JP2000136651A - 構造物の連結制振装置 - Google Patents

構造物の連結制振装置

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JP2000136651A JP10309107A JP30910798A JP2000136651A JP 2000136651 A JP2000136651 A JP 2000136651A JP 10309107 A JP10309107 A JP 10309107A JP 30910798 A JP30910798 A JP 30910798A JP 2000136651 A JP2000136651 A JP 2000136651A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高層若しくは塔状等の固有周期の異なる独立
して隣接する構造物同士を、相互に連結して水平方向振
動を減衰するようにした連結制振装置において、制振対
象の構造物間にダンパと共に、最適値の弾性係数を有し
て長伸縮可能な弾性体を介装可能とする。 【解決手段】 隣接している固有周期の異なる独立した
構造物1、3間に、ダンパ5aと弾性体5cとを並列さ
せて連結した構造物の連結制振装置5において、前記弾
性体にケーブル5cを使用し、該ケーブルはその一端を
一方の構造物に固定するとともに、その途中を他方の構
造物に設けられた方向転換軸5bに掛け回し、その他端
を前記一端の固定部位と方向転換軸5bとの間に生じる
水平方向相対変位を吸収して伸縮可能な位置に固定す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高層若しくは塔状
等の固有周期の異なる独立して隣接する構造物同士を、
ダンパと弾性体とで連結して、相互の水平方向振動を減
衰するようにした連結制振装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、独立して相隣接する構造物同
士を、バネまたはダンパで連結して、相互干渉させるこ
とにより両構造物に及ぶ地震力を軽減するようにした連
結制振に関する技術が、例えば特公昭54−1391号
公報等で公知になっており、ダンパのみを介装した連結
制振装置は既に実用化に至っている。
【0003】図9は、固有周期の異なる相隣接した2つ
の構造物51と52同士を、減衰係数Csのダンパ53
で連結している状態を、質点系でモデル化した概念図で
ある。同図においてバネk51と質点m51は構造物5
1の剛性と質量とを示し、バネk52と質点m52は構
造物52の剛性と質量とを示す。このモデルでは振動方
程式は(1)式に示すように表せ、この(1)式に基づ
いてダンパ特性、すなわち減衰係数を変化させた場合の
振動伝達関数を図10に示す。
【0004】
【数1】
【0005】図10は横軸に振動数、縦軸に振動伝達率
(x51/y)、(x52/y)をとって、質点m51の伝
達関数fx51 と、質点52の伝達関数fx52 とを示した
ものである。ここで、同図においてfx510、fx520は、
前記したfx51 、fx52 の減衰係数を0にした場合で、
ダンパが無くおのおの切り離され自由振動している状態
の質点m51とm52の伝達関数を示し、fx ∞は前記
減衰係数を無限大にした場合で、質点m51とm52が
剛連結し一質点系となって振動している状態の伝達関数
を示している。
【0006】ここで、図9に示すようなダンパのみで連
結されている二質点系の振動伝達関数については、各質
点の伝達関数が、ある特定の振動数で、連結ダンパの減
衰係数Csに関係なく、同じ振動伝達率の点を通過する
という、定点定理が存在することが一般的に知られてい
る。この定点定理とは、図10において、いかなるダン
パを使用しても伝達関数fx51 は、fx510とfx ∞とが
交わる点p51を通過し、また同様にいかなるダンパを使
用しても伝達関数fx52 は、fx520とfx ∞とが交わる
点p52を通過すること意味する定理である。このため、
通常、最も小さな振動伝達率を取りたい場合は、前記交
点p51およびp52が最大値、すなわちピークとなるよう
に減衰係数を決定し、この減衰係数のダンパを設計し、
図10に示す振動伝達関数fx51opt、fx52optとなるよ
うに制振条件を与えていた。逆にいえば、いかなるダン
パを使用してもp51、p52以下の振動伝達率を設定する
ことは不可能である。すなわち、ダンパのみを介装する
方法では、ダンパ以外の要因である質点質量とバネの弾
性係数で決定する振動伝達率の限界点が存在し、それが
制振効果の限界となっている。
【0007】ところで、当該制振装置における制振性能
の向上に関して、ダンパに追加して並列に弾性体を介装
し、この弾性係数を調整することにより振動伝達率の低
減化が図れることがわかっており、本発明者等はその大
幅な制振効果の向上をシミュレーションにより確認し
た。
【0008】その一例として、図11に示すような外塔
1の内部に内塔3が独立して地盤上に立脚し、前記外塔
1と内塔3の間に制振装置5を介装した高層煙突7のケ
ースで説明する。
【0009】前記外塔1は高さ方向に高くなるにしたが
い、その直径が小さくなっている円筒であり、その内側
には独立して立脚した円筒である内塔3が、外塔1とそ
の中心軸が一致した状態で立設しており、また外塔1と
内塔3との間にはダンパ5aと弾性体5dとからなる制
振装置5が介装されている。
【0010】図12は前記した高層煙突7を質点系でモ
デル化した概念図である。
【0011】外塔1は質点m1を地上に設置したバネk
1で支持、また内塔3は質点m3を地上に設置したバネ
k3で支持し、質点m1と質点m3の間に減衰係数がc
0のダンパ5aと、弾性係数がk0の弾性体5dとを並
列に介装することで、モデル化されている。尚、前記し
た質点の質量、弾性係数等の各種係数は、当該高層煙突
7の形状、構造から以下に示す数値を使用し、また振動
方程式は(2)式で表され、合わせてシミュレーション
で使用した。 m1=50000TON m3=10000TON k1=100TON/cm k3=5TON/cm
【0012】
【数2】
【0013】まず、弾性体5dが介装されておらず、ダ
ンパ5aのみで制振した場合の制振性の検討結果から説
明する。図13(a)は横軸に振動数、縦軸に振動伝達
率(x1/y )、(x3/y )をとって、質点m1すなわち
外塔の伝達関数fx1と、質点3すなわち内塔の伝達関数
fx3を示したものである。fx10 とfx30 は、前記した
fx1とfx3のダンパの減衰係数c0 を0にした場合、す
なわちダンパが無く、おのおの切り離され自由振動して
いる状態の質点m1およびm3の伝達関数をそれぞれ示
し、fx ∞は減衰係数c0 を無限大にした場合、すなわ
ち質点m1とm3とが剛連結し一質点系となって振動し
ている状態の伝達関数を示している。
【0014】図13(a)において、fx10 とfx ∞と
が交わる点をp1、またfx30 とfx ∞とが交わる点を
p3とする。また、制振特性を最適化した、すなわち振
動伝達率の最大値がp1、p3となるように、ダンパの
減衰係数c0 を調整した場合の振動伝達関数fx1opt 、
fx3opt を、図13(b)に示す。図13(a)のp
1,p3がほぼピークとなるように調整されているが、
定点定理よりp1、p3の値を下げることは不可能であ
ることがわかる。
【0015】これに対し、質点m1、m3間に弾性体k
0 を介装した場合の振動伝達関数を図14に示す。図1
4(a)のfx10 、fx30 はその減衰係数c0 を0にし
た場合で、ダンパは無いが、質点m1、m3の各々は弾
性体で連結されているため、その弾性体で動きが拘束さ
れている状態のm1とm3の伝達関数を示し、fx ∞は
減衰係数c0 を無限大にした場合で、質点m1とm3が
剛連結し一質点系となっている振動している状態の伝達
関数を示している。ここで制振特性を最適化するバネの
弾性定数k0 は、この交点p11、p31の伝達率の大
きさを等しくする条件で与えられ、当該条件と前記振動
方程式(2)より、以下の(3)式で与えられ、当該モ
デルの場合はk0 は以下となる。
【0016】
【数3】
【0017】次に、制振特性を最適化するダンパの減衰
係数は、振動伝達関数fx (ω)が交点p11、p31
にて、それぞれの振動伝達率の極値をとるという条件で
与えられるため、これら交点p11、p31における振
動数ωp11 、ωp31 で、
【数4】 となるように減衰係数c0 を決定し、当該モデルの場合
は以下となる。 c0 =5TON ・sec/cm
【0018】ダンパの減衰係数c0 最適化後のダンパと
弾性体とを並設した制振装置の振動伝達関数を図14
(b)に示す。今回の場合は、主に外塔の制振性能を向
上することが要求されており、図13(b)のp1と図
14(b)のp11の対比により、該外塔である質点m
1の制振性が大幅に向上し、ダンパのみの制振装置の場
合の2倍の制振特性を有していることがわかる。
【0019】ここで、前記最適条件において、大地震を
想定し人工地震を入力した時の応答変位を示す。シミュ
レート方法は、振動方程式(2)の右辺の地動変位項に
人工地震の変位を入力しx1とx3を算出した。制振性能が
要求される外塔1の変位応答を図15(a)に示すが、
良好な制振性を示しているのがわかる。
【0020】尚、このシミュレーションでは、外塔1の
制振性を重視しているため、図15(b)に示すように
大きくは改善されていない。
【0021】以上のように、ダンパと弾性体を並設した
連結制振装置により、制振特性を著く向上することが可
能である。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図16は前
記人工地震を入力した際の、外塔1と内塔3との間の相
対変位の変化を示すが、その最大振幅量は±90cmに
達している。すなわち、連結制振装置を高層煙突に適用
する際には、2m近い伸縮能力があると同時に、弾性係
数が10TON/cmという巨大な弾性体が必要となる。し
かしながら、このような弾性体をコイルスプリングで構
成すると巨大なバネとなり、その製作技術の面のみなら
ず、当該バネを構造物体間に収めること自体が不可能で
ある。
【0023】つまり、現状では最適な弾性係数と伸縮能
力を有したコイルスプリングを煙突の頂部近傍の内塔と
外塔との間に設置可能にコンパクトに製作することがで
きず、また製作できたとしてもその支持構造が問題とな
る。
【0024】本発明は上記問題点に鑑みてなされたもの
で、その目的は、制振対象の構造物間に弾性係数と伸縮
長を最適にして弾性体を介装可能な構造物の連結制振装
置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めの手段として、本発明のうち、請求項1記載の発明で
は、隣接している固有周期の異なる複数の構造物同士
を、ダンパと弾性体とで連結した構造物の連結制振装置
において、前記弾性体にケーブルを使用し、該ケーブル
はその一端を一方の構造物に固定するとともに、その途
中を他方の構造物に設けられた方向転換軸に掛け回し
て、その他端を前記一端の固定部位と方向転換軸との間
に生じる水平方向相対変位を吸収して伸縮可能な位置に
固定したことを特徴とする。
【0026】上記構成に係る連結制振装置によれば、水
平方向の長い伸縮量が要求される弾性体として、ケーブ
ルを使用し、隣接する構造物間に生じる水平方向の相対
変位を、一方の構造物に固定した一端部と他方の構造物
に設けた方向転換軸とによりケーブルに伝えて、このケ
ーブルの全長で吸収する。ケーブルは方向転換軸によ
り、その引き回し方向を自由に転換できるから、十分な
設置スペースを有する方向に向けて転換して配置でき
る。したがって、最適な弾性係数と十分な伸縮量とを有
する弾性体を、ダンパに並設させるのと等価に設けるこ
とができ、弾性体とダンパとを並設した構造物の連結制
振装置を実用化することが可能となり、高層、若しくは
塔状の構造物の強風や地震などによる横揺れを大幅に軽
減することができるようになる。
【0027】請求項2記載の発明では、請求項1におい
て、前記ケーブルの端部または途中の任意の箇所にケー
ブルのバネ定数調整用のバネを介装したことを特徴とす
る。
【0028】上記構成によれば、前記バネを直結するこ
とによりケーブルの弾性係数を微調整することができ、
連結制振装置の要である弾性体の弾性係数とダンパの減
衰係数を最適値に調整することが容易となり、当該連結
制振法の能力を最大限に引き出すことが可能となる。こ
の結果、高層、若しくは塔状の構造物の強風や地震など
による横揺れを大幅に軽減することができる。
【0029】更に、請求項3記載の発明では、前記請求
項1または2において前記ケーブルとダンパを複数組並
設したことを特徴とする。
【0030】上記構成によれば、構造物の高さ方向に複
数の振動の腹が存在する場合に、その腹の位置に合わせ
て本発明である制振装置を複数組設置することにより、
腹の振幅を著く低減でき、複雑な高次振動モードにも対
応することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形
態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0032】図1は、本発明の実施形態Iである連結制
振装置5を備えた高層煙突7の中心位置での鉛直断面図
である。前記高層煙突7は二重円筒構造であり、外塔1
と内塔3とからなり、制振装置5で連結されている。こ
の制振装置5は、ダンパ5aとケーブル5cとケーブル
方向転換軸5bとで構成される。
【0033】前記外塔1は高さ方向に高くなるにしたが
い、その直径が小さくなっている異径円筒であり、その
内側には独立して立脚した等径の円筒状の内塔3が立設
され、外塔1と内塔3とはその中心が一致されている。
前記外塔1と内塔3との間には、その頂部近傍に前記制
振装置5が介装されている。ダンパ5aは内塔3の外側
面と外塔1の内側面との間にこれらを連結して設けら
れ、ケーブル5cは内塔3と地盤9との間にプレストレ
スを与えられてた状態で張設されており、その一端は内
塔3の外側面の頂部に固定され、この固定部から径方向
外方に向けて水平に案内され、外塔1の内側面に付設さ
れた方向転換軸5bに掛け回された後、垂直下方向にそ
の向きを転換されて、他端が地盤9に固定されている。
図1のA−A線矢視の断面図を図2に示すが、前記制振
装置5は円周方向に90゜刻みに4組が複数で設置され
ており、方向転換軸5bは、外塔1の内側面に付設した
ブラケット5fによりローラー5eを回転自在に軸支す
る構成であり、ローラー5eの回転摺動抵抗を小さくす
ることにより、ケーブル5cを円滑に伸縮可能としてい
る。
【0034】ただし、本実施例では、方向転換軸5bに
よるケーブル5cの転換方向は、鉛直下方向の長い空間
を利用して、鉛直下方向に引き回したが、別途スペース
があればその方向で良い。また、ダンパ5aは、所期の
減衰係数c0が設定できるものであれば良く、オイルダ
ンパ、エアーダンパ、摩擦ダンパ等が使用可能である。
【0035】次にその作用を図3により説明する。地震
等が発生した場合、外塔1,内塔3ともに水平方向に横
揺れし、これらは固有周期が異なるため水平方向の相対
変位が生じて、特に頂部での相対変位が大きくなる。こ
こで、便宜上、主に外塔1の頂部が右方向に変位し、内
塔3と外塔1の右側の間隔が広がる、すなわち内塔3の
ケーブル固定部と外塔1に付設した方向転換軸5bの間
隔が広がる場合を想定して説明する。
【0036】右側のケーブル5cは当該間隔の変化分だ
け伸張する必要があるが、本実施例では鉛直下方向に十
分なスペースがあるため、方向転換軸5bにより鉛直下
方向にケーブル5cを案内することにより、主に鉛直下
方向のケーブル5cの伸張により、前記間隔変化分の伸
張を吸収している。また、前記右側のケーブル5cと内
塔の中心軸と線対称の位置にある左側のケーブル5c
は、上記とは逆に内塔のケーブル固定部と方向転換軸5
bの間隔が狭まる分短縮するが、主に鉛直下方向のケー
ブルの短縮により、前記間隔変化分の短縮を吸収してい
る。すなわち、隣接する構造物間に生じる水平方向の相
対変位を、ケーブルと方向転換軸とによりケーブルに伝
えるとともに、その方向転換軸で十分な設置スペースを
有する方向にケーブルを向けて配置することにより、前
記相対変位をケーブル全長の伸縮で吸収することが可能
となり、大伸縮能力を有したコイルスプリングと等価な
作用を示すわけである。
【0037】なお、本実施例ではケーブル5cの他端を
地盤9に固定したが、前述したケーブル5cの伸張・短
縮を吸収できるケーブル長さが確保できる場所であれば
どこでも良い。また、前記のケーブル長さが、煙突高さ
に対して長い場合には、図4に示す実施形態IIのよう
に方向転換軸11を複数組用いて、支障のないルートに
ケーブルを引き廻せば良い。
【0038】一方、前述した実施形態Iにおいてケーブ
ル5cを設置する際、プレストレスを与えて張設した
が、プレストレスが大きい場合には、方向転換軸5b、
およびケーブル5cに作用する最大引張力が巨大なもの
となり、設備コストが莫大になる。このため、プレスト
レスを極力小さくすることが望ましい。
【0039】図5にケーブル5cにプレストレスを設定
しない場合のケーブルの状況を示す。外塔1と内塔3の
水平方向の相対変位が変化し、内塔3と外塔1の右側の
間隔が広くなった場合を想定すると、左のケーブル5c
はプレストレスが無いため、内塔のケーブル固定部と外
塔1に付設した方向転換軸5bの間隔が狭くなった分ケ
ーブル5cが弛む。このため、左側のケーブル5cは張
力喪失状態となるが、右のケーブル5cには引張力が作
用し、弾性体として作用する。逆方向の変位の場合は、
右の張力が喪失し、左のケーブル5cに引張力が作用
し、弾性体として作用する。すなわち、常にどちらか一
方のケーブル5cには引張力が作用し、弾性体として作
用することになり、連結制振装置の基本的機能は発揮す
る。
【0040】ところが、張力喪失時は図5の左のケーブ
ル5cに示すような弛みが生じ、方向転換軸からケーブ
ル5cが外れる、または張力喪失状態から張力状態に切
り替わる際の衝撃荷重によりケーブル断線が生じる虞れ
がある。これについては、極若干の予張力を常にケーブ
ル5cに作用させ、弛みを吸収しておくことで対応で
き、具体的には図6に示す実施形態IIIの弛み吸収装
置30が考えられる。該弛み吸収装置装置30は、方向
転換軸30aと前記方向転換軸30aを軸支している旋
回運動するアーム30bとそのアームに駆動トルクを与
える駆動装置30cとからなり、ケーブル5cに常時弛
みが生じない程度の張力を付与するテンショナーであ
る。ちなみに、100〜200mクラスの円筒状構造物
の振動周期は1〜10秒程度になり(前記の図11に示
す煙突の場合の振動周期は、内塔の振動周期が10秒程
度、外塔が5秒程度)、十分張力フィードバック制御が
可能である。
【0041】連結制振法の制振能力を最大限に引き出す
には、弾性体すなわちケーブルの弾性係数を式(3)で
計算される値に調整する必要がある。通常はケーブルの
仕様はJIS などの規格によって定まっており、ケーブル
本数を増加する等の方法で弾性係数TON/cmを変化させら
れるため、大まかな調整は可能であるが、微調整は難し
い。これに対しては、図7に示す実施形態IVのように
ケーブル5cの端部、またはケーブル5cの途中に、コ
イルスプリングや板バネ等の調整用バネ15を直列連結
することにより、弾性定数の調整をすることが可能であ
る。また、前記バネ15はコンパクトではなくても、そ
の仕様が、数mの大伸縮が可能、かつ剛性が数十TON/cm
であれば、主にこのバネにより伸縮を吸収でき、ケーブ
ル5cは単なる変位をバネ15に伝達する伝達手段とし
て使っても良い。
【0042】また、構造物によっては、振動モードが1
次ではなく、高次になっている場合がある。高次振動モ
ードを防止するには、その振動において最も振幅が大き
い、すなわち振動の腹の位置に合わせて本発明である制
振装置5を複数組設置すると、大きな制振効果が生じ
る。図8(a)に振動モードの代表例として、左図に1
次モードを、右図に2次のモードを、また図8(b)に
制振装置の設置位置を対応して示す。1次モードは構造
物の頂部に振動の腹が一つだけ存在し、2次モードは腹
が二つで、構造物の頂部と地盤9から構造物の高さの約
三分の一の位置に存在している。基本的には、腹の部分
に制振装置を設置すれば良く、一次モードに対しては、
図8(b)の左図に示すように構造物の頂部に制振装置
19を設置し、また2次モードに対しては構造物の頂部
に制振装置19を、および地盤9から構造物の高さの約
三分の一の位置に制振装置23を設置すると大きな制振
効果が得られる。これ以外の高次のモードについても、
同様に腹の位置に本発明である制振装置を複数設置すれ
ば良い。また、1次モードと3次モードが複合する等、
複数の振動モードが混在する場合は、振動状況を調査
し、その腹の位置に当該制振装置を設置すれば良い。
【0043】以上、本発明である制振装置について、煙
突に適用した実施形態を説明してきたが、高層ビルにも
適用可能である。例えば、各々独立して立設した四角柱
状の中央架構と、その周囲を囲繞する外周架構の建物の
場合は、中央架構の四つの外側面と外周架構の四つの内
側面の間に、本発明である制振装置を各々介装すれば、
煙突の例と同様の効果が得られる。また、固有周期の異
なる独立して立脚した二つの建物で、その振動方向が一
方向の場合は、振動方向と平行に制振装置を少なくとも
1台以上介装すれば足りる。
【0044】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明のう
ち、請求項1記載の発明では、隣接している固有周期の
異なる複数の構造物同士を、ダンパと弾性体とで連結し
た構造物の連結制振装置において、水平方向の長い伸縮
量が要求される弾性体としてケーブルを使用し、隣接す
る構造物間に生じる水平方向の相対変位を、一方の構造
物に固定した一端部と他方の構造物に設けた方向転換軸
とによりケーブルに伝えて、このケーブルの全長で吸収
するようにした。このため、ケーブルは方向転換軸によ
り、その引き回し方向を自由に転換できるから、十分な
設置スペースを有する方向に向けて転換して配置できる
ようになり、最適な弾性係数と十分な伸縮量とを有する
弾性体を、ダンパに並設させるのと等価に設けることが
でき、弾性体とダンパとを並設した構造物の連結制振装
置を実用化することが可能となる。この結果、高層、若
しくは塔状の構造物の強風や地震などによる横揺れを大
幅に軽減することができるようになる。また、該制振装
置はケーブルと方向転換軸という簡単な構成であり、各
々汎用製品で製作することが可能であり、安価に施工す
ることが可能である。
【0045】請求項2記載の発明では、請求項1におい
て、前記ケーブルの端部または途中の任意の箇所にケー
ブルのバネ定数調整用のバネを介装したので、前記バネ
を直結することによりケーブルの弾性係数を微調整する
ことが可能となる。したがい、連結制振装置の要である
弾性体の弾性係数とダンパの減衰係数を最適値に調整で
き、当該連結制振法の能力を最大限に引き出すことが可
能となる。この結果、高層、若しくは塔状の構造物の強
風や地震などによる横揺れを大幅に軽減することができ
る。
【0046】請求項3記載の発明では、前記請求項1ま
たは2において前記ケーブルとダンパを複数組並設した
ので、構造物の高さ方向に振動の腹が複数箇所存在する
場合に、前記箇所の腹の振幅を低減でき、複雑な高次振
動モードにも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る制振装置の実施形態Iを示す、高
層煙突の中心位置での鉛直断面図である。
【図2】図1における高層煙突のA−A線矢視の断面図
である。
【図3】図1に示す高層煙突の主に外塔が横揺れした状
態を示す鉛直断面図である。
【図4】本発明に係る制振装置の実施形態IIを示す、
ケーブルの引き廻しの変形例の概念図である。
【図5】ケーブルにプレストレスを設定しない場合に生
じるケーブルの弛み状況を示す鉛直断面図である。
【図6】本発明に係る制振装置の実施形態IIIを示
す、ケーブル弛み吸収装置の概念図である。
【図7】本発明に係る制振装置の実施形態IVを示す、
弾性係数調整方法を示す概念図である。
【図8】本発明に係る制振装置において、振動モードに
より制振装置の設置位置が変化することを示す概念図で
あって、(a)は振動モードの代表例を示す概念図であ
り、(b)は(a)の振動モードに対する制振装置の設
置位置を示す概念図である。
【図9】従来の構造物体間にダンパを介装した制振装置
を、質点系でモデル化した概念図である。
【図10】図9に示すモデルの制振効果の限界を説明す
るための振動伝達関数のグラフである。
【図11】外塔と内塔の間にダンパと弾性体を介装した
高層煙突の鉛直断面図である。
【図12】図11に示す高層煙突を質点系でモデル化し
た概念図である。
【図13】ダンパのみを介装した場合の制振効果の限界
を説明するグラフであって、(a)は振動伝達率の最大
値を示すグラフ、(b)は最適化した振動伝達関数を示
すグラフである。
【図14】バネとダンパを介装した場合の制振効果の向
上を説明するためのグラフであって、(a)は振動伝達
率の最大値を示すグラフ、(b)は最適化した振動伝達
関数を示すグラフである。
【図15】バネの弾性係数とダンパの減衰係数を最適化
した制振装置に、人工地震を入力した時の構造物の応答
変位を示すグラフであって、(a)は外塔の変位応答、
(b)は内塔の変位応答を示すグラフである。
【図16】図15に使用した人工地震入力時の、外塔1
と内塔3の間の相対変位の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 外塔 3 内塔 5 制振装置 5a ダンパ 5b 方向転換軸 5c ケーブル 7 外塔と内塔からなる高層煙突 9 地盤

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 隣接している固有周期の異なる独立した
    構造物間に、ダンパと弾性体とを並列させて連結した構
    造物の連結制振装置において、前記弾性体にケーブルを
    使用し、該ケーブルはその一端を一方の構造物に固定す
    るとともに、その途中を他方の構造物に設けられた方向
    転換軸に掛け回し、その他端を前記一端の固定部位と方
    向転換軸との間に生じる水平方向相対変位を吸収して伸
    縮可能な位置に固定したことを特徴とする構造物の連結
    制振装置。
  2. 【請求項2】 前記ケーブルの端部または途中の任意の
    箇所にケーブルのバネ定数調整用のバネを介装したこと
    を特徴とする請求項1記載の構造物の連結制振装置。
  3. 【請求項3】 前記ケーブルとダンパとを複数組並設し
    たことを特徴とする請求項1または2記載の構造物の連
    結制振装置。
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