JP2000145540A - 冷却空洞付きピストン耐摩環およびその製造方法 - Google Patents

冷却空洞付きピストン耐摩環およびその製造方法

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JP2000145540A
JP2000145540A JP10319582A JP31958298A JP2000145540A JP 2000145540 A JP2000145540 A JP 2000145540A JP 10319582 A JP10319582 A JP 10319582A JP 31958298 A JP31958298 A JP 31958298A JP 2000145540 A JP2000145540 A JP 2000145540A
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piston
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cooling cavity
resistant
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Sekihin Yo
楊  積彬
Kunio Hanada
久仁夫 花田
Hidetsugu Yamamoto
英継 山本
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Mitsubishi Motors Corp
Mitsubishi Materials Corp
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Mitsubishi Motors Corp
Mitsubishi Materials Corp
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F05INDEXING SCHEMES RELATING TO ENGINES OR PUMPS IN VARIOUS SUBCLASSES OF CLASSES F01-F04
    • F05CINDEXING SCHEME RELATING TO MATERIALS, MATERIAL PROPERTIES OR MATERIAL CHARACTERISTICS FOR MACHINES, ENGINES OR PUMPS OTHER THAN NON-POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES OR ENGINES
    • F05C2201/00Metals
    • F05C2201/02Light metals
    • F05C2201/021Aluminium

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ピストンリングの冷却効果を高める。製造性
および信頼性を向上させる。 【解決手段】 それぞれ金属系焼結材料からなる第1の
耐摩環構成材33と第2の耐摩環構成材34とを接合して、
これらの耐摩環構成材33,34間に冷却空洞32を形成す
る。両耐摩環構成材33,34の接合は焼結時の拡散接合に
よる。アルミニウム合金からなるピストン本体11への鋳
ぐるみに先立って、ピストン耐摩環31にはアルミニウム
合金を溶浸することが好ましい。ピストン耐摩環31に冷
却空洞32を形成することにより、この冷却空洞32をピス
トンリング19,20に近付けることが可能になる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関用エンジ
ンなどに利用される冷却空洞付きピストン耐摩環に関す
る。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】図7は内燃機関用エン
ジンに用いられる従来のピストンの一例を示している。
同図において、1はピストン本体で、このピストン本体
1は、例えばアルミニウム合金を材料として鋳造により
成形されたものである。2はピストン本体1に形成され
たピストンピン孔である。ピストン本体1の外周面には
複数のピストンリング溝3,4,5が形成されている。
これらのピストンリング溝3,4,5は、図示していな
いが、シリンダーの内周面を摺動するピストンリングが
それぞれ組み込まれる為のものである。特に頂面6側の
ピストンリング溝3,4に組み込まれるピストンリング
は燃焼室側に位置し、ガスシールと散熱作用を果たすも
のである。他のピストンリング溝5に組み込まれるピス
トンリングは潤滑管理用のオイルリングである。
【0003】特に頂面6側のピストンリング溝3と4は
高温耐摩耗性が要求される。ピストンリング溝3に組み
込まれるピストンリングよりも燃焼室側でピストンの外
周面とシリンダーの内周面との間の隙間の燃焼ガスは未
燃焼のまま排気ガスとして排出されてしまうので、排気
ガスの浄化のためには、頂面6とピストンリング溝3と
の間の距離aを極力小さくすることが望ましいが、この
距離aを小さくすると、ピストンリング溝3の温度が高
くなり、摩耗が多くなってガス漏れが発生するおそれが
ある。そこで、図7に示すピストンでは、頂面6側の2
つのピストンリング溝3,4をピストン本体1とは別の
ニレジスト鋳鉄からなるトレーガとも称するピストン耐
摩環7に形成している。ピストン耐摩環7は、ピストン
本体1の鋳造に際してこのピストン本体1に鋳ぐるまれ
る。
【0004】さらに、燃焼熱などに対してのピストンリ
ング溝3,4,5の冷却のために、その内側に冷却用の
オイルを通す環状の冷却空洞8を形成している。従来
は、例えば実公昭58−52346号公報などにも記載
されているように、ピストン本体1の鋳造に際して塩中
子を用いることにより冷却空洞8を形成するようにして
いる。塩中子は、ピストン本体1の鋳造後に水により溶
解されて取り出される。
【0005】しかし、このように塩中子を利用して冷却
空洞8を形成する場合、この冷却空洞8とピストンリン
グ溝3,4との間の距離bを小さくすることには限界が
ある。ピストンリング溝3,4の冷却効果を高める為に
は、前記距離bをより小さくした方がよい。
【0006】これに対して、例えば特開平5−2403
47号公報などに記載されているように、冷却空洞をピ
ストンリング溝に近付けることを目的として、ピストン
本体とも耐摩環本体部分とも別体の環状の部品(成型
体)を耐摩環本体部分の内周側に接合することにより冷
却空洞を形成することも提案されている。耐摩環本体部
分と成型体とを接合してなるピストン耐摩環は、ピスト
ン本体の鋳造時にこのピストン本体に鋳ぐるまれる。そ
して、前記公報に記載のピストン耐摩環では、成型体を
ステンレス鋼などの金属板により形成し、耐摩環本体部
分の内周面に形成したインロー状の嵌挿部に成型体を嵌
挿してアーク溶接などによって接合するようにしてい
る。なお、耐摩環本体部分はニレジスト鋳鉄などからな
る。
【0007】しかし、前記特開平5−240347号公
報に記載のピストン耐摩環では、耐摩環本体部分と成型
体との接合が不確実である問題がある。特に接合手段と
してアーク溶接を用いた場合、接合部にブローホールな
どの溶接欠陥が生じやすい。また、ピストン本体がアル
ミニウム合金からなる場合、前記公報に記載のようにニ
レジスト鋳鉄からなる耐摩環本体部分やステンレス鋼製
の板金からなる成型体ではピストン本体との鋳ぐるみ性
が悪いため、鋳ぐるみに先立ってピストン耐摩環にアル
ミニウム系の材料からなるメッキを施す必要があるが、
充分な接合強度が得られない上に、このような工程を加
えるとコストがかさむ。
【0008】本発明は、このような問題点を解決しよう
とするもので、ピストンリングの冷却効果を高めること
ができるとともに、製造性および信頼性を向上できる冷
却空洞付きピストン耐摩環およびその製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、前記
目的を達成するために、ピストン本体に鋳ぐるみにより
埋設されピストンリングが組み込まれる冷却空洞付きピ
ストン耐摩環において、それぞれ金属系焼結材料からな
る複数の耐摩環構成材を拡散接合により接合して、これ
らの耐摩環構成材間に冷却空洞を形成してなるものであ
る。
【0010】このように複数の耐摩環構成材を接合して
冷却空洞を形成することにより、この冷却空洞をピスト
ンリングに近付けて冷却効果を高めることが可能にな
る。また、金属系焼結材料からなる耐摩環構成材は形状
付与が比較的自由であるとともに、材料の選定の幅が広
く、高温耐摩耗性に優れるとともにピストン本体の材料
と熱膨張率が近い材料を選定できる点などに利点があ
り、溶浸などによってピストン本体との鋳ぐるみ性を向
上させることも容易である。さらに、複数の耐摩環構成
材を拡散接合で接合することにより、複数の耐摩環構成
材を容易にかつ確実に接合することができる。
【0011】請求項2の発明は、請求項1の発明の冷却
空洞付きピストン耐摩環において、環状の第1の耐摩環
構成材と環状の第2の耐摩環構成材とを軸方向に接合し
て、これらの耐摩環構成材間に冷却空洞を形成してなる
ものである。
【0012】冷却空洞付きピストン耐摩環は、環状のも
のであるから、焼結に際しては軸方向を上下方向とする
のが姿勢の安定性などの点で好ましい。したがって、請
求項2の発明の冷却空洞付きピストン耐摩環のように耐
摩環構成材を環状にして軸方向に接合すれば、焼結に際
して重力が第1の耐摩環構成材と第2の耐摩環構成材と
を相互に押し付るように作用し、拡散接合による接合を
確実に行える。
【0013】請求項3の発明は、請求項1または2の発
明の冷却空洞付きピストン耐摩環において、前記耐摩環
構成材に、前記ピストン本体と同系のAl合金材料を溶
浸させてなるものである。
【0014】これにより、ピストン本体に冷却空洞付き
ピストン耐摩環を鋳ぐるむ際、焼結材料の気孔からのガ
スの発生がなくなるとともに、ピストン本体と冷却空洞
付きピストン耐摩環との密着性が向上する。また、ピス
トン本体と冷却空洞付きピストン耐摩環との間の熱伝導
性も向上する。
【0015】請求項4の発明は、前記目的を達成するた
めに、ピストン本体に鋳ぐるみにより埋設されピストン
リングが組み込まれる冷却空洞付きピストン耐摩環の製
造方法において、金属を主成分とする原料粉末を圧縮し
て圧粉体を成形した後、この圧粉体からなる複数の耐摩
環構成材を組み合わせて焼結し、この焼結時に拡散接合
により複数の耐摩環構成材を接合して、これらの耐摩環
構成材間に冷却空洞を形成するものである。
【0016】請求項5の発明は、請求項4の発明の冷却
空洞付きピストン耐摩環の製造方法において、焼結時に
互いに接合される圧粉体からなる複数の耐摩環構成材を
同一形状としたものである。
【0017】これにより、冷却空洞付きピストン耐摩環
を構成する複数の耐摩環構成材となる圧粉体を成形する
際、成形用の金型を共通に利用することができる。
【0018】
【発明の実施形態】以下、本発明の冷却空洞付きピスト
ン耐摩環およびその製造方法の実施形態について、図面
を参照しながら説明する。最初に、ピストン本体及びピ
ストン耐摩環の構成について詳述する。本実施形態のピ
ストン耐摩環が用いられるピストンは内燃機関エンジン
用のものであり、図1、図4および図5に示すピストン
本体11により大部分が構成されている。このピストン本
体11は、アルミニウム合金であるAl−Si系合金を材
料として鋳造されたもので、内部に空洞部12を有してい
るとともに、この空洞部12に臨むピストンピン孔13を有
している。また、ピストン本体11の頂面14つまり燃焼室
に面する先端面には凹部15が形成されている。
【0019】そして、ピストンの外周面には複数の環状
のピストンリング溝16,17,18が形成されている。これ
らのピストンリング溝16,17,18は、図示していないシ
リンダーの内周面を摺動するピストンリング19,20,21が
それぞれ組み込まれる為のものである。頂面14から最も
離れたピストンリング溝18はピストン本体11に直接形成
されているが、他のピストンリング溝16,17は、ピスト
ン本体11とは別体の冷却空洞付きピストン耐摩環31に形
成されている。このピストン耐摩環31は、ピストン本体
11に一体的に鋳ぐるみにより埋設されたものである。ま
た、ピストン耐摩環31内には、冷却用のオイルを通すた
めの冷却空洞32が一体に形成されており、この冷却空洞
32にオイルを供給するための通路孔(図示していない)
がピストン本体11に形成されている。
【0020】ここで、前記ピストン耐摩環31の第1例に
ついて、図1から図3を参照しながら説明する。ピスト
ン耐摩環31は、それぞれ金属焼結材料からなる第1の耐
摩環構成材33と第2の耐摩環構成材34とを焼結時の拡散
接合により接合してなり、これらの耐摩環構成材33,34
間に前記冷却空洞32を形成したものである。そして、両
耐摩環構成材33,34はともに黒鉛析出鉄系焼結材料から
なっている。この材料は、拡散接合のために例えば通常
よりも銅を多く含有している。銅の含有量は、重量%で
通常2%程度であるが、本実施例では5〜15%とする。
材料成分の一例を示すと、次の通りである。Cr:0.5
〜5%,Mn:0.2〜1%,S:0.05〜1%,B:0.05
〜1%,C:0.5〜5%,Ni:1〜12%,Ti:0.5〜
5%,Cu:5〜15%を含有し、かつ素地はオーステナ
イト相を主体とし、気孔中に遊離黒鉛が析出、成長した
組織を有する鉄系焼結材料。
【0021】前記耐摩環構成材33,34はいずれも円環状
で、焼結後に加工されるピストンリング溝16,17を除け
ば同一形状になっており、その軸方向つまり上下方向に
接合されている。また、下側の第1の耐摩環構成材33に
は上方へ開口した凹部35が形成され、上側の第2の耐摩
環構成材34には下方へ開口した凹部36が形成され、これ
らの凹部35,36により冷却空洞32が形成されている。
【0022】つぎに、前記冷却空洞付きピストン耐摩環
31およびこの冷却空洞付きピストン耐摩環31を用いたピ
ストンの製造方法について説明する。ピストン耐摩環31
を構成する第1の耐摩環構成材33および第2の耐摩環構
成材34は、本実施例に於いては同一形状につき、同一金
型を使用し粉末成形する(粉末成形工程)。すなわち、
原料粉末を粉末成形プレスで加圧、圧縮して圧粉体を成
形する。その際の成形圧力は5〜7t/cm2とし、成形さ
れた圧粉体の密度比を80〜95%とする。なお、この粉末
成形の段階では、耐摩環構成材33,34にピストンリング
溝16,17は形成されておらず、耐摩環構成材33,34の外周
面は図2から図4に示すように円柱面になっている。一
方、凹部35,36は粉末成形の段階に形成できる。なお、
後にピストンリング溝16,17を形成するために、耐摩環
構成材33,34の外周面と凹部35,36との間にはある程度の
肉厚を確保しておく必要がある。重ねて説明するが、粉
末成形の段階では、第1の耐摩環構成材33と第2の耐摩
環構成材34とは同一形状である。
【0023】つぎに、第1の耐摩環構成材33となる圧粉
体と第2の耐摩環構成材34となる圧粉体とを組み合わせ
た状態で、すなわち軸方向を上下方向とした第1の耐摩
環構成材33となる圧粉体上に第2の耐摩環構成材34とな
る圧粉体を同軸的に載せた状態で、耐摩環構成材33,34
を焼結炉で加熱して焼結する(焼結工程)。この焼結時
の温度は若干高めで1140〜1250℃、焼結時間は30分〜1
時間とする。また、雰囲気ガスとしては天然ガスの変成
ガス、N2−H2あるいはアンモニア分解ガスを用い、吸
熱性還元雰囲気とする。この焼結に伴い、耐摩環構成材
33,34が液相を生じ、これらの耐摩環構成材33,34の接合
面での合金元素の拡散により両耐摩環構成材33,34が互
いに一体的に接合(拡散接合)される。このようにして
両耐摩環構成材34,33を接合することにより、それらの
凹部35,36によりピストン耐摩環31内に密閉された冷却
空洞32が形成される。
【0024】つぎに、焼結体からなる第1の耐摩環構成
材33と第2の耐摩環構成材34とを接合してなるピストン
耐摩環31にピストン本体11と同系の材料であるアルミニ
ウム合金を溶浸させる(溶浸工程)。溶浸材であるアル
ミニウム合金としては、ピストン本体11と同じくAC8
AあるいはAC8C(JIS規格)を用い、溶浸は真空
含浸により行う。より詳しく説明すると、ピストン耐摩
環31となる焼結体を700〜750℃に保持し、真空容器中で
1時間ほど真空引きすることにより、焼結体内の気孔に
溶浸材が円滑に含浸されるようにこの気孔内のガスを除
去した後、焼結体をアルミニウム合金の溶湯中に浸漬す
るとともに、8気圧を加圧して5〜60分保持する。これ
により、焼結体内の気孔中にアルミニウム合金が含浸さ
れる。
【0025】このようにして完成したピストン耐摩環31
をピストン本体11の重力鋳造に際してこのピストン本体
11に鋳ぐるむ(鋳造工程)。この鋳造においては、ピス
トン耐摩環31を鋳造用金型内に設置し、ピストン本体11
の材料であるAl−Si系合金を溶解して鋳造用金型内
に注入し、ピストン耐摩環31を一体化したピストン本体
11を成形する。
【0026】さらに、ピストン耐摩環31の外周部にピス
トンリング溝16,17を機械加工(切削加工)により形成
する。なお、このようにピストンリング溝16,17を後加
工により形成するのは、これらのピストンリング溝16,1
7の位置および寸法の精度を向上させるためである。
【0027】前述のように第1の耐摩環構成材33と第2
の耐摩環構成材34とを接合してピストン耐摩環31を構成
するとともに、このピストン耐摩環31内に冷却空洞32を
形成したので、この冷却空洞32をピストンリング溝16,1
7およびピストンリング19,20に近付けることができる。
つまり、冷却空洞32とピストンリング溝16,17との間の
距離bを小さくでき、これにより冷却効果を高めること
ができる。したがって、ピストン耐摩環31の高温下での
摩耗を抑制できる。その結果、ピストン本体11の頂面14
とピストンリング溝16との間の距離aを小さくすること
が可能になり、未燃焼のまま排気ガスとして排出されて
しまう燃焼ガスの量を少なくでき、排気ガスの浄化を図
れる。
【0028】また、耐摩環構成材33,34を金属系焼結材
料からなるものとし、これらの第1の耐摩環構成材33と
第2の耐摩環構成材34とを焼結時に拡散接合させるの
で、容易にかつ確実に接合できる。例えば耐摩環構成材
33,34を別々に焼結した後にさらに溶接により接合する
場合に比べ、工程がより少なくなる。そして、接合が確
実であることから、使用時に冷却空洞32からの冷却用の
オイルの漏れも確実に防止できる。複数の耐摩環構成材
を焼結接合する手段としては、拡散接合の他に焼結嵌め
もあるが、焼結嵌めは、複数の耐摩環構成材の焼結時の
寸法変化率の相違を利用するものであることから、複数
の耐摩環構成材に同一材料を用いることができない。こ
れに対して、拡散接合では、第1の耐摩環構成材33と第
2の耐摩環構成材34とに同一材料を用いることができ
る。
【0029】また、冷却空洞付きピストン耐摩環31は、
環状のものであるから、焼結に際しては軸方向を上下方
向とするのが姿勢の安定性などの点で好ましい。第1例
のピストン耐摩環31では、これを軸方向に環状の第1の
耐摩環構成材33と環状の第2の耐摩環構成材34とに分割
したので、その軸方向を上下方向としたとき両耐摩環構
成材33,34が上下に重なることになり、焼結に際して重
力が両耐摩環構成材33,34を相互に押し付るように作用
し、拡散接合による接合をより確実に行える。
【0030】さらに、粉末成形の段階では第1の耐摩環
構成材33と第2の耐摩環構成材34とが同一形状なので、
両耐摩環構成材33,34を同一の金型により成形できる。
したがって、生産性が向上するとともに金型製作費用な
どの低減も可能となる。
【0031】また、耐摩環構成材33,34の材料である金
属系焼結材料には、形状付与が比較的自由で材料の選定
の幅が広いなどの利点もある。例えば、前記実施例のよ
うに、耐摩環構成材33,34の材料として黒鉛析出鉄系焼
結材料を用いることができるが、この黒鉛析出鉄系焼結
材料は高温耐摩耗性に優れている一方、ピストン本体11
の材料であるAl−Si系合金と熱膨張率が近く、ピス
トン本体11との高い接合強度が得られる。加えて、相手
攻撃性も小さい。
【0032】さらに、ピストン本体11への鋳ぐるみに先
立ってピストン耐摩環31にアルミニウム合金を溶浸させ
ることにより、鋳ぐるみに際し、焼結体からなるピスト
ン耐摩環31の気孔からのガスの発生を防ぐことができ、
このガスの発生に起因する鋳造不良を防止できる。加え
て、ピストン本体11とピストン耐摩環31との密着性も向
上する。また、ピストン本体11とピストン耐摩環31との
間の熱伝導性が向上し、ピストン耐摩環31の高温下での
摩耗の抑制効果も得られる。しかも、溶浸は比較的低コ
ストで実施できる。
【0033】以上のようにして、高い冷却効果が得られ
るとともに生産性および信頼性に優れた冷却空洞付きピ
ストン耐摩環を提供できる。
【0034】なお、本発明は、前記実施例に限定される
ものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、
ピストン耐摩環31全体の形状は前記第1例のものには限
らず、種々の形状が可能である。例えば図4に示す第2
例のピストン耐摩環31は、その内周部31aをテーパー状
に傾斜させたものである。この傾斜は、ピストン本体11
の頂面14にある凹部15の角部の湾曲15aに合わせたもの
である。これにより、凹部15とピストン耐摩環31との間
にある程度の間隔を確保しなければならないという制約
下で冷却空洞32を極力大きくして、冷却効果を高めるこ
とが可能になる。
【0035】また、ピストン耐摩環を複数の耐摩環構成
材に分割する際の分割位置も前記第1例および第2例の
ものには限らず、種々のものがあり得る。例えば図5お
よび図6に示す第3例のピストン耐摩環31は、第1の耐
摩環構成材33が上部内周面41とこの上部内周面41の下縁
から径方向内方へ水平に屈曲した段差面42とを有してお
り、この段差面42に凹部35が形成されている。そして、
第2の耐摩環構成材34は、第1の耐摩環構成材33の段差
面42上に載った状態で上部内周面41の内周側に嵌合され
ている。このように、第1の耐摩環構成材33の上部内周
面41に第2の耐摩環構成材34を嵌合することにより、拡
散接合を行う焼結に際して両耐摩環構成材33,34を軸方
向のみならず径方向においても互いに確実に位置規制で
きる。
【0036】なお、本第3例のピストン耐摩環31ではそ
の外周部、つまりピストンリング19,20が組み込まれる
ピストンリング溝16,17が第1の耐摩環構成材33に形成
されるため、この第1の耐摩環構成材33についてのみ高
温耐摩耗性に優れた黒鉛析出鉄系焼結材料を用いれば良
く、第2の耐摩環構成材34の材料はより自由に選定でき
る。
【0037】さらに、各耐摩環構成材の材料や製法の細
部なども、前述のものには限らず、種々の変形があり得
る。
【0038】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、ピストン本体
に鋳ぐるみにより埋設される冷却空洞付きピストン耐摩
環において、それぞれ金属系焼結材料からなる複数の耐
摩環構成材を拡散接合により接合して、これらの耐摩環
構成材間に冷却空洞を形成したので、冷却空洞をピスト
ンリングに近付けて冷却効果を高めることができるとと
もに、冷却空洞を形成する複数の耐摩環構成材を容易に
かつ確実に接合できる。また、複数の耐摩環構成材がそ
れぞれ金属系焼結材料からなるので、形状を自由に付与
したり、例えば高温耐摩耗性に優れるとともにピストン
本体の材料と熱膨張率が近い材料を選定したり、溶浸な
どによってピストン本体との鋳ぐるみ性を向上させたり
することも可能になる。
【0039】請求項2の発明の冷却空洞付きピストン耐
摩環によれば、請求項1の発明の効果に加えて、環状の
第1の耐摩環構成材と環状の第2の耐摩環構成材とを軸
方向に接合して、これらの耐摩環構成材間に冷却空洞を
形成したので、焼結時に軸方向を上下方向とした場合に
重力が第1の耐摩環構成材と第2の耐摩環構成材とを相
互に押し付るように作用することから、第1の耐摩環構
成材と環状の第2の耐摩環構成材とをより容易にかつ確
実に接合できる。
【0040】請求項3の発明の冷却空洞付きピストン耐
摩環によれば、請求項1または2の発明の効果に加え
て、耐摩環構成材に、ピストン本体と同系の材料を溶浸
させたので、ピストン本体に冷却空洞付きピストン耐摩
環を鋳ぐるむ際、焼結材料の気孔からのガスの発生を防
ぐことができ、このガスの発生に起因する鋳造不良を防
止できることに加えて、ピストン本体と冷却空洞付きピ
ストン耐摩環との密着性をも向上できる。また、ピスト
ン本体と冷却空洞付きピストン耐摩環との間の熱伝導性
が向上し、冷却空洞付きピストン耐摩環の摩耗の抑制効
果も得られる。
【0041】請求項4の発明によれば、ピストン本体に
鋳ぐるみにより埋設される冷却空洞付きピストン耐摩環
の製造方法において、金属を主成分とする原料粉末を圧
縮して圧粉体を成形した後、この圧粉体からなる複数の
耐摩環構成材を組み合わせて焼結し、この焼結時に拡散
接合により複数の耐摩環構成材を接合して、これらの耐
摩環構成材間に冷却空洞を形成するので、冷却空洞をピ
ストンリングに近付けて冷却効果を高めることができる
とともに、冷却空洞を形成する複数の耐摩環構成材を容
易にかつ確実に接合できる。また、複数の耐摩環構成材
がそれぞれ金属系焼結材料からなるので、例えば高温耐
摩耗性に優れるとともにピストン本体の材料と熱膨張率
が近い材料を選定したり、溶浸などによってピストン本
体との鋳ぐるみ性を向上させたりすることも可能にな
る。
【0042】請求項5の発明の冷却空洞付きピストン耐
摩環によれば、請求項4の発明の効果に加えて、焼結時
に互いに接合される圧粉体からなる複数の耐摩環構成材
が同一形状であるので、これらの圧粉体の成形時に成形
用の金型を共通に利用することが可能となり、品質の均
一化並びに生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のピストン耐摩環の実施形態を示すもの
で、第1例のピストン耐摩環を鋳ぐるんだピストン本体
の断面図である。
【図2】同上ピストン耐摩環のみの断面図である。
【図3】同上ピストン耐摩環の一部を断面にした分解斜
視図である。
【図4】本発明のピストン耐摩環の実施形態を示すもの
で、第2例のピストン耐摩環を鋳ぐるんだピストン本体
の断面図である。
【図5】本発明のピストン耐摩環の実施形態を示すもの
で、第3例のピストン耐摩環を鋳ぐるんだピストン本体
の断面図である。
【図6】同上ピストン耐摩環の一部を断面にした分解斜
視図である。
【図7】従来のピストンの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
11 ピストン本体 19,20,21 ピストンリング 31 ピストン耐摩環 32 冷却空洞 33 第1の耐摩環構成材 34 第2の耐摩環構成材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02F 3/00 F02F 3/00 N G 301 301Z 301B 302 302Z F16J 9/00 F16J 9/00 A (72)発明者 花田 久仁夫 東京都千代田区丸の内1−5−1 三菱マ テリアル株式会社加工事業本部内 (72)発明者 山本 英継 東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 Fターム(参考) 3J044 AA09 AA18 BA04 BA09 BB05 BC01 BC03 CA06 DA09 EA01 EA10 4K018 AA29 HA01 HA04 JA09 JA12 KA08

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピストン本体に鋳ぐるみにより埋設され
    ピストンリングが組み込まれる冷却空洞付きピストン耐
    摩環において、それぞれ金属系焼結材料からなる複数の
    耐摩環構成材を拡散接合により接合して、これらの耐摩
    環構成材間に冷却空洞を形成してなることを特徴とする
    冷却空洞付きピストン耐摩環。
  2. 【請求項2】 環状の第1の耐摩環構成材と環状の第2
    の耐摩環構成材とを軸方向に接合して、これらの耐摩環
    構成材間に冷却空洞を形成してなることを特徴とする請
    求項1記載の冷却空洞付きピストン耐摩環。
  3. 【請求項3】 前記耐摩環構成材に、前記ピストン本体
    と同系の材料を溶浸させてなることを特徴とする請求項
    1または2記載の冷却空洞付きピストン耐摩環。
  4. 【請求項4】 ピストン本体に鋳ぐるみにより埋設され
    ピストンリングが組み込まれる冷却空洞付きピストン耐
    摩環の製造方法において、金属を主成分とする原料粉末
    を圧縮して圧粉体を成形した後、この圧粉体からなる複
    数の耐摩環構成材を組み合わせて焼結し、この焼結時に
    拡散接合により複数の耐摩環構成材を接合して、これら
    の耐摩環構成材間に冷却空洞を形成することを特徴とす
    る冷却空洞付きピストン耐摩環の製造方法。
  5. 【請求項5】 焼結時に互いに接合される圧粉体からな
    る複数の耐摩環構成材が同一形状であることを特徴とす
    る請求項4記載の冷却空洞付きピストン耐摩環の製造方
    法。
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