JP2000176570A - プレスブレ―キ用金型及びその製造方法 - Google Patents

プレスブレ―キ用金型及びその製造方法

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JP2000176570A
JP2000176570A JP10375048A JP37504898A JP2000176570A JP 2000176570 A JP2000176570 A JP 2000176570A JP 10375048 A JP10375048 A JP 10375048A JP 37504898 A JP37504898 A JP 37504898A JP 2000176570 A JP2000176570 A JP 2000176570A
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die
bending
press brake
manufacturing
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Motomu Nishikawa
求 西川
Shoichi Horikawa
昇一 堀川
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Komatsu Ltd
Original Assignee
Komatsu Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ステンレス鋼板やアルミニウム合金板材等に
発生しやすい溶着現象や焼き付き等の曲げ傷を発生させ
ずに、しかも長尺物の曲げ加工用の金型を容易に製作で
きるプレスブレーキ用金型及びその製造方法を提供す
る。 【解決手段】 金型の素材を荒加工し、その後仕上げ加
工を行い、次に金型の表面の、曲げ加工時板材が接触す
る部分に放電加工により硬質セラミックス被膜を形成す
る表面硬化処理を行う。前記荒加工の後、焼き入れ/焼
き戻し、高周波焼き入れあるいはフレーム焼き入れ等の
熱処理を行ってから、次に仕上げ加工を切削加工によ
り、あるいは最後に少なくとも研削加工により行っても
よい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プレスブレーキ用
金型及びその製造方法に関し、特にステンレス鋼板およ
びアルミ合金板等の曲げ加工に適するプレスブレーキ用
金型及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のプレスブレーキ用金型のパンチと
ダイの製造は、加工対象の材料の板厚が薄い場合には、
プレスブレーキ用金型の素材を荒加工後、焼き入れ/焼
き戻しの熱処理をし、金型の表面の、曲げ加工材料が接
触する部分をグラインダ等による研削仕上げ加工をして
完成金型とする方法、あるいは金型の表面の、曲げ加工
材料が接触する部分を研削仕上げ加工をした後ホーニン
グ仕上げする方法、あるいはこの研削仕上げ加工をした
部分を硬質クロームメッキをした後バフ仕上げをする方
法等がある。また、加工対象の材料の板厚が厚い場合に
は、金型の素材を荒加工後、焼き入れ/焼き戻しあるい
は素材調質の熱処理をし、金型の表面の、曲げ加工材料
が接触する部分を高周波焼き入れまたはフレーム焼き入
れをして表面硬化し、最後に仕上げ加工をする方法等が
ある。
【0003】プレスブレーキによる曲げ加工は、ダイの
略V字形の溝部とパンチ先端部とにより曲げ加工をす
る、いわゆるV曲げ加工が一般的に多い。そして、図1
1に示す一般的なプレスブレーキ用金型のパンチTpと
ダイTdは、鋼板およびアルミニウム合金板等の長い材
料を直線に曲げ加工するために使用され、細くて、長い
形状が一般的である。図12にプレスブレーキによるV
曲げ加工の金型と材料の関係を示す。V曲げ加工に必要
な加圧力は経験式で、数式「P=C×σB ×L×t×t
/V」で表される。ここで、Pは必要加圧力(kg)、C
は定数(一般に1.5 〜2.0 )、σB は材料Mの引張り強
さ(kg/mm2 )、Lは材料Mの曲げ長さ(mm)、tは材
料Mの板厚(mm)、VはダイTdのV幅(mm)である。
また、加工品の曲げ半径rはダイTdのV幅にほぼ比例
し、数式「曲げ半径r≒V/6」で表される。従って、
材料Mの曲げ長さLと板厚tが同じでも材料Mの引張り
強さσB が大きいと必要加圧力Pは大きくなり、曲げ加
工品の曲げ半径rを小さくすると必要加圧力Pは大きく
なる。
【0004】V字形をした溝(以後、V溝と言う)を有
しているダイ(以下Vダイと呼ぶ)を用いてV曲げ加工
を行うとき、曲げ加工に必要な加圧力は、プレスブレー
キの駆動力によりパンチを介して加えられる。図12に
示すように、パンチTpの加圧力Pを材料Mを介してV
ダイTdのV溝の肩部分で負荷する。このため加圧力が
大きくなるとV溝の肩部分に掛かる加圧力が大きくな
り、パンチTpが加圧しながらV溝の中に侵入してくる
と、材料Mの表面はV溝の肩部分に圧迫されながら滑り
込む状態で曲げられる。
【0005】一方、ステンレス鋼板は、耐食性が優れて
おり、しかも表面を鏡面にすることにより外観も綺麗で
あることなどにより、医療機器、家具や家電等に広く使
用されている。しかし、ステンレス鋼板の引張り強さσ
B は大きく、しかも製品としての形状と外観上より曲げ
加工品は小さい曲げ半径rが必要となることが多く、こ
の場合はVダイのV幅を小さくする。このため、曲げ加
工に必要な加圧力Pが大きくなり、VダイのV溝の肩部
分により圧迫されたステンレス鋼板の表面に、曲げ傷と
呼んでいる焼き付きあるいは溶着現象が発生する。
【0006】また、アルミニウム合金板材は軽いという
特性に加え、外観が美しく耐食性に優れていることよ
り、航空機、自動車など軽量化の要求される部品や、厨
房器具、化学装置などに用いられている。アルミニウム
合金板材は、ステンレス鋼板や一般の鋼板に比較して引
張り強さは小さいが硬度が低いために、VダイによるV
曲げ加工時にV溝の肩部分に接触したアルミニウム合金
板材の表面に、V溝の肩部分に圧迫されて、曲げ傷と呼
んでいる圧痕あるいは溶着現象が発生する。上記のステ
ンレス鋼板の表面に発生する曲げ傷、あるいは、アルミ
ニウム合金板材の表面に発生する曲げ傷を防止あるいは
小さくするために、VダイのV溝の肩部分の表面硬度を
硬くし、表面の面粗さを滑らかにする必要がある。
【0007】また、曲げ加工の加圧力は、パンチの先端
部で材料を加圧する。そして、加圧力が大きくしかも曲
げ半径が小さい曲げ加工の場合、パンチの先端部の曲率
半径R(図11参照)も小さくなり、パンチ先端部の圧
縮応力が大きくなる。このためパンチ使用中に先端部が
磨滅したり、変形することが発生するので、パンチ先端
部の硬度を硬くし、先端部の磨滅または変形を防止する
必要がある。
【0008】上記のことから、VダイのV溝の肩部分の
表面硬度を硬くする製造方法およびパンチ先端部の硬度
を硬くする製造方法の先行技術の第1例として、特殊鋼
全体を焼き入れ/焼き戻しの熱処理により硬度を硬くし
て、ダイおよびパンチに使用する製造方法がある。実用
例としてクロムモリブデン鋼(SCM材)あるいは工具
鋼(SK材)等を材料とし、この材料を荒加工し、若干
の仕上げ代を残した寸法の材料を、焼き入れ/焼き戻し
の熱処理により硬化し、研削加工によりVダイまたはパ
ンチの製品寸法に仕上げをして完成金型とする製造方法
がある。
【0009】上記の先行技術の第1例で製作される通常
のプレスブレーキ用金型のパンチおよびダイの長さは、
1000mm以下の長さである。曲げ加工材料の長さが、
パンチおよび/またはダイの長さより長い場合には、数
個のパンチおよび/またはダイを長手方向に並べて使用
する。この場合、パンチおよび/またはダイの継ぎ目に
段差があると、曲げ加工後、曲げ製品の表面にこの金型
の継ぎ目による段差跡が残り、外観品質を低下する。こ
のような段差跡の無い曲げ製品を曲げ加工するために、
プレスブレーキ用金型のパンチおよびダイを、3000
〜4000mmの長さにした1体物で製作する例もある。
特にステンレス鋼板やアルミ合金板あるいはカラー鋼板
の曲げ加工成形品に、このように1体物で3000〜4
000mmの長さに製作したパンチおよび/またはダイを
使用する。
【0010】先行技術の第2例として、材料の表層部分
を硬化して、パンチおよびダイに使用する製造方法があ
る。実用例として炭素鋼を材料とし、この材料を熱処理
により調質した後、パンチまたはVダイの製品寸法に切
削加工をし、高周波焼き入れ、あるいはフレーム焼き入
れ後、研削加工による仕上げをして製品とする製造方法
がある。また、先行技術の第3例として、材料を熱処理
し、製品としての形状及び寸法に仕上げ加工をした後、
硬度の必要な部分を硬質クロームメッキ処理をしてパン
チおよびダイに使用する製造方法もある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ステン
レス鋼板やアルミニウム合金板材のプレスブレーキによ
る曲げ傷をなくするために、VダイのV溝の肩部分の表
面硬度を硬くし、かつ、表面の面粗さを滑らかにするに
当たって、上記従来の技術には以下の問題がある。先行
技術の第1例の場合、通常のプレスブレーキ用金型とし
てクロムモリブデン鋼を使用した場合、金型の表面硬度
はHRC42〜48程度となり、上記溶着現象等の曲げ
傷を防止できる硬度にはできない。しかも、焼き入れ/
焼き戻しの熱処理を行い、この熱処理時に発生した歪み
を修正した後に、研削加工による仕上げを必要としてい
る。また、研削加工はといし車をダイまたはパンチの長
手方向に移動して加工するので、Vダイの肩部分の研削
目が長手方向に発生する。しかしながら、この研削目の
方向は曲げ加工の時に材料がV溝に滑り込む方向と直交
するので、この長手方向の研磨目によって、V溝の肩部
分により圧迫されたステンレス鋼板またはアルミ合金板
の表面に、曲げ傷と呼んでいる焼き付きあるいは溶着現
象が発生しやすくなる。特にステンレス鋼板を小さい曲
げ半径の製品に曲げ加工する場合、必要な加圧力が大き
くなり、VダイのV溝の肩部分の硬度がHRC42〜4
8程度であるために、このV溝の肩部分に圧迫されたス
テンレス鋼板の表面に溶着現象等の曲げ傷が発生すると
いう問題がある。
【0012】また、段差跡の無い曲げ製品を曲げ加工す
るために、プレスブレーキ用金型のパンチおよびダイを
3000mm〜4000mmの長さの1体物で製作する場
合、寸法が長いので熱処理による歪みが発生しやすく、
したがって寸法精度と表面粗さを要求品質に仕上げる仕
上げ工程で設備費がかかり、加工時間も長くかかるとい
う問題がある。さらに、VダイのV溝の肩部分の硬度及
びパンチ先端部の硬度を上げるために工具鋼を使用する
と、硬度はHRC60±2程度となり、クロムモリブデ
ン鋼を使用した場合に比較して硬度は高くなるが、研削
加工に時間がかかり、しかも材料費が高く、製造コスト
が高くなるという問題がある。
【0013】先行技術の第2例の場合、高周波焼き入れ
あるいはフレーム焼き入れによりパンチあるいはダイの
表面の、曲げ加工材料が接触する部分を硬化するので、
焼き入れした部分の硬度はHRC55〜60程度にな
る。しかし、焼き入れが部分焼き入れのために材料に曲
がりが発生し、金型寸法精度を規定値内に収めるために
は仕上げ工程で研削加工が必要となる。このため、研削
加工後の表面硬度は曲がりの修正量のばらつきにより硬
度ムラが発生するという問題がある。したがって、この
製造方法は普通鋼板を大きな曲げ半径で曲げ加工する金
型に適用されているが、薄板鋼板、特にステンレス鋼板
やアルミニウム合金板を曲げ加工するためのプレスブレ
ーキ用金型には適用困難である。また、表面に縞模様の
凸部があるシマ鋼板の曲げ加工にも高周波焼き入れある
いはフレーム焼き入れによるダイあるいはパンチを使用
しているが、ダイの肩部分またはパンチの先端部分は硬
度が不足しているため、シマ鋼板の凸部により局部的に
押し圧されて焼き付きや亀裂が発生したり、または破損
するという問題もある。
【0014】先行技術の第3例の場合、Vダイの肩部分
とV溝部分、パンチの先端部分を硬質クロームメッキ処
理をして表面を硬化しているが、この硬質クロームメッ
キ処理をした表面をバフ仕上げしたときに表面が鏡面に
なるように、硬質クロームメッキ処理の前工程におい
て、メッキ処理する金型の表面を滑らかな表面粗さに精
密な研削加工をする必要がある。また、プレスブレーキ
用金型は細長い長尺物なので、長さの長いメッキ処理設
備が必要となり、よってこのようなメッキ処理に対応で
きるメッキ業者が限定される。これらのことにより、製
作納期がかかり、製作コストも高くなるという問題が発
生している。
【0015】通常のプレス加工用金型を硬化する方法と
して、上記の先行技術例の他に、窒化処理による硬化法
(タフトライド処理、スル・スルフ処理)、材料の表面
に硬質被膜をつくる化学蒸着法(CVD法)や物理蒸着
法(PVD法)、金属拡散浸透処理法(TDプロセス
法)等があり、これらによる表面硬化層は硬度が高く、
耐磨耗性に優れている。しかしながら、これらの硬化処
理は高温度で侵せき処理をしなければならないので、プ
レスブレーキ用金型の製作に適用する場合、金型の形状
及び寸法が細長いことから素材に高温浸せき処理による
歪みが発生しやすく、また通常のプレス金型用処理設備
では処理槽の大きさにより制約があり、製作長さが制限
されるという問題がある。また、プレスブレーキ用金型
の専用設備として設備すると金型製造コストが高くなる
という問題もある。
【0016】本発明は、上記従来技術の問題点に着目
し、ステンレス鋼板やアルミニウム合金板材等に発生し
やすい溶着現象や焼き付き等の曲げ傷を発生させずに、
しかも長尺物の曲げ加工用の金型を容易に製作できるプ
レスブレーキ用金型及びその製造方法を提供することを
目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】上記目的
を達成するため、第1発明は、板材の曲げ加工を行うプ
レスブレーキ用金型の製造方法において、金型の素材を
荒加工し、その後仕上げ加工を行い、次に、金型の表面
の、曲げ加工時板材が接触する部分に放電加工により硬
質セラミックス被膜を形成する表面硬化処理を行う方法
としている。
【0018】第1発明によると、本硬化処理により形成
された硬質セラミックス被膜は従来の硬化処理による硬
化層に比べて非常に硬度が高く、例えばマイクロビッカ
ース硬度(HV)2500〜3000に相当する。した
がって、ステンレス鋼板やアルミニウム合金板材等を曲
げ加工しても、金型及び成形品に焼き付けや溶着現象等
の曲げ傷が発生することがなくなる。これにより、金型
の寿命及び成形品の品質を向上できる。また、硬質セラ
ミックス被膜を形成する表面硬化処理を放電加工により
行うので、金型に高熱がかかることがなく、表面硬化処
理による歪みが発生しない。したがって、仕上げ加工を
行ってから、表面硬化処理後の歪み修正と仕上げの作業
工程が不要となり、製作期間は短縮され、製造コストも
低減できると共に、長尺物の(例えば3000〜400
0mmの)金型でも硬化処理による歪みが無くなるので容
易に高精度の金型を製作できる。また、仕上げ加工を表
面硬化処理の前工程で行うことにより、表面硬化処理に
より形成された硬化層を研削する必要がなく、よって硬
度にムラを発生することもなくなるので、均一な硬度の
金型を製作できる。したがって、プレスブレーキ用金型
のパンチとダイとして必要な寸法精度および表面粗さを
有し、金型の、板材が接触する部分が高硬度で硬化され
たプレスブレーキ用金型を製作できる。
【0019】第2発明は、板材の曲げ加工を行うプレス
ブレーキ用金型の製造方法において、金型の素材を荒加
工した後、焼き入れ/焼き戻し、高周波焼き入れあるい
はフレーム焼き入れ等の熱処理を行い、次に、仕上げ加
工を切削加工により行い、次に、金型の表面の、曲げ加
工時、板材が接触する部分に放電加工により硬質セラミ
ックス被膜を形成する表面硬化処理を行う方法としてい
る。
【0020】第2発明によると、本硬化処理により形成
された硬質セラミックス被膜は従来の硬化処理による硬
化層に比べて非常に硬度が高く、例えばマイクロビッカ
ース硬度(HV)2500〜3000に相当する。した
がって、ステンレス鋼板やアルミニウム合金板材等を曲
げ加工しても、金型及び成形品に焼き付けや溶着現象等
の曲げ傷が発生することがなくなる。これにより、金型
の寿命及び成形品の品質を向上できる。また、熱処理に
より素材の強度と硬度を得た後に切削加工により仕上げ
加工するので、金型の仕上げ精度がよい。また、上記表
面硬化処理を放電加工により行うので、金型に高熱がか
かることがなく、表面硬化処理による歪みが発生しな
い。したがって、切削加工による金型の寸法精度と表面
粗さを維持でき、よって表面硬化処理後に歪み修正と仕
上げの作業工程が不要となり、製作期間は短縮され、製
造コストも低減できると共に、長尺物の(例えば300
0〜4000mmの)金型でも硬化処理による歪みが無く
なるので容易に高精度の金型を製作できる。また、仕上
げ加工を表面硬化処理の前工程に行うことにより、表面
硬化処理により形成された硬化層を研削する必要がな
く、よって硬度にムラを発生することもなくなるので、
均一な硬度の金型を製作できる。したがって、プレスブ
レーキ用金型のパンチとダイとして必要な寸法精度およ
び表面粗さを有し、金型の、板材が接触する部分が高硬
度で硬化されたプレスブレーキ用金型を製作できる。
【0021】第3発明は、板材の曲げ加工を行うプレス
ブレーキ用金型の製造方法において、金型の素材を荒加
工した後、焼き入れ/焼き戻し、高周波焼き入れあるい
はフレーム焼き入れ等の熱処理を行い、次に、仕上げ加
工の少なくとも最後は研削加工により行い、次に、金型
の表面の、曲げ加工時、板材が接触する部分に放電加工
により硬質セラミックス被膜を形成する表面硬化処理を
行う方法としている。
【0022】第3発明によると、本硬化処理により形成
された硬質セラミックス被膜は従来の硬化処理による硬
化層に比べて非常に硬度が高い。(例えばマイクロビッ
カース硬度(HV)2500〜3000程度)したがっ
て、ステンレス鋼板やアルミニウム合金板材等を曲げ加
工しても、金型及び成形品に焼き付けや溶着現象等の曲
げ傷が発生することがなくなる。これにより、金型の寿
命及び成形品の品質を向上できる。また、金型を熱処理
により素材の強度と硬度を得た後に仕上げ加工するの
で、金型の仕上げ精度がよい。また、上記表面硬化処理
を放電加工により行うので、金型に高熱がかかることが
なく、表面硬化処理による歪みが発生しない。したがっ
て、切削加工による金型の寸法精度と表面粗さを維持で
き、よって表面硬化処理後に歪み修正と仕上げの作業工
程が不要となり、製作期間は短縮され、製造コストも低
減できると共に、長尺物の(例えば3000〜4000
mmの)金型でも硬化処理による歪みが無くなるので容易
に高精度の金型を製作できる。さらに、仕上げ加工の最
後を少なくとも研削加工により行って金型の表面粗さを
滑らかにし、この後放電加工による硬質セラミックス被
膜を形成する表面硬化処理を行うので、研削加工により
できた微細な研削目はこの硬質セラミックス被膜により
均されて平滑な表面になる。これにより、曲げ加工時、
板材が接触する部分の表面粗さが滑らかになるので、溶
着現象や焼き付けを無くすことができる。また、仕上げ
加工を表面硬化処理の前工程に行うことにより、表面硬
化処理により形成された硬化層を研削して硬度にムラを
発生することもなくなるので、高硬度で硬化され、均一
な硬度のプレスブレーキ用金型を製作できる。
【0023】第4発明は、第1〜3発明のいずれかのプ
レスブレーキ用金型の製造方法に基づいて、前記放電加
工による表面硬化処理の後、金型の板材が接触する部分
をバフ仕上げまたはホーニング仕上げ等の磨き加工を行
う方法としている。
【0024】第4発明によると、放電加工により硬質セ
ラミックス被膜を形成する表面硬化処理を行った後に、
バフ仕上げまたはホーニング仕上げを行うことにより、
切削加工による仕上げ面に残っているカッタマークある
いはツースマークと呼ばれる僅かの凹凸、あるいは、研
削加工による仕上げ面に残る、といし車の研削目の僅か
の凹凸が除去され、金型は滑らかな表面に仕上がる。し
たがって、金型の表面の、曲げ加工材料の接触する部分
の表面硬度は高く、かつ面粗さも滑らかとなるので、ス
テンレス鋼板あるいはアルミ合金板をV曲げ加工して
も、曲げ傷および溶着現象が発生しにくく、金型の寿命
を向上できると共に、曲げ加工品の品質を向上できる。
【0025】第5発明は、第1〜4発明のいずれかのプ
レスブレーキ用金型の製造方法に基づいて、前記放電加
工による表面硬化処理は、放電加工を行う電極と金型と
を相対的に移動させて行う方法としている。
【0026】第5発明によると、放電加工により硬質セ
ラミックス被膜を形成する表面硬化処理を行う時に、放
電加工を行う電極とプレスブレーキ用金型とを同時に相
対的に移動させて表面硬化処理を行うので、放電加工に
よる表面硬化処理装置の電極と金型の移動方向距離が短
くなり、設置面積を小さくできる。これにより、長尺物
(例えば3000mm〜4000mmの長さにした1体物)
の表面硬化処理を行う機械を小型化できる。
【0027】第6発明は、板材の曲げ加工を行うプレス
ブレーキ用金型において、金型の表面に放電加工により
硬質セラミックス被膜を形成している。
【0028】第6発明によると、放電加工の硬化処理に
より形成された硬質セラミックス被膜は従来の硬化処理
による硬化層に比べて非常に硬度が高くなる。したがっ
て、ステンレス鋼板やアルミニウム合金板材等を曲げ加
工しても、金型及び成形品に焼き付けや溶着現象等の曲
げ傷が発生することがなくなる。これにより、金型の寿
命及び成形品の品質を向上できる。また、硬質セラミッ
クス被膜の形成を放電加工により行うので、金型に高熱
がかかることがなく、表面硬化処理による歪みが発生し
ない。したがって、仕上げ加工を行ってから、表面硬化
処理後の歪み修正と仕上げの作業工程が不要となり、製
作期間を短縮でき、製造コストも低減できると共に、長
尺物の(例えば3000〜4000mmの)金型でも硬化
処理による歪みが無くなるので容易に高精度の金型が製
作可能となる。また、仕上げ加工を表面硬化処理の前工
程で行うことが可能となり、表面硬化処理により形成さ
れた硬化層を研削する必要がなくなるので、硬度にムラ
が発生しなくなり、均一な硬度の金型が得られる。
【0029】第7発明は、板材の曲げ加工を行うプレス
ブレーキ用金型において、金型の表面に放電加工により
Tiコーティングしている。
【0030】第7発明によると、放電加工によるTiコ
ーティングを行って形成されたTi化合物の硬質セラミ
ックス被膜(チタンカーバイトTi C等)は従来の硬化
処理による硬化層に比べて非常に硬度が高くなる。した
がって、ステンレス鋼板やアルミニウム合金板材等を曲
げ加工しても、金型及び成形品に焼き付けや溶着現象等
の曲げ傷が発生することがなくなる。これにより、金型
の寿命及び成形品の品質を向上できる。また、硬質セラ
ミックス被膜の形成を放電加工により行うので、金型に
高熱がかかることがなく、表面硬化処理による歪みが発
生しない。したがって、仕上げ加工を行ってから、表面
硬化処理後の歪み修正と仕上げの作業工程が不要とな
り、製作期間を短縮でき、製造コストも低減できると共
に、長尺物の(例えば3000〜4000mmの)金型で
も硬化処理による歪みが無くなるので容易に高精度の金
型が製作可能となる。また、仕上げ加工を表面硬化処理
の前工程で行うことが可能となり、表面硬化処理により
形成された硬化層を研削する必要がなくなるので、硬度
にムラが発生しなくなり、均一な硬度の金型が得られ
る。
【0031】第8発明は、第6又は7発明のプレスブレ
ーキ用金型に基づいて、金型表面硬度をHV2500〜
3000としている。
【0032】第8発明によると、金型表面硬度をHV2
500〜3000としたので、従来の硬化処理による硬
度に比べると非常に硬いので、ステンレス鋼板やアルミ
ニウム合金板材等を曲げ加工しても、金型及び成形品に
焼き付けや溶着現象等の曲げ傷が発生することがなくな
る。これにより、金型の寿命及び成形品の品質を向上で
きる。
【0033】第9発明は、第6〜8発明のいずれかのプ
レスブレーキ用金型に基づいて、放電加工による金型表
面硬化処理を行った後、バフ仕上げ等の磨き加工を行っ
ている。
【0034】第9発明によると、放電加工により硬質セ
ラミックス被膜を形成する表面硬化処理を行った後に、
バフ仕上げ等の磨き加工を行うことにより、仕上げ加工
時の切削による仕上げ面に残っているカッタマークある
いはツースマークと呼ばれる僅かの凹凸、あるいは、研
削による仕上げ面に残る、といし車の研削目の僅かの凹
凸が除去され、滑らかな表面の金型が得られる。したが
って、金型の表面の硬度は高く、かつ面粗さも滑らかと
なるので、ステンレス鋼板あるいはアルミ合金板をV曲
げ加工しても、曲げ傷および溶着現象が発生しにくく、
寿命が向上すると共に、曲げ加工品の品質を向上でき
る。
【0035】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る実施形態に
ついて、図1〜図10を参照して説明する。本発明は、
チタン(Ti )からなる電極を、炭素を構成元素とした
加工液中で放電させ、放電により電極から放出されたチ
タンイオンと、放電熱により分解された加工液中の炭素
とを化学反応させてチタンカーバイト(Ti C)とし、
対象ワークの表面にこのTi Cの硬質セラミックス被膜
を形成する放電現象を利用して行う放電表面処理をプレ
スブレーキ用金型の表面硬化処理に取り入れた、プレス
ブレーキ用金型の製造方法である。
【0036】図1は放電表面硬化処理装置の正面図を示
し、図2は図1のA−A断面図である。ラム1は、上下
動自在で、かつ左右方向に水平移動自在に本体フレーム
1aに支持されており、図示しない駆動手段により上下
方向及び水平左右方向に駆動されている。ラム1の下端
部には、チタン(Ti )からなる電極2を取り付けてあ
り、ラム1の下方に加工槽3が設置されている。この加
工槽3の中には、炭素を構成元素とする加工液4が入っ
ている。放電表面処理をするプレスブレーキ金型の図示
しないパンチまたはダイ5は加工槽3の中にセットさ
れ、加工液4に浸されている。図1および図2ではダイ
5を加工槽3にセットした状態を示している。また、ラ
ム1は、図示しない制御装置により上下方向及び水平左
右方向の位置及び移動速度が制御されるようにしてい
る。加工槽3の下面には複数のローラ10が配設されて
おり、このローラ10はテーブル7の上面に布設された
1対のレール11,11の上面を回転自在となってお
り、これにより加工槽3は図1の左右方向に移動可能と
なっている。その最大移動可能距離は加工槽3の左右長
さと等しくしてあり、硬化処理をするプレスブレーキ金
型の長さに合わせて移動量が図示しない制御装置に設定
できるようになっている。図1において、ボールネジ軸
6はテーブル7に回転自在に設置されており、ボールネ
ジ軸6に螺合したナット8,8が加工槽3の下部に取着
されている。ボールネジ軸6の軸端部にはボールネジ軸
6の回転方向および回転速度を制御する電動機9が連結
され、前記制御装置により電動機9を制御して、加工槽
3の位置と移動速度を制御するようにしている。
【0037】図3は本発明に係わるプレスブレーキ金型
の製造方法を表す第1実施形態の製造工程例である。こ
こで、各製造工程の番号はSを付して表しており、以後
の製造工程例でも同様である。S1で、プレスブレーキ
用金型のパンチとダイの素材を荒加工をする。荒加工
は、フライス盤、平削り盤等による切削加工を行う。な
お、S1の荒加工前に、素材の強度と硬度を確保し、材
料組織を調質するために、金型用素材を焼き入れ/焼き
戻しの熱処理を行う場合もある。次に、S2で、仕上げ
加工を行う。この仕上げ加工は、曲げ加工の対象の材料
の材質と形状および曲げ加工製品の要求品質等に基づい
て切削加工により行われる場合と、仕上げ工程の少なく
とも最後はより高い寸法精度と表面粗さに仕上げる研削
加工により行われる場合とがある。この後、S3で、放
電表面処理を行う。金型の被加工物に接触する部分、す
なわち硬化したい部分の形状に合わせた電極2を使用し
て硬質セラミックス被膜を形成する放電表面処理をし、
最後に、S4で品質検査をして完成金型とする。
【0038】本第1実施形態によると、放電表面処理に
より高硬度の硬化層が得られると共に、硬化処理時の熱
歪みがないので、放電表面処理後にこの歪を修正するた
めの研削加工を行っていない。従来の製造方法では、表
面硬化処理後に熱処理時に発生した歪みを修正し、この
後に研削加工を必要としていたが、本実施形態によれば
表面硬化処理後の歪み修正と仕上げの作業工程および磨
き(研削)加工工程が不要となる。したがって、金型製
作時間を短縮でき、製造コストも低減できる。また、研
削加工により硬化層を部分的に削除する必要もないの
で、硬度にムラが発生することもなく、均一な硬度の硬
化層が形成された金型を製作できる。したがって、プレ
スブレーキ用金型のパンチとダイとして必要な寸法精度
および表面粗さを有し、パンチの先端部分とVダイのV
溝の肩部分を硬化した品質のプレスブレーキ用金型を製
作できる。また、従来技術の1例では、プレスブレーキ
用金型のパンチとダイの表面硬度を高くするために、金
型素材として特殊鋼(SCM材、SK材等)を使用して
いるが、本実施形態の製造工程例では、使用材料はプレ
スブレーキ用金型として曲げ加工時の加圧力に耐える強
度があれば良いので、通常の高炭素鋼(S43C等)を
使用でき、必要表面硬度は放電表面処理により確保され
る。この結果、材料費を低減できる。
【0039】つぎに、図4に基づいて、第2実施形態の
製造方法を説明する。S11で、プレスブレーキ用金型
の素材を荒加工する。つぎに、S12において、焼き入
れ/焼き戻しの熱処理を行い、必要に応じて曲り直しを
行った後、S13で、仕上げ加工を行う。仕上げ加工
は、曲げ加工の対象の材料の材質と形状および曲げ加工
製品の要求品質等に基づいて、切削加工により行われる
場合と、仕上げ工程の少なくとも最後はより高い寸法精
度と表面粗さに仕上げる研削加工により行われる場合と
がある。この後、S14で放電表面処理を行い、S15
で品質検査をして完成金型とする。
【0040】本第2実施形態によると、プレスブレーキ
用金型の素材を荒加工後、熱処理を行うことにより、プ
レスブレーキ用金型として、曲げ加工時の加圧力に耐え
る機械的強度を有する材質にする。その後、必要に応じ
て曲り直しを行い、プレスブレーキ用金型のパンチとダ
イとして必要な寸法精度および表面粗さに仕上げ加工を
行う。次に、放電表面処理を行い、完成金型とする。し
たがって、プレスブレーキ用金型のパンチとダイとして
必要な機械的強度、寸法精度および表面粗さを有し、パ
ンチの先端部分とVダイのV溝の肩部分を硬化した品質
のプレスブレーキ用金型を製作できる。また、放電表面
処理後に、研削加工が不要となるので、製作時間が短縮
され、製造コストも低減できる。また、研削加工により
硬化層を削除する必要がなく、よって硬度にムラが発生
することもないので、均一な硬度の金型を製作できる。
【0041】図5に基づいて、第3実施形態の製造方法
について説明する。S21で、プレスブレーキ用金型の
パンチとダイの素材を荒加工する。つぎに、S22にお
いて焼き入れ/焼き戻しの熱処理を行い、必要に応じて
曲り直しを行った後、S23で仕上げ加工を行う。仕上
げ加工は、曲げ加工の対象の材料の材質と形状および曲
げ加工製品の必要品質等に基づいて、切削加工により行
われる場合と、仕上げ工程の少なくとも最後はより高い
寸法精度と表面粗さに仕上げる研削加工により行われる
場合とがある。この後、S24で放電表面処理を行い、
そしてS25で磨き加工を行う。この磨き加工により、
バフ仕上げにより金型の被加工物に接触する部分を鏡面
仕上げを行う。最後に、S26で品質検査をして完成金
型とする。
【0042】本第3実施形態によると、放電表面処理後
にバフ仕上げまたはホーニング仕上げ等の磨き加工をす
る。この磨き加工は、放電表面処理後に、前仕上げ加工
工程の切削加工による仕上げ面に残るカッタマークある
いはツースマークと呼ばれる僅かの凹凸、あるいは、研
削加工による仕上げ面に残る、といし車の研削目の僅か
の凹凸等を除去して、滑らかな表面に仕上げる。これに
より、金型の表面の、曲げ加工材料の接触する部分は、
放電表面処理により表面硬度は高く形成され、磨き加工
により面粗さも滑らかとなる。したがって、ステンレス
鋼板あるいはアルミ合金板のV曲げ加工時、VダイのV
溝の肩部分に接触して発生する溶着現象等の曲げ傷が発
生しなくなり、曲げ加工品の品質が向上する。
【0043】図6は第4実施形態の製造方法を示し、同
図に基づいて説明する。S31で、プレスブレーキ用金
型のパンチとダイの素材を荒加工する。つぎに、S32
において焼き入れ/焼き戻しの熱処理を行った後、必要
に応じて曲り直しを行い、S33で仕上げ加工を行う。
この仕上げ加工は、曲げ加工の対象の材料の材質と形状
および曲げ加工製品の必要品質等に基づいて切削加工に
より行われる場合と、仕上げ工程の少なくとも最後はよ
り高い寸法精度と表面粗さに仕上げる研削加工により行
われる場合とがある。この後、S34で、放電表面処理
を行う。この工程における放電表面処理は、放電加工を
行うための電極と金型とを相対的に移動させて行う。す
なわち、ラム1及び加工槽3を同時に反対方向に移動さ
せると共に、その相対速度が所定速度になるように、前
記制御装置(図示せず)は制御する。そして、つぎにS
35で磨き加工を行う。磨き加工は、ラップ仕上げある
いはバフ仕上げにより、金型の被加工物に接触する部分
を鏡面仕上げを行う。最後に、S36で品質検査をして
製品とする。
【0044】本第4実施形態によると、長尺の金型を、
例えば3000〜4000mmの長さにした1体物で製作
する場合、放電加工用電極とプレスブレーキ用金型とを
同時に制御して相対的に移動させ、放電表面処理を行
う。したがって、段差跡の無い外観品質の曲げ製品を曲
げ加工するときに必要な長尺物の金型を処理できる放電
表面処理装置でも、その左右方向(移動方向)寸法を小
さくできる。また、放電表面処理後に磨き加工を行う。
この磨き加工は、処理後に、前工程の切削加工による仕
上げ面に残るカッタマークあるいはツースマークと呼ば
れる僅かの凹凸、あるいは、研削加工による仕上げ面に
残る、といし車の研削目の僅かの凹凸を除去し、滑らか
な表面に仕上げる。このように、金型の表面の、曲げ加
工材料が接触する部分の表面硬度は高く、かつ面粗さも
滑らかとなるので、ステンレス鋼板あるいはアルミ合金
板のV曲げ加工時、VダイのV溝の肩部分に接触して発
生する溶着現象等の曲げ傷が無くなり、曲げ加工品の品
質が向上する。
【0045】本発明者らは、本発明に係わる金型を製作
し、曲げ加工後の金型および成形品に発生する曲げ傷の
程度を実験により確認した。そして、従来の金型との比
較を行ったので、この比較結果を以下に説明する。図7
〜図10は、放電表面処理をプレスブレーキ用金型の硬
化に取り入れたプレスブレーキ用金型と、従来技術の製
造方法により製作したプレスブレーキ用金型とをそれぞ
れ使用してステンレス鋼板を曲げ加工した場合の、成形
品とVダイの肩部分との表面拡大写真である。図7は、
上記の第4実施形態の製造工程により製作したVダイを
使用して板厚1.0mmのステンレス鋼板を200枚、9
0度の曲げ角度に曲げ加工した後のVダイの肩部分の表
面を50倍に拡大した図面に代わる写真である。図8
は、従来技術の製造方法により熱処理した後、研削加工
をし、ラッピング仕上げをして製作したVダイを使用し
て、図7と同一条件の板厚1.0mmのステンレス鋼板を
200枚、90度の曲げ角度に曲げ加工した後のVダイ
の肩部分の表面を50倍に拡大した図面に代わる写真で
ある。図7は、Vダイの肩部分に肌荒れやピンポイント
状の焼き付きが発生していない。しかしながら、図8に
示す従来技術による製造方法により製作したVダイの肩
部分には、焼き付き現象が発生している。図7と図8の
Vダイの肩部分の焼き付き現象の有無の相違は、放電表
面処理によるものである。
【0046】放電表面処理により、パンチの先端部分お
よび/またはダイの肩部分に硬質セラミックス被膜を形
成する。この放電表面処理による硬質セラミックス被膜
は、素材との密着力が強く、被膜の剥離が起きにくい。
また、被膜の厚さは5μm〜10μmであり、母材内部
に5μm程度の浸透硬化層を形成する。しかもこの硬質
セラミックス被膜を形成した部分の表面硬度はマイクロ
ビッカース硬度(HV)2500〜3000と非常に硬
く、被膜の耐磨耗性は、表面硬化の無処理の場合やPV
D処理に比べ格段に優れていることが特徴である。した
がって、本発明に係る表面処理による金型で曲げ加工し
た場合、図7に示すようにVダイの肩部分の焼き付き現
象が発生しなくなる。この結果、プレスブレーキ用金型
の寿命を向上でき、成形品の曲げ傷がなくなり、加工品
質を大幅に向上できる。
【0047】また、放電表面処理は、加工槽の加工液の
中に被加工物を浸して処理し、加工液の温度は被加工物
に熱歪みを発生させない温度であるため、細長い形状の
プレスブレーキ用金型を放電表面処理しても、熱歪みに
よる変形がないので、仕上げ加工をした後に、放電表面
処理をしても、プレスブレーキ用金型としての寸法精度
を維持できる。したがって、第1〜第4実施形態の製造
方法により、長尺の(例えば3000〜4000mmの)
金型を製作しても、高精度で、硬度ムラがないように製
作できる。
【0048】実用例1として、特に、段差跡の無い外観
品質の曲げ製品を曲げ加工するために、プレスブレーキ
用金型のパンチおよび/またはダイを、3000〜40
00mmの長さにした1体物で製作する場合に、この表面
硬化処理をして熱歪みによる変形がないことによりプレ
スブレーキ用金型の必要硬度を確保し、製作時間も短縮
できる。
【0049】実用例2として、シマ鋼板を曲げ加工する
場合、シマ鋼板の凸部をプレスブレーキ用金型のダイの
肩部で圧迫しながら曲げ加工するとき、あるいは、パン
チの先端部でシマ鋼板の凸部を圧迫しながら曲げ加工す
るとき、Vダイの肩部分またはパンチの先端部分は局部
的に押圧され、焼き付き、亀裂の発生または破損するこ
とがある。しかし、プレスブレーキ用金型に放電表面処
理をすることにより、硬度を従来の金型よりも高くする
ことができ、シマ鋼板の凸部の硬度よりも硬度差を付け
られるので、プレスブレーキ金型の表面にこのような不
具合の発生を防止することができる。
【0050】図9,10は、板厚1.0mmのステンレス
鋼板を90度の曲げ角度に曲げ加工するのを200回繰
り返し、200枚目の成形品のVダイの肩部分に接触し
た部分の表面を50倍に拡大した図面に代わる写真であ
り、図9は本発明による表面処理により、図10は従来
技術による。図9は、図7に示した放電表面処理のVダ
イを使用した場合を示しており、曲げ加工時、Vダイの
肩部分に圧迫されながら滑り込んだ材料の表面部分に
は、溶着現象や焼き付けが発生せず、僅かの押圧による
痕の発生があるが、これは非常に小さい。図10は、図
8に示した従来技術の製造方法によるVダイを使用した
場合を示しており、曲げ加工時に発生した、曲げ傷痕と
Vダイの肩部分の接触による溶着現象を発生している。
このように、図7,9に示すように、プレスブレーキ
用金型のダイの製造方法に放電表面処理を採用すること
により、Vダイの肩部分に肌荒れやピンポイント状の焼
き付きが殆ど発生していない。また、このVダイを使用
することにより、ステンレス鋼板のような高硬度の薄板
鋼板を曲げ加工した場合にも、曲げ加工時、Vダイの肩
部分に接触する材料の表面部分には、曲げ加工の滑り込
み時に生じた僅かの押し圧による痕の発生する程度であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電表面硬化処理装置の正面図を示す。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明に係わるプレスブレーキ金型の製造方法
を表す第1実施形態の製造工程例である。
【図4】本発明に係わるプレスブレーキ金型の製造方法
を表す第2実施形態の製造工程例である。
【図5】本発明に係わるプレスブレーキ金型の製造方法
を表す第3実施形態の製造工程例である。
【図6】本発明に係わるプレスブレーキ金型の製造方法
を表す第4実施形態の製造工程例である。
【図7】放電表面処理のVダイの肩部分を50倍に拡大
した図面に代わる写真である。
【図8】従来技術の製造方法によるVダイの肩部分を5
0倍に拡大した図面に代わる写真である。
【図9】放電表面処理のVダイを使用して曲げ加工した
成形品を50倍に拡大した図面に代わる写真である(板
厚1.0mmのステンレス鋼板を90度曲げ加工した20
0枚目のVダイの肩部分)。
【図10】従来技術の製造方法によるVダイを使用して
曲げ加工した成形品を50倍に拡大した図面に代わる写
真である(板厚1.0mmのステンレス鋼板を90度曲げ
加工した200枚目のVダイの肩部分)。
【図11】一般的なプレスブレーキ用金型のパンチとダ
イの形状である。
【図12】プレスブレーキによるV曲げ加工の金型と材
料の関係を示す。
【符号の説明】
1 放電加工機ラム 2 電極 3 加工槽 4 加工液 5 ダイ 6 ボールネジ軸 7 テーブル 8 ナット 9 電動機 10 ローラ 11 レール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C23C 26/00 C23C 26/00 D Fターム(参考) 3C059 AA01 AB01 DA02 DC01 EA00 HA03 HA09 JA04 JA05 4E050 JA01 JA08 JB01 JB03 JB06 JB08 JB09 JB10 JC02 JD07 4E063 AA01 AA19 AA20 BA07 JA06 JA10 MA18 MA21 4K042 AA25 BA03 DA01 DA02 DB01 4K044 AA03 AA06 AB10 BA02 BA12 BB01 BC05 CA02 CA07 CA34 CA67

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 板材の曲げ加工を行うプレスブレーキ用
    金型の製造方法において、 金型の素材を荒加工し、その後仕上げ加工を行い、 次に、金型の表面の、曲げ加工時板材が接触する部分に
    放電加工により硬質セラミックス被膜を形成する表面硬
    化処理を行うことを特徴とするプレスブレーキ用金型の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 板材の曲げ加工を行うプレスブレーキ用
    金型の製造方法において、 金型の素材を荒加工した後、 焼き入れ/焼き戻し、高周波焼き入れあるいはフレーム
    焼き入れ等の熱処理を行い、 次に、仕上げ加工を切削加工により行い、 次に、金型の表面の、曲げ加工時、板材が接触する部分
    に放電加工により硬質セラミックス被膜を形成する表面
    硬化処理を行うことを特徴とするプレスブレーキ用金型
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 板材の曲げ加工を行うプレスブレーキ用
    金型の製造方法において、 金型の素材を荒加工した後、 焼き入れ/焼き戻し、高周波焼き入れあるいはフレーム
    焼き入れ等の熱処理を行い、 次に、仕上げ加工の少なくとも最後は研削加工により行
    い、 次に、金型の表面の、曲げ加工時、板材が接触する部分
    に放電加工により硬質セラミックス被膜を形成する表面
    硬化処理を行うことを特徴とするプレスブレーキ用金型
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3記載のプレスブレーキ用金
    型の製造方法において、 前記放電加工による表面硬化処理の後、金型の板材が接
    触する部分をバフ仕上げまたはホーニング仕上げ等の磨
    き加工を行うことを特徴とするプレスブレーキ用金型の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4記載のプレスブレーキ用金
    型の製造方法において、 前記放電加工による表面硬化処理は、放電加工を行う電
    極と金型とを相対的に移動させて行うことを特徴とする
    プレスブレーキ用金型の製造方法。
  6. 【請求項6】 板材の曲げ加工を行うプレスブレーキ用
    金型において、 金型の表面に放電加工により硬質セラミックス被膜を形
    成したことを特徴とするプレスブレーキ用金型。
  7. 【請求項7】 板材の曲げ加工を行うプレスブレーキ用
    金型において、 金型の表面に放電加工によりTiコーティングしたこと
    を特徴とするプレスブレーキ用金型。
  8. 【請求項8】 請求項6又は7記載のプレスブレーキ用
    金型において、 金型表面硬度をHV2500〜3000としたことを特
    徴とするプレスブレーキ用金型。
  9. 【請求項9】 請求項6、7又は8記載のプレスブレー
    キ用金型において、 放電加工による金型表面硬化処理を行った後、バフ仕上
    げ等の磨き加工を行ったことを特徴とするプレスブレー
    キ用金型。
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