JP2000145201A - 非線形連結装置による制震構造 - Google Patents

非線形連結装置による制震構造

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JP2000145201A
JP2000145201A JP10320263A JP32026398A JP2000145201A JP 2000145201 A JP2000145201 A JP 2000145201A JP 10320263 A JP10320263 A JP 10320263A JP 32026398 A JP32026398 A JP 32026398A JP 2000145201 A JP2000145201 A JP 2000145201A
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coupling device
prestress
nonlinear
vibration control
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Chihiro Mizuuchi
千尋 水内
Chikako Tsumura
千香子 津村
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Takenaka Komuten Co Ltd
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Takenaka Komuten Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 固有周期が異なる構造体同士を非線形連結装
置で連結した制震構造を提供する。 【解決手段】 質量が大きく水平剛性を有さないか又は
殆ど有さない第一構造体と、質量が小さく水平剛性の高
い第二構造体とが、プレストレスによって設定された大
きさの水平力までは変形せず、前記大きさを超える水平
力によって変形を生じ、前記大きさの水平力を下まわる
と前記プレストレスにより復元する非線形連結装置によ
って連結されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、振動特性(固有
周期)の異なる複数の構造体を連結し、もって地震、風
等の水平荷重に対する応答を減少させる構成の連結制震
構造の技術分野に属し、更に云えば、固有周期が異なる
構造体同士を非線形連結装置で連結した制震構造に関す
る。
【0002】
【従来の技術】構造設計に用いられる一般的な耐震構法
において、柱、梁などの構造部材は、地震等の水平荷重
が負荷された場合、上層から下層へ行くにつれてより大
きな応力に耐えなければならない。そのため、前記構造
部材の断面寸法は応力の大きさに比例して次第に大きく
しなければならない。よって、同じ天井の高さを確保す
る場合には、梁せいが大きくなることから、下層の方に
より大きな階高寸法が必要となり、柱も太くなることか
ら、下層では建築空間の制約も大きく受けることにな
る。
【0003】これらの影響を少なくするには、構造物に
作用する地震等の水平荷重に対する応答の低減を図るこ
とが有効である。その手段として、従来、様々な免震構
造、制震構造が提案され実施されている。
【0004】その中の一つとして、固有周期の異なる複
数の構造体を連結材によって連結した、パッシブ型の制
震構造に分類される連結制震構造が、例えば特開平9−
235890号公報に記載されて公知である。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】上記従来公知の連結
制震構造は、地震時等における作動信頼性が高いので、
この点では優れた制震構造といえる。
【0006】しかし、上記従来公知の連結制震構造で
は、地震等の水平荷重に対する応答を減少させることに
主眼を置くと、一方の構造体の固有周期をなるべく長く
して構造物全体の振動系を柔軟にすることが有効となる
が、そのままでは風荷重に対してさえ構造物の安定性を
確保することが難しい。つまり居住性等に問題が生じ、
制震効果の優れた構造体の組合せ(固有周期が大きく異
なる構造体の組合せ)の実現が困難である。
【0007】こうした事情から、上記従来公知の連結制
震構造では、構造物の安定性を確保するため、構造体同
士を連結する連結材として、材の降伏その他を利用した
エネルギー吸収装置等を用いることが一般的に実施され
ている。例えば、上記特開平9−235890号公報記
載の連結制震構造では、連結材として弾塑性ダンパー、
摩擦ダンパー、粘性ダンパー、粘弾性ダンパー、オイル
ダンパー等の各種ダンパー類を用いているが、その内前
二者は構造物の安定性確保に効果的な連結材である。
【0008】しかし、連結材として用いる前記した弾塑
性ダンパー、摩擦ダンパー等のエネルギー吸収装置は、
その特性上、たとえ中小規模の地震による水平荷重の負
荷であったとしても、残留変位が生じ、ひいては当該連
結材に連結された構造体にも残留変位が生じてしまう。
このため、前記構造体の残留変位を修正し、前記エネル
ギー吸収装置から成る連結材の全体或いは一部を交換し
なければならないという不都合が生じる。
【0009】前記した粘性ダンパー、粘弾性ダンパー、
オイルダンパー等のエネルギー吸収装置は、残留変位を
生じさせない連結材となるが、微小な荷重に対しても変
形を生ずるので、構造物の安定性確保を目的として使用
することはできない。
【0010】本発明の目的は、固有周期が大きく異なっ
て優れた制震効果を引き出すことができる構造体の組合
せを可能とし、構造部材の有効利用、及び良質で自由な
建築空間の設計を可能にすると共に、風等の比較的小さ
な水平荷重の負荷に対しては構造物全体の安定性を確保
して居住性等を保証し、一方、地震等の大きな水平荷重
の負荷に対しては作動信頼性の高い連結制震構造によ
り、優れた制震効果を発揮し、地震後には構造体が元の
位置へ復元し残留変位が生じない、非線形連結装置によ
る制震構造を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ための手段として、請求項1記載の発明に係る非線形連
結装置による制震構造は、質量が大きく水平剛性を有さ
ないか又は殆ど有さない第一構造体と、質量が小さく水
平剛性の高い第二構造体とが、プレストレスによって設
定された大きさの水平力までは変形せず、前記大きさを
超える水平力によって変形を生じ、前記大きさの水平力
を下まわると前記プレストレスにより復元する非線形連
結装置によって連結されていることを特徴とする。
【0012】請求項2記載の発明は、請求項1記載の非
線形連結装置による制震構造において、第一構造体と第
二構造体との間に、ダンパー、摩擦機構のいずれか一
方、又は両方が設けられていることを特徴とする。
【0013】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記
載の非線形連結装置による制震構造において、第一構造
体は、柱等の鉛直方向部材と、梁、フラットスラブ等の
水平方向部材とが非剛接合された構成であることを特徴
とする。
【0014】請求項4記載の発明は、請求項1又は2記
載の非線形連結装置による制震構造において、第二構造
体は、一体的なコア状の壁、或いは分散配置された内
壁、外壁、ブレース構面等により構成されていることを
特徴とする。
【0015】請求項5記載の発明は、請求項1記載の非
線形連結装置による制震構造において、非線形連結装置
は、一定の大きさのプレストレスを与えた鋼材、又はバ
ネ機構で構成されていることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態及び実施例】次に、図示した本発明
の実施形態及び実施例を説明する。
【0017】本発明は、構造物を、固有周期の異なる複
数の構造体(第一構造体1及び第二構造体2)同士を連
結材(本発明では非線形連結装置J)で連結して成り、
もって地震、風等の水平荷重に対する応答を減少させる
構成の連結制震構造である。
【0018】本発明に係る非線形連結装置による制震構
造の実施形態は、図1〜図3にモデルを例示したよう
に、質量が大きく水平剛性を有さないか又は殆ど有さな
い第一構造体1と、質量が小さく水平剛性の高い第二構
造体2とを、プレストレスによって設定された大きさの
水平力(柱の座屈を防止する拘束力、及び地震、風等に
より負荷される水平荷重。以下同じ。)までは変形せ
ず、前記大きさを超える水平力によって変形を生じ、前
記大きさの水平力を下まわると直ちに前記プレストレス
により復元動作する非線形連結装置Jによって連結した
構成である。前記第一構造体1は、質量が大きく水平剛
性を有さないか又は殆ど有さないように構成されるの
で、超長固有周期を有する構造になる。前記第二構造体
2は、質量が小さく水平剛性が高いように構成されるの
で、短い固有周期を有する構造になる。こうして前記両
構造体1、2には大きな固有周期の格差があるから、こ
れらを非線形連結装置Jで連結することにより、優れた
(大きな)制震効果を得ることができる。
【0019】また、第一構造体1と第二構造体2との間
に、前記非線形連結装置Jと共にダンパー、摩擦機構の
いずれか一方、又は両方を併設することも実施される
(請求項2記載の発明)。この場合、ダンパー又は摩擦
機構は前記非線形連結装置Jと一体化した構成で設置す
る場合と、別個に設ける場合とがある。前記ダンパーの
詳細については後述する。前記摩擦機構としては、図示
は省略するが、例えば第一構造体1と第二構造体2の連
結部分にそれぞれコンクリート製の荷重伝達アゴを設
け、非線形連結装置Jのプレストレスを超える水平荷重
が負荷された場合、当該荷重伝達アゴ同士に摩擦が生じ
る構成とする。つまり後述する図12及び図13に例示
した第一構造体1と第二構造体2の連結部分から粘性ダ
ンパーを除いて第二構造体2側の荷重伝達アゴに置き換
えた構造である。非線形連結装置Jと一体化した構成で
設置する場合も、図14と同様に実施することができ
る。本発明で使用する前記ダンパー及び摩擦機構は、エ
ネルギー吸収を目的とすることの他、地震波の特性に拘
らず安定した制震効果を確保することを目的として設置
するものである(図9参照)。
【0020】次に、第一構造体1及び第二構造体2の具
体的な構成について述べる。
【0021】先ず、第一構造体1は、柱等の鉛直方向部
材と、梁、フラットスラブ等の水平方向部材とが非剛接
合された構成である(請求項3記載の発明)。図1〜図
3中の符号aは非剛接合部を示している。これにより、
前記第一構造体1を構成する各構造部材は、地震や風な
どの水平荷重の影響は受けず、構造物自身の鉛直荷重
(固定荷重及び積載荷重)の影響のみを考慮して設計す
れば良くなり、その必要断面寸法は縮小される。つま
り、従来に比べて構造物の下層においても梁成は比較的
小さくて済むから、同じ天井の高さを確保する場合には
階高を略一定にすることができる。同様に柱も細くて済
むので、建築空間の制約を受ける度合いが小さく、設計
の自由度が高くなる。前記第一構造体1はそれ自体、単
独では水平剛性を有さないか又は殆ど有さないため、構
造的に不安定であるが、この不安定性を解消するのに必
要な大きさを上まわる拘束力となるプレストレスを有す
る非線形連結装置Jによって水平剛性を有する第二構造
体2と連結することにより安定性が確保される。
【0022】次に、第二構造体2は、一体的なコア状の
壁、或いは分散配置された内壁、外壁、ブレース構面等
により構成される(請求項4記載の発明)。
【0023】因みに、図1〜図3は、本発明に係る非線
形連結装置による制震構造の想定される3つの架構形式
の例をそれぞれ示したものである。図1は、第一構造体
1の中央にコア状の第二構造体2を配置したセンターコ
ア形式である。図2は、第一構造体1の左右両サイドに
コア状の第二構造体2を配置した両サイドコア形式であ
る。図3は、第一構造体1の外周(四周)に壁状の第二
構造体2を分散配置した外周耐力架構形式である。
【0024】なお、構造物の最上階については、雨仕舞
の関係から、非線形連結装置Jを介さずに、例えば図2
の両サイドコア形式の場合には図4に例示したように、
最上階における第一構造体1と第二構造体2との接合部
a’を非剛接合として接合し実施しても良い。或いは前
記接合部a’を剛接合として実施しても構造物全体の振
動系にさほどの影響はない。
【0025】図5及び図6は、鉄筋コンクリート造(R
C)架構における外周耐力架構形式の実施形態を示して
いる。図5に示した例は、第一構造体1をフラットスラ
ブ11とPC柱12とにより梁を用いずに構成し、第二
構造体2はRC耐震壁で構成し、フラットスラブ11と
RC耐震壁2とを非線形連結装置Jで連結した構造であ
る。図5中の符号13はコーナー部カーテンウォール等
の構造的に解放された部分を示している。図6に示した
ように、前記図5におけるPC柱12周辺のX部分で
は、PC柱12の窪みにPC化したキャピタル14、1
4を圧着して接合し、フラットスラブ11を載せて施工
する。図6中の符号15は前記フラットスラブ11に予
め取り付けられる天井板である。一般のフラットスラブ
構造では、フラットスラブをキャピタルと共に柱と完全
に一体化することで剛接合をしているが、この場合、鉛
直荷重のみをPC柱12へ伝達する構成なので、曲げモ
ーメントが作用する方向の回転は互いに自由となってい
る。本実施例のPC部材の替わりに場所打ちのRC部材
を使用して実施することも勿論可能である。
【0026】前記非線形連結装置Jとしては、例えばプ
レストレス(PC緊張力)が与えられた鋼材(PC鋼
線)により構成し、これにダンパー(粘性ダンパー)を
複合したものを用いるが、詳細については後述する(図
12〜図14参照)。
【0027】図7〜図10は、鉄骨造架構における両サ
イドコア形式の実施形態を示している。図7に示した例
は、第一構造体1は鋼管柱12’(或いはH形鋼柱でも
良い。)と該鋼管柱12’の両側に一対ずつの組として
設けられた大梁16、16と、前記大梁16、16の上
に載せて直交する方向に設けられた小梁17…とで構成
している。第二構造体2は、一体的なコア状の壁で構成
し、両構造体1、2は非線形連結装置Jで連結した構成
である。但し、第一構造体1と第二構造体2との連結部
分は簡略化して符号Uで示し、詳細については後述する
(図9参照)。
【0028】前記第一構造体1を構成する鋼管柱12’
と大梁16、16との接合部分については、図8にその
詳細を示した。鋼管柱12’にはワンサイドボルト等で
アングルピース18、18を取付け、この上に大梁1
6、16をそれぞれ受け、さらに小梁17、17を前記
鋼管柱12’の両側に前記大梁16、16の上で直交す
る方向に通した構造であり、鋼管柱12’と梁(大梁1
6、16及び小梁17、17)との間で水平力と曲げモ
ーメントを互いに伝達しない取り合いとしている。そし
て、前記小梁17を鋼管柱12’の間にも複数通した連
続梁形式とし、もって材端の曲げ応力、撓みに有利な組
み方としている。図8中の符号11’は床スラブを打設
する際に捨型枠として使用されるデッキプレートであ
る。
【0029】前記第一構造体1と前記第二構造体2との
連結部分Uの詳細は、例えば図9に示したように、非線
形連結装置Jにより連結されている。即ち、小梁17の
端部はそれぞれ第二構造体(コア状の壁)2に形成した
アゴ2bの上に上階の吊り材2aに吊って載せ掛け、当
該小梁17の端部下面はダンパーgを介してアゴ2bへ
変位可能に取付け、エネルギー吸収を行うと共に復元力
を発生する吊り免震構造とされている。その上で、図1
0に例示したように直線材をトラス構造に組んだ非線形
連結装置Jによって第一構造体1の鋼管柱12’と第二
構造体2のコア状の壁とが連結されている。前記直線材
に、例えば図15Aに示した一次元方向に動作対応する
タイプの非線形連結装置J1が組み込まれている。或い
は後述する図15Bの二次元方向に動作対応するタイプ
の非線形連結装置J2、又は図15Cの一次元方向に動
作対応するタイプの非線形連結装置J3により第一構造
体1と第二構造体2とを連結するなど様々な方法も考え
られる。
【0030】非線形連結装置Jは、図15A〜Cにモデ
ル化して示したように、一定の大きさのプレストレス
(PC緊張力)を与えた鋼材(PC鋼線)b、又は図1
6、図17にモデル化して示したようにプレストレス
(圧縮力)を与えたバネ機構R、R’で構成される(請
求項5記載の発明)。これはその特性図を図11に示し
たように非線形性を発揮する。即ち、鋼材b又はバネ機
構R、R’にプレストレス(PC緊張力又は圧縮力。以
下同じ。)によって設定された大きさの水平力kまでは
変形せず、前記大きさkを超える水平力によって初めて
変形を生じ、変位量が増える。そして、前記水平力が減
少するに従って変位量も同一の経緯(軌跡)で小さくな
り、前記大きさkの水平力を下まわると前記プレストレ
スにより変位零に復元する非線形特性を発揮する。よっ
て風などによる前記大きさk以下のさほど大きくない水
平荷重が負荷されても、図11のプレストレスによって
設定された大きさkの範囲内の水平力である限り、変形
を生じない。その結果、構造物を構成する構造体1、2
は一体のままで挙動する安定した状態であり、居住性は
確保される。地震等により前記プレストレスにより設定
された大きさkを超える大きな水平力を受けると、前記
非線形連結装置Jは弾性的に変形し、大きな固有周期の
格差を持つ構造体1、2からなる連結制震構造により、
優れた制震効果を発揮する。地震後(負荷の解消後)は
前記非線形連結装置Jが前記プレストレスにより元の位
置へ復元し、これに追従して前記構造体1、2も復元し
て残留変位を生じない。
【0031】前記非線形連結装置Jを前記図5及び図6
の実施例に好適に使用できるようにダンパー(粘性ダン
パー)と複合した形態を図12〜図14に示した。図1
2に示したように、第二構造体であるRC耐震壁2の内
側面に設けられた荷重伝達アゴQ2の上面に粘性ダンパ
ーの下側部分g2が設けられている。一方、第一構造体
1を形成するフラットスラブ11の端部に下向きの荷重
伝達アゴQ1及び粘性ダンパーの上側部分g1が設けら
れ、前記両者は図13のように組み合わされ、前記粘性
ダンパーの上側部分g1と下側部分g2との間に粘性体m
を介在させる。更に図14に示したように、前記荷重伝
達アゴQ1、Q2の嵌合部分と一体にプレストレス(PC
緊張力)Pを与えた鋼材(PC鋼線)bを配置して非線
形連結装置J1’が構成されている。前記非線形連結装
置J1’は第二構造体2の内側面に設けた左右の突起部
2、q2と、前記左右の突起部q2、q2の間へ嵌まるよ
うに第一構造体1に設けた可動部q1とが鋼材(PC鋼
線)bを介して連結され、且つ前記鋼材(PC鋼線)b
にプレストレス(PC緊張力)Pが与えられている。ま
た、突起部q2、q2と可動部q1との間には変位を許容
する隙間Lが設けられている。図14中の符号wは前記
可動部q1固定用の金具であり、符号cは鋼材(PC鋼
線)bにプレストレス(PC緊張力)Pを与えて固定す
る金具である。前記両構造体1、2が相互の接触面に沿
ってずれようとした時には鋼材(PC鋼線)bに与えら
れたプレストレス(PC緊張力)Pが抵抗力となり前記
両構造体1、2は一体的に挙動しようとする。しかし、
ずれようとする力(水平力)が前記プレストレス(PC
緊張力)Pを上まわったときには前記両構造体1、2は
別々に挙動することが可能となる。そして地震後(負荷
解消後)、両構造体1、2は前記プレストレス(PC緊
張力)Pによって再び元の位置に復元する。この特性図
は、勿論、図11のようになる。
【0032】その他、非線形連結装置Jとしては、例え
ばプレストレス(PC緊張力)を与えた鋼材(PC鋼
線)bで構成した図15A〜Cに示したものや、プレス
トレス(圧縮力)を与えたバネ機構R、R’で構成した
図16、図17に示したものなどが考えられる。
【0033】図15Aの非線形連結装置J1は、プレス
トレス(PC緊張力)Pを与えたPC鋼線bを鋼管rの
中心部に設け、両端部にピストン形のジョイントsを設
けた一次元方向に動作対応するタイプの装置である。
【0034】図15Bの非線形連結装置J2は、直角に
交わるPC部材n1、n2の継手部分に、間隔を置いて並
行にプレストレス(PC緊張力)Pを与えたPC鋼線
b、bを設けた二次元方向(平面方向)に動作対応する
タイプの装置である。
【0035】図15Cの非線形連結装置J3は、プレス
トレス(PC緊張力)Pを与えたPC鋼線bを設けた複
数のプレキャストコンクリート板e…を相互間の隙間に
ダンパー材g"を介して接合し、プレストレスと直交す
る一次元方向に動作対応するタイプの装置である。当該
非線形連結装置J3は比較的大きな力を負担することが
できると共に、図示したようにダンパー材g"を充填し
て、大きなエネルギー吸収機能を同時に持たせることも
可能である。
【0036】図16の非線形連結装置J4は、プレスト
レス(圧縮力)Pを与えた皿バネyを拘束ケースZ内に
収納したバネ機構Rの両端部にピストン形のジョイント
s’を設けた一次元方向(当該連結装置の圧縮方向)に
動作対応するタイプの装置である。
【0037】図17の非線形連結装置J5は、プレスト
レス(圧縮力)Pを与えた皿バネyを一端にジョイント
Zが設けられた拘束ケースZ’内に収納したバネ機構
R’において、前記拘束ケースZ’内のジョイントsZ
側の側面と前記皿バネyの一端とに挟まれる配置で可動
内蔵シリンダーvを設け、反対側の側面と前記皿バネy
の他端とに挟まれる配置で可動反力板tを設け、前記ジ
ョイントsZの反対側の端部には、前記可動内蔵シリン
ダーvを押圧する押圧部s2と、前記可動反力板tを押
圧する押圧部s1を有するピストン形のジョイントs"を
設けた一次元方向(当該連結装置の圧縮方向及び引っ張
り方向)に動作対応するタイプの装置である。
【0038】
【本発明が奏する効果】本発明に係る非線形連結装置に
よる制震構造は、主として鉛直方向荷重のみに対応する
第一構造体と、主として地震等の水平荷重に対応する第
二構造体とを連結して構成した作動信頼性の高い連結制
震構造であり、これら第一、第二構造体の組合せは固有
周期が大きく異なり、優れた制震効果を引き出すことが
できる。また、建築空間を構成する第一構造体は、地震
等の水平荷重の影響を無視して構造物の鉛直方向荷重
(固定荷重及び積載荷重)のみを考慮して柱、梁等の構
造部材の断面寸法を決定することができるので、前記構
造部材の縮小化も可能となる。さらに、構造物の下層に
おいて梁の断面寸法(例えば梁成)を小さくできるの
で、同じ天井の高さにする場合には、階高を略同じにす
ることができるし、柱の断面寸法も小さくできるので、
その分建築空間が広がり、良質で自由な建築空間の設計
も可能となる。
【0039】また、プレストレスによって設定された大
きさの水平力までは変形せず、前記大きさを超える水平
力によって変形を生じ、前記大きさの水平力を下まわる
と前記プレストレスにより復元する非線形連結装置を用
いているので、風等の比較的小さな水平荷重の負荷に対
しては、構造物全体の安定性を確保して居住性等を保証
でき、一方、地震等の大きな水平荷重の負荷に対して
は、それなりに優れた制震効果を発揮するほか、地震力
の強さが装置の許容限界を超える余程大きな場合でない
限り、地震後(負荷の解消後)は非線形連結装置及びこ
れに連結された構造体が元の位置へ復元し、残留変位が
生じないので、破壊部分は発生せず、前記非線形連結装
置等の交換も不要であり、平常時におけるメンテナンス
も殆ど不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Aは本発明に係る制震構造の架構形式を示した
梁伏図であり、BはAにおけるA−A線矢視の軸組図で
ある。
【図2】Aは本発明に係る制震構造の異なる架構形式を
示した梁伏図であり、BはAにおけるB−B線矢視の軸
組図である。
【図3】Aは本発明に係る制震構造の異なる架構形式を
示した梁伏図であり、BはAにおけるC−C線矢視の軸
組図である。
【図4】図2Bにおいて雨仕舞を考慮した場合の構造を
示した軸組図である。
【図5】本発明に係る制震構造の実施例を示した構造伏
図である。
【図6】図5におけるX部分の透視図である。
【図7】本発明に係る制震構造の異なる実施例を示した
梁伏図である。
【図8】図7の柱梁接合部近傍の組立概念図である。
【図9】図7における第一構造体と第二構造体との連結
部分の一例を示した縦断面図である。
【図10】非線形連結装置の一例を示した見上図であ
る。
【図11】本発明に使用される非線形連結装置の特性を
示したグラフである。
【図12】ダンパーと複合された形態の非線形連結装置
を示した透視図である。
【図13】図12の嵌合状態を示した断面図である。
【図14】図12におけるD−D線矢視の断面図であ
る。
【図15】A〜Cは本発明に用いられる非線形連結装置
の実施例を示した概念図である。
【図16】バネ機構で構成される非線形連結装置の実施
例を示した概念図である。
【図17】バネ機構で構成される非線形連結装置の異な
る実施例を示した概念図である。
【符号の説明】
1 第一構造体 2 第二構造体 P プレストレス J、J1、J1’ 非線形連結装置 J2、J3、J4、J5 g、g’、g" ダンパー 12、12’ 柱 16、17 梁 11 フラットスラブ b 鋼材 R、R’ バネ機構

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量が大きく水平剛性を有さないか又は殆
    ど有さない第一構造体と、質量が小さく水平剛性の高い
    第二構造体とが、プレストレスによって設定された大き
    さの水平力までは変形せず、前記大きさを超える水平力
    によって変形を生じ、前記大きさの水平力を下まわると
    前記プレストレスにより復元する非線形連結装置によっ
    て連結されていることを特徴とする、非線形連結装置に
    よる制震構造。
  2. 【請求項2】第一構造体と第二構造体との間に、ダンパ
    ー、摩擦機構のいずれか一方、又は両方が設けられてい
    ることを特徴とする、請求項1記載の非線形連結装置に
    よる制震構造。
  3. 【請求項3】第一構造体は、柱等の鉛直方向部材と、
    梁、フラットスラブ等の水平方向部材とが非剛接合され
    た構成であることを特徴とする、請求項1又は2記載の
    非線形連結装置による制震構造。
  4. 【請求項4】第二構造体は、一体的なコア状の壁、或い
    は分散配置された内壁、外壁、ブレース構面等により構
    成されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の
    非線形連結装置による制震構造。
  5. 【請求項5】非線形連結装置は、一定の大きさのプレス
    トレスを与えた鋼材、又はバネ機構で構成されているこ
    とを特徴とする、請求項1記載の非線形連結装置による
    制震構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002266517A (ja) * 2001-03-06 2002-09-18 Takenaka Komuten Co Ltd 連結制震装置を利用した免震構造
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