JP2000170752A - 回転装置および電磁クラッチ - Google Patents

回転装置および電磁クラッチ

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JP2000170752A
JP2000170752A JP10350308A JP35030898A JP2000170752A JP 2000170752 A JP2000170752 A JP 2000170752A JP 10350308 A JP10350308 A JP 10350308A JP 35030898 A JP35030898 A JP 35030898A JP 2000170752 A JP2000170752 A JP 2000170752A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 回転部材をベアリング3で支持する回転装置
において、従来の複列アンギュラ形玉軸受けでは、ベル
トのテンションによりベアリングの外輪が傾くと特定の
位置で内外輪とボール間に隙間ができ、回転中にボール
が内外輪に衝突して音が発生していた。本発明は、ボー
ルの衝突による異音発生を防止するものである。 【解決手段】 ベアリング3として、各々のボール33
が、内輪31と2点で接触し外輪32と2点で接触す
る、単列4点接触玉軸受けを採用した。これによれば、
ベルト110のテンションDによりロータ2や外輪32
が傾けられた状態でも、各ボール33は少なくとも内外
輪31、32に各々1点ずつ接触した状態が保たれ、ベ
アリング3からの異音発生を防止することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転部材をベアリ
ングで支持する回転装置および電磁クラッチに関し、例
えば車両用空調装置の圧縮機作動の断続を行う電磁クラ
ッチや、車両の補機駆動用ベルトの張力を調整するベル
トテンショナー等に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】従来、図3,4に示すように、車両用空
調装置の圧縮機用電磁クラッチ(回転装置)100は、
車両用エンジンの回転力がベルト110を介して電磁ク
ラッチのプーリ101に入力され、このプーリ101と
共にロータ(回転部材)102が回転する。電磁コイル
103に通電中はアーマチャ(従動側回転部材)104
がロータ102に吸着され、アーマチャ104やハブ
(従動側回転部材)105を介して、ロータ102の回
転が圧縮機(従動側機器)120の回転軸121に伝達
される。
【0003】ロータ102の内周部と圧縮機120の円
筒ボス部(支持部材)122との間にはベアリング10
6が配置され、このベアリング106によりロータ10
2が回転自在に支持されている。そして、この種の圧縮
機用電磁クラッチにおいて一般的に使用されるベアリン
グ106は、内輪106aと外輪106bの間にボール
106cが2列配置され、各ボール106cが内輪10
6aと外輪106bに各々1点で接触し、かつ接触角α
を有する、いわゆる複列アンギュラ形玉軸受である。こ
こで、図4中の符号a〜hは、内外輪106a、106
bとボール106cの接触点を示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
車両用空調装置の圧縮機用電磁クラッチにおいて、異音
が発生するものがあり、本発明者が異音発生源や発生メ
カニズムについて実験検討したところ、ベアリング10
6から発生している異音を確認できた。また、このベア
リング106からの異音は、回転数が低い時や圧縮機1
20周囲温度が低い時、さらにベアリング106内のグ
リースが洩れていたり、グリースの粘度が低下している
場合に発生しやすいことが判明した。
【0005】そして、上記のことを踏まえて詳細に検討
したところ、次のような発生メカニズムであることがわ
かった。すなわち、ベルト110のテンションD(ベル
ト軸力)の作用線Eが、ベアリング106の径方向中心
線Fからずれている場合、ベアリング106は内外輪1
06a、106bとボール106c間に微小(40μ程
度)のラジアル方向隙間を持っているため、ベルト11
0のテンションDによるモーメントにより、外輪106
bがプーリ101やロータ102と共に図3、4で反時
計方向に微小ながら回動されて傾く。
【0006】ここで、ベアリング106は、ボール10
6cが2列配置されていることや接触角αの向き等が関
係して、ベアリング106において図4の左側の第1列
では、上方に位置するボール106cが接触点a,bに
て内外輪106a、106bに共に接触し、図4の右側
の第2列では下方に位置するボール106cが接触点
g,hにて内外輪106a、106bに共に接触した状
態が保たれる。
【0007】しかし、外輪106bが図4で反時計方向
に回動されて傾くことにより、ベアリング106の第1
列の下方側と第2列の上方側では、内外輪106a、1
06b間の間隔が拡がる。従って、図5に示すように、
ベアリング106の第1列の下方側では内外輪106
a、106bとボール106c間に隙間が生じ、外輪1
06bが矢印G方向に回転するのに伴いボール106c
も矢印G方向に転動し、ボール106cは最下部に至る
少し前の位置で、重力と遠心力により内輪106a側か
ら外輪106b側に落下し、その際に衝突音が発生する
ものである。
【0008】一方、図6に示すように、ベアリング10
6の第2列の上方側では内外輪106a、106bとボ
ール106c間に隙間が生じるため、ボール106cは
最上部付近で重力により落下し、ボール106cと内輪
106aとの衝突音が発生する。そして、回転数が高く
なるとボール106cに作用する遠心力が増加し、ボー
ル106cが常時外輪106bに接することになるため
音は発生しなくなる。従って、低回転域でのみ使用され
る場合や、車両用エンジンのように低回転域から高回転
域まで回転数が変動する駆動源によって回転される場合
に、上記の異音の問題が生じるものである。
【0009】なお、圧縮機120周囲温度が高い時は、
アルミニュウム製の円筒ボス部122と鉄製の内輪10
6aとの線膨張係数の差により、内輪106aが円筒ボ
ス部122によって押し拡げられて、ベアリング106
のラジアル方向隙間が減少し、音が発生しにくくなる。
また、ベアリング106内に所定の粘度のグリースが十
分入っておれば、グリースがクッション材的な役割を果
たすため、この場合も音は発生しにくい。
【0010】ところで、本発明者がさらに他の回転装置
についても調べたところ、車両用エンジンにて駆動さ
れ、かつ複列アンギュラ形玉軸受を使用した回転装置で
は、同様のメカニズムで異音が発生することがわかっ
た。その回転装置の例としては、車両用空調装置の可変
容量圧縮機にエンジンの回転を常時伝達し、かつ圧縮機
ロック等の過負荷時に圧縮機への回転伝達経路を遮断す
るトルクリミッター機能を持つ回転伝達装置(回転装
置)や、車両の補機駆動用ベルトの張力を調整するベル
トテンショナー(回転装置)等がある。
【0011】本発明は上記の点に鑑みてなされたもの
で、回転部材をベアリングで支持する回転装置や電磁ク
ラッチにおいて、ボールと内外輪の衝突により発生して
いたベアリングからの異音を防止することを目的とす
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1ないし4に記載の発明では、回転駆動源か
らの回転力を受けて回転する回転部材(2)をベアリン
グ(3)にて支持する回転装置において、ベアリング
(3)は、内輪(31)と外輪(32)の間に多数のボ
ール(33)が単列配置され、この各々のボール(3
3)が、内輪(31)と2点で接触可能であると共に外
輪(32)と2点で接触可能に構成されていることを特
徴としている。
【0013】これによれば、ボール(33)が単列配置
され、各々のボール(33)が内輪(31)と2点で接
触可能であると共に外輪(32)と2点で接触可能にし
ているため、外力により外輪(32)が傾けられた場合
でも、各ボール(33)と内輪(31)の2つの接触点
のうち一方の接触点は離れるものの他方の接触点は接触
状態が常に保たれ、同様に各ボール(33)と外輪(3
2)との間においても一方の接触点で接触状態が常に保
たれる。
【0014】従って、従来のようなボール(33)が重
力により落下して音が発生するという現象が発生しなく
なり、ベアリング(3)からの異音発生を防止すること
ができる。なお、各々のボール(33)が内輪(31)
と2点で接触可能であると共に外輪(32)と2点で接
触可能であっても、仮にボール(33)を2列配置した
場合は、外輪(32)が傾くことにより、2列のうち一
方の列側では外輪(32)が内輪(31)側に押され、
他方の列側では外輪(32)が内輪(31)から遠ざか
り、従って他方の列側で内外輪(31、32)とボール
(33)間に隙間が発生してしまう。
【0015】これに対し、本発明ではボール(33)を
単列配置しているためそのような隙間は発生せず、上記
のように各ボール(33)が内外輪(31、32)に各
々1点ずつ接触した状態が常に保たれる。また、請求項
2に記載の発明のように、内輪(31)および外輪(3
2)の軌道面(31b,31c,32b,32c)にお
けるボール(33)が接触する部位を、ボール(33)
の半径よりも大きな曲率半径で形成することにより、各
々のボール(33)が、内輪(31)と2点で接触可能
であると共に外輪(32)と2点で接触可能にすること
ができる。
【0016】また、請求項3に記載の発明では、ベアリ
ング(3)は、内輪(31)と外輪(32)の間の空間
(34)がシール手段(36)によってシールされ、そ
の空間(34)にボール(33)が配置されると共にグ
リースが封入されている。これによれば、何らかの要因
で内外輪(31、32)とボール(33)間に隙間がで
きたとしても、グリースがクッション材的な役割を果た
すため、ボール(33)と内外輪(31、32)との衝
突による異音発生を防止することができる。しかも、グ
リースが封入された空間はシール手段(36)によって
シールされているので、グリース洩れが防止され、グリ
ースによる異音発生防止効果が継続的に得られる。
【0017】また、請求項4に記載の発明では、回転部
材(2)に対してベアリング(3)の径方向に作用する
力(D)の作用線(E)と、ベアリング(3)のボール
(33)中心点を通る径方向中心線(A)とが、ベアリ
ング(3)の軸方向にずれており、外輪(32)が傾い
た際に、ボール(33)が内輪(31)と1点で接触す
ると共に外輪(32)と1点で接触することを特徴とし
ている。
【0018】これによれば、回転部材(2)に対してベ
アリング(3)の径方向に作用する力(D)により外輪
(32)が傾けられても、ボール(33)と内外輪(3
1、32)との接触状態が保たれ、ベアリング(3)か
らの異音発生を確実に防止することができる。また、請
求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか
1つに記載の回転装置と、通電によって電磁力を発生す
る電磁コイル(5)と、従動側機器(120)に連結さ
れた従動側回転部材(8、12)とを備え、電磁コイル
(5)の発生する電磁力によって従動側回転部材(8、
12)を回転部材(2)に吸着して、回転部材(2)の
回転を従動側機器(120)に伝達することを特徴とし
ている。
【0019】これによれば、電磁コイル(5)への通電
の断続によって、従動側機器(120)への回転の伝達
を断続する電磁クラッチにおいて、請求項1ないし4と
同様の効果が得られる。なお、上記した括弧内の符号
は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を
示すものである。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示す一実施形
態について説明する。図1は本発明を電磁クラッチ(回
転装置)に適用した例を示すもので、1は駆動側プーリ
で、ベルト110を介して車両用エンジンから回転力を
受けて回転するものである。このプーリ1は多重Vベル
ト110が係合される多重V溝を持ったプーリ部1aが
一体形成されており、鉄系金属で製作されている。
【0021】2は断面コの字形状の2重円筒形状に形成
された駆動側ロータ(回転部材)で、鉄系金属(強磁性
体)で製作されており、プーリ1とは溶接等の接合手段
で一体に接合されている。このロータ2の内周部には、
ベアリング3(詳細後述)が圧入され、このベアリング
3によりロータ2は、圧縮機(従動側機器)120のア
ルミニュウム製のフロントハウジング123の円筒ボス
部122(支持部材)に回転自在に支持されるようにな
っている。ベアリング3は円筒ボス部122の外周に嵌
合され、サークリップ124にて位置決め固定されてい
る。ここで、圧縮機は車両用空調装置の冷凍サイクルの
冷媒圧縮用のものである。
【0022】4は固定磁極部材としての役割を果たすコ
イルハウジングで、断面コの字形状の2重円筒形状に鉄
系金属(強磁性体)で形成されている。このコイルハウ
ジング4の内部には電磁コイル5が樹脂部材6により絶
縁固定されている。この樹脂部材6はエポキシ樹脂、不
飽和ポリエステルのような比較的低温(130〜140
°C)で成形できる樹脂材料をコイルハウジング4の内
部空間に注入し成形したものである。
【0023】また、コイルハウジング4は前記ロータ2
の断面コの字形状の内部空間内に微小隙間を介して配設
されており、このコイルハウジング4の背面部には鉄系
金属でリング状に形成されたステー7が点溶接等により
接合されている。このステー7を介してコイルハウジン
グ4は圧縮機120のフロントハウジング123に固定
されるようになっている。
【0024】前記ロータ2の半径方向に延びる摩擦面2
aには円周方向に延びる円弧状の磁気遮断溝2b、2c
が形成してあり、さらに半径方向外方の磁気遮断溝2b
の部位には摩擦材2dが配設され、伝達トルクの向上を
図るようにしてある。8はロータ2の摩擦面2aに対向
して配設されたアーマチャで、リング状に鉄系金属(強
磁性体)で形成されている。このアーマチャ8は電磁コ
イル5の非通電時には後述する弾性部材9の弾性力によ
りロータ2の摩擦面2aから所定の微小距離離れた位置
に保持されるようになっている。このアーマチャ8に
も、円周方向に延びる円弧状の磁気遮断溝8aが形成さ
れている。
【0025】電磁コイル5への通電により発生する磁束
が流れる磁気回路は、上記ロータ2、コイルハウジング
4およびアーマチャ8により構成されている。10は鉄
系金属からなるリベットで、アーマチャ8を鉄系金属か
らなるリング状の保持部材11に固定するものである。
前記弾性部材9は保持部材11の円筒部11aの内周面
と、ハブ12の外側円筒部12aの外周面との間に配置
され、この両部材11、12に対して一体成形されて一
体に結合されている。なお、アーマチャ8およびハブ1
2が、従動側回転部材の主要部を構成している。
【0026】前記弾性部材9は前記両部材11、12の
間に円筒状に成形されており、その材質としては、自動
車の使用環境温度範囲(−30°C〜120°)に対し
て、トルク伝達およびトルク変動吸収の面で優れた特性
を発揮するゴムを用いることが好ましく、具体的には、
塩素化ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、
エチレンプロピレンゴム等のゴムがよい。
【0027】前記ハブ12は鉄系金属にて形成されてお
り、ハブ12の中心円筒部12bの内周には、圧縮機1
20の回転軸121がスプライン結合により回り止め嵌
合され、ハブ12と圧縮機120の回転軸121はボル
ト130により一体に締めつけ固定されている。前記ベ
アリング3は、いわゆる単列4点接触形玉軸受で、図2
に示すように、リング状の内輪31とリング状の外輪3
2が同心状に配置され、内輪31と外輪32との間に形
成されたリング状の空間34に多数のボール33が単列
配置されている。
【0028】空間34に配置されるリング状のリテーナ
35は、ボール33が遊嵌合される穴部35aが周方向
に均等な間隔で所定の数だけ形成され、ボール33はそ
の穴部35aに挿入されて周方向に均等な間隔で配置さ
れる。ここで、内輪31、外輪32およびボール33の
材質は、いずれもSUJ2(高炭素クロム軸受鋼)であ
り、リテーナ35は強度面および成形性の面で優れるナ
イロンよりなる。
【0029】内輪31と外輪32の両側には溝31a,
32aが形成され、この溝31a,32aに、耐油性・
耐熱性に富むゴム(例えばニトリルゴム)で形成したリ
ップ36aと金属製のプレート36bとからなるオイル
シール36(シール手段)が組付けられている。そし
て、このオイルシール36によって空間34が密閉さ
れ、この密閉された空間34にグリース(*望ましい特
性、具体例等)が封入されている。
【0030】各々のボール33が、内輪31と2点で接
触可能で、かつ外輪32と2点で接触可能にするため
に、内外輪31、32を次のように加工している。ま
ず、内輪31の第1軌道面31bと第2軌道面31c
を、ボール33の半径よりも少し大きな一定の曲率半径
で加工することにより、ボール33と内輪31が2つの
接触点31d,31eで接触するようにし、また外輪3
2の第1軌道面32bと第2軌道面32cも、ボール3
3の半径よりも少し大きな一定の曲率半径で加工するこ
とにより、ボール33と外輪32が2つの接触点32
d,32eで接触するようにしている。また、接触角α
が約20°になるように加工されている。
【0031】さらに接触点31d,31e,32d,3
2eの位置関係を説明すると、ボール33の中心点を通
るベアリング3の径方向中心線Aを基準として、ベアリ
ング3軸方向の一端側(図2で左側)に内輪31の第1
接触点31dと外輪32の第1接触点32dが位置し、
ベアリング3軸方向の他端側に内輪31の第2接触点3
1eと外輪32の第2接触点32eが位置する。
【0032】次に、上記構成において実施形態の作動を
説明する。まず、自動車エンジンのクランクプーリの回
転がベルト110を介してプーリ1に伝達され、このプ
ーリ1と一体にロータ2は常時回転している。上記の状
態において、車両用空調装置を作動させるため、電磁コ
イル5に通電されると、コイルハウジング4からロータ
2、およびアーマチャ8を経てコイルハウジング4に戻
る磁気回路に磁束が流れる。これにより、ロータ2の摩
擦面2aとアーマチャ8との間に電磁吸引力が発生する
ので、アーマチャ8は弾性部材9の軸方向弾性力(図1
の左方向への力)に抗してロータ2の摩擦面2aに吸
引、吸着される。
【0033】この結果、ロータ2とアーマチャ8が一体
となって回転し、さらにアーマチャ8からリベット1
0、保持部材11、および弾性部材9を介してハブ12
に回転が伝達される。このハブ12には圧縮機120の
回転軸121が一体に結合されているので、この圧縮機
120の回転軸121にプーリ1の回転が伝達され、圧
縮機120が作動する。
【0034】ここで、圧縮機4の正常運転時には、ゴム
製の弾性部材9が圧縮機の作動によるトルク変動を吸収
する役割を果たしている。一方、電磁コイル5への通電
を絶つと、アーマチャ8は弾性部材9の軸方向弾性力
(図1の左方向への力)によりロータ2の摩擦面2aか
ら引き離され、圧縮機120へは回転が伝達されなくな
る。
【0035】ところで、電磁コイル5への通電状態にか
かわらず、エンジン回転中はその回転がベルト110を
介してプーリ1に伝達され、プーリ1とロータ2は常時
回転している。そして、ベルト110のテンションDの
作用線Eとベアリング3の径方向中心線Aとが、ベアリ
ング3の軸方向にずれており、しかもベアリング3は、
内外輪31、32とボール33間に微小(40μ程度)
のラジアル方向隙間を持っているため、ベルト110の
テンションDによるモーメントにより、外輪32がプー
リ1やロータ2と共に図1で反時計方向に微小ながら回
動されて傾く。
【0036】ここで、ベアリング3は、各々のボール3
3が内輪31と2点で接触すると共に外輪32と2点で
接触する、いわゆる単列4点接触形玉軸受であることか
ら、上記のように外輪32が微小回動された場合でも、
各々のボール33は少なくとも内外輪31、32に各々
1点ずつ接触した状態が常に保たれる。すなわち、外輪
32の反時計方向への微小回動により、図1において上
方に位置するボール33は、内輪31の第2軌道面31
cおよび外輪32の第1軌道面32bからは離れるもの
の、内輪31の第1軌道面31b上の第1接触点31d
で接触すると共に、外輪32の第2軌道面32c上の第
2接触点32eで接触している。また、図1において下
方に位置するボール33は、内輪31の第1軌道面31
bおよび外輪32の第2軌道面32cからは離れるもの
の、内輪31の第2軌道面31c上の第2接触点31e
で接触すると共に,外輪32の第1軌道面32c上の第
1接触点32dで接触している。
【0037】このように、各々のボール33は少なくと
も内外輪31、32に各々1点ずつ接触した状態である
ため、従来のようにボール33が重力により落下して音
が発生するという現象が発生しなくなり、ベアリング3
からの異音発生を防止することができる。なお、各々の
ボール33が内輪31と2点で接触可能であると共に外
輪32と2点で接触可能であっても、仮にボール33を
2列配置した場合は、外輪32が傾くことにより、2列
のうち一方の列側では外輪32が内輪31側に押され、
他方の列側では外輪32が内輪31から遠ざかり、従っ
て他方の列側で内外輪31、32とボール33間に隙間
が発生してしまう。
【0038】これに対し、本実施形態ではボール33を
単列配置しているためそのような隙間は発生せず、上記
のように各ボール33が内外輪31、32に各々1点ず
つ接触した状態が常に保たれる。また、ボール33が配
置される空間34にグリースを封入しているから、グリ
ースがクッション材的な役割を果たし、これによっても
ボール33と内外輪31、32との衝突による異音発生
を防止することができる。
【0039】しかも、グリースが封入された空間34は
オイルシール36によってシールされているので、グリ
ース洩れが防止され、グリースによる異音発生防止効果
が継続的に得られる。ところで、ベルト110のテンシ
ョンDの作用線Eとベアリング3の径方向中心線Aとが
完全に一致している場合は、外輪32は傾かずに図1の
下方に向かって真っ直ぐに押され、それにより図1の下
方で内外輪31、32間の間隔が拡がる。従って、その
位置では内外輪31、32とボール33間に隙間が生
じ、仮にグリースがない場合はボール33が内外輪3
1、32に衝突して異音が発生する。
【0040】これから理解されるように、ベルト110
のテンションDの作用線Eとベアリング3の径方向中心
線Aとが、ベアリング3の軸方向にずれていて、外力に
より外輪32が傾けられる場合に本発明は特に有効で、
このような回転装置にいわゆる単列4点接触形玉軸受を
採用することにより、外輪32が傾けられるのを利用し
て各ボール33が内外輪31、32に各々1点ずつ接触
した状態を保ち、ボール33と内外輪31、32との衝
突による異音発生を防止することができる。
【0041】なお、上記実施形態では、内外輪31、3
2の軌道面31b,31c,32b,32cを一定の曲
率半径としたが、必ずしもそれを一定にする必要はな
い。例えば、軌道面31b,31c,32b,32cに
おけるボール33が接触する部位は、ボール33の半径
よりも少し大きな曲率半径とし、そこから離れた位置で
はさらに大きな曲率半径にしてもよいし、また軌道面3
1b,31c,32b,32c全域で曲率半径を連続的
に変化させてもよい。
【0042】また、上記実施形態では、本発明を電磁ク
ラッチに適用した例を示したが、本発明はその他の回転
装置にも適用可能である。その回転装置の例としては、
車両用空調装置の可変容量圧縮機にエンジンの回転を
常時伝達し、かつ圧縮機ロック等の過負荷時に圧縮機へ
の回転伝達経路を遮断するトルクリミッター機能を持つ
回転伝達装置や、車両のエンジンに位置調整機構を介
して取り付けられ、位置調整機構で位置を調整すること
により補機駆動用ベルトの張力を調整するベルトテンシ
ョナー等がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のベアリングの拡大縦断面図である。
【図3】従来装置を示す縦断面図である。
【図4】図3の要部の拡大縦断面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】図3のC−C断面図である。
【符号の説明】
2…ロータ(回転部材)、3…ベアリング、31…内
輪、32…外輪、31b,31c,32b,32c…軌
道面、33…ボール、34…空間、36…オイルシール
(シール手段)、8、12…従動側回転部材の主要部を
構成するアーマチャおよびハブ、120…圧縮機(従動
側機器)、122…円筒ボス部(支持部材)。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転駆動源からの回転力を受けて回転す
    る回転部材(2)と、 この回転部材(2)の内周部に嵌合されて回転部材
    (2)を回転自在に支持するベアリング(3)と、 このベアリング(3)の内周部に嵌合されてベアリング
    (3)を支持する支持部材(122)とを備える回転装
    置において、 前記ベアリング(3)は、内輪(31)と外輪(32)
    の間に多数のボール(33)が単列配置され、この各々
    のボール(33)が、前記内輪(31)と2点で接触可
    能であると共に前記外輪(32)と2点で接触可能に構
    成されていることを特徴とする回転装置。
  2. 【請求項2】 前記ベアリング(3)の内輪(31)お
    よび外輪(32)は、前記ボール(33)が接触する軌
    道面(31b,31c,32b,32c)を有し、この
    軌道面(31b,31c,32b,32c)における前
    記ボール(33)が接触する部位は、前記ボール(3
    3)の半径よりも大きな曲率半径で形成されていること
    を特徴とする請求項1に記載の回転装置。
  3. 【請求項3】 前記ベアリング(3)は、内輪(31)
    と外輪(32)の間の空間(34)がシール手段(3
    6)によってシールされ、前記空間(34)に前記ボー
    ル(33)が配置されると共にグリースが封入されてい
    ることを特徴とする請求項1または2に記載の回転装
    置。
  4. 【請求項4】 前記回転部材(2)に対して前記ベアリ
    ング(3)の径方向に作用する力(D)の作用線(E)
    と、前記ベアリング(3)のボール(33)中心点を通
    る径方向中心線(A)とが、前記ベアリング(3)の軸
    方向にずれており、前記外輪(32)が傾いた際に、前
    記ボール(33)が前記内輪(31)と1点で接触する
    と共に前記外輪(32)と1点で接触することを特徴と
    する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の回転装
    置。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれか1つに記載
    の回転装置と、 通電によって電磁力を発生する電磁コイル(5)と、 従動側機器(120)に連結された従動側回転部材
    (8、12)とを備え、 前記電磁コイル(5)の発生する電磁力によって前記従
    動側回転部材(8、12)を前記回転部材(2)に吸着
    して、前記回転部材(2)の回転を前記従動側機器(1
    20)に伝達することを特徴とする電磁クラッチ。
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