JP2000101570A - 量子暗号通信システム - Google Patents
量子暗号通信システムInfo
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Abstract
なるとともに実質的に高い量子効率で伝送信号の検出が
可能な量子暗号通信システムを提供する。 【解決手段】 送信者と受信者の装置は、ビームスプリ
ッター2,6と、鏡3,5とを有し、送信者はレーザー
光源1と光減衰器4とを、受信者は増幅器及び電圧測定
器8を備えている。信号光Sを反射する鏡3,5は光の
波長程度の微少な距離の移動が可能で信号光Sの位相を
変化させる。信号光Sは光減衰器4により強度が減少
し、典型的な強度が光子1個程度となるようにし、量子
力学的な状態変化を検出できる微弱な信号にしている。
参照光Lの典型的な強度は光子1千万個程度であり、信
号光Sと参照光Lの強度は著しく異なるように調節して
いる。受信者は位相差を付与された信号光Sと参照光L
との差信号を測定し、この頻度分布に基づいて受信側と
送信側の秘密鍵を共有する。
Description
保するための秘密鍵の配布に利用し、特に伝送信号の量
子力学的な状態を測定し、実質的に高い量子効率で伝送
信号の検出をするための量子暗号通信システムに関す
る。
号技術には、正規の通信者のみが知っている共通の秘密
鍵を用いる秘密鍵暗号方式と、秘密鍵と公開鍵という一
対の鍵を用いる公開鍵暗号方式とがある。公開鍵暗号方
式の暗号は、その秘蔵性を、例えば非常に大きな正数の
因数分解が計算困難であるといったことに依っている
が、計算機の性能の進歩やネットワークを使った分散処
理の発達等によりその安全性は必ずしも万全とはいえな
い。
いる秘密鍵を送り手と受け手のみで共有することができ
れば絶対的に安全な通信が可能になる。このような中で
秘密鍵の配布方法の秘蔵性を量子力学の原理にもとめる
通信方法である量子暗号が提案されている(J.Cry
ptology、5、3−28(1992)C.H.B
ennett etal)。
的に被測定対象に擾乱を与えるので、盗聴者による盗聴
の試みは必ず信号に変化を与える。したがって、信号の
変化を監視することにより盗聴者の存在を暴くことがで
きる。つまり、量子暗号を用いると距離的に離れた2点
間で秘蔵性の非常に高い秘密鍵を共有することができ
る。従来の量子暗号は伝送信号の担い手として光を用
い、かつ、光の検出に光子計数法を用いている。光子計
数法とは1個以上の光子が検出器に入射したとき、ある
確率(量子効率という)で電気パルスが発生する光の検
出方法である。
うな従来の方法では、光の検出に光子計数法を用いてい
るため、そのことに起因する原理的及び技術的な解決す
べき課題がある。まず、原理的な課題は、伝送された後
の信号の量子力学的な状態を調べることが出来ないの
で、盗聴者が量子非破壊測定等の高度な手段をとった場
合、それを検知することができない。すなわち、盗聴者
が光子数の情報を信号の光子数に変化を与えずに読み出
すことが可能なので(測定の影響は位相の変化に現れ
る)、伝送後の光子数のみを測定していても盗聴に気が
つかないことになる。
用いられる1.3μmや1.5μmの光に対して、高い
量子効率を有する検出器が現存しないことがある。検出
の際の損失はデータの転送レートを低下させるだけでな
く、原理的には盗聴者による盗聴の試みと区別できな
い。
状態の測定が可能になるとともに、実質的に高い量子効
率で伝送信号の検出が可能な量子暗号通信システムを提
供することを目的とする。
に、本発明の量子暗号通信システムのうち請求項1記載
の発明は、光信号を用いる量子暗号通信において、盗聴
の操作によって生じる信号光の振幅と位相とで規定され
る量子力学的な確率分布の変化に基づいて盗聴を検出す
ることを特徴とする。また請求項2記載の発明は、量子
暗号通信において、送信側からの光信号を強度の強い参
照信号と量子力学的状態変化を検出できる微弱な伝送信
号とに分離し、送信過程で参照信号と伝送信号とに位相
差を付与し、これらの2信号を受信側で重ね合わせ、得
られる相互に逆位相の関係にある2つの出力光の差を求
め、伝送信号の量子状態の揺らぎに依存した出力光の差
の頻度分布に基づいて送信側と受信側との秘密鍵を共有
するとともに、伝送信号の量子状態の揺らぎを直接測定
することを特徴とするとするものである。
の信号に正負それぞれにしきい値を設定し、このしきい
値を基準にして伝送信号の状態を判別することを特徴と
している。また請求項4記載の発明は、位相差の付与が
ランダムな位相変調の他に予め定めた位相変調を与える
ことによって外的な要因による参照信号と伝送信号との
光路差の変動を補正することを特徴とするものである。
さらに請求項5記載の発明は、参照信号と伝送信号とを
時間及び偏光状態で分離して同一の経路を伝送したこと
を特徴とする。
を伝送信号と参照信号とに分割する第1のビームスプリ
ッターと、伝送信号に位相変調を与える位相変調手段
と、伝送信号を量子力学的な状態変化で検出できる微弱
な信号にする光減衰器と、参照信号に位相変調を与える
位相変調手段とを備え、位相変調した微弱な伝送信号と
位相変調した強度の強い参照信号とを重ね合わせ出力す
る第2のビームスプリッターと、第2のビームスプリッ
ターの2つの出力光を電気変換する第1及び第2の光電
変換素子と、第1及び第2の光電変換素子の逆位相の差
信号を増幅して電圧を出力する増幅器とを有するもので
ある。
光を伝送信号と参照信号とに分割するビームスプリッタ
ーと、伝送信号を一方の長い経路を通し偏光する第1の
偏光素子と、伝送信号を量子力学的な状態で検出できる
微弱な信号にする光減衰器と、伝送信号に所定の位相変
調を与える第1の位相変調手段と、他方の短い経路に通
した強度の強い参照信号と伝送信号とを同一光軸上に戻
す第1の偏光ビームスプリッターとを備え、一本の光フ
ァイバーを伝送してきた伝送信号及び参照信号を分離す
る第2の偏光ビームスプリッターと、分離した伝送信号
を一方の短い経路に通し位相変調を与える第2の位相変
調手段と、分離した参照信号を他方の長い経路に通し偏
光する第2の偏光素子とを有しており、時間及び偏光状
態が一致した伝送信号と参照信号とを重ね合わせ出力す
る無偏向ビームスプリッターと、無偏向ビームスプリッ
ターの2つの出力光を電気変換する第1及び第2の光電
変換素子と、第1及び第2の光電変換素子の逆位相の差
信号を増幅して電圧を出力する増幅器とを有するもので
ある。
え、光ファイバーの出力側に参照信号の偏光の乱れを補
正する第3の偏光素子を設けたことを特徴とする。さら
に請求項9記載の発明は、2つの出力光をフォトダイオ
ードで電気変換することを特徴とする。また請求項10
記載の発明は、光の波長が600nm〜900nmのと
きシリコンフォトダイオードを用い、光の波長が100
0nm〜1500nmのときInGaAsフォトダイオ
ードを用いることを特徴とするものである。
明では、伝送信号の量子状態をモニターすることによ
り、従来は困難であった量子非破壊測定のような高度な
盗聴の検出ができる。また請求項2記載の発明では、参
照信号の強度が強いことにより、理論的な上限に近い効
率で伝送信号を検出することができる。さらに請求項3
記載の発明では、しきい値を設定することにより、伝送
信号の強度に応じて実効的な検出効率と誤り率とを自由
に選ぶことが出来る。また請求項4記載の発明では、ラ
ンダムな位相変調と予め定めた位相変調を与えることに
より、光路差の変動の補正と量子状態の測定とを量子暗
号と同時に行うことができる。さらに請求項5記載の発
明では、伝送路として1本の光ファイバーで伝送するの
で、長距離の量子暗号通信システムが提供できる。
の光信号を強度の強い参照信号と量子力学的状態変化を
検出できる微弱な伝送信号とに分離し、送信過程で参照
信号と伝送信号とに位相差を付与し、この2信号を受信
側で重ね合わせ、得られる相互に逆位相の関係にある2
つの出力の差を求め、伝送信号の量子状態の揺らぎに依
存した出力の差の頻度分布に基づいて送信側と受信側の
秘密鍵を共有し、伝送信号の量子状態の揺らぎを測定す
る。したがって、高効率の検出ができるとともに信号光
の量子状態を測定することができる。
と参照信号とが異なる経路を進むのは送信者と受信者側
の短い距離だけで、大部分の伝送路は同一の経路を進む
ので、長距離の量子暗号伝送であっても2つの光の相対
的な光路差の変動を小さくすることができる。また請求
項8記載の発明では、光ファイバー伝送中の偏光の乱れ
を強度の強い参照信号で行うので、偏光の乱れを効果的
に補正することができる。さらに請求項9及び10記載
の発明では、高い量子効率かつ十分なS/N比で信号の
測定ができる。
づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明による量
子暗号通信システムの第1の実施形態の模式図である。
図1を参照して本実施形態を説明すると、この量子暗号
通信システムは送信者の装置10、伝送路14,16及
び受信者の装置12からなり、送信者の装置10は、レ
ーザー光源1と、ビームスプリッター2と、鏡3と、光
減衰器4とを備えている。レーザー光源1から出た光
は、ビームスプリッター2で参照光Lと信号光Sとに分
割される。信号光Sを反射する鏡3は光の波長程度の微
少な距離の移動が可能で信号光Sの位相を変化させる。
し、典型的な強度が光子1個程度となるようにし、量子
力学的な状態変化を検出できる微弱な信号にしている。
参照光Lの典型的な強度は光子1千万個程度であり、信
号光Sと参照光Lの強度は著しく異なるように調節され
ている。したがって、参照光Lの光の強度が信号光Sの
光の強度よりも著しく大きいため、高効率の検出が可能
になるとともに、信号光Sの量子状態の測定が可能にな
る。
な距離の移動が可能な鏡5と、光の透過率と反射率とが
等しいビームスプリッター6と、フォトダイオード7
a,7bと、増幅器及び電圧測定器8とを備えている。
受信者は鏡5を移動することにより参照光Lと信号光S
との相対的な位相差を変化させたあと、ビームスプリッ
ター6上で2つの光を重ね合わせる。ビームスプリッタ
ー6からの2つの出力光はフォトダイオード7a,7b
によりそれぞれ電気信号に変換する。さらに、その差信
号を増幅し電圧を測定する。増幅器8にはチャージセン
シティブアンプを用い、その典型的な利得は30V/p
C(ピコクーロン)なので、差信号に1万個の電子が含
まれているときの出力電圧は50mV程度となる。
900nmの光に対してはSiを、波長が1000〜1
500nmの光に対してはInGaAsを使用すれば量
子効率90%以上、最適な場合では99%以上の量子効
率を実現できる。つまり、最適な場合、参照光Lの強度
が強いということから例えば1万個の光子を9900個
以上の電子に変換し、その電子数を十分にS/N比で測
定することが可能である。
以下の説明では簡単のためフォトダイオードの量子効率
を100%とし、また増幅器の雑音は無視できるとし
た。図1を参照して、信号光Sと参照光Lはビームスプ
リッター2で分割された後、別の経路を通りビームスプ
リッター6上で重なり合うので、2つの経路の光路差に
より干渉を起こす。ただし、2つの光の強度が著しく異
なるので干渉稿の明瞭度は低い。
ない場合の受信者側の測定信号の模式図であり、(a)
は参照光と信号光の経路の相対的な光路差とフォトダイ
オードに入射する光子数との関係図であり、挿入図は光
路差がゼロ付近の拡大図である。図2(b)は参照光と
信号光との差信号を示す図である。
ター6は信号光Sがないときに参照光Lを1対1に分割
するよう調整するので、2つのフォトダイオード7a,
7bに入射する光子数は共に参照光Lの光子数n0 の半
分程度である。それを中心として2つの経路の相対的な
光路差に応じて微少な干渉稿が現れる。干渉稿の強弱は
2つのフォトダイオード7a,7bで逆位相なので、両
者の差信号をとると、図2(b)に示すように干渉稿の
部分のみを取り出すことができる。このとき干渉稿の振
幅は信号光Sの光子数n1 と参照光Lの光子数n0 の積
の平方根の2倍、すなわち2√n1 √n0 である。な
お、信号光Sと参照孔Lの振幅は強度の平方根、つまり
√n1 と√n0 であり、フォトダイオード7aとフォト
ダイオード7bとの差の最大値は{(√n1 +√n0 )
2 /2−(√n1 −√n0 )2 /2}=2√n1 √n0
となる。
り、1回ごとの差信号の測定結果には信号光Sの量子揺
らぎにより標準偏差√n0 の揺らぎが存在する。図3は
信号光の量子状態の揺らぎを考慮した場合の受信者側の
測定信号の模式図であり、(a)は光路差が0度の場
合、(b)は光路差が90度(λ/4)の場合、(c)
は光路差が180度(λ/2)の場合、(d)は光路差
が270度(3λ/4)の場合であり、それぞれ横軸は
差信号の大きさを示し、縦軸はその信号が検出される確
率を示す。なおλは光の波長を示し、横軸は差信号を2
√n0 で割って規格化してある。
光Lとの相対的な光路差が0度の場合、信号光Sが平均
光子数1のコヒーレント状態の場合に得られる差信号の
頻度分布は平均値が1で、標準偏差が0.5のガウス分
布となる。図3の(b)〜(d)の場合は、それぞれ
0,−1,0となる。したがって、量子暗号を実行する
ためには、受信者は1回ごとの測定について光路差が0
度であったのか、あるいは180度であったのかを差信
号の測定結果から判断することが可能になる。つまり、
図3の(a)と(c)とを区別すればよいので、しきい
値X−、X+を定めて、差信号がX+以上であれば0
度、X−以下であれば180度と判断することができ
る。
より実効的な検出効率と誤り率を自由に設定できる。例
えば図3のn1 =1の場合に、X−=X+=0とする
と、光路差が0度のときに0度と判断する確率(実効的
な検出確率)は、ガウス分布を{(平均値)−(標準偏
差の2倍)}から無限大まで積分すればよいので、9
7.7%となる。逆に光路差が180度であるのに0度
と判断してしまう確率(誤り率)はガウス分布を{(平
均値)+(標準偏差の2倍)}から無限大まで積分した
ものなので2.28%となる。またX−=−0.5、X
+=0.5とすると、同様の計算により実効的な検出確
率が84.1%まで低下するが、誤り率が0.13%と
非常に小さくなり、従来より優れた性能が得られる。
り、(a)は5000回測定したときの差信号の頻度分
布図であり、横軸は実際の測定電圧である。(b)は
(a)のような測定を30回行って得たデータから計算
機トモグラフィーにより求めた信号光のウィグナー分布
関数の図である。ウィグナー分布関数は信号光の量子状
態の表現方法の一つであり、ウィグナー分布関数が得ら
れたことは信号光の量子状態の測定が実際に可能である
ことを示している。本実施形態の測定では5000個の
光パルスに対して差信号の電圧値を測定し頻度分布を求
めたものであり、図4(a)に示すように頻度分布はガ
ウス関数に従っている。なお、図4(a)の横軸は実際
の測定電圧であるので、分布の幅を図3の場合と直接比
較するには、増幅器の利得と参照光の強度を使って補正
する必要がある。このような補正をすれば、測定された
分布の幅(差信号の揺らぎの大きさ)は量子揺らぎで予
測される幅と一致することが確かめられる。
00回の測定を30組、計15万パルス分のデータから
求めたウィグナー分布関数である。このように本発明の
第1の実施形態では、光路差を変化させながら測定を行
うことにより、信号光の量子力学的な状態の測定が可能
である。ウィグナー分布関数は信号光について理論上知
りうる全ての情報を含んでいるので、盗聴者の存在によ
る信号光の変化を、より簡単に見いだすことが可能にな
る。
5は本発明による量子暗号の手順を示す表であり、左欄
の1は送信者の位相変調、2は受信者の位相変調、3は
送信者と受信者の位相変調の合計、4は受信者の測定結
果、5は受信者が自分の加えた位相変調を送信者に公衆
回線で伝え、送信者が位相変調の合計が、0度又は18
0度のとき○を、90度又は270度のとき×を受信者
に通知したこと、6は受信者が+にビット1を、−にビ
ット0を、○になった場合につき当てはめ秘密鍵とした
こと、7は送信者が自分の位相変調が、0度又は90度
のときはビット1を、180度又は270度のときはビ
ット0を当てはめ秘密鍵としたことを示す。なお、ここ
では簡単のため誤り率を0とする。
により、0度、90度、180度及び270度の位相の
変化をランダムに信号光に加える(図5の左欄1)。一
方受信者は鏡5により、0度又は90度のランダムな位
相変化を参照光に加える(同左欄2)。このとき合計の
光路差は送信者と受信者の位相変調の差となる(同左欄
3)。さらに受信者は測定結果に対して上述したX−、
X+の設定に従い、差信号がX−以下であれば「−」
を、X+以上であれば「+」を割り当てる(同左欄
4)。このとき左欄3が0度のときは必ず+、180度
のときは−、90度と270度のときは+と−とが等確
率で現れる(同左欄4)。
について、0度と90度のどちらの位相変調を加えたか
を例えば公衆回線を通じて送信者に連絡する(同左欄
5)。送信者は合計の光路差が0度か180度であった
ものについて、秘密鍵として採用することを受信者に連
絡する。すなわち、送信者は位相変調の合計が0度又は
180度のとき○を、90度又は270度のとき×を受
信者に通知する(同左欄5)。受信者は+にビット1
を、−にビット0を、○となった場合につき当てはめ秘
密鍵とする(同左欄6)。そして送信者は自分の加えた
位相変調が0度と90度のものはビット1を、180度
と270度のものはビット0を当てはめ秘密鍵とする
(同左欄7)。図5で示すように、このようにして生成
された秘密鍵は送信者と受信者とで必ず一致する。
測定は対象に必ず影響を及ぼすという原理により、第三
者による盗聴の試みは伝送信号に必ず変化を与えるの
で、送信者と受信者とに気づかれずに第三者がこの秘密
鍵を知ることは不可能である。具体的な信号の変化は盗
聴者がどのような手段をとるかに依存する。例えば盗聴
者がいったん信号光を遮って情報を読み取り、受信者に
信号を再送するという手段をとった場合、盗聴者の情報
の読み取りに上述した受信者と同じ測定を行うとする
と、誤った位相変調のときには(送信者の位相変調との
合計が90度や270度のとき)送信者の位相変調を知
ることができず、受信者に正しい信号を再送することが
できない。
の情報を得ることは不確定性関係により不可能であるの
で、盗聴者がどのような手段で情報を読み取るとしても
正しい情報は得られず、必ず誤り率の増加となって現れ
る。すなわち、送信者と受信者の秘密鍵が一致しない。
例えば盗聴者が信号光をいったん遮って再送するという
手段をとった場合は、不適切な位相変調を行う確率1/
2と誤った信号を再送する確率1/2を掛け合わせた確
率1/4で、送信者と受信者との秘密鍵が一致しない。
したがって、秘密鍵の一部を照らし合わせることにより
盗聴者の存在を検出することができる。
を部分的に得て、分離したことによる損失を増幅によっ
て補うという盗聴手段の場合、従来の量子暗号では低い
量子効率と相まって検出が困難であったが、本発明の場
合ではウィグナー分布関数の変化となって現れるので受
信者は直ぐ気付くことになる。これは増幅過程が量子揺
らぎの増減を必ず伴うので、図4(a)のような測定結
果において分散の増減となって現れ、ウィグナー分布関
数もピーク値のまわりの分布が全体的に太くなったり非
対称となり、また盗聴者が確定的な情報を得た場合のみ
増幅する盗聴手段をとった場合には、ピーク値をとるX
1 、X2 の値も変化することになるからである。
の第2の実施形態は、伝送路として1本の光ファイバー
を用いることを想定しており、上述した第1の実施形態
のままでは困難である長距離の量子暗号を可能にするた
めの実装である。そのために参照光と信号光とを時間及
び偏光状態で分離し、同一の経路を伝送させるようにし
たものであり、受信者の信号処理や量子暗号の手順は上
述した第1の実施形態と同様である。ただし、送信者と
受信者との位相変調に量子暗号の手続に加え、別に予め
定めた位相変調を与えることにより、光路差の安定性の
改善と量子状態のモニターのための操作を加えている。
合に予測される差信号と実際に測定される差信号との比
較により行う。量子状態のモニターは一様に変化する位
相変調を予め定めた位相変調として与えることにより実
行できる。
式図である。図6を参照すると、第2の実施形態は送信
者側に、直線偏光のパルス光を発生するレーザー光源2
1と、このパルス光を2つに分割するビームスプリッタ
ー22と、一方の経路の光、これを信号光として、信号
光Sの偏光を90度回転する半波長板24と、吸収媒質
により信号光Sの強度を弱くする光減衰器25と、信号
光Sの位相を変化させる位相変調器26と、他方の経路
の光、これを参照光Lとして、この参照光Lと信号光S
とを同一光軸上に戻す偏光ビームスプリッター23とを
備え、参照光Lと信号光Sとを光ファイバー27に入射
するようになっている。このとき信号光Sと参照光Lと
は互いに偏光が直交しており、かつ、時間的に離れた状
態となっている。なお、図6中の18,19は鏡を示
す。
ー伝送中の偏光の乱れを補正する偏光素子28が設けら
れている。本発明では参照光Lの強度が強いので、この
参照光Lを用いて補正を行っている。受信者側には、信
号光Sと参照光Lとを分離する偏光ビームスプリッター
29と、先ほどとは逆に距離的に短い経路を通し途中で
位相変化を信号光Sに与える位相変調器30と、長い経
路を通して参照光Lの偏光を90度回転する半波長板3
1と、参照光Lと信号光Sとを時間的及び偏光方向も一
致させる無偏光ビームスプリッター32とを備え、この
無偏光ビームスプリッター32からの参照光Lと信号光
Sとをそれぞれフォトダイオード33a、33bにより
電気信号に変化し、その差信号を増幅器及び電圧測定器
35で増幅し、電圧を測定するようになっている。な
お、図6中の38,39は鏡を示す。
Lとが異なる経路を進むのは送信者と受信者側の短い距
離だけで、大部分の伝送路は同一の経路を進むので、2
つの光の相対的な光路差の変動を小さくすることができ
る。
ために予め定めた位相変調とランダムな位相変調とを与
える。図7は本発明にかかる第2の実施形態に位相変調
を与えるタイミングチャートである。図7を参照して、
送信者側Aは0度の位相変調と、第1の実施形態のラン
ダムな位相変調を交互に繰り返す。一方、受信者側は0
度から始まって単調に増加する位相変調と、第1の実施
形態のランダムな位相変調を繰り返す。予め定めた位相
変調の場合は差信号の平均値が予測できるので、逆に実
際に測定される差信号の平均値から相対的な光路差の変
動を見積もることができる。
的な光路差の変動があったとしても、その効果を打ち消
すように補正することが可能になる。さらにいろいろな
位相での差信号のデータから計算機トモグラフィーによ
り信号光の量子状態が得られる。したがって、光路差の
変動の補正と量子状態の測定を両方を同時に行うことが
可能になる。
明の量子暗号通信システムでは、伝送信号の量子力学的
な状態の測定ができるとともに、実質的に高い量子効率
で伝送信号の検出ができるという効果を有する。したが
って、第三者の盗聴が不可能な量子暗号通信システムを
提供することができる。
施形態の模式図である。
受信者側の測定信号の模式図であり、(a)は参照光と
信号光の経路の相対的な光路差とフォトダイオードに入
射する光子数との関係図であり、挿入図は光路差がゼロ
付近の拡大図である。図2(b)は参照光と信号光との
差信号を示す図である。
信者側の測定信号の模式図であり、(a)は光路差が0
度の場合、(b)は光路差が90度(λ/4)の場合、
(c)は光路差が180度(λ/2)の場合、(d)は
光路差が270度(3λ/4)の場合であり、それぞれ
横軸は差信号の大きさを示し、縦軸はその信号が検出さ
れる確率を示す。
は5000回測定したときの差信号の頻度分布図で、横
軸は実際の測定電圧である。(b)は(a)のような測
定を30回行って得たデータから計算機トモグラフィー
により求めた信号光のウィグナー分布関数の図である。
左欄の1は送信者の位相変調、2は受信者の位相変調、
3は送信者と受信者の位相変調の合計、4は受信者の測
定結果、5は受信者が自分の加えた位相変調を送信者に
公衆回線で伝え、送信者が位相変調の合計が、0度又は
180度のとき○を、90度又は270度のとき×を受
信者に通知したこと、6は受信者が+にビット1を、−
にビット0を、○になった場合につき当てはめ秘密鍵と
したこと、7は送信者が自分の位相変調が、0度又は9
0度のときはビット1を、180度又は270度のとき
はビット0を当てはめ秘密鍵としたことを示す。
る。
イミングチャートである。
Claims (10)
- 【請求項1】 光信号を用いる量子暗号通信において、 盗聴の操作によって生じる信号光の振幅と位相とで規定
される量子力学的な確率分布の変化に基づいて盗聴を検
出することを特徴とする、量子暗号通信システム。 - 【請求項2】 前記量子暗号通信において、送信側から
の光信号を強度の強い参照信号と量子力学的状態変化を
検出できる微弱な伝送信号とに分離し、送信過程で上記
参照信号と上記伝送信号とに位相差を付与し、これらの
2信号を受信側で重ね合わせて得られる相互に逆位相の
関係にある2つの出力光の差を求め、上記伝送信号の量
子状態の揺らぎに依存した上記出力光の差の頻度分布に
基づいて送信側と受信側との秘密鍵を共有するととも
に、上記伝送信号の量子状態の揺らぎを直接測定するよ
うにしたことを特徴とする、請求項1に記載の量子暗号
通信システム。 - 【請求項3】 前記出力光の差の信号に正負それぞれに
しきい値を設定し、このしきい値を基準にして前記伝送
信号の状態を判別することを特徴とする、請求項1又は
2に記載の量子暗号通信システム。 - 【請求項4】 前記位相差の付与がランダムな位相変調
の他に予め定めた位相変調を与えることによって外的な
要因による前記参照信号と前記伝送信号との光路差の変
動を補正することを特徴とする、請求項1乃至3の何れ
かに記載の量子暗号通信システム。 - 【請求項5】 前記参照信号と前記伝送信号とを時間及
び偏光状態で分離して同一の経路を伝送したことを特徴
とする、請求項1乃至4の何れかに記載の量子暗号通信
システム。 - 【請求項6】 光源からの光を伝送信号と参照信号とに
分割する第1のビームスプリッターと、上記伝送信号に
位相変調を与える位相変調手段と、この伝送信号を量子
力学的な状態変化で検出できる微弱な信号にする光減衰
器と、上記参照信号に位相変調を与える位相変調手段と
を備え、 上記位相変調した微弱な伝送信号と上記位相変調した強
度の強い参照信号とを重ね合わせ出力する第2のビーム
スプリッターと、この第2のビームスプリッターの2つ
の出力光を電気変換する第1及び第2の光電変換素子
と、この第1及び第2の光電変換素子の逆位相の差信号
を増幅して電圧を出力する増幅器とを有する、量子暗号
通信システム。 - 【請求項7】 光源からの光を伝送信号と参照信号とに
分割するビームスプリッターと、上記伝送信号を一方の
長い経路を通し偏光する第1の偏光素子と、この伝送信
号を量子力学的な状態で検出できる微弱な信号にする光
減衰器と、この伝送信号に所定の位相変調を与える第1
の位相変調手段と、他方の短い経路に通した強度の強い
上記参照信号と上記伝送信号とを同一光軸上に戻す第1
の偏光ビームスプリッターとを備え、 受信側にて一本の光ファイバーを伝送してきた上記伝送
信号及び上記参照信号を分離する第2の偏光ビームスプ
リッターと、この分離した伝送信号を一方の短い経路に
通し位相変調を与える第2の位相変調手段と、上記分離
した参照信号を他方の長い経路に通し偏光する第2の偏
光素子とを有しており、 時間及び偏光状態が一致した上記伝送信号と上記参照信
号とを重ね合わせ出力する無偏向ビームスプリッター
と、この無偏向ビームスプリッターの2つの出力光を電
気変換する第1及び第2の光電変換素子と、この第1及
び第2の光電変換素子の逆位相の差信号を増幅して電圧
を出力する増幅器とを有する、量子暗号通信システム。 - 【請求項8】 前記光ファイバーの出力側に前記参照信
号の偏光の乱れを補正する第3の偏光素子を設けたこと
を特徴とする、請求項7に記載の量子暗号通信システ
ム。 - 【請求項9】 前記2つの出力光をフォトダイオードで
電気変換することを特徴とする、請求項1乃至8の何れ
かに記載の量子暗号通信システム。 - 【請求項10】 光の波長が600nm〜900nmの
ときシリコンフォトダイオードを用い、光の波長が10
00nm〜1500nmのときInGaAsフォトダイ
オードを用いることを特徴とする、請求項1乃至9の何
れかに記載の量子暗号通信システム。
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