JP2000104138A - 振動減衰能および強度が優れた鋳鉄材料 - Google Patents

振動減衰能および強度が優れた鋳鉄材料

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JP2000104138A
JP2000104138A JP27601398A JP27601398A JP2000104138A JP 2000104138 A JP2000104138 A JP 2000104138A JP 27601398 A JP27601398 A JP 27601398A JP 27601398 A JP27601398 A JP 27601398A JP 2000104138 A JP2000104138 A JP 2000104138A
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strength
iron material
vibration damping
graphite
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JP27601398A
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Norihiro Akita
憲宏 秋田
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Aisin Takaoka Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】振動減衰能と強度とが優れた鋳鉄材料を提供す
る。 【解決手段】鋳鉄材料は、パーライト系の基地組織に黒
鉛およびステダイトが分散しており、重量比でPを0.
1〜0.5%含有し、ステダイトの面積率が1〜11%
に規定されており、振動減衰能と強度とを両立してい
る。この鋳鉄材料によれば、対数減衰率δを18×10
-3以上、引張強度を150MPa以上にするのに有利で
あり、ブレーキ部品などの摺動部品に好適する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、振動減衰能および強度
が優れた鋳鉄材料の改良に関する。本発明は、例えば、
自動車等の車両のブレーキ・ディスク・ロータ及びブレ
ーキ・ドラムといったブレーキ部品等の摺動部品のよう
に、振動減衰能および強度の双方が要請される装置構成
部品に適用される鋳鉄材料に利用できる。
【0002】
【従来の技術】鋳鉄材料においては、振動減衰能と強度
とは相反する性質であり、振動減数能が高いと、一般的
に強度は充分ではなく、また強度が高いと、一般的に振
動減数能が充分ではないのが一般的である。従って鋳鉄
材料においては、振動減衰能と強度との両立は容易では
ない。
【0003】高い振動減衰能を得られる鋳鉄材料とし
て、例えば特開平3−188239号公報及び特開平5
−214480号公報に記載のものが知られている。こ
れら公報に記載の鋳鉄材料は、CE値:約4〜5重量%
の組成を有するものであり、熱処理を施すことによって
ブレーキ部品の必要強度を得たものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報記載の鋳鉄材料はその製造過程において、高周波焼き
入れが必要であったり、Mo添加などの多量の合金添加
で生じたアシキュラー(ベイナイト)組織により機械加
工性が劣り、加工費が多くかかるという問題がある。ま
た、例えばブレーキ部品のように製品によっては、その
使用環境により、取付け部の温度が500℃を越えるこ
とがある。この場合には、熱処理組織およびアシキュラ
ー組織が変化し、強度が低下するという問題がある。従
って上記したこれらの鋳鉄材料は、振動減衰能と強度と
の双方を備えるには充分ではない。
【0005】本発明は、上記した実情に鑑みなされたも
のであり、振動減衰能と強度との双方が優れた鋳鉄材料
を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記した課題
のもとに鋳鉄材料について鋭意開発をすすめた。そし
て、ステダイトが黒鉛と近似した作用により振動減衰能
を発揮し易いことを知見し、Pを積極的に添加してステ
ダイトをパーライト系の基地組織に黒鉛とともに積極的
に分散させれば、鋳鉄材料の振動減衰能と強度との両立
に有利であることを知見し、試験で確認し、本発明に係
る鋳鉄材料を開発した。
【0007】適量のステダイトを基地組織に黒鉛ととも
に生成させれば、強度と振動減衰能が優れた鋳鉄材料を
提供するのに有利である理由は、ステダイトは、黒鉛の
ように応力が集中しやすい突端をもち、しかも、ステダ
イトは黒鉛より高い強度をもち、振動減衰能の向上に有
利であることに起因していると推察される。すなわち請
求項1(以下第1様相の発明という)に係る振動減衰能
および強度が優れた鋳鉄材料は、パーライト系の基地組
織に黒鉛およびステダイトが分散しており、重量比でP
を0.1〜0.5%含有し、ステダイトの面積率が1〜
11%に規定されていることを特徴とするものである。
【0008】この鋳鉄材料によれば、対数減衰率δを1
8×10-3以上にするのに有利である。また、振動減衰
能および強度の双方を兼備させるべく、適量のステダイ
トを基地組織に黒鉛とともに生成させるためには、鋳鉄
材料の組成を調整することが重要である。
【0009】すなわち請求項5(以下第2様相の発明と
いう)に係る振動減衰能および強度が優れた鋳鉄材料
は、重量比でC:3.5〜4.0%、Si:1.5〜
2.5%、Mn:0.5〜1.2%、P:0.1〜0.
5%、S:0.04〜0.15%で、CE値が4.1〜
4.6%であり、残部は不純物を含む鉄からなり、パー
ライト系の基地組織に黒鉛およびステダイトが分散して
いる鋳鉄であって、対数減衰率δが18×10-3以上で
あり、引張強度が150MPa以上であることを特徴と
するものである。
【0010】この鋳鉄材料によれば、重量比でCr:
0.1〜0.4%、Cu:0.3〜0.8%、Sn:
0.02〜0.08%、Sb:0.01〜0.05%、
V:0.3〜0.5%、Mo:0.1〜0.3%のう
ち、単独添加または少なくとも2種添加できる。これに
より強度の確保に有利となる。この鋳鉄材料によれば、
引張強度が180MPa以上にするのに有利である。
【0011】
【発明の実施の形態】第1様相の発明に係る鋳鉄材料
は、パーライト系の基地組織に黒鉛およびステダイトが
分散している。代表的な黒鉛としては片状黒鉛(例えば
A型黒鉛)、球状黒鉛がある。振動減衰能を一層確保す
るには、黒鉛長さ或いは黒鉛粒径(測定形式は後述に基
づく)は70μm以上、80μm以上にできる。更に、
ブレーキ部品等の摺動部品に本発明に係る鋳鉄材料が適
用される場合には、ブレーキ部品等の摺動部品に要求さ
れる減衰率、熱拡散性は、鋳鉄材料の黒鉛組織と深い関
係をもつ。この意味においても、黒鉛長さまたは黒鉛粒
径は70μm以上、80μm以上であることが好まし
い。
【0012】ステダイトはFe−C−Pの三元共晶と従
来より考えられている。様相1の発明に係る鋳鉄材料に
よれば、ステダイトの面積率は1〜11%に規定されて
いるが、この面積率は、鋳鉄材料に要請される振動減衰
能および強度、あるいは、鋳鉄材料の用途などによって
適宜変更できるものである。例えば、上記面積率は、下
限値が1.5%、2%、3%、4%と適宜変更でき、上
限値が10%、8%、7%に変更できるが、これらに限
定されるものではない。ステダイトのサイズは一般的に
下限値が20μmにでき、上限値が300μmにできる
が、これらに限定されるものではない。
【0013】第1様相の発明に係る鋳鉄材料によれば、
重量比でPを0.1〜0.5%含有している。Pはステ
ダイトの生成に寄与する。Pが0.1%未満では、ステ
ダイトの生成が少なく十分な振動減衰能が得られず、P
が0.5%を越えて添加すると硬質なステダイトが過剰
となり易く、機械加工性(被削性)を悪化させるため、
0.1〜0.5%とした。
【0014】第1様相の発明、第2様相の発明に係る基
地組織はパーライト系である。パーライト系とは、オー
ルパーライトでも良く、あるいは、フェライト等の他の
組織がパーライトに混在していても良い意味である。フ
ェライト等の他の組織がパーライトに混在した場合に
は、フェライト等の他の組織の面積率は10%以下、2
0%以下が好ましい。
【0015】第1様相の発明に係る鋳鉄材料によれば、
振動減衰能が高くなり、対数減衰率δを18×10-3
上に設定するのに有利となり、また、引張強度を150
MPa以上に設定するのに有利となる。対数減衰率δが
18×10-3以上であれば、自動車等の車両用のブレー
キにおいて『ブレーキ鳴き』を大幅に低減できることが
知られている。そのため鋳鉄材料をブレーキ部品に適用
する場合には、対数減衰率δを18×10-3以上、20
×10-3以上にすることが好ましい。
【0016】第2様相の発明に係る振動減衰能および強
度が優れた鋳鉄材料は、重量比でC:3.5〜4.0
%、Si:1.5〜2.5%、Mn:0.5〜1.2
%、P:0.1〜0.5%、S:0.04〜0.15%
で、CE値が4.1〜4.6%であり、残部は不純物を
含む鉄からなり、基地組織に黒鉛およびステダイトが分
散している鋳鉄であって、対数減衰率δが18×10-3
以上であり、引張強度が150MPa以上であることを
特徴とするものである。
【0017】第2様相の発明に係る鋳鉄材料によれば、
重量比でCr:0.1〜0.4%、Cu:0.3〜0.
8%、Sn:0.02〜0.08%、Sb:0.01〜
0.05%、V:0.3〜0.55%、Mo:0.1〜
0.3%のうち、単独添加または少なくとも2種以上添
加できる。これによりパーライト系の基地組織が強化さ
れ、強度の確保に有利となり、引張強度を180MPa
以上、190MPa以上に設定するのに有利となる。
【0018】第2様相の発明に係る鋳鉄材料は、C量、
P量、更には他の合金元素が適量であるため、パーライ
ト系の基地組織に黒鉛および適量のステダイトが分散し
ている。代表的な黒鉛は片状黒鉛(例えばA型黒鉛)、
球状黒鉛がある。黒鉛長さ或いは黒鉛粒径は70μm以
上、80μm以上にできる。黒鉛粒径が大きければ、振
動減衰能の確保に有利である。
【0019】各合金元素の添加量の範囲限定理由は、以
下の通りである。Cは目的特性の一つである対数減衰率
(δ)の向上に有効であるが、その添加量が3.5%未
満ではその効果が十分でなく、4.0%を越えると引張
強度が低下し、十分な材質強度(例えば引張強度150
MPa)を得られなくなるため、3.5〜4.0%とし
た。
【0020】Siは黒鉛化傾向を有する元素でありCと
基本的には同様の効果を示すが、1.5%未満では対数
減衰率(δ)の向上効果が十分でないばかりか、鋳鉄製
品の健全性を損なう可能性があり、2.5%を越えると
引張強度や圧縮強度が低下し、十分な材質強度(例えば
引張強度150MPa)を得られなくるため、1.5〜
2.5%とした。
【0021】Mnはパーライト化元素であることから、
引張強度や耐摩耗性を向上させるために添加するが、そ
の添加量が0.5%未満では効果が十分でなく、一方、
1.2%を越えると強度が向上しないばかりか、粒界へ
の偏析が増加し機械加工性(被削性)を悪化させるた
め、0.5〜1.2%とした。Pは溶湯の湯流れ性など
の鋳造性と関係するとともに、Fe,C,Pの三元共晶
であると考えられるステダイトを形成し、このステダイ
トが鋳鉄中の黒鉛と同様なメカニズムにより振動減衰能
を得られると考えられることから添加する。しかし、
0.1%未満ではステダイトの生成が少なく十分な振動
減衰能が得られず、0.5%を越えて添加すると硬質な
ステダイトが過剰となり易く、機械加工性(被削性)を
悪化させるため、0.1〜0.5%とした。
【0022】Sは良好な機械性質を得るのに有効なA型
黒鉛を晶出させて引張強度を向上するが、その添加量が
0.04%未満では効果が十分でなく、一方、0.15
%を越えて添加すると機械的性質を逆に損なうため、
0.04〜0.15%とした。CE値はC+(1/3)
Siで示される値であり、炭素当量としてCと同じ影響
を各特性に与えるもので、4.1%未満では十分な減衰
率が得られず、4.6%を越えると十分な強度が得られ
ないので4.1〜4.6%とした。
【0023】Cr、Cu、Sn、Sb、V、Moは一般
的にパーライト化促進元素と考えられており、様相1の
発明、様相2の発明に係る鋳鉄材料に対してこれらを添
加すると、鋳鉄材料の引張強度を向上させるのに有利と
なる。例えば平均20MPa向上させ得る。これらの元
素の下限値未満では、充分な引張強度が得られにくい。
上限値を超えると、炭化物を生成したり、粒界偏析した
りして、鋳鉄材料の被削性が低下するおそれがあり、更
に、黒鉛組織に作用して対数減衰率を低下するおそれが
あるため、上記したように範囲を規定した。Cr、C
u、Sn、Sb、V、Moは、単独で添加しても良い
し、少なくとも2種添加しても良い。
【0024】第1様相の発明、第2様相の発明に係る鋳
鉄材料は、一般的には、変態を伴う熱処理を行うことな
く、鋳放しで使用される。但し、機械加工は適宜行い得
る。
【0025】
【実施例】以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
本実施例では、重量20kg溶解用の高周波溶解炉中を
用い、この溶解炉でFC戻し材及び鋼屑を大気溶解して
溶湯を作製した。更に、加炭材、Fe−Mn合金,Fe
−P合金を溶湯に適宜添加した。更に、Fe−Si合金
と黒鉛系接種剤とを取鍋中で1480℃で添加接種し、
これにより実施例1A〜5Aに係る溶湯を調整した。更
に比較例1A〜3Aに係る溶湯も調整した。
【0026】その溶湯で、化学組成分析用試験片を作製
するとともに、鋳放し直径30mmの供試材を鋳造し
て、引張強度試験片、対数減衰率測定用試験片をそれぞ
れ作製した。組成は蛍光X線分析装置及びC量計で分析
した。引張強度試験ではJIS8号試験片を用い、JI
S Z−2241「金属引張試験法」に準じて測定し
た。対数減衰率測定試験では、図1に示すような対数減
衰率測定装置を用い、最大ひずみみ振幅が100μmと
なるように、試験片10(サイズ:20mm×200m
m×4mm)を加振器12により加振し、加振停止後に
即座に、加速度ピックアップ20により減衰波形(図2
に例示)を得た。その減衰波形において、加振振幅に対
して1/3の振幅をもつ波形部位を基準振幅A1とし、
基準振幅A1からn個目の振幅Anを求め、式1に基づ
いて対数減衰率δを算出した。
【0027】 式1…対数減衰率δ=(1/n)×ln(A1/An) また黒鉛の長さは、画像解析装置を用い、連続した1つ
の黒鉛に当てはまる楕円の長径を黒鉛長さとし、その楕
円の長径が30μmに満たないものは除き、1mm2
たりの黒鉛長さの平均値で求めた。上記した実施例1A
〜4Aの組成及び試験結果を、表1、表2に示す。同様
に比較例1A〜3Aについても、表1、表2に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】 実施例1A〜4Aはいずれも、組成が良好であり、更に
ステダイトの面積率が3〜10%であった。この結果、
実施例1A〜4Aはいずれも、対数減衰率が18×10
-3以上であり、また引張強度を150MPa以上であ
り、振動減衰能および強度が共に両立できた。従って、
実施例1A〜4Aはブレーキ部品(ブレーキ・ディスク
・ロータ、ブレーキ・ドラム)等の摺動部品に使用する
のに適する。
【0030】比較例1A〜3Aは、P量、ステダイトが
少なく、振動減衰能と強度とを両立させるのに不利であ
る。すなわち、CおよびPが低めの比較例1Aは、引張
強度が良好であるものの、対数減衰率が良好ではない。
Pが低めでSiが多めの比較例2Aは、減衰率が良好で
あるものの、引張強度が良好ではない。Pが低めでCE
値が多めの比較例3Aは、対数減衰率は良好であるが、
引張強度は良好ではない。
【0031】更に、一般的な鋳鉄材料を用い、黒鉛長さ
と鋳鉄材料の対数減衰率との関係を試験した。この試験
結果を図3に示す。図3から理解できるように、ひずみ
振幅が大きくなれば、対数減衰率が高くなる傾向があ
る。また、黒鉛長さが69μmのときよりも、91μ
m、98μmの方が、つまり、黒鉛長さが長いほうが鋳
鉄材料の対数減衰率が高くなる傾向がある。従って鋳鉄
材料の減衰能を確保するには、黒鉛長さは70μmを超
えるほうが好ましい。表3は上記した試験(図3)に使
用した試験片の組成(mass%=重量%)を示す。図4は
その組織写真をそれぞれ示す。図4から理解できるよう
に、パ−ライト基地に、細長い片状黒鉛が生成してい
る。
【0032】
【表3】 また一般的な鋳鉄材料を用い、鋳鉄材料のS%(mas
s%=重量%)と鋳鉄材料の対数減衰率及び引張強度と
の関係を試験した。この試験結果を図5に示す。図5か
ら理解できるように、S%の増加につれて、図5の特性
線M1に示すように引張強度は向上するものの、特性線
M2に示すように対数減衰率が低下する傾向がある。
【0033】従ってSを添加しても、鋳鉄材料の減衰能
の向上にはあまり効果的ではないと考えられる。この試
験(図5)で用いた試験片の組成(mass%)を表4に示
す。
【0034】
【表4】 また、フェライト基地において黒鉛平均長さが91μm
のときの鋳鉄を用いて引張試験を行い、この鋳鉄に種々
の大きさの応力を作用させてひずみを生成したときにお
ける、ひずみ−応力の関係を求めた。これを図6に示
す。図6から理解できるように、この関係において、鋳
鉄材料はヒステリシスを示すことが分かる。しかも、作
用させる応力が大きくなるにつれて、図面上のヒステリ
シス面積が増加する傾向がある。
【0035】さて、図3に示すひずみ振幅と鋳鉄材料の
対数減衰率と関係をみれば、対数減衰率の大きさはひず
み振幅の大きさに影響を受け、ひずみ振幅依存性を示し
ている。このようなひずみ振幅依存性を示す材料とし
て、複合材料が従来より知られている。鋳鉄は、黒鉛と
鉄系基地との複合材料の1種であるとも考えられる。故
に、鋳鉄の減衰能が複合材の減衰能と同じ機構に基づく
とも推察される。
【0036】そこで本発明者は、ひずみを与えた鋳鉄に
おいて微少な塑性変形を見るために図7に示す3点曲げ
試験装置を用いて、試験した。この試験では、鋳鉄材料
の組織観察が可能なように、鏡面研磨した鋳鉄片50
(10mm×80mm×2mm)を用い、2個のローラ
100で支持した鋳鉄片50を1個のボルト103のボ
ルト端103により押圧し、3点により鋳鉄片50に曲
げひずみを与えながら、ボルト103に対向する位置に
設けた光学顕微鏡105で組織の変化を観察した。
【0037】図8は、黒鉛長さを100μm、200μ
m、300μmに規定した鋳鉄材料を用い、図7に示す
3点曲げ試験装置において、ひずみ10-3を鋳鉄材料に
与えたときの偏光組織写真である。この観察により、多
くの塑性変形を示すすべりが黒鉛の先端において確認さ
れた。またこれらのすべりは、黒鉛が長く大きくなるに
つれて強く明確に現れ、塑性変形が強く生じていること
が確認された。この塑性変形は黒鉛の先端における応力
集中に起因するものと考えられる。
【0038】そこで本発明者は、高い強度と高い減衰率
との双方を発揮する鋳鉄材料を実現するためには、黒鉛
のように応力の集中しやすい突端を備え、且つ、黒鉛よ
り強度の高い第3物質相を、黒鉛とともに基地に積極的
に生じせしめれば良いことに着目した。そして本発明者
は、第3物質相の生成し易さ、加工性などを考慮すれ
ば、Pを積極的に添加してステダイトを黒鉛とともに分
散させることが有用であると考えた。そこで本発明者
は、様相1の発明のように、ステダイトを黒鉛とともに
基地組織に生成させるとともに、ステダイトの面積率を
規定した。
【0039】また、適量のステダイトを黒鉛とともに生
成しうる鋳鉄材料の組成(特にC量、P量)を得るべ
く、第2様相の発明に係る鋳鉄材料の組成を規定した。
更に鋳鉄材料のP%と鋳鉄材料の対数減衰率の関係を試
験した。この結果を図9に示す。図9から理解できるよ
うに、P%が増加するにつれて、つまり、ステダイトが
増加するにつれて、鋳鉄材料の対数減衰率が高くなるこ
とが確認された。更にP量を増加しても同様の傾向があ
った。
【0040】図10は実施例4Aに係る顕微鏡組織写真
を示す。この写真によれば、パーライト系の基地にステ
ダイト(面積率:7%)が生成している。 (他の実施例)以下、本発明の他の実施例を説明する。
この実施例1B〜3Bは、前記した実施例1A〜4Aと
基本的には同様であり、基本的には同様の作用効果を奏
する。
【0041】この実施例1B〜3Bにおいても同様な手
順で試験片を形成した。ただし、この場合には、溶解し
た溶湯に、加炭材、Fe−Mn,Fe−Pを添加する他
に、Fe−Cr合金,Fe−Mo合金,銅屑、金属錫粒
を添加した。さらに前記実施例と同様に、Fe−Si合
金と黒鉛系接種剤を取鍋中において1480℃で添加接
種して溶湯を調整した。
【0042】この溶湯で、前述同様に各種試験片を作製
し、試験を行った。組成は蛍光X線分析装置及びC量計
で分析した。引張強度はJIS8号C試験片を用い、J
ISZ 2241「金属引張試験法」に準じて測定し
た。対数減衰率は、前述同様に、図1に示す装置を用
い、最大ひずみ振幅が100μmとなるように加振し、
振幅停止後即座に減衰波形を得た。その減衰波形に基づ
いて、前述同様に対数減衰率δを算出した。また黒鉛の
長さは、画像解析装置を用い連続した1つの黒鉛に当て
はまる楕円の長径を黒鉛長さとし、その楕円の長径が3
0μmに満たないものは除いて、1mm2当たりの平均
値である。
【0043】本実施例の組成及び各試験結果を表5、表
6に示す。表6に示すように、実施例1B〜3Bはいず
れもP量が多く、ステダイトの面積率が2〜6%であ
り、従って対数減衰率が18×10-3以上であり、また
引張強度が180MPa以上であり、振動減衰能および
強度を両立させている。比較例1B,2Bは、P量及び
ステダイトの面積率が少なく、対数減衰率と強度とを両
立しているものではない。
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
【発明の効果】本発明に係る鋳鉄材料によれば、振動減
衰能および強度を両立させるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】対数減衰率測定装置を示す構成図である。
【図2】対数減衰率の算出方法を示す構成図である。
【図3】各黒鉛長さにおける最大ひずみ振幅と対数減衰
率との関係を示すグラフである。
【図4】試験片の顕微鏡組織を示す写真図である。
【図5】S量と対数減衰率および引張強度との関係を示
すグラフである。
【図6】ひずみと応力との関係を示すグラフである。
【図7】3点曲げ試験装置の構成図である。
【図8】3点曲げによるひずみ付加時の鋳鉄組織を示す
顕微鏡写真図である。
【図9】P量と対数減衰率との関係を示すグラフであ
る。
【図10】ステダイト含有鋳鉄材料の組織を示す顕微鏡
写真図である。
【符号の説明】
図中、10は試験片、12は加振器を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成10年12月3日(1998.12.
3)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正内容】
【図10】

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】パーライト系の基地組織に黒鉛およびステ
    ダイトが分散しており、重量比でPを0.1〜0.5%
    含有し、ステダイトの面積率が1〜11%に規定されて
    いることを特徴とする振動減衰能および強度が優れた鋳
    鉄材料。
  2. 【請求項2】請求項1において、対数減衰率δが18×
    10-3以上であることを特徴とする振動減衰能および強
    度が優れた鋳鉄材料。
  3. 【請求項3】請求項1または2において、引張強度が1
    50MPa以上であることを特徴とする振動減衰能およ
    び強度が優れた鋳鉄材料。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかにおいて、引張強
    度が180MPa以上であることを特徴とする振動減衰
    能および強度が優れた鋳鉄材料。
  5. 【請求項5】重量比でC:3.5〜4.0%、Si:
    1.5〜2.5%、Mn:0.5〜1.2%、P:0.
    1〜0.5%、S:0.04〜0.15%で、CE値が
    4.1〜4.6%であり、残部は不純物を含む鉄からな
    り、パーライト系基地組織に黒鉛およびステダイトが分
    散している鋳鉄であって、 対数減衰率δが18×10-3以上であり、引張強度が1
    50MPa以上であることを特徴とする振動減衰能およ
    び強度が優れた鋳鉄材料。
  6. 【請求項6】請求項5において、重量比でCr:0.1
    〜0.4%、Cu:0.3〜0.8%、Sn:0.02
    〜0.08%、Sb:0.01〜0.05%、V:0.
    3〜0.5%、Mo:0.1〜0.3%のうち、単独添
    加または少なくとも2種添加されていることを特徴とす
    る振動減衰能および強度が優れた鋳鉄材料。
  7. 【請求項7】請求項5または6において、引張強度が1
    80MPa以上であることを特徴とする振動減衰能およ
    び強度が優れた鋳鉄材料。
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