm以下であることが必要であり、血中滞留
性および/または腫瘍や炎症等の病体組織への集積性を
考慮して、体積平均粒子径として、好適には50乃至4
00nmが望ましく、さらに好適には50乃至100n
mが望ましい。
【0060】ここで、体積平均粒子径とは、複数の粒子
の平均体積から算定される粒子径の平均値を意味し、粒
子径測定機を使用して当業者周知の方法(例えば、R.
R. C.New、「Liposomes: a practical approach」、pp.
154-160、IRL Press(1989)参照。)によって算定する
ことができる。
【0061】微粒子表面のゼータ電位すなわち帯電状態
は、当業者周知の通り、電荷密度、ならびに媒体から吸
着する電解質の種類および量によって変化する(B. Jir
gensonsおよびM. E. Stramanis、「A short textbook o
f colloid chemistry (Second revised ed.)」、Perg
amon Press(1962)参照。)。従って、生理的pHの水
性媒体中において非イオン性水溶性高分子で修飾された
リポソームの帯電状態を負にする要因のひとつとして、
次式によって定義される電荷密度が負であることを挙げ
ることができる: 電荷密度=[(正電荷モル数−負電荷モル数)/(全脂
質モル数)]×100(%)。
【0062】リポソームに負電荷を供給する構成成分と
しては、既に述べたようにホスファチジルグリセロール
類、ホスファチジルセリン類、ホスファチジルイノシト
ール類等の負荷電脂質のほか、 N−モノメトキシポリ
エチレングリコールサクシニルジ(炭素数10乃至22
のアルカノイルまたはアルケノイル)ホスファチジルエ
タノールアミン、N−モノメトキシポリエチレングリコ
ールオキシカルボニルジ(炭素数10乃至22のアルカ
ノイルまたはアルケノイル)ホスファチジルエタノール
アミン等の非イオン性の水溶性高分子で修飾された負荷
電脂質を挙げることができる。
【0063】一方、電荷密度が0に近く電解質の吸着が
静電相互作用に強く依存しない場合には、陰イオンが優
先的に吸着する現象が一般的に認められている(B. Jir
gensonsとM. E. Stramanis(著)、玉虫文一(監訳)、
「コロイド化学」、培風館(1967)参照。)。
【0064】以上のことから、本発明において水溶性高
分子で修飾されたリポソームが生理的pHの水性媒体中
で「負の帯電状態にある」とは、実質的には次の(a)
乃至(c)のいずれかの場合をいう。 (a)非イオン性水溶性高分子で修飾された負荷電脂質
が、負に帯電したリポソームの構成成分として使用さ
れ、非イオン性水溶性高分子で修飾されたリポソームの
電荷密度が負となり、該リポソーム表面のゼータ電位が
負となる、 (b)非イオン性水溶性高分子で修飾された正荷電また
は中性の脂質が、リポソームの構成成分として使用さ
れ、そこに非イオン性水溶性高分子で修飾された正荷電
脂質または他の正荷電をもつ化合物に対して負荷電脂質
が過剰に含まれ、その結果非イオン性水溶性高分子で修
飾されたリポソームの電荷密度が負となり、該リポソー
ム表面のゼータ電位が負となる、 (c)非イオン性水溶性高分子で修飾されたリポソーム
の電荷密度が0に近く、水性媒体からの陰イオンの優先
的な吸着がおこり、該リポソーム表面のゼータ電位が負
となる。
【0065】本発明においては、これらいずれの場合の
負に帯電した非イオン性水溶性高分子で修飾されたリポ
ソームをも対象とするものであり、そこに正荷電化合物
を添加することにより「負の帯電状態を小さく」するも
のである。
【0066】ここに、本発明の目的のリポソームの負の
帯電状態が小さいとは、該リポソーム表面のゼータ電位
が、好適には−50mV以上0mV以下、さらに好適に
は−30mV以上0mV以下、特に好適には−20mV
以上0mV以下であることを意味する。
【0067】これらの(1)生理的pHの水性媒体中に
おいて負に帯電する非イオン性水溶性高分子で修飾され
たリポソームに対し、さらに正荷電化合物を構成成分と
して配合し、負の帯電状態を小さくするかまたは無帯電
としたリポソームにおいて、好適には、(2)構成成分
として正荷電化合物、脂質および非イオン性水溶性高分
子で修飾された脂質を含む、(1)記載のリポソーム、
(3)構成成分として正荷電化合物、中性脂質、負荷電
脂質および非イオン性水溶性高分子で修飾された負荷電
脂質を含む、(1)または(2)に記載のリポソーム、
(4)正荷電化合物が正荷電脂質、カチオン性界面活性
剤およびカチオン性水溶性高分子から選択される1種ま
たは2種以上である(1)乃至(3)から選択されるひ
とつに記載のリポソーム、(5)正荷電化合物が正荷電
脂質である(1)乃至(4)から選択されるひとつに記
載のリポソーム、(6)正荷電脂質がアルキルアミン、
3−β−[N−(N′、 N′−ジメチルアミノエタ
ン)カルバモイル]コレステロール、N−α−トリメチ
ルアンモニオアセチルジ(炭素数10乃至20のアルキ
ルまたはアルケニル)−D−グルタメートクロライドま
たはN−[1−(2、3−ジオレイルオキシ)プロピ
ル]−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロライド
から選択される1種または2種以上である(4)または
(5)記載のリポソーム、(7)正荷電脂質が、N−α
−トリメチルアンモニオアセチルジドデシル−D−グル
タメートクロライドである(4)乃至(6)から選択さ
れるひとつに記載のリポソーム、(8)正荷電化合物
が、カチオン性界面活性剤である(1)乃至(4)から
選択されるひとつに記載のリポソーム、(9)カチオン
性界面活性剤が、長鎖アルキルアミンまたはその塩、長
鎖アルキルまたは長鎖アラルキル第4級アンモニウム
塩、ポリオキシエチレン付加長鎖アルキルアミンまたは
その塩、ポリオキシエチレン付加長鎖アルキル第4級ア
ンモニウム塩および長鎖アルキルアミンオキシドから選
択される1種または2種以上である(4)または(8)
記載のリポソーム、(10)カチオン性界面活性剤が、
長鎖アルキルアミンまたはその塩、長鎖アルキルまたは
長鎖アルケニル第4級アンモニウム塩およびポリオキシ
エチレン付加長鎖アルキルアミンまたはその塩から選択
される1種または2種以上である(4)、(8)または
(9)に記載のリポソーム、(11)カチオン性界面活
性剤が、長鎖アルキルアミンまたはその塩である(4)
及び(8)乃至(10)のいずれかひとつに記載のリポ
ソーム、(12)正荷電化合物がカチオン性水溶性高分
子である(1)乃至(4)から選択されるひとつに記載
のリポソーム、(13)カチオン性水溶性高分子が、カ
チオン性水溶性ビニル系合成高分子、カチオン性水溶性
ポリアミノ酸、カチオン性水溶性合成ポリペプチド、カ
チオン性水溶性天然高分子およびカチオン性水溶性改変
天然高分子から選択される1種または2種以上である
(4)または(12)記載のリポソーム、(14)カチ
オン性水溶性高分子が、カチオン性水溶性ビニル系合成
高分子、カチオン性水溶性ポリアミノ酸およびカチオン
性水溶性合成ポリペプチドから選択される1種または2
種以上である(4)、(12)または(13)記載のリ
ポソーム、(15)カチオン性水溶性高分子が、カチオ
ン性水溶性ビニル系合成高分子である(4)及び(1
3)乃至(14)から選択されるいずれかひとつに記載
のリポソーム、(16)中性脂質が、ホスファチジルコ
リン、ホスファチジルエタノールアミン、ジガラクトシ
ルグリセリド、ガラクトシルグリセリド、スフィンゴミ
エリン、コレステロール、エルゴステロールおよびラノ
ステロールから選択される1種または2種以上である
(3)記載のリポソーム、(17)中性脂質が、ホスフ
ァチジルコリンである(3)または(16)記載のリポ
ソーム、(18)中性脂質が、ジパルミトイルホスファ
チジルコリンである(3)、(16)または(17)に
記載のリポソーム、(19)中性脂質が、ホスファチジ
ルコリンおよびコレステロールである(3)および(1
6)乃至(18)から選択されるひとつに記載のリポソ
ーム、(20)中性脂質が、ジパルミトイルホスファチ
ジルコリンおよびコレステロールである(3)及び(1
6)乃至(19)から選択されるひとつに記載のリポソ
ーム、(21)非イオン性水溶性高分子で修飾された負
荷電脂質がN−(非イオン性水溶性高分子)サクシニル
ホスファチジルエタノールアミンおよび/またはN−
(非イオン性水溶性高分子)カルボニルホスファチジル
エタノールアミンである(3)記載のリポソーム、(2
2)非イオン性水溶性高分子で修飾された負荷電脂質が
N−(非イオン性水溶性高分子)サクシニルジステアロ
イルホスファチジルエタノールアミンおよび/またはN
−(非イオン性水溶性高分子)カルボニルジステアロイ
ルホスファチジルエタノールアミンである(3)または
(21)記載のリポソーム、(23)非イオン性水溶性
高分子で修飾された負荷電脂質がN−(非イオン性水溶
性高分子)サクシニルジステアロイルホスファチジルエ
タノールアミンである(3)、(21)または(22)
記載のリポソーム、(24)非イオン性水溶性高分子が
非イオン性のビニル系高分子、非イオン性のポリアミノ
酸、非イオン性の合成ポリペプチド、非イオン性のポリ
エステル、非イオン性のポリエーテル、非イオン性の天
然高分子または非イオン性の改変天然高分子あるいはこ
れらの高分子の末端がアルコキシ化された高分子から選
択される1種または2種以上である(1)乃至(3)お
よび(22)乃至(23)から選択されるひとつに記載
のリポソーム、(25)非イオン性水溶性高分子が非イ
オン性のビニル系高分子、非イオン性のポリアミノ酸、
非イオン性の合成ポリペプチド、非イオン性のポリエス
テルまたは非イオン性のポリエーテルあるいはこれらの
高分子の末端がアルコキシ化された高分子から選択され
る1種または2種以上である(1)乃至(3)および
(22)乃至(24)から選択されるひとつに記載のリ
ポソーム、(26)非イオン性水溶性高分子が非イオン
性のポリエーテルまたは非イオン性モノアルコキシポリ
エーテルから選択される1種または2種である(1)乃
至(3)および(22)乃至(25)から選択されるひ
とつに記載のリポソーム、(27)非イオン性水溶性高
分子がモノメトキシポリエチレングリコールである
(1)乃至(3)および(22)乃至(26)から選択
されるひとつに記載のリポソーム、(28)非イオン性
水溶性高分子の平均分子量が1000乃至12000で
ある(1)乃至(3)および(22)乃至(27)から
選択されるひとつに記載のリポソーム、(29)非イオ
ン性水溶性高分子の平均分子量が1000乃至5000
である(1)乃至(3)および(22)乃至(28)か
ら選択されるひとつに記載のリポソーム、(30)負荷
電脂質がホスファチジルグリセロール、ホスファチジル
セリンまたはホスファチジルイノシトールから選択され
る1種または2種以上である(3)記載のリポソーム、
(31)負荷電脂質がジパルミトイルホスファチジルグ
リセロールである(3)または(30)記載のリポソー
ム、(32)体積平均粒子径が20nm乃至7μmであ
る(1)乃至(31)から選択されるひとつに記載のリ
ポソーム、(33)体積平均粒子径が50nm乃至40
0nmである(1)乃至(32)から選択されるひとつ
に記載のリポソーム、(34)体積平均粒子径が50n
m乃至100nmである(1)乃至(33)から選択さ
れるひとつに記載のリポソームである。
【0068】
【発明の実施の形態】正荷電化合物を非イオン性水溶性
高分子で修飾された負に帯電したリポソームに配合する
ことにより、生理的pHの水性媒体中における負の帯電
状態を小さくするか無帯電とする、本発明の目的のリポ
ソームは以下のようにして製造される。
【0069】本発明で使用される脂質は、市販されてい
る(日本油脂(株)等)かまたは、これらの試薬は当業
者に周知の方法によって植物種子、果肉、動物、魚等の
生体から抽出、精製することができる(例えば、塩川二
朗監修、「カークオスマー化学大辞典」、丸善(株)p
p.573-575(1988)参照。)。
【0070】本発明で使用されるカチオン性界面活性剤
は、市販されている(日本油脂(株)等)か、または当
業者に周知の有機合成法(例えば、S.H.Pine、「Organi
c Chemistry fifth edition」、McGraw-Hill Internati
onal Editions(1987)参照。)に従い、製造すること
ができる。例えば、長鎖アルキルアミンはハロゲン化長
鎖アルキルとアンモニアとの求核置換反応により製造す
ることができる。
【0071】本発明で使用されるカチオン性水溶性高分
子は、市販されている(シグマ化学会社等)。
【0072】また、カチオン性水溶性ビニル系合成高分
子については、後述する非イオン性水溶性高分子の製造
法と同様に、一般的な高分子合成法(例えば、G.Allen
ら(編)、「Comprehensive polymer science」vols.
3,4、Pergamon Press(1989)参照。)に従い、それぞ
れ付加重合法によって製造することができ、またカチオ
ン性のポリアミノ酸やポリペプチドについても、後述す
る非イオン性水溶性高分子の製造法と同様に、一般的な
ペプチド合成法(例えば、M.Bodanszky、「Principles
of peptide synthesis」、Springer-Verlag(1984)/
M.Bodanszkyら、「The practice of peptide synthesi
s」、Springer-Verlag(1984)参照。)に従い、それぞ
れ製造することができる。
【0073】本発明で使用される非イオン性水溶性高分
子は、市販されている(シグマ化学社等)。
【0074】また、非イオン性水溶性ビニル系高分子、
非イオン性水溶性ポリエステルおよび非イオン性水溶性
ポリエーテルについては、一般的な高分子合成法(例え
ば、G.Allenら(編)、「Comprehensive polymer scien
ce」vols. 3-5、Pergamon Press(1989)参照。)に従
い、それぞれ付加重合法および重縮合法によって製造す
ることができる。例えば、ビニル系高分子の一種である
ポリビニルアルコールは、過酸化ベンゾイル等の重合開
始剤等を使用して酢酸ビニルを付加重合し、アルカリ条
件下で脱アセチル化することによって得ることができ
る。ポリエステルの一種であるポリグリコール酸は、グ
リコール酸を減圧下に加熱することによって重縮合し得
ることができる。ポリエーテルの一種であるポリメチレ
ングリコール、すなわちメチレングリコールをモノマー
単位とする高分子は、トリフルオロメタンスルホン酸等
の重合開始剤を使用し環状ホルマールを開環重合するこ
とによって得ることができる。
【0075】また、非イオン性水溶性ポリアミノ酸およ
び非イオン性水溶性合成ポリペプチドは、一般的なペプ
チド合成法(例えば、M.Bodanszky、「Principles of p
eptide synthesis」、Springer-Verlag(1984)/M.Bod
anszkyら、「The practice of peptide synthesis」、S
pringer-Verlag(1984)参照。)に従い、それぞれ製造
することができる。例えば、ポリアミノ酸であるポリグ
リシンは、ホスゲンを作用させることによってグリシン
をN−カルボキシ無水物化してから、重合開始剤を作用
させることによって製造することができる。合成ポリペ
プチドは、一般的にC末端を保護したアミノ酸またはペ
プチドとN末端を保護したアミノ酸またはペプチドとを
脱水縮合させた後、N末端を脱保護するという工程を繰
り返すことによって製造することができる。また、グラ
フト共重合体およびブロック共重合体は、G.Allenら
(編)、「Comprehensive polymer science」vol. 6、P
ergamon Press(1989)に記載の方法に従い、高分子反
応等を利用して製造することができる。
【0076】本発明で使用される非イオン性水溶性高分
子で修飾された脂質は、当業者周知の有機合成法(例え
ば、S.H.Pine、「Organic Chemistry fifth edition」M
cGraw-Hill International Editions(1987)参照。)
に従い製造することができる。例えば、N−モノメトキ
シポリエチレングリコールサクシニルホスファチジルエ
タノールアミンは、モノメトキシポリエチレングリコー
ルの片末端の水酸基に無水コハク酸を結合させることに
よってカルボキシル基を導入し、該カルボキシル基とホ
スファチジルエタノールアミンのアミノ基とを脱水縮合
させることによって製造することができる。
【0077】これらの原料を用いて、当業者周知の方法
(D.D.Lasic、「liposomes: from basic to applicatio
ns」、Elsevier Science Publishers、pp.63-107(199
3)参照。)に従いリポソームを製造し、サイズを調節
することができる。すなわち、上記で選ばれた脂質等お
よび塩化ナトリウム水溶液、緩衝液またはグルコース水
溶液等を用い、薄膜法、逆相蒸発法、エタノール注入
法、エーテル注入法または脱水−再水和法等により製造
でき、超音波照射法、凍結融解後の超音波照射法、エク
ストルージョン法、フレンチプレス法またはホモジナイ
ゼーション法等の方法によりサイズが調節できる。本発
明においても、これらの方法に従いリポソームを製造
し、必要に応じてリポソームのサイズを調節する。
【0078】また、カチオン性界面活性剤およびカチオ
ン性水溶性高分子はいずれも水溶性であるため、あらか
じめ製造した非イオン性水溶性高分子で修飾されたリポ
ソームの分散液に添加する方法によってリポソームの構
成成分とすることができる。これらのカチオン性化合物
の添加方法は、リポソームに包含させる薬物がカチオン
性である場合に効果的な方法である。すなわち、荷電し
た薬物のリポソームへの包含効率(薬物の処方量に対す
る包含量の割合。)は、該薬物と反対符号の荷電を有す
る脂質等をリポソームの構成成分とすることによって高
めることができる(D.D.Lasic、「liposomes: from bas
ic to applications」、Elsevier Science Publisher
s、pp.307-317(1993)参照。)が、リポソームの外表
面に吸着した薬物は容易に脱離するため、結果として得
られる薬物包含リポソームの帯電状態は、リポソームを
構成する脂質の帯電状態に支配され負となりやすい。従
って、カチオン性薬物を効率的に包含し、かつ負の帯電
状態を小さくすることは一般に困難であるが、負荷電脂
質を構成成分としてカチオン性薬物を効率良く包含した
リポソームを製造した後、カチオン性界面活性剤または
カチオン性水溶性高分子を添加することによって、カチ
オン性薬物を効率良く包含し、かつ、リポソームの負の
帯電状態を小さくすることが可能である。
【0079】薬物は、当業者周知の方法に従い、リポソ
ームに包含させることができる(D.D.Lasic、「liposom
es: from basic to applications」、Elsevier Science
Publishers、pp.307-317(1993)参照。)。例えば、
脂溶性が高い薬物は、該薬物を脂質の1成分とみなして
他の脂質と混合しリポソームを製造することにより、ま
た、水溶性の高い薬物は、水相に溶解してリポソームを
製造することにより、それぞれリポソームに包含させる
ことができる。
【0080】実際に薬物を包含した非イオン性高分子で
修飾されたリポソームを製造する際、どの程度の帯電状
態の、非イオン性高分子で修飾されたリポソームを使用
するかは、包含される薬物の性質(例えば、毒性、帯電
状態等)によって決定する。
【0081】薬物を包含した非イオン性高分子で修飾さ
れたリポソームより構成される製剤は、通常配合時の組
成から計算される、リポソームを構成する脂質の濃度が
1乃至300mMとなるように、適宜、緩衝液、生理食
塩液または糖類もしくは塩類の水溶液等を使用して希
釈、または遠心分離により濃縮を行ない、ヒトに対して
総体積1乃至100mlを静脈内注射により、または1
00ml乃至1000mlを静脈内点滴により投与す
る。
【0082】
【実施例】以下に実施例、比較例および試験例を挙げ
て、本発明について更に具体的に詳述するが、本発明は
これらに限定されるものではない。
【0083】なお、下記の例で使用した脂質は、コレス
テロールは東京化成(株)の製品であり、それ以外は川
原油化(株)の製品である。
【0084】[実施例1]ゼータ電位の異なる非イオン
性水溶性高分子で修飾されたリポソームの製造 中性脂質であるジパルミトイルホスファチジルコリン
(dipalmitoyl-phosphatidylcholine。以下、DPPC
という。)ならびにコレステロール、負荷電脂質である
ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(dipalmit
oyl-phosphatidylglycerol。以下、DPPGとい
う。)、正荷電化合物であるN−α−トリメチルアンモ
ニオアセチルジドデシル−D−グルタメートクロライド
(N-α-trimethylammonioacetyldidodecyl-D-glutamate
chloride。以下、TMAGという。)、非イオン性水
溶性高分子で修飾された負荷電脂質であるポリエチレン
グリコール部分の分子量が約2000のN−モノメトキ
シポリエチレングリコールサクシニルジステアロイルホ
スファチジルエタノールアミン(N-monomethoxypoly(et
hylene glycol) succinyldistearoylphosphatidylethan
ol-amine。川原油化(株)製。以下、PEG−DSPE
という。)、リポソームの蛍光標識剤である1, 1'-ジオ
クタデシル-3, 3, 3', 3'-テトラメチルインドカルボシ
アニン過塩素酸塩(1,1'-dioctadecylindo-3, 3, 3',
3'-tetramethylindocarbocyanine perchlorate。Lambda
Probes & Diagnostics社製品。以下、DiIという。
E. Claassen, J.Immunol. Methods 147, 231-240 (199
2)参照。)および10重量%トレハロース水溶液を使用
し、Banghamらの方法(J. Mol. Biol. 8、660-668(196
4)参照。)に従い、次のようにしてリポソームを製造
した。
【0085】すなわち、所定量の上記の脂質等をナス型
フラスコにはかりとり、クロロホルム5mLを加えて溶
解した。次にクロロホルムを減圧留去することにより、
フラスコ内壁に脂質の薄層を形成させた。この脂質薄層
に所定量の10重量%のトレハロース水溶液を加え、ボ
ルテックスミキサーで振とうすることにより、脂質濃度
100mMのリポソームの粗分散液を得た。処方例にお
ける脂質の構成比を表1に示す。
【0086】
【表1】* DPPC コレステロール DPPG TMAG PEG−DSPE 処方例1 55 40 0 0 5 処方例2 53 40 0 2 5 処方例3 50 40 0 5 5 処方例4 45 40 0 10 5 処方例5 35 40 0 20 5 処方例6 30 40 25 0 5 処方例7 25 40 25 5 5 処方例8 20 40 25 10 5 処方例9 50 40 5 0 5処方例10 45 40 10 0 5 * 各脂質の数値は、処方したμmol数を表す。この他、いずれのリポソーム処 方においても標識剤のDiIを総脂質モル数に対して0.2mol%処方した。
【0087】次に、超音波破砕装置(Model 7600、セイ
コー電子工業(株)社製。)を使用した超音波照射法
(出力25W、照射時間5分乃至1時間。)により、リ
ポソームの体積平均粒子径を血中滞留性の高い100n
m以下となるように調節した。
【0088】ここで、体積平均粒子径およびゼータ電位
は、粒子径測定機(Nicomp Particle Sizer Model 37
0、Nicomp Particle Sizing Systems社製。)およびゼ
ータ電位測定機(ZEM5000、Malvern社製。)をそれぞれ
使用して測定した。なお、微粒子のゼータ電位の符号お
よび大きさは、当業者周知の方法(例えば、J. Hunte
r、「Zeta potential in colloid science」、pp.125-1
78、Academic Press(1981)参照。)によって算定し
た。
【0089】これらのリポソームの体積平均粒子径、お
よび25℃、リン酸緩衝生理食塩液(20mMのリン酸
二水素ナトリウムおよび135mM塩化ナトリウムから
なり、1規定水酸化ナトリウム水溶液でpH7.4に調
整したもの。以下、PBSとする。)中におけるゼータ
電位を、次式: 電荷密度=[(**正電荷モル数−**負電荷モル数)/**
全脂質モル数]×100(%)** いずれもリポソーム調製時の脂質の配合量から求めた
値 により算出した電荷密度とともに表2に示す。
【0090】
【表2】 電荷密度 ゼータ電位 ***体積平均粒子径 (mol%) (mV) (nm) 処方例1 − 5 −20.3 97.7±44.7 処方例2 − 3 −14.8 82.8±37.7 処方例3 0 −13.9 78.4±32.8 処方例4 + 5 −12.2 97.9±41.2 処方例5 +15 − 6.0 94.8±36.3 処方例6 −30 −27.3 98.2±35.4 処方例7 −25 −25.9 97.2±32.3 処方例8 −20 −22.7 97.1±42.5 処方例9 −10 −21.7 97.0±33.8 処方例10 −15 −23.9 90.3±31.2 *** 体積平均粒子径±粒子径の分布幅(標準偏差;SD)として表す。
【0091】このように、いずれのリポソームも生理的
pHの水性媒体中において正に帯電していないことが確
認された。次に表2のデータを用い、ゼータ電位と電荷
密度との関係を図1に示す。このように、非イオン性水
溶性高分子で修飾されたリポソーム(以後、高分子修飾
リポソームという。)および正荷電化合物を加えた高分
子修飾リポソームの電荷密度とPBS中におけるゼータ
電位との間には密接な関係があり、脂質の種類および該
脂質の組成比により、高分子修飾リポソームのゼータ電
位を制御できることができた。すなわち、正荷電化合物
を高分子修飾リポソームに含有させることによりリポソ
ームの負の帯電状態を0に近づけることが可能であるこ
とが示された。さらに、高分子修飾リポソームが、負電
荷を過剰に有している場合のみならず、正電荷密度と負
電荷密度とが等しい場合や正電荷を過剰に有している場
合でも、なお、生理的pHの水性媒体中において負に帯
電していることが示された。この事実は、本発明が、リ
ポソーム製造時の組成比から算定される電荷密度の符号
が負でない場合においても適用されることを意味する。
【0092】また、表1の脂質組成にて製造した高分子
修飾リポソームおよび正荷電化合物を加えた高分子修飾
リポソームの体積平均粒子径はいずれも100nm以下
であり、血中滞留性に優れるサイズに調節できた。
【0093】[比較例1]非イオン性水溶性高分子で修
飾されていないリポソームの製造 実施例1と同様にして、表3で示す処方で、非イオン性
水溶性高分子で修飾されていないリポソーム(以後、高
分子非修飾リポソームという。)を製造した。リポソー
ムの電荷密度、PBS中でのゼータ電位および体積平均
粒子径の値を表4に示す。
【0094】
【表3】 ****DPPC コレステロール DPPG TMAG PEG−DSPE 処方例11 70 30 0 0 0 **** 各脂質の数値は、処方したμmol数を表す。この他、標識剤のDiIを総 脂質モル数に対して0.2mol%処方した。
【0095】
【表4】 電荷密度 ゼータ電位 *****体積平均粒子径 (mol%) (mV) (nm) 処方例11 0 −2.0 95.3±32.8 ***** 体積平均粒子径±粒子径の分布幅(標準偏差;SD)として表す。
【0096】[試験例1]毒性の検討 実施例1で製造したリポソームの分散液を、0.1乃至
2.5mlの所定の各量(0.1から1.0mlまでは
0.3mlおき、1.0mlから2.5mlまでは0.
5mlおきの量。)を、体重20乃至30gのCDF1
マウス(日本チャールズリバー社製。)に静脈内投与し
た。マウスの生死を投与後1時間にわたり観察すること
により、リポソームの最大投与可能体積、すなわち、マ
ウスが生存した投与体積のうち最も大きい投与体積を決
定した。
【0097】最大投与可能量(Maximum Tolerated Dos
e。以下、MTDという。)は次式: MTD(g/kg)=[最大投与可能体積(mL)×脂
質の濃度(g/mL)]/マウスの体重(kg) より算出した。
【0098】このようにして求められたMTDをPBS
中でのゼータ電位の関数として図2に示す。なお、この
図においてプロットに付けられた数字は、それぞれ処方
例の番号を表し、縦軸をスケールアウトしたプロット
は、MTDが5.5g/kgより大きいことを示す。
【0099】実施例1で製造したリポソームのMTD
は、PBS中での該リポソームの負のゼータ電位が0に
近づくほど増大した。すなわち、高分子修飾リポソーム
に正荷電化合物を加えて、生理的pHの水性媒体中にお
ける負のゼータ電位を0近づけることで高分子修飾リポ
ソームの毒性が軽減された。
【0100】[試験例2]血中滞留性の検討 実施例1および比較例1で製造し、150mM塩化ナト
リウム水溶液で希釈して総脂質濃度をそれぞれ16.7
mMとした処方例1、3または11のリポソーム分散液
を、体重315乃至385gのウィスターラット(動繁
研社製。)に対し、総脂質の投与量が47.7μmol
/kgとなるように尾静脈より投与した。1乃至24時
間の所定の各時間後に尾静脈より血液を約500μl採
取し、遠心分離(1000g×5分。)により血漿を得
た。この血漿10μlに150mM塩化ナトリウム水溶
液40μlを加え、さらに1重量%のポリエチレングリ
コール−モノ−4−オクチルフェニルエーテル(東京化
成工業(株)製。)を含むPBS1mlで希釈した。分
光蛍光光度計(650−40型。(株)日立製作所
製。)を使用し、この血漿の希釈液の蛍光強度(励起波
長:550nm、蛍光波長:565nm。)を求めた。
この蛍光強度、および投与したリポソーム製剤を1重量
%のポリエチレングリコール−モノ−4−オクチルフェ
ニルエーテルを含むPBSで100倍希釈した溶液の蛍
光強度を使用し、全血液量が体重の5重量%、血液中の
血漿の体積分率が60重量%であるとし、リポソームの
血中残存量を求めた。このリポソームの血中残存量の推
移を図3に示す。
【0101】この図において、□は処方例11で製造し
た高分子非修飾リポソームを示し、○は処方例1で製造
した高分子修飾リポソームを示し、△は処方例3で製造
した正荷電化合物を含む高分子修飾リポソームを示す。
図3から、処方例3のリポソームは、処方例1のリポソ
ームと同等の優れた血中滞留性を有した。
【0102】また、処方例11のリポソームは、処方例
1、3のリポソームと同等の体積平均粒子径を有してい
るにもかかわらず、血中滞留性が劣っていた。
【0103】この試験結果から、正荷電化合物を構成成
分として含有させた場合でも、リポソームを修飾する非
イオン性水溶性高分子による血中滞留性向上効果が維持
されることが明らかとなった。
【0104】
【発明の効果】本発明により、高い血中滞留性を有し、
従来に比べ毒性が著しく軽減された非イオン性水溶性高
分子で修飾されたリポソームが得られた。本発明の目的
のリポソームは、非イオン性水溶性高分子で修飾された
リポソームの安全性を高めることにより包含された薬物
の投与量を増加させることを可能とし、薬物の治療効果
を高める上で有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で製造したリポソームのPBS(pH
7.4)中でのゼータ電位と電荷密度との関係図。
【図2】CDF1マウスに対する実施例1で製造したリ
ポソームの最大投与可能量(MTD)とPBS(pH
7.4)中でのゼータ電位(zeta potenti
al)との関係図(各プロットに記した番号は処方例の
番号を表し、処方例2乃至5のプロットは、MTDが5
mg/kgより大きな値であることを表す。)。
【図3】ウィスターラットに実施例1および比較例1で
製造したリポソームを静脈内投与した後のリポソームの
血漿中残存量推移図(□:処方例11のリポソーム、
○:処方例1のリポソーム、△:処方例3のリポソー
ム。)。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】生理的pHの水性媒体中において負に帯電
    する非イオン性水溶性高分子で修飾されたリポソームに
    対し、さらに正荷電化合物を構成成分として配合し、負
    の帯電状態を小さくするかまたは無帯電としたリポソー
    ム。
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