JP2000135402A - フッ化ストロンチウムを使用した三フッ化ホウ素の除去方法および回収方法 - Google Patents

フッ化ストロンチウムを使用した三フッ化ホウ素の除去方法および回収方法

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JP2000135402A
JP2000135402A JP10324527A JP32452798A JP2000135402A JP 2000135402 A JP2000135402 A JP 2000135402A JP 10324527 A JP10324527 A JP 10324527A JP 32452798 A JP32452798 A JP 32452798A JP 2000135402 A JP2000135402 A JP 2000135402A
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Tsutomu Takashima
務 高嶋
Yuichi Tokumoto
祐一 徳本
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Nippon Petrochemicals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 三フッ化ホウ素またはその錯体を含有する流
体から、三フッ化ホウ素を、経済的でかつ環境汚染を生
じない手段により、しかも高い効率で除去する方法、お
よび再利用可能な三フッ化ホウ素を回収する方法を提供
する。 【解決手段】 三フッ化ホウ素またはその錯体を含有す
る流体を、温度250℃以下でフッ化ストロンチウムに
接触させることを特徴とする三フッ化ホウ素の除去方
法、および上記方法により生成したテトラフルオロホウ
酸ストロンチウム塩を100〜600℃の温度範囲で加
熱して三フッ化ホウ素とフッ化ストロンチウムとを得る
ことからなる三フッ化ホウ素の回収方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、三フッ化ホウ素ま
たはその錯体を含有する流体から、三フッ化ホウ素を選
択的に分離除去する方法、および回収する方法に関する
ものであり、回収した三フッ化ホウ素は再利用が可能で
ある。
【0002】
【従来の技術】三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素と
錯化剤(配位子ともいう)からなる三フッ化ホウ素錯体
は、アルキル化、異性化、重合、分解、脱水等の種々の
化学反応における触媒として工業的に広範囲に使用され
ている。これらの触媒は、対象とする反応に応じ、三フ
ッ化ホウ素単独であるいは三フッ化ホウ素に対して種々
の錯化剤を適宜の割合で配位させた形態で使用されてい
る。
【0003】三フッ化ホウ素またはその錯体の触媒を使
用したこれらの反応の終了後には、三フッ化ホウ素を失
活させる必要がある。そのために通常、アンモニア、苛
性ソーダ、石灰等の塩基性物質の水溶液で中和した後、
水洗する方法が採用されている。しかし、中和、水洗工
程からは使用したアルカリや三フッ化ホウ素の中和物で
あるフッ化物を含む廃水が排出されるため、近年は環境
汚染の問題を考慮してその除去対策を講ずることが望ま
れている。さらに、三フッ化ホウ素は高価であるため、
除去した三フッ化ホウ素を回収して再使用することは経
済的にも有利であり、除去と回収再使用の観点から従来
いくつかの提案がなされている。
【0004】例えば、オリゴマー化反応の生成物をシリ
カと接触させてこれに含まれる三フッ化ホウ素を除去す
る方法が知られている。Morgensonらの米国特許4,42
9,177号、ならびに Madgavkarらの米国特許4,21
3,001号および米国特許4,308,414号におい
ても、オリゴマー化反応後に三フッ化ホウ素を吸収させ
るための吸収剤としてシリカを用いている。Madgavkar
らの米国特許4,394,296号においては、オリゴマ
ー化プロセスにおいて触媒としての三フッ化ホウ素と共
に助触媒として含水シリカを用い、次いでシリカをろ別
して再循環することを開示している。
【0005】しかしながら、本発明者らの実験により、
シリカを用いる場合には、一旦吸着した三フッ化ホウ素
が分離の際に分解され、三フッ化ホウ素として回収する
ことは困難であることが判明した。したがって、シリカ
を用いて三フッ化ホウ素を分離回収し、繰り返し使用す
ることは困難である。
【0006】その他の三フッ化ホウ素を除去する方法と
して、Tycerらの米国特許4,981,578号には、オ
リゴマーの生成物流を固体または水溶液のKF、NaF
またはNH4Fと接触させることによって三フッ化ホウ
素を除去する方法が開示されている。
【0007】これらの方法はいずれも、三フッ化ホウ素
を生成物流から除去することのみを目的としており、再
使用可能な三フッ化ホウ素を回収しようとするものでは
ない。また、除去についても、三フッ化ホウ素に対する
吸収能は必ずしも十分ではない。なお、上記KF、Na
FまたはNH4Fを用いて三フッ化ホウ素を除去する方
法により回収を行い再使用を試みる場合に、三フッ化ホ
ウ素と反応して生成するテトラフルオロホウ酸ナトリウ
ム塩(NaBF4)およびカリウム塩(KBF4)は、
熱分解温度がそれぞれ650℃以上および750℃以上
の高温である。三フッ化ホウ素を回収するためには、こ
れらの熱分解が必要であり、加熱のためのエネルギーコ
ストを考慮すると実用化は困難である。また、NH4
については、それ自体が熱に対して非常に不安定で、三
フッ化ホウ素を吸着する段階でもNH3とHFに分解す
る懸念がある。したがって、上記KF、NaFまたはN
4Fを用いて三フッ化ホウ素を除去する方法を実施す
ることはきわめて困難である。
【0008】以上の先行技術のように、三フッ化ホウ素
またはその錯体を使用した製造プロセスから、三フッ化
ホウ素を取り出す方法はいくつか提案され、開発するた
めに多大の努力がなされていることが理解される。しか
しながら、経済的でかつ環境汚染を生じない手段により
再利用可能な三フッ化ホウ素を回収する方法はこれまで
に提案されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、三フ
ッ化ホウ素またはその錯体を含有する流体から、高価か
つ有害な三フッ化ホウ素を、経済的でかつ環境汚染を生
じない手段により、しかも高い効率で除去する方法、お
よび再利用可能な三フッ化ホウ素を回収する方法を提供
することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的に沿って鋭意検討した結果、三フッ化ホウ素またはそ
の錯体を含有する流体から三フッ化ホウ素を除去し、さ
らに再利用可能な三フッ化ホウ素を回収する画期的な方
法を見出して、本発明を完成した。すなわち、本発明の
第1は、三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素錯体を含
有する流体を、温度250℃以下でフッ化ストロンチウ
ム(SrF2)に接触させることを特徴とする三フッ化ホ
ウ素の除去方法に関するものである。本発明の第2は、
本発明の第1において、接触の温度が100℃以下であ
る三フッ化ホウ素の除去方法に関する。本発明の第6
は、次の工程からなる三フッ化ホウ素の回収方法に関す
るものである。 (工程1)三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素錯体を
含有する流体を、温度250℃以下でフッ化ストロンチ
ウムに接触させる工程、および (工程2)工程1で生成したテトラフルオロホウ酸スト
ロンチウム塩(Sr(BF4)2)を100〜600℃の温
度範囲で加熱することによって、三フッ化ホウ素とフッ
化ストロンチウムとを得る工程。 本発明の第7は、本発明の第6において、工程2におけ
るテトラフルオロホウ酸ストロンチウム塩の加熱温度が
250〜500℃の範囲である三フッ化ホウ素の回収方
法に関する。本発明の第8は、本発明の第6において、
工程1における接触温度が100℃以下である三フッ化
ホウ素の回収方法に関する。本発明の第3および第9
は、それぞれ本発明の第1および第6において、三フッ
化ホウ素錯体が、三フッ化ホウ素と有機または無機極性
化合物とで形成された錯体である三フッ化ホウ素の除去
方法および三フッ化ホウ素の回収方法に関する。本発明
の第4および第10は、それぞれ本発明の第3および第
9において、有機または無機極性化合物が、含酸素化合
物、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物または
無機酸から選ばれたものである三フッ化ホウ素の除去方
法および三フッ化ホウ素の回収方法に関する。本発明の
第5および第11は、それぞれ本発明の第4および第1
0において、含酸素化合物が、水、アルコール類、エー
テル類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、エス
テル類、有機酸類および酸無水物から選ばれたものであ
る三フッ化ホウ素の除去方法および三フッ化ホウ素の回
収方法に関する。本発明の方法によれば、フッ化ストロ
ンチウムを三フッ化ホウ素の吸着剤として使用すること
により、三フッ化ホウ素が錯体の形態であっても選択的
に高い効率で吸着分離することができると共に、三フッ
化ホウ素を分解させることなく高効率で高純度に脱着回
収することができるので、効果的な三フッ化ホウ素の再
使用が可能となる。
【0011】以下、本発明をさらに説明する。三フッ化
ホウ素あるいは三フッ化ホウ素と錯化剤からなる三フッ
化ホウ素錯体は、触媒作用としてAlCl3、FeCl3、硫
酸等を含むいわゆるフリーデルクラフツ型触媒に分類さ
れるが、AlCl3、FeCl3、硫酸等と比較して、主反応
以外の副反応を抑制する効果を有する点において優れた
触媒性能を示すことが知られている。そのため、三フッ
化ホウ素およびその各種錯体は、アルキル化、異性化、
重合、分解、脱水等の種々の化学反応における触媒とし
て工業的に広範囲に使用されている。
【0012】例えば、ナフサクラッカーから得られるエ
チレンとベンゼンからエチルベンゼンを気相アルキル化
によって製造する際に、三フッ化ホウ素が使用されてい
る。同様に、合成洗剤、抗酸化剤等の用途に大きな市場
を有するアルキルベンゼン類の製造は、低級オレフィン
類と芳香族類との液相アルキル化により行われている
が、この製造の際にも、三フッ化ホウ素またはその錯体
が使用されている。ナフサクラッカーからのC9芳香族
オレフィン留分およびC5ジオレフィン留分を、単独で
または混合して酸触媒により重合して得られる低分子量
の炭化水素樹脂は、一般に石油樹脂と呼ばれ、接着剤、
印刷インク等の分野で広く使用されている。この樹脂製
造時の重合触媒としても三フッ化ホウ素またはその錯体
が工業的に広く使用されている。その他に、合成繊維の
スパンデックスを製造する際の中間体であるテラコール
の合成においても、三フッ化ホウ素またはその錯体が使
用されている。以上のように、三フッ化ホウ素またはそ
の錯体は、化学工業界の製造触媒として多岐の用途に使
用されているが、そのほか、医薬、半導体等の分野にお
いても広範囲に使用されている。
【0013】上記アルキレーション等の反応において
は、反応後に三フッ化ホウ素またはその錯体を含む反応
混合物としての流体が反応工程から流出する。本発明に
おいて用いる三フッ化ホウ素またはその錯体を含有する
流体としては、上記のように、三フッ化ホウ素またはそ
の錯体を触媒とする製造プロセスから流出する流体がそ
の代表例である。一般的には、流体は三フッ化ホウ素と
錯体を形成しない液体または気体からなり、錯体を形成
しない限り空気、窒素等の気体、有機化合物、例えば炭
化水素、アルコール、エーテル、ケトン、エステル等の
液体またはこれらの蒸気を用いることができる。この流
体中には、三フッ化ホウ素、その錯体および場合により
その両者が、溶解もしくは分散などの形態で存在してい
る。ただし、三フッ化ホウ素の吸着除去工程において用
いるフッ化ストロンチウムやテトラフルオロホウ酸スト
ロンチウム塩(フッ化ストロンチウムと三フッ化ホウ素
との反応生成物)などを溶解させる流体を用いると、上
記吸着工程を遂行することが困難になるので好ましくな
い。本発明において適当でない流体としては、具体的に
は、アンモニウム塩、フッ化水素酸あるいは塩酸等から
なる流体またはこれらを含有する流体などが例示され
る。
【0014】本発明の処理の対象としては、三フッ化ホ
ウ素自体を含有する流体の他、三フッ化ホウ素錯体を含
む流体を用いることができる。そして、錯体であって
も、本発明の方法によって処理することにより、選択的
に三フッ化ホウ素のみを吸着させることが可能である。
したがって、本発明の処理の対象とすることができる流
体の態様としては、例えば、有機液体中に三フッ化ホウ
素もしくはその錯体が分散もしくは溶解してなる有機液
体混合物、有機液体中に三フッ化ホウ素もしくはその錯
体の蒸気が溶解もしくは分散してなる有機液体混合物、
または気体中、例えば排ガス中に三フッ化ホウ素もしく
はその錯体の蒸気を含む混合気体等が挙げられる。
【0015】ここで、本発明に好適な三フッ化ホウ素系
錯体を形成する錯化剤としては、特定の極性化合物、例
えば、アルコール類、エーテル類、フェノール類、ケト
ン類、アルデヒド類、エステル類、有機酸類、酸無水物
等の含酸素化合物、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リ
ン化合物または無機酸類などの有機または無機極性化合
物が挙げられる。
【0016】具体的には、アルコール類としては、芳香
族またはC1〜C20の脂肪族のアルコールが用いられ、
このC1〜C20の炭素骨格は、直鎖アルキル基でも分岐
アルキル基でもよく、n−、sec−もしくは tert−アル
キル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を
含むアルキル基でも差し支えない。より具体的には、メ
タノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペ
ンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノー
ル、ノナノール、デカノールあるいはベンジルアルコー
ル、シクロヘキサノール等が挙げられるが、これらに限
定されるものではない。またジオール、トリオール等の
多価アルコールでもよい。
【0017】エーテル類としては、芳香族あるいはC1
〜C20の脂肪族の炭化水素基を有するエーテルが用いら
れ、このC1〜C20の炭素骨格は、直鎖アルキル基でも
分岐アルキル基でもよく、n−、sec−もしくは tert−
アルキル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の
環を含むアルキル基でも差し支えない。具体的には、ジ
メチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエー
テル、ジプロピルエーテル、メチルプロピルエーテル、
エチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルブ
チルエーテル、エチルブチルエーテル、プロピルブチル
エーテル、ジペンチルエーテル、あるいは、フェニルメ
チルエーテル、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエ
ーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、シクロヘキシ
ルエチルエーテル等が挙げられる。
【0018】フェノール類としては、1〜3価フェノー
ルが適当であり、具体的には、フェノール、クレゾール
等が好ましい。
【0019】ケトン類としては、芳香族またはC1〜C6
の炭化水素基を有するケトンが用いられ、このC1〜C6
の炭素骨格は、直鎖アルキル基でも分岐アルキル基でも
よく、n−、sec−もしくは tert−アルキル基または脂
環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基
でも差し支えない。具体的には、メチルエチルケトン、
ジエチルケトン、メチルブチルケトン、あるいはシクロ
ヘキサノン等が挙げられる。
【0020】エステル類としては、芳香族もしくはC1
〜C6の脂肪族のアルコール成分と、芳香族もしくはC1
〜C6の脂肪族カルボン酸またはリン酸成分とによって
エステル結合を形成したものが用いられ、このC1〜C6
の炭素骨格は、直鎖アルキル基でも分岐アルキル基でも
よく、n−、sec−もしくは tert−アルキル基または脂
環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基
でも差し支えない。具体的には、ギ酸メチル、ギ酸エチ
ル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチ
ル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、ヘキサン酸エチル、
安息香酸エチル等、およびリン酸トリブチル等のリン酸
の完全エステル等が挙げられる。
【0021】有機酸類としては、芳香族もしくはC1
6の脂肪族のカルボン酸、これらのハロゲン置換体、
リン酸、またはリン酸と芳香族もしくはC1〜C6の脂肪
族のアルコール成分との部分エステルが用いられ、この
1〜C6の炭素骨格は、直鎖アルキル基でも分岐アルキ
ル基でもよく、n−、sec−もしくは tert−アルキル基
または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むア
ルキル基でも差し支えない。具体的には、ギ酸、酢酸、
プロピオン酸、しゅう酸、マロン酸、安息香酸、リン酸
ジエチル等が挙げられる。
【0022】これらの錯化剤は、それぞれの錯体系にお
いて1種類のみを用いてもよく、また2種類以上を適宜
の割合で混合して用いてもよい。なお、これらの錯体自
体は従来公知の方法に従って製造することができる。例
えば、あらかじめ錯体として調製することもできるし、
また反応系内へ三フッ化ホウ素と1種以上の錯化剤を所
定の割合で別々にまたは同時に投入し、反応液内におい
て三フッ化ホウ素錯体を形成することもできる。
【0023】本発明において処理の対象とする錯体にお
いては、錯化剤に対する三フッ化ホウ素のモル比は、特
に限定されず、いかなるモル比のものも処理の対象とす
ることができるが、通常は、0.01以上、100以下
の範囲である。
【0024】流体中に含有される三フッ化ホウ素が上述
のように錯体である場合には、三フッ化ホウ素としての
濃度がかなり高いこともある。しかしながら、除去効率
を向上させるためには、通常三フッ化ホウ素の希薄流体
を用いることが好ましい。具体的には、三フッ化ホウ素
として10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下
である。濃度は薄いほど除去効率が高く、したがって濃
度の下限は特に制限されない。上記濃度以下となるよう
に適宜に希釈することができる。希釈用流体は、三フッ
化ホウ素と錯体を形成しない限り任意のものを用いるこ
とができ、例えば前記例示の液体から選択することがで
きる。
【0025】本発明において三フッ化ホウ素の吸着に用
いるフッ化ストロンチウムは、蛍光体、光学ガラス、セ
ラミックスフィルター等の多岐の産業にわたって大量に
使用されている物質であり、本発明においては、天然
品、合成品あるいは産業廃棄物等から得られるものな
ど、いずれを使用しても差し支えない。天然品として
は、フッ化ストロンチウムを98%以上含有するように
高純度精製したものを選ぶことが望ましい。
【0026】また、炭酸ストロンチウムとフッ化水素酸
とから、下記式(1)の反応に従ってフッ化ストロンチ
ウムを合成し得ることが知られており、このような方法
による合成品も使用することができる。この反応で合成
されるフッ化ストロンチウムは、自然沈降あるいはろ過
等の操作によって分別されたものをそのまま用いてもよ
いが、フッ化ストロンチウムが水にほとんど溶解しない
性質を利用して、水あるいはアルカリ洗浄した後、加熱
乾燥したものを使用することがさらに好ましい。 2HF + SrCO3 → SrF2 + H2O + CO2 ・・・・・・ 式(1)
【0027】さらに、フッ化水素等を触媒として使用す
る製造プロセスにおいて、触媒を失活させるために上記
式(1)のようにフッ化水素の中和処理を行うことがあ
るが、その際にフッ化ストロンチウムが産業廃棄物とし
て副生する。このような副生フッ化ストロンチウムを使
用することもできる。
【0028】次に、フッ化ストロンチウムに三フッ化ホ
ウ素を吸着させる工程について説明する。まず、三フッ
化ホウ素またはその錯体がフッ化ストロンチウムと接触
すると、下記式(2)または(3)の反応が容易に進行
して、テトラフルオロホウ酸ストロンチウム塩(Sr(B
4)2)が生成する。生成したテトラフルオロホウ酸ス
トロンチウム塩は、処理の対象とした流体に対して通常
は難溶性である。テトラフルオロホウ酸ストロンチウム
塩の生成により、三フッ化ホウ素のみを流体中から選択
的に捕捉除去することができる。 2BF3 + SrF2 → Sr(BF4)2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 式(2) 2BF3-(配位子) + SrF2 → Sr(BF4)2 + 2(配位子) ・・・・・・・・・ 式(3)
【0029】三フッ化ホウ素またはその錯体を含有する
流体から三フッ化ホウ素を吸着除去するには、上記流体
とフッ化ストロンチウムとを温度250℃以下で接触さ
せる。この温度範囲であれば三フッ化ホウ素の化学吸着
効率が高いので、250℃以下の任意の温度を採用する
ことができる。生成物の組成および化学構造等の変化を
考慮すると、より好ましい吸着温度は100℃以下の範
囲である。接触時の流体は、気相、液相または両方を含
む混相のいずれであってもよい。
【0030】吸着剤に関する結晶構造については、フッ
化ストロンチウムは無色の立方晶系の「蛍石型構造」で
あり、三フッ化ホウ素を吸着した後に生成するテトラフ
ルオロホウ酸ストロンチウム塩は無色の斜方晶系である
ことが知られている。双方ともに非常に安定な無機結晶
物質である。なお、吸着前後の結晶形態の変化の状態
は、X線回折分析により容易に観察することができる。
【0031】流体とフッ化ストロンチウムとの接触の方
法は特に限定されない。例えば、フッ化ストロンチウム
を単独で充填し、あるいはフッ化ストロンチウムを含有
する不活性な無機フィラー等を充填した固定床に、三フ
ッ化ホウ素またはその錯体を含有する流体を通過接触さ
せることができる。不活性な無機フィラーとしては、活
性炭あるいはステンレス鋼製パッキング等が挙げられる
が、材質はこれらに限定されるものではなく、形状も任
意である。また、フッ化ストロンチウムは完全に焼成し
たものである必要はないが、回収した三フッ化ホウ素を
水分を避ける用途に再利用する場合には、フッ化ストロ
ンチウムを焼成して水分を除去したものを用いることが
好ましい。
【0032】使用するフッ化ストロンチウムの粒径は特
に限定されず、例えば、市販試薬のフッ化ストロンチウ
ムは粒径分布が1〜10μmの範囲の微細粒状である
が、このような粉末を成型して適宜の粒径分布に揃えた
ものでもよい。三フッ化ホウ素の吸着効率をより高くす
るためには、吸着剤であるフッ化ストロンチウムの表面
積を大きくすることが好ましい。この観点からは粒径が
微細であるほど好ましいが、吸着操作の容易さなどを考
慮して適宜に粒径を選択する。
【0033】また、フッ化ストロンチウムの形状も特に
限定されず、例えば、断面形状が通常の円形であるもの
のほか、中空に成形されたもの、または多孔性の特殊形
状のものであってもよく、目的に応じて適宜選択するこ
とが好ましい。
【0034】吸着のための接触操作は、前記のようにフ
ッ化ストロンチウム粒子等を充填した吸着管または塔な
どを用いる流通式、およびバッチ式のいずれの形式で行
うこともできる。接触の時間も特に限定されず、適宜に
決定することができる。通常、流通式では、空間速度と
して0.01〜10hr-1の範囲から選択することができ
る。バッチ式で三フッ化ホウ素を完全に除去するための
フッ化ストロンチウムの量は、対象とする流体中の三フ
ッ化ホウ素の0.5倍モル以上であることが必要であ
る。除去効率を向上させるためにはフッ化ストロンチウ
ムの量を更に多く用いることが好ましいが、使用量は適
宜に選択することができる。
【0035】以上述べた方法によって、三フッ化ホウ素
またはその錯体を含有する流体をフッ化ストロンチウム
と接触させることによって、上記流体中の三フッ化ホウ
素はフッ化ストロンチウムに化学吸着されて流体から分
離除去される。吸着後は、三フッ化ホウ素を吸着したフ
ッ化ストロンチウムを系から適宜の方法で分離すること
ができる。次に述べる脱着操作は、吸着管または吸着塔
内において行うこともできるし、別個の装置に移送して
行うこともできる。
【0036】次に、吸着した三フッ化ホウ素をフッ化ス
トロンチウムから脱着させて再利用可能な状態で回収す
るためには、吸着により生成したテトラフルオロホウ酸
ストロンチウム塩の加熱を行う。すなわち脱着において
は、下記式(4)の反応を進行させることにより、純粋
な三フッ化ホウ素ガスと、元のフッ化ストロンチウムの
形態に戻すことができる。 Sr(BF4)2 → 2BF3 + SrF2 ・・・・・・ 式(4)
【0037】上記脱着のための加熱方法としては、単に
加熱するほか、適宜の不活性ガス、例えば窒素などの存
在下で行うこともできる。また不活性な適宜の有機溶媒
中で加熱することも可能である。必須要件は三フッ化ホ
ウ素ガスの脱着を100℃以上の温度で行うことであ
り、脱着速度を十分大きくするためには250℃以上の
温度範囲が望ましい。脱着温度の上限は、フッ化ストロ
ンチウム自体が不活性ガス中では約1400℃まで融解
を起こさない安定な結晶であることから、特に限定され
ず、高温であるほど脱着が速やかに進行する。しかしな
がら、600℃を越える高温では、エネルギーコストの
増大、有機溶媒の分解、あるいは高温における三フッ化
ホウ素ガスによる装置の腐食などが問題になるので好ま
しくない。また、空気中でフッ化ストロンチウムを10
00℃以上に加熱すると酸化物が生成することが知られ
ている。したがって、好ましくは600℃以下の温度で
脱着を行う。
【0038】三フッ化ホウ素の脱着のための時間は、上
記温度範囲であれば特に限定されない。加熱時間を長く
するほど三フッ化ホウ素の脱着率は向上するが、過度に
長い時間を費やすことは不経済であり、通常は100時
間以内とする。吸着剤であるフッ化ストロンチウムを繰
り返し使用する場合には、三フッ化ホウ素の脱着率を適
宜なレベルに留める方が経済的な面から好ましい。上記
加熱操作により、三フッ化ホウ素は分解等を受けること
なく、高純度の三フッ化ホウ素の形態で回収される。ま
た、吸着剤は元の高純度のフッ化ストロンチウムに復元
される。したがって、本発明の方法により三フッ化ホウ
素の吸着または脱着を行ったフッ化ストロンチウムは、
必要に応じて繰り返し使用することができる。
【0039】なお、脱着した三フッ化ホウ素は高純度で
あるため、適宜の手段で回収し、適宜のプロセスに使用
する。例えば、処理の対象とした流体を排出したプロセ
スにおいて再使用することも可能である。また、脱着し
た三フッ化ホウ素は、適宜に固体アルカリ等に吸収また
は吸着させて廃棄することもできる。
【0040】
【発明の実施の形態】以下、実施例により本発明を詳述
する。
【実施例】本実施例において脱着した三フッ化ホウ素ガ
スの特定は、当該業界で周知の以下の分析手法に準拠し
て行った。 <脱着した三フッ化ホウ素ガスの特定>三フッ化ホウ素
またはその錯体を塩化カルシウム水溶液と反応させる
と、下記式(5)の反応に従って、1モルの三フッ化ホ
ウ素から3モルの塩酸と1モルのホウ酸が生成し、生成
した塩酸を水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウム等
の規定度既知のアルカリ水溶液で中和滴定することによ
り、存在するフッ素の濃度を知ることができる。さら
に、下記式(5)の反応に従って生成するホウ酸を、日
本工業標準規格JIS K8863-1991のホウ酸含
有量の試験法に準拠して測定することにより、存在する
ホウ素の濃度を知ることができる。すなわち、ホウ酸が
マンニトールと水溶性の強酸性錯体を形成する性質を利
用する手法であり、生成する強酸性錯体を規定度既知の
アルカリ水溶液で中和滴定することによってホウ酸含有
量を知ることができ、その値から存在するホウ素の濃度
を求める。 2BF3 + 3CaCl2 + 6H2O → 2H3BO3 + 6HCl + 3CaF2 ・・・・・・・・・ 式(5)
【0041】本発明において用いた三フッ化ホウ素の特
定手法は、以下の通りである。まず、三フッ化ホウ素ま
たはその錯体を含有する流体中から三フッ化ホウ素をフ
ッ化ストロンチウムに吸着させてテトラフルオロホウ酸
ストロンチウム塩の形態にした後に、上記吸着塩を加熱
して、遊離する三フッ化ホウ素を水、低級アルコールあ
るいはジエチルエーテル等の溶液中に吸収させる。次い
で、その吸収液に塩化カルシウム水溶液を加えて、上述
の2段の中和滴定を行い、フッ素とホウ素の含有量を調
べ、両元素の原子モル比と三フッ化ホウ素濃度を求め
る。上記の方法により、本発明の実施例から得られた遊
離ガスは、いずれの場合においても、フッ素とホウ素の
原子モル比が3:1であり、三フッ化ホウ素(BF3
の形態が保持されていることを確認した。
【0042】<実施例1> (三フッ化ホウ素の吸着除去)窒素気流下で、攪拌子付
きの三角フラスコに、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラ
ートをヘキサン中へ分散させた分散液(三フッ化ホウ素
として0.25重量%)100gを仕込み、50℃の恒
温で攪拌を維持した状態で、吸着剤として市販特級試薬
のフッ化ストロンチウム(純度99%以上、添川理化学
(株)製)2.32g(三フッ化ホウ素の5倍モル相当
量)を添加して、窒素気流下で30分間攪拌を行った。
攪拌を停止して分散液を静置することにより、吸着剤と
有機液体相とを比重差によって2相に分離し、有機相を
デカンテーションにより別容器に分取した。上記有機相
に塩化カルシウム水溶液を加えて、前記式(5)の反応
を用いる分析法により有機相内に残留する三フッ化ホウ
素濃度を測定したところ、残留する三フッ化ホウ素濃度
は零であり、三フッ化ホウ素が完全に吸着除去されてい
ることが確認された。次に、吸着剤をろ別し、減圧下で
乾燥して重量変化を確かめた。三フッ化ホウ素を吸着す
る前の重量との差を求めた結果、添加したフッ化ストロ
ンチウム中に吸着保持された三フッ化ホウ素の量は1
0.8g/100g-フッ化ストロンチウムであることが判明し
た。さらに、デカンテーションにより分離した有機相に
ついて、ガスクロマトグラフィーにより組成分析を行っ
たところ、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート錯体の
投入量に相当するジエチルエーテルが全量、有機相に移
動していることが確認された。また、三フッ化ホウ素を
吸着保持したフッ化ストロンチウム吸着剤を乾燥してX
線回折分析を行ったところ、フッ化ストロンチウム(S
rF2)およびテトラフルオロホウ酸ストロンチウム塩
(Sr(BF4)2)の二種類の結晶構造が確認された。
【0043】(加熱脱着)三フッ化ホウ素を吸着保持し
たフッ化ストロンチウム吸着剤をステンレス鋼製管型容
器に充填し、1ml/分(標準状態)の流量で窒素を供給
し、供給窒素の加熱を開始して温度を300℃に維持し
た。出口から流出する窒素は、予め冷却したジエチルエ
ーテル溶液中に導入した。この状態で、出口からの窒素
を観察し、三フッ化ホウ素による白煙が認められなくな
るまで加熱した窒素の導入を続けた。その後、冷却して
残存する吸着剤粉体の重量を秤量したところ、三フッ化
ホウ素の残存量は零であり、吸着された三フッ化ホウ素
の100%が脱着したことが確認された。さらに、残存
粉体について吸着時と同様にX線回折分析を行ったとこ
ろ、フッ化ストロンチウムの結晶構造のみが観察され、
元の形態に復元していることが確認された。また、加熱
による脱着ガスを吸収したジエチルエーテル溶液に塩化
カルシウム水溶液を加えて、前記2段の中和滴定を行
い、フッ素とホウ素の含有量を調べた。得られた値から
フッ素とホウ素の原子モル比を算出し、同時に存在する
三フッ化ホウ素の量を決定したところ、フッ素とホウ素
の原子モル比は3:1であって三フッ化ホウ素の形態が
確認され、ジエチルエーテル溶液中に存在する三フッ化
ホウ素量は0.238gであることが判明した。その結
果、吸着時に仕込んだ三フッ化ホウ素の95%相当量が
再利用可能な三フッ化ホウ素の形態で回収できることを
確認することができた。以上の結果を表1に示す。
【0044】<実施例2> (三フッ化ホウ素の吸着除去)実施例1で使用したフッ
化ストロンチウム18.00g(143mmol)を、直径
20mm、長さ200mmのステンレス鋼製管型容器に
充填した。上記の管を50℃の恒温に維持し、実施例1
と同様に三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートをヘキサ
ン中へ分散させた分散液(三フッ化ホウ素として0.2
5重量%)を10ml/hr(三フッ化ホウ素として16.5
mg/hr)の一定流量で供給した。出口流体中の三フッ化
ホウ素濃度は零であり、三フッ化ホウ素が完全に吸着除
去されていることを確認した。さらに吸着操作を継続
し、上記分散溶液の供給を開始してから116時間後
に、出口流体中から微量の三フッ化ホウ素の検出が確認
された時点で分散溶液の供給を停止した。分散溶液の供
給を停止した後、充填管内に窒素を供給して吸着剤に付
着した有機媒体を乾燥した後、充填管の重量を測定し
た。あらかじめ測定した三フッ化ホウ素溶液供給前の重
量との差を求めた結果、充填したフッ化ストロンチウム
中に吸着保持された三フッ化ホウ素の量は10.6g/100
g-フッ化ストロンチウムであった。また、風乾した三フ
ッ化ホウ素を吸着保持した吸着剤のX線回折分析を行っ
たところ、実施例1と同様にフッ化ストロンチウムおよ
びテトラフルオロホウ酸ストロンチウム塩の二種の結晶
構造が確認された。
【0045】(加熱脱着)上記のようにして三フッ化ホ
ウ素を吸着したフッ化ストロンチウムの充填管に、1ml
/分(標準状態)の流量で窒素を供給し、充填管の加熱
を開始して温度を300℃に維持した。出口から流出す
る窒素は、予め冷却したジエチルエーテル中に導入し
た。この状態で、出口からの窒素を観察し、三フッ化ホ
ウ素による白煙がほとんど認められなくなるまで充填管
の加熱と窒素導入を続けた。その後、冷却して充填管の
重量を秤量したところ、三フッ化ホウ素の残存量は0.
1g/100g-フッ化ストロンチウムであり、吸着された三
フッ化ホウ素の99%が脱着したことが確認された。更
に、加熱による脱着ガスを吸収したジエチルエーテル溶
液に塩化カルシウム水溶液を加えて、実施例1と同様
に、フッ素とホウ素の含有量を調べたところ、三フッ化
ホウ素の形態であること、およびジエチルエーテル溶液
中に存在する三フッ化ホウ素の量は1.90gであるこ
とが確認された。その結果、吸着時に仕込んだ三フッ化
ホウ素の99%相当量が再利用可能な三フッ化ホウ素の
形態で回収できることを確認することができた。
【0046】<実施例3>実施例1において使用した三
フッ化ホウ素ジエチルエーテラートを、三フッ化ホウ素
フェノラート錯体に変更してヘキサン中へ分散させた分
散液(三フッ化ホウ素として0.25重量%)を用いた
ほかは、実施例1と同様にして三フッ化ホウ素の吸着お
よび脱着の実験を行った。結果を表1に示す。
【0047】<実施例4>実施例1において使用した三
フッ化ホウ素ジエチルエーテラートを、三フッ化ホウ素
エチルアルコール錯体に変更してヘキサン中へ分散させ
た分散液(三フッ化ホウ素として0.25重量%)を用
いたほかは、実施例1と同様にして三フッ化ホウ素の吸
着および脱着の実験を行った。結果を表1に示す。
【0048】<実施例5>実施例1において、加熱脱着
の温度条件のみを300℃から400℃に変更して、フ
ッ化ホウ素の吸着および脱着を行った結果を表1に示
す。
【0049】
【表1】
【0050】上記実施例3〜5について、三フッ化ホウ
素を吸着保持した吸着剤のX線回折分析を行ったとこ
ろ、実施例1の場合と同様に、フッ化ストロンチウムお
よびテトラフルオロホウ酸ストロンチウム塩の二種の結
晶構造が確認された。また、吸着塩を加熱した際に脱着
するガスはすべて三フッ化ホウ素の形態を保持している
ことを確認した。
【0051】<実施例6>実施例1において、三フッ化
ホウ素ジエチルエーテラートをヘキサン中へ分散させた
分散液の代わりに、C9芳香族混合物中のオレフィン成
分を三フッ化ホウ素フェノール錯体触媒により重合して
得られた反応混合物(三フッ化ホウ素として0.25重
量%含有)を用いたほかは同様にして三フッ化ホウ素の
吸着および脱着を行ったところ、10.7g/100g-フッ化
ストロンチウムの吸着量で完全に三フッ化ホウ素を分離
除去することができた。さらに300℃の高温で処理す
ることにより、吸着された三フッ化ホウ素の93%を回
収した。上記C9芳香族混合物中のオレフィン成分と
は、ナフサ、ブタン等の石油系軽質炭化水素の熱分解や
接触分解の際に副生する、炭素数9のα−メチルスチレ
ン、ビニルトルエン、インデン等の芳香族オレフィンの
混合物である。
【0052】<実施例7>実施例1において、三フッ化
ホウ素エーテラートをヘキサン中へ分散させた分散液の
代わりに、C4混合物中のオレフィン成分を三フッ化ホ
ウ素エチルアルコール錯体触媒により重合して得られた
反応混合物(三フッ化ホウ素0.25重量%)を用いた
ほかは同様にして三フッ化ホウ素の吸着および脱着を行
い、10.8g/ 100g-フッ化ストロンチウムの吸着量で
完全に三フッ化ホウ素を吸着除去することができた。さ
らに300℃の高温で処理することにより、吸着された
三フッ化ホウ素の96%が回収された。上記C4混合物
とは、イソブテンを含有するC4ラフィネート(エチレ
ンクラッカーからのブタジエン抽出残)であり、その組
成は以下の通りである(重量%)。
【0053】<実施例8> (三フッ化ホウ素の吸着除去)実施例1で使用したフッ
化ストロンチウム18.00g(143mmol)を、実施
例2で使用したステンレス鋼製管型容器に充填した。上
記の管を50℃の恒温に維持し、実施例6に記載したC
9芳香族混合物中のオレフィン成分の重合時に排出され
る遊離の未反応三フッ化ホウ素ガス(三フッ化ホウ素濃
度700〜900体積ppm)を30リットル/hr(三フッ
化ホウ素の平均流量として73mg/hr)の流量で管内に
流通させた。出口流体中の三フッ化ホウ素濃度は零であ
り、三フッ化ホウ素が完全に吸着除去されていることを
確認した。さらに吸着操作を継続し、上記排出ガスの供
給を開始してから26時間後に、出口流体中から微量の
三フッ化ホウ素の検出が確認された時点で供給を停止し
た。排出ガスの供給を停止した後、充填管内に窒素を供
給して吸着剤に付着した有機媒体を乾燥除去した後、充
填管の重量を測定した。あらかじめ測定した三フッ化ホ
ウ素溶液供給前の重量との差を求めた結果、充填したフ
ッ化ストロンチウム中に吸着保持された三フッ化ホウ素
の量は10.5g/100g-フッ化ストロンチウムであった。
このようにして得られた吸着物に対して、前記実施例2
と同様の手順で加熱脱着の処理を行ったところ、吸着さ
れた三フッ化ホウ素の97%が回収された。
【0054】<比較例1>アクリロニトリルの5重量%
トルエン溶液に、重合開始剤としてアクリロニトリルに
対し1重量%の tert−ブチルパーオキシドおよび0.5
重量%のチオウレアを溶解し、得られた溶液を、あらか
じめ150℃で乾燥した60〜80メッシュの活性炭に
含浸させ、窒素気流中において100℃で2時間加熱し
て重合を行った。加熱終了後、沸点まで加熱したトルエ
ンにより洗浄し、アクリロニトリルの未反応物および低
重合物を除去した。実施例1におけるフッ化ストロンチ
ウムの代わりに、上記で得たアクリロニトリル重合物を
担持した同重量の活性炭を充填したほかは、同様にして
三フッ化ホウ素の吸着を行った。三フッ化ホウ素の吸着
量を求めたところ2.6g/100g-活性炭であり、吸着効率
の低いことが確認された。
【0055】<比較例2> (三フッ化ホウ素の吸着除去)実施例1において、フッ
化ストロンチウムの代わりに、同モル量の粉末状フッ化
カリウム1.07g(投入した三フッ化ホウ素の5倍モ
ル相当量)を添加したほかは、同様にして三フッ化ホウ
素の吸着を行った。その結果、三フッ化ホウ素は3.8g
/100g-フッ化カリウムの割合で吸着されており、吸着効
率の低いことを確認した。 (加熱脱着)実施例1と同様にして、三フッ化ホウ素を
一部吸着保持したフッ化カリウム吸着剤について加熱脱
着を行った。加熱温度を当初300℃に維持したが、出
口から三フッ化ホウ素による白煙はほとんど認められな
かった。そこで、加熱温度を徐々に上昇させたところ、
約700℃付近の高温に達したときに出口から白煙が検
出された。
【0056】<比較例3> (三フッ化ホウ素の吸着除去)実施例1において、フッ
化ストロンチウムの代わりに、同重量のシリカゲル2.
32gを添加したほかは、実施例1と同様にして三フッ
化ホウ素の吸着を行った。その結果、三フッ化ホウ素を
4.2g/100g-シリカゲルの割合で吸着したが、有機相中
に遊離した三フッ化ホウ素錯体が検出され、吸着効率の
低いことが確認された。さらに、吸着時に、有機相の気
相部においてHFガスが遊離していることを確認した。
また、三フッ化ホウ素を吸着保持したと思われるシリカ
ゲル吸着剤について、光電子分光(ESCA)分析を行
ったところ、吸着剤中にはフッ素とホウ素が原子モル比
2:1で存在しており、三フッ化ホウ素の形態が保持さ
れていないことが確認された。これらは、吸着時にシリ
カゲル中のシラノール基(−SiOH)が三フッ化ホウ
素と反応して、−SiOBF2基と遊離のHFガスに分解
したためと考えられ、再利用可能な三フッ化ホウ素の回
収は困難であることを確認した。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、フッ化ストロンチウム
を吸着剤として使用することにより、流体中に含有され
る三フッ化ホウ素を、選択的に高い効率で吸着分離する
ことができると共に、高純度の三フッ化ホウ素を高効率
で脱着回収し、必要に応じて再使用することが可能であ
る。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素錯
    体を含有する流体を、温度250℃以下でフッ化ストロ
    ンチウム(SrF2)に接触させることを特徴とする三フ
    ッ化ホウ素の除去方法。
  2. 【請求項2】 前記接触の温度が100℃以下である請
    求項1に記載の三フッ化ホウ素の除去方法。
  3. 【請求項3】 前記三フッ化ホウ素錯体が、三フッ化ホ
    ウ素と有機または無機極性化合物とで形成された錯体で
    ある請求項1に記載の三フッ化ホウ素の除去方法。
  4. 【請求項4】 前記有機または無機極性化合物が、含酸
    素化合物、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物
    または無機酸から選ばれたものである請求項3に記載の
    三フッ化ホウ素の除去方法。
  5. 【請求項5】 前記含酸素化合物が、水、アルコール
    類、エーテル類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド
    類、エステル類、有機酸類および酸無水物から選ばれた
    ものである請求項4に記載の三フッ化ホウ素の除去方
    法。
  6. 【請求項6】 次の工程からなる三フッ化ホウ素の回収
    方法、 (工程1)三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素錯体を
    含有する流体を、温度250℃以下でフッ化ストロンチ
    ウム(SrF2)に接触させる工程、および (工程2)工程1で生成したテトラフルオロホウ酸スト
    ロンチウム塩(Sr(BF4)2)を100〜600℃の温
    度範囲で加熱することによって、三フッ化ホウ素とフッ
    化ストロンチウムとを得る工程。
  7. 【請求項7】 前記工程2におけるテトラフルオロホウ
    酸ストロンチウム塩の加熱温度が250〜500℃の範
    囲である請求項6に記載の三フッ化ホウ素の回収方法。
  8. 【請求項8】 前記工程1における接触温度が100℃
    以下である請求項6に記載の三フッ化ホウ素の回収方
    法。
  9. 【請求項9】 前記三フッ化ホウ素錯体が、三フッ化ホ
    ウ素と有機または無機極性化合物とで形成された錯体で
    ある請求項6に記載の三フッ化ホウ素の回収方法。
  10. 【請求項10】 前記有機または無機極性化合物が、含
    酸素化合物、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合
    物または無機酸から選ばれたものである請求項9に記載
    の三フッ化ホウ素の回収方法。
  11. 【請求項11】 前記含酸素化合物が、水、アルコール
    類、エーテル類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド
    類、エステル類、有機酸類および酸無水物から選ばれた
    ものである請求項10に記載の三フッ化ホウ素の回収方
    法。
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