JP2000137214A - 液晶表示素子の製造方法 - Google Patents

液晶表示素子の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 残存モノマーが存在していても駆動電圧が低
下したり,透過率が変化したりすることを可及的に抑制
することができ、経時的に安定な高分子分散型液晶表示
媒体を安価に得ることができる液晶表示素子の製造方法
を提供する。 【解決手段】 液晶とモノマーを含有するモノマー溶液
に光を照射してモノマーを重合させる光重合工程により
液晶とポリマーを含む高分子分散型液晶表示媒体を得る
液晶表示素子の製造方法において、光重合工程後、高分
子分散型液晶表示媒体に重合禁止剤を添加する重合禁止
剤添加工程を加える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示素子の製
造方法に関し、特に、液晶とモノマーを含有する混合液
に光を照射してモノマーを重合させることにより高分子
分散型液晶表示媒体を得る液晶表示素子の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来の液晶表示素子は、偏光板を使用し
たツイステッドネマティック(TN)液晶ディスプレー
や、スーパーツイステッドネマティック(STN)ディ
スプレーが使用されてきた。
【0003】しかしながら、これらのディスプレーは偏
光板を使用するため、光の利用効率が非常に悪く、表示
体としては暗いものであった。
【0004】そこで、近年、偏光板を使用しない高分子
分散型液晶表示素子(例えば、特表昭58−50163
1号等)の開発が進められている。
【0005】この高分子分散型液晶表示素子は、高分子
マトリクス中に液晶液滴を分散させたもので、電界印加
の有無により変化する液晶と高分子との屈折率の差を利
用して光散乱状態と光透過状態を切り替えることによ
り、下地を表示させたり表示させないことで表示素子と
して機能する。
【0006】この高分子分散型液晶表示素子の製造方法
としては、例えば、高分子の水溶液中に液晶を乳化分散
させ、キャストする方法(SID Int.Sym.Digest Tec.,vo
l 16,68,1985)や、液晶とモノマーを加温混合し、均一
にした状態で紫外線などを用いて重合させる方法(例え
ば、Japan Display '89 Digest, p690,1989)等が実用
化されている。
【0007】これらの製造方法の中では、光散乱性が強
く、かつ、駆動電圧が低い高分子分散型液晶表示素子を
得るには、光重合法を利用した相分離法が適している。
【0008】ところが、この光重合法で得られた液晶液
滴と高分子マトリクスを含有する高分子分散型液晶表示
媒体中には、未反応の残存モノマーが存在していること
が多く、太陽光下で使用するとモノマーが反応して高分
子マトリクスの形態が変化し、駆動電圧が変化してしま
ったり、透過率が落ちてくるなど、長期安定性に劣る問
題がある。
【0009】これらの問題を解決するため、高分子分散
型液晶表示素子の表面に紫外線カット層を設置したり、
紫外線カットフィルムを表示素子表面に張り付けるなど
の方法が採用されている。
【0010】また、高分子液晶表示媒体の安定化方法と
して、特開昭63−301026号公報に開示されてい
るように、酸化防止剤をモノマー溶液に含有させる方法
がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、紫外線
カット層を設けたり、紫外線カットフィルムを貼る方法
は、カット層を設けない場合と比較してこれらの余分の
材料や成膜工程が必要となり、その分コスト高になると
いう課題がある。
【0012】しかも、紫外線カット層の性能が低下して
くると、カット層としての機能を果たさなくなり、表示
素子に紫外線が当たるようになる。これにより、重合反
応が進み、駆動電圧の上昇などをもたらし、経時的な安
定性が低下する課題がある。
【0013】また、酸化防止剤を添加する方法は、酸化
防止剤が重合反応そのものを阻害し、高分子分散型液晶
表示素子を製造できない場合がある。
【0014】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
で、残存モノマーが存在していても駆動電圧が低下した
り,透過率が変化したりすることを可及的に抑制するこ
とができ、信頼性の高い高分子分散型液晶表示媒体を安
価に得ることができる液晶表示素子の製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1記載の液晶表示素子の製造方法は、液晶と
モノマーを含有するモノマー溶液に光を照射してモノマ
ーを重合させる光重合工程により液晶とポリマーを含む
高分子分散型液晶表示媒体を得る液晶表示素子の製造方
法において、光重合工程後、高分子分散型液晶表示媒体
に重合禁止剤を添加する重合禁止剤添加工程を有するこ
とを特徴とする。
【0016】このような液晶表示素子の製造方法によれ
ば、光重合反応後、重合禁止剤を高分子分散型液晶表示
媒体に添加するので、高分子分散型液晶表示媒体に未反
応のモノマーが存在していても、重合禁止剤がラジカル
反応を防止してモノマーを安定化できるため、得られる
高分子分散型液晶表示媒体の経時的な変化が小さく、か
つ、紫外線カット層を設ける場合と比較してコスト的に
も有利である。
【0017】請求項2記載の液晶表示素子の製造方法
は、請求項1記載の液晶表示素子の製造方法において、
重合禁止剤添加工程後、添加した重合禁止剤を染みわた
らせる拡散工程を有することを特徴とする。
【0018】このような液晶表示素子の製造方法によれ
ば、重合禁止剤を高分子分散型液晶表示媒体中に染みわ
たらせて重合禁止剤を確実に機能させ、モノマーの重合
を抑制することができる。
【0019】請求項3記載の液晶表示素子の製造方法
は、請求項1又は2記載の液晶表示素子の製造方法にお
いて、重合禁止剤の添加量が、高分子分散型液晶表示媒
体の0.0001重量%〜10重量%の範囲であること
を特徴とする。
【0020】このような液晶表示素子の製造方法によれ
ば、重合禁止剤の添加量を最適化して、重合禁止剤を確
実に機能させると共に、生産コストを低減することがで
きる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の液晶表示素子の製
造方法の実施の形態について具体的に説明するが、本発
明は下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0022】本発明の液晶表示素子の製造方法は、上述
したように、液晶とモノマーを含有するモノマー溶液に
光を照射してモノマーを重合させる光重合工程により高
分子分散型液晶表示媒体を得る液晶表示素子の製造方法
において、光重合工程後、液晶とポリマーを含む高分子
分散型液晶表示媒体に重合禁止剤を添加する重合禁止剤
添加工程を有する。
【0023】本発明の液晶表示素子の製造方法は、通
常、フォトPIPSと呼ばれる光重合反応を用いた製造
方法であり、モノマー調製工程、薄層化工程、光重合工
程、重合禁止剤添加工程、拡散工程、封止工程等の工程
を有する。
【0024】モノマー調製工程は、高分子分散型液晶表
示媒体の作製に用いられる液晶、モノマー、光重合開始
剤その他を撹拌混合して所定の温度に加熱し、均一なモ
ノマー溶液を得る工程である。
【0025】ここで、液晶としては、特に制限されない
が、例えば常温付近で液晶状態を示す有機物混合体が挙
げられ、コレステリック液晶、ネマティック液晶、スメ
クチック液晶等を例示することができる。また、光硬化
性モノマーも特に制限されないが、例えば、長鎖アルキ
ル基又はベンゼン環を有するアクリル酸及びアクリル酸
エステル、これらのモノマーを塩素化又はフッ素化した
モノマー、多官能性モノマー等を例示することができ
る。
【0026】次の薄層化工程は、透明電極が形成された
一対のガラス基板をわずかの距離を置いて対向させ、こ
れらのガラス基板の側面を封止したパネルの中に、モノ
マー溶液をキャスト法、真空注入法、毛細管力法などを
用いて注入させる。又は、1枚のガラス基板にモノマー
溶液を塗布し、モノマー溶液を薄層に成膜する。
【0027】次に、光重合工程では、液晶及びモノマー
の種類に応じた所定の温度、紫外線照射条件でモノマー
を光重合させ、高分子マトリクスを生成させると共に、
液晶を液滴の形で相分離させ、所望の散乱度を有する高
分子分散型液晶表示媒体を得る。
【0028】得られた高分子分散型液晶表示媒体中に
は、未反応のモノマーが残存しており、この未反応モノ
マーが使用中に太陽光などの紫外線によって重合し、散
乱度等が経時変化してしまう。
【0029】そのため、本発明では、得られた高分子分
散型液晶表示媒体に重合禁止剤を添加し、モノマーの重
合を確実に抑制する。例えば、パネルの中に液晶注入口
からモノマー溶液を注入した場合は、その液晶注入口か
ら重合禁止剤をパネルの中に注入する。あるいは、1枚
のガラス基板にモノマー溶液を塗布した場合は、重合禁
止剤を高分子分散型表示媒体に塗布する。
【0030】ここで、本発明で用いることができる重合
禁止剤は、ラジカルに対して高い反応性を示してラジカ
ル重合反応を防止できるもので、種類は特に限定されな
いが、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメ
チルエーテル、p−ベンゾキノン、フェノチアジン、モ
ノ−t−ブチルハイドロキノン、カテコール、ベンゾキ
ノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、アンスラキ
ノン、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン等の1種
を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0031】また、重合禁止剤の添加量は、高分子分散
型液晶表示媒体の0.0001〜10重量%、好ましく
は0.0001〜5.0重量%、最も好ましくは0.0
001〜1.0重量%の範囲がよい。この範囲より添加
量が少ないと、添加した効果が得られない場合があり、
一方、多すぎると不経済になる場合がある。
【0032】重合禁止剤は、単独で配合しても良いが、
溶剤で希釈して配合することが好ましく、この溶剤とし
ては、高分子分散型液晶表示媒体の液晶成分が好まし
い。
【0033】重合禁止剤添加工程後、重合禁止剤を高分
子分散型液晶表示媒体中に染みわたらせるために、拡散
工程を設けることが好ましい。この拡散工程は、重合禁
止剤を添加後、単に放置するだけでよい。また、拡散を
促進させるために加熱することも有効である。この拡散
時間は、数時間〜数十時間の範囲である。
【0034】拡散工程後、液晶パネルを完成させる封止
工程を行う。この封止工程は、液晶注入口からパネルの
中にモノマー溶液を注入したときは、液晶注入口を封止
することで行うことができる。また、1枚の基板に高分
子分散型液晶表示媒体の薄層を形成した場合は、対にな
るガラス基板を重ね合わせ、シール剤で高分子分散型液
晶表示媒体を封止して液晶パネルを完成させる。
【0035】このような液晶表示素子の製造方法によれ
ば、重合禁止剤を添加しているので、光重合後に残存す
るモノマーが反応して高分子化することを重合禁止剤が
存在する限り、確実に抑制できる。その結果、駆動電圧
が低下したり,透過率が変化したりすることを防止し
て、経時的に安定な高分子分散型液晶表示素子を得るこ
とができる。また、重合禁止剤を染みわたらせる拡散工
程を有するので、重合禁止剤の重合抑制作用を十分に発
揮させることができる。そのため、高分子のネットワー
ク形成後の残存モノマーが、使用中などの紫外線照射に
よっても架橋しなくなったことから、散乱度が光重合反
応直後から変化しなくなり、散乱度を任意に調整できる
高分子分散型液晶表示素子の作製が可能となった。
【0036】
【実施例】[実施例]
【0037】ポリマーネットワーク用ミクスチャPNM
−107(ロディック株式会社製)を相転移温度(約2
5℃)以上の約40℃に加熱し、攪拌混合させ、均一な
溶液を得た。この均一溶液を真空注入法を用いて13ミ
クロンのセルギャップを持つパネル中に注入した。こう
して得られた液晶パネルを相転移温度プラス2℃(約2
7℃)、28mW/平方cm(at365nm)の紫外
線を用いて、60秒照射し、ポリマーネットワークタイ
プの高分子分散型液晶表示素子を得た。なお、この時、
重合反応の阻害を無くすために、低波長カットフィルタ
ーを使用した。こうして得られた高分子分散型液晶表示
素子の注入口から200ppmのハイドロキノンを合む
PNM−107の液晶成分を約0.2ml(高分子分散
型液晶表示媒体に対して、0.0002重量%)滴下
し、15時間放置した。この後、注入口を封止する為
に、スリーボンド社製光硬化性樹脂30Y−274を塗
布し、3000mJ(at420nm)の光を照射し
た。この高分子分散型液晶表示素子の矩形波3.5V印
加時の平行透過率は34.5%であった。
【0038】この様にして作製した高分子分散型液晶表
示素子に、30mW/平方cm(at365nm)の光
を10分間、計18000mJの光を照射した。光照射
後のこのパネルの3.5V印加時の透過率は33.8%
であり、紫外線照射に対して安定であった。 [比較例]
【0039】ハイドロキノンを液晶パネル中に滴下しな
かった以外は、実施例と同様にして液晶パネルの作製及
び紫外線照射を行った。こうして得られた液晶パネル
の、初期の矩形波3.5V印加時の平行透過率は34.
3%であった。また、18000mJ(at365n
m)紫外線照射時における矩形波3.5V印加時の透過
率は19.6%であり、紫外線照射により透過率が極端
に低下した。
【0040】図1はこの発明に係る液晶表示素子の製造
方法を適用した実施例の高分子分散型液晶表示媒体の概
念図、図2は比較例で得られた高分子分散型液晶表示媒
体の概念図である。図1(a)、図2(a)に示すよう
に、光重合工程によりポリマーネットワークが構成さ
れ、ネットワークの間に液晶分子が液滴となって存在し
ている。また、未反応のモノマーが遊離して存在してい
る。同図に示すように、電界Eを印加すると、液晶分子
は電界の方向に並ぶことになり、光が透過する。紫外線
を照射しない場合は、実施例と比較例で差がない。
【0041】紫外線UVを照射した後は、実施例で得ら
れた高分子分散型液晶表示媒体は、重合禁止剤の効果に
より、モノマーは未反応のまま保持される。したがっ
て、図1(b)に示すように、ネットワークの大きさに
変化がなく、透過率の変化は起こらない。
【0042】一方、比較例で得られた高分子分散型液晶
表示媒体は、未反応モノマーが重合してポリマーにな
り、ネットワークの大きさに変化が起こり、図2(b)
に示すように、ネットワークが密になる。そのため、ポ
リマーによる液晶の配向規制力が強くなり、初期と同一
の電界を加えても電界方向に並ぶ液晶分子は少なくな
る。したがって、紫外線を照射することによって、透過
率は減少することになる。
【0043】図3はこの発明に係る液晶表示素子の重合
禁止剤の添加量(重量%)をパラメータにしたUV照射
量−透過率特性図である。図3において、重合禁止剤と
してハイドロキノンを用いた例を示し、添加量を10重
量%から0まで変化させた時のUV照射量に対する透過
率を表わす。
【0044】添加量が10重量%から0.0001重量
%では、UV照射量に対して透過率はほとんど変化せ
ず、実用的なレベルにある。添加量が0.00005重
量%以下ではUV照射量に対して透過率が大幅に変化す
る。特に添加量が0の場合には重合が進んで反応する液
晶が少なくなるため、UV照射量に対して透過率が大幅
に低下する。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の液晶表示
素子の製造方法によれば、重合禁止剤添加工程を設けた
ことにより、残存モノマーの重合を確実に抑制できるた
め、経時的に安定な高分子分散型液晶表示素子を安価に
製造することができる。
【0046】また、本発明の液晶表示素子の製造方法に
よれば、拡散工程を設けたことにより、添加した重合禁
止剤を確実に機能させ、経時的に安定な高分子分散型液
晶表示素子を製造することができる。
【0047】更に、本発明の液晶表示素子の製造方法に
よれば、重合禁止剤の添加量を最適化したことにより、
添加した重合禁止剤を確実に機能させ、経時的に安定な
高分子分散型液晶表示素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る液晶表示素子の製造方法を適用
した実施例の高分子分散型液晶表示媒体の概念図
【図2】比較例で得られた高分子分散型液晶表示媒体の
概念図
【図3】この発明に係る液晶表示素子の重合禁止剤の添
加量(重量%)をパラメータにしたUV照射量−透過率
特性図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 和田 富夫 福島県福島市岡島字長岬6番地の7 ナノ ックス株式会社内 (72)発明者 後藤 准 福島県福島市岡島字長岬6番地の7 ナノ ックス株式会社内 (72)発明者 佐々木 あゆみ 福島県福島市岡島字長岬6番地の7 ナノ ックス株式会社内 (72)発明者 芳賀 重光 福島県福島市岡島字長岬6番地の7 ナノ ックス株式会社内 Fターム(参考) 2H089 HA04 JA04 JA05 NA24 QA16 RA04 5C094 AA23 AA37 BA43 GB01 JA01 5G435 AA14 AA16 BB12 KK07

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液晶とモノマーを含有するモノマー溶液
    に光を照射して前記モノマーを重合させる光重合工程に
    より液晶とポリマーを含む高分子分散型液晶表示媒体を
    得る液晶表示素子の製造方法において、 前記光重合工程後、前記高分子分散型液晶表示媒体に重
    合禁止剤を添加する重合禁止剤添加工程を有することを
    特徴とする液晶表示素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の液晶表示素子の製造方法
    において、 前記重合禁止剤添加工程後、添加した重合禁止剤を染み
    わたらせる拡散工程を有することを特徴とする液晶表示
    素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の液晶表示素子の製
    造方法において、 前記重合禁止剤の添加量が、前記高分子分散型液晶表示
    媒体の0.0001重量%〜10重量%の範囲であるこ
    とを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
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