JP2000087187A - 耐食性に優れた高強度・非磁性ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents
耐食性に優れた高強度・非磁性ステンレス鋼及びその製造方法Info
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Abstract
性,強度に優れ、且つ健全な鋼塊及び製品を得ることの
できる非磁性ステンレス鋼を提供する。 【解決手段】非磁性ステンレス鋼の組成を、重量%で
C:≦0.08%,Si:≦0.50%,Mn:13〜
16%,P:≦0.040%,S:≦0.030%,C
u:0.35〜1.00%,Ni:2.50〜5.50
%,Cr:17.0〜19.0%,Mo+W:0.5〜
1.0%,N:0.38〜0.60%,O:≦0.01
00%,Sol-Al:≦0.05%,残部実質的にFeで
あり且つ次式 86([重量%Ni]+[重量%Cu])≧13[重量%Cr]
+19[重量%Mo]+9[重量%W]+2[重量%Mn] を満足する組成とする。
Description
強度・非磁性ステンレス鋼及びその製造方法に関する。
例えばドリルを用いて石油掘削を行う場合等において、
地表から先端のドリルの位置等を磁気感知により特定、
制御するといったことが行われている。
近傍にドリルカラーと称する部品が装備されているが、
このドリルカラーは、上記磁気感知によるドリルの位置
等の特定、制御のために非磁性材であることが求められ
る。このドリルカラーは、また非磁性であることに加え
て耐食性・高強度が必要とされる。
磁性且つ耐食性・高強度が求められる用途の材料とし
て、13Cr−18Mn−0.5Mo−2Ni−0.3
N,13Cr−21Mn−0.3N,16.5Cr−1
6Mn−1Mo−1.3Ni−0.5Cu−0.4N等
の高Mn系非磁性ステンレス鋼が用いられて来た。この
種非磁性ステンレス鋼において、耐食性及び強度を高め
る上でNを多く含有させることが有効であるとされてい
る。
ステンレス鋼の場合、Mn,Crが溶湯段階ではNを多
く溶解させ得るものの、凝固段階ではNの固溶度を低下
せしめる性質があることから、鋼中にNを多く含有させ
ることが難しく、Nを多く含有させた場合に凝固過程で
窒素ブローを生成せしめ、健全な鋼塊が得られないとい
った問題があった。
課題を解決するためになされたものである。而して請求
項1は非磁性ステンレス鋼に係るもので、重量%でC:
≦0.08%,Si:≦0.50%,Mn:13〜16
%,P:≦0.040%,S:≦0.030%,Cu:
0.35〜1.00%,Ni:2.50〜5.50%,
Cr:17.0〜19.0%,Mo+W:0.5〜1.
0%,N:0.38〜0.60%,O:≦0.0100
%,sol-Al:≦0.05%,残部実質的にFeであり
且つ次式 86([重量%Ni]+[重量%Cu])≧13[重量%Cr]
+19[重量%Mo]+9[重量%W]+2[重量%Mn] を満足する組成を有することを特徴とする。
1に記載の非磁性ステンレス鋼において、更にB,C
a,Mg,REMの1種又は2種以上を各単独で0.0
100%以下含有することを特徴とする。
に係るもので、請求項1又は2に記載のステンレス鋼を
製造するに際して、加工時の最終表面温度が700〜9
00℃の温度条件で且つ減面率が15〜70%の加工条
件の下で仕上加工を施すことを特徴とする。
耐食性確保のためにCr,Mnを一定量以上含有させる
ことは必須である。一方でこれらCr,Mnを多く含有
させると、上記のように凝固時に窒素ブローを生成し易
くなる。ここにおいて本発明は凝固時の窒素ブローを抑
制するため、Ni,Cuを所定量鋼中に添加するように
なしたものである。
による窒素ブローの生成作用を、Ni,Cuの添加によ
り抑制でき且つそれらCr,Mo,W,Mnの添加量
と、Ni,Cuの添加量との間に適正な関係があること
を見出し、本発明を完成させた。
らCr,(Mo+W),Mnを所定量以上含有させたとき
には、それら成分の添加量に見合った量でNi,Cuを
添加するようになしたもので、それらの添加量の関係は
次式で表される。 86([重量%Ni]+[重量%Cu])≧13[重量%Cr]
+19[重量%Mo]+9[重量%W]+2[重量%Mn]
凝固の際にNの固溶度の低いδフェライト相を析出させ
易い成分で、各係数はその寄与度を示している。また一
方左辺の成分Ni,Cuは凝固の際にNの固溶度の高い
オーステナイト相を析出させ易い成分で、各係数はその
寄与度を示している。
r,(Mo+W),Mnを含有させる一方で、これに見
合った量でNi,Cuを含有させることにより、鋼中に
Nを一定量以上多く含有させることが可能となる。即ち
凝固時において窒素ブローを抑制して、健全な鋼塊,製
品を得られるようになる。而してNを一定量以上多く含
有させ得ることから、非磁性ステンレス鋼の耐食性,強
度を従来に増して高めることができる。
a,Mg,REMの1種又は2種以上を上記所定の範囲
で含有させることができる(請求項2)。これにより熱
間加工性を向上させることができる。
は、ステンレス鋼を製造するに際して、加工時の最終表
面温度が700〜900℃の温度条件で且つ減面率が1
5〜70%の加工条件の下で仕上加工を施すものであ
る。この製造方法は、非磁性ステンレス鋼に歪を残留さ
せた状態で使用するようになしたもので、この製造方法
によれば非磁性ステンレス鋼に高強度を付与することが
できる。
0℃と規定しているのは、これよりも高い温度であると
非磁性ステンレス鋼に対して歪を良好に付与することが
できないからであり、また下限値を700℃と規定して
いるのは、これより低い温度の下では粒界に炭化物が析
出し易くなり、それによって耐食性や靭性が劣化してし
まうことによる。
るのは、これより高い加工度では加工が難しく、また下
限値を15%と規定しているのは、これより低い加工度
の下ではステンレス鋼に対して良好に歪を付与できない
ことによる。
を詳述する。 C:≦0.08% CはCrを含む炭化物として析出し、耐食性等の特性を
劣化させるため低い方が望ましいが、必要以上の規制は
著しいコストの上昇となるため、上限値を0.08%と
する。Cの望ましい含有量は0.05%以下である。
含有させるとNの溶解度,固溶度を低める外、金属間化
合物の析出を助長する。そこで本発明では上限値を0.
50%とする。Siの望ましい含有量は0.35%以下
である。
%以上含有させる。但し16%より多量の添加は熱間加
工性,耐食性を劣化させ、また凝固時の窒素ブローを促
進するので、上限値を16%とする。Mnの望ましい含
有量は15%未満である。
低いほど望ましいが、製造コストとの兼ね合いで上限値
を0.040%とする。
ば低いほど望ましい。本発明では製造コストとの兼ね合
いでSの上限値を0.030%とする。
添加するため有効であり、また凝固時にNの固溶度が大
きいオーステナイト相量を高め、窒素ブローを抑制す
る。また単体でも耐食性の向上に有効であり、本発明で
はCu,Niをそれぞれ0.35%以上,2.50%以
上含有させる。但しそれぞれ1.00%,5.50%を
超えて過剰に含有させると溶湯中のN溶解度を低め、ま
たコストを上昇せしめるのでそれぞれ上限値を1.00
%,5.50%とする。ここでNiの望ましい含有量は
5%未満である。
本発明ではCrを17.0%以上、またMo+Wを0.
5%以上含有させる。但しこれらの元素は凝固時の窒素
ブローを促進し、相安定性を低め、またコスト上昇を招
くため、Crについては19.0%を、またMo+Wに
ついては1.0%をそれぞれ上限値とし、それより多く
の過剰添加は抑制する。
高め、また非磁性を確保するのに非常に有効な元素であ
り、0.38%以上含有させる。但しNを0.60%を
超えて多く含有させると窒素ブローを発生し易くなり、
健全な製品を得ることができなくなるため0.60%を
上限値として含有量を規制する。
靭性等を劣化させるため0.0100%以下に規制す
る。
食性,靭性等を劣化させるため0.05%以下に規制す
る。
上:≦0.0100% これら元素は熱間加工性の向上に有効であるが、0.0
100%より多く添加すると鋼の清浄度を低下させるた
め、上限値を0.0100%としてそれ以下に規制す
る。
[重量%Cr]+19[重量%Mo]+9[重量%W]+2
[重量%Mn] 凝固時の窒素ブローを抑制するため、左辺の数値が右辺
の数値と同等以上となるようにNi,Cu,Cr,M
o,W,Mnの各含有量を規制するものである。
に示す化学組成の実施例1,2,3,13,14及び比
較例5の非磁性ステンレス鋼をAODにて3.6t鋼塊
作製し、その後1100℃で300mm角の寸法に熱間
鍛造した。次いで一旦冷却した後再び850〜1100
℃に加熱し、850〜900℃の温度で加工開始して、
最終表面温度が表1に示す温度となるような温度条件で
且つ同表に示す加工率(減面率)で最終加工を行った。
その際の製造性及び得られた加工材の耐食性,強度特
性,磁性等の諸特性を測定したところ表2に示す通りで
あった。
kg鋼塊作製して、これを50mm角の大きさに110
0℃で熱間鍛造し、その後一旦冷却した上で再び加熱し
て850〜900℃の温度で加工開始し、最終表面温度
が表1に示す温度となるような温度条件で且つ同表に示
す加工率で最終加工を行った。その際の製造性及び得ら
れた加工材の各種特性を測定したところ表2に示す通り
であった。
して行った。 <製造性>鋼塊時点での窒素ブローの有無を調べた。こ
こで大型鋼塊については引け巣の有無にて判断し、また
小型鋼塊についてはγ線照射により観察を行った。
溶液中に試験片を96時間浸漬した。その結果腐食が無
かったものについてはAを、また僅かに腐食があったも
のについてはBを、若干腐食があったものについてはC
を、更にほぼ全面腐食していたものをDとした。
m)を用い、JIS Z 2241に準拠して試験を行
った。
験片を用い、JIS Z 2242に準拠して試験を行
った。
し、硫酸・硫酸銅腐食液の中に20mm×70mm×5
mmtの板状の試験片を浸漬させて曲げ試験を行った。
但し曲げ角度は150度とした。この結果、割れの認め
られなかったものについては○、割れが発生したものに
ついてはその程度に応じて△,×として評価した。
SM法に従って透磁率測定を行った。これらの結果が表
2に示してある。
の範囲内で含ませる一方でCu,Niを添加していない
比較例1のもの、また同じくNを含ませる一方でCu,
Niの添加量が本発明の範囲を外れて少ない比較例2,
3のものについては窒素ブローが発生し、製造性の悪い
ものであった。
条件式は満たしているもののNの量が本発明の範囲を外
れて少なく、このため塩水噴霧試験及び腐食曲げ試験の
結果が悪く、また強度の点でも不十分なものであった。
としては実施例1のものと同様で、化学成分的に本発明
の範囲内に属するものであるが、加工条件が請求項3で
規定する加工条件から外れている。
温度が請求項3で規定する700℃より低い620℃で
あり、また実施例14のものは、加工温度的には請求項
3の条件を満たすものの、加工率が請求項3で規定する
下限値15%より低い5%であり、この結果、実施例1
3のものは比較例のものに比べて特性的に良好であるも
のの、実施例1〜実施例12のものに対して腐食曲げの
試験結果が若干劣ったものとなっている。また実施例1
4のものについては加工率が低く、最終的に残留する歪
が少ないことから、実施例1〜実施例12のものに比べ
て強度的に若干低いものとなっている。
たCu,Ni,Crの含有量が本発明の範囲を外れてお
り、尚且つ請求項1で規定する条件式も満たしていな
い。このため耐塩水噴霧,耐腐食曲げの各特性で劣って
おり、また強度的にも十分な値が得られていない。
に本発明で規定する範囲内に属する実施例1〜実施例1
2のものについては製造性も良好で、また耐食性,強度
ともに、何れも比較例のものに比べて良好な結果が得ら
れている。
くまで一例示である。例えば本発明は上記ドリルカラー
用材料として好適なものであるが、耐食性,高強度,非
磁性を要求されるリテナーリング,超電導磁石を使用し
た粒子加速器,核融合炉部材,リニアモーターカー部
材,磁気を嫌う船舶部材等、他の用途の材料としても用
いることが可能であるなど、本発明はその主旨を逸脱し
ない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能であ
る。
Claims (3)
- 【請求項1】重量%で C :≦0.08% Si:≦0.50% Mn:13〜16% P :≦0.040% S :≦0.030% Cu:0.35〜1.00% Ni:2.50〜5.50% Cr:17.0〜19.0% Mo+W:0.5〜1.0% N :0.38〜0.60% O :≦0.0100% sol-Al:≦0.05% 残部実質的にFeであり且つ次式 86([重量%Ni]+[重量%Cu])≧13[重量%Cr]
+19[重量%Mo]+9[重量%W]+2[重量%Mn] を満足する耐食性に優れた高強度・非磁性ステンレス
鋼。 - 【請求項2】 請求項1に記載の非磁性ステンレス鋼に
おいて、更にB,Ca,Mg,REMの1種又は2種以
上を各単独で0.0100%以下含有する耐食性に優れ
た高強度・非磁性ステンレス鋼。 - 【請求項3】 請求項1又は2に記載のステンレス鋼を
製造するに際して、加工時の最終表面温度が700〜9
00℃の温度条件で且つ減面率が15〜70%の加工条
件の下で仕上加工を施すことを特徴とする耐食性に優れ
た高強度・非磁性ステンレス鋼の製造方法。
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