JP2000108724A - エアバッグドア部を一体に有するインストルメントパネル及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 安価で、しかもエアバッグ膨張展開時の衝撃
によって樹脂が飛散しないエアバッグドア部を一体に有
するインストルメントパネル及びそのインストルメント
パネルを簡単かつ経済的に製造できる方法を提供する。 【解決手段】 インストルメントパネル本体３０の所定
部裏面にエアバッグドア補強部材４０が固着され、少な
くとも前記エアバッグドア補強部材に形成された開裂用
脆弱部によって区画されたエアバッグドア部を一体に有
するとともに、前記エアバッグドア補強部材に形成され
たスリットを通って前記インストルメントパネル本体か
らエアバッグドア補強部材の裏側へキャニスター取付け
用フランジが突設されたインストルメントパネルであっ
て、前記エアバッグドア補強部材がエアバッグドア部よ
り大なる合成樹脂シート材からなり、前記スリットの周
縁がエアバッグドア補強部材の裏側へ屈曲してフランジ
の基部外面に埋設されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、エアバッグドア
部を一体に有するインストルメントパネル及びその製造
方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車においては、フロントウィンドの
下部から前席乗員座席に向けて、計器類の保持や乗員の
保護等のためにインストルメントパネルが設けられる。

【０００３】近年、前記インストルメントパネルの助手
席側裏面には、自動車衝突時に助手席乗員を保護するた
めのエアバッグ装置が設けられるようになった。前記エ
アバッグ装置は、折り畳まれたエアバッグが、キャニス
ターと称されるエアバッグ収容ケース内に、インフレー
ターと称される作動装置とともに収容されている。この
キャニスターの上部は、エアバッグが車内に展開するた
めに開口しており、その開口部分がインストルメントパ
ネルのエアバッグドア部分で覆われている。そして、自
動車の衝突によってインフレーターが作動し、膨張した
エアバッグがエアバッグドア部を裏側から押し開いて車
室内に展開する。

【０００４】前記エアバッグ装置が取り付けられるイン
ストルメントパネルとしては、インストルメントパネル
の成形時にエアバッグドア部が一体成形される一体タイ
プと、インストルメントパネルの成形後にインストルメ
ントパネルの開口部にエアバッグドア部が取り付けられ
る後付けタイプとがある。特に一体タイプは、エアバッ
グドア部の組み付け作業が不要になるという利点のみな
らず、エアバッグドア部の外周に見苦しい隙間を生じず
エアバッグドア部とその周囲との一体感に優れ、インス
トルメントパネルの外観が良好となるという利点があ
る。

【０００５】従来における一体タイプのインストルメン
トパネルの例として次のものがある。まず、図９及びそ
のＢ−Ｂ断面を表す図１０に示すインストルメントパネ
ル７０は、ポリプロピレン（ＰＰ）や無機質添加ポリプ
ロピレン（ＰＰＦ）等の硬質合成樹脂からなるインスト
ルメントパネル本体９０の助手席側所定部が、前記一般
部を構成する硬質合成樹脂（ＰＰＦ等）よりも衝撃に対
する強度の高い合成樹脂、例えば熱可塑性ポリオレフィ
ンエラストマー（ＴＰＯ）等からなるエアバッグドア部
材８０で構成され、前記エアバッグドア部材８０の裏面
８０ａに形成された平面視略コの字形の開裂用脆弱部８
１によってエアバッグドア部７１が区画されている。前
記エアバッグドア部材８０をその周囲の材質と異ならせ
てＴＰＯ等とするのは、エアバッグＦ膨張時の衝撃によ
ってエアバッグドア部７１が破損して樹脂が飛散するの
を防ぐためである。また、前記エアバッグドア部材８０
の裏面８０ａの縁には、キャニスター取付用フランジ８
２が突設されて該フランジ８２に適宜形成される孔等を
介してキャニスターＤが取付けられるようになってい
る。なお、前記エアバッグドア開裂用脆弱部８１は、エ
アバッグＦの膨張によってエアバッグドア部７１裏側が
押された際に該エアバッグドア開裂用脆弱部８１で破断
してエアバッグドア部７１が車室内側へ開くことができ
るようにするもので、ノッチ等によって薄肉とされてい
る。なお、符号Ｃはエアバッグ装置、Ｅはインフレータ
ーを示す。

【０００６】図１１に示す他のインストルメントパネル
７０１はＰＰＦ等の硬質合成樹脂製インストルメントパ
ネル本体９０１の助手席側裏側に、前記硬質合成樹脂よ
りも衝撃に対する強度の高いＴＰＯ等の合成樹脂からな
るエアバッグドア裏側部材８０１が設けられ、該エアバ
ッグドア裏側部材８０１の縁にキャニスター取付け用フ
ランジ８２１が形成されている。符号８１１は開裂用脆
弱部、７１１は前記開裂用脆弱部で区画されたエアバッ
グドア部である。

【０００７】また、図１２に示す、さらに他のインスト
ルメントパネル７０２は、インストルメントパネル本体
９０２が、ＰＰＦ等の硬質合成樹脂製基材９３２に発泡
体９４２及び表皮９５２を積層したものからなり、前記
基材９３２の助手席側所定部が、前記硬質合成樹脂より
も衝撃に対する強度の高いＴＰＯ等の合成樹脂からなる
エアバッグドア基材８０２で構成されている。このエア
バッグドア基材８０２は、その裏面８０２ａの縁にキャ
ニスター取付用フランジ８２２が突設されており、前記
基材９３２の射出成形時に一体に成形される。なお、符
号８１２はエアバッグドア部７１２を区画する開裂用脆
弱部である。

【０００８】ところで、前記したように従来のインスト
ルメントパネル７０，７０１，７０２においては、エア
バッグＦの膨張展開時の衝撃によるエアバッグドア部７
１，７１１，７１２の破損および樹脂の飛散を防止する
ため、硬質合成樹脂からなるインストルメントパネル本
体９０，９０１や基材９３２のエアバッグドア部分を、
その周囲の硬質合成樹脂とは異なるＴＰＯ等からなるエ
アバッグドア部材８０やエアバッグドア裏側部材８０１
またはエアバッグドア基材８０２で構成している。その
ため、前記インストルメントパネル７０，７０１あるい
はインストルメントパネル基材９３２を射出成形によっ
て得るには、いわゆるインサート成形あるいは二色成形
を行わねばならず、成形作業や装置が複雑になる問題
や、良好な製品が得られない問題、または所望の製品が
得られない等の問題がある。

【０００９】例えば、インサート成形による場合には、
予め前記ＴＰＯ等からなるエアバッグドア部材８０や、
エアバッグドア裏側部材８０１等を射出成形しておかね
ばならないため、余分な成形型が必要となるのみなら
ず、予め成形したエアバッグドア部材８０等がその後の
収縮や保管状態等によって変形し、インストルメントパ
ネル用射出成形型あるいは基材用射出成形型への正しい
配置が困難になることがある。また二色成形の場合に
は、射出成形型の型構造によってインストルメントパネ
ル形状に制約を受けたり、成形装置が高価なため製品価
格が上昇する等の問題がある。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】この発明は、前記の点
に鑑みなされたもので、安価で、しかもエアバッグ膨張
展開時の衝撃によって樹脂が飛散しないエアバッグドア
部を一体に有するインストルメントパネル及びそのイン
ストルメントパネルを簡単かつ経済的に製造できる方法
を提供するものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】すなわち、請求項１の発
明は、インストルメントパネル本体の所定部裏面にエア
バッグドア補強部材が固着され、該エアバッグドア補強
部材に形成された開裂用脆弱部によって区画されたエア
バッグドア部を一体に有するとともに、前記エアバッグ
ドア補強部材に形成されたスリットを通って前記インス
トルメントパネル本体からエアバッグドア補強部材の裏
側へキャニスター取付け用フランジが突設されたインス
トルメントパネルであって、前記エアバッグドア補強部
材がエアバッグドア部より大なる合成樹脂シート材から
なり、前記スリットの周縁がエアバッグドア補強部材の
裏側へ屈曲してフランジの基部外面に埋設されているこ
とを特徴とするエアバッグドア部を一体に有するインス
トルメントパネルに係る。

【００１２】また、請求項２の発明は、前記インストル
メントパネル本体が硬質合成樹脂からなることを特徴と
し、請求項３の発明は、インストルメントパネル本体
が、基材に発泡体と表皮が積層されたものからなって、
前記基材の裏面にエアバッグドア補強部材が固着され、
該エアバッグドア補強部材のスリットを通って前記基材
からキャニスター取付け用フランジが突設されているこ
とを特徴とする。

【００１３】請求項４の発明は、請求項２に記載された
エアバッグドア部を有するインストルメントパネルの製
造方法に関するもので、インストルメントパネル用射出
成形型として、その型面の前記フランジと対応する位置
にフランジ形成溝が形成された射出成形型を用い、前記
エアバッグドア部より大なる合成樹脂シートに前記フラ
ンジ形成溝と対応するスリットが形成されたエアバッグ
ドア補強部材を、前記スリットとフランジ形成溝の位置
が一致するように型面に配置し、前記射出成形型内に合
成樹脂を射出することにより、前記エアバッグドア補強
部材が裏面に固着した硬質合成樹脂製インストルメント
パネル本体を形成し、その際、前記射出合成樹脂がエア
バッグドア補強部材のスリット周縁を型面の溝内へ押し
曲げながら当該溝内に進入することにより前記フランジ
を形成するとともに該フランジの基部外面に前記スリッ
ト周縁の曲げられた部分を埋設し、その後、前記エアバ
ッグドア補強部材に開裂用脆弱部を形成することを特徴
とする。

【００１４】請求項５の発明は、請求項３に記載された
エアバッグドア部を有するインストルメントパネルの製
造方法に関するもので、基材用射出成形型として、その
型面の前記フランジと対応する位置にフランジ形成溝が
形成された射出成形型を用い、前記エアバッグドア部よ
り大なる合成樹脂シートに前記フランジ形成溝と対応す
るスリットが形成されたエアバッグドア補強部材を、前
記スリットがフランジ形成溝と一致するように型面に配
置し、前記射出成形型内に合成樹脂を射出することによ
り、前記エアバッグドア補強部材が裏面に固着した硬質
合成樹脂製基材を形成し、その際、前記射出合成樹脂が
エアバッグドア補強部材のスリット周縁を型面の溝内へ
押し曲げながら当該溝内に進入することにより前記フラ
ンジを形成するとともに該フランジの基部外面に前記ス
リット周縁の曲げられた部分を埋設し、前記基材及び表
皮を基材表面と表皮裏面が対向するようにインストルメ
ントパネル用発泡成形型内に配置し、前記発泡成形型内
に発泡原料を注入して前記基材及び表皮間に発泡体を一
体に形成し、その後、前記エアバッグドア補強部材に開
裂用脆弱部を形成することを特徴とする。

【００１５】

【発明の実施の形態】以下添付の図面に従ってこの発明
を詳細に説明する。図１はこの発明の一実施例に係るエ
アバッグドア部を一体に有するインストルメントパネル
の一部を示す斜視図、図２はそのＡ−Ａ断面図、図３は
フランジ基部付近の拡大断面図、図４は他の実施例にお
ける要部断面図、図５はインストルメントパネル用射出
成形型の要部とエアバッグドア補強部材を示す斜視図、
図６は射出成形時の射出成形型の一部を示す部分断面
図、図７は他の実施例における基材の射出成形時を示す
射出成形型の部分断面図、図８は発泡成形時の発泡成形
型の一部を示す部分断面図である。

【００１６】まず、この発明の一実施例に係るエアバッ
グドア部を一体に有するインストルメントパネルについ
て説明する。図１及びそのＡ−Ａ断面を表す図２に示す
インストルメントパネル１０は、射出成形品からなるも
ので、インストルメントパネル本体３０とその所定部裏
面に一体に固着されたエアバッグドア補強部材４０とよ
りなり、開裂用脆弱部２１で区画された略長方形のエア
バッグドア部２０を有する。この実施例の開裂用脆弱部
２１は、エアバッグドア補強部材４０の裏側４０ａから
熱刃やレーザー等によって連続的又は断続的に形成され
たノッチで構成され、平面視略コの字形となっている。
そして、このインストルメントパネル１０は、車体への
取付け時にエアバッグドア部２０裏側にエアバッグ装置
Ｃが配置される。なお、符号Ｄはキャニスター、Ｅはイ
ンフレーター、Ｆはエアバッグを示す。

【００１７】インストルメントパネル本体３０は、イン
ストルメントパネル１０の外観を為し、所定のインスト
ルメントパネル形状に成形されている。該インストルメ
ントパネル本体３０の材質は特に限定はないが、形状保
持性及び強度等の点からＰＰあるいはＰＰＦ等の硬質樹
脂が好ましい。このインストルメントパネル本体３０は
前記開裂用脆弱部２１で区画された部分がエアバッグド
ア本体部３１とされ、前記エアバッグドア補強部材４０
とともにエアバッグドア部２０を形成している。また、
このインストルメントパネル本体３０におけるエアバッ
グドア本体部３１裏面３１ａの長手方向（車幅方向）両
外側には、キャニスター取付け用フランジ３２がエアバ
ッグドア補強部材４０の裏側４０ａに突設されている。
このキャニスター取付け用フランジ３２には、適宜取付
け孔等（図示せず）が形成されて、キャニスターＤが係
止あるいはボルト等で固定されるようになっている。

【００１８】エアバッグドア補強部材４０は、前記エア
バッグドア部２０より大なる合成樹脂シート材からなっ
ており、エアバッグドア本体部３１を裏面３１ａから覆
っている。形状は特に限定はないが、この実施例ではエ
アバッグドア部２０よりも縦寸法、横寸法が数ｃｍ大き
い長方形からなり、厚みが１．５ｍｍ程度である。材質
も特に限定はないが、エアバッグの膨張展開時の衝撃に
よって樹脂が破損、飛散しないように、前記インストル
メントパネル本体３０を構成する硬質合成樹脂よりも衝
撃に対する強度の高い合成樹脂が好ましく、この例では
ＴＰＯで構成されている。

【００１９】また、前記エアバッグドア補強部材４０に
は、前記キャニスター取付け用フランジ３２に対応した
位置にスリット４１が設けられ、該スリット４１を通っ
て前記フランジ３２が垂下している。前記スリット４１
の周縁は、インストルメントパネル１０成形時の射出合
成樹脂の圧力によって、図３に拡大図示する様にエアバ
ッグドア補強部材４０の裏側４０ａへ屈曲し、その屈曲
部分４２が前記フランジ３２の基部３２ａ外面に埋設さ
れている。これにより、前記硬質合成樹脂からなるフラ
ンジ基部３２ａを、エアバッグドア補強部材４０を構成
する衝撃に対する強度の高い合成樹脂で補強し、強度を
高めている。

【００２０】図４に示す他の実施例のインストルメント
パネル１０１は、インストルメントパネル本体３０１
が、基材３３１に発泡体３４１と表皮３５１が積層され
たものからなり、助手席側所定位置には平面視略コの字
形をした開裂用脆弱部２１１で区画されたエアバッグド
ア部２０１を一体に有し、外形状については図１に示し
たインストルメントパネル１０と同じ形状からなる。前
記エアバッグドア部２０１は、開裂用脆弱部２１１で区
画されたインストルメントパネル本体３０１のエアバッ
グドア本体部３１１と、そのエアバッグドア本体部裏面
３１１ａに固着されたエアバッグドア補強部材４０１と
で構成される。

【００２１】前記基材３３１は、強度及び剛性の点から
ＰＰやＰＰＦ等の硬質合成樹脂で構成され、また、前記
開裂用脆弱部２１１で区画された部分がエアバッグドア
本体部３１１の基材部分３６１とされる。このエアバッ
グドア本体部３１１の基材部分３６１裏面３６１ａの長
手方向両側にキャニスター取付用フランジ３２１が突設
されている。前記キャニスター取付け用フランジ３２１
には適宜取付け孔等（図示せず）が形成され、キャニス
ター（図示せず）が係止あるいはボルト等で固定され
る。

【００２２】前記発泡体３４１は、ポリウレタン発泡体
等の合成樹脂発泡体からなり、主としてインストルメン
トパネル１０１表面の感触あるいは緩衝性を高めるため
に設けられる。この実施例では、この発泡体３４１内ま
で前記開裂用脆弱部２１１が到達し、その開裂用脆弱部
２１１で区画された部分がエアバッグドア本体部３１１
における発泡体部分３７１とされる。

【００２３】前記表皮３５１は、インストルメントパネ
ル１０１の外面を構成するもので、軟質塩化ビニル樹脂
等の軟質合成樹脂、あるいは裏面にフィルムの貼着され
たファブリック等で形成されている。この表皮１０１
も、前記開裂用脆弱部２１１で区画される部分がエアバ
ッグドア本体部３１１における表皮部分３８１とされ
る。

【００２４】また、前記エアバッグドア補強部材４０１
は、前記エアバッグドア本体部よりも大なる合成樹脂シ
ートからなり、前記フランジ３２１と対応する位置にス
リット４１１が形成され、そのスリット４１１を通って
前記キャニスター取付用フランジ３２１がエアバッグド
ア補強部材４０１裏側４０１ａへ突出している。前記ス
リット４１１の周縁は、エアバッグドア補強部材４０１
の裏側４０１ａへ曲げられ、その屈曲部分４２１が前記
フランジの基部３２１ａ外面に埋設されている。なお、
エアバッグドア補強部材４０１を構成する合成樹脂シー
ト材は、図１ないし図３に示したインストルメントパネ
ル１０のエアバッグドア補強部材４０と同様に、衝撃に
対する強度が基材３３１の硬質合成樹脂よりも高いＴＰ
Ｏ等の合成樹脂からなる。

【００２５】このようにしてなる前記インストルメント
パネル１０，１０１は、自動車の衝突によってエアバッ
グＦが膨張し、エアバッグドア部２０，２０１が裏側か
ら押されると、前記開裂用脆弱部２１，２１１で破断
し、前記開裂用脆弱部２１，２１１の形成されていない
ヒンジ部（図１の符号２２で示す部分）を支点としてエ
アバッグドア部２０，２０１が車室内に開き、その開い
た部分を通ってエアバッグＦが車室内に展開する。その
際、応力が集中するキャニスター取付け用フランジ３
２，３２１の基部３２ａ，３２１ａ及びエアバッグドア
部２０，２０１は、一般部よりも衝撃に対する強度の高
いエアバッグドア補強部材４０，４０１で補強されてい
るため、破損を生じ難く、樹脂の飛散を生じるおそれが
ない。

【００２６】次に、前記エアバッグドア部を一体に有す
るインストルメントパネル１０，１０１の製造実施例に
ついて示す。まず、図１ないし図３に示したインストル
メントパネル１０の製造方法について示す。前記インス
トルメントパネル１０は、図５及び図６に示すインスト
ルメントパネル用射出成形型５０を用いて射出成形され
る。

【００２７】インストルメントパネル用射出成形型５０
は、インストルメントパネル形状の型面５１，５２を有
する。一方の型面５１がインストルメントパネル１０の
表面を形成し、他方の型面５２がインストルメントパネ
ル１０の裏面を形成する。前記裏面を形成する型面５２
の所定部、すなわち、インストルメントパネル１０の助
手席側のエアバッグドア部２０を形成する部分に、エア
バッグドア部２０より大形の凹部５３が形成されてい
る。この型面の凹部５３はエアバッグドア補強部材４０
が配置される部分で、エアバッグドア補強部材４０に合
わせた略長方形からなる。この凹部５３の底面には、前
記フランジ３２と対応する位置にフランジ形成溝５４が
形成され、また対角線の位置に位置決め用突部５５が形
成されている。なお、前記フランジ形成溝５４の寸法は
形成するフランジ３２に応じたものとされる。

【００２８】前記型面の凹部５３にエアバッグドア補強
部材４０を配置する。エアバッグドア補強部材４０は、
ＴＰＯ等からなる合成樹脂のシートを打ち抜く等して所
定形状に成形されたもので、前記エアバッグドア部形成
部位の型面凹部５３におけるフランジ形成溝５４に対応
する位置にスリット４１が設けられている。また、エア
バッグドア部形成部位の型面凹部５３に配置しやすいよ
うに、前記凹部５３の位置決め用突部５５に対応する位
置決め用孔部４３を有しており、これを前記型面凹部５
３の位置決め用突部５５に嵌合させることにより、エア
バッグドア補強部材４０が前記型面凹部５３に確実に配
置される。

【００２９】次いで、前記射出成形型５０を型締めし、
図示しない射出装置を用いてＰＰＦ等の硬質合成樹脂を
射出することによって、前記エアバッグドア補強部材４
０が所定部裏面に固着された前記インストルメントパネ
ル本体３０を成形する。このとき、前記射出合成樹脂の
一部がエアバッグドア補強部材４０のスリット４１の周
縁をフランジ形成溝５４内に押し曲げながらフランジ形
成溝５４内に進入して該溝５４内に充満し、キャニスタ
ー取付用フランジ３２を形成するとともに、そのフラン
ジ３２の基部３２ａ外面に前記スリット４１周縁の屈曲
部分４２が埋設される。

【００３０】その後、前記射出成形型５０から成形品を
脱型し、エアバッグドア補強部材４０の裏側４０ａから
熱刃やレーザー等によって前記開裂用脆弱部２１を形成
して該開裂用脆弱部２１で区画されたエアバッグドア部
２０を形成し、前記インストルメントパネル１０を得
る。

【００３１】次に図４に示したインストルメントパネ
ル、すなわち、インストルメントパネル本体３０１が基
材３３１に発泡体３４１と表皮３５１が積層されたもの
からなるインストルメントパネル１０１の製造例につい
て説明する。

【００３２】この場合、まず、前記インストルメントパ
ネル本体３０１の基材３３１を射出成形する。図７は、
前記基材３３１の成形時を示すもので、基材用射出成形
型５０Ａの型面５２Ａに形成された凹部５３Ａに、エア
バッグドア補強部材４０１を配置し、ＰＰＦ等の硬質樹
脂を射出して、前記エアバッグドア補強部材４０１が裏
面に固着された基材３３１を成形する。前記基材用射出
成形型５０Ａは、図６で説明したインストルメントパネ
ル用射出成形型５０を基材用射出成形型５０Ａに転用し
たもので、前記インストルメントパネル用射出成形型５
０と同じ構造からなる。なお、以下の説明において前記
インストルメントパネル用射出成形型５０と基材用射出
成形型５０Ａとの混同を防止するため、両型における同
一名称部分について、基材用射出成形型では符号の最後
にＡを添えて区別する。従って、５４Ａは凹部５３Ａ底
面に形成されたフランジ形成溝、５１Ａは基材表面を形
する型面、５２Ａは基材裏面を形成する型面を示す。

【００３３】前記エアバッグドア補強部材４０１は、前
記実施例のインストルメントパネル１０の製造に用いた
ものと同様のもので、ＴＰＯ等の合成樹脂シート材にス
リット４１１が形成され、そのスリット４１１が型面５
２Ａのフランジ形成溝５４Ａと位置が一致するように型
面の凹部５３Ａに配置される。そして、前記基材３３１
の射出成形時に、射出合成樹脂がスリット４１１の周縁
をフランジ形成溝５４Ａ内に押し曲げて当該フランジ形
成溝５４Ａに進入することによって、前記フランジ３２
１が形成され、該フランジの基部３２１ａ外面にスリッ
ト４１１周縁の屈曲部４２１が埋設される。

【００３４】前記基材用射出成形型５０Ａから脱型した
基材３３１と、パウダースラッシュ成形や真空成形等で
形成した表皮３５１とを、図８に示すように、インスト
ルメントパネル用発泡成形型６０内に、基材の表面３３
１ａと表皮の裏面３５１ａが対向するように配置し、前
記基材３３１と表皮３５１間にポリウレタン原料等の発
泡原料を注入して公知の一体発泡成形を行い、基材３３
１と表皮３５１間に前記発泡体３４１を形成し、インス
トルメントパネル本体１０１をエアバッグドア補強部材
４０１と一体に形成する。

【００３５】その後、前記発泡成形型６０から発泡成形
品を脱型し、前記エアバッグドア補強部材４０１の裏側
４０１ａから熱刃やレーザー等で開裂用脆弱部２１１を
形成して該開裂用脆弱部２１１で区画されるエアバッグ
ドア部２０１を形成することによって、図４に示した前
記エアバッグドア部２０１を一体に有するインストルメ
ントパネル１０１を得る。

【００３６】

【発明の効果】以上図示し説明したように、この発明に
おけるエアバッグドア部を一体に有するインストルメン
トパネル及びその製造方法によれば、エアバッグドア部
の裏側がエアバッグドア補強部材によって補強され、し
かもエアバッグドア補強部材に形成されたスリットの周
縁がエアバッグドア補強部材の裏側へ屈曲してフランジ
の基部外面に埋設されることにより、フランジ基部が補
強されているため、エアバッグ膨張展開時の衝撃によっ
て樹脂が飛散するのを防止することができる。また、エ
アバッグドア補強部材がエアバッグドア部より大なる合
成樹脂シート材からなるため、エアバッグの膨張展開時
の衝撃に対してエアバッグドア部の周囲も充分な強度を
有し、効率良く樹脂の飛散を防止できる。

【００３７】さらに、この発明においては、インストル
メントパネルの製造時、合成樹脂シート材にスリットの
形成されたエアバッグドア補強部材を、インストルメン
トパネル用射出成形型または基材成形用射出成形型に配
置して射出成形するだけで、キャニスター取付け用フラ
ンジを形成することができ、フランジ基部も補強するこ
とができる。加えて、エアバッグドア補強部材は、熱可
塑性ポリオレフィンエラストマー（ＴＰＯ）等の合成樹
脂シートを打ち抜く等によって簡単に成形でき、従来の
ような別型が必要ないので、インストルメントパネルの
コストアップを防ぐことができる。そのため、従来のよ
うに、インサート射出成形あるいは二色射出成形によっ
てインストルメントパネルあるいはその基材を成形する
のと比べ、装置も作業も簡単となり、さらに予め射出成
形したインサート（エアバッグドア補強部材）がその後
の変形によって型面に正しく配置できなくなる不具合を
生じることもなく、良好なインストルメントパネルを経
済的に、かつ品質良く得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例に係るエアバッグドア部を
一体に有するインストルメントパネルの一部を示す斜視
図である。

【図２】そのＡ−Ａ断面図である。

【図３】フランジ基部付近の拡大断面図である。

【図４】他の実施例における要部断面図である。

【図５】インストルメントパネル用射出成形型の要部と
エアバッグドア補強部材を示す斜視図である。

【図６】射出成形時の射出成形型の一部を示す部分断面
図である。

【図７】他の実施例における基材の射出成形時を示す射
出成形型の部分断面図である。

【図８】発泡成形時の発泡成形型の一部を示す部分断面
図である。

【図９】従来におけるエアバッグドア部を一体に有する
インストルメントパネルの一例を示す斜視図である。

【図１０】そのＢ−Ｂ断面図である。

【図１１】インストルメントパネルの他の従来例を示す
要部断面図である。

【図１２】インストルメントパネルのさらに他の従来例
を示す要部断面図である。

【符号の説明】

１０，１０１ インストルメントパネル ２０，２０１ エアバッグドア部 ３０，３０１ インストルメントパネル本体 ３１，３１１ エアバッグドア本体部 ３２，３２１ キャニスター取付用フランジ ４０，４０１ エアバッグドア補強部材 ４１，４１１ スリット ５０，５０Ａ インストルメントパネル用射出成形型 ５３，５３Ａ フランジ形成溝

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｂ６０Ｒ 21/20 Ｂ６０Ｒ 21/20 // Ｂ２９Ｌ 31:30 (72)発明者 熊▼ざき▲ 広行 愛知県安城市今池町３−１−36 株式会社 イノアックコーポレーション安城事業所内 Ｆターム(参考） 3D044 BA01 BA11 BB01 BC02 BC04 BC07 BD04 3D054 AA03 AA14 BB09 BB10 BB16 BB23 BB30 FF04 FF17 4F202 AA11 AG03 AH25 CA11 CB01 CB11 CB22 CK35 CK43 CK84 4F206 AA11 AG03 AH25 JA07 JB11 JB22 JM16 JQ81

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 インストルメントパネル本体の所定部裏
   面にエアバッグドア補強部材が固着され、少なくとも前
   記エアバッグドア補強部材に形成された開裂用脆弱部に
   よって区画されたエアバッグドア部を一体に有するとと
   もに、前記エアバッグドア補強部材に形成されたスリッ
   トを通って前記インストルメントパネル本体からエアバ
   ッグドア補強部材の裏側へキャニスター取付け用フラン
   ジが突設されたインストルメントパネルであって、 前記エアバッグドア補強部材がエアバッグドア部より大
   なる合成樹脂シート材からなり、前記スリットの周縁が
   エアバッグドア補強部材の裏側へ屈曲してフランジの基
   部外面に埋設されていることを特徴とするエアバッグド
   ア部を一体に有するインストルメントパネル。
2. 【請求項２】 インストルメントパネル本体が硬質合成
   樹脂からなる請求項１に記載のエアバッグドア部を一体
   に有するインストルメントパネル。
3. 【請求項３】 インストルメントパネル本体が、基材に
   発泡体と表皮が積層されたものからなって、前記基材の
   裏面にエアバッグドア補強部材が固着され、該エアバッ
   グドア補強部材のスリットを通って前記基材からキャニ
   スター取付け用フランジが突設されていることを特徴と
   する請求項１に記載のエアバッグドア部を一体に有する
   インストルメントパネル。
4. 【請求項４】 インストルメントパネル本体の所定部裏
   面にエアバッグドア補強部材が固着され、該エアバッグ
   ドア補強部材に形成された開裂用脆弱部によって区画さ
   れたエアバッグドア部を一体に有するとともに、前記エ
   アバッグドア補強部材に形成されたスリットを通って前
   記インストルメントパネル本体からエアバッグドア補強
   部材の裏側へキャニスター取付け用フランジが突設され
   たインストルメントパネルの製造に際し、 インストルメントパネル用射出成形型として、その型面
   の前記フランジと対応する位置にフランジ形成溝が形成
   された射出成形型を用い、 前記エアバッグドア部より大なる合成樹脂シートに前記
   フランジ形成溝と対応するスリットが形成されたエアバ
   ッグドア補強部材を、前記スリットとフランジ形成溝の
   位置が一致するように型面に配置し、 前記射出成形型内に合成樹脂を射出することにより、前
   記エアバッグドア補強部材が裏面に固着した硬質合成樹
   脂製インストルメントパネル本体を形成し、その際、前
   記射出合成樹脂がエアバッグドア補強部材のスリット周
   縁を型面の溝内へ押し曲げながら当該溝内に進入するこ
   とにより前記フランジを形成するとともに該フランジの
   基部外面に前記スリット周縁の曲げられた部分を埋設
   し、 その後、前記エアバッグドア補強部材の裏側から開裂用
   脆弱部を形成することを特徴とするエアバッグドア部を
   一体に有するインストルメントパネルの製造方法。
5. 【請求項５】 硬質合成樹脂製基材に発泡体と表皮が積
   層されたインストルメントパネル本体の所定部の基材裏
   面にエアバッグドア補強部材が固着され、該エアバッグ
   ドア補強部材に形成された開裂用脆弱部によって区画さ
   れたエアバッグドア部を一体に有するとともに、前記エ
   アバッグドア補強部材に形成されたスリットを通って前
   記基材からエアバッグドア補強部材の裏側へキャニスタ
   ー取付け用フランジが突設されたインストルメントパネ
   ルの製造に際し、 基材用射出成形型として、その型面の前記フランジと対
   応する位置にフランジ形成溝が形成された射出成形型を
   用い、 前記エアバッグドア部より大なる合成樹脂シートに前記
   フランジ形成溝と対応するスリットが形成されたエアバ
   ッグドア補強部材を、前記スリットがフランジ形成溝と
   一致するように型面に配置し、 前記射出成形型内に合成樹脂を射出することにより、前
   記エアバッグドア補強部材が裏面に固着した硬質合成樹
   脂製基材を形成し、その際、前記射出合成樹脂がエアバ
   ッグドア補強部材のスリット周縁を型面の溝内へ押し曲
   げながら当該溝内に進入することにより前記フランジを
   形成するとともに該フランジの基部外面に前記スリット
   周縁の曲げられた部分を埋設し、 前記基材及び表皮を基材表面と表皮裏面が対向するよう
   にインストルメントパネル用発泡成形型内に配置し、前
   記発泡成形型内に発泡原料を注入して前記基材及び表皮
   間に発泡体を一体に形成し、 その後、前記エアバッグドア補強部材の裏側から開裂用
   脆弱部を形成することを特徴とするエアバッグドア部を
   一体に有するインストルメントパネルの製造方法。