JP2000104223A - モルタル施工方法及びモルタル層構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、強化シートが貼着された構造物に
モルタル層を施工する際、強化シートの効果を低下させ
ることなく、モルタル層を簡単に且つ厚く施工すること
ができるモルタルの施工方法を提供することを課題とす
る。 【解決手段】 構造物11に接着材12にて貼着された強化
シート14に差し入れ可能な挿入係合部３が一面側に突設
され、且つラス等のモルタル補強材18を係止可能な係止
部５が他面側に突設されたモルタル補強材支持具１の該
挿入係合部３を、接着材12の硬化前に、強化シート14と
構造物11の間に差し入れることによりモルタル補強材支
持具１を構造物11に取付け、次に、該モルタル補強材支
持具1の係止部5にモルタル補強材18を係止した後、該モ
ルタル補強材18の上からモルタルを布設することにあ
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、表面に強
化シートが貼着されたトンネル、橋脚、橋桁、法面等の
土木・海洋コンクリート構造物、ビル、マンション等の
建築コンクリート構造物及び一般木造住宅外壁等のよう
な強化シートが貼着された構造物にモルタルを施工する
際、該強化シート上にラス等のモルタル補強材を取付け
るために用いられるモルタル施工方法及びモルタル層構
造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の構造物として土木コンク
リート構造物を例示すると、既存又は新設の橋脚を補強
する手段として、構造物表面（橋脚のコンクリート表
面）にカーボン繊維シートやアラミド繊維シート等の強
化シートを貼着することが一般的に行われている。さら
に、該強化シートは、火災によって延焼する虞があるた
め、消防法上、該強化シートの上からモルタル層を施工
することが決められている。

【０００３】かかるモルタルを施工する方法としては、
図１３に示すように、エポキシ樹脂等の接着剤32を含浸
させて貼着された強化シート34上から、該強化シート34
を貫通して構造物31にアンカー35を打ち込み、該アンカ
ー35にラス等のモルタル補強材36を係止させて支持し、
その上からモルタルを湿式若しくは乾式吹付け又は左官
コテ塗り等の手段で布設し、モルタル層38を施工すると
いう方法も考えられるが、かかる施工方法によれば、ア
ンカーを嵌入する嵌入孔が強化シートに穿設されるの
で、強化シートを構成する繊維が分断され、強度が低下
するという問題点を生じるので好ましくない。

【０００４】そこで、エポキシ樹脂等にて貼着された強
化シート上に、モルタルとの接着性に優れる接着用プラ
イマーを塗布し、金こて等で面一に仕上げ、該プライマ
ーの上からビニロン繊維等の繊維強化プラスチック成型
品であるメッシュ状シートからなるモルタル補強材を貼
付け、その上からモルタルを吹付け等の手段で布設し、
モルタル層を施工するという方法もある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記モ
ルタルの施工方法（強化シート上にプライマーを塗布し
モルタル補強材を貼付ける方法）にあっては、モルタル
との接着性に優れる接着用プライマーを塗布しても、強
化シートを貼着するエポキシ樹脂等の接着剤が硬化して
完全にプラスチック層が形成されると、該接着剤とプラ
イマーとの化学的接着力は著しく低下する。従って、モ
ルタルが強化シート面に強固に接着し難く、モルタル層
の剥離や浮き等が生じる虞が考えられる。

【０００６】さらに、このように接着性が悪いので、モ
ルタル層を厚く施工することが困難となる。前述した消
防法の基準をクリアするには、通常モルタル層を３０ｍ
ｍ以上施工するのであるが、かかる厚塗りは、前記方法
では困難である。

【０００７】さらに、前記施工方法では、強化シートの
上に接着用プライマーを塗布・仕上げしなければなら
ず、その作業が煩雑であるだけでなく、強化シートに含
浸された常温硬化性樹脂が硬化するまでは前記接着用プ
ライマーを塗布することができず、施工時間が長いとい
う欠点を有する。

【０００８】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたも
ので、強化シートが貼着された構造物にモルタル層を施
工する際、強化シートの効果を低下させることなく、モ
ルタル層を簡単に且つ厚く施工することができるモルタ
ルの施工方法を提供することを課題とする。さらに、強
化シート上に施工するモルタルが剥離しにくいモルタル
層構造を提供することを課題とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するためになされたもので、その課題を解決するため
の手段としては、モルタルの施工方法に関し、ラス等の
モルタル補強材18を係止可能な係止部５が突設されたモ
ルタル補強材支持具１を、構造物11に接着剤12にて貼着
された強化シート14上に、該接着剤12の硬化前に取付
け、次に、該モルタル補強材支持具１の係止部５にモル
タル補強材18を係止した後、該モルタル補強材18の上か
らモルタルを布設することにある。

【００１０】上記施工方法によれば、強化シート14を定
着させる接着剤12の硬化前に、モルタル補強材支持具１
を強化シート14上に取付けるので、該接着材12が硬化し
た後にはモルタル補強材支持具１が強化シート12と共に
定着し、従って、容易にモルタル補強材支持具１を強化
シート14と同じ様に構造物11に強固に取り付けることが
できる。

【００１１】次に、該モルタル補強材支持具１の係止部
５にモルタル補強材18を係止させて支持し、モルタルを
布設することにより強化シート14が貼着された構造物11
にモルタル補強材18を具備したモルタル層を施工するこ
とができる。

【００１２】本発明に係るモルタルの施工方法は、構造
物11にアンカーの嵌入孔を穿設する必要がないので作業
が簡単である。さらに、アンカーの嵌入孔が穿設されな
いので、強化シートや構造物を損傷することがなく、従
って、強化シート14の効果を低下させることがない。

【００１３】また、モルタル補強材支持具１は、強化シ
ート14を貼着する接着剤12によって構造物11表面に強固
に取付られ、且つモルタル補強材18はモルタル補強材支
持具１の係止部５に係止されるので、モルタル補強材18
は、モルタル補強材支持具１を介して構造物11の表面に
強固に取付けられることとなり、該モルタル補強材18上
に布設されたモルタルは、モルタル補強材18を介して構
造物11に強固に固着することとなる。尚、接着剤12の硬
化前にモルタル補強材支持具１を取付けるので、接着剤
12の硬化を待つ必要がなく、作業時間の短縮化を図るこ
ともできる。

【００１４】さらに、前記モルタル補強材支持具１の一
面側には、強化シート14に差し入れ可能な挿入係合部３
が突設されており、該挿入係合部３を強化シート14と構
造物11の間に差し入れながらモルタル補強材支持具１を
取付ければ、接着剤12の硬化前にモルタル補強材支持具
１の取付け位置が不用意に変わることなく、更に、接着
剤12が硬化した後には、挿入係合部３が強化シート14と
構造物11の間に挟持されるので、モルタル補強材支持具
１の取付強度がより強くなる。

【００１５】尚、前記モルタル補強材支持具１の挿入係
合部３を差し入れる際には、例えば、強化シート14を構
成する繊維間に挿入係合部３を差し入れる等のように、
前記強化シート14の繊維を切断しないようにモルタル補
強材支持具１の挿入係合部３を差し入れることが好まし
い。強化シート14の効果を少しでも低下させないように
するためである。

【００１６】また、前記方法に用いられるモルタル補強
材支持具１としては、例えば、支持具本体２の一面側
に、構造物11に貼着された強化シート14に差し入れ可能
な挿入係合部３が突設され、一方、支持具本体２の他面
側に、ラス等のモルタル補強材18を係止可能な係止部５
が突設された構成のものを用いることができる。このよ
うなモルタル補強材支持具１によれば、強化シートに簡
単に取り付けることができる。

【００１７】さらに、前記モルタル補強材支持具１の挿
入係合部３が、細長状に形成され、前記支持具本体２の
一面とほぼ平行で、且つ該一面から僅かに離れて突設さ
れた構成であれば、該補強材支持具１の該挿入係合部３
を、その先端側から強化シート14と構造物11の間に差し
入れた際に、支持具本体２の一面が強化シート14の表面
に当接し易くなり、従って、接着剤12が支持具本体２の
一面側に付着して、モルタル補強材支持具１は強固に取
付られることとなる。

【００１８】加えて、挿入係合部３が、薄い板状に形成
されていれば、強化シート14の繊維間に挿入係合部３を
差し入れ易く、従って、強化シート14の繊維を切断する
虞もなく、又、強化シート14と構造物11の間にも差し入
れ易いという利点がある。

【００１９】また、モルタル補強材支持具１が、支持具
本体２の一部分を曲げることにより、構造物11に貼着さ
れた強化シート14に差し入れ可能な挿入係合部３と、ラ
ス等のモルタル補強材18を係止可能な係止部５とを突出
させることができるように形成されていれば、必要に応
じて挿入係合部３及び係止部５を突出させることができ
る。従って、保管・運搬等の際に嵩張らないという利点
がある。

【００２０】即ち、支持具本体２から挿入係合部３及び
係止部５が突設されていると嵩張るため、保管・搬送等
が不便な場合があるが、支持具本体２から挿入係合部３
及び係止部５が突設されていないモルタル補強材支持具
１によれば、嵩張らない。勿論、モルタル補強材支持具
１を強化シート14に取付ける際に挿入係合部３及び係止
部５を突出すれば、モルタル補強材支持具１を取付ける
ことができるので作業に支障を来さない。

【００２１】また、挿入係合部３及び係止部５を突出さ
せた後の支持具本体２には、その挿入係合部３及び係止
部５が占めていた部分（打抜部分）に貫通部が生じるこ
ととなるので、その貫通部に接着剤12が入り込み、モル
タル補強材支持具１を強化シート14に強固に取り付ける
ことができることとなる。

【００２２】さらに、構造物11と該構造物11に貼着され
た強化シート14との間に挿入係合部３を差し入れること
により取付られたモルタル補強材支持具１と、該モルタ
ル補強材支持具１から突設された係止部５に係止された
モルタル補強材18と、該モルタル補強材18を覆うモルタ
ルとを具備するモルタル層構造によれば、モルタル補強
材支持具１を介して構造物に強固に支持されたモルタル
補強材18にモルタルが固着するため、モルタルが剥離し
難い。従って、モルタル層を厚く形成することができる
だけでなく、例えば、トンネル等の構造物の内上面にモ
ルタル層を施工しても、モルタルが落下する虞もない。

【００２３】特に、前記モルタルとして、例えば、樹脂
モルタル又は繊維混合モルタルを用いた場合には、モル
タル自体の強度が上がりより好ましい。

【００２４】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る一実施形態に
ついて適宜図面を参照しつつ説明する。

【００２５】図１及び図２に於いて、１は、板状の支持
具本体２の一面2a側に挿入係合部３が設けられ、且つ支
持具本体２の他面2b側に係止部５が設けられたステンレ
ス製のモルタル補強材支持具を示す。前記支持具本体２
の周縁近傍位置には、孔６（接着剤が入り込む貫通部に
相当する）が４ヶ所等間隔に穿設されている。

【００２６】尚、モルタル補強材支持具１は、ステンレ
スに限定されず、鉄等の他の材質でもよいが、ステンレ
ス等の絶縁性に優れる材質からなるモルタル補強材支持
具１によれば、電蝕防止効果を有するので好ましい。

【００２７】支持具本体２について、より詳しくは、そ
の外形が円状に形成され、手で湾曲させることができる
程度の薄い板状体から形成されている。

【００２８】該支持具本体２の中央部には、図２に示す
ように、細長い略Ｕ字線状の切込部７が３ヶ所刻設され
ており、該切込部７によって囲われた一部分（切込部７
によって区画される一方の部分８）を、支持具本体２の
一面2a側に僅かに曲げることにより一面2a側から突出さ
せることができ、該突出させた部分８が、強化シートに
差し入れ可能な細長状の挿入係合部３となる。尚、挿入
係合部３の先端3aは、強化シートに差し込み易くするた
めに尖状に形成されている。

【００２９】該挿入係合部３は、図１（イ）に示すよう
に、その基端部3bを段状にして支持具本体２の一面2aよ
り僅かに突出させ、且つ支持具本体２の一面2aに対して
僅かな角度α（例えば、約５度）を有して曲げられてお
り、従って、挿入係合部３は、支持具本体２の一面2aと
ほぼ平行で、且つ該一面2aから僅かに離れて突設されて
いる。

【００３０】さらに、図２に示すように、前記切込部７
によって囲われた一部分（切込部７によって区画される
残る他方の部分10）を、支持具本体２の他面2b側に略９
０度曲げることにより他面2b側から突出させることがで
き、該突出させた部分10が、ラス等のモルタル補強材を
係止可能な細長状の係止部５となる。尚、係止部５は、
支持具本体２の他面2bに２個突設されている。

【００３１】このように支持具本体２を手で湾曲可能な
板状体で構成し、且つ切込部７を設けることにより、挿
入係合部３及び係止部５を簡単に突出させてモルタル補
強材支持具１を構成することができる。

【００３２】従って、製造時はモルタル補強材支持具１
を板状にしておいたまま、使用時（施工時）に、施工者
等が前記挿入係合部３及び係止部５を突出させることが
でき、保管・運搬等に嵩張らない。

【００３３】次に、上記構成からなるモルタル補強材支
持具１を用いてモルタルを施工する方法及びモルタル層
構造について以下説明する。

【００３４】図３〜図５に示すように、構造物11の表面
に貼着強度を確保するためにプライマーを塗布し、乾燥
後、プライマーの上から接着剤12として例えば常温で硬
化する常温硬化性樹脂を塗布する。

【００３５】その上から炭素繊維シート等の強化シート
14を貼着する。尚、必要に応じて、該強化シート14の上
から接着剤12としての仕上用樹脂15を塗布してもよく、
又、かかる仕上用樹脂15は、モルタルとの接着性の高い
ものが好ましい。

【００３６】次に、前記接着剤12が硬化する前に、強化
シート14の繊維間にモルタル補強材支持具１（モルタル
補強材支持具１が板状のままで供給されている場合に
は、取付前に挿入係合部３及び係止部５を突出させてお
く）の挿入係合部３の先端3aを刺し、図４及び図５に示
すように、該モルタル補強材支持具１を強化シート14面
に沿ってスライドさせて挿入係合部３を強化シートと構
造物11の間に差し入れる。

【００３７】前記挿入係合部３は、支持具本体２の一面
2aとほぼ平行で、且つ該一面2aから僅かに離れて突設さ
れているので、強化シート14と構造物11の間に差し入れ
た際に支持具本体２の一面2aが強化シート14の表面に当
接する。

【００３８】かかる挿入係合部３は、薄い板状なので、
強化シート14の繊維を切断することなく容易に差し入れ
可能で、又、強化シート14と構造物11の間に差し入れた
後は、強化シート14が殆ど膨出することもなく、強化シ
ート14と構造物11の間に面で挟持されるので、モルタル
補強材支持具１のぐらつきが防止されるという利点があ
る。

【００３９】また、かかる挿入係合部３によって接着剤
12の硬化前にモルタル補強材支持具１の取付け位置が不
用意に変わることなく、更に、接着剤12が硬化した後に
は、挿入係合部３が強化シート14と構造物11の間に挟持
されるので、モルタル補強材支持具１の取付強度がより
強くなる。

【００４０】そして、基端部3bまで挿入係合部３を差し
入れた後、支持具本体２を押圧してその一面2a側を強化
シート14の表面に圧着させる。かかる押圧により硬化前
の接着剤12が、支持具本体２の孔６や切込部７の打抜部
分17（挿入係合部３及び係止部５が曲げられた後に支持
具本体２に生ずる抜け孔17）、即ち、貫通部（孔６や打
抜部分17）に入り込み（図４の二点鎖線、及び図５参
照）、余った接着剤12が支持具本体２の他面2bにまで接
着する。

【００４１】従って、貫通部に入り込んだ接着剤12が硬
化した後には、該接着剤12が恰も釘のような作用を奏
し、支持具本体２を強化シート14の表面に強固に定着さ
せることができる。

【００４２】同様にして複数のモルタル補強材支持具１
を所定間隔（後述するラス等のモルタル補強材を支持で
きる程度の間隔）を置いて取付けていく。尚、必要に応
じて、モルタル補強材支持具１を取付けた後、強化シー
ト14の表面及び支持具本体２の他面2bに常温硬化性樹脂
等の接着剤12を塗布してもよい。

【００４３】接着剤12が硬化した後、ラス等のモルタル
補強材18をモルタル補強材支持具１の係止部５に引掛け
て係止して、各モルタル補強材支持具１にモルタル補強
材18を支持させてモルタル補強材支持具１にモルタル補
強材18を取り付ける。

【００４４】この際、図示の如く、一方の係止部５の先
端5a側をモルタル補強材18の周りに折り曲げ、且つ他方
の係止部５の先端5a側をモルタル補強材18の周りに他方
から折り曲げる、即ち、２本（複数）の係止部５をモル
タル補強材18に巻装するようにすれば、係止部５にモル
タル補強材18が極めて強固に連結されるのでモルタル補
強材18の不用意な脱落もなく好ましい。

【００４５】最後にモルタル補強材18の上からモルタル
補強材18を覆うようにモルタルを吹付け又は左官コテ塗
り等の手段によって布設する。

【００４６】尚、前記モルタルは、セメントモルタル、
樹脂モルタル、レジンモルタル、繊維片混合モルタル等
の従来公知のモルタルを用いればよい。

【００４７】また、セメントを布設する場合には、単に
セメントモルタルをモルタル補強材18上に布設するとい
う手順に限定されず、他の手順として、例えば、．モ
ルタル補強材18上にプライマーを吹付け、次に樹脂モル
タル、繊維混合モルタル又はセメントモルタルを布設す
る、．モルタル補強材18上にプライマーを吹き付け、
次に目荒らし目的のためカチオン系セメントモルタルを
吹付け、その上から樹脂モルタル、繊維混合モルタル又
はセメントモルタルを布設する等の手順でモルタルをモ
ルタル補強材18に覆ってもよい。このように樹脂モルタ
ルや繊維混合モルタル等を用いることにより、モルタル
自体が強固となる。

【００４８】さらに、モルタル補強材18としては、ラス
以外としては、例えば、カーボン繊維、ガラス繊維、ビ
ニロン繊維等の繊維強化プラスチックの網状又はシート
状成形品等を用いてもよい。

【００４９】このようにして強化シート14が貼着された
構造物11と強化シート14の間に挿入係合部３を差し入れ
て取付けられたモルタル補強材支持具１と、該モルタル
補強材支持具１から突設された係止部５に取付けられた
モルタル補強材18と、該モルタル補強材18に覆われて固
着したモルタルとを具備するモルタル層20が施工される
こととなる。

【００５０】上記施工方法によれば、モルタル補強材支
持具１によってモルタル補強材18は構造物11に強固に取
付けられ、且つ該モルタル補強材18にモルタルは固着す
るので、施工されたモルタル層20は、モルタルが極めて
剥離し難く、従って、モルタル層20を厚く（例えば、３
０ｍｍ以上）施工することができる。さらに、剥離し難
いので、トンネルの内側上面等の天井面にもモルタル層
20を施工することができる。

【００５１】また、モルタル補強材支持具１を強化シー
ト14に差し入れるだけでよいので作業が簡単である。さ
らに、モルタル補強材支持具１を取り付ける際に強化シ
ート14を損傷することがなく、強化シート14の効果を低
下させることがない。また、接着剤12の硬化前にモルタ
ル補強材支持具１を取付けるので、接着剤12の硬化を待
つ必要がなく、作業時間の短縮を図ることもできる。

【００５２】尚、上記実施形態に於けるモルタル施工方
法にあっては、挿入係合部３の突設されたモルタル補強
材支持具１を用いており上述の効果を奏するが、必ずし
も挿入係合部３の突設されたモルタル補強材支持具１を
用いる必要はない。挿入係合部３が突設されていないモ
ルタル補強材支持具１を用いても、強化シート14を貼着
する接着剤12が硬化すれば強化シート14と共にモルタル
補強材支持具１も構造物11に定着するからである。

【００５３】さらに、上記実施形態に於ける挿入係合部
３が突設されたモルタル補強材支持具１は、その挿入係
合部３が支持具本体２に１ヶ所、係止部５が支持具本体
２に２ヶ所設けられているが、必ずしも挿入係合部３及
び係止部５の個数は限定されず、図６及び図７に示すよ
うに、挿入係合部３及び係止部５を支持具本体２にそれ
ぞれ１ヶ所ずつ設けてもよい。また、図８に示すよう
に、線状の切込部７を複数設けて挿入係合部３及び係止
部５をそれぞれ２以上（複数）支持具本体２に設けても
よい。

【００５４】このように挿入係合部３を複数設けること
により、モルタル補強材支持具１を強化シート14に強固
に取付けでき、係止部５を複数設けることによりモルタ
ル補強材18の係止をし易くなるという利点がある。

【００５５】また、上記実施形態に於いて、支持具本体
２に挿入係合部３及び係止部５を設けるに際して、支持
具本体２に２ヶ所の切込部７が設けられてなるが、例え
ば、図９に示すように、支持具本体２に略Ｚ線状の１本
の切込部７を設けて、区画された各々の部分を挿入係合
部３及び係止部５として構成してもよい。

【００５６】さらに、上記実施形態に於いて、挿入係合
部３及び係止部５は、支持具本体２の中央部に設けられ
ているが、必ずしも挿入係合部３及び係止部５は支持具
本体２の中央部に設ける場合に限定されず、その位置は
任意である。

【００５７】また、上記実施形態に於いて、支持具本体
２に有端線状の切込部７を設けることにより挿入係合部
３及び係止部５が構成されているが、必ずしも切込部７
は有端線状に限定されず、例えば、図１０に示すよう
に、挿入係合部３及び係止部５を形成しうる無端線状の
切込部７によって挿入係合部３及び係止部５を構成して
もよい。

【００５８】さらに、例えば、図１１に示すように、支
持具本体２を、中央部に切込部７を設けた円状体の外縁
の所定箇所に細長状の脚部21を突出した形状に形成し、
該支持具本体２の脚部21を他面2b側に曲げて係止部５と
し、且つ切込部７によって区画された部分を一面2a側に
曲げて挿入係合部３としてモルタル補強材支持具１が構
成されていてもよい。即ち、挿入係合部３や係止部５
は、支持具本体２の内側に設けられている場合に限定さ
れず、支持具本体２の外側に設けられていてもよい。

【００５９】また、例えば、図１２に示すように、円弧
状に形成した２以上の挿入係止部３を支持具本体２の一
面2a側の外縁近傍位置に、一の挿入係合部３の先端3a側
を他の挿入係合部３の基端部3b側に向けて設けられたモ
ルタル補強材支持具１であれば、同図（イ）に示すよう
に、モルタル補強材支持具１を強化シート14に差し入れ
る際に、矢印Ｅ方向にモルタル補強材支持具１を回転さ
せるだけでモルタル補強材支持具１を強固に取り付ける
ことができるという利点がある。この際、図示した如
く、支持具本体２の他面2bに、モルタル補強材支持具１
を矢印Ｅ方向に回すために指で押す押出部22が一対突設
されていると更に好ましい。

【００６０】尚、図１２に示すように、支持具本体２に
リブ23を設けると、モルタル補強材支持具１を取り付け
る際に支持具本体２が容易に湾曲しないので好ましく、
上記各実施形態に例示したモルタル補強材支持具１の支
持具本体２に適宜リブを設けてもよい。

【００６１】また、上記実施形態に於いて、挿入係合部
３及び係止部５は、支持具本体２と一体的に設けられて
いるが、必ずしも挿入係合部３及び係止部５は、支持具
本体２に一体的に設けられている場合に限定されず、支
持具本体２に別体の挿入係合部３及び／又は係止部５を
接着、溶着等の手段により固着してモルタル補強材支持
具１を構成してもよい。

【００６２】また、上記実施形態に於いて、支持具本体
２には、貫通部（孔６や打抜部分17）が設けられ、上記
利点を有するが、必ずしも支持具本体２に貫通部が設け
られていなければ本発明の目的を達成できないわけでは
ない。

【００６３】さらに、上記実施形態に於いて、支持具本
体２は円板状からなるが、必ずしも支持具本体２の形状
は上記実施形態のものに限定されるものではない。他の
形状でも本発明の目的を達成できるからである。

【００６４】また、上記実施形態に於いて、挿入係合部
３及び係止部５は、細長で且つ薄い板状に形成され、上
記利点を有するが、必ずしも挿入係合部３及び係止部５
の形状は、細長で且つ薄い板状に限定させず、例えば、
針状に形成されていてもよく、その形状は任意である。

【００６５】さらに、上記実施形態に於いて、各図に示
した如く、挿入係合部３の先端3aは尖った状態に形成さ
れているが、必ずしもかかる先端3aは図示した形状に限
定されず、要は、挿入係合部３を強化シート14に差し入
れることができるように形成されていればよいのであ
る。

【００６６】また、支持具本体２と挿入係合部３及び係
止部５とが、別体で構成されている場合等に於いて、例
えば、支持具本体２を合成樹脂で形成し、且つ挿入係合
部３及び係止部５を金属で形成する等してもよい。

【００６７】

【発明の効果】以上のように本発明に係るモルタルの施
工方法によれば、モルタル補強材支持具によってモルタ
ル補強材を構造物に容易に且つ強固に取付けることがで
き、従って、該モルタル補強材に布設したモルタルは、
該モルタル補強材を介して構造物に強固に固着すること
となる。さらに、強化シートや構造物が損傷しないの
で、強化シートの効果を低下させることがなく、ラス等
のモルタル補強材によって補強されたモルタル層を施工
することができる。また、接着剤の硬化前にモルタル補
強材支持具を取付けるので、接着剤の硬化を待つ必要が
なく、作業時間の短縮化を図ることもできる。

【００６８】かかる施工方法によって施工されたモルタ
ル層構造は、剥離脱落の虞も少なく、従って、層厚を厚
く形成することができ、消防法上の基準を十分にクリア
できる構造となり、例えば、トンネルの内上面等の構造
物の天井面に厚いモルタル層を施工しても、モルタルが
落下の虞がなくなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】モルタル補強材支持具を示し、（イ）は、挿入
係止部及び係止部が突出された状態の側面図、（ロ）
は、同正面図。

【図２】モルタル補強材支持具を示し、（イ）は、挿入
係止部及び係止部は突出されていない状態の平面図、
（ロ）は、（イ）のＡ−Ａ線断面図。

【図３】本発明に係るモルタルの施工方法を用いてモル
タル層が施工された状態を示す適宜断面を含む一部省略
斜視図。

【図４】図３のＢ部分拡大図。

【図５】図４のＣ−Ｃ線断面図。

【図６】モルタル補強材支持具の他実施形態を示し、
（イ）は、挿入係止部及び係止部が突出された状態の側
面図、（ロ）は、同正面図。

【図７】モルタル補強材支持具の他実施形態を示し、
（イ）は、挿入係止部及び係止部は突出されていない状
態の平面図、（ロ）は、（イ）のＤ−Ｄ線断面図。

【図８】モルタル補強材支持具の他実施形態を示し、挿
入係合部及び係止部は突出されていない状態の平面図。

【図９】モルタル補強材支持具の他実施形態を示し、挿
入係合部及び係止部は突出されていない状態の平面図。

【図１０】モルタル補強材支持具の他実施形態を示し、
挿入係合部及び係止部は突出されていない状態の平面
図。

【図１１】モルタル補強材支持具の他実施形態を示し、
（イ）は、挿入係合部及び係止部は突出されていない状
態の平面図、（ロ）は、挿入係合部及び係止部が突出さ
れた状態の側面図。

【図１２】モルタル補強材支持具の他実施形態を示し、
（イ）は、係止部及び押出部は突出されていない状態の
平面図、（ロ）は、挿入係止部及び係止部並びに押出部
が突出された状態の側面図。

【図１３】従来のモルタルの施工方法を用いてモルタル
層が施工された状態を示す適宜断面を含む一部省略斜視
図。

【符号の説明】

１…モルタル補強材支持具、２…支持具本体、３…挿入
係合部、５…係止部、11…構造物、12…接着剤、14…強
化シート、18…モルタル補強材

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ラス等のモルタル補強材(18)を係止可能
   な係止部(5)が突設されたモルタル補強材支持具(1)を、
   構造物(11)に接着剤(12)にて貼着された強化シート(14)
   上に、該接着剤(12)の硬化前に取付け、次に、該モルタ
   ル補強材支持具(1)の係止部(5)にモルタル補強材(18)を
   係止した後、該モルタル補強材(18)の上からモルタルを
   布設することを特徴とするモルタル施工方法。
2. 【請求項２】 前記モルタル補強材支持具(1)には、強
   化シート(14)に差し入れ可能な挿入係合部(3)が突設さ
   れており、該挿入係合部(3)を強化シート(14)と構造物
   (11)の間に差し入れながらモルタル補強材支持具(1)を
   取付ける請求項１記載のモルタル施工方法。
3. 【請求項３】 前記モルタル補強材支持具(1)の挿入係
   合部(3)を、前記強化シート(14)の繊維を切断しないよ
   うに差し入れる請求項２記載のモルタル施工方法。
4. 【請求項４】 構造物(11)に接着剤(12)にて貼着された
   強化シート(14)の該接着剤(12)によって取付られたモル
   タル補強材支持具(1)と、該モルタル補強材支持具(1)か
   ら突設された係止部(5)に係止されたモルタル補強材(1
   8)と、該モルタル補強材(18)を覆うモルタルとを具備す
   ることを特徴とするモルタル層構造。
5. 【請求項５】 前記モルタルが、樹脂モルタル又は繊維
   混合モルタルである請求項４記載のモルタル層構造。