JP2000135912A - 通風路切替装置 - Google Patents

通風路切替装置

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JP2000135912A JP11209587A JP20958799A JP2000135912A JP 2000135912 A JP2000135912 A JP 2000135912A JP 11209587 A JP11209587 A JP 11209587A JP 20958799 A JP20958799 A JP 20958799A JP 2000135912 A JP2000135912 A JP 2000135912A
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眞弘 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ドア本体部の外周縁部に弾性体からなるシー
ル材を固着したドアを用いて通風路を切替える装置にお
いて、シール材の材料費や成形装置のコストアップを招
くことなくコーナー部でのシール材の変形に起因する風
洩れを防止する。 【解決手段】 ドア19、20に、剛性の高い材質から
なるドア本体部100と、弾性体からなるシール材10
2とを備え、開口部16、17の周縁部に形成されたシ
ール面103、104にシール材102が圧着すること
により、開口部を閉塞するようになっている。そして、
シール材102のコーナー部102aにおける外周円弧
部の曲率半径RD よりも、シール面103、104のシ
ールラインDのコーナー部における内周円弧部の曲率半
径RC2を大きくした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般的に言って、
空気が流れる通風路の切替装置に関するもので、例え
ば、車両用空調装置の吹出モード切替装置に用いて好適
なものである。
【0002】
【従来の技術】従来、車両用空調装置等に用いられる通
風路切替装置において、空気流れを切り替えるドアとし
てバタフライドアを用いるタイプのものでは、ドア本体
部の中央部に回転軸を備え、通風路を形成するケースに
対してドア本体部を前記回転軸により回転可能に支持す
る構成となっている。
【0003】そして、このようなバタフライドアでは、
図3に示すように、剛性の高い材質(樹脂)からなるド
ア本体部100の外周縁部に、リップシールを構成する
シール材102をエラストマ(高分子弾性体)の射出成
形により薄板平板状に一体に設けている。このシール材
102を図2に示すように、ケース11側の開口部1
6、17のシール面103、104に押し当てることに
より、ケース11側の開口部16、17のシール面10
3、104との間のシール効果を得るようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、本発明者ら
がこの種のバタフライドア19、20を実際に試作し
て、シール効果について実験検討してみると、バタフラ
イドア19、20のシール材102のうち、コーナー部
102aという特定部位で風洩れが発生しやすいことが
判明した。このコーナー部102aでの風洩れの発生原
因は、本発明者らの検討により以下の理由であることが
分かった。
【0005】すなわち、ドアの製造に際しては、一般
に、予め成形したドア本体部100を成形型内にインサ
ートし、その後に、弾性体材料を成形型内のドア本体部
100周縁部に射出してシール材102を射出成形す
る。このため、シール材102には射出成形時の成形圧
力により発生する収縮力が成形後も内部応力として残留
する。
【0006】また、弾性体(エラストマ)は射出成形後
に、使用状態で高温放置されると、自身の材料物性によ
る収縮力が発生するという特性を持っている。従って、
夏期の炎天下駐車時のごとく車室内が非常に高温になる
と、車両用空調装置におけるドア19、20のシール材
102はこの高温の影響を受けて、材料物性による収縮
力をも発生することになる。
【0007】以上のように、シール材102には成形圧
力と材料物性による収縮力が発生し、この収縮力が原因
となって、コーナー部102aのシール材102には、
当該部位のシール材を図3の矢印A、Bのごとくドア本
体部100に引き寄せる直交方向の内部収縮力が作用す
る。
【0008】このため、図4に示すように、ケース11
側の開口部16、17のシール面104(103)にシ
ール材102を押し当てた状態(開口部16、17の閉
塞状態)で、バタフライドア19、29を放置すると、
上記内部収縮力の影響で、コーナー部102aのシール
材102がドア本体部100側へ変形して、図5に示す
ように、コーナー部102aのシール材102がシール
面104(103)より反り上がるという現象が発生す
る。
【0009】この結果、シール材102の先端部とシー
ル面104(103)との間に隙間Cが形成されて風洩
れが生じることが分かった。
【0010】なお、上記コーナー部102aでのシール
材102の変形の原因である内部収縮力を低減するため
に、シール材102の材質として成形時の流動性の高
い材質を選定して、成形圧力を減少させる方法、シー
ル材102の肉厚を厚くして成形時の材料流動性を高め
るとともに、シール材102の肉厚増加により剛性アッ
プを図って、収縮力に対する変形抑制効果を高める方
法、成形装置の射出ゲート数を増加して、成形時の材
料流動性を高める方法等が考えられる。
【0011】しかし、の方法は、成形時の流動性の高
い材質を特別に選定しなければならず、シール材102
の材料費が高くなる。また、の方法は、肉厚増加によ
り材料使用量が増加して、シール材102の材料費が高
くなる。また、の方法は、射出ゲート数の増加により
成形装置の構造が煩雑化して、成形装置のコストアップ
を招く。従って、上記〜の方法はいずれも実用的と
は言えない。
【0012】ところで、上記したコーナー部102aの
反り上がり現象は、剛性の低い薄板平板状のリップシー
ル特有の不具合であって、例えば、図15(a)、
(b)に示すようなT字状やY字状の断面形状を持つリ
ップシールをシール材102により構成する場合は、リ
ップシールの剛性が高いためコーナー部102aでの反
り上がり現象が生じない。
【0013】しかし、その反面、薄板平板状のリップシ
ールに比較して図15(a)、(b)のものはT字状や
Y字状の複雑な形状であるため、シール材102の成形
型が複雑となり、成形コストが高くなる。また、シール
材102の先端シール部の厚さ寸法が上記断面形状のた
め大きくなって、ドア開放時の通風路面積を絞るので、
通風路の圧損が増大するという不具合もある。
【0014】本発明は上記した諸点に鑑みてなされたも
ので、ドア本体部の外周縁部に弾性体からなる薄板平板
状のシール材を固着したドアを用いて通風路を切替える
装置において、シール材の材料費や成形装置のコストア
ップを招くことなく、シール材の変形に起因する風洩れ
を防止することを目的とする。
【0015】より具体的には、本発明は、この種のドア
におけるコーナー部でのシール材の変形に起因する風洩
れを良好に防止することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1記載の発明では、ケース(11)の開口部
(16、17)を開閉して空気流れを切り替えるドア
(19、20)に、剛性の高い材質からなるドア本体部
(100)と、このドア本体部(100)の外周縁部に
固着された、弾性体からなるシール材(102)とを備
え、このシール材(102)は、前記ドア本体部(10
0)の外周縁部から外方側へ連続して延びる薄板平板状
であり、開口部(16、17)の周縁部に形成されたシ
ール面(103、104)にシール材(102)が圧着
することにより、開口部(16、17)を閉塞する通風
路切替装置において、シール材(102)には、成形時
に生じた内部応力が残留しており、この内部応力による
シール材(102)の変形量よりも、シール材(10
2)がシール面(103、104)に圧着した際のシー
ル材(102)の変形量を大きくすることを特徴として
いる。
【0017】これによると、使用期間が長くなって、シ
ール部材(102)が内部応力(内部収縮力)によりド
ア本体部(100)側へ変形しても、この変形量より
も、シール面への圧着時のシール材変形量の方が大きい
ので、従来技術のような隙間(C)が発生することがな
く、風洩れを確実に防止できる。しかも、本発明によれ
ば、シール材の材料費や成形装置のコストアップを招く
ことがないので、実用上、極めて有利である。
【0018】また、請求項2記載の発明では、請求項1
おいて、シール材(102)のコーナー部(102a)
において、内部応力によるシール材(102)の変形量
よりも、シール材(102)がシール面(103、10
4)に圧着した際のシール材(102)の変形量を大き
くすることを特徴としている。
【0019】これによると、特に、ドアコーナー部での
シール材の変形に起因する風洩れを良好に防止できる。
【0020】また、請求項3記載の発明では、請求項2
おいて、シール材(102)のコーナー部(102a)
における外周円弧部の曲率半径をRD とし、シール面
(103、104)においてシール材(102)の圧着
する部位をシールライン(D)とし、シール面(10
3、104)のシールライン(D)のコーナー部におけ
る内周円弧部の曲率半径をRC2としたとき、シール材
(102)のコーナー部(102a)における外周円弧
部の曲率半径RD よりも、シール面(103、104)
の内周円弧部の曲率半径RC2を大きくしたことを特徴と
している。
【0021】このように、RC2>RD の関係に設定する
ことにより、シール面(103、104)のコーナー部
の内周円弧部が従来技術に比してシール部材(102)
に接近する。
【0022】その結果、薄板平板状のシール部材(10
2)のコーナー部(102a)をその使用初期から、シ
ール部材(102)の内部応力(内部収縮力)による変
形量以上に予め弾性変形させておくことができる。よっ
て、使用期間が長くなって、シール部材(102)のコ
ーナー部(102a)が内部応力(内部収縮力)により
ドア本体部(100)側へ変形しても、従来技術のよう
な隙間(C)が発生することがなく、風洩れを確実に防
止できる。
【0023】なお、本発明において、上記した外周円弧
部および内周円弧部という表現は、曲率半径一定の厳密
な円弧形状のみに限定されるものではなく、曲率半径が
ある程度変化する概略円弧状のものを包含している。
【0024】また、請求項4記載の発明では、請求項3
おいて、シール面(103、104)のコーナー部にお
ける内周円弧部の曲率半径RC2を、シール材(102)
のコーナー部(102a)における外周円弧部の曲率半
径RD に対して、RC2=1.5〜4RD の範囲に設定す
ることを特徴としている。
【0025】本発明者の実験検討によると、シール面
(103、104)のコーナー部における内周円弧部の
曲率半径RC2を上記の範囲内に設定することにより、隙
間(C)の発生をより確実に防止することができるとと
もに、開口部(16、17)の開口面積確保、シール面
(103、104)のコーナー部の内周円弧部とドア本
体部(100)との干渉防止等の面において有利である
ことが分かった。
【0026】また、請求項5記載の発明では、ケース
(11)の開口部(16、17)を開閉して空気流れを
切り替えるドア(19、20)に、剛性の高い材質から
なるドア本体部(100)と、このドア本体部(10
0)の外周縁部に固着された、弾性体からなるシール材
(102)とを備え、このシール材(102)は、前記
ドア本体部(100)の外周縁部から外方側へ連続して
延びる薄板平板状であり、開口部(16、17)の周縁
部に形成されたシール面(103、104)にシール材
(102)が圧着することにより、開口部(16、1
7)を閉塞する通風路切替装置において、ドア本体部
(100)のコーナー部に、シール材(102)のコー
ナー部(102a)側へ突出する突出部(107)を形
成したことを特徴としている。
【0027】これによると、突出部(107)の突出量
の分だけ、薄板平板状シール材(102)のコーナー部
(102a)における突き出し寸法a3 を小さくするこ
とができる。そのため、コーナー部(102a)での反
り上がりを減少できると同時に、送風空気の動圧による
コーナー部102aの変形量を低減できる。その結果、
コーナー部(102a)での風洩れを効果的に抑制でき
る。
【0028】しかも、剛性の高い材質からなるドア本体
部(100)に突出部(107)を付加することによ
り、シール材(102)のコーナー部(102a)にお
ける剛性が高まるので、シール材(102)の内部応力
(内部収縮力)に起因するコーナー部(102a)の変
形をも良好に抑制できる。
【0029】また、請求項6記載の発明のように、突出
部(107)を曲面形状で突出させれば、シール材(1
02)のコーナー部(102a)の内周に直角状の角部
が形成されることがない。そのため、ドア開閉動作に伴
う応力集中によってシール材(102)が破断するとい
った不具合が発生せず、シール材(102)とドア本体
部(100)との間の接着品質を長期にわたって良好に
確保できる。
【0030】また、請求項7記載の発明では、シール材
(102)のコーナー部(102a)における突き出し
寸法a3 を、シール材(102)のコーナー部(102
a)以外のストレート部分における突き出し寸法bに対
して、a3 =0.5〜1.1bの範囲に設定することを
特徴としている。
【0031】これによると、突き出し寸法a3 を1.1
b以下に抑えることにより、コーナー部(102a)で
の反り上がりを減少でき、また、動圧によるコーナー部
(102a)の変形量を良好に抑えることが可能とな
ろ。これにより、コーナー部(102a)での風洩れを
効果的に抑制できる。また、突き出し寸法寸法a3
0.5bより大きくすることにより、ドア操作荷重に対
するコーナー部(102a)の変形のしやすさ(柔軟
性)を確保して、シール性の維持、ドア操作力の増大防
止を図ることができる。
【0032】なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述
する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すもの
である。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図に基
づいて説明する。
【0034】(第1実施形態)最初に、本発明を適用す
る車両用空調装置の概要を図1により説明すると、図1
は車両の車室内前方部に配置される計器盤(図示せず)
の車両幅方向の略中央位置に配置されるセンタ置きの空
調ユニット10部を示しており、車両の上下、前後に対
して図示の形態で空調ユニット10が搭載される。
【0035】車室内の助手席側にオフセット配置された
送風機ユニット(図示せず)の出口部が空調ユニット1
0の樹脂製ケース11の最前部の空気入口部11aに接
続されるので、送風機ユニットからの送風空気はこの空
気入口部11aに流入する。そして、この流入空気は冷
凍サイクルの冷房用蒸発器12で冷却された後に、温水
(エンジン冷却水)を熱源とする暖房用ヒータコア13
で再加熱されて温度調整される。
【0036】ここで、板状のエアミックスドア15は回
転軸15aにより回動可能となっており、このエアミッ
クスドア15の回動位置の選択により、暖房用ヒータコ
ア13を通過する温風と、バイパス路14を通過する冷
風との風量割合を調整することができ、これにより、車
室内への吹出空気の温度調整を行うことができる。そし
て、この温度調整された空気は、乗員頭部への空気吹出
のためのフェイス吹出開口部16と、車両窓ガラス内面
への空気吹出のためのデフロスタ吹出開口部17と、乗
員足元部への空気吹出のためのフット吹出開口部18の
いずれか1つまたは複数に流入する。
【0037】これらの各吹出開口部16〜18への空気
流れの切替は、それぞれ吹出モードドア19〜21によ
り行う。この吹出モードドア19〜21のうち、フェイ
ス、デフロスタ用のドア19、20は以下説明する図
2、図3に示すバタフライドアから構成されている。
【0038】図2、図3はリップシールタイプのバタフ
ライドア19、20を示すものであって、ドア19、2
0は、長方形の平面形状を持つドア本体部100を有
し、このドア本体部100は樹脂等の材料からなる剛性
の高い部分(換言すると、非弾性体部分)を構成する。
そして、ドア本体部100の短辺方向(図3参照)の中
央部に回転軸101を一体に成形している。
【0039】ドア本体部100の外周縁部に図3に示す
ようにエラストマ(高分子弾性体)からなるシール材1
02を額縁状に一体に固着している。このシール材10
2は、ドア本体部100の外周縁部から外方側へ連続し
て延びる薄板平板状のリップシールを構成する。ここ
で、ドア本体部100とシール材102との固着は例え
ば次のごとき一体成形で行うことができる。ドア本体部
100を予め成形しておき、このドア本体部100を成
形型内の所定部位に前もって挿入しておき、その後に、
シール材102を構成するエラストマを溶融状態で成形
型内に射出して成形することにより、ドア本体部100
とシール材102とを一体成形にて固着できる。
【0040】なお、ドア19、20のドア本体部100
を構成する樹脂材料としては、ポリプロピレン、ナイロ
ン、ABS等の樹脂が好適であり、ガラス繊維等のフィ
ラーを混入して強度アップを図るようにしてもよい。ま
た、シール材102のエラストマの具体的材質として
は、サーモプラスティクエラストマ(TPE)の一種で
あるオレフィン系エラストマが好適である。また、ケー
ス11の樹脂材料としては、上記ドア本体部100と同
種の樹脂を用いることができる。
【0041】一方、ケース11の吹出開口部16、17
には、鋭角状に傾斜したシール面103、104を持つ
ドア当接用リブ105、106を突出形成している。こ
こで、吹出開口部16、17の形状は図3に示すバタフ
ライドア19、20の長方形に対応した長方形になって
おり、そして、シール面103を持つドア当接用リブ1
05と、シール面104を持つドア当接用リブ106
が、ドア19、20の回転軸101を境として、回転軸
101の左右両側に区画して形成されている。
【0042】図2はバタフライドア19、20の開放状
態を示しており、この開放状態から回転軸101に回転
方向の操作力を加えて、バタフライドア19、20を図
2の反時計方向に所定角度回転させると、バタフライド
ア19、20のシール部材102の外周先端部102b
がケース11の吹出開口部16、17のリブ105、1
06のシール面103、104に圧着することにより、
ドア本体部100の外周部分をケース11に対してシー
ルすることができ、吹出開口部16、17を閉塞でき
る。
【0043】ここで、ドア本体部100の薄肉平板状シ
ール材102の外周先端部102bは、回転軸101と
平行な長辺部分と、回転軸101と直交する短辺部分
(側面部分)との双方において、ケース11のドア当接
用リブ105、106に圧着する。
【0044】なお、図4は、図2のA部拡大図で、薄肉
平板状シール材102の外周部分102bが傾斜面10
4に圧着した状態を示す。シール面103、104を傾
斜させるのは、シール材102の接触部の面圧を高めて
シール効果を高めるためである。
【0045】バタフライドア19、20のドア本体部1
00の回転軸101は、その両端部でケース11の軸受
穴(図示せず)に回転自在に支持されるとともに、回転
軸101の一端部はケース11の外部へ突出し、図示し
ないドア駆動機構に連結される。このドア駆動機構は、
周知のごとく車両用空調装置の操作パネルに設けられた
手動操作機構、あるいは、空調制御装置により制御され
るモータ等を用いたアクチュエータ機構により構成され
る。
【0046】次に、本第1実施形態によるバタフライド
ア19、20のシール性向上のための工夫点について詳
述すると、本発明者らの検討によると、バタフライドア
19、20の薄肉平板状シール部材102のコーナー部
102a(図3)における風洩れは、前述のごとくシー
ル材102内部に発生する収縮力が原因となって、コー
ナー部102aのシール材102がドア本体部100側
へ変形して、コーナー部102aのシール材102が反
り上がり、シール面104(103)との間に隙間C
(図5)が生じるために発生する。
【0047】このような隙間C(図5)が生じるものに
ついてさらに精査したところ、図6〜図9に示すよう
に、ケース11側のドア当接用リブ106(105)の
シール面104(103)のコーナー部に形成される内
周円弧部の曲率半径RC1が、シール部材102のコーナ
ー部102aに形成される外周円弧部の曲率半径RD
り同等以下(RC1≦RD )の比較的小さい値であった。
具体的には、RD =5mm、RC1=5mmであった。
【0048】このため、ケース11側のシール面104
(103)のコーナー部では、内周円弧部の小さな曲率
半径RC1による凹状部が形成されることになり、その結
果、成形終了後の収縮力(残留内部応力)およびエラス
トマの材料物性による加熱収縮(熱収縮性)の影響で、
薄肉平板状シール部材102のコーナー部102aがド
ア本体部100側へ変形すると、図5、図9(a)に示
すように、シール部材102のコーナー部102aの外
周先端部102bが反り上がって、シール面104(1
03)との間に隙間Cが発生する。なお、図8(a)、
図9(a)は、RC1≦RD となった比較品であり、図
7、8の2点鎖線Dはケース11側のシール面104
(103)においてシール材102の外周部分102b
が圧着する部位であるシールラインを示す。
【0049】上記隙間Cの発生を防止するために、本実
施形態においては、ケース11側のシール面104(1
03)のシールラインDのコーナー部における内周円弧
部の曲率半径をRc2としたとき、この内周円弧部の曲率
半径Rc2をシール部材102のコーナー部102aの外
周円弧部の曲率半径RD より拡大して、ドア19、20
が開口部閉塞位置に操作されたときに、その使用初期か
ら、シール部材102の内部収縮力による変形量以上
に、シール部材102を予め弾性変形させておくように
している。
【0050】すなわち、薄肉平板状シール部材102の
コーナー部102aにおける、ドア本体部100側への
変形量は、シール部材102の内部収縮力とシール部材
102の剛性とにより決定されるが、ケース11側のシ
ール面104(103)のシールラインDのコーナー部
における内周円弧部の曲率半径Rc2(図7、図8
(b)、図9(b)参照)をシール部材102のコーナ
ー部102aの外周円弧部の曲率半径RD より拡大する
ことにより、シール面104(103)のコーナー部の
内周円弧部がシール部材102に対してより接近するこ
とになる。
【0051】その結果、薄肉平板状シール部材102の
コーナー部102aをその使用初期から、シール部材1
02の内部収縮力による変形量以上に予め弾性変形させ
ておくことができる。よって、空調装置の使用につれ
て、シール部材102のコーナー部102aが内部収縮
力によりドア本体部100側へ変形しても、比較品のよ
うに隙間Cが発生することがない。
【0052】本発明者の試作検討によると、上記Rc2
好ましい範囲は1.5〜4RD である。上記Rc2を1.
5RD より大きくすることにより、隙間Cの発生をより
確実に防止することができる。一方、上記Rc2を4RD
より大きくすると、シール面104(103)のコーナ
ー部の内周円弧部が開口部16、17の内側へ大きく突
き出すようになり、開口部16、17の開口面積縮小の
程度が大きくなる。また、シール面104(103)の
コーナー部の内周円弧部がドア本体部100に近接して
ドア本体部100と干渉する恐れが出てくる。これらの
理由から、上記Rc2は4RD より小さくすることが好ま
しい。
【0053】なお、より具体的には、RD =5mmのと
き、Rc2=10〜15mm(Rc2=2〜3RD )が好ま
しい範囲であった。
【0054】(第2実施形態)第1実施形態では、薄肉
平板状シール部材102の内部収縮力による変形に起因
するコーナー部の風洩れ防止について説明したが、薄肉
平板状シール部材102に作用する送風空気の動圧によ
りシール部材102のコーナー部が変形して風洩れが発
生することがある。そこで、第2実施形態では、この送
風空気の動圧によるシール部材102のコーナー部の変
形をも抑制するものである。
【0055】まず、最初に、薄肉平板状シール部材10
2のコーナー部102aの具体的寸法関係について説明
すると、図10(a)はコーナー部102aの寸法設定
の比較例1であり、シール部材102の外縁部の形状を
長方形に近似させるため、コーナー部102aの外周円
弧部の曲率半径RD を内周円弧部の曲率半径RDiと同一
(RD =RDi)の小さな値にしている。これに伴って、
シール部材102のコーナー部102aにおける突き出
し寸法(リップ長さ)a1 は、シール材102のコーナ
ー部102a以外のストレート部分における突き出し寸
法(リップ長さ)bより必然的に大きくなる。例えば、
ストレート部分における突き出し寸法(リップ長さ)b
=10mmの場合に、RD =RDi=5mmであると、コ
ーナー部102aにおける突き出し寸法a1 は14.1
4mmに増えてしまう。
【0056】一般に、弾性体における曲げ変形量は、一
定荷重に対して突き出し寸法(リップ長さ)の3乗に比
例するから、シール部材102のコーナー部102aに
送風空気の動圧が加わった際に、コーナー部102aが
動圧の方向に大きく変形する。図11のL1 は、この動
圧によるコーナー部102aの変形量であり、ストレー
ト部分における変形量L2 に比して大幅に増加する。こ
の結果、送風空気の動圧に基づくコーナー部102aの
変形によって風洩れが生じる。
【0057】次に、図10(b)の比較例2では、コー
ナー部102aの内周円弧部を廃止して、直角状の角部
を形成している。これによると、内周円弧部を廃止した
分だけ、突き出し寸法a2 が短くなるが、その反面、シ
ール部材102のコーナー部102aの内周側に直角状
の角部を形成しているので、ドア開閉動作に伴ってシー
ル部材102の曲げ変形が繰り返されると、シール部材
102の直角状の角部に応力集中が起こって、この角部
からシール部材102が破断し、シール部材102とド
ア本体部100との接着品質を悪化させるという問題が
ある。
【0058】そこで、第2実施形態では、送風空気の動
圧によるシール部材102のコーナー部の変形を抑制す
るために、図12、図13に示すように、ドア本体部1
00のコーナー部に、シール材102のコーナー部10
2a側へ突出する突出部107を形成している。この突
出部107は滑らかな曲面形状(具体的には円弧状)で
突出している。
【0059】突出部107の突出量はシール材102の
コーナー部102aにおける突き出し寸法a3 (=突出
部107の頂部とシール部材102のコーナー部の外周
円弧部との間隔)がストレート部分における突き出し寸
法bに対して、a3 =0.5〜1.1bの範囲となるよ
うに設定する。
【0060】ここで、寸法a3 を1.1b以下に抑える
ことにより、動圧によるコーナー部102aの変形量を
図11のストレート部分における変形量L2 と同等程度
に抑えることが可能となり、動圧による風洩れを効果的
に抑制できる。また、寸法a 3 を0.5bより小さくす
ると、所定のドア操作荷重に対するコーナー部102a
の変形量が減少してシール性が損なわれるので、寸法a
3 は0.5b以上にするのがよい。このような観点か
ら、寸法a3 は、寸法bと略同等(a3 ≒b)となるよ
うに設定するのが最も好ましい。
【0061】しかも、第2実施形態によると、突出部1
07は滑らかな曲面形状で突出しているから、比較例2
のごとき直角状の角部がシール材102のコーナー部1
02aの内周に形成されることがない。そのため、ドア
開閉動作に伴う応力集中によってシール材102が破断
するといった不具合が発生せず、シール材102とドア
本体部100との間の接着品質を長期にわたって良好に
確保できる。
【0062】さらに、コーナー部102aにおける突き
出し寸法a3 をストレート部分における突き出し寸法b
と同等にするとともに、剛性の高い突出部107の付加
によりシール材102のコーナー部102aにおける剛
性が高まるので、第1実施形態において述べた内部収縮
力に起因するコーナー部102aの反り上がりを抑制で
きるという効果も同時に発揮できる。
【0063】図14は、第2実施形態による効果を示す
実験データであり、比較例1は前述の図10(a)によ
るもので、b=10mm、RD =RDi=5mm、突き出
し寸法a1 =14.14mmである。これに対して、本
発明品はb=10mm、突出部107は曲率半径=2m
mの円弧状、RD =5mm、突き出し寸法a3 =10.
07mmである。その他、シール材102の材質等はす
べて同一条件である。
【0064】図14の下側に示すように、シール材10
2の外周先端部102bをシール面104に圧着した状
態で、80°Cの高温雰囲気中に24時間放置して、シ
ール材102の外周先端部102bの反り上がり量を測
定した。その結果、比較例1では反り上がり量が0.2
3mmであったのに対して、本発明品によると、反り上
がり量を0.13mmに低減できた。
【0065】また、図14の下側に示すように、シール
材102の外周先端部102bをシール面104に圧着
した状態で80°Cの高温雰囲気中に24時間放置した
後、ドア前後に40mmAqの圧力差を加えたときの風
洩れ量を測定した。
【0066】その結果、比較例1ではシール材102の
コーナー部102aからの風洩れ量が2.9m3 /hで
あり、これに対し本発明品では同風洩れ量を0.9m3
/hという僅少値に抑えることができることが分かっ
た。
【0067】(他の実施形態)なお、本発明は、車両用
空調装置の吹出モードドア以外に、エアミックスドア、
内外気切替ドア等にも適用できる。さらに、車両用空調
装置以外の用途においても、本発明は通風路切替装置と
して広く適用可能であることはもちろんである。
【0068】また、上記の実施形態では、図3、12に
示すようにドア本体部100の中央部に回転軸101を
配置するバタフライドア19、20に本発明を適用した
場合について説明したが、図1に示すドア15、21の
ようにドア本体部の端部に回転軸15aを配置するタイ
プのドアにおいても、ドア本体部の外周縁部にリップシ
ールタイプのシール材を固着する構造であれば、本発明
を同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する車両用空調装置の概略構成を
示す破断斜視図である。
【図2】図1におけるバタフライドアを例示する要部断
面図である。
【図3】図1におけるバタフライドアの平面図である。
【図4】図2のA部拡大図である。
【図5】図2のA部拡大図で、従来技術による不具合を
示すものである。
【図6】図1におけるバタフライドアのコーナー部とケ
ース側シール面との関係を示す部分斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態および従来技術の要部の
平面図である。
【図8】(a)は従来技術のケース側シール面の部分斜
視図、(b)は本発明の第1実施形態によるケース側シ
ール面の部分斜視図である。
【図9】図6のB−B断面図であり、(a)は従来技術
を示し、(b)は本発明の第1実施形態を示す。
【図10】本発明の第2実施形態の前提を説明するため
の比較例の要部の平面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の前提を説明するため
の動圧によるシール材の変形量の説明図である。
【図12】本発明の第2実施形態によるバタフライドア
の平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態によるバタフライドア
の要部拡大図である。
【図14】本発明の第2実施形態による効果を示す実験
データの説明図である。
【図15】従来のシール材におけるリップシール形状の
他の例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
11…ケース、16〜18…吹出開口部、19、20…
バタフライドア、100…ドア本体部、101…回転
軸、102…シール材、102a…コーナー部、10
3、104…シール面、107…突出部。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 通風路の開口部(16、17)を有する
    ケース(11)と、前記ケース(11)内に配設され、
    前記開口部(16、17)を開閉して空気流れを切り替
    えるドア(19、20)とを備え、 前記ドア(19、20)は、剛性の高い材質からなるド
    ア本体部(100)と、このドア本体部(100)の外
    周縁部に固着された、熱収縮性を有する弾性体からなる
    シール材(102)とを有しており、 このシール材(102)は、前記ドア本体部(100)
    の外周縁部から外方側へ連続して延びる薄板平板状であ
    り、 前記開口部(16、17)の周縁部に形成されたシール
    面(103、104)に前記シール材(102)が圧着
    することにより、前記開口部(16、17)を閉塞する
    通風路切替装置において、 前記シール材(102)には、成形時に生じた内部応力
    が残留しており、 この内部応力による前記シール材(102)の変形量よ
    りも、前記シール材(102)が前記シール面(10
    3、104)に圧着した際の前記シール材(102)の
    変形量を大きくすることを特徴とする通風路切替装置。
  2. 【請求項2】 前記シール材(102)のコーナー部
    (102a)において、前記内部応力による前記シール
    材(102)の変形量よりも、前記シール材(102)
    が前記シール面(103、104)に圧着した際の前記
    シール材(102)の変形量を大きくすることを特徴と
    する請求項1に記載の通風路切替装置。
  3. 【請求項3】 前記シール材(102)のコーナー部
    (102a)における外周円弧部の曲率半径をRD
    し、 前記シール面(103、104)において前記シール材
    (102)の圧着する部位をシールライン(D)とし、
    前記シール面(103、104)の前記シールライン
    (D)のコーナー部における内周円弧部の曲率半径をR
    C2としたとき、 前記外周円弧部の曲率半径RD よりも前記内周円弧部の
    曲率半径RC2を大きくしたことを特徴とする請求項2に
    記載の通風路切替装置。
  4. 【請求項4】 前記内周円弧部の曲率半径RC2を、前記
    外周円弧部の曲率半径RD に対して、 RC2=1.5〜4RD の範囲に設定することを特徴とす
    る請求項3に記載の通風路切替装置。
  5. 【請求項5】 通風路の開口部(16、17)を有する
    ケース(11)と、前記ケース(11)内に配設され、
    前記開口部(16、17)を開閉して空気流れを切り替
    えるドア(19、20)とを備え、 前記ドア(19、20)は、剛性の高い材質からなるド
    ア本体部(100)と、このドア本体部(100)の外
    周縁部に固着された、弾性体からなるシール材(10
    2)とを有しており、 このシール材(102)は、前記ドア本体部(100)
    の外周縁部から外方側へ連続して延びる薄板平板状であ
    り、 前記開口部(16、17)の周縁部に形成されたシール
    面(103、104)に前記シール材(102)が圧着
    することにより、前記開口部(16、17)を閉塞する
    通風路切替装置において、 前記ドア本体部(100)のコーナー部に、前記シール
    材(102)のコーナー部(102a)側へ突出する突
    出部(107)を形成したことを特徴とする通風路切替
    装置。
  6. 【請求項6】 前記突出部(107)は曲面形状で突出
    していることを特徴とする請求項5に記載の通風路切替
    装置。
  7. 【請求項7】 前記シール材(102)のコーナー部
    (102a)における突き出し寸法a3 を、前記シール
    材(102)のコーナー部(102a)以外のストレー
    ト部分における突き出し寸法bに対して、 a3 =0.5〜1.1bの範囲に設定することを特徴と
    する請求項5または6に記載の通風路切替装置。
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