JP2000103640A

JP2000103640A - 可視光透過率の高い紫外線吸収ガラス

Info

Publication number: JP2000103640A
Application number: JP10278548A
Authority: JP
Inventors: Hiroshi Machishita; 汎史町下; Kazutoshi Nakaya; 和敏中屋
Original assignee: Central Glass Co Ltd
Current assignee: Central Glass Co Ltd
Priority date: 1998-09-30
Filing date: 1998-09-30
Publication date: 2000-04-11

Abstract

(57)【要約】【課題】紫外線の遮断（吸収）能が高く、かつ可視光
透過率が通常のクリアーガラスに近似して高い無着色
（無彩色）性のガラス組成物。【解決手段】ソーダ石灰シリカ系ガラスで、不純物と
しての鉄分含有量がFe₂O ₃ 換算で0.10wt％未満であり、
紫外線吸収成分、色調調整成分の含有量において、CeO₂
が 0.5〜1.6 wt％、TiO₂が０〜0.8 wt％、V₂O₅が０〜0.
09wt％、硫黄分がSO₃ 換算で0.10〜0.35wt％、CoO が０
〜0.002 wt％であり、板厚５mmにおける紫外線透過率が
20％以下、可視光透過率が85％以上、主波長が 490〜56
0 nmである可視光透過率が高い紫外線吸収ガラス。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、建築用、各種車両
・輸送機用の窓ガラス、ショーケース用透視ガラス、デ
ィスプレイ用基板ガラス等として有用なクリアー、すな
わち無着色または殆ど着色していない透明な紫外線吸収
ガラスであって、熱強化や熱曲げ加工が可能な前記紫外
線吸収ガラスに関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、物品、特に有機質物品を劣化させ
たり褪色させたりし、また人体の皮膚等に悪影響を及ぼ
す紫外線を遮蔽するクリアーなガラスが求められてい
る。

【０００３】従来より、Fe₂O₃ が比較的低廉な紫外線吸
収成分であり、かつ可視域にわたる広い光吸収があって
ガラスに着色を与え、これを含む各種着色系の紫外線あ
るいは更に赤外線を遮蔽するガラスは多く出願されてい
る。

【０００４】特開平６−92678 号公報には、紫外線赤外
線吸収ガラスに関し、鉄分をFe₂O₃換算で 0.1〜0.8 wt
％、CeO₂を 0.3〜２wt％、TiO₂を０〜１wt％、CoO を０
〜0.006 wt％、Seを０〜0.0015wt％、NiO を０〜0.01wt
％含むものが開示されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前記特開平６−92678
号公報の発明においては、Fe₂O₃ が 0.1wt％以上である
が、前記したようにFe₂O₃ は可視光透過率を減ずるもの
であり、過剰に含むべきではなく、原料中の不純物とし
て含まれる最小限に留めるべきである。また、該公知例
においては有害な結晶物であるNiS を起生する恐れのあ
るNiO を任意成分として含む。更に、酸化剤として作用
し、CeO₂やTiO₂を安定した配位とし、紫外線の吸収を安
定化させるうえで必要なSO₃ が含まれていない。

【０００６】クリアーガラスについてみれば、比較的着
色を与えない紫外線吸収成分としてはCeO₂、TiO₂、V₂O₅
等が公知であり、これらと色調調整成分等の組合せにつ
いて、例えば本出願人の出願にかかる特願平９−31830
号には、紫外線吸収性ガラスに関し、鉄分をFe₂O₃ 換算
で0.08〜0.15wt％、CeO₂を 1.3〜1.7 wt％、TiO₂を 0.5
〜0.8 wt％、CoO を0.0005〜0.0015wt％含み、還元率Fe
²⁺／Fe³⁺≦0.05であるガラスを開示している。

【０００７】この場合、有効な紫外線吸収成分であるFe
₂O₃ を0.08wt％以上必要とするが、Fe₂O₃ は可視光透過
率を減じ、着色を与えるものであり、過剰に含むべきで
はなく、むしろ原料中の不純物として含まれる最小限に
留めるべきである。また、開示されるごとくFe²⁺／Fe³⁺
≦0.05に維持するには高度の操窯技術を必要とする。更
に、前記したごとく酸化剤としてのSO₃ 分は必要不可欠
のものである。

【０００８】本発明は、紫外線の遮断（吸収）能を有
し、かつ可視光透過率が通常の透明クリアーなガラスに
近似して高く無着色性のガラスを提供するものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、ソーダ石灰シ
リカ系ガラスで、不純物としての鉄分含有量がFe₂O₃換
算で0.10wt％未満であり、紫外線吸収成分、色調調整成
分の含有量において、CeO₂が 0.5〜1.6 wt％、TiO₂が０
〜0.8 wt％、V₂O₅が０〜0.09wt％、硫黄分がSO ₃ 換算で
0.10〜0.35wt％、CoO が０〜0.002 wt％であり、板厚５
mmにおける紫外線透過率が20％以下、可視光透過率が85
％以上、主波長が 490〜560 nmである紫外線吸収ガラス
である。

【００１０】前記可視光透過率はJIS R 3106により測定
法が規定されるところの波長 380〜780nmにおける平均
透過率であり、紫外線透過率はISO/DIS 13837 Ｂにより
測定法が規定されるところの波長 300〜 380nmにおける
平均透過率である。また、主波長はJIS Z 8722により測
定、算定法が規定される。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明において、ソーダ石灰シリ
カ系ガラスとは、通常フロート板ガラスとして多用され
るガラスで、主成分組成が、SiO₂ 67〜75wt％、Al₂O₃
０〜３wt％、CaO ６〜12wt％、MgO ２〜６wt％、Na₂O
10〜15wt％、K₂O ０〜３wt％からなり、この範囲におい
て溶融成形性に優れ、低廉な原料を用いて容易かつ効率
的に製造でき、実用上も耐候、耐久性に富むことは公知
の事項である。

【００１２】可視光透過率が通常のクリアーなガラスに
近似して高く、無着色（無彩色）性であるためには、紫
外線吸収剤、色調調整剤については以下に限定される。

【００１３】鉄分はクリアーガラス原料において、不純
物として混入してくる範囲にとどめるべきである。通
常、精製した天然原料である珪砂、石灰石、ドロマイト
等から不純物として混入するが、その量はガラス中 Fe₂
O₃換算で0.05wt％以上、0.10wt％未満であり、本発明に
おいても0.10wt％未満とするものである。Fe₂O₃ は、厳
密にはガラス融液において、その酸化還元状態に応じて
Fe³⁺とFe²⁺が可逆的に変化し、平衡状態にある。Fe³⁺に
おいては紫外域に吸収を有するが、可視域の短波長側に
も吸収を有しガラスに着色を与え、Fe²⁺は近赤外域に吸
収を有するが、可視域の長波長側にも吸収を有しガラス
に着色を与えるので好ましくなく、上記したように不純
物として混入してくる0.10wt％未満とする。

【００１４】CeO₂は、可視光線から紫外線にわたる境界
域において紫外線を鋭敏に遮断（吸収）する成分として
主要な紫外線吸収剤であって、ガラス中 0.5wt％未満で
あると所期の紫外線吸収能が得られない。また 1.6wt％
を越えると、紫外域のみならず、可視域の波長の下限
（380nm)を越えて光吸収がおよび、ガラスに黄色系の着
色を与える。従って 0.5〜1.6 wt％の範囲で含有させる
ものである。

【００１５】TiO₂はCeO₂と同様に紫外線吸収能を有する
比較的安価な材料で、適宜CeO₂に対し補足的に導入す
る。但しTiO₂をガラス中 0.8wt％を越えて導入すると、
やはり可視域の波長の下限（380nm)を越えて光吸収があ
り、ガラスに黄色系の着色を与えるので、0.8 wt％以下
とする。

【００１６】V₂O₅はやはり強い紫外線吸収能を有するも
ので、適宜CeO₂に対し補足的に導入する。但し可視域で
ある 440nm、および 630nm付近に吸収を有し、ガラス中
0.09wt％を越えると、ガラスに緑色系の着色を与える。
従って0.09wt％以下とする。

【００１７】清澄剤として硫酸塩、例えばNa₂SO₄のかた
ちで導入する硫黄分(SO₃) は、酸化剤としての作用も有
し、CeO₂、およびTiO₂紫外域の吸収を安定化させる。ま
た少量混入する鉄分においてもFe³⁺＞＞Fe²⁺としてFe²⁺
の影響を最小限に留める。SO ₃ がガラス中に0.10wt％未
満であると、その作用が小さく、0.35wt％を越えるとガ
ラスが発泡し易く、却って清澄作用が損なわれ、良品質
のガラスを得難くなるので、ガラス中0.10〜0.35wt％の
範囲とする。

【００１８】CoO は可視域の 525〜650nm に複数の吸収
ピークを有し、ピーク全体の吸収端が短波長側において
450nm、長波長側において 700nmというブロードなもの
で、それ自体ガラスに青色系の着色を与える。ガラス中
前記Fe₂O₃(FeO)、CeO₂、TiO₂、V₂O₅の含有割合によって
は可視域全域にわたる分光透過率（透過率−波長）曲線
が必ずしも平坦的ではなく、僅かに着色する場合がある
が、このような場合において CoOが有効に作用し、無彩
色ガラスの色調に近づけることができる。従ってCoO は
適宜に導入するものであるが、ガラス中0.002 wt％を越
えると、前記青色系の着色が目立ってくるので、０〜0.
002 wt％以下の範囲、より好ましくは0.0005〜0.002 wt
％の範囲とする。

【００１９】なお、前記硫酸塩の分解を促進するうえで
カーボンの添加は有効であるが、それは還元剤であるの
で、添加量を極力抑制すべきであり、硫酸塩の量にもよ
るが、ガラス（バッチガラス化量)100重量部に対し約
0.2重量部以下とする。

【００２０】本発明において、板厚５mmにおける紫外線
透過率が20％以下であり、従来20％程度以下において紫
外線遮断能の顕著性が認められており、人体の皮膚等へ
の悪影響を最小限とするのは勿論、特に内装品に多い有
機物品の褪色、劣化を更に大幅に抑制できる。また板厚
５mmにおける可視光透過率が85％以上であり、いわゆる
透明クリアーガラスのそれに近似（通常の透明クリアー
ガラスにおける可視透過率は89％である）する。更に主
波長を 490〜560 nmと中性域とすることにより、彩色の
片寄りを抑え、透明クリアーガラスとして好適なものと
することができる。また、JIS Z 8722により求められる
刺激純度を２％未満とすることができる。

【００２１】本発明においては、板厚１mm前後の薄板ガ
ラスから10mm前後の厚板ガラスまで適用でき、平板ガラ
スは勿論、熱曲げ加工したガラス、あるいは熱強化ガラ
ス（半強化、超強化ガラスを含む）、各種機能性膜を形
成したもの等を含む。また、単板ガラスとしてのみなら
ず、本発明にかかるガラス同士、または本発明にかかる
ガラスと他のガラスとの合せガラスや複層ガラスとする
こともできる。

【００２２】

【実施例】以下本発明の実施例について説明する。〔原料の調製〕ガラス原料として、珪砂、長石、ソーダ
灰、ドロマイト、石灰石、芒硝、炭酸セリウム、酸化チ
タン、酸化コバルト、五酸化バナジウムおよびカーボン
を採用した。

【００２３】主成分として、ガラス中SiO₂ 71.9wt％、
Al₂O₃ 2.0 wt％、MgO 3.7wt％、CaO8.4wt％、Na₂O 13.
0wt％、K₂O 1.0 wt％、（上記主成分全体 100wt％）と
なるようバッチ調製し、これに各種紫外線吸収成分、色
調調整成分を所望量添加して調製した。

【００２４】〔ガラスの作製〕所望組成に沿って 600ｇ
のガラスに相当する原料を秤量調合してるつぼに充填
し、箱形電気炉内において、1480℃程度の温度で約４時
間程度溶融し、清澄なガラス融液とした後、るつぼを取
出し、耐熱、不活性なカーボン板上に流出、流延させて
板ガラス状とし、更に徐冷し、厚み約５mm程度に光学研
磨して、大きさ 100×100mm のガラス板とし、ガラス成
分組成分析および各種光学特性等の測定用供試ガラスと
した。

【００２５】〔各種測定〕各供試ガラスについて、ガラ
ス組成（紫外線吸収成分、色調調整成分含有率）は湿式
分析法で分析した。可視光透過率はJIS R-3106に則り、
U-4000型自記分光光度計（日立製作所社製）による分光
透過率曲線における波長 380〜780nm におけるＤ光源に
対する平均透過率で求めた。紫外線透過率はISO/DIS 13
837 Ｂ法に則り上記同様の手段で、波長 300〜380nm に
おける平均透過率を求めた。更にJIS Z-8722に則り、上
記測定値より主波長λD(nm）、刺激純度Pe（％）を算定
した。

【００２６】供試ガラスの紫外線吸収、色調調整にかか
わる各成分の分析値、および光学特性測定結果について
表１〜表４に示す。表中Ｔuv（％）が紫外線透過率、Ｔ
v(％) が可視光透過率、λD(nm) が主波長、Ｐe (％)が
刺激純度である。

【００２７】〔結果〕表１〜４に示すとおり、本実施例
のものは、５mm厚において紫外線透過率が20％以下と低
く、紫外線遮断性に優れ、他方可視光透過率は85％以上
と高く、主波長も 490〜560 nmと中性域であり、いわゆ
る通常の透明クリアーガラスに匹敵し殆どまたは全く無
彩色である。なお、刺激純度は、無彩色系ガラスにおい
ては、前記主波長範囲で５％以下であれば申し分ないも
のではあるが、２％未満とすることができ、可視域全域
にわたって光透過率が殆ど平坦であることをあらわす。
他方比較例は紫外線透過率、可視光透過率、主波長のい
ずれか、または複数のファクターにおいて不充分であ
る。

【００２８】〔表１〕実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5 成分(wt%) Fe₂O₃(全鉄） 0.09 0.085 0.088 0.084 0.078 CeO₂ 1.6 1.6 1.59 0.98 0.72 TiO₂ -- 0.7 -- -- 0.6 V₂O₅ -- -- 0.08 0.04 0.03 CoO 0.001 0.0015 0.001 0.0008 0.0012 SO₃ 0.2 0.29 0.25 0.18 0.22 光学特性Ｔuv(%) 16.6 11.6 10.6 18.8 16.4 Ｔv (%) 87 85.7 85.6 85.3 86.6 λD (nm) 501 540 559 503 521 Ｐe (%) 0.2 0.6 1.9 0.7 0.3

【００２９】〔表２〕実施例6 実施例7 実施例8 実施例9 成分(wt%) Fe₂O₃(全鉄） 0.09 0.089 0.09 0.07 CeO₂ 1.28 0.82 1.2 1.2 TiO₂ -- 0.41 0.3 0.3 V₂O₅ 0.08 -- 0.04 -- CoO 0.001 0.0012 0.001 0.0012 SO₃ 0.16 0.31 0.16 0.22 光学特性Ｔuv(%) 11.8 19.9 14.0 18.6 Ｔv (%) 85.5 87.0 85.8 86.5 λD (nm) 555 494 541 492 Ｐe (%) 1.6 0.5 0.9 0.7

【００３０】〔表３〕比較例1 比較例2 比較例3 比較例4 比較例5 成分(wt%) Fe₂O₃(全鉄） 0.096 0.089 0.15 0.18 0.19 CeO₂ 1.05 1.6 1.6 1.6 1.92 TiO₂ -- 0.29 1.2 -- -- V₂O₅ -- -- -- -- -- CoO -- -- 0.0026 -- -- SO₃ 0.10 0.06 0.18 0.15 0.19 光学特性Ｔuv(%) 25.4 12.5 4.8 31.5 12.3 Ｔv (%) 90.8 89.8 76.7 89.6 89.5 λD (nm) 571 572 515 571 574 Ｐe (%) 1.2 2.7 0.7 2.7 2.4

【００３１】

【００３２】

【発明の効果】本発明によれば、通常のクリアガラスと
同等の色調（無彩色系）を呈し、可視光透過率も通常の
クリアガラスと殆ど遜色なく、かつ優れた紫外線吸収
（遮断）性能を有し、建築用、各種車両・輸送機用の窓
ガラス、ショーケース用透視ガラス、ディスプレイ用基
板ガラス等として有用である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続きＦターム(参考） 4G062 AA01 BB03 DA06 DA07 DB01 DB02 DB03 DC01 DD01 DE01 DF01 EA01 EB04 EC01 EC02 EC03 ED03 EE03 EE04 EF01 EG01 FA01 FB01 FB02 FC01 FD01 FE01 FF01 FF02 FG01 FH01 FJ01 FK01 FL02 FL03 GA01 GB02 GC01 GD01 GE01 HH01 HH03 HH05 HH07 HH09 HH11 HH12 HH13 HH15 HH17 HH20 JJ01 JJ03 JJ05 JJ07 JJ10 KK01 KK03 KK05 KK07 KK10 MM01 MM27 NN13

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ソーダ石灰シリカ系ガラスで、不純物とし
ての鉄分含有量がFe₂O₃ 換算で0.10wt％未満であり、紫
外線吸収成分、色調調整成分の含有量において、CeO₂が
0.5〜1.6 wt％、TiO₂が０〜0.8 wt％、V₂O₅が０〜0.09
wt％、硫黄分がSO₃ 換算で0.10〜0.35wt％、CoO が０〜
0.002 wt％であり、板厚５mmにおける紫外線透過率が20
％以下、可視光透過率が85％以上、主波長が 490〜560
nmであることを特徴とする可視光透過率の高い紫外線吸
収ガラス。