JP2000104122A - プレス成形性に優れ、かつ、プレス成形性の変動が少ない、高加工性冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

プレス成形性に優れ、かつ、プレス成形性の変動が少ない、高加工性冷延鋼板の製造方法

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JP2000104122A
JP2000104122A JP11213235A JP21323599A JP2000104122A JP 2000104122 A JP2000104122 A JP 2000104122A JP 11213235 A JP11213235 A JP 11213235A JP 21323599 A JP21323599 A JP 21323599A JP 2000104122 A JP2000104122 A JP 2000104122A
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吉秀 石井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車の外板などの用途に好適なプレス成形
性に優れ、かつプレス成形性のコイル内での変動が少な
い、高加工性冷延鋼板の製造方法を提供すること。 【解決手段】 重量%にて、C:0.02%以下、Si:0.6%以
下、Mn:2.5%以下、P:0.10%以下、S:0.05%以下、O:0.01%
以下、sol.Al:0.01〜0.10%を含有し、さらにTi、Nb、V、Zr
のうち1種以上を0.01〜0.20%含有する鋼スラブを、25
〜85mmに粗圧延し、粗バー圧下率が85%以上、かつ、仕
上げ温度が粗バーの先端部から後端部に至るまでAr3〜A
r3+50℃の範囲となるように圧延し、かつ、仕上圧延最
終スタンドでの圧下率が10%以上の時には有効圧下率が3
0%以上、10%未満の時には35%以上になるように圧下スケ
ジュールを設定し、ランナウトでの冷却を仕上げ圧延終
了後1.5秒以内に開始し、仕上げ温度〜750℃までの平均
冷却速度を20℃/sec以上とし、その後、720℃以下の温
度で巻き取り、酸洗、冷間圧延、最終焼鈍、調質圧延を
施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の外板など
の用途に好適な深絞り性に優れたプレス加工用冷延鋼板
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】冷延鋼板は自動車等に広く使用されてい
る。自動車用途にはプレス成形される部材が多いため、
その部材の形状に応じて様々な加工性が要求される。特
に、自動車の外板などの用途に好適な深絞り性に優れた
プレス加工用冷延鋼板が求められる。
【0003】しかしながら、近年の自動車メーカーから
の合理化の要求が厳しく、特に同メーカーから、素材の
高加工性と、製品製造時での歩留まりの向上の要求が強
くなっている。このような背景より、材質面では、特
に、高加工性を、鋼板の長手方向・幅方向で均一性を保
証することが重要となっている。
【0004】このような背景より、表面性状および深絞
り性を向上させようという観点から、連続鋳造−直送圧
延プロセスにおいて、例えば、C:0.015%以下の
極低炭鋼スラブの幅中央での表面温度が、900℃未
満、600℃以上の温度範囲で熱間圧延を開始し、さら
に熱間圧延工程の途中段階で30分以内の保持処理を施
すことを特徴とする技術が特公昭60−45692号公
報に開示されている。また、優れた深絞り加工性を実現
するために、例えば、C:0.004%以下の極低炭素
鋼スラブを、有効ひずみを45%以上にとり、かつ、仕
上げ圧延終了後の冷却制御などのプロセス面からの制御
を行うことを特徴とする技術が特公平7−103423
号公報に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の技術では、表面性状または深絞り性を優れたレベルま
で改善はしているものの、コイル内の機械的性質の長手
方向および幅方向の均一性を保証することができないた
め問題があった。
【0006】すなわち、特公昭60−45692号公報
に開示されている技術は、熱延での加熱温度をフェライ
ト域といった低温としているため、エッジおよびその近
傍での温度の低下が著しく、圧延中の幅方向での温度の
ばらつきが大きい。そのため、熱延後の集合組織が異な
り、結果として、冷延焼鈍後でもコイルの長手および幅
方向で機械的性質がばらつくという問題が生じてしま
う。特に、コイルの幅方向で組織がばらつくと、材料内
での加工性の面内での均一性が悪くなり、とりわけ、自
動車の外板などの用途で優れた深絞り性が求められる場
合、プレス成形後の品質に変動(割れ、しわなど)が生
じ、結果的に自動車メーカーでは、コイル内での板採り
を歩留まりが低い条件、すなわち板取方向を45度等の
不合理な方向としたり、コイルエッジ近傍より製品採取
をしない等の条件で行なわざるを得なくなる。
【0007】また、特公平7−103423号公報に開
示されている技術においても、プロセス因子を制御する
ことによって、深絞り性を付与するというものである
が、コイル内の機械的性質の幅方向の均一性を確保する
ことはできない。また、長手方向の機械特性の均一性に
ついても、本発明で対象とするような成分系では完全に
確保されているわけではない。さらに、最終スタンドで
の圧下率を大きくすると、鋼帯の搬送にブレを生じたり
する可能性が高いので、最終スタンドの圧下率を50%
以上に設定することはできず、板のバラツキを防止・矯
正する程度のことしかできないので、その実施例に見ら
れるような90〜110%の有効ひずみの設定は、通常
の熱延ミルでは実質的に不可能である。かつ、本技術に
開示されている巻取温度は、実質的には730〜760
℃であり(680〜800℃、好ましい範囲として、7
20〜800℃)、このような巻取温度では、酸洗性が
劣るために、スケール性欠陥が発生し、歩留りの低下が
避けられない。
【0008】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、上記のような自動車の外板などの用途に好適
なプレス成形性に優れ、かつプレス成形性のコイル内で
の変動が少ない、高加工性冷延鋼板の製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述した
課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、自動
車の外板などの用途に好適なプレス成形性に優れ、かつ
プレス成形性のコイル内での変動が少ないプレス加工用
冷延鋼板を得るためには、所定の組成の鋼スラブに対
し、 (1)粗圧延機によって25mm以上85mm以下に粗
圧延し、粗バー圧下率が85%以上になるような仕上げ
圧延パス・スケジュールにすることにより、スラブの組
織を均一にするとともに、仕上圧延工程において所望の
材質の作り込みを可能にすること (2)仕上げ温度を鋼帯の先端部から後端部に至るまで
Ar〜Ar+50℃の狭い範囲となるようにし、か
つ以下に説明する有効圧下率を、仕上げ圧延の最終スタ
ンドでの圧下率が10%以上の時には30%以上、仕上
げ圧延の最終スタンドでの圧下率が10%未満の時には
35%以上になるように圧下スケジュールを設定するこ
とにより、コイル内の平均r値および延性のレベルを所
望の均一な値とすること (3)ランナウトでの冷却開始時間を仕上げ圧延終了後
1.5秒で開始することにより、オーステナイトの結晶
粒の粒成長を抑制すること、さらに望ましくは、冷却を
仕上げ圧延終了後1.0秒以内に開始すること (4)仕上げ温度〜750℃までの平均冷却速度を20
℃/sec以上とすることにより、オーステナイト−フ
ェライト変態時のフェライトの核生成頻度を増加させる
こと、さらに望ましくは、平均冷却速度を100℃/s
ecにすること (5)熱延後の巻取温度を720℃以下とすることによ
り、フェライトの粒成長による粗粒化を抑制すること が重要であり、このようにして得られた熱延鋼板に対し
て、冷間圧延、最終焼鈍、調質圧延によって得られた熱
延鋼帯を酸洗、冷間圧延、最終焼鈍、調質圧延を施すこ
とにより、初めて本発明で意図するプレス成形性に優
れ、かつプレス成形性の変動が少ない、高加工性冷延鋼
板が得られることを見出した。
【0010】また、仕上げ温度を鋼帯の先端部から後端
部に至るまでAr〜Ar+50℃の狭い範囲とする
ためには、仕上げ圧延機の入り側、または、仕上げ圧延
機のスタンド間に設けられた誘導加熱装置によって前記
粗バーの仕上げ圧延機により圧延される前記粗バーを加
熱することによりその温度を調整することが有効である
ことを見出した。
【0011】さらに、連続熱間仕上げ圧延機のスタンド
間または、仕上げ圧延の前工程にて粗バーの幅方向エッ
ジ部を誘導加熱装置により加熱することにより、幅方向
の材質をより均一にすることができることを見出した。
【0012】さらにまた、仕上げ圧延で圧延される粗バ
ーの圧延速度を、粗バーの先端部が仕上げ圧延機に入っ
てから加速し、その後一定速、または一定速圧延後加
速、または加速圧延することにより、これにより加速に
よる鋼帯の温度低下を抑制することができ、粗バー加熱
のための消費電力を節約できることを見出した。本発明
は、このような知見に基づいてなされたものであり、以
下の(1)〜(5)を提供するものである。
【0013】(1)重量%にて、C:0.02%以下、
Si:0.6%以下、Mn:2.5%以下、P:0.1
0%以下、S:0.05%以下、O:0.01%以下、
sol.Al:0.01〜0.10%を含有し、さらに
Ti、Nb、V、Zrのうち1種または2種以上を0.
01〜0.20%含有する鋼からなるスラブを、連続鋳
造まま、または冷却後所定温度に加熱した後、粗圧延機
によって25mm以上85mm以下に粗圧延し、下記に
示す粗バー圧下率が85%以上になるような仕上げ圧延
パス・スケジュールにし、かつ、その粗バーを連続熱間
仕上げ圧延機によって仕上げ圧延するに際して、仕上げ
最終スタンドにおける温度が前記粗バーの先端部から後
端部に至るまでAr〜Ar+50℃の範囲となるよ
うに圧延し、かつ、前記仕上げ圧延の最終スタンドでの
圧下率が10%以上の時には、以下に示す有効圧下率が
30%以上、または、前記仕上げ圧延の最終スタンドで
の圧下率が10%未満の時には、以下に示す有効圧下率
が35%以上になるように圧下スケジュールを設定し、
引き続くランナウトでの冷却を仕上げ圧延終了後1.5
秒以内に開始し、仕上げ温度〜750℃までの平均冷却
速度を20℃/sec以上で冷却し、その後、720℃
以下の温度で巻き取り、得られた熱延鋼帯に対して酸
洗、冷間圧延、最終焼鈍、調質圧延を施すことを特徴と
するプレス成形性に優れ、かつ、プレス成形性の変動が
少ない、高加工性冷延鋼板の製造方法。ただし、 粗バー圧下率={(粗バー厚み−熱延板厚み)/粗バー
厚み}×100 有効圧下率 =最終スタンドの圧下率+最終1段前スタ
ンドの圧下率+1/3×最終2段手前スタンドの圧下率
【0014】(2) 上記(1)の方法において、前記
粗バーを連続熱間仕上げ圧延機によって仕上げ圧延する
に際して、仕上げ圧延機の入り側、または、仕上げ圧延
機のスタンド間に誘導加熱装置を設け、その誘導加熱装
置によって前記仕上げ圧延機により圧延される前記粗バ
ーを加熱することによりその温度を調整し、前記仕上げ
最終スタンドにおける温度が前記粗バーの先端部から後
端部に至るまでAr〜Ar+50℃の範囲となるよ
うに圧延することを特徴とするプレス成形性に優れ、か
つ、プレス成形性の変動が少ない、高加工性冷延鋼板の
製造方法。
【0015】(3) 上記(1)または(2)の方法に
おいて、前記連続熱間仕上げ圧延機のスタンド間また
は、仕上げ圧延の前工程にて前記粗バーの幅方向エッジ
部を誘導加熱装置により加熱することを特徴とする請求
項2に前記のプレス成形性に優れ、かつ、プレス成形性
の変動が少ない、高加工性冷延鋼板の製造方法。
【0016】(4) 上記(1)から(3)の方法にお
いて、前記仕上げ圧延で圧延される前記粗バーの圧延速
度を、前記粗バーの先端部が前記仕上げ圧延機に入って
から加速し、その後一定速、または一定速圧延後加速、
または加速圧延することを特徴とする、プレス成形性に
優れ、かつ、プレス成形性の変動が少ない、高加工性冷
延鋼板の製造方法。
【0017】(5) 上記(1)から(4)の方法にお
いて、ランナウトでの冷却を仕上げ圧延終了後1.0秒
以内に開始し、仕上げ温度〜750℃までの平均冷却速
度を100℃/sec以上で冷却することを特徴とす
る、プレス成形性に優れ、かつ、プレス成形性の変動が
少ない、高加工性冷延鋼板の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】上述したように、自動車の外板な
どの用途に好適な、プレス成形性に優れ、かつプレス成
形性のコイル内での変動も少ない高加工性冷延鋼板を得
るためには、まず鋼組成を最適化することが必要であ
る。
【0019】このため、本発明では、鋼組成を、重量%
にて、C:0.02%以下、Si:0.6%以下、M
n:2.5%以下、P:0.10%以下、S:0.05
%以下、O:0.01%以下含有し、さらにsol.A
l:0.01〜0.10%、Ti、Nb、V、Zrのう
ち1種または2種以上を0.01%〜0.20%と規定
している。以下、これらの限定理由について説明する。
【0020】C:0.02%以下 Cは鋼板の深絞り性に悪影響を及ぼす元素であるため、
その含有量は少ない方が好ましい。C量が0.02%を
超えると、本発明で要求する深絞り性は得られないた
め、その含有量は0.02%以下とした。深絞り性の向
上のためのより好ましいC量は0.0020%未満であ
る。加工性をさらに高いレベルとするためには0.00
10%以下であることが好ましい。
【0021】Si:0.6%以下 Siには鋼板を固溶強化する作用を有するが、深絞り性
に悪影響を及ぼす元素であるため少ないほうが好まし
い。Si量が0.6%を超えると、めっき性および深絞
り性が劣化するため、その含有量は0.6%以下とし
た。めっき性の向上のためのより好ましいSi量は0.
1%以下である。加工性をさらに高いレベルとするため
には0.03%以下であることが好ましい。
【0022】Mn:2.5%以下 Mnには鋼板の靱性を改善し、鋼板を固溶強化する作用
を有するが、加工性に悪影響を及ぼす元素である。Mn
量が2.5%を超えると、強度が上昇し、深絞り性の劣
化が著しくなることから、その含有量は2.5%以下と
した。深絞り性の向上のためのより好ましいMn量は
2.0%以下である。加工性をさらに高いレベルとする
ためには0.5%以下であることが好ましい。
【0023】P:0.10%以下 Pには鋼板を固溶強化する作用を有するが、その含有量
が0.10%を超えると粒界偏析による粒界脆化が生じ
やすくなり、延性も劣化する。よって、Pの含有量は
0.10%以下とした。延性の向上のためのより好まし
いP量は0.05%以下である。延性をさらに高いレベ
ルとするためには0.02%以下であることが好まし
い。
【0024】S:0.05%以下 Sが0.05%を超えると硫化物の析出量が多くなり、
深絞り性および延性が劣化する。よって、Sの含有量は
0.05%以下とした。加工性の向上のためのより好ま
しいS量は0.02%以下である。加工性をさらに高い
レベルとするためには0.010%以下であることが好
ましい。
【0025】sol.Al:0.01〜0.10% sol.Alは鋼の脱酸材として使用され、更には後述
するTi、Nb、Zr、Vの添加歩留まりをあげるため
に必須な添加元素である。0.01%未満では上記した
効果が得られず、一方、0.10%を超えると効果が飽
和して不経済となる。よって、sol.Alの含有量は
0.01〜0.10%とした。
【0026】O:0.01%以下 Oはその含有量が少ないほど加工性に対しては好まし
い。O量が0.01%を超えると鋼板の加工性の低下が
避けられない。よって、O含有量は0.01%以下とし
た。このような、O含有量は前記sol.Al量の制御
により達成される。
【0027】素材鋼としては、上記した成分に加えて、
更にTi、Nb、V、Zrのうち1種又は2種以上を
0.01〜0.40%含有する。これらの成分は炭窒化
物や硫化物を形成し、鋼中のC、N、Sを減少させ、加
工性をより優れたものとすることができるので、単独ま
たは複合で添加する。しかし、これらの合計含有量が
0.01%未満では所望の効果が得られず、一方、0.
40%を越えると強度が上昇し過ぎて加工性が劣化する
ため、添加量の範囲は0.01〜0.40%とした。
【0028】次に、本発明の製造条件について説明す
る。プレス成形性に優れ、かつプレス成形性のコイル内
での変動も少ない冷延鋼板を得るためには、まず、上記
組成の鋼スラブを、連続鋳造まま、または、冷却後所定
温度に加熱した後、熱間圧延するに際し、粗圧延機によ
って25mm以上85mm以下に粗圧延し、下記に示す
粗バー圧下率が85%以上になるような仕上げ圧延パス
・スケジュールにし、かつ、その粗バーを連続熱間仕上
げ圧延機によって仕上げ圧延するに際して、前記仕上げ
最終スタンドにおける温度が前記粗バーの先端部から後
端部に至るまでAr〜Ar+50℃の範囲となるよ
うに圧延し、かつ、前記仕上げ圧延の最終スタンドでの
圧下率が10%以上の時には、以下に示す有効圧下率が
30%以上、または、前記仕上げ圧延の最終スタンドで
の圧下率が10%未満の時には、以下に示す有効圧下率
が35%以上になるように圧下スケジュールを設定し、
引き続くランナウトでの冷却を仕上げ圧延終了後1.5
秒以内(さらに望ましくは1.0秒以内)に開始し、仕
上げ温度〜750℃までの平均冷却速度を20℃/se
c以上(さらに望ましくは100℃/sec以上)で冷
却し、その後、720℃以下の温度で巻き取り、そし
て、得られた熱延鋼帯に対してを酸洗、冷間圧延、最終
焼鈍、調質圧延を施す。以下、製造条件の限定理由につ
いて説明する。
【0029】(a)粗バー厚み:25mm以上85mm
以下 スラブを連続鋳造まま、または冷却後所定温度に加熱し
た後、粗圧延機によって粗圧延する際に、粗バー厚み
を、25mm以上85mm以下の範囲に設定することが
必要である。25mm未満であると、仕上圧延工程での
材質の作り込みが困難になり、また、85mmを超える
と、現状の仕上圧延機では、高加工性冷延鋼板を製造す
るための熱延板を作ることができない。望ましい範囲
は、25mm以上55mm未満である。
【0030】(b)粗バー圧下率:85%以上 上述のような粗バー厚みを達成する際に、以下に示す粗
バー圧下率を85%以上にする必要がある。85%未満
の場合には、スラブの組織不均一性が、粗圧延以降の工
程にも残存してしまうためである。 粗バー圧下率={(粗バー厚み−熱延板厚み)/粗バー
厚み}×100
【0031】(c)仕上げ温度:Ar〜Ar+50
℃ 以上の条件で得られた粗バーを、前記仕上げ圧延機によ
り圧延される前記粗バーの仕上げ最終スタンドにおける
温度(仕上げ温度)がその先端部から後端部に至るまで
Ar〜Ar+50℃の範囲となるように圧延するこ
とによりコイル内(コイル幅方向および長手方向の変動
も含めた)の平均r値および延性(破断伸び)のレベル
を本発明で意図するものとすることができる。図1に本
発明材および比較材のコイル内(長手方向・幅方向)の
機械的性質の変動と熱延仕上げ温度の関係を示す。この
図から仕上げ温度が上記範囲であれば平均r値および延
性が優れた値となることがわかる。
【0032】この場合に、仕上げ温度を上述の範囲とな
るように制御するためには、仕上げ圧延機の入り側、ま
たは、仕上げ圧延機のスタンド間に誘導加熱装置を設
け、その誘導加熱装置により前記粗バーを加熱すること
により温度を調整することが有効である。
【0033】なお、本発明で特徴とする粗圧延バーの加
熱はコイルBOX等を用いた連続熱延プロセスに対して
も効果的に使用することができる。この際、粗圧延バー
の加熱は、上記以外に、コイルBOXの前後や、粗圧延
機の間または後に行ってもよい。また、コイルBOXの
後で、溶接機の前後で粗圧延バーの加熱を行っても、本
発明の効果は十分に発揮される。
【0034】より好ましくは、仕上げ圧延機の最終スタ
ンドにおける温度(仕上げ温度)のみの制御に加え、仕
上げ圧延機の最終スタンドより前の各スタンドにおける
圧延温度の単独または2個以上複数をその先端部から後
端部に至るまでAr〜Ar +50℃の範囲となるよ
うに圧延する。これにより、より優れた深絞り性を有
し、コイル内(長手方向及び幅手方向)での機械的性質
の変動のより少ない鋼板を製造し得る。
【0035】(d)有効圧下率:最終スタンド圧下率が
10%以上の時には30%以上 最終スタンド圧下率が10%未満の時には35%以上 また、仕上圧延の際に、以下に示す有効圧下率を、最終
スタンド圧下率が10%以上の時には30%以上、最終
スタンド圧下率が10%未満の時には35%以上にする
ことによって、本発明で意図する変動が少ない良好なプ
レス成形性を有する鋼板を製造することができる。 有効圧下率 =最終スタンドの圧下率+最終1段前スタ
ンドの圧下率+1/3×最終2段手前スタンドの圧下率
【0036】図2に、本発明材および比較材のコイル内
の機械的性質の変動と有効圧下率の関係を示す。この図
に示すように、上記の有効圧下率の範囲で仕上圧延を行
うことにより、伸びおよび平均r値が高く、しかもこれ
らのばらつきが少ないことがわかる。すなわち、上記有
効圧下率の範囲で仕上げ圧延を行うことにより、プレス
成形性に優れ、かつ、プレス成形性の変動が少ない冷延
鋼板が得られることが確認された。
【0037】(e)ランナウトでの冷却開始時間:仕上
げ圧延終了後1.5秒以内、さらに望ましくは1.0秒
以内 仕上げ圧延終了後、1.5秒以内に開始することによ
り、仕上げ圧延後の変態前のオーステナイトの結晶粒の
粒成長を抑制することができ、プレス成形性の変動が少
ない鋼板を得ることができる。1.5秒を超えると、オ
ーステナイト結晶粒が粒成長し、機械的性質の変動を少
なくすることが困難である。さらにプレス成形性の変動
が少ない鋼板を得るためには、仕上げ圧延終了後、1.
0秒以内に冷却を開始することが望ましい。これによ
り、仕上げ圧延後の変態前のオーステナイト結晶粒の粒
成長を、より一層抑制することができるためである。
【0038】(f)仕上げ温度〜750℃までの平均冷
却速度:20℃/sec以上、さらに望ましくは100
℃/sec以上 以上のようにして製造された鋼帯を、仕上げ温度〜75
0℃までの平均冷却速度を20℃/sec以上で冷却す
ることにより、オーステナイト−フェライト変態時のフ
ェライトの核生成頻度が増加し、本発明で意図するプレ
ス加工性の変動の少ない鋼板を得ることができる。ま
た、平均冷却速度を100℃/sec以上にすると、さ
らに優れたプレス加工性の変動の少ない鋼板を得ること
ができる。平均冷却速度の上限は特に規定しないが、事
実上の上限は、現在の工業的に可能な限界である150
0℃/secである。
【0039】(g)熱延後の巻取温度:720℃以下 以上のようにして製造された熱延鋼板の巻取温度を72
0℃以下とすることにより、フェライトの粒成長による
粗粒化を抑制することができる。巻取温度が720℃を
超える場合、フェライト粒径を制御することができない
ので、本発明で意図するプレス加工性に優れ、プレス加
工性の変動の少ない鋼板を得ることができない。巻取温
度のより好ましい範囲は685℃以下である。
【0040】なお、本発明には、連続鋳造されたスラブ
を直送または再加熱する方法も含まれる。特に、スラブ
を室温まで冷却せずに再加熱する方法は、省エネルギー
の観点からより好ましい。
【0041】以上のようにして得られた熱延鋼帯を酸
洗、冷間圧延、最終焼鈍、調質圧延を施すことによりプ
レス成形性に優れ、かつプレス成形性のコイル内での変
動も少ない冷延鋼板を得ることができる。冷間圧延は所
定の板厚にするとともに、圧延集合組織を発達させて、
再結晶焼鈍工程で加工性を向上のために好ましい集合組
織を発達させるために施される。そのためには、50%
以上、より好ましくは75%以上の圧下率で最終板厚に
加工することが望ましい。
【0042】また、再結晶焼鈍は550〜900℃の温
度範囲で焼鈍を行ない、フェライトを再結晶焼鈍させ
る。550℃未満の温度では、長時間の箱焼鈍でも再結
晶が十分に生じない。一方、900℃を越える温度では
連続焼鈍でもオーステナイト化が進行して加工性が劣化
する。
【0043】再結晶焼鈍を行なう方法としては、連続焼
鈍、箱焼鈍、または溶融亜鉛めっき処理に先行する連続
熱処理のいずれでもよい。
【0044】なお、本発明においては、プレス成形性の
変動を一層少なくする観点から、連続熱間仕上げ圧延機
のスタンド間、または、仕上げ圧延の前工程にて粗バー
の幅方向エッジ部を誘導加熱装置により加熱する工程を
付加することは好ましい。このような、エッジヒーター
の使用により粗バーの幅方向の温度のばらつきが小さく
なり、幅方向の材質が特に均一な鋼板を得ることができ
る。
【0045】また、本発明においては、仕上げ圧延で圧
延される粗バーの圧延速度を、粗バーの先端部が前記仕
上げ圧延機に入ってから加速し、その後一定速、または
一定速圧延後加速、または加速圧延することが望まし
い。このような熱延条件とすることにより、加速による
鋼帯の温度の低下を抑えることができ、結果として、仕
上げ圧延機の入り側または、仕上げ圧延機のスタンド間
に設けられた誘導加熱装置による粗バーの加熱のための
消費電力を節約することができる。
【0046】上述した組成の素材鋼は、たとえば転炉、
電気炉等により溶製される。鋼片の製造は造塊−分塊圧
延法または連続鋳造、薄スラブ鋳造法、ストリップ鋳造
法のいずれでも構わない。なお、本発明において、連続
鋳造または造塊、分塊圧延により得られたスラブ加熱す
る製造方法においては、スラブを室温以上の温度まで冷
却したのち、熱延加熱炉に挿入する。その場合、熱延加
熱炉への挿入温度はAr点以下であることが組織を制
御する上で好ましい。
【0047】なお、本発明においては粗圧延鋼帯を加熱
する前工程、もしくは後工程でレベラー等の矯正装置に
よって形状矯正をしても良い。矯正を粗圧延鋼帯を加熱
する前工程で行なう場合、粗圧延鋼帯の形状が良くなる
ことにより粗圧延鋼帯の加熱時の均一性が良くなり、粗
圧延鋼帯内の組織の均一性が高くなり、さらには仕上げ
圧延機に挿入される粗圧延鋼帯の形状が良いため、仕上
げ圧延時の塑性変形時の均一性が高くなり、結果とし
て、得られる鋼板の組織も均一になる。また、矯正を粗
圧延鋼帯を加熱する後工程で行なう場合、少なくとも仕
上げ圧延機に挿入される粗圧延鋼帯の形状が良いため、
仕上げ圧延時の塑性変形時の均一性が高くなり、結果と
して、組織が均一となる。
【0048】本発明方法によって得られた冷延鋼板は、
適宜、表面処理(溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっ
き、電気めっき、有機被覆コーテングなど)やプレス加
工を施した後、例えば、自動車、家電製品、鋼構造物な
どに使用されるが、特にこれらの用途において要求され
る高加工性と強度を有するものである。
【0049】
【実施例】次に、本発明による具体的な実施例につい
て、比較例と比較しながら以下に説明する。表1に示す
化学組成を有する鋼(材料No.1〜9)を表2に示す
条件で熱間圧延し、冷却して巻取処理を行ない、熱延板
を酸洗後、圧下率75%にて冷間圧延と焼鈍(800℃
×40秒)を行ない、コイル長手方向およびコイル幅方
向における機械的性質を調べた。表3にコイルの長手方
向での平均r値および破断伸びの値のばらつき、および
コイル幅方向での平均r値および破断伸びの値のばらつ
きを示す。なお、コイルの長手方向のばらつきは、コイ
ルのトップ、ミドル、ボトムから採取したサンプルにお
けるばらつきを示し、コイル幅方向のばらつきはコイル
のトップ、ミドル、ボトムのうち最大の幅方向のばらつ
きをもつ位置での平均r値および破断伸びの値のばらつ
きを示す。
【0050】また、表4に示す条件で熱間圧延し、冷却
して巻取処理を行ない、熱延板の長手方向および幅方向
の機械的性質を調べた。表5に熱延板の長手方向および
幅方向の平均r値および破断伸びのばらつきを示す。表
記の仕方は表3と同様である。
【0051】表3および表5から明らかなように、本発
明によって製造された鋼板は平均r値、破断伸びのレベ
ルは高く、かつコイル内での機械的性質の変動が小さ
く、コイル内でのプレス成形性が優れ、かつその均一性
にも優れていることが確認された。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
自動車の外板などの用途に好適な、深絞り性等のプレス
成形性に優れ、かつプレス成形性の変動も少ないプレス
加工用冷延鋼板の製造方法を提供することができ、工業
上有用な効果がもたらされる。本発明による鋼板は自動
車用に限らず、産業機器用、家電用(テレビ用のフレー
ム材など、各種容器材など)、ほうろう用等の深絞り性
が要求される用途に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コイル長手・幅方向の機械的性質の変動と熱延
仕上げ温度の関係を示す図。
【図2】コイルの機械的性質と有効圧下率との関係を示
す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C22C 38/00 301 C22C 38/00 301S 38/14 38/14 (72)発明者 石井 吉秀 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 塩谷 昇史 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 本屋敷 洋一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、C:0.02%以下、S
    i:0.6%以下、Mn:2.5%以下、P:0.10
    %以下、S:0.05%以下、O:0.01%以下、s
    ol.Al:0.01〜0.10%以下を含有し、さら
    にTi、Nb、V、Zrのうち1種または2種以上を
    0.01〜0.20%含有する鋼からなるスラブを、連
    続鋳造まま、または冷却後所定温度に加熱した後、粗圧
    延機によって25mm以上85mm以下に粗圧延し、下
    記に示す粗バー圧下率が85%以上になるような仕上げ
    圧延パス・スケジュールにし、かつ、その粗バーを連続
    熱間仕上げ圧延機によって仕上げ圧延するに際して、仕
    上げ最終スタンドにおける温度が前記粗バーの先端部か
    ら後端部に至るまでAr〜Ar+50℃の範囲とな
    るように圧延し、かつ、前記仕上げ圧延の最終スタンド
    での圧下率が10%以上の時には、以下に示す有効圧下
    率が30%以上、または、前記仕上げ圧延の最終スタン
    ドでの圧下率が10%未満の時には、以下に示す有効圧
    下率が35%以上になるように圧下スケジュールを設定
    し、引き続くランナウトでの冷却を仕上げ圧延終了後
    1.5秒以内に開始し、仕上げ温度〜750℃までの平
    均冷却速度を20℃/sec以上で冷却し、その後、7
    20℃以下の温度で巻き取り、得られた熱延鋼帯に対し
    て酸洗、冷間圧延、最終焼鈍、調質圧延を施すことを特
    徴とするプレス成形性に優れ、かつ、プレス成形性の変
    動が少ない、高加工性冷延鋼板の製造方法。ただし、 粗バー圧下率={(粗バー厚み−熱延板厚み)/粗バー
    厚み}×100 有効圧下率 =最終スタンドの圧下率+最終1段前スタ
    ンドの圧下率+1/3×最終2段手前スタンドの圧下率
  2. 【請求項2】 前記粗バーを連続熱間仕上げ圧延機によ
    って仕上げ圧延するに際して、仕上げ圧延機の入り側、
    または、仕上げ圧延機のスタンド間に誘導加熱装置を設
    け、その誘導加熱装置によって前記仕上げ圧延機により
    圧延される前記粗バーを加熱することによりその温度を
    調整し、前記仕上げ最終スタンドにおける温度が前記粗
    バーの先端部から後端部に至るまでAr〜Ar+5
    0℃の範囲となるように圧延することを特徴とする請求
    項1に記載のプレス成形性に優れ、かつ、プレス成形性
    の変動が少ない、高加工性冷延鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記連続熱間仕上げ圧延機のスタンド間
    または、仕上げ圧延の前工程にて前記粗バーの幅方向エ
    ッジ部を誘導加熱装置により加熱することを特徴とする
    請求項1または請求項2に前記のプレス成形性に優れ、
    かつ、プレス成形性の変動が少ない、高加工性冷延鋼板
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記仕上げ圧延で圧延される前記粗バー
    の圧延速度を、前記粗バーの先端部が前記仕上げ圧延機
    に入ってから加速し、その後一定速、または一定速圧延
    後加速、または加速圧延することを特徴とする、請求項
    1から請求項3のいずれか1項に記載の、プレス成形性
    に優れ、かつ、プレス成形性の変動が少ない、高加工性
    冷延鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 ランナウトでの冷却を仕上げ圧延終了後
    1.0秒以内に開始し、仕上げ温度〜750℃までの平
    均冷却速度を100℃/sec以上で冷却することを特
    徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載
    の、プレス成形性に優れ、かつ、プレス成形性の変動が
    少ない、高加工性冷延鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2003293083A (ja) * 2002-04-01 2003-10-15 Sumitomo Metal Ind Ltd 熱延鋼板並びに熱延鋼板及び冷延鋼板の製造方法

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